JP3622965B1 - 有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法 - Google Patents

有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 有機ハロゲン化合物放電分解装置の放電管下流端あるいは反応容器の腐蝕損傷を防止することを目的とする。
【解決手段】 有機ハロゲン化合物を含むガスが流されるとともに、内部でマイクロ波による熱プラズマが形成される放電管4と、放電管4の下流側に配置され、有機ハロゲン化合物の分解反応が行われる反応容器25と、放電管4を囲繞するように配置され、放電管4の電界分布を決定するキャビティ3とを備え、有機ハロゲン化合物を熱プラズマによって分解する有機ハロゲン化合物放電分解装置において、反応容器25の内面には、耐蝕性材料26が設けられていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法に関するものである。
分子内にフッ素、塩素、臭素等を含んだフロン、トリクロロメタン、ハロン、ポリフルオロカーボン(PFC)等の有機ハロゲン化合物は、冷媒、溶剤、消化剤、半導体エッチングプロセス等の幅広い用途に大量使用されており、産業分野における重要度が極めて高い。しかし、これら化合物の多くは未処理のまま、大気、土壌、水等の環境へ放出されている。現在では、発ガン性物質の生成、オゾン層破壊、地球温暖化等、環境に対して悪影響を及ぼす事が判明しており、環境保全の見地からこれら有機ハロゲン化合物の無害化処理を行う必要がある。
従来の有機ハロゲン化合物の処理方法として、主として高温での熱分解反応を利用したものが報告されている。その処理方法の一つとして、プラズマ中で有機ハロゲン化合物を水蒸気と反応させ、二酸化炭素、塩化水素、フッ化水素に分解するプラズマ法が知られている。このプラズマ法では、プラズマを発生する際にマイクロ波を利用したものが近年開発されている。
この有機ハロゲン化合物放電分解装置は、図7に模式的に示す様に、アルカリ液9を収容する排ガス処理タンク1と、開口した下端部がアルカリ液9中に浸漬される吹込管8と、吹込管8の上方に接続された反応管2と、反応管2の上方に配置されたキャビティ(空洞共振器)3と、キャビティ3に囲繞されるとともにその下端が反応管2に向けて開口する放電管4と、水平方向に延在しその一端部近傍において偏平導波管28に連接される方形導波管5と、方形導波管5の他端に装着されるとともにマグネトロンを備えたマイクロ波電源6とを主として具備している。
キャビティ3は、二重管構造とされており、内側導体3aと外側導体3bと下端板(下流側端板)3dとによって空洞が形成されている。内側導体3aは、下方に延在しており、この部分がマイクロ波を伝送するアンテナ3cとされている。
放電管4は、例えば石英ガラスで形成された二重管構造とされており、内管4aと外管4bとを備えている。内管4aの内部には中心軸線に沿って着火電極13が配置されている。この着火電極13には、高電圧パルス電源14から数kVの高電圧が供給されるようになっている。
また、放電管4の材料としては、石英ガラスのほかに、マイクロ波の透過性や分解ガスに対する耐蝕性を考慮して、炭化珪素、窒化珪素、六方晶窒化ボロン、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、又はアルミナを母材としたものが知られている(特許文献1参照)。
反応管2は、上部に反応容器25を備えており、この反応容器25において主として有機ハロゲン化合物と水蒸気との分解反応が行われる。この反応管2の上方には、放電管4の終端(下端)に近接して酸素や空気等を供給するガス供給装置11が、バルブ17を介して接続されている。
反応管2には、水供給装置23からバルブ22を介して供給される水を噴射する噴霧ノズル21が設けられている。
また、排ガス処理タンク1には、オーバーフローしたアルカリ液9を排出するための排出口24が設けられている。
上記構成の有機ハロゲン化合物放電分解装置では、放電管4にガス供給装置7から有機ハロゲン化合物を含むガス(以下「有機ハロゲン性ガス」という。)および水蒸気が供給される一方で、マイクロ波発電源6において発振されたマイクロ波が方形導波管5を介して偏平導波管28に伝送される。
