JP3618871B2 - 慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法及び測定試薬 - Google Patents

慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法及び測定試薬 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法及び測定試薬に関する。更に詳しくは、診断対象者の白血球が産生するミエロペルオキシダーゼ(以下の説明において、ミエロペルオキシダーゼのことをMPOと略記することがある)量を測定することにより、慢性関節リウマチの活動性の診断に有用な慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法及び測定試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
日本における慢性関節リウマチ患者は、人口1000人あたり約3人の割合といわれており、特に女性に多いことが知られている。
▲1▼定義:リウマチの定義は、「骨、関節、筋肉、腱などの運動器官に痛みとこわばりを訴える疾患」であり、特に慢性関節リウマチ(RA)は、多発性関節炎を主症状とするが、内臓にも広範に病変を惹起するため、全身性疾患であるとされている。
▲2▼病因:リウマチの病因はリウマトイド因子(RF)の存在など、自己免疫疾患的な色彩の濃いことが認められているが、これですべてを説明することは困難で未だ解明されていないのが現状である。この他には従来から感染説、内分泌異常説、遺伝説などがある。
▲3▼診断および治療:リウマチの診断には、アメリカリウマチ学会(ARA)により、1958年に作成された11項目の診断基準が使用されていたが(Bulletine on the Rheumatic Diseases 、第9巻、175ページ、1958年)、1987年に改訂され、診断基準が次の7項目に削減された(Arthritis and Rheumatism、別冊、45ページ、1987年)。
【0003】
▲1▼少なくとも1時間以上持続する朝のこわばり(6週間以上)
▲2▼3個以上の関節の腫脹(6週間以上)
▲3▼手(WRIST)、中手指関節(MCP)、近位指関節(PIP)の腫脹(6週間以上)
▲4▼対称性関節腫脹
▲5▼手、指のX線像の変化
▲6▼皮下結節(リウマチ結節)
▲7▼RFの存在
そして、これら7項目のうち少なくとも4項目の病変が認められれば、リウマチであると診断される。
【0004】
特に、これらの基準のうち、リウマチの客観的診断にはRFの測定を行うことが一般的に行われている。すなわち、RFの検出は、RAの診断に際して不可欠となっており、さらにRA以外に多くの関節症状(関節痛、関節炎)を有する他疾患との鑑別上にも利用されている。
しかし、実際には健常人でもRF陽性の人が数〜10%程度存在し、一方リウマチと診断された人でもRFの陽性率は40〜90%である(検査と技術、第16巻、1442ページ、1988年)。また、血清中にRFが認められる疾患としては、RA以外に、リウマチ近縁疾患やRA以外の膠原病諸疾患(シェーグレン症候群、アジュバント病、膠原病など)で20〜40%の陽性率を示し、その他肝疾患(特に肝硬変症、慢性肝炎)や心疾患(特に心筋梗塞発作後、亜急性細菌性心内膜炎)ではともに30〜50%の高い陽性率を示す。
【0005】
また、慢性関節リウマチの治療においては、通常各種の非ステロイド性抗炎症剤が最もよく使用されているが、RF値は本薬剤との関係では、ほとんど不変であることが多い。副腎皮質ステロイド剤、金製剤、ペニシラミン剤などの投与ではRFの抗体価減少や陰性化がみられたとの報告もなされている。しかしながら、実際にはRAの活動性病期あるいは治療効果の判定にはRFは用いられず、CRP値や赤沈値をもって指標とされているのが現状である(メディカル テクノロジー、第18巻、第7号、609ページ、1990年)。
【0006】
近年の研究により、リウマチの炎症性とサイトカインとの関係が徐々に明らかになりつつある。特にインターロイキン1(IL−1)および腫瘍壊死因子(TNF )との関係については、その報告も多い(アースリティス・アンド・リウマティズム、第30巻、562ページ、1987年)。これらの報告によれば、特にリウマチを炎症性の疾患の一つとしてとらえ、局所炎症とサイトカインとの関係が論じられている。また、インターロイキン6(IL−6)および顆粒球/単球マクロファージ刺激因子との関連も明らかになりつつある(医学の歩み、第161巻、580ページ、1992年)。この報告も、どちらかといえば、リウマチに限らず炎症性の疾患としての関係が論じられている。
【0007】
また、特開平6−194367号公報には、ヒアルロン酸を除去したヒト関節液に含まれる単球マクロファージ刺激因子(M−CSF)を、M−CSFに特異的に反応する抗体と反応させて免疫学的に測定するリウマチ疾患の診断方法が提案されているが、この方法には、▲1▼関節液の採取に苦痛を伴う点、▲2▼単に関節液中のM−CSFを測定するのみであるので、被検者の生体内の状態を正確に反映しているとはいえない点、などの問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、慢性関節リウマチは、その患者人口の多さ、社会的意義の大きさ(患者のQOL;Quality of Life)などから、適切な治療のための薬剤投与計画や、疾患活動性の把握を可能にする診断法が望まれている。しかし、そのような診断法は未だに報告されていない。本発明は、以上の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に、慢性関節リウマチの疾患活動性を感度よくかつ特異的に診断するのに有用な慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法及び測定試薬を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
周知のごとく、生体の免疫担当細胞としては、単球、マクロファージ、顆粒球、リンパ球等の白血球があり、これらの細胞は血液中や各臓器、器官において免疫監視を行うとともに、各種の免疫反応において様々な役割を担って活動している。一般に、各種の疾患や、悪性腫瘍においては、多様な免疫反応によって、上記の細胞の機能が抑制されたり、または増強されたりすることが知られている。そこで、これらの細胞の機能を調べることによって、生体の免疫機能を把握することが可能となり、種々の病態の把握や薬剤の投与タイミングの決定など治療の指針となる情報を提供することができる。
【0010】
慢性関節リウマチでも、関節局所に集まった好中球などの白血球が、RAの関節炎にどのように関連しているかについて、骨破壊の面からの研究が多い。Hollander ら(Ann. Intern. Med.,62巻、271ページ、1965年)は、IgGとRFからなる免疫複合体を貪食した関節液中の好中球から、ライソゾーム酵素が放出され、軟骨が破壊されることを述べた。Zvaiflerら(In Arthritis and Allied conditions, 9th, Lea and Febiger, 417ページ、1979年)も、滑膜組織に浸潤したリンパ球がRFを産生し、IgGと免疫複合体を形成し、これを好中球が貪食し、ライソゾーム酵素、活性酸素、プロスタグランディンを放出して、骨破壊をもたらすと述べた。このように、関節液中の好中球などの白血球が産生する各種酵素類は、関節の軟骨および骨破壊に主要な役割を演じている。
【0011】
しかし、リウマチの活動性をRFとIgGとの免疫複合体との反応の結果、遊離される白血球由来の酵素で診断する方法に関する報告は少ない。本発明者らは、鋭意研究の結果、後述のような作用機序により、慢性関節リウマチでの炎症の程度および疾患活動性を、患者自身の細胞機能、すなわちミエロペルオキシダーゼ放出能で定量的に診断できること、その診断のための測定方法及び測定試薬を見い出した。
【0012】
すなわち、請求項1記載の発明(以下、請求項1記載の発明を本発明1という)は、リウマトイド因子に対する抗原に血液を接触させ、リウマトイド因子とそれに対する抗原からなる免疫複合体を形成させて、ミエロペルオキシダーゼの放出を誘導させ、該ミエロペルオキシダーゼの放出量を測定することを特徴とする慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法である。
