JP3619531B2 - 徐放性固体製剤の製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、結合剤の粉末(直接錠剤化するために)又はそれから水と撹拌することによって再生した結合剤の水性分散液を使用して、徐放性固体製剤を製造することに関するが、この結合剤は乳化重合で得られた結合剤分散液を、結合剤に対して5〜50質量%のガラス化温度T低くとも60℃を有する水溶性噴霧助剤との存在で、噴霧乾燥させることによって得たものである。この粉末は付加的に粘着防止剤を含有するのが有利である。
【0002】
【従来の技術】
再分散可能な重合体粉末は、分散液を単頭又は多頭ノズルを使用して熱気流中で噴霧させることによって、水性重合体分散液から製造することができる。これは、重合体のガラス転移温度が十分に高い場合、即ち50℃より上である場合に可能である。その他の場合には、大抵は既に噴霧に際して、或は遅くとも貯蔵に際して、特に熱及び/又は圧力の作用下で、粘着、いわゆる「ブロッキング」が起こる。これにより重合体粉末の再分散性が損なわれる。
【0003】
比較的低いガラス転移温度を有する重合体に保護コロイド又は無作用物質を混入することによって、ブロッキングを防止する試みがなされた。それにより、良好に再分散させることができる重合体粉末が確かに得られたが、それ故にこの混合物から生成される被覆の特性は悪くなった。
【0004】
噴霧乾燥で噴霧助剤を使用することは一般的であり、例えば西ドイツ特許第2049114号、第3143071号、第3344242号及び第3923229号明細書に記載されている。その際、医薬製造で使用することは考慮されなかった。従って助剤の生理的認容性に対する配慮はなされなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、化学的及び物理的助剤を用いずに、ただ水と撹拌することによって、徐放性基質錠剤を製造するための薬理作用物質及び助剤のいわゆる湿式造粒に使用することのできる分散液に再び戻すことのできる再分散可能な分散液粉末を供給することであった。これは作用物質(及び場合によりその他の助剤)を再分散可能な分散液粉末と一緒に直接錠剤化することによって製造することもできる。更に、再分散可能な分散液粉末は(再生分散液の形で)作用物質含有の核の被覆に使用することができねばならない。最後に、この再生分散液は顔料及びその他の常用のガレヌス助剤と良好に相容性でなければならない。
【0006】
作用物質は、徐放性基質錠剤の製造で、水溶性助剤と一緒に、骨格を形成する水に不溶の、不消化性(不活性)の助剤中に埋め込まれる。可溶性成分の溶出により孔が生じ、そこから作用物質が外へ拡散する。不活性賦形剤としては、主として重合体、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、シリコ−ン、エチルセルロ−ス及びメタクリレ−ト/アクリレ−ト−共重合体が使用される。作用物質−助剤混合物は直接又は湿式造粒後に結合剤溶液と一緒に圧縮成形される。作用物質の放出速度は、不溶性重合体の含量によって調整することができる

【0007】
水に不溶の重合体は、湿式造粒のために、有利には乳化重合により得られた分散液の形で使用される。乳化重合体は水に不溶の、超顕微鏡的ラッテクス粒子を含有し、高い固体含量(40質量%までの)でも比較的僅かな粘度を有するので、常用の湿式造粒で徐放化する比較的多量の重合体物質を加工することができる。水性分散液を使用する場合には、湿潤化危険性、毒性及び環境負荷に関して有機溶剤が引き起こす全ての問題とは関係なくなる。
【0008】
再分散可能な分散液粉末は、この目的に特に好適である。それは、一つにはこの粉末は作用物質の粉末状乳化重合体と一緒の直接錠剤化による基質錠剤の製造を可能にし、他方ではラテックスの使用に伴う全ての問題、例えば病原菌感染、汚染、寒冷又は熱の作用による凝固、被膜形成、沈澱及びもちろん高い輸送費用が関係なくなるからである。
【0009】
