JP3620094B2 - 氷蓄熱装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、氷蓄熱装置に係り、特に、製氷用の水を貯留した氷蓄熱槽内に配設された伝熱管の外周囲に氷を生成しておき、冷熱取出し時には、氷をその内側から融解するものにおける冷熱取出し効率の向上対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、空調システムその他工業用、農業用の冷却システム等への利用を目的として、例えば特開平6−159966号公報に開示されているような氷蓄熱装置が知られている。この種の氷蓄熱装置は、製氷用の水を貯留した氷蓄熱槽内に複数本の伝熱管が配設され、この伝熱管に冷媒の流通が可能とされ、この冷媒と水との間で熱交換を行って氷の生成及び融解を行う。つまり、氷の生成時には、伝熱管内で冷媒が蒸発しながら水を冷却して伝熱管の外周囲に氷を生成する一方、氷の融解時には、伝熱管内で冷媒が凝縮或いは過冷却されながら氷を融解して冷熱を取出す。これにより、例えば、夏期において、電力需要の少ない夜間に氷を生成しておき、電力需要の多い日中に氷を融解しながら冷熱を取出し、この冷熱を室内の冷房に使用することが行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の氷蓄熱装置の場合、図9に示すように伝熱管(a) の外周囲に生成された氷(b) を融解する冷熱取出し時には、氷(b) を、その内側から融解することになる。そして、この融解が進むにつれて、図10に示すように、伝熱管(a) 周囲の氷(b) の厚さ寸法が次第に小さくなっていく。また、この氷(b) の融解時には、該氷(b) の内面と伝熱管(a) の外面との間の融解水(c) の対流の影響等により、氷(b) の内面は均等に融解されず、部分的に融解が進むことになる(例えば氷(I) の上側部分の融解のみが促進する)。そして、この図10に示す状態から更に融解が進むと、図11に示すように、氷(b) の一部分が完全に融解された状態となり(この図11では上下両端部が完全に融解された状態である)、この状態では、各氷(b,b, …) は伝熱管(a) から離脱して蓄熱槽の上層部の水面に浮上してしまい、伝熱管(a) 内の冷媒と氷(b) との間での熱交換が十分に行われなくなってしまう。つまり、伝熱管(a) 内の冷媒によって取出される潜熱量が著しく低下してしまって、この氷(b) の冷熱を利用した冷房運転の能力が十分に得られなくなる。また、このような状態では、低温の氷(b,b, …) が水面付近に浮上したことにより、伝熱管(a) の周囲では、該伝熱管(a) 内の冷媒によって水が加温されて温度上昇し、再度製氷動作を行う場合の製氷負荷が大きくなる。つまり、この温度上昇した伝熱管(a) の周囲の水を顕熱変化させて氷点温度まで冷却せねば製氷を行うことができないため、製氷効率の低下に繋ってしまう。
【0004】
本発明は、この点に鑑みてなされたものであって、伝熱管の外周囲に生成した氷を、その内側から融解するようにした氷蓄熱装置に対し、冷熱取出し中に氷が伝熱管から離れて水面に浮上してしまうことを阻止することにより、高い冷熱取出し効率を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、伝熱管に氷の浮上を阻止する手段を設け、或いは複数の伝熱管の配設状態を改良することにより氷が水面へ浮上してしまうことを阻止するようにした。
【0006】
具体的に請求項1記載の発明は、氷の浮上を阻止する手段を伝熱管に一体的に設けたものであって、図1に示すように、製氷用の水を貯留する氷蓄熱槽(8) と、該氷蓄熱槽(8) 内に配置された伝熱管(9) とを備え、該伝熱管(9) 内を流通する流体と上記水との間で熱交換を行い、蓄熱時には、上記流体で水を冷却して伝熱管(9) の外周囲に氷(I) を生成する一方、冷熱取出し時には、上記流体により氷(I) を内側から融解するようにした氷蓄熱装置を前提としている。そして、上記伝熱管(9) の外周面に、冷熱取出し時に、氷(I) を伝熱管(9) の外周囲に保持する氷保持部材(15)を設けた構成としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の氷蓄熱装置において、図3に示すように、氷保持部材を、伝熱管(9) の外周面の複数箇所に取付けられ、伝熱管(9) の延長方向に対して略直交する方向に突出された線材で成る氷保持棒(15)とした構成としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、上記請求項2記載の氷蓄熱装置において、氷保持棒(15)を、伝熱管(9) よりも熱伝導率が低い材料により形成した構成としている。