【0013】
すなわち、本発明1は、インビトロの系に於いて、RFに対する抗原に血液を接触させる。血液としてRA患者由来の血液のように、血液中にRFが含まれていれば、この操作により、RFとそれに対する抗原からなる免疫複合体が形成される。すなわち、本発明1は、血液中のRFとRFに対する抗原とを反応させて免疫複合体を形成させる。この反応系に共存している血液中の白血球は、上記免疫複合体のFc部分により、その表面上のレセプターが活性化され、速やかにミエロペルオキシダーゼ等のライソゾーム酵素を放出する。本発明1ではこのミエロペルオキシダーゼの放出量を測定する。すなわち、本発明1によると、このように、生体組織内でのインビボ免疫応答を、簡便なインビトロアッセイ系に適用することが可能となった。
【0014】
また、ミエロペルオキシダーゼは、他のペルオキシダーゼと同様、プロトヘムを補欠分子族として含む酵素であり、主に好中球等骨髄系の白血球から産生されるものであり、他のエラスターゼ、コラゲナーゼに比べて好中球に特異性が高いものである。
【0015】
本発明1は、上記のように、インビトロの系で形成された免疫複合体により、白血球のミエロペルオキシダーゼの放出を誘導し、該ミエロペルオキシダーゼの放出量を測定することにより、慢性関節リウマチの疾患活動性をより正確に把握することのできる、正確かつ簡便な診断方法に有用な慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法を提供するものである。
【0016】
以下、本発明1を詳細に説明する。
本発明1でいう、RFに対する抗原とは、RFと抗原抗体反応性を有し、免疫複合体を形成するものであれば、特に限定されない。RFに対する抗原としては、抗原の成分にRFとの反応性を獲得せしめたものが挙げられる。上記抗原の成分としては血液中のグロブリン画分が挙げられる。上記グロブリン画分は、動物血清から調製されたものでも、あるいは、細胞融合法によって作成されたモノクローナル抗体でもかまわない。上記グロブリン画分としては、その産生種は特に限定されず、例えば、ヒトやウサギなどが挙げられる。上記グロブリン画分としては、例えば、ガンマグロブリンやIgGが挙げられる。上記グロブリン画分としては、特に、RF検出用の免疫診断試薬で実績のある、ウサギガンマグロブリン、ウサギIgG、ヒトガンマグロブリンおよびヒトIgGより成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0017】
上記抗原の成分にRFとの抗原抗体反応性を獲得せしめる方法としては、通常行われているような、抗原の成分を熱処理する方法、酵素処理する方法など、RFとの抗原抗体反応性を低下させない方法ならば、特に限定されない。
【0018】
本発明1において、RFに対する抗原に血液を接触させる際の、血液としては、全血又はその希釈液が使用される。全血を希釈する場合には、例えば、リン酸緩衝液、ハンクス緩衝液、MEM、RPMI−1640等の通常の培地のいずれも使用できる。従って、本発明1においては、血液より単球や好中球を分離する必要がなく、それに伴う操作や処理時間は不要である。またそれらの操作、処理時間などによる細胞の活性低下、または不要な活性化が惹起される問題もない。
【0019】
また、本発明1では、検査に必要とされる血液量も非常に少なくて済み、被採血者の負担も軽減される。また、上記のように、全血またはその希釈液を用いるため、血液中に含まれる様々な液性因子や細胞の関与が、生体内と同様に働き、より正確に生体内の免疫機能を把握することができる。
【0020】
また、本発明1では、検査に必要とされる血液の採取は常法に従い、血液凝固を起こさせない任意の方法で実施できる。例えばヘパリン採血、クエン酸採血等が挙げられる。ただし、ミエロペルオキシダーゼの放出は、細胞の生物学的反応であるため、血液や培地中のカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどをキレートしないヘパリン採血などがより好ましい。
【0021】
本発明1において、RFとそれに対する抗原からなる免疫複合体を形成させて、ミエロペルオキシダーゼの放出を誘導させる際の反応は、プレートや試験管などの容器中で行われるが、その際、プレートや試験管などを振とう機や回転培養器を用いて混和することが、ミエロペルオキシダーゼの放出には望ましく、個々の血液サンプルの慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能を生体に近い状態で把握し易くする。上記反応温度は、通常37℃付近の温度条件下で行われるが、15℃から42℃の範囲でも行い得る。
【0022】
本発明1において、放出されたミエロペルオキシダーゼの測定には、請求項6記載の測定方法(詳細後述)を用いるのが、正確且つ簡便であるが、各種の酵素測定法、代表的には比色定量法、化学発光法等でも行い得る。
【0023】
本発明1の好ましい一実施形態を挙げると、グロブリン画分、例えば、ヒトガンマグロブリンを熱変性させてRFとの反応性を獲得せしめる。これに、リウマチ患者血清を全血のまま、または希釈して所定量を加える。これにより、熱変性グロブリンとRFとが反応して免疫複合体が形成される。次いで、反応溶液中の免疫複合体を貪食しようとした白血球表面に、免疫複合体が強く付着し、白血球からミエロペルオキシダーゼが放出される。このミエロペルオキシダーゼ量を測定することにより、慢性関節リウマチによる炎症の程度を把握することができる。
【0024】
請求項3記載の発明(以下、請求項3記載の発明を本発明3という)は、不溶性担体に固定化されたリウマトイド因子に対する抗原の成分に血液を接触させ、リウマトイド因子とそれに対する抗原からなる免疫複合体を形成させて、ミエロペルオキシダーゼの放出を誘導させ、該ミエロペルオキシダーゼの放出量を測定することを特徴とする慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法である。
【0025】
以下、本発明3を詳細に説明する。
本発明3で使用される、RFに対する抗原の成分は、本発明1で使用される抗原の成分と同様である。本発明3で使用されるRFに対する抗原の成分としては、本発明1と同様の理由で、ウサギガンマグロブリン、ウサギIgG、ヒトガンマグロブリンおよびヒトIgGより成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。本発明3では、上記抗原の成分が不溶性担体に固定化されていることにより、RFとの抗原抗体反応性が獲得せしめられている。従って、患者由来の血液のように血液中にRFが存在すれば、不溶性担体に固定化された抗原の成分と反応して免疫複合体が形成される。そして、血液中の白血球は、上記免疫複合体を貪食しようとするが、免疫複合体が不溶性担体上に固定化されているため、貪食は困難となり、速やかにミエロペルオキシダーゼなどのライソゾーム酵素を放出する。本発明3では、このように、不溶性担体を用いることにより、生体組織内でのインビボ免疫応答を、簡便なインビトロアッセイ系に適用することが可能となった。
【0026】
本発明3は、上記のように、形成された免疫複合体により、ミエロペルオキシダーゼの放出を誘導し、該ミエロペルオキシダーゼの産生量を測定することにより、慢性関節リウマチの疾患活動性をより正確に把握することのできる、正確かつ簡便な慢性関節リウマチの診断方法として有用な慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法を提供するものである。
【0027】
本発明3で使用される不溶性担体は、その表面にRFに対する抗原の成分を固定化し得る素材ならば、表面が疎水性であるもの、官能基を有するものなどいずれでもよく、特に制限はない。好適な材料は、疎水性材料または表面に官能基を有する高分子材料である。例えば、清浄光学ポリスチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ニトロセルロースおよびシリコンオキサイドより成る群から選ばれる高分子材料が挙げられる。また、タンニン酸で処理した赤血球なども使用可能である。不溶性担体の形状としては、例えば、ラテックス、ビーズ、プレート、チューブなどが挙げられる。不溶性担体としては、特に、工業的に安定した品質で大量生産しうるラテックス、またはプラスチックビーズ、プラスチックプレート、プラスチックチューブなどのプラスチック成型品が好適に使用される。