当該基質を形成するためには、軟質重合体、即ち低いガラス転移温度Tを有するようなものが有利である。しかし、前記のように、正にこの種の乳化重合体が噴霧乾燥で困難を生じる。公知の噴霧助剤は製薬的要求に適合しない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
ところで、既にガレヌス製剤で使用されている、少なくとも60℃のガラス転移温度を有する天然又は合成の水溶性重合体が噴霧助剤として特に好適であること、及びこれら水溶性重合体が、更に生成される除放系の徐放挙動を、例えば非常に水溶性の作用物質の強力な徐放作用がもはや可能でなくなるであろう程に損なうことはないことを見出した。更に、同様にガレヌス製剤で常用の水に不溶の、主として無機質の助剤を有利には粘着防止剤として、噴霧助剤を用いる噴霧乾燥により得られる分散液粉末中に使用することができることを見出した。
【0011】
従って、前記の本発明の課題の解決法は、特許請求の範囲に記載の方法にある。
【0012】
本発明により得られる乳化重合体、噴霧助剤及び粘着防止剤から成る粉末状の「系」を、粉末と水とを顔料及び/又はその他の常用のガレヌス助剤を添加してか又はそれなしに及び加熱するか又は加熱せずに撹拌することによって、分散液を再生させ、噴霧して粉末状の作用物質又は粉末状の作用物質/助剤/混合物にするという方法で、湿式造粒に使用することができる。しかしこの粉末状の系を更に直接錠剤化用に、即ち、重合体粉末を薬理学的作用物質及び場合によりその他の助剤と共に直接圧縮成形するために使用することもできる。
【0013】
本発明は、エチレン性不飽和化合物を遊離基供給性開始剤を用いて、常用の添加物の存在で乳化重合させることによって製造した水性重合体分散液から出発する。
【0014】
好適なエチレン性不飽和単量体は、例えばC〜C18−アルコ−ルの(メタ−)アクリル酸エステル、例えばメチルメタクリレ−ト及びエチルアクリレ−ト、また(メタ−)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、ビニルエステル及びビニルラクタム;更に不飽和のモノ−又はジカルボン酸、例えば(メタ−)アクリル酸、マレイン−、フマル−及びイタコン酸並びにこれらの二酸の半エステル又は半アミドである。塩基性基を有する好適な単量体は、N−ビニルイミダゾ−ル、N−ビニルイミダゾリン、N−ビニルイミダゾリジン、N−ビニルピリジン、不飽和重合性カルボン酸のモノアルキル−又はジアルキルアミノアルキルエステル又はモノアルキル−又はジアルキルアミノアルキルアミドである。同様に、陰イオン性単量体、例えばアクリルアミドアルキルスルホン酸の塩、陽イオン性単量体、例えばトリメチルアンモニオエチルメタクリレ−ト−クロリド、架橋性単量体、例えばメチロ−ル(メタ)アクリルアミド及びそれらの誘導体を使用することができる。
【0015】
単量体又は単量体混合物の選択は、一方では、被覆方法(ガラス転移温度、最低皮膜形成温度)に、他方では被覆のガレヌス性挙動(種々の媒体における溶解挙動、硬度、皮膜の脆性又は弾性及びその作用物質に対する透過性)に応じて行う。
【0016】
遊離基形成性重合開始剤としては、常用の、例えば過酸化水素、有機過酸化物及びヒドロペルオキシドを、場合により還元性化合物、例えばアスコルビン酸、水溶性アゾ化合物、例えば2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド、更に無機過酸化物、例えばペルオキシジ硫酸のアルカリ金属−又はアンモニウム塩と組み合わせて、単量体の総量に対して約0.1〜2重量%の量で使用することができる。
【0017】
必要な場合には、重合混合物にその他の常用の助剤を添加することができる。これらの助剤には、最終生成物の粒度の再現性を改善する核ラテックス、並びに緩衝剤、錯化剤、分散剤及び乳化剤が挙げられる。乳化重合体は一般に、陰イオン性、陽イオン性又は非イオン性乳化剤又はそれらの相容性混合物の存在で固体含量20〜70重量%、有利には30〜60重量%を有する水性ラテックスの形で製造される。
【0018】
噴霧乾燥は常法で噴霧塔中で行われるが、その際、乾燥させるべき分散液を噴霧盤又は単頭又は多頭ノズルを用いて噴霧することができる。分散液の乾燥は、高温の気体、例えば窒素又は空気を用いて実施する。乾燥した重合体粉末をラッテクスから製造する場合には、ラッテクス粒子がそのものとして保たれ、粘着して凝集物にならないように注意すべきである。