【0009】
請求項4記載の発明は、複数の伝熱管の配設状態を改良して氷の水面への浮上を阻止したものである。具体的には、製氷用の水を貯留する氷蓄熱槽(8) と、該氷蓄熱槽(8) 内に配置された複数本の伝熱管 (9,9, ) とを備え、該各伝熱管 (9,9, ) 内を流通する流体と上記水との間で熱交換を行い、蓄熱時には、上記流体で水を冷却して各伝熱管 (9,9, ) の外周囲に氷(I) を生成する一方、冷熱取出し時には、上記流体により氷(I) を内側から融解するようにした氷蓄熱装置を前提としている。そして、上記各伝熱管 (9,9, ) を、夫々が水平方向に延長された状態で、互いに上下方向に所定間隔を存して配設すると共に、この上下方向で隣接する伝熱管 (9,9') を、その延長方向が互いに異なった状態となるように配設した構成としている。
【0010】
請求項5記載の発明は、上記請求項4記載の氷蓄熱装置において、上下方向に3段以上 の伝熱管 (9,9',9'' ) を配設し、各伝熱管 (9,9',9'' ) を、全ての伝熱管 (9,9',9'') の延長方向が夫々互いに異なった状態となるように配設した構成としている。
【0011】
【作用】
上記の構成により、各請求項記載の発明では、以下に述べるような作用が得られる。請求項1記載の発明では、氷蓄熱槽(8) 内で氷(I) を生成する蓄熱時には、伝熱管(9) 内を流通する流体で水を冷却して伝熱管(9) 及び氷保持部材(15)の周囲に氷(I) を生成する。一方、この氷(I) の冷熱を利用する冷熱取出し時には、上記流体により氷(I) を内側から融解する。そして、この冷熱取出し時において、氷(I) は、氷保持部材(15)によって伝熱管(9) の外周囲に保持される。つまり、伝熱管(9) の近傍位置に常に氷(I) が位置されることになる。このため、伝熱管(9) を流れる流体と氷(I) との間の熱交換が良好に行われて、短時間で多量の冷熱を取出すことができる。伝熱管(9) 周囲の水が加温されるといった状況が発生しないので、再製氷を行う場合に融解水の顕熱変化を必要とせず製氷効率が向上する。
【0012】
請求項2記載の発明では、冷熱取出し時において、氷(I) が伝熱管(9) から離脱した状態となっても、該氷(I) は氷保持棒(15)によって伝熱管(9) の外周囲に保持される。これにより、上述した請求項1記載の発明に係る効果を得るための構成を具体的に得ることができる。
【0013】
請求項3記載の発明では、伝熱管(9) 内を流れる流体の熱が氷保持棒(15)に伝わって該氷保持棒(15)の周囲で氷(I) が融解するといった状況の発生が抑制され、氷保持棒(15)による氷(I) の保持状態が確保される。
【0014】
請求項4記載の発明では、上下方向で隣接する伝熱管 (9,9') のうち下側の伝熱管 (9) から離脱されて浮上する氷 (I) は、この氷の延長方向に対して異なる方向に延びている上側の伝熱管 (9') の下面に当接し、この上側の伝熱管 (9') からの浮上が阻止される。
【0015】
請求項5記載の発明では、伝熱管 (9) から離脱されて浮上する氷 (I) は、その上側の伝熱管 (9') の下面に当接して浮上が阻止され、その後、この氷 (I) の融解により、この伝熱管 (9') から浮上した氷 (I) は、更にその上側に位置する伝熱管 (9'') の下面に当接して浮上が阻止されることになる。このようにして、伝熱管 (9,9') から離脱する度に上側の伝熱管 (9',9'') によって浮上が阻止される。
【0016】
【実施例】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例を図面に基き説明する。図1は本例に係る氷蓄熱装置(A) を備えた冷房専用の蓄熱式空気調和装置(B) を示す。該蓄熱式空気調和装置(B) は、上記氷蓄熱装置(A) 以外に、圧縮機(1) と、凝縮器として機能する室外熱交換器(2) と、冷媒の減圧または流量調節を行う開度調節可能な第1電子膨張弁(3) および第2電子膨張弁(4) と、蒸発器として機能する室内熱交換器(5) とを備えている。これらの機器(1) 〜(5) は冷媒配管(6) で順次接続されており、これにより、冷媒が流通する主冷媒回路(7) が構成されている。