そして、放電管4内にガス供給装置15からアルゴンガスを導入し、放電管4の内管4a中の着火電極13に対し、高電圧パルス電源14から数kVの高電圧を印加し、スパーク放電により電子を供給した後、キャビティ3によって形成されたマイクロ波電界で放電を起こし、熱プラズマ27を形成する。そして、熱プラズマ27を通過した後の有機ハロゲン性ガスを反応容器25内で分解する。
分解された有機ハロゲン性ガスは、水蒸気との分解反応により、酸性ガス(フッ化水素及び塩化水素など)に分解される。このガスは、吹込管8によりアルカリ液9中に導かれて中和されるとともに、炭酸ガス等を含む残りのガスは排気処理装置10を経由し大気放出される。
特開2002−126505号公報(段落[0023]〜[0025])
上記従来の有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法では、以下の問題を有していた。
(1)放電管内で熱プラズマを生成して有機ハロゲン化合物を分解する際に、熱プラズマの下流側に、分解副次生成物として水素化ハロゲンガス(HF)等の腐蝕性ガスが生成する。この腐蝕性ガスが熱プラズマ発生部の下流側の放電管やその下流側に配置される反応管を腐蝕損傷させることがある。
また、特許文献1のように放電管として耐蝕性材料を採用しても、その下流側の反応管が腐蝕損傷してしまうことがある。
さらに、特許文献1に記載された耐蝕性材料は、従来から広く流通している石英管に比べると、熱膨張率が大きいので(例えば、石英:5×10-7/Kに対して、窒化ボロン:2×10-6/K、窒化アルミニウム:5×10-6/K、炭化ケイ素:4×10-6/K、アルミナ:8×10-6/K)、加熱時に破損する可能性が高く、また光学的に透過性が低く、プラズマからの輻射による加熱の影響を受け易いという欠点があった。
(2)また、放電管や反応管が腐蝕損傷した場合、腐蝕損傷した部分のみの交換ができず、放電管や反応管の全体を交換することとなり、コストの増大を招いていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、放電管下流端あるいは反応管の腐蝕損傷を防止する有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる有機ハロゲン化合物放電分解装置は、有機ハロゲン化合物を含むガスが流されるとともに、内部でマイクロ波による熱プラズマが形成される放電管と、該放電管の下流側に配置され、前記有機ハロゲン化合物の分解反応が行われる反応管と、前記放電管を囲繞するように配置され、前記放電管の電界分布を決定する空洞共振器と、を備え、前記有機ハロゲン化合物を熱プラズマによって分解する有機ハロゲン化合物放電分解装置において、前記反応管の内面には、耐蝕性材料が設けられ、前記放電管の下流端は、前記空洞共振器の下流端部を規定する下流側端板の下流側であって、前記放電管内を流れるガスの平均流速をv(m/s)とした場合、前記下流側端板から0以上4.7×10 −3 ・v(m)以下の位置に設定されていることを特徴とする。
反応管の内面に耐蝕性材料を設けることとしたので、腐蝕性を有する分解ガスに対する耐蝕性を高めることができる。これにより、腐蝕性を有する分解ガスを反応管内に重点的に流す構成を採用することができ、放電管の腐蝕損傷を抑えることができる。したがって、放電管の材料として、耐蝕性が多少劣るが入手やコストの点で有利な材料(例えば石英ガラス)を採用することができる。
耐蝕性材料としては、アルミナ、シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ボロン、炭化珪素、酸化カルシウムから選ばれる1種類以上を主成分とするセラミックス、または、ハステロイ、インコネル、インコロイ、ニモニック、ユーディメット、ハインズ等の超合金、またはSUS316、SUS317、SUS347から選ばれるステンレス鋼を採用することができる。
