JP3619491B2 - 超音波診断装置の送信回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波診断装置の送信回路に関し、特に出力回路を構成するエミッタホロア回路の改良に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
超音波診断装置の送信回路は、送信信号を増幅して高電圧の出力信号を生成し、それを超音波振動子へ供給する回路である。従来の一般的な送信回路では、スイッチング回路構成が採用され、入力信号をトリガとして矩形波のパルスが生成される。このようなスイッチング回路構成の場合、その回路の電源電圧まで一律に出力信号の振幅が振れるため、送信重み付けや送信パワーコントロールなどを行うのが困難であった。
【0003】
ところで、近年、ハーモニックイメージングモードが一部の超音波診断装置に搭載されている。このハーモニックイメージングモードは、生体からの反射波の内で高調波成分を抽出し、その高調波成分を画像化するものである。よって、ハーモニックイメージングモードでは、不必要な高調波が送信波に含まれないことが前提条件とされる。つまり、例えば、送信信号として正弦波が送信回路に入力されてきた場合に、その送信信号の波形を忠実に再現しつつ増幅するリニアアンプが求められている。これに関しては、例えば、特開2000−87263に開示されている。しかしながら、負荷の主成分は、例えば数100pFの容量(超音波振動子の容量、ケーブルの容量、装置入力部の容量などの合計)であり、それに対して例えば100Vppの正弦波を印加すると、大きな出力電流が流れることになる。このため、既存の出力回路では、高周波化が困難であった。
【0004】
ここで、図3を用いて、従来の送信回路の一例について説明する。リニアアンプ方式の送信回路は、通常、図3に示すような回路構成を有する。符号10はエミッタホロア回路であり、符号12は電圧増幅部である。実際には、省電力のためのバイアスコントロール回路、低歪化やDCレベル安定化のための負帰還などが設けられるが、図示省略されている(後述する図1についても同様)。図3に示されるように、2段のエミッタホロアが形成されており、各トランジスタQ1〜Q4には低消費電力で大出力を得るためにB級動作条件が設定される(厳密には、クロスオーバー歪をなくすために、わずかのバイアス電流を流しておき、AB級動作条件を設定する)。一方のトランジスタQ1,Q3が能動状態にある時に他方のトランジスタQ2,Q4はオフとなる。また、一方のトランジスタQ1,Q3がオフ状態にある時に他方のトランジスタQ2,Q4は能動状態となる。
【0005】
しかし、トランジスタQ1〜Q4に着目すると、実際には、トランジスタQ1〜Q4の素子内ベース領域に蓄積された電荷がなくなるまで、トランジスタQ1〜Q4はオフとならない。低周波数領域では、信号の周期が長いために、その影響は少ないが、信号の周波数が高くなると、NPN及びPNPの両方のトランジスタがオンしている時間が信号周期に対して大きな割合を占めるようになる。特に、トランジスタQ3,Q4は、その前段のトランジスタQ1,Q2に比べて大電流を流す必要があり、高速のトランジスタを使うのが困難で、そのトランジスタQ3,Q4の両者がオンになる問題が顕著となる。つまり、負荷に流れるべき電流が、本来オフ状態にあるべきトランジスタの方に流れて出力が低下してしまうのである。また、負荷の主体が容量にあるため、エミッタホロアの性質により、周波数特性上でピークが発生したり、発振が生じたりする可能性もあった。負荷容量の影響を抑え込む方法として、出力に直列に入れた抵抗R6の抵抗値を大きくする(例えば50Ωにする)ことも考えられるが、そこには1A程度の出力電流が流れるため、現実的ではない。
【0006】
なお、特許第2933633号、特開2000−106508公報にも広帯域化を図った電力増幅回路が開示されているが、本発明と回路構成が異なる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、送信回路における出力トランジスタから蓄積電荷を短時間に逃がして送信回路の動作特性を良好にし、特に周波数特性を改善することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)望ましくは、入力された送信信号を超音波振動子へ出力するエミッタホロア回路を有し、前記エミッタホロア回路は、前記超音波振動子への出力信号が取り出される出力点にエミッタが共通接続された相補型の第1及び第2出力トランジスタと、前記第1及び第2出力トランジスタの前段にカスケード接続され、前記第1及び第2出力トランジスタの各ベースに対してそれぞれのエミッタが接続された相補型の第3及び第4出力トランジスタと、前記第1及び第2出力トランジスタにおける入力端子としてのベースの間に設けられ、前記第1出力トランジスタのベース−エミッタ間の降下電圧と前記第2出力トランジスタのベース−エミッタ間の降下電圧の加算値に相当する一定電圧を形成する第1定電圧回路と、を含む。