【0017】
上記氷蓄熱装置(A) は、冷熱を蓄熱する氷を貯留する氷蓄熱槽(8) と、該氷蓄熱槽(8) 内に鉛直方向に配設された銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い材料で成る複数の伝熱管(9,9, …) とを備えている。該伝熱管(9) の一端は第1分岐路(10a) を介して主冷媒回路(7) の液管(11)における第1電子膨張弁(3) の上流側に、他端は第2分岐路(10b) を介して上記第1電子膨張弁(3) の下流側にそれぞれ接続され、伝熱管(9) と液管(11)との間で冷媒が流通可能となっている。上記第1分岐路(10a) には流路を開閉する第1開閉弁(12a) が介設されている。また、第1分岐路(10a) における第1開閉弁(12a) と伝熱管(9) との間からは第3分岐路(10c) が分岐し、該第3分岐路(10c) は主冷媒回路(7) のガス管(13)における圧縮機(1) の吸入側に接続され、伝熱管(9) とガス管(13)との間で冷媒が流通可能となっている。上記第3分岐路(10c) には流路を開閉する第2開閉弁(12b) が介設されている。
【0018】
上記氷蓄熱槽(8) 内に配設されている伝熱管(9) は図1では左右方向に4本配置されているが、実際は、図示しないが氷蓄熱槽(8) の幅方向及び奥行き方向に夫々複数列配置され、平面視において所謂格子状に配置されている。また、この複数本の伝熱管は、例えば氷蓄熱槽(8) の奥行き方向に隣接するもの同士の両端が、これらが連続した1本の管となるように、U字状に折曲げられたU字管部を介して互いに連結されている。そして、このようにして連続された1本の管毎に第1分岐路(10a) 及び第2分岐路(10b) が接続されている。
【0019】
次に、本例の特徴として各伝熱管(9) の構造について説明する。図2に示すように、各伝熱管(9) の外周面には、氷保持部材として放射状に延びる複数本の氷保持棒(15,15, …) が設けられている。詳しくは、この氷保持棒(15,15, …) は、同一水平面上において、伝熱管(9) の周方向で隣接するもの同士が互いに直交する方向に、つまり90°の角度間隔を存した位置に設けられ、伝熱管(9) の延長方向(鉛直方向)に所定間隔を存した複数箇所において伝熱管(9) の外周面に接着或いは溶接によって取付けられている。また、この氷保持棒(15)の個々について説明すると、その長さ寸法は、隣接する伝熱管(9) に先端部が接触しない寸法に設定されていると共に、その外側端部には僅かに下方へ折り曲げられて成る折曲部(15a) が備えられている。更に、この氷保持棒(15)の材質としては比較的熱伝導率の低い材料で構成されている。
【0020】
次に、上述の如く構成された氷蓄熱装置(A) の運転動作を図1に基いて説明する。冷熱回収を行わない通常冷房運転の場合、第1開閉弁(12a) および第2開閉弁(12b) を閉じ、第1電子膨張弁(3) で流量調節した状態で運転を行い、圧縮機(1) で圧縮した冷媒を室外熱交換器(2) で凝縮し、第2電子膨張弁(4) で減圧し、室内熱交換器(5) で蒸発させて圧縮機(1) に戻す。つまり、この室内熱交換器(5) での冷媒の蒸発により室内空気が冷却される。
【0021】
上記氷蓄熱槽(8) において製氷を行う氷蓄熱運転の場合、第1開閉弁(12a) を閉じ、第2開閉弁(12b) を開き、且つ第2電子膨張弁(4) を全閉にした状態で運転を行い、圧縮機(1) および室外熱交換器(2) を経た冷媒を第1電子膨張弁(3) で減圧し、第2分岐路(10b) を介して伝熱管(9) に流通させ、伝熱管(9) で蒸発させて氷蓄熱槽(8) の水を冷却して製氷を行い、第3分岐路(10c) およびガス管(13)を経て圧縮機(1) に戻す(実線の矢視で示す流れ)。
【0022】
冷熱を回収して冷房運転を行う蓄熱冷房運転の場合、第1開閉弁(12a) を開け、第2開閉弁(12b) を閉じ、且つ第1電子膨張弁(3) で流量調節をした状態で運転を行い、圧縮機(1) および室外熱交換器(2) を経た冷媒の一部または全部を第1分岐路(10a) を介して伝熱管(9) に流通させ、該伝熱管(9) で過冷却し、第2分岐路(10b) を介して液管(11)に戻し、第2電子膨張弁(4) で減圧し、室内熱交換器(5) で蒸発させて圧縮機(1) に戻す(破線の矢視で示す流れ)。つまり、氷(I) の冷熱によって過冷却された冷媒が室内熱交換器(5) で蒸発することにより室内空気が冷却される。