有機ハロゲン化合物は、数千℃以上の熱プラズマ中にて有機物原子(分子)とハロゲン原子分子に分解された後、温度がある程度低下した領域で水素化ハロゲンガス(HF)などが生成されるので、放電管の下流端を、放電管内を流れるガス流速との関係で、空洞共振器の下流側端板の下流側に設定することによって、下流側の分解副次生成物として生成される水素化ハロゲンガスなどの腐蝕性ガスの発生開始位置と放電管の下流端とをほぼ等しくすることができる。これにより、熱プラズマを通過した後に分解副次生成物として生成される水素化ハロゲンガス等の腐蝕性ガスが放電管内で生成されることを防ぐことができる。したがって、腐蝕性ガスによる放電管の腐蝕損傷を防止することができる。
また、本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置では、前記耐蝕性材料は、前記反応管に対して着脱可能とされた着脱部材の内面に設けられていることを特徴とする。
反応管に対して着脱可能とされた着脱部材の内面に耐蝕性材料を設けることとしたので、着脱部材を取り外して他の着脱部材に取り替えることによって容易にメンテナンスすることができる。また、反応管の上流側といった腐蝕の進行が激しい部分に着脱部材を配置すれば、一部分だけの交換でメンテナンスを完了することができる。
なお、着脱部材の内面だけでなく着脱部材全体を耐蝕性材料で構成することとしても良い。
また、本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置では、前記着脱部材は、管形状とされていることを特徴とする。
着脱部材を管形状とし、反応管に挿入し易い形状としたので、メンテナンスが簡便になる。管形状としては、反応管の上端に対して嵌合する顎部が上部に設けられたスリーブ形状、反応管の延在方向にわたって設けられた短管、上端が反応管の外方に突出する延長部が設けられた延長管といった形状を採用することができる。
本発明によれば、反応管内面に耐蝕性材料を設けることとしたので、反応管の腐蝕損傷を防止することができる。
以下に、本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。なお、図7を用いて説明した従来の有機ハロゲン化合物放電分解装置と同様の構成については同一符号を付し、場合によってはその説明を省略する。
図1には、本実施形態にかかる有機ハロゲン化合物放電分解装置の全体が示された概略図が示されている。
図1において、水平方向に延びる方形導波管5の始端部には、周波数2.45GHzのマイクロ波を発振するマグネトロンを備えたマイクロ波電源6が設けられている。このマイクロ波電源6から発振されたマイクロ波は、方形導波管5によって、始端側から終端側に向けて伝送される。
方形導波管5には、その終端側で反射して始端側に戻ってきたマイクロ波を吸収することにより反射波の発振側(マイクロ波電源6)への影響を防止するアイソレータ(図示せず)と、複数の波動調整部材を各々出入りさせることにより電波の波動的な不整合量を調整して放電管4に電波を収束させるチューナ(図示せず)とが設けられている。
ここで、マイクロ波の発生動作について説明する。マイクロ波電源6は、内部に収容されたマグネトロンを駆動して所定周波数の電磁波を放射する。この電磁波の伝播現象は電磁波に関するマクスウェルの波動方程式を解くことによって特性が把握され、本実施形態の場合には伝播方向に電界成分を持たない電磁波TE波として伝播する。
方形導波管5の終端側には2重の管状導体からなる偏平導波管28が設けられている。この偏平導波管28の環状空洞には、方形導波管5を伝播する電磁波、管端で反射する電磁波のアンテナ3cによる結合作用により、進行方向に電界成分を持つTM波が生じる。
電磁波の波動の伝播に関する2次以上の高調波に起因する微妙な調整はチューナ(図示せず)で調整される。
図1に示すように、放電管4は、内管4aと外管4bとから構成され、キャビティ(空洞共振器)3の中心軸に対して同軸となるように配置されている。キャビティ3は、外側導体3bと、それよりも小径の内側導体3a(アンテナ3c)とから構成され、方形導波管5の終端部近傍において当該方形導波管5に連通した状態で垂直方向に延びるように接続されている。内側導体3aは、方形導波管5の上部に固定された状態で石英製の放電管4を囲繞しつつキャビティ3の下方に向けて延在している。
