JP3622218B2 - 新規シリコーン化合物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なオルガノポリシロキサンとその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シランカップリング剤はガラス強化FRP用途に1947頃より実用化されダウコニング社のプルードマン(E.P.Plueddemane)等により応用展開がはかられたシラン化合物である。現在でも主として熱硬化樹脂とフィーラ間に作用して耐熱水強度向上や電気特性のダウンを抑えるバインダーとして広く使用されている。
最近では、強度向上目的以外に繊維処理剤としてヌメリ感や反発弾性を与える薬剤としての使い方やプラスチックマグネット製造時に添加されて配向性と強度向上目的で使われている。またビニルシランカップリング剤ではポリエチレンの簡便な架橋剤として電線被覆に適応されている。
3−グリシドキシプロピル基を有するシランカップリング剤はエポキシ樹脂コンパウンドに添加されてIC封止剤の特性維持に効果的に使われたり、プラスチックレンズの染色タイプのハードコート剤にも使われている。
他方、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランのシランカップリング剤はガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂複合材(FRP)のバインダーとして無くてはならない物である。また、アクリル樹脂シリカ配合人造大理石の製造にも必要不可欠なカップリング剤として利用されている。
最近発表された共加水分解物にはテトラメトキシシランと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが試作されているが、本発明とは異なってアルコキシ基を相当量残した極低粘度のオイルである。これは、いわゆるポリマー化シランカップリング剤としての展開を模索するものであり、構造的にも機能的にも全く似て否なるものである。また、従来ポリメチルシロキサン主鎖にペンダントとしてアルコキシ基を持たせたものも提案されているが、いずれも有機樹脂との相溶性の問題が大きなネックとなり応用展開がはかられないままである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では従来より提案されてきた残留アルコキシ基を利用するのでなく、架橋性、反応性に富み、かつ常温では安定なシラノール基を含み三次元構造を含む3−グリシドキシプロピル基官能性のポリシロキサンを提供する。このシラノール基はメチル系ポリマーとの縮重合やポリシロキサン架橋による硬化物を得る事も可能である。含有するエポキシ基は勿論通常のポリマー化反応をさせる事が出来るし、エポキシ樹脂との良相溶性から従来のポリシロキサンでは出来なかった均質なポリマー化が出来るので新たな需要を創設可能である。また、含有するメタクリロキシ基はPMMA等メタクリル樹脂との共重合が可能で、本発明化合物の相溶性の良さから従来のポリシロキサンでは出来なかった均質なポリマー化が出来るので新たな需要を創設可能である。メタクリロキシプロピル基を有するSCAとグリシドキシプロピル基を有するSCAはそれ単独でもメチル系変性シリコーンオイルに比べ同等ないし若干高価である、これらを原料として製されるマルチファンクショナルなポリオルガノシロキサンは有機官能基含有率が高く、また価格も高くなる。そこで、有機官能基の含有率を薄めかつ低廉化が必要である。テトラアルコキシシランとオルガノ官能性アルコキシシランカップリング剤の共加水分解でアルコキシ基を残留させず、シラノール基に変換させる為にはシランのモル数の少なくとも3倍モルの水、好ましくは3.5倍モル以上の水を反応させる必要がある。この為には使用する親水性溶媒は添加される水を充分溶解し得る量が必要である。かかる条件を満たしS520の如く酸触媒のみでは加水分解が長期間かかるシランカップリング剤では有機錫化合物の様な縮合触媒を添加する事で解決し得る事を見いだした。本発明に関わる反応原料の内の正珪酸エチルはこれ単独での加水分解速度は常温で20分以内にモノマー消失する早さであるが、S520との混合で加水分解をスタートさせると著しい遅延反応が生じる。また、反応原料の内の3−メタクリロキシトリアルコキシシランもこれ単独での加水分解速度は常温で30分以内にモノマー消失する早さである。これら原料の違いによる加水分解速度の違いを克服する方法として加水分解速度の早い原料から逐次三段階に分けて反応させる逐次三段加水分解縮合方法あるいは、原料混合により著しい加水分解の遅延を生じる組み合わせを避けた二段加水分解縮合方法を考案して課題を解決した。本発明では、メタクリロキシプロピル基を有するSCAとグリシドキシプロピル基を有するSCAに、更にこれらSCAに比べて低廉なテトラアルコキシシランを組み込む事で化学的に活性なシラノール基を増やすと共にコスト低減を計った。以上の記述から明らかなように、本発明の目的は上述の課題が解決された新規なオルガノポリシロキサンとその製造法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)ないし(5)の構成を有する。