【0028】
RFに対する抗原の成分を不溶性担体に固定化する方法としては、RFとの反応性を低下させない方法ならば、とくに限定されない。たとえば、疎水性表面を有する不溶性担体には、疎水性相互作用による物理吸着法が、迅速かつ簡便に多量のRFに対する抗原の成分を固定化する方法として好適である。また酵素処理したRFに対する抗原の成分を安定に、固定化するために、化学結合法なども好適である。
【0029】
本発明3において、RFに対する抗原に血液を接触させる際の、血液としては、全血又はその希釈液が使用される。全血を希釈する場合には、例えば、本発明1で述べたものと同様のものが使用できる。従って、本発明3においても血液より単球や好中球を分離する必要がなく、それに伴う操作や処理時間は不要である。またそれらの操作、処理時間などによる細胞の活性低下、または不要な活性化が惹起される問題もない。
【0030】
また、本発明3でも、本発明1と同様に、検査に必要とされる血液量も非常に少なくて済み、被採血者の負担も軽減される。また、上記のように、全血またはその希釈液を用いるため、血液中に含まれる様々な液性因子や細胞の関与が、生体内と同様に働き、より正確に生体内の免疫機能を把握することができる。
【0031】
また、検査に必要とされる血液の採取方法も、本発明1で述べた方法と同様である。
【0032】
本発明3において、RFとそれに対する抗原からなる免疫複合体を形成させて、ミエロペルオキシダーゼの放出を誘導させる際の反応は、本発明1と同様に、プレートや試験管などの容器中で行われるが、その際、プレートや試験管などを振とう機や回転培養器を用いて混和することが、ミエロペルオキシダーゼの放出には望ましく、個々の血液サンプルの慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能を生体に近い状態で把握し易くする。上記反応温度は、通常37℃付近の温度条件下で行われるが、15℃から42℃の範囲でも行いうる。
【0033】
本発明3において、放出されたミエロペルオキシダーゼの測定方法は、本発明1と同様である。
【0034】
本発明3の好ましい一実施形態を挙げると、グロブリン画分、例えば、ヒトガンマグロブリン溶液をプラスチックプレートに固定化させる。これに、リウマチ患者血液を全血のまま、または希釈して所定量を加える。これにより、固定化されたヒトグロブリンとRFとが反応して免疫複合体が形成される。次いで、プレート上に形成された免疫複合体を貪食しようとした白血球が、不溶性担体に強く付着し、ミエロペルオキシダーゼが放出される。このミエロペルオキシダーゼ量を測定することにより、慢性関節リウマチによる炎症の程度を把握することができる。
【0035】
請求項6記載の発明(以下、請求項6記載の発明を本発明6という)は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で放出されたミエロペルオキシダーゼを、不溶性粒子に固定化された抗ミエロペルオキシダーゼ抗体と抗原抗体反応させて該不溶性粒子を凝集させ、その凝集の度合いを検出することにより、該ミエロペルオキシダーゼ量を測定する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法である。
【0036】
以下、本発明6を詳細に説明する。
本発明6で使用される抗ミエロペルオキシダーゼ抗体は、少なくとも一種類以上の抗ミエロペルオキシダーゼポリクローナル抗体または抗ミエロペルオキシダーゼモノクローナル抗体が挙げられる。該抗体の精製方法としては、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィ、もしくはプロテインAのような群特異的吸着体を用いたアフィニティークロマトグラフィー、または精製ミエロペルオキシダーゼを担体ゲルに固定化したものを用いるアフィニティークロマトグラフィー等の方法が挙げられ、これらを単独あるいはいくつかを組み合わせた方法が挙げられる。
【0037】
上記抗体としては、通常の抗ミエロペルオキシダーゼ抗体分子だけでなく、上記抗体分子をペプシンやパパイン等のタンパク質分解酵素で処理しFcフラグメントを除いた、FabやF(ab’)分子も使用できる。抗体として、FabやF(ab’)分子を用いると、抗体を不溶性粒子に固定化する際、又は担体ゲルを用いてアフィニティークロマトグラフィーによって抗体を精製する際などに、不溶性粒子や担体ゲルに結合した抗体分子に不純物が抗原抗体反応以外の相互作用により結合することが防止される。
【0038】
本発明6で使用される不溶性粒子は、その表面に抗ミエロペルオキシダーゼ抗体を固定化し得る素材ならば、表面が疎水性であるもの、官能基を有するものなどいずれでもよく、特に制限はない。好適な材料は、疎水性材料または表面に官能基を有する高分子材料である。上記高分子材料としては、合成高分子でも、天然高分子でもよい。また、有機高分子でも、無機高分子でもよい。合成高分子からなる不溶性粒子の例としては、ポリスチレン粒子、スチレン系共重合体粒子、ナイロン粒子、ポリアクリルアミド粒子等が挙げられる。無機高分子からなる不溶性粒子の例としては、ガラスビーズ、シリカゲル粒子等が挙げられる。天然高分子からなる不溶性粒子の例としては、架橋デキストラン、架橋アガロース等のゲルが挙げられる。また、タンニン酸で処理した赤血球なども使用可能である。また、これらを組み合わせた粒子も使用可能であり、例えば、アクリルアミドとアガロースを組み合わせた粒子、アクリルアミドとデキストラン誘導体を組み合わせた粒子などが挙げられる。また、高分子材料以外の粒子としては、金属粒子も使用可能である。これらの不溶性粒子の中で、工業的に安定した品質で大量生産しうるラテックス粒子が特に好適である。
【0039】
本発明6の測定方法において、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体を不溶性粒子に固定化する方法としては、固定化によって抗ミエロペルオキシダーゼ抗体のミエロペルオキシダーゼに対する反応性を低下させない方法ならば、特に限定されない。例えば、不溶性粒子が疎水性表面を有する場合には、疎水性相互作用による物理吸着法が、迅速かつ簡便に多量の抗ミエロペルオキシダーゼ抗体を固定できるので好適である。また、不溶性粒子上に官能基が存在する場合(不溶性粒子分子そのものが官能基を有する場合、又は不溶性粒子分子に官能基が導入された場合がある)には、該官能基と抗体分子中の官能基とを適当な架橋剤を用いて架橋し、共有結合により固定化させる化学結合法なども好適である。
【0040】
本発明6の測定方法は、不溶性粒子に固定化された抗ミエロペルオキシダーゼ抗体とミエロペルオキシダーゼとを抗原抗体反応させて該不溶性粒子を凝集させ、その凝集の度合いを検出することにより、該ミエロペルオキシダーゼ量を測定する。換言すると、この方法では、不溶性粒子に抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化されているので、各粒子上の抗ミエロペルオキシダーゼ抗体とミエロペルオキシダーゼとが抗原抗体反応すると、ミエロペルオキシダーゼを介して不溶性粒子同士が結合し不溶性粒子が大きくなり凝集する。この凝集の度合いは、ミエロペルオキシダーゼの量と正の相関をするので、凝集の度合いを検出することによりミエロペルオキシダーゼ量を検出できる。
【0041】
上記の抗原抗体反応の温度は、通常37℃付近の生理的温度条件下で行われるが、15℃から42℃の範囲でも行い得る。
【0042】
生じた凝集の度合いを検出する方法としては、例えば、光学的に測定する方法又は目視観察する方法が挙げられる。
【0043】
上記の測定系としては、不溶性粒子としてラテックス粒子を使用した系が特に好適である。
【0044】
また、本発明6の方法で用いられるミエロペルオキシダーゼを含む検体としては、本発明1〜5の測定方法により得られた血液成分であり、具体的には、血液成分から血球成分を除去した血漿、血清又はそれらの希釈液が使用される。
【0045】
また、本発明6の方法では、測定に必要とされる検体量が少なくて済むので、本発明1〜5の測定方法に用いられる血液の量も少なくて済み、例えば、慢性関節リウマチの診断のための被検者の負担も軽減される。