図2には、放電管4、及びキャビティ3の位置関係が示されている。同図からわかるように、方形導波管5(図1参照)の終端に接続された偏平導波管28の下方にキャビティ3が接続されている。キャビティ3は、内側導体3aと外側導体3bとを備えている。内側導体3aは、放電管4の外周に対して所定間隔を開けた状態で下方に延在しており、この下方に延在する部分がアンテナ3cとされている。外側導体3bの下方には、キャビティ3の下端を画成する下端板(下流側端板)3dが設けられている。これら外側導体3b及び下端板3dが内側導体3aを囲うようにして内部に環状空洞部を形成している。
キャビティ3は、マイクロ波の空洞共振器として用いられるものである。このキャビティ3の下端板3dには、その中央部に貫通孔3eが形成されており、この貫通孔3eを貫くように放電管4が配置されている。
図1に示すように、放電管4の下方(下流側)には反応管2が設けられている。反応管2は、その上部に反応容器25を備えており、この反応容器25の内部で、有機ハロゲン性ガスの分解反応が主として行われる。反応容器25の内面には耐蝕性材料26が設けられている。耐蝕性材料としては、分解副次生成物として発生する水素化ハロゲンガス(HF)等の腐蝕性ガスに対して耐蝕性を有する材料が用いられ、具体的には、アルミナ、シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ボロン、炭化珪素、酸化カルシウム、またはこれらを含む混合物質を混練焼成などして得られるキャスタブルが好適である。
排ガス処理タンク1は、有機ハロゲン化合物を分解した際に生成されて吹込管8から吹き出される酸性ガス(フッ化水素および塩化水素)を中和して無害化するために設けられたものであり、水に水酸化カルシウムを加えたアルカリ液9が収容されている。
また、排ガス処理タンク1には、オーバーフローしたアルカリ液9を排出するための排出口24が設けられている。
有機ハロゲン化合物を含むガス、エア、および水蒸気は、被処理ガス供給装置7から、バルブ16を介して放電管4の外管4b内に供給されるようになっている。さらに、放電管4の外管4b内には、アルゴンガス供給装置15からバルブ18を介してアルゴンガスが供給されるようになっている。
アルゴンガスは、熱プラズマを初期形成するために、熱プラズマの発生に先立って着火を容易にするために供給されるものである。なお、アルゴンガスに代えて、ヘリウム、ネオン等の希ガスを用いてもよい。
エアは、系内に残存する水分を除去して着火の安定性を高めるために、また、系内に残存するガスを排出するために供給される。水蒸気は、フロンガスの分解に用いられる。
以上の構成からなる有機ハロゲン化合物放電分解装置において、有機ハロゲン化合物を分解する手順について説明する。バルブ16,17,18の開閉動作および高電圧パルス電源14の点火動作は、コントローラ(図示せず)によって制御される。
被処理ガスである有機ハロゲン性ガスや水蒸気を供給する前に、まず、系内に残留する水分の除去を目的として加熱されたエアを所定の時間供給することにより、分解装置の操業を開始する。
エア供給停止後、着火の安定性向上を目的として、バルブ18を開き、アルゴンガスの供給を開始する。
そして、アルゴンガス供給中に、マイクロ波電源6を動作させてマイクロ波を発振して着火電極13による着火を行う。これにより、熱プラズマ27が初期生成される。
そして、被処理ガス供給装置7のバルブ16を開けて、水蒸気およびフロンガスを放電管4内に供給し有機ハロゲン性ガスの分解を行う。その後、バルブ18を閉じ、アルゴンガスの供給を停止する。
有機ハロゲン性ガスの分解運転中において、被処理ガスである有機ハロゲン性ガスは、放電管4内に形成された熱プラズマ27によって分解反応が促進され、反応容器25において分解反応が行われる。反応容器25では、ガス供給装置11から酸素を含むガスが供給され、例えば一酸化炭素が二酸化炭素へと酸化される。
この際に、反応容器25を流れるガスの温度(より具体的には反応容器25出口部におけるガス温度)が600℃以上1100℃以下となるように運転する。この温度制御は、ガス流量と放電電力を調整することによって実現される。また、反応容器25の長さを変更して温度調節することとしても良い。
分解後の酸性ガスは、アルカリ液9へと導かれ、ここで中和される。炭酸ガス等を含む残りのガスは排気処理装置10を経由し大気放出される。