(1)一般式Si(OR1 )4 で示されるテトラアルコキシシランと一般式化4【化4】
で示される3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン及び一般式化5
【化5】
で示される3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランを有機錫縮合触媒を含む混合溶剤中にて酸触媒にてシラン総モルの3〜4倍モルの水で共加水分解、縮合反応せしめる事を特徴とする常温で安定なるシラノール基と3−グリシドキシプロピル基及び3−メタクリロキシプロピル基を併せ持つオルガノポリシロキサンの製造法。(ここでアルキル基RはC1 〜C8 の飽和炭化水素基である。アルコキシ基OR 1 及びOR 2 はC 1 〜C 8 の飽和アルコールより、OR 3 はC 1 〜C 8 の飽和アルコールまたはセルソルブより製造したものである。)
(2)次に示す下式化6
【化6】
の常温でオイル状態のブロックコポリマーであるオルガノポリシロキサン。ただし、シラノール基のxは2.0から0.5の範囲の値であって、かつシラノール基のyは0.0から1.5の範囲の値であって、ポリマー末端基はシラノール基であり、アルキル基RはC1 〜C8 の飽和炭化水素基であり、m,n,lはそれぞれ3以上の正の整数である。
(3)前記第(1)項においてテトラアルコキシシラン/3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン/3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランの共加水分解、縮合反応に先だって、テトラアルコキシシランを触媒量の酸触媒及びシラン総モルの3〜4倍モルの水を加えて加水分解させた後に、所定モル比の3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランを添加して加水分解させ、更に触媒量の有機錫縮合触媒と所定モル比の3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランを加えて共加水分解縮合反応せしめる逐次三段加水分解縮合方法による前記第(1)項記載のオルガノポリシロキサンの製造法。
(4)前記第(1)項においてテトラアルコキシシラン/3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン/3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランの共加水分解、縮合反応に先だって、テトラアルコキシシランを触媒量の酸触媒及びシラン総モルの3〜4倍モルの水を加えて加水分解させた後に、触媒量の有機錫縮合触媒と所定モル比の3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランと3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランを加えて共加水分解縮合反応せしめる二段加水分解縮合方法による前記第(1)項記載のオルガノポリシロキサンの製造法。
(5)テトラアルコキシシランがテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランであり、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランが3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランまたは3−メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シランであり、3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランが3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランである前記第(1)項記載のオルガノポリシロキサンの製造法。
【0005】
本発明の構成と効果につき以下に詳述する。
本発明は、一般式化7
【0006】
【化7】
【0007】