【0046】
本発明6は、上記のように、正確かつ簡便な慢性関節リウマチの診断方法として有用な慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法によって、放出されたミエロペルオキシダーゼ量を正確かつ簡便に測定する方法を提供するものである。
【0047】
本発明6の好ましい一実施形態を挙げると、例えば、ウサギ抗ヒトミエロペルオキシダーゼ抗体をポリスチレンラテックスに固定化させる。これに、本発明1〜5の方法により、ミエロペルオキシダーゼを放出させたリウマチ患者血液の血清または血漿をそのまま、又は希釈して所定量を加える。ミエロペルオキシダーゼとそれに対する抗体との抗原抗体反応の結果、形成された凝集塊を検出することにより、検体中のミエロペルオキシダーゼ量を測定する。その結果より、慢性関節リウマチによる炎症の程度を把握することができる。
【0048】
請求項7記載の発明(以下、請求項7記載の発明を本発明7という)は、リウマトイド因子に対する抗原又は不溶性担体に固定化されたリウマトイド因子に対する抗原の成分、及び抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子からなることを特徴とする慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬である。
【0049】
本発明7で用いられるリウマトイド因子に対する抗原は、本発明1の説明において述べたものと同様であり、具体的には、RFと抗原抗体反応性を有し、免疫複合体を形成するものであれば、特に限定されない。RFに対する抗原としては、抗原の成分にRFとの反応性を獲得せしめたものが挙げられる。上記抗原の成分としては血液中のグロブリン画分が挙げられる。上記グロブリン画分は、動物血清から調製されたものでも、あるいは、細胞融合法によって作成されたモノクローナル抗体でもかまわない。上記グロブリン画分としては、その産生種は特に限定されず、例えば、ヒトやウサギなどが挙げられる。上記グロブリン画分としては、例えば、ガンマグロブリンやIgGが挙げられる。上記グロブリン画分としては、特に、RF検出用の免疫診断試薬で実績のある、ウサギガンマグロブリン、ウサギIgG、ヒトガンマグロブリンおよびヒトIgGより成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0050】
上記抗原の成分にRFとの抗原抗体反応性を獲得せしめる方法としては、通常行われているような、抗原の成分を熱処理する方法、酵素処理する方法など、RFとの抗原抗体反応性を低下させない方法ならば、特に限定されない。
【0051】
本発明7で用いられるリウマトイド因子に対する抗原の成分としては、本発明3の説明において述べたものと同様であり、具体的には、ウサギガンマグロブリン、ウサギIgG、ヒトガンマグロブリンおよびヒトIgGより成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0052】
本発明7で用いられる不溶性担体は、本発明3の説明において述べたものと同様であり、具体的には、その表面にRFに対する抗原の成分を固定化し得る素材ならば、表面が疎水性であるもの、官能基を有するものなどいずれでもよく、特に制限はない。好適な材料は、疎水性材料または表面に官能基を有する高分子材料である。例えば、清浄光学ポリスチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ニトロセルロースおよびシリコンオキサイドより成る群から選ばれる高分子材料が挙げられる。また、タンニン酸で処理した赤血球なども使用可能である。不溶性担体の形状としては、例えば、ラテックス、ビーズ、プレート、チューブなどが挙げられる。不溶性担体としては、特に、工業的に安定した品質で大量生産しうるラテックス、またはプラスチックビーズ、プラスチックプレート、プラスチックチューブなどのプラスチック成型品が好適に使用される。
【0053】
本発明7では、不溶性担体に固定化されたRFに対する抗原の成分が使用される。上記抗原の成分を不溶性担体に固定化する方法としては、本発明3の説明で述べた方法と同様であり、例えば、物理吸着法や化学結合法が使用できる。
【0054】
本発明7で用いられる、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子において、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体及び不溶性粒子としては、本発明6の説明で述べたものと同様である。
【0055】
本発明7で用いられる、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子は、ミエロペルオキシダーゼと抗原抗体反応するが、それにより凝集するものが好ましい。特に、上記凝集の度合いがミエロペルオキシダーゼの量と正の相関をするものが好ましく、その場合は、その凝集の度合いを検出することによりミエロペルオキシダーゼ量を定量できる。請求項8記載の発明(請求項8記載の発明を本発明8という)においては、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子の作用として、ミエロペルオキシダーゼとの抗原抗体反応による凝集現象を利用してミエロペルオキシダーゼ量を検出するものに限定される。このような作用をする抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子の例としては、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化されたラテックス粒子が挙げられる。
【0056】
本発明7の測定試薬の使用方法は、リウマトイド因子に対する抗原(例えば、ヒトガンマグロブリンを熱変性させてRFとの反応性を獲得せしめたもの)又は不溶性担体に固定化されたリウマトイド因子に対する抗原の成分に、リウマチ患者血清を全血のまま、または希釈して所定量を加え、該抗原又は不溶性担体に固定化された抗原の成分とRFとを反応させて免疫複合体を形成させ、次いで、血液中の共存する白血球からミエロペルオキシダーゼを放出せしめる。次いで、放出されたミエロペルオキシダーゼを含む血液(血漿)と抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子を接触させて、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体とミエロペルオキシダーゼとを抗原抗体反応させ、その反応量から放出されたミエロペルオキシダーゼの量を測定する。この場合、本発明8の測定試薬の場合は、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体とミエロペルオキシダーゼとの抗原抗体反応による不溶性粒子の凝集の度合いを検出することにより、放出されたミエロペルオキシダーゼの量を定量する。以上のようにして測定される、放出されたミエロペルオキシダーゼの量は、慢性関節リウマチによる疾患活動性と相関するので、本発明7又は8の試薬は、慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定に有用である。
【0057】
(作用)
上記のように、本発明1及び2によれば、RFに対する抗原と患者血液中のリウマトイド因子が結合し、形成された免疫複合体が好中球などの白血球を活性化させてミエロペルオキシダーゼが放出される。このような方法で放出されたミエロペルオキシダーゼは、被採血者の慢性関節リウマチの疾患活動性をよく反映するマーカーとなるため、このミエロペルオキシダーゼ量を測定することにより、被採血者のリウマチの疾患活動性を正確に定量的に測定することができる。
【0058】
上記のように、本発明3〜5によれば、不溶性担体に固定化されたRFに対する抗原の成分と患者血液中のリウマトイド因子が結合し、形成された免疫複合体が好中球を活性化させてミエロペルオキシダーゼが放出される。このような方法で放出されたミエロペルオキシダーゼは、被採血者の慢性関節リウマチの疾患活動性をよく反映するマーカーとなるため、このミエロペルオキシダーゼ量を測定することにより、被採血者のリウマチの疾患活動性を正確に定量的に測定することができる。
【0059】