分解運転の停止後は、安全性を確保することを目的として掃気ガスとしてのエアを所定時間供給し、残留酸性ガスをパージする。パージされた酸性ガスは排ガス処理タンク1内で中和される。その後、パージを停止して有機ハロゲン化合物放電分解装置の操業を終了する。
以上説明したように、本実施形態によれば、反応容器25の内面に耐蝕性材料26を設けることとしたので、腐蝕性を有する分解ガスに対する耐蝕性を高めることができる。これにより、腐蝕性を有する分解ガスを反応容器25内に重点的に流す構成を採用することができ、放電管4の腐蝕損傷を抑えることができる。したがって、放電管4の材料として、石英ガラス等の耐蝕性が多少劣るが入手やコストの点で有利な材料を採用することができる。
また、反応容器25を流れるガスの温度が600℃以上1100℃以下となるように運転することとしたので、分解率を高く維持できるとともに、反応容器25の腐蝕を抑制することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法にかかる第2実施形態について図3を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態に係る有機ハロゲン化合物放電分解装置は、図3に示すように、放電管4の下流端とキャビティ下端板3dとの距離L1(m)が、次のように設定されている。
つまり、放電管4内を流れるガスの平均流速をv(m/s)とした場合、L1が0以上4.7×10−3・v(m)以下となるように、放電管4の下流端の位置が設定されている。
ここで、v=(被処理ガスの単位時間当りの供給量(m/s))/(放電管4のガスが流れる流路断面積(m))である。
このような構成としたので、分解副次生成物として生成される水素化ハロゲンガス(HF)などの腐蝕性ガスが生成される前に放電管4外に分解ガスを下流側に放出することができる。
つまり、有機ハロゲン化合物は、数千℃以上の熱プラズマ中にて有機物原子(分子)とハロゲン原子分子に分解された後、温度がある程度低下した領域で水素化ハロゲンガス(HF)などが生成されるので、高温プラズマ領域が維持される範囲で放電管4の下流端を短くすることにより、放電管の存在領域に腐蝕性ガスが存在しないようにしたものである。これにより、放電管4の腐蝕損傷が抑制することが可能となる。
このように、本発明者らは、放電管の腐蝕損傷の抑制効果が期待できるキャビティ下端板3dと放電管下流端までの距離L1(m)について、放電管内を流れる被処理ガスの平均供給流速v(m/s)に対して、0以上4.7×10−3・v(m)以下の関係が成り立つ範囲が適正であること実験的に見出した(後述の実施例参照)。
[第3実施形態]
次に、本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置およびその方法にかかる第3実施形態について図4を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、反応容器25に着脱管(着脱部材)28が設けられている。この着脱管28は、管形状とされており、反応容器25の上端(上流側)から反応容器25に差し込むことによって装着されるようになっている。
着脱管28の形状としては、図7に示されているように、反応容器25の上端に対して嵌合する顎部が上部に設けられたスリーブ形状(図7(a)参照)、反応容器25の延在方向にわたって設けられた短管(図7(b)参照)、上端が反応容器25の外方(上方)に突出する延長部が設けられた延長管(図7(c)参照)といった形状を採用することができる。
着脱管28は、分解副次生成物として発生する水素化ハロゲンガス(HF)等の腐蝕性ガスに対する耐蝕性を有する耐蝕性材料で構成されており、耐蝕性材料としては、アルミナ、シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ボロン、炭化珪素、酸化カルシウムから選ばれる1種類以上を主成分とするセラミックス、または、ハステロイ、インコネル、インコロイ、ニモニック、ユーディメット、ハインズ等の超合金、またはSUS316、SUS317、SUS347から選ばれるステンレス鋼が用いられる。