で示される3−メタクリロキシプロピル基と3−グリシドキシプロピル基及び常温で安定なシラノール基を0.5〜2.0個含むオルガノポリシロキサン化合物の製造方法に関するものである。(ここでx,y,l,m及びnは、上述の場合と同様である。)本発明の構成成分であるテトラアルコキシシラン(A)モルと3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン(B)モル及び3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン(C)モルの仕込モル比が(A)/(B)=1.0以下であり、かつ(C)/(B)=2.0以上、6.0以下で反応させた場合には生成したオルガノポリシロキサン化合物は常温で単離するとオイル状態を呈する。(A)/(B)/(C)=1/1/1の様な場合には、常温で樹脂状固形物が得られ、(A)/(B)/(C)=1/1/6の様な場合には常温で一部ゲルを含むオイルが得られる。テトラアルコキシシランとしてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン等が挙げられるが加水分解速度とSi含有率から判断してテトラメトキシシランあるいはテトラエトキシシランが有利に使用される。すなわち、テトラエトキシシラン(多摩化学社製正珪酸エチル)等の市販品が利用出来る。一方、3−メタクリロキシプロピル基を持つトリアルコキシシランカップリング剤としては、アルコキシ基はC1 〜C8 の飽和アルコールより製造したもの、またはセルソルブより製造したものが適当で、特に好適にはその加水分解速度よりメトキシ基またはメトキシエトキシ基が挙げられる。すなわち3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ株式会社製サイラエースS710)や3−メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン(ヒュルス・アメリカ製M8558)等の市販品が利用出来る。
【0008】
他方、3−グリシドキシプロピル基を含むジアルコキシのシランカップリング剤ではアルキル基RはC1 〜C8 の飽和炭化水素基が適応されるが、特に好適にはC1 〜C2 の飽和炭化水素基が使用出来る。2つのアルコキシ基もC1 〜C8 の飽和アルコールより製したものが適当で、特に好適にはその加水分解速度よりメトキシ基あるいはエトキシ基が挙げられる。すなわち3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(チッソ株式会社製サイラエースS520)や3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学社製CFシランKBE402)等の市販品が利用出来る。
【0009】
次に加水分解触媒としての酸であるが、触媒量の酸があればよく酸濃度は特に規定しない。例えば希釈した酸を規定量の水の分だけ添加する方法もある。酸の種類としては酢酸等の有機酸や塩酸、硫酸等の無機酸あるいは強酸性イオン交換樹脂のいずれも使用出来るが好ましくは加水分解速度の早い無機酸が推奨される。
【0010】
シラノール縮合触媒として作用する広範な種類の物質のいずれもが本発明に用いる事が出来る。かかる物質には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、の様な有機錫化合物、あるいはナフテン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸及びナフテン酸コバルトの如き金属カルボキシレート、チタニウムエステル及びキレートが挙げられる。好ましい化合物は有機錫化合物で特に錫カルボキシレート、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテートがある。
縮合触媒量は触媒量であれば特に規定しないが一般的にはシラン総量の0.05%以下で行われる。
【0011】
加水分解を充分行わせる為の水の量はシラン総モルに対して3〜4倍モル、好ましくは3.5倍モル以上の添加が必要である。反応溶媒としては親水性溶媒単独でもよいが、親水性溶媒の混合溶媒や親油性と親水溶媒の混合溶媒も適応出来る。例えば、メタノール、エタノール、アセトン、ターシャリブタノール、ジアセトンアルコール等の親水性溶媒、あるいはキシレン/アルコール、トルエン/アルコール等の混合溶媒も使用できる。
【0012】
本発明によるオルガノポリシロキサンの製造では逐次三段加水分解縮合方法ないし二段加水分解縮合方法が発明の重要な位置を占めている。すなわち、正珪酸エチルの如きテトラアルコキシシランは単独で酸触媒下に加水分解するとガスクロマグラフィー(GC)でのチェック方法で測定すると室温で十数分でモノマーが消失する、また、S710の如きトリアルコキシシランもその加水分解速度は比較的早く、常温で20分程でモノマーとオリゴマー成分が消失する。
一方S520の如きジアルコキシのシランカップリング剤は加水分解時間がテトラアルコキシシランに比べ著しく長く2日間で40%弱が加水分解したに過ぎない程である。これを早めるには前記した縮合触媒添加が有効である事を見いだした。しかしながら、正珪酸エチルとS710及びS520を混合一括仕込にて共加水分解縮合反応を行おうとした場合、縮合触媒なしの条件下で正珪酸エチルの加水分解には数日間を要する著しい遅延が生じる。勿論S520の加水分解も遅い。縮合触媒添加するとS520の加水分解は促進されて数時間で加水分解する、しかしやはり正珪酸エチルは3日後でも仕込の約40%が残存する遅さである。何故この様な大幅な反応遅延が起こるのかは不明である。