上記のように、本発明6によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で放出されたミエロペルオキシダーゼを、不溶性粒子に固定化された抗ミエロペルオキシダーゼ抗体と抗原抗体反応させて該不溶性粒子を凝集させ、その凝集の度合いを検出することにより、該ミエロペルオキシダーゼ量を測定するので、放出されたミエロペルオキシダーゼ量を正確かつ簡便に測定することができる。
【0060】
上記のように、本発明7によれば、リウマトイド因子に対する抗原又は不溶性担体に固定化されたリウマトイド因子に対する抗原の成分と、リウマチ患者血清等と接触させ、血液中の白血球からミエロペルオキシダーゼを放出せしめ、該ミエロペルオキシダーゼ量を、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子との反応量によって求めるので、リウマチ患者等のリウマチの疾患活動性を簡便に且つ正確に測定することができる。
【0061】
上記のように、本発明8によれば、本発明7と同様にして放出されたミエロペルオキシダーゼ量を、抗ミエロペルオキシダーゼ抗体とミエロペルオキシダーゼとの抗原抗体反応による不溶性粒子の凝集の度合いを検出することにより定量するので、リウマチ患者等のリウマチの疾患活動性を、より一層、簡便に且つ正確に測定することができる。
【0062】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1〜10、比較例1〜10)
実施例1〜10は、熱変性グロブリンとMPO(ミエロペルオキシダーゼ)測定用基質溶液とからなる、慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬を用いた実施例である。
【0063】
I.試薬および材料
実施例1〜10、比較例1〜10で使用した試薬および材料は以下の通りである。
グロブリン(抗原の成分):ウサギIgG(Purified Rabbit IgG、Cappel Research Products社製、19.0mg/ml )を用いた。
MRL/lpr マウス血液:多発性関節炎を自然発症したMRL/Mp−lpr/lprマウス(以下MRL/lpr マウスと略す、30週令、雄性)から採取した血液を用いた。
正常マウス血液:ICR マウス(30週令、雄性)から採取した血液を用いた。
グロブリン希釈用緩衝液:50mMグリシン−NaOH (pH8.40)をグロブリン希釈用緩衝液として用いた。
血液希釈用緩衝液:13mM NaHPOと23mM KHPOを混合してpHを6.50に調整し、NaCl濃度を140mM に調整したもの(以下Phosphate buffered saline;PBSと略す)にウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin、FractionV、Miles Corp.社製)を 5%(w/v )になるように添加したものを血液希釈用緩衝液として用いた。
【0064】
ブロッキング用緩衝液:PBSにウシ血清アルブミンが1%(w/v )になるように添加したものを用いた。
MPO(ミエロペルオキシダーゼ)測定用基質溶液:0.1M McCilvine buffer (pH5.7 )にDA−67 (和光純薬、試薬特級)を0.1mM になるように溶解したもの99mlに、2 %Hを1ml 添加したものを基質溶液とした。なお、DA−67 とは、10−(Carboxymethylaminocarbonyl)−3,7−bis(dimethylamino)−phenothiazine sodium saltのことである。
RF測定用試薬:血清中のRF測定用TIA試薬(オートTIA RFII「ニッスイ」、日水製薬社製)を用いた。
プラスチックプレート:Nunc社製のEIA (酵素免疫測定法)用プラスチックプレート(96ウエル、平底、ポリスチレン製)を用いた。
【0065】
II. 方法
(1)ミエロペルオキシダーゼの放出および測定
▲1▼抗原の成分であるグロブリンの溶液を35℃で2時間インキュベートすることにより、グロブリンを熱変性してグロブリンにRFとの抗原性を獲得させた。この熱変性グロブリンを、グロブリン希釈用緩衝液で10倍希釈した。
▲2▼熱変性グロブリンの吸着を回避できる容器としてプラスチックプレートを以下に示す方法で表面処理したものを反応容器として用いた。各ウェルにブロッキング用緩衝液を200μl ずつ添加し、4℃で12時間インキュベートした後、ウェル中の溶液を吸引除去した。次に、PBSを200μl ずつ各ウェルに添加し、吸引除去した。以下この操作を3回繰り返した。この方法で得られたプラスチックプレートを反応容器として用いた。
【0066】
▲3▼上記▲1▼で得られた10倍希釈熱変性グロブリン溶液をウェルに100μl 添加し、次いでマウス血液(ヘパリン採血したもの)を血液希釈用緩衝液で10倍希釈し、検体としてウェルに200μl 添加した。ブランクとして、10倍希釈熱変性グロブリン溶液の代わりにグロブリン希釈用緩衝液をウェルに100μl 添加したウェルも用意し、同様に処理した。
▲4▼プラスチックプレートを37℃で3時間インキュベートした。
▲5▼各ウェルの上清を採取した。ここで得られた上清を検体として以下の▲6▼の方法に用い、ミエロペルオキシダーゼ量の測定を行った。
【0067】
▲6▼MPO 測定用基質溶液2mlを石英セル中で37℃でインキュベートしながら、上記▲5▼で得られた上清50μl を添加した。上清添加5分後の666nmでの吸光度(OD666 )を測定した。そして、検体の上清を用いて得られたOD666 の測定値から、ブランクの上清を用いて得られたOD666 の測定値を差し引いた値をその検体の反応量とした。
▲7▼上記▲5▼で得られた検体の上清の代わりに、既知濃度のMPOのPBS溶液を用いて、上記▲6▼の操作を行って予め検量線を作成しておき、上記▲6▼で得られた検体の反応量(OD666 )を上記検量線に当てはめて、検体中のMPO量を算出した。
【0068】
(2)疾患活動性の判定
マウスの慢性リウマチ関節炎の疾患活動性を判定するために、四肢の指関節の変形度や尻尾関節の変形度などを総合的に判断して、関節炎の重篤度を以下の+1から+5までに分類した。
+1:尻尾の動きが固い。
+2:尻尾がやや変形している。
+3:尻尾がかなり変形している。
+4:手足の爪がはがれ、出血のあとがある。
+5:毛並みがあれている。
【0069】
III.試験と結果
(1)実施例1〜10
多発性関節炎を自然発症したMRL/lpr マウス5例(各個体をM−1、M−2、M−3、M−4、M−5とする)および正常マウス5例(各個体をN−1、N−2、N−3、N−4、N−5とする)から血液を採取したものを検体として、上記II. の(1)ミエロペルオキシダーゼの放出および測定に従って、熱変性グロブリンとの反応の結果、放出された血液中のミエロペルオキシダーゼ量を測定した。また、上記II. の(2)疾患活動性の判定に従って、上記のMRL/lpr マウス5例および正常マウス5例の関節炎の重篤度の観察を行った。上記のミエロペルオキシダーゼ量の測定および関節炎の重篤度の観察は、上記のMRL/lpr マウスの関節炎の発症前後の4週間にわたり、1週間毎に行った(すなわち、採血日及び観察日は、0、7、14、21日目)。この測定結果を表1に示した。なお、表1の関節炎の重篤度の欄の−は、関節炎の徴候が何ら見られなかったことを示す。また、表1及び後述の表2、3において、マウス欄にMRLと示したものは、MRL/Mp−lpr/lprマウスのことである。
【0070】
【表1】
Figure 0003618871
【0071】
(2)比較例1〜10
上記のMRL/lpr マウス5例および正常マウス5例について、実施例1〜10のミエロペルオキシダーゼ量の測定および関節炎の重篤度の観察と同じ時期に、血液を採取し、その血清中のRF量をRF測定用試薬を用いて測定した。この測定結果を表2に示した。
【0072】
【表2】
Figure 0003618871
【0073】
また、MRL/lpr マウスの5例について、表1に示したミエロペルオキシダーゼ量の経時的変動を図1に、関節炎の重篤度の経時的変動を図2に、および表2に示したRF値の経時的変動を図3に示した。
【0074】