このように、反応容器25に対して着脱可能とされた着脱管28を耐蝕性材料で構成することとしたので、着脱管28を取り外して新品の着脱部材28に取り替えることによって容易にメンテナンスすることができる。また、反応容器25の上流側といった腐蝕の進行が激しい部分に着脱管28を配置すれば、反応容器25の一部分である着脱管28だけの交換でメンテナンスを完了することができる。
また、着脱管28の形状を管形状とすることとしたので、反応容器25の上方から挿入するだけで装着が可能となり、着脱作業が簡便となる。
なお、図6に示すように、反応容器25および放電管4の外周に冷却配管29,30を設けるようにしてもよい。このようにすれば、放電管4および反応容器25の外周を常温に維持して高温になることを防ぐので、放電管4および反応容器25の内部を高温に維持することができる。これにより、所望の反応容器内温度で安定運転することが可能となり、有機ハロゲン性ガスの分解効率を向上させることができる。
また、以上の各実施形態は、それぞれで本発明の作用効果を奏することはもちろんであるが、これに限らず、適宜各実施形態を組み合わせた構成としてもよい。
(第1実施例)
反応容器25の内面に配置する耐蝕性材料26として、Al2O363%、SiO231%、バインダからなるセラミックス系キャスタブルを採用した。
このセラミックス系キャスタブルは、以下のように製造される。
ミキサー内に原料混合粉体(旭硝子セラミックス製CLC-A649−RE)を導入した後、適量の水を添加し、3〜4分間混練する。
混練後、排出口よりミキサー内の混練物を取り出す。
反応管25として用いられるSUS304製の円筒管内に、その外周面によってキャスタブルの内周面を規定する軸棒を配置する。これら円筒管と軸棒間に混練物を流し込む。
この状態で、24時間以上放置養生する。
25〜50℃/hの温度上昇率で約400℃まで昇温し、混練物を乾燥させる。
その後、円筒管内の軸棒を除去する。これにより、円筒管内にセラミックス系キャスタブルが配置される。
放電管4として外径φ15mm×内径φ10mmの石英管を、セラミックス系キャスタブル層を有する反応容器25として、外径φ100mm×内径φ90mmのSUS304製円筒管の内面に、肉厚30mmを有する上述のアルミナキャスタブルを配置した円筒管を用い、着火時にArガス(20〜40SLM)を流入してプラズマ着火させた後、N2/CF4/エア=20〜40SLM/0.2〜0.4SLM/1〜10SLMの条件にて水蒸気を適量混合し、マイクロ波電力3kWにてCFガス分解処理を実施した。CFガス分解評価は、処理後の排出ガスを同時にサンプリングし、ガス中のCF濃度をFT−IR(赤外吸光分光法)を用いて分解率を求めた。
ここで、放電管の終端位置を、マイクロ波キャビティの終端から下端側に5mm(L1=5.9×10-4v〜1.2×10-3v相当)の位置に設定し、アルミナキャスタブルを有する反応容器の位置を、放電管の終端から下端側に10mmの位置に設定した。
その結果、連続20時間放電分解した際に、石英放電管にHF腐蝕による白濁損傷はなく、またアルミナキャスタブルを有する反応容器にも損傷無い状態にて、CF分解率90〜95%で安定した分解運転を行う事が出来た。
次に、マイクロ波電力を変化させてCFガス分解処理を実施した。アルミナキャスタブルを備えた反応容器25の長さは200mmとした。そして、同時に反応容器25出口部でのガス温度を測定した。
表1に結果を示す。
Figure 0003622965
表1から、ガス温度が450℃(ケース1)、500℃(ケース4)ではCF分解率が80%以下であるが、600℃以上(ケース2、3)では反応容器が腐蝕する事なく分解率90%以上を得ることが出来た。また、ガス温度が1150℃(ケース5)では、分解率90%以上であるが、反応容器の一部腐蝕が発生した。このように反応容器出口のガス温度を600〜1100℃の範囲で制御すれば、反応容器の腐蝕とCF4の高分解率とが両立できる。
(実施例2)
放電管4として外径φ15mm×内径φ10mmの石英管を、セラミックス系キャスタブル層を有する反応容器25として、外径φ100mm×内径φ90mmのSUS管の内面に肉厚30mmを有する実施例1で用いたアルミナキャスタブルを配置した円筒管を用い、着火時にArガス(20〜40SLM)を流入してプラズマ着火させた後、N2/CF4/エア=20〜40SLM/0.2〜0.4SLM/1〜10SLMの条件にて水蒸気を適量混合し、マイクロ波電力3kWにてCFガス分解処理を実施した。CFガス分解評価は、処理後の排出ガスを同時にサンプリングし、ガス中のCF濃度をFT−IR(赤外吸光分光法)を用いて分解率を求めた。