本発明ではかかる事実にかんがみ、正珪酸エチルを酸触媒下に規定量の水で加水分解後に規定モルのS710を添加して共加水分解縮合反応せしめる。更に縮合触媒と規定モルのS520を加えて共加水分解縮合反応せしめる。このような逐次三段加水分解縮合反応によれば室温条件にて3〜5時間で反応を完結出来る。
あるいは、正珪酸エチルを酸触媒下に規定量の水で加水分解後に縮合触媒と規定モルのS710とS520を加えて共加水分解縮合反応せしめる。この二段加水分解縮合反応によれば室温条件にて1日以内に反応を完結出来る。従って、逐次三段加水分解縮合方法あるいは二段加水分解縮合反応方法でのポリマーの構造形態はブロックコポリマーをとる事が予想される。
【0013】
更に本発明では共加水分解縮合反応させたオルガノポリシロキサンを常温にて安定なシラノール基を有し、仕込モル相当のエポキシ酸素量と仕込モル相当のメタクリレートを持つ新規化合物を単離する事に成功した。単離には使用した有機溶媒を低温で親水性溶媒、中温で親油性溶媒及びこれら溶媒の水共沸混合物として留去せしめる。残った水を除くためにバス温140〜150℃で加熱乾燥する。
【0014】
本発明で得られたオルガノポリシロキサンオイルの溶解性の測定はガラスサンプル管に本発明のシリコーンオイルサンプル100mgを採り、これに1mlの各溶媒を加えて肉眼観察により溶け易さを判定する方法で行った。その結果は易溶、溶解、微溶(微白濁)、難溶(白濁)、不溶の5段階表示で行った。本発明によるオルガノポリシロキサンオイルはトルエン、アルコール等の多くの溶剤に溶ける。この特性はメチル系シリコーンオイルに無い性質である。
【0015】
本発明のオルガノポリシロキサンは一般に次の(a)〜(d)の様な手段で上記一般式で示されるものである事を確認出来る。
(a)赤外吸収スペクトル(IR)の解析
3450cm−1付近のSi−OHの特徴的吸収、3000cm−1〜2900cm−1付近のCH結合に基づく数本の吸収、1100cm−1〜1000cm−1付近のSi−O−Siのブロードな吸収が現れる。3450cm−1付近の吸収ピークと2940cm−1付近の吸収ピークとの吸光度(logI0 /I)比はシラノール基含有率の相対値の指標となる。すなわち、この値が1.0以下であれば常温で安定なシラノール基を有したオイルである。この値が1.0以上では数十℃の加熱で樹脂状態の固体を呈するオルガノポリシロキサンポリマーである。
(b)1 H−核磁気共鳴スペクトル(1 H−NMR)
本発明のオルガノポリシロキサン中の水素原子の個数や結合様式、更に重水素置換により(Si)−OHである確認、水素原子の比から(Si)−OHの個数を知る事が出来る。後述の実施例1で得られたオルガノポリシロキサンの構造式とシグナルの関係は下記化8と表1の如くである。
【0016】
【化8】
【0017】
【表1】
【0018】
(c)エポキシ酸素量の定量
オキシラン酸素の定量はHBr−酢酸の滴定法により求める。
(d)炭素、水素(CH)元素分析
ミクロ元素分析法により炭素、水素含有率を知る事が出来る。
【0019】
粘度データーの測定は東京計器(株)製回転粘度計‘VISCONIC’を用いて25℃恒温で行った。本発明の実施例1〜実施例3のオルガノポリシロキサンでは粘度は約500cp〜8000cpの範囲で正珪酸エチル+S710のモル数の和に比例的に変化した。すなわち正珪酸エチル+S710のモル数の和が高い程粘度が高くなる。これとは逆の関係が赤外吸収(IR)で観察された、すなわちシラノールに基づく3450cm−1吸収ピークとC=CCOO−に基づく1720cm−1吸収ピークの強度につきlogI0 /I吸光光度で両ピークの比をとってモル比との関係をプロットすると正珪酸エチル+S710の和が多くなるにつれて相対シラノール量は小さくなっている。これは本来、三次元の立体構造性の正珪酸エチル成分とS710成分が多くなり、線状ポリマー成分であるS520成分が相対的に減るのであるから粘度上昇とシラノール基の増加をもたらすはずである。しかしながら何故かS520の相対モル比が67%以上ではシラノール基の増大とゲル化が起こる。この原因は不明である。
また、NMR測定結果でのシラノール基数x+yは2.0以下である。
【0020】
本発明の逐次三段加水分解縮合反応方法あるいは二段加水分解縮合反応方法による製造方法では、一段目の正珪酸エチル単独での加水分解反応によりGC測定でモノマー及びオイゴマーが検出されない事から少なくも5量体以上のオリゴマ−ブロック形成しているものと推察される。逐次三段法あるいは二段法での最終反応で上述の粘度、シラノール挙動からしてブロック状コポリマーであると考察される。
【0021】
【発明の効果】