表1および表2、図1〜3から明らかなように、MRL/lpr マウスの血液を用いて得られたミエロペルオキシダーゼの量および変動状況は、肉眼観察による関節炎の症状の重篤度および変動状況とよく一致し、これに対して血清中のRFの測定値は症状の重篤度と必ずしも一致しなかった。
【0075】
また、実施例の結果から明らかなように、慢性関節リウマチを発症していない正常マウス群では、ミエロペルオキシダーゼの量は、すべて1.0ng/ml以下を示したが、MRL/lpr マウス群で慢性関節リウマチを発症しているものは、22.5〜180.3ng/mlを示しており、この測定方法であると慢性関節リウマチを発症していない正常マウス群を誤って陽性と判断する危険性がないことが分かる。
一方、比較例の結果から明らかなように、RFの測定値は、MRL/lpr マウス群で慢性関節リウマチを発症しているものは、22.5〜120.6IU/mlを示したが、慢性関節リウマチを発症していない正常マウス群でも、RFの測定値は11.5から75.9IU/ml と広範な値を示しており、RFによる診断方法であると慢性関節リウマチを発症していない正常マウス群を誤って陽性と判断する危険性があることが分かる。
【0076】
以上の結果から、本発明の測定方法により測定されるミエロペルオキシダーゼ量は、従来の慢性関節リウマチのマーカーであるRFよりも、より疾患活動性を反映する優れたマーカーであることが確認された。
【0077】
(実施例11〜20)
実施例11〜20は、プラスチックプレートに固定化されたグロブリンとMPO(ミエロペルオキシダーゼ)測定用基質溶液とからなる、慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬を用いた実施例である。
【0078】
I.試薬および材料
実施例11〜20で使用した試薬および材料は、実施例1〜10で使用したものと同様である。
【0079】
II. 方法
(1)ミエロペルオキシダーゼの放出および測定
▲1▼グロブリンのプラスチックプレートへの固定化操作
抗原の成分であるグロブリンの溶液をグロブリン希釈用緩衝液で10倍希釈し、プラスチックプレートの各ウェルに100μl ずつ添加した。25℃で1時間インキュベートした後、各ウェル中の溶液を吸引除去した。
▲2▼各ウェルにブロッキング用緩衝液を200μl ずつ添加し、4℃で12時間インキュベートした後、各ウェル中の溶液を吸引除去した。次にPBSを200μl ずつ各ウェルに添加し、吸引除去した。以下この操作を3回繰り返した。この方法で得られたプラスチックプレートを反応容器として用いた。
【0080】
▲3▼マウス血液(ヘパリン採血したもの)を血液希釈用緩衝液で10倍希釈し、検体としてウェルに200μl 添加した。ブランクとして、グロブリンの溶液の代わりにグロブリン希釈用緩衝液をウェルに100μl 添加して上記▲1▼及び▲2▼と同様に操作して得られたプラスチックプレートのウェルにも上記の検体を200μl 添加した。
▲4▼プラスチックプレートを37℃で3時間インキュベートした。
▲5▼各ウェルの上清を採取した。ここで得られた上清を検体として以下の▲6▼の方法に用い、ミエロペルオキシダーゼ量の測定を行った。
【0081】
▲6▼MPO 測定用基質溶液2mlを石英セル中で37℃でインキュベートしながら、上記▲5▼で得られた上清50μl を添加した。上清添加5分後の666nmでの吸光度(OD666 )を測定した。そして、グロブリンの溶液を固定化したウエルを用いて得られた検体の上清のOD666 の測定値から、ブランクのグロブリン希釈用緩衝液を固定化したウエルを用いて得られた検体の上清のOD666 の測定値を差し引いた値をその検体の反応量とした。
▲7▼上記▲5▼で得られた検体の上清の代わりに、既知濃度のMPOのPBS溶液を用いて、上記▲6▼の操作を行って予め検量線を作成しておき、上記▲6▼で得られた検体の反応量(OD666 )を上記検量線に当てはめて、検体中のMPO量を算出した。
【0082】
III.試験と結果
(1)実施例11〜20
上記実施例1〜10の試験に用いた、MRL/lpr マウス5例および正常マウス5例から血液を採取したものと同一の血液を検体として、上記II. の(1)ミエロペルオキシダーゼの放出および測定に従って、不溶性担体に固定化されたグロブリンとの反応の結果、放出された血液中のミエロペルオキシダーゼ量を測定した。この測定結果を表3に示した。
【0083】
【表3】
Figure 0003618871
【0084】
また、MRL/lpr マウスの5例について、表3に示したミエロペルオキシダーゼ量の経時的変動を図4に示した。
【0085】
表1及び3、図2及び4から明らかなように、MRL/lpr マウスの血液を用いて得られたミエロペルオキシダーゼの量および変動状況は、肉眼観察による関節炎の症状の重篤度および変動状況とよく一致した。
【0086】
また、表3から明らかなように、慢性関節リウマチを発症していない正常マウス群では、ミエロペルオキシダーゼの量は、すべて1.0ng/ml以下を示したが、MRL/lpr マウス群で慢性関節リウマチを発症しているものは、25.2〜110.4ng/mlを示しており、この測定方法であると慢性関節リウマチを発症していない正常マウス群を誤って陽性と判断する危険性がないことが分かる。
【0087】
以上の結果から、本発明の測定方法により測定されるミエロペルオキシダーゼ量は、慢性関節リウマチの疾患活動性を反映する優れたマーカーであることが確認された。
【0088】
(実施例21〜40、比較例11〜30)
実施例21〜40は、熱変性グロブリンと抗ヒトミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化されたラテックス粒子とからなる、慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬を用いた実施例である。
【0089】
I. 試薬および材料
実施例21〜40、比較例11〜30で使用した試薬および材料は以下の通りである。
ラテックス:粒径0.400 μmのポリスチレンラテックス(固形分10%、積水化学工業社製)を用いた。
ラテックス懸濁用緩衝液:100mM NaHPOと100mM NaHPOをpH7.40になるように混合し、ウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin、FractionV 、Miles Corp. 社製)を1 %(W/V) になるように添加したものをラテックス懸濁用緩衝液として用いた。
グロブリン希釈用緩衝液:実施例1〜10と同様。
【0090】
抗ヒトミエロペルオキシダーゼ抗体:ウサギの抗血清から精製されたウサギ抗ヒトミエロペルオキシダーゼ抗体(Rabbit Anti−Human Myeloperoxidase Code No.A398 DAKO 社製、7.6mg/ml)を用いた。
ブロッキング用緩衝液:実施例1〜10と同様。
グロブリン(抗原の成分):実施例1〜10と同様。
【0091】
慢性関節リウマチ患者血液:慢性関節リウマチ患者から採取した血液を用いた。
健常人血液:健常人から採取した血液を用いた。
血液希釈用緩衝液:実施例1〜10と同様。
RF測定用試薬:実施例1〜10と同様。
プラスチックプレート:実施例1〜10と同様。
【0092】
測定用希釈液(R1液):ラテックス懸濁用緩衝液に、ポリエチレングリコール 6000 (平均分子量7500、和光純薬工業社製)を3%(W/V) になるように添加したものを測定用希釈液(R1液)として用いた。
【0093】
II. 方法
(1)ラテックス試薬の調製
抗ヒトミエロペルオキシダーゼ抗体を、タンパク濃度が250μg/mlになるようにグロブリン希釈用緩衝液で希釈し、抗体感作液とした。ラテックス100μl に、25℃のインキュベーター中でマグネチックスターラーで撹拌しながら、抗体感作液900μl を素早く添加し、25℃にて1 時間撹拌した。その後、ブロッキング用緩衝液を2.0ml添加し、25℃にて続けて1 時間撹拌した。その後、15℃、15000 rpmにて15分間遠心分離した。得られた沈殿にラテックス懸濁用緩衝液4.0mlを添加し、同様に遠心分離することにより、沈殿を洗浄した。洗浄操作は3回行った。この沈殿にラテックス懸濁用緩衝液を2.0ml添加し、よく撹拌した後、超音波破砕機にて分散処理を行い、固形分0.5%のラテックス試薬とした。このようにして調製したラテックス試薬を4℃にて保存した。
【0094】
(2)ミエロペルオキシダーゼの放出および測定
