JP3619823B2 - 分光光度計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は分光光度計、特にその設定パラメータ及び処理データの表示機構の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、フーリエ変換赤外分光光度計において試料の分析を行う場合、赤外干渉光を試料に照射し、その反射光ないし透過光から得られるインターフェログラムをフーリエ変換し、所望のスペクトルデータを得ている。また、該スペクトルデータに対しベースライン補正やノイズ除去の演算を施し、試料分析に必要なデータ処理を行っている。
【0003】
ここで、前記インターフェログラムをフーリエ変換する際やスペクトルデータに対し種々の演算処理を行う際のパラメータは、所望のデータを得るために適切な値に設定されなければならない。
しかし、個々の試料から得られる測定生データが異なれば、それぞれのデータに対する適切なパラメータ値も当然異なってくることとなり、設定したパラメータが適切か否かは処理データをディスプレイなどに表示させ視認するまで判断することができない。すなわち、初めにおおよその見当でパラメータを設定し、処理データを確認した後にパラメータを徐々に変更して最適パラメータ値を見出すのである。
【0004】
そして、従来の分光光度計は、前記パラメータ設定及び処理データの表示において、データ処理を選択するとまず画面上にパラメータ設定画面として処理前の測定生データと共にパラメータの設定項目が表示される。次に該画面上で各パラメータ項目に適当と思われるパラメータ値をそれぞれ設定し、演算処理を実行指示する。これにより、表示画面は処理結果画面に移り、設定したパラメータ値に基づく処理データが表示される。
【0005】
さらに、該処理データを確認した結果、所望の処理データが得られなかった場合、すなわち設定したパラメータ値が適切でなかった場合には、再度表示画面を前記パラメータ設定画面に切換え戻し、パラメータ値を変更する。そして、再び演算処理を実行指示することにより表示画面が処理結果画面に移り、新たに変更したパラメータ値に基づく処理データが表示される。
このように、表示画面をパラメータ設定画面と処理結果画面とで繰返し切換え、試行錯誤しながらパラメータの最適値を決定し、所望の処理データを得るのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の分光光度計では、パラメータ設定画面と処理結果画面との表示が相互に移り変わるため、前の画面が消えて新たな画面のみが表示される。すなわち、測定生データとパラメータ項目が表示されているパラメータ設定画面において、パラメータ値を設定して演算処理を実行すると、該測定生データ及びパラメータ値が画面上から消えて処理データのみの表示に変ってしまう。また、パラメータ値を変更するために、処理結果画面からパラメータ設定画面に戻ると、それまで表示されていた処理データが画面上から消えて測定生データとパラメータ項目のみの表示に戻ってしまう。
このため、パラメータ値の変更毎に画面切換えをしなければならず、操作性が悪いという課題があった。
【0007】
また、パラメータ値の変更をする際、変更前のパラメータ値に基づく処理データを同時に視認できないため、最適なパラメータ値を設定するまでの効率が極めて悪く多大な時間と労力を要するという課題があった。
すなわち、パラメータ値の変更は、先に得られた処理データがどの点で不適切であったのかを変更前のパラメータ値を基に該処理データと比較参照しながら行うことが効率的なのである。しかし、前述したように従来はパラメータ設定の変更時に先のパラメータ値と処理データを同時に確認できず、双方の比較参照が極めて困難であるため、パラメータ値の変更を的確に効率良く行うことができなかったのである。
【0008】