本発明のオルガノポリシロキサンは、後述した実施例において証明されている如く、ポリマー中に常温にて安定なシラノール基をテトラアルコキシシランと3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン及び3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランの逐次三段加水分解縮合反応法あるいは二段加水分解縮合反応法により有し、かつ仕込み原料の有機官能基であるエポキシ基及びメタクリロキシ基を有するマルチファンクショナルな反応性ポリオルガノシロキサンである。そして、この2つの有機官能基の比率は仕込み原料比でかなり自由に変える事が出来る。
本発明のポリオルガノシロキサンは大抵のメチル系ポリシロキサンが有機溶媒や有機樹脂に溶解ないし親和性を持つていないのに対して本発明のオルガノポリシロキサンは多種類の有機溶媒に溶解する。また多種類の有機樹脂に親和性を示す。
これら特徴より変性シリコーンオイルとしての用途は勿論、その他離型剤、剥離紙用シリコーン、パーソナルケア用シリコーン、塗料添加剤、シリコーン粘着剤、接着シール材、変性シリコーンシラント他広範囲の用途に展開出来る有用な化合物である。また、2種類以上のポリマーで構成されるポリマーアロイやブレンドに於いて、異種樹脂同志の界面に作用して混練を容易ならしめたり、ポリマー間のカップリングも期待される。
本発明を更に具体的に説明する為に以下実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
シラノール基含有ポリシロキサン−3−メタクリロキシプロピルポリシロキサン−3−グリシドキシプロピルメチルポリシロキサン共重合オイルの合成
正珪酸エチル/S710/S520=1/2/2(モル)
1Lの三口フラスコに多摩化学社製の正珪酸エチル52gを採り、反応溶剤としてトルエン/メタノール=60/40の混合溶媒500mlを加える。加水分解触媒として塩酸を触媒量と3.5倍モルの水76mlを加えて常温下に30分間攪拌反応せしめる。ガスクロマトグラフィー(GC)にて正珪酸エチルのピークの消失を確認する。チッソ社製S520の110gとS710の124g、縮合触媒としてジブチル錫ジラウレートの0.05gを添加し、常温にて攪拌下に3〜5時間加水分解縮合反応させる。GCにてS710とS520及びこれのオリゴマーピーク消失を確認して反応終了とする。真空ポンプにて減圧、室温で強攪拌下にメタノール及び共沸溶剤を留去する。40℃以下に加温して減圧度を高めて強攪拌下で残留トルエン及び塩酸を含む水を留去せしめる。こうして得られた油状オルガノポリシロキサンは119gで理論収率の98%、無色透明粘性液体、オキシラン酸素含有4.1%、C44.1%、H7.0%であった。下記の仮定計算の入った実験式での計算値、オキシラン酸素4.2%、C44.5%,H6.9%、O29.9%、Si18.6%によく一致した。粘度は7,960センチポイズ(25℃)であった。IRチャート及びNMRチャートを図1、図2に示した。IR及びNMRの結果解析より得られた油状オルガノポリシロキサンの構造式は以下の化9の如くであり、示性式はC28H51.8O15.9Si5 、但しx+2y=1.77でありxとyがそれぞれ0.59と計算上仮定した場合。
【0023】
【化9】
【0024】
前記、3450cm−1付近の吸収ピークと1720cm−1付近の吸収ピークとの吸光度(logI0 /I)比は0.37であった。
【0025】
実施例2
シラノール基含有ポリシロキサン−3−メタクリロキシプロピルポリシロキサン−3−グリシドキシプロピルメチルポリシロキサン共重合オイルの合成
正珪酸エチル/S710/S520=1/2/4(モル)
実施例1と同様に二段加水分解縮合反応にて製造する。但し仕込量は正珪酸エチル1.04g、トルエン/メタノール=60/40の混合溶媒50ml、10分の1規定塩酸溶液2.20ml(一段目)、S520の4.40gとS710の2.48g及びジブチル錫ジラウレートの0.01g(二段目)5時間後、GCにてS520とS710のモノマーとオリゴマー消失確認する。反応終了後、乾燥窒素気流にて溶媒を揮散せしめる、次いで乾燥濾紙に分離した塩酸を含む水玉を吸収させる。ヘアードライヤーの熱風にて残留するトルエンを臭気がしない状態に揮散させてから120℃乾燥オーブン中に1時間入れて乾燥せしめる。こうして得られた油状オルガノポリシロキサンは無色透明粘性液体であった。粘度は770センチポイズ(25℃)であった。IRチャート及びNMRチャートを図3、図4に示した。なおNMRでメチレン基に重なった1.67ppmのシグナルがOHに基づく事の証明は図5に示した重水素置換により確認した。IR及びNMRの結果解析より得られた油状オルガノポリシロキサンの構造式は化7でn=1、m=4、l=2、x+2y=2.50であった。また、前記、3450cm-1付近の吸収ピークと1720cm-1付近の吸収ピークとの吸光度(logI0 /I)比は0.69であった。
【0026】
実施例3
シラノール基含有ポリシロキサン−3−メタクリロキシプロピルポリシロキサン−3−グリシドキシプロピルメチルポリシロキサン共重合オイルの合成