▲1▼抗原の成分であるグロブリンの溶液を35℃で2時間インキュベートすることにより、グロブリンを熱変性してグロブリンにRFとの抗原性を獲得させた。この熱変性グロブリンを、グロブリン希釈用緩衝液で10倍希釈した。
▲2▼熱変性グロブリンの吸着を回避できる容器としてプラスチックプレートを以下に示す方法で表面処理したものを反応容器として用いた。各ウェルにブロッキング用緩衝液を200μl ずつ添加し、4℃で12時間インキュベートした後、ウェル中の溶液を吸引除去した。次に、PBSを200μl ずつ各ウェルに添加し、吸引除去した。以下この操作を3回繰り返した。この方法で得られたプラスチックプレートを反応容器として用いた。
【0095】
▲3▼上記▲1▼で得られた10倍希釈熱変性グロブリン溶液をウェルに100μl 添加し、次いでヒト血液(ヘパリン採血したもの)を血液希釈用緩衝液で10倍希釈し、検体としてウェルに200μl 添加した。ブランクとして、10倍希釈熱変性グロブリン溶液の代わりにグロブリン希釈用緩衝液をウェルに100μl 添加したウェルも用意し、同様に処理した。
▲4▼プラスチックプレートを37℃で3時間インキュベートした。
▲5▼各ウェルの上清を採取した。ここで得られた上清を検体として以下の▲6▼の方法に用い、ミエロペルオキシダーゼ量の測定を行った。
【0096】
▲6▼ミエロペルオキシダーゼの測定は、汎用自動分析装置7150型(日立製作所社製)を用いて行った。▲1▼で得られた固形分0.5%のラテックス試薬をラテックス懸濁用緩衝液で4倍に希釈し、R2液(固形分0.125%)とした。測定条件は以下の通りである。
検体容量 20μl
希釈液(R1液) 350μl
試薬(R2液) 50μl
測定波長 570nm
測定温度 37℃
試薬(R2液)を添加してから80秒後の吸光度と320秒後の吸光度の差(△OD570 )を測定し、この吸光度の差を10000倍したものを測定値とした。検体の上清の代わりに、既知濃度のミエロペルオキシダーゼのPBS溶液を用いて同様の測定を行い、予め検量線を作成しておき、上清検体の測定値を上記検量線に当てはめて、検体中のミエロペルオキシダーゼ量を算出した。
【0097】
(3)疾患活動性の判定
慢性関節リウマチ患者の疾患活動性を判定するために、血液採取と同時期に、慢性関節リウマチ各患者のランスバリー指数をその患者の疾患活動度とした。ランスバリー指数とは、▲1▼朝のこわばり時間、▲2▼握力、▲3▼血沈値、▲4▼腫脹および疼痛関節点数の4項目を測定し、この実測値を指数換算表より%に換算して、その合計で疾患活動度を評価するものである。
【0098】
III.試験と結果
(1)実施例21〜40
慢性関節リウマチ患者10例(各個体をR−1、R−2、R−3、R−4、R−5、R−6、R−7、R−8、R−9、R−10とする)および健常人10例(各個体をH−1、H−2、H−3、H−4、H−5、H−6、H−7、H−8、H−9、H−10とする)から血液を採取したものを検体として、上記II. の(2)ミエロペルオキシダーゼの放出および測定に従って、熱変性グロブリンとの反応の結果、放出された血液中のミエロペルオキシダーゼ量をラテックス測定試薬を用いて測定した。また、上記II. の(3)疾患活動性の判定に従って、上記の慢性関節リウマチ患者10例のランスバリー指数を測定した。この測定結果を表4に示した。なお、表4のランスバリー指数の欄の−は、慢性関節リウマチの徴候が何ら見られなかったことを示す。また、表4及び後述の表5、表6のヒト種類欄のRAは、慢性関節リウマチ患者を表す。
【0099】
【表4】
Figure 0003618871
【0100】
(2)比較例11〜30
上記の慢性関節リウマチ患者10例および健常人10例について、実施例21〜40のミエロペルオキシダーゼ量の測定およびランスバリー指数の測定と同じ時期に血液を採取し、その血清中のRF量をRF測定用試薬を用いて測定した。この測定結果を表5に示した。
【0101】
【表5】
Figure 0003618871
【0102】
また、慢性関節リウマチ患者10例について、表4に示したランスバリー指数とミエロペルオキシダーゼ量との相関を図5に、表4に示したランスバリー指数と表5に示したRF量との相関を図6に示した。
【0103】
表4および表5、図5および図6から明らかなように、慢性関節リウマチの血液を用いて得られたミエロペルオキシダーゼの量は、疾患活動度を示すランスバリー指数と正の相関を示し、これに対して血清中のRFの測定値はランスバリー指数との相関が悪かった。
【0104】
また、実施例の結果から明らかなように、慢性関節リウマチを発症していない正常群では、ミエロペルオキシダーゼの量は、すべて5.5ng/ml以下を示したが、慢性関節リウマチを発症している患者のものは、313 〜795ng/mlを示しており、この測定方法であると慢性関節リウマチを発症していない正常群を誤って陽性と判断する危険性がないことが分かる。
【0105】
一方、比較例の結果から明らかなように、RFの測定値は、慢性関節リウマチを発症しているものは、87.3〜613IU/mlを示したが、慢性関節リウマチを発症していない正常群でも、RFの測定値は11.0〜110IU/mlと広範な値を示しており、RFによる診断方法であると慢性関節リウマチを発症していない健常者を誤って陽性と判断する危険性があることが分かる。
【0106】
以上の結果から、本発明の測定方法により測定されるミエロペルオキシダーゼ量は、従来の慢性関節リウマチのマーカーであるRFよりも、より疾患活動性を反映する優れたマーカーであることが確認された。
【0107】
(実施例41〜60)
実施例41〜60は、プラスチックプレートに固定化されたグロブリンと抗ヒトミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化されたラテックス粒子とからなる、慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬を用いた実施例である。
【0108】
I.試薬および材料
実施例41〜60で使用した試薬および材料は、実施例21〜40で使用したものと同様である。
【0109】
II. 方法
(1)ラテックス試薬の調製
実施例21〜40と全く同様にしてラテックス試薬を調製した。
(2)ミエロペルオキシダーゼの放出および測定
▲1▼グロブリンのプラスチックプレートへの固定化操作
抗原の成分であるグロブリンの溶液をグロブリン希釈用緩衝液で10倍希釈し、プラスチックプレートの各ウェルに100μl ずつ添加した。25℃で1時間インキュベートした後、各ウェル中の溶液を吸引除去した。
▲2▼各ウェルにブロッキング用緩衝液を200μl ずつ添加し、4℃で12時間インキュベートした後、各ウェル中の溶液を吸引除去した。次にPBSを200μl ずつ各ウェルに添加し、吸引除去した。以下この操作を3回繰り返した。この方法で得られたプラスチックプレートを反応容器として用いた。
【0110】
▲3▼ヒト血液(ヘパリン採血したもの)を血液希釈用緩衝液で10倍希釈し、検体としてウェルに200μl 添加した。ブランクとして、グロブリンの溶液の代わりにグロブリン希釈用緩衝液をウェルに100μl 添加して上記▲1▼及び▲2▼と同様に操作して得られたプラスチックプレートのウェルにも上記の検体を200μl 添加した。
▲4▼プラスチックプレートを37℃で3時間インキュベートした。
▲5▼各ウェルの上清を採取した。ここで得られた上清を検体として以下の▲6▼の方法に用い、ミエロペルオキシダーゼ量の測定を行った。
【0111】
▲6▼ミエロペルオキシダーゼの測定は、汎用自動分析装置7150型(日立製作所社製)を用いて行った。▲1▼で得られた固形分0.5%のラテックス試薬をラテックス懸濁用緩衝液で4倍に希釈し、R2液(固形分0.125%)とした。測定条件は以下の通りである。
検体容量 20μl
希釈液(R1液) 350μl
試薬(R2液) 50μl
測定波長 570nm
測定温度 37℃
試薬(R2液)を添加してから80秒後の吸光度と320秒後の吸光度の差(△OD570 )を測定し、この吸光度の差を10000倍したものを測定値とした。検体の上清の代わりに、既知濃度のミエロペルオキシダーゼのPBS溶液を用いて同様の測定を行い、予め検量線を作成しておき、上清検体の測定値を上記検量線に当てはめて、検体中のミエロペルオキシダーゼ量を算出した。
【0112】
(3)疾患活動性の判定