特に、干渉波形除去処理のように前記パラメータが極めて複雑な場合には、最適なパラメータ値の設定はさらに困難性を有する。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的はパラメータ値の変更を操作性良く行うと共に最適パラメータ値を的確かく効率良く設定可能な分光光度計を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明にかかる分光光度計は、試料のインターフェログラムの採取を行う測定手段と、前記測定手段により得られたインターフェログラムを記憶するためのインターフェログラム記憶手段と、前記インターフェログラム記憶手段に記憶されたインターフェログラムをフーリエ変換処理するためのパラメータ値を設定するパラメータ設定手段と、前記パラメータ値に基づき前記インターフェログラムをフーリエ変換しスペクトルデータを得るフーリエ変換手段と、前記インターフェログラム、パラメータ値、及びスペクトルデータを表示する表示手段と、前記インターフェログラム、パラメータ値、及びスペクトルデータを表示手段に同時に表示させる表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
そして、前記インターフェログラム、パラメータ値、及びスペクトルデータが同時に表示される処理データ表示画面と、前記パラメータ値の設定を行うパラメータ設定画面とが同一画面上に同時に表示されることがより好適である。
【0010】
【作用】
本発明にかかる分光光度計は、前述したように表示制御手段を備えているので、設定されたパラメータ値に基づく演算処理データが、該パラメータ値及び測定生データと共に同時表示される。
【0011】
このため、前記同時表示により測定生データ、演算処理データ、及びパラメータの三つの関係が容易に視認把握することができ、先に設定されたパラメータ値が適切でなかった場合に、該三つの関係を参照しながら最適パラメータ値へ的確かつ効率良く設定変更することが可能となる。
また、パラメータ設定画面と処理結果画面とが同一画面となることでパラメータ値の変更において画面切換えをする必要がない。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施例を説明する。
図1には、本発明の一実施例にかかる分光光度計の概略構成図が示されている。
同図に示す分光光度計10は、順次インターフェログラムの採取を行う測定手段12と、該測定手段12から得られるインターフェログラムを記憶するインターフェログラム記憶手段14と、該記憶手段14から読み出されるインターフェログラムをフーリエ変換しスペクトルデータに変換するフーリエ変換手段16と、該スペクトルデータを記憶するスペクトル記憶手段17と、該スペクトル記憶手段17から読み出されるスペクトルデータを演算処理するデータ処理手段18と、フレームメモリ20及びディスプレイ22を有する表示手段24を備えている。
【0014】
本発明において特徴的なことは、前記フーリエ変換手段16及びデータ処理手段18において用いられる演算パラメータを設定する画面に処理データを併せて表示することにある。すなわち、従来別々の画面として表示していたパラメータ設定画面と処理データ表示画面とを同一画面上に表示するものである。このため、本実施例においてはキーボード等の入力手段26により演算パラメータの入力が可能なパラメータ設定手段28及び表示制御手段30を備えている。
【0015】
なお、前記測定生データ及び処理データとは、フーリエ変換時においては前者がインターフェログラム、後者がスペクトルデータを指し、スペクトルデータの演算処理時においては前者が演算処理前スペクトルデータ、後者が演算処理後スペクトルデータを指す。
本実施例にかかる分光光度計は概略以上のように構成され、次に本実施例におけるパラメータ設定及びデータ処理の具体的な作用について説明する。
【0016】
まず、前記インターフェログラムをフーリエ変換手段16によりスペクトルデータにフーリエ変換するIFスペクトル変換処理において、メニュー画面からデータ処理を選択すると図2に示すような画面40が表示される。そして、データ処理を行うインターフェログラムが前記インターフェログラム記憶手段14から読み出され、該インターフェログラムデータが表示制御手段30に出力される。さらに、表示制御手段30はこのインターフェログラムデータをフレームメモリ20の画面上部にあたる測定生データ表示部42に相当するエリアに記憶する。
【0017】
次に入力手段26からパラメータ値をパラメータ設定手段28に設定することにより、画面40のパラメータ項目部44の設定値欄に各パラメータが表示される。そして、パラメータ値の設定が終了した時点で画面40に示す「OK」を選択することにより、該パラメータ値がパラメータ設定手段28からフーリエ変換手段16に出力され、インターフェログラムのフーリエ変換処理が行われる。