正珪酸エチル/S710/S520=1/1/4(モル)
基本的な操作は実施例2と同様であるが、反応方式は逐次三段加水分解縮合反応にて行った。仕込量は正珪酸エチル1.04g、トルエン/メタノール=60/40の混合溶媒50ml、10分の1規定塩酸溶液1.89ml(一段目)、20分後にGCにて正珪酸エチルのモノマーとオリゴマー消失を確認。S710の1.24gを添加してから30分後に同じくGCにてS710のモノマーとオリゴマー消失を確認(二段目)。S520の4.40gとジブチル錫ジラウレートの0.01g(三段目)を添加して5時間後、同じくGCにてモノマーとオリゴマーの消失確認した。反応終了後、乾燥窒素気流にて溶媒を揮散せしめる、次いで乾燥濾紙に分離した塩酸を含む水玉を吸収させる。ヘアードライヤーの熱風にて残留するトルエンを臭気がしない状態に揮散させてから120℃乾燥オーブン中に1時間入れて乾燥せしめる。こうして得られた油状オルガノポリシロキサンは無色透明粘性液体であった。粘度は670センチポイズ(25℃)であった。IRチャート及びNMRチャートを図6、図7に示した。なおNMRでメチレン基に重なった1.67ppmのシグナルがOHに基づく事の証明は図8に示した重水素置換により確認した。IR及びNMRの結果解析より得られた油状オルガノポリシロキサンの構造式は化7でn=1、m=4、l=1、x+y=1.98であった。また、前記、3450cm-1付近の吸収ピークと1720cm-1付近の吸収ピークとの吸光度(logI0 /I)比は0.68であった。
【図面の簡単な説明】
図1〜9は、本発明の実施例の説明図である。
【図1】実施例1の化合物のIRチャートである。
【図2】実施例1の化合物のNMRチャートである。
【図3】実施例2の化合物のIRチャートである。
【図4】実施例2の化合物のNMRチャートである。
【図5】実施例2の化合物のNMRチャートである。
【図6】実施例3の化合物のIRチャートである。
【図7】実施例3の化合物のNMRチャートである。
【図8】実施例3の化合物のNMRチャートである。
Claims (5)
- 一般式Si(OR1 )4 で示されるテトラアルコキシシランと一般式化1
- 請求項1においてテトラアルコキシシラン/3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン/3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランの共加水分解、縮合反応に先だって、テトラアルコキシシランを触媒量の酸触媒及びシラン総モルの3〜4倍モルの水を加えて加水分解させた後に、所定モル比の3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランを添加して加水分解させ、更に触媒量の有機錫縮合触媒と所定モル比の3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランを加えて共加水分解縮合反応せしめる逐次三段加水分解縮合方法による請求項1記載のオルガノポリシロキサンの製造法。
- 請求項1においてテトラアルコキシシラン/3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン/3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランの共加水分解、縮合反応に先だって、テトラアルコキシシランを触媒量の酸触媒及びシラン総モルの3〜4倍モルの水を加えて加水分解させた後に、触媒量の有機錫縮合触媒と所定モル比の3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランと3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランを加えて共加水分解縮合反応せしめる二段加水分解縮合方法による請求項1記載のオルガノポリシロキサンの製造法。
- テトラアルコキシシランがテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランであり、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランが3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランまたは3−メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シランであり、3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシランが3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランである請求項1記載のオルガノポリシロキサンの製造法。
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