慢性関節リウマチ患者の疾患活動性を判定するために、慢性関節リウマチ各患者のランスバリー指数を測定した。
【0113】
III.試験と結果
(1)実施例41〜60
上記実施例21〜40の試験に用いた、慢性関節リウマチ患者10例および健常人10例から血液を採取したものと同一の血液を検体として、上記II. の(2)ミエロペルオキシダーゼの放出および測定に従って、不溶性担体に固定化されたグロブリンとの反応の結果、放出された血液中のミエロペルオキシダーゼ量をラテックス測定試薬を用いて測定した。この測定結果を表6に示した。
【0114】
【表6】
Figure 0003618871
【0115】
また、慢性関節リウマチ患者10例について、表4に示したランスバリー指数と表6に示したミエロペルオキシダーゼ量との相関を図7に示した。
表6および図7から明らかなように、慢性関節リウマチの血液を用いて得られたミエロペルオキシダーゼの量は、疾患活動度を示すランスバリー指数と正の相関を示した。
【0116】
また、表6の結果から明らかなように、慢性関節リウマチを発症していない正常群では、ミエロペルオキシダーゼの量は、すべて3.5ng/ml以下を示したが、慢性関節リウマチを発症している患者のものは、316 〜622ng/mlを示しており、この測定方法であると慢性関節リウマチを発症していない正常群を誤って陽性と判断する危険性がないことが分かる。
【0117】
以上の結果から、本発明の測定方法により測定されるミエロペルオキシダーゼ量は、従来の慢性関節リウマチのマーカーであるRFよりも、より疾患活動性を反映する優れたマーカーであることが確認された。
【0118】
【発明の効果】
本発明1および2の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法の構成は、上記の通りであり、被採血者の血液を用いてミエロペルオキシダーゼ放出量を測定することによって、被採血者の慢性関節リウマチの疾患活動性を的確に測定および診断することが可能になり、病態の把握、治療のための薬剤投与量、治療方法の決定などに有益である。
【0119】
特に、本発明2の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法は、リウマトイド因子に対する抗原の成分がウサギガンマグロブリン、ウサギIgG、ヒトガンマグロブリンおよびヒトIgGより成る群から選ばれる少なくとも一種であるので、慢性関節リウマチの疾患活動性をより的確に測定および診断することが可能となる。
【0120】
本発明3〜5の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法の構成は、上記の通りであり、被採血者の血液を用いてミエロペルオキシダーゼ放出量を測定することによって、被採血者の慢性関節リウマチの疾患活動性を的確に測定および診断することが可能になり、病態の把握、治療のための薬剤投与量、治療方法の決定などに有益である。
【0121】
特に、本発明4の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法は、リウマトイド因子に対する抗原の成分がウサギガンマグロブリン、ウサギIgG、ヒトガンマグロブリンおよびヒトIgGより成る群から選ばれる少なくとも一種であるので、慢性関節リウマチの疾患活動性をより的確に測定および診断することが可能となる。
【0122】
また、本発明5の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法は、不溶性担体が、清浄光学ポリスチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ニトロセルロースおよびシリコンオキサイドより成る群から選ばれるので、慢性関節リウマチの疾患活動性をより的確に測定および診断することが可能となる。
【0123】
本発明6の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法の構成は、上記の通りであり、本発明6を用いると、請求項1〜5の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法によって放出されたミエロペルオキシダーゼ量を正確かつ簡便に測定できるので、被採血者の慢性関節リウマチの疾患活動性をより簡便かつ、より的確に測定および診断することが可能になり、病態の把握、治療のための薬剤投与量、治療方法の決定などに、より有益である。
【0124】
本発明7の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬の構成は、上記の通りであり、本発明7の測定試薬を用いると、被採血者の血液を用いてミエロペルオキシダーゼ放出量を測定することによって、被採血者の慢性関節リウマチの疾患活動性を的確に測定および診断することが可能になり、病態の把握、治療のための薬剤投与量、治療方法の決定などに有益である。
【0125】
本発明8の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬の構成は、上記の通りであり、本発明8の測定試薬を用いると、被採血者の血液を用いてミエロペルオキシダーゼ放出量を測定することによって、被採血者の慢性関節リウマチの疾患活動性をより的確かつ簡便に測定および診断することが可能になり、病態の把握、治療のための薬剤投与量、治療方法の決定などに有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】MRL/lpr マウスの血液を用いて得られた実施例1〜5のミエロペルオキシダーゼ量の経時的変動を示す図である。
【図2】実施例1〜5に使用されたMRL/lpr マウスの関節炎の重篤度の経時的変動を示す図である。
【図3】MRL/lpr マウスの血液を用いて得られた比較例1〜5のRF値の経時的変動を示す図である。
【図4】MRL/lpr マウスの血液を用いて得られた実施例11〜15のミエロペルオキシダーゼ量の経時的変動を示す図である。
【図5】実施例21〜30により得られた慢性関節リウマチ患者のランスバリー指数とミエロペルオキシダーゼ量との相関を示す図である。
【図6】実施例21〜30により得られたランスバリー指数と比較例11〜20により得られたRF量との相関を示す図である。
【図7】実施例21〜30により得られたランスバリー指数と実施例41〜50により得られたミエロペルオキシダーゼ量との相関を示す図である。

Claims (8)

  1. リウマトイド因子に対する抗原に血液を接触させ、リウマトイド因子とそれに対する抗原からなる免疫複合体を形成させて、ミエロペルオキシダーゼの放出を誘導させ、該ミエロペルオキシダーゼの放出量を測定することを特徴とする慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法。
  2. リウマトイド因子に対する抗原の成分がウサギガンマグロブリン、ウサギIgG、ヒトガンマグロブリンおよびヒトIgGより成る群から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法。
  3. 不溶性担体に固定化されたリウマトイド因子に対する抗原の成分に血液を接触させ、リウマトイド因子とそれに対する抗原からなる免疫複合体を形成させて、ミエロペルオキシダーゼの放出を誘導させ、該ミエロペルオキシダーゼの放出量を測定することを特徴とする慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法。
  4. リウマトイド因子に対する抗原の成分がウサギガンマグロブリン、ウサギIgG、ヒトガンマグロブリンおよびヒトIgGより成る群から選ばれる少なくとも一種である請求項3記載の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法。
  5. 不溶性担体が、清浄光学ポリスチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ニトロセルロースおよびシリコンオキサイドより成る群から選ばれる請求項3又は4記載の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法。
  6. 放出されたミエロペルオキシダーゼを、不溶性粒子に固定化された抗ミエロペルオキシダーゼ