ここで、放電管4の終端位置を、マイクロ波キャビティの終端から下端側に5mm(L1=5.9×10-4v〜1.2×10-3v相当)の位置に設定し、セラミックス系キャスタブル層を有する反応容器25の位置を、放電管4の終端から下端側に10mmの位置に設定した。
さらに、反応容器25内部に、外径φ28mm×内径φ18mm×長さ150mmのハステロイからなる着脱管28を挿入設置した。
その結果、連続20時間放電分解した際に、石英製の放電管にHF腐蝕による白濁損傷はなく、またアルミナキャスタブルを有する反応容器25及び着脱管28にも損傷無い状態にて、CF分解率90〜95%で安定した分解運転を行う事が出来た。
なお、着脱管28の材料として窒化珪素を用いた場合にも同様に、損傷がみられなかった。
本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置の第1実施形態を示す概略図である。 放電管およびキャビティ下端板の位置関係を示した断面図である。 本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置の第2実施形態を示す概略図である。 本発明の有機ハロゲン化合物放電分解装置の第3実施形態を示す概略図である。 着脱管の変形例を示した断面図である。 上記第3実施形態の変形例を示す概略図である。 従来の有機ハロゲン化合物放電分解装置を示した概略図である。
符号の説明
2 反応管
3 キャビティ(空洞共振器)
3d キャビティ下端板
4 放電管
25 反応容器
26 耐蝕性材料

Claims (4)

  1. 有機ハロゲン化合物を含むガスが流されるとともに、内部でマイクロ波による熱プラズマが形成される放電管と、
    該放電管の下流側に配置され、前記有機ハロゲン化合物の分解反応が行われる反応管と、
    前記放電管を囲繞するように配置され、前記放電管の電界分布を決定する空洞共振器と、を備え、
    有機ハロゲン化合物を熱プラズマによって分解する有機ハロゲン化合物放電分解装置において、
    前記反応管の内面には、耐蝕性材料が設けられ
    前記放電管の下流端は、前記空洞共振器の下流端部を規定する下流側端板の下流側であって、前記放電管内を流れるガスの平均流速をv(m/s)とした場合、前記下流側端板から0以上4.7×10 −3 ・v(m)以下の位置に設定されていることを特徴とする有機ハロゲン化合物放電分解装置。
  2. 有機ハロゲン化合物を含むガスが流されるとともに、内部でマイクロ波による熱プラズマが形成される放電管と、
    該放電管の下流側に配置され、前記有機ハロゲン化合物の分解反応が行われる反応管と、
    前記放電管を囲繞するように配置され、前記放電管の電界分布を決定する空洞共振器と、を備え、
    有機ハロゲン化合物を熱プラズマによって分解する有機ハロゲン化合物放電分解装置において、
    前記反応管の内面には、耐蝕性材料が設けられ
    前記耐蝕性材料は、前記反応管に対して着脱可能とされた着脱部材の内面に設けられていることを特徴とする有機ハロゲン化合物放電分解装置。
  3. 前記着脱部材は、管形状とされていることを特徴とする請求項に記載の有機ハロゲン化合物放電分解装置。
  4. 前記耐蝕性材料は、アルミナ、シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ボロン、炭化珪素、酸化カルシウムから選ばれる1種類以上を主成分とするセラミックス、
    ハステロイ、インコネル、インコロイ、ニモニック、ユーディメット、ハインズ等の超合金、または、
    SUS316、SUS317、SUS347から選ばれるステンレス鋼とされていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の有機ハロゲン化合物放電分解装置。
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