【0023】
次に、上述した氷蓄熱運転時及び蓄熱冷房運転時における氷蓄熱槽(8) 内での伝熱管(9) 回りにおける氷の生成及び融解状態について説明する。先ず、氷の製氷動作では、伝熱管(9) 内部での冷媒の蒸発により、伝熱管(9) の周囲において氷(I) が生成される。この場合の製氷量としては、氷(I) の外周面が氷保持棒(15,15, …) よりも外周側に位置するように、つまり、各氷保持棒(15,15, …) の全体が氷(I) の内部に位置するように設定する。
【0024】
次に、このように生成された氷(I) を融解する際の動作について説明する。この際には、伝熱管(9) 内部での冷媒の過冷却により、図3に示すように、伝熱管(9) の周囲において氷(I) がその内側から融解され始める。詳しくは、伝熱管(9) の周囲にあっては該伝熱管(9) と同心円上に次第に外周側に向って氷(I) の内面が融解されていき、この伝熱管(9) と氷(I) との間に融解水(W) が存在した状態になる。また、この伝熱管(9) と氷(I) との間での融解水(W) の対流により、伝熱管(9) の周囲ではその上側部分ほど氷(I) の融解量が多くなっている。
【0025】
そして、このような氷(I) の融解動作にあっては、氷(I) の内面が伝熱管(9) の外面から離れた状態となるが、氷保持棒(15)は、その先端部分が氷(I) の内部に位置しており、これによって、氷(I) の浮上が阻止されている。つまり、この氷保持棒(15)が氷(I) を保持して浮上を阻止している。そして、更に、氷(I) の融解が進み、氷(I) の一部分が完全に融解された状態となった場合であっても、氷保持部(15)の先端が氷(I) の内部に位置して該氷(I) を保持している限りは氷(I) が浮上することなく伝熱管(9) の周囲に位置される。また、氷保持棒(15,15, …) の先端部に形成されている折曲部(15a) によっても氷(I) の保持が確実に行われて氷(I) が浮上し難くなっている。更に、氷保持棒(15,15, …) は熱伝導率の低い材料で形成されているために、伝熱管(9) 内を流れる冷媒の熱が氷保持棒(15,15, …) に伝わり、この氷保持棒(15,15, …) の周囲で氷(I) が融解するといった状況の発生が抑制されている。つまり、氷保持棒(15)での氷(I) の保持状態の確保と、その保持時間の延長化とを図ることができる。また、氷保持棒(15,15, …) は4方向に放射状に延びているので、少なくとも一本の氷保持棒(15)の先端が氷(I) の内部に位置している限り氷(I) は浮上することはないので、この氷(I) の全体が略完全に融解されるまで氷(I) は浮上されない。
【0026】
このように、本例では、伝熱管(9) の外周面に放射状に延びる氷保持棒(15,15, …) を取付けるといった簡単な構成でもって氷(I) の浮上を阻止できる。このため、氷(I) を常時、伝熱管(9) の近くに配置することができて、伝熱管(9) の内部を流れる冷媒と氷(I) との間での熱交換を効果的に行うことができる。従って、蓄熱冷房運転時において短時間で多量の氷の潜熱を取出すことができ、この氷(I) の冷熱を利用した冷房運転の能力を十分に得ることができる。また、再度製氷動作を行う場合、従来のように氷(I) の浮上に伴って伝熱管(9) の回りに比較的温度の高い融解水が存在して製氷負荷が大きくなるといった状況の発生が回避できるので、製氷効率の向上を図ることもでき、これによって、短時間で所定量の氷(I) を生成することができる。
【0027】
尚、本例のような氷保持棒(15)を備えさせるといった構成は、鉛直方向に延びる伝熱管(9) に対してのみでなく、水平方向に延びる伝熱管(9) に対しても適用可能であり、その場合、図4に示すように、氷保持棒(15)は、伝熱管(9) の外周面のうち側方に位置する面に対してのみ設ければよく、その延長方向は水平方向に設定される。
【0028】
また、本例では、各氷保持棒(15)を水平方向に延設させたが、本発明はこれに限らず、伝熱管(9) の外周面から外側に向って斜め下方に延長させるなど種々の配設状態が採用可能である。また、この氷保持棒(15)は直線状のものに限らず線材を湾曲させたものなど種々の形態が適用できる。