【0009】
上記構成によれば、第1及び第2トランジスタ(図1におけるQ3,Q4を参照)と、第2及び第3トランジスタ(図1におけるQ1,Q2を参照)とがカスケード接続され、第1トランジスタ及び第2トランジスタのベース間に第1定電圧回路(図1における30を参照)が設けられ、その第1定電圧回路は、第1出力トランジスタのベース−エミッタ間の降下電圧と第2出力トランジスタのベース−エミッタ間の降下電圧の加算値に相当する一定電圧を形成する。この第1定電圧回路によって、第1及び第2トランジスタに蓄積された電荷が速やかに放電される。よって、送信回路を広帯域化することが可能となる。ここで、第1定電圧回路は低インピーダンス回路である。
【0010】
(2)望ましくは、前記第1定電圧回路は定電圧形成用トランジスタを含み、前記定電圧形成用トランジスタのコレクタが前記第1出力トランジスタのベースに接続され、前記定電圧形成用トランジスタのエミッタが前記第2出力トランジスタのベースに接続され、前記定電圧形成用トランジスタのコレクタ−ベース間及びベース−エミッタ間にバイアス抵抗が設けられる。
【0011】
(3)望ましくは、前記第1出力トランジスタのベース端子と前記定電圧形成用トランジスタのコレクタとの間には第1抵抗器が設けられ、前記第1出力トランジスタのベース端子と前記定電圧形成用トランジスタのエミッタとの間には第2抵抗器が設けられ、前記第1抵抗器及び前記第2抵抗器は4〜10Ωの範囲内の抵抗値を有する。
【0012】
(4)上記目的を達成するために、本発明は、入力された送信信号を超音波振動子へ出力するエミッタホロア回路を有し、前記エミッタホロア回路は、前記超音波振動子への出力信号が取り出される出力点にエミッタが共通接続された相補型の第1及び第2出力トランジスタと、前記第1及び第2出力トランジスタの前段にカスケード接続され、前記第1及び第2出力トランジスタの各ベースに対してそれぞれのエミッタが接続された相補型の第3及び第4出力トランジスタと、前記第1及び第2出力トランジスタにおける入力端子としてのベースの間に設けられ、一定電圧を形成する第1定電圧回路と、前記第3及び第4出力トランジスタにおける入力端子としてのベースの間に設けられ、一定電圧を形成する直列接続された第2及び第3定電圧回路と、前記出力点に接続される容量負荷によるピークの発生や発振を抑制する手段として、前記出力点と前記第2及び第3定電圧回路の中点との間であって、当該エミッタホロア回路の入出力間に設けられた帰還抵抗と、を含むことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、エミッタホロア回路の入出力間への帰還抵抗の挿入によって、容量負荷による周波数特性上でのピーク発生や発振を抑制し、送信回路を広帯域化することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1には、本発明の好適な実施形態が示されており、図1は超音波診断装置の送信回路を示す回路図である。この図1の回路構成は、図3に示した従来の回路構成に対比されるものであり、従来と同様の構成には同一符号を付してある。
【0016】
図1において、送信回路はリニアアンプを構成し、それは大別して電圧増幅部22とエミッタホロア回路20とからなる。電圧増幅部22については、例えば、上記の特開2001−87263公報の図3に開示されている。電圧増幅部22は、送信波形の正側成分と負側成分とを個別的に出力し、それらをトランジスタQ1,Q2のベースに与える。
【0017】
エミッタホロア回路20においては、図示のように、2段のエミッタホロアが形成されている。一方のトランジスタQ1,Q3が能動状態にある時に他方のトランジスタQ2,Q4はオフとなる。また、一方のトランジスタQ1,Q3がオフ状態にある時に他方のトランジスタQ2,Q4は能動状態となる。