【0019】
噴霧助剤としては、少なくとも60℃で第2の相転移温度(ガラス転移温度T)を有する1種又は数種の水溶性物質を、結合剤として使用される乳化重合体に対して5〜50重量%、有利には10〜30重量%の量で添加する。このためには、高分子の水溶性物質、特に高い重合度を有するようなものが有利であると実証された。
【0020】
良好な再分散性を得るために、分散液の製造に使用された保護コロイドの量及び噴霧助剤の量の合計が少なくとも6重量%、有利には10〜30重量%である場合が有利であると実証された。上限としては50重量%、有利には40重量%が挙げられる。
【0021】
本発明により使用される噴霧助剤は、その製薬的(生理的)認容性により卓越している。医薬書専攻論文に記載されているか又は既に長年無事に使用されてきたか又はその使用が食品法的に規定されている助剤が好適である(例えば、Firmen Ciba−Geigy、Hoffmann−LaRoche及びSandozの研究班著の”Katalog pharmazeutischer Hilfsstoffe”;H.Sucker、P.Fuchs及びP.Speiser著”Pharmazeutische Technologie”、Thieme Verlag、1991年、第5章並びにそこに記載の文献;”Uberzugsstoffe und Trennmittel”、Lebensmittelchem.Gesellschaft−GDChの専門班、Behr’s Verlag 1990年参照)。
【0022】
例えば、下記のものが挙げられる:
セルロ−ス誘導体、例えばメチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス−ナトリウム(薬局方に記載されている)、ポリビニルピロリドン(例えばUSP/NF XVIに記載)、重量比60:40のN−ビニルピロリドン及び酢酸ビニルからの共重合体(DAB−専攻論文”Copolyvidon”)、澱粉誘導体(食品及び日用品法による変性澱粉)並びにポリビニルアルコ−ル(製薬工業用に特に精製した品質、平均グラム分子量30000〜200000)。
【0023】
貯蔵性を高めるために、即ち、低いガラス転移温度を有する粉末で凝固及び粘着を阻止し、それによって再分散性を改善するために、得られた粉末に重合体成分の全重量に対して0〜50重量%、有利には5〜25重量%の常用の粘着防止剤を添加する。これは、粉末がまだ微細に分散している間、即ちまだ乾燥気体中に浮遊している間に行うのが有利である。この薬剤は空間的に分けるが、しかし分散液と同時に乾燥装置中に添加するのが有利である。特に平均粒度0.1〜50μmを有する物質が好適である。
【0024】
粘着防止剤はもちろん製薬的に認容性のものであるべきである(前記参照)。例えば下記のものが挙げられる:
コロイド状二酸化珪素(NF XIII中に”Colloidal Silicon Dioxide”として記載されている)、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸ナトリウム、第三燐酸カルシウム、第三燐酸マグネシウム、微晶性セルロ−ス及びステアリン酸マグネシウム。これらは、薬局方に記載されており、食品として許可されている。
【0025】
次に実施例につき、本発明を詳説する。
【0026】
【実施例】
例1〜6−噴霧乾燥
エチルアクリレ−ト/メチルアクリレ−ト/乳化共重合体(2:1モル、T約7℃、DIN53787による最低皮膜形成温度約4℃、粘度約5mPas)からの、固体含分30重量%の水性分散液を、噴霧助剤と一緒に噴霧乾燥させ、必要に応じて粘着防止剤を添加した。例1から6を、第1表にまとめる。全ての重量%は乳化重合体に対するものである。
【0027】
【表1】
Figure 0003619531
【0028】
得られた粉末は25℃で8ヶ月後になお流動性であり、冷水と撹拌することによって再分散可能であった。
【0029】
例7