【0029】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を図5及び図6を用いて説明する。本例は伝熱管 (9,9, ) の配設状態を改良した実施例である。図6に示すように、伝熱管 (9,9, ) は、氷蓄熱槽 (8) 内において上下方向に6段、水平方向に7列配置されている。また、この伝熱管 (9,9, ) は、同一水平面上に位置するもの同士の両端は、これらが連続した1本の管となるように、U字状に折曲げられたU字管部 (9a) を介して互いに連結されている。
【0030】
そして、本例の特徴として、図5にも示すように、上下方向で互いに隣り合う伝熱管 (9,9') 同士は、その延長方向が互いに直交方向に設定されている。つまり、図5に示す部分において、下側に位置する伝熱管 (9) は図5の上下方向に、上側に位置する伝熱管 (9') は図5の左右方向に夫々延長されている。
【0031】
このような構成による冷熱取出し時の動作について説明すると、融解により下側の伝熱管 (9) から離脱した氷 (I) の形状としては、図5に仮想線で示すように、この下側の伝熱管 (9) の延長方向に長くなっており、この状態で、上側の伝熱管 (9') に向って浮上する。そして、この氷 (I) は、その長手方向に対して直交する方向に延びている上側の伝熱管 (9') の下面に部分的に接触し、この伝熱管 (9') の下側で保持される。つまり、下側の伝熱管 (9) から浮上した氷 (I) が上側の伝熱管 (9') に引掛かることで該氷 (I) が水面に浮上してしまうことが阻止される。
【0032】
このような動作が、上下方向に隣接する各伝熱管 (9,9') 同士の間で夫々行われ、これによって氷 (I) が水面に浮上することが阻止される。従って、伝熱管 (9,9') 自身及びその周辺部に特別な構造を備えさせることなしに高い冷熱取出し効率を得ることができ、冷房運転の能力の向上及び再度製氷時の製氷負荷の低減を図ることができる。
【0033】
(変形例)
次に、上記第2実施例の変形例について説明する。本例は、図7に示すように、上側に位置する伝熱管の延長方向を下側に位置する伝熱管の延長方向に対して30°づつずらして配設したものである。つまり、図7において最下部に位置する伝熱管(9) を図中左右方向に延長し、その上側に位置する伝熱管(9')を下側のものに対して図中反時計回り方向に30°だけ回動させた位置に配設し、更に、その上側に位置する伝熱管(9'') も図中反時計回り方向に30°だけ回動させた位置に配設する。このような各伝熱管(9,9',9'')の配設状態にすれば、氷(I) が融解して浮上する度にその上側に位置する伝熱管に引掛って氷(I) が水面へ浮上することを阻止できる。
【0034】
また、その他の変形例として、図8に示すものは、氷蓄熱槽(8) を円筒状の容器で構成し、上下に位置する伝熱管(9,9')の形状としては、U字管部(9a)によって連結される各伝熱管(9,9, …),(9',9', …) の寸法を外側(冷媒流れの上流側及び下流側)にあるものほどその長さ寸法を短く設定し、効率良く氷蓄熱槽(8) 内に収容したものである。そして、この場合には、同一形状の伝熱管(9,9')を上下方向に複数段配設し、各伝熱管(9,9')の延長方向をずらす(例えば30°づつずらす)ことにより、上述と同様の氷融解動作を得ることができる。
【0035】
従って、このような構成によれば、氷蓄熱槽(8) 内のスペースの有効利用を図りながら、各伝熱管(9,9')を共通化でき、氷蓄熱槽(8) の製作作業の簡略化を図ることができる。
【0036】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、空気調和装置(B) 以外の用途に使用する氷蓄熱装置(A) に適用してもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明してきたように、各請求項に係る発明の氷蓄熱装置によれば以下に述べるような効果が発揮される。請求項1記載の発明によれば、伝熱管の外周囲に生成した氷を、その内側から融解するようにした氷蓄熱装置に対し、伝熱管の外周面に、冷熱取出し時に、氷を伝熱管の外周囲に保持する氷保持部材を設けることにより、氷が伝熱管から離脱状態となっても該氷を伝熱管の近傍に位置させることができるようにしたために、伝熱管の内部を流れる冷媒と氷との間での熱交換を効果的に行うことができる。従って、冷熱取出し時において短時間で多量の氷の潜熱を取出すことができ、高い冷熱取出し効率を得ることができる。また、再度製氷動作を行う場合、従来のように氷の浮上に伴って伝熱管の回りに比較的温度の高い融解水が存在して製氷負荷が大きくなるといった状況の発生が回避できるので、製氷効率の向上を図ることもでき、短時間で所定量の氷を生成することができる。
【0038】
請求項2記載の発明によれば、氷保持部材の構成を具体的に得ることができ、上述した請求項1記載の発明に係る効果を発揮する氷蓄熱装置の実用性の向上を図ることができる。
【0039】
請求項3記載の発明によれば、氷保持棒を、伝熱管よりも熱伝導率が低い材料で形成したことにより、冷熱取出し時に伝熱管内を流れる流体の熱が氷保持棒に伝わって該氷保持棒の周囲で氷が融解するといった状況の発生が抑制され、氷保持棒による氷の保持状態が確保され、氷の保持時間の延長化を図ることができ、より一層高い冷熱取出し効率が得られる。
【0040】
請求項4記載の発明によれば、上下方向で隣接する伝熱管の延長方向を互いに異なった状態として、下側の伝熱管から浮上した氷を上側の伝熱管により水面への浮上を阻止するようにしたために、伝熱管自身及びその周辺部に特別な構造を備えさせることなしに高い冷熱取出し効率を得ることができる。
【0041】
請求項5記載の発明によれば、3段以上に配設された伝熱管に対しても上述した請求項4記載の発明に係る効果と同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る蓄熱式空気調和装置の冷媒配管系統図である。
【図2】第1実施例における伝熱管の斜視図である。
【図3】第1実施例における氷の融解状態を示す図である。
【図4】第1実施例の変形例における伝熱管及びその周辺の断面図である。
【図5】第2実施例における伝熱管の配設状態を示す平面図である。
【図6】第2実施例における蓄熱槽内部を示す断面図である。
【図7】第2実施例の変形例における伝熱管の配設状態を示す平面図である。
【図8】第2実施例の他の変形例における蓄熱槽内部を示す平面図である。
【図9】従来例における氷の融解初期状態を示す断面図である。
【図10】従来例における所定時間だけ氷融解が行われた状態を示す断面図である。
【図11】従来における氷の浮上動作を説明するための断面図である。
【符号の説明】
(8) 氷蓄熱槽
(9) 伝熱管
(15) 氷保持棒(氷保持部材)
(I)

Claims (5)

  1. 製氷用の水を貯留する氷蓄熱槽(8) と、
    該氷蓄熱槽(8) 内に配置された伝熱管(9) とを備え、
    該伝熱管(9) 内を流通する流体と上記水との間で熱交換を行い、蓄熱時には、上記流体で水を冷却して伝熱管(9) の外周囲に氷(I) を生成する一方、冷熱取出し時には、上記流体により氷(I) を内側から融解するようにした氷蓄熱装置において、
    上記伝熱管(9) の外周面には、冷熱取出し時に、氷(I) を伝熱管(9) の外周囲に保持する氷保持部材(15)が設けられていることを特徴とする氷蓄熱装置。
  2. 氷保持部材は、伝熱管(9) の外周面の複数箇所に取付けられ、伝熱管(9) の延長方向に対して略直交する方向に突出された線材で成る氷保持棒(15)で構成されていることを特徴とする請求項1記載の氷蓄熱装置。
  3. 氷保持棒(15)は、伝熱管(9) よりも熱伝導率が低い材料により形成されていることを特徴とする請求項2記載の氷蓄熱装置。
  4. 製氷用の水を貯留する氷蓄熱槽(8) と、
    該氷蓄熱槽(8) 内に配置された複数本の伝熱管 (9,9, ) とを備え、
    各伝熱管 (9,9, ) 内を流通する流体と上記水との間で熱交換を行い、蓄熱時には、上記流体で水を冷却して各伝熱管 (9,9, ) の外周囲に氷(I) を生成する一方、冷熱取出し時には、上記流体により氷(I) を内側から融解するようにした氷蓄熱装置において、
    上記各伝熱管 (9,9, ) は、夫々が水平方向に延長された状態で、互いに上下方向に所定間隔を存して配設されていると共に、
    この上下方向で隣接する伝熱管 (9,9') は、延長方向が互いに異なった状態で配設されていることを特徴とする氷蓄熱装置。
  5. 上下方向に3段以上の伝熱管 (9,9',9'', ) が配設されており、各伝熱管 (9,9',9'' ) は、全ての伝熱管 (9,9',9'' ) の延長方向が夫々互いに異なった状態で配設されていることを特徴とする請求項4記載の氷蓄熱装置。
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