【0018】
本実施形態においては、最終段のトランジスタQ3,Q4に蓄積された電荷は、抵抗R1,R2及び定電圧回路30を通り、前段のトランジスタQ1,Q2に吸収される。本実施形態において、定電圧回路30は、トランジスタQ3,Q4のベース−エミッタ間の両降下電圧を加算した一定電圧を形成するものである。更に、定電圧回路30のインピーダンスは小さく、抵抗R1,R2も10Ω以下とされるので(望ましくは実用面から4〜10Ω)、蓄積電荷の放電は従来より短時間で行われる。その結果、送信回路を高帯域化することが可能となる。ちなみに、図3に示した従来の回路構成では、トランジスタQ1,Q2の間には定電圧回路はなく、数100Ω程度の抵抗R7が挿入されていたため放電に時間がかかっていた。これに対し図1の回路構成によれば、短時間での放電を実現し、良好な送信リニアアンプを構成できる。
【0019】
エミッタホロアは理想的にはゲイン1のアンプであるから、通常、入力と出力の電圧は同じとなり、エミッタホロアの入出力間に挿入した抵抗R3の両端には電位差が発生せず、抵抗R3は何も作用しない。なお、符号32及び符号34はそれぞれ定電圧回路を表している。それらの中点28と出力点26との間に帰還経路24が形成され、その帰還経路24上に抵抗R3が設けられている。
【0020】
ところが、容量負荷により入出力の位相が変わると、そこに電位差が発生し、電流が流れる。すなわち、抵抗R3が前段の増幅器の負荷となりゲインが低下する。そこで、抵抗R3の抵抗値を適当に選べば、容量負荷によるピークの発生や発振を抑制できる。また、コンデンサC1,C2の容量を小さくできるので、より広帯域化を図れる。
【0021】
図2には、図1に示した定電圧回路30の構成例が示されている。トランジスタQ5のコレクタ−ベース間及びエミッタ−ベース間にはバイアス抵抗R8,R9が設けられている。定電圧回路32,34についても同様の回路構成を採用できる。なお、ダイオードを必要個数だけ直列接続し、それにより定電圧回路を構成することもできる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、出力トランジスタの蓄積電荷を迅速に放電して周波数特性を改善できる。また、エミッタホロア回路の入出力間に帰還かけることにより送信回路を広帯域化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る送信回路の好適な実施形態を示す回路図である。
【図2】図1に示す定電圧回路の具体的な構成例を示す回路図である。
【図3】従来の送信回路の例を示す回路図である。
【符号の説明】
20 エミッタホロア回路、22 電圧増幅部、24 帰還経路、30,32,34 定電圧回路。

Claims (2)

  1. 入力された送信信号を超音波振動子へ出力するエミッタホロア回路を有し、
    前記エミッタホロア回路は、
    前記超音波振動子への出力信号が取り出される出力点にエミッタが共通接続された相補型の第1及び第2出力トランジスタと、
    前記第1及び第2出力トランジスタの前段にカスケード接続され、前記第1及び第2出力トランジスタの各ベースに対してそれぞれのエミッタが接続された相補型の第3及び第4出力トランジスタと、
    前記第1及び第2出力トランジスタにおける入力端子としてのベースの間に設けられ、一定電圧を形成する第1定電圧回路と、
    前記第3及び第4出力トランジスタにおける入力端子としてのベースの間に設けられ、一定電圧を形成する直列接続された第2及び第3定電圧回路と、
    前記出力点に接続される容量負荷によるピークの発生や発振を抑制する手段として、前記出力点と前記第2及び第3定電圧回路の中点との間であって、当該エミッタホロア回路の入出力間に設けられた帰還抵抗と、
    を含むことを特徴とする超音波診断装置の送信回路。
  2. 請求項1記載の送信回路において、
    前記第1出力トランジスタのベース端子と前記第1定電圧回路における第1出力トランジスタ側端子との間には第1抵抗器が設けられ、
    前記第2出力トランジスタのベース端子と前記第1定電圧回路における第2出力トランジスタ側端子との間には第2抵抗器が設けられたことを特徴とする超音波診断装置用の送信回路。
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