【0018】
そして、前記フーリエ変換されたスペクトルデータは表示制御手段30に出力され、該表示制御手段30はこのスペクトルデータをフレームメモリ20の画面下部にあたる処理データ表示部46に相当するエリアに記憶する。
この結果、前記図2に示すようにインターフェログラムデータ、スペクトルデータ、及びパラメータ値を全て同一画面上に同時表示することができる。
【0019】
さらに、前記処理データ表示部46の処理データを確認した上で、該処理データが所望のデータと異なる場合には前記パラメータ値の変更を行う。そして、新たなパラメータ値を入力し「OK」を選択すると、再び該パラメータ値に基づくフーリエ変換処理が行われ、該フーリエ変換された新たなスペクトルデータが表示制御手段30に出力される。さらに、表示制御手段30は先のスペクトルデータをこの新たなスペクトルデータに書換えてフレームメモリ20に記憶し、該新たなスペクトルデータを処理データ表示部46に表示する。以上のようにして、最適なパラメータ値が見つかるまで、前記パラメータ設定とフーリエ変換処理を繰返し行う。
【0020】
このように、本実施例においては、前記パラメータ設定とフーリエ変換処理との繰返し操作は、同一画面上でパラメータ設定入力と「OK」の選択を繰返すだけでよく、画面の切換えが不用であり操作性良く行うことができる。
また、先に設定したパラメータ値と、該パラメータ値に基づくスペクトルデータを同時に視認できるため、両者を比較参照しながらパラメータ値の変更をすることができ、パラメータ値の最適値を効率良く見出すことができる。
【0021】
次に、前記フーリエ変換されたスペクトル生データに様々なデータ処理を施す場合の例を図3及び図4に従って説明する。なお、前記図2と対応する部分には同一符号を付し説明を省略する。
図3には、スペクトル生データのデータ処理の一例としてベースライン補正のデータ処理画面が示されている。そして、同図において、測定生データ表示部42にはフーリエ変換されたスペクトル生データが表示され、処理データ表示部46にはベースライン補正処理を行った後のスペクトル処理データが表示される。
【0022】
すなわち、まずベースライン補正処理においてメニュー画面からデータ処理を選択すると、前記スペクトル記憶手段17からデータ処理を行うスペクトル生データが読み出され、該スペクトル生データが表示制御部30に出力される。そして、表示制御部30は該スペクトル生データをフレームメモリ20の画面上部の測定生データ表示部42に相当するエリアに記憶する。
【0023】
そして、パラメータ値を入力手段26からパラメータ設定手段28に設定すると、該パラメータ値がパラメータ設定手段28からスペクトルデータ処理手段18に出力され、ベースライン補正のデータ処理が行われる。さらに、該データ処理手段18から処理データが表示制御部30に出力され、表示制御部30は該処理データをフレームメモリ20の画面下部の処理データ表示部46に相当するエリアに記憶する。
この結果、図3に示すようにパラメータ値、スペクトル生データ、及びスペクトル処理データが同時表示されるのである。
【0024】
ここで、本実施例においては、図3に示すように補正ベースライン48を測定生データ表示部42のエリア内に位置表示し、該位置設定によりパラメータ設定を行っている。
すなわち、測定生データ表示部42内に指定した数のポイント50及びそれぞれのポイント50を結んだ補正ベースライン48を表示し、各ポイント50の位置をマウスなどで設定することで、該ポイント50の位置に対応した補正ベースライン48を得るためのパラメータを設定しているのである。
【0025】
なお、前記ポイント50の設定値は、パラメータ設定手段28から表示制御部30に出力され、該表示制御部30によりフレームメモリ20の測定生データ表示部42に相当するエリア内に記憶され、該測定生データ表示部42内にスペクトル生データと共に表示される。
このように、本実施例においては、複雑な形状の補正ベースラインの設定も、前記各ポイントの数及び位置の設定だけで容易に行うことができ、さらに該補正ベースラインの設定変更においても、先に設定された補正ベースラインとこれに基づくスペクトル処理データを同時に確認し比較参照しながら行うことができ、的確な設定変更を効率良く行うことが可能となる。