固体含量30重量%を有する、粘度約5mPas秒の酢酸ビニル/乳化重合体から成る水性分散液を、重合体に対して30重量%のポリビニルピロリドンと一緒に噴霧乾燥させた。入口温度は120〜130℃、出口温度は80〜90℃、ノズル温度は16℃であった。
【0030】
例8−湿式造粒
例3により得られた重合体粉末の液体状に戻した水性分散液を用いて、基質錠剤を下記処方に従って製造した:
1.組成
Figure 0003619531
本発明による重合体粉末の再分散は冷水中で簡単に撹拌することによって達成される。
【0031】
混合物Iを流動床造粒機で分散液IIと一緒に顆粒状にし、IIIと混合し、回転機で圧力9.3kNで圧縮して錠剤にした。
【0032】
2.錠剤の物理学的特性
重量 211.82mg
薬局方による硬度(DAB) 64N
薬局方による屑(DAB) 0.3%
3.テオフィリンの放出
テオフィリンの放出を米国薬局方XXIIによる放出装置、パドル−メソッド(Paddle−Method)を用い、50Um/分で測定した。比較として市販のエチルアクリレ−ト/メチルメタクリレ−ト/共重合体(Eudragit NE30D、Rohm Pharma、30%分散液)を用いて同様にして製造した基質錠剤を使用した。
【0033】
媒体:pH7.4の緩衝剤水溶液
【0034】
【表2】
Figure 0003619531
【0035】
結果:放出は両方の場合に非常に似通っていた、即ち、本発明により製造した徐放形は公知技術の匹敵する。
【0036】
例9−湿式造粒
基質錠剤を、例7により得られた重合体粉末の液体状に戻した水性分散液を用いて、下記処方により製造した。
【0037】
1.組成
Figure 0003619531
本発明による重合体粉末の再分散は、冷水中で簡単に撹拌することによって達成される。
【0038】
混合物Iを手で分散液IIと一緒に顆粒状にし、IIIと混合し、回転機で圧力9.3kNで圧縮して錠剤にした。
【0039】
2.錠剤の物理学的特性
重量 219mg
薬局方による硬度(DAB) 73N
薬局方による屑(DAB) 0.25%
3.テオフィリンの遊離
放出測定は例8と同様にして行った。
【0040】
【表3】
Figure 0003619531

Claims (4)

  1. 徐放性製剤に使用するための冷水に再分散可能な製薬的に認容性の結合剤においてこの結合剤は、以下の成分(a)〜(c):
    (a)(メタ−)アクリル酸エステル
    (b)(メタ−)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、
    (c)酢酸ビニルおよびビニルラクタム
    から成る群から選択されるいずれか1成分を乳化重合し、引き続き、このように得られた水性分散液を結合剤に対して、ガラス転移温度少なくとも60℃を有する水溶性の製薬的に認容性の噴霧助剤である
    (I)セルロース誘導体、
    (II)ポリビニルピロリドン、
    (III)N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルからの共重合体、
    (IV)デンプン誘導体
    の群から選択されるいずれか1種5〜50質量%ならびに製薬的に認容性の粘着防止剤であるタルク、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウムの群から選択されるいずれか1種0〜50質量%と一緒に噴霧乾燥させることによって得たものであることを特徴とする、徐放性製剤に使用するための冷水に再分散可能な製薬的に認容性の結合剤
  2. 請求項1に記載の結合剤の再生水性分散液を製薬的作用物質含有核上に塗布することによる徐放性固体製剤の製法。
  3. 製薬的作用物質を請求項1に記載の結合剤の再生水性分散液と一緒に湿式造粒することによる徐放性固体製剤の製法。
  4. 製薬的作用物質および製薬的助剤5〜99.9質量%を直接打錠することによって医薬錠剤を製造する方法において、請求項1に記載の結合剤を助剤として錠剤に対して5〜95質量%の量で使用することを特徴とする、医薬錠剤の製法。
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