つまり、前記パラメータ値を測定生データ上に位置表示させることで、該パラメータを視覚的に認識することができるため、最適パラメータを更に容易に設定することが可能となる。
【0026】
また、図4には、スペクトル生データのデータ処理の他の例として干渉波形除去のデータ処理画面が示されている。同図においては、前記図3に示すベースラインの変りに干渉波としての三角関数曲線52をスペクトル生データ上に表示している。なお、パラメータ、スペクトル生データ、及びスペクトル処理データを同一画面に表示する機構は、前述したベースライン補正と同様である。
そして、本実施例においては、干渉波形が含まれているスペクトル生データ上に三角関数曲線52を重ね書き表示することにより、干渉波形除去のための最適なパラメータを効率良く見出すことを可能としている。
【0027】
すなわち、スペクトル生データに含まれている干渉波形は、干渉波がスペクトルデータに乗っているために生じるものであり、該干渉波形は限定された範囲内では略一定の振幅、周波数、位相で表すことができる。そこで、前記干渉波形を三角関数曲線52でスペクトル生データ上に表示し、該スペクトル生データに三角関数曲線52がほぼ重なるように振幅、周波数、位相をそれぞれ設定している。つまり、干渉波形除去処理においてはパラメータとなる干渉波を三角関数曲線で測定生データ上に重ねて実線表示することで、該干渉波形を実際の形として視覚的に確認しながらその振幅、周波数、位相を設定することができる。このように、本実施例においては、干渉波形を実際の形として視覚的に認識することにより、最適なパラメータの設定を容易に行うことを可能としている。
【0028】
なお、前記実施例においてはベースライン補正処理及び干渉波形除去処理を例に説明したが、この他のデコンボリューション処理、四則演算処理、データ連結処理、差スペクトル処理、CO2ピーク除去処理、微分処理、スムージング処理、FFTフィルター処理などの各スペクトルデータ処理においても、パラメータ設定画面と処理結果画面を同一画面で表示することにより、パラメータ設定を容易かつ効率的に行うことが可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる分光光度計によれば、インターフェログラム、スペクトルデータ、及びパラメータを同一画面に同時表示するため、画面を切換えることなくパラメータ値の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる分光光度計の概略構成の説明図である。
【図2】前記図1に示す分光光度計を用いたIFスペクトル変換処理における表示画面の説明図である。
【図3】前記図1に示す分光光度計を用いたベースライン補正処理における表示画面の説明図である。
【図4】前記図1に示す分光光度計を用いた干渉波形除去処理における表示画面の説明図である。
【符号の説明】
12 … 測定手段
14 … インターフェログラム記憶手段
16 … フーリエ変換手段
18 … スペクトルデータ処理手段
24 … 表示手段
28 … パラメータ設定手段
30 … 表示制御手段
42 … 測定生データ表示部
44 … パラメータ項目部
46 … 処理データ表示部
Claims (2)
- 試料のインターフェログラムの採取を行う測定手段と、
前記測定手段により得られたインターフェログラムを記憶するためのインターフェログラム記憶手段と、
前記インターフェログラム記憶手段に記憶されたインターフェログラムをフーリエ変換処理するためのパラメータ値を設定するパラメータ設定手段と、
前記パラメータ値に基づき前記インターフェログラムをフーリエ変換しスペクトルデータを得るフーリエ変換手段と、
前記インターフェログラム、パラメータ値、及びスペクトルデータを表示する表示手段と、
前記インターフェログラム、パラメータ値、及びスペクトルデータを表示手段に同時に表示させる表示制御手段と、を備えたことを特徴とする分光光度計。 - 請求項1記載の分光光度計において、
前記インターフェログラム、パラメータ値、及びスペクトルデータが同時に表示される処理データ表示画面と、前記パラメータ値の設定を行うパラメータ設定画面とが同一画面上に同時に表示されることを特徴とする分光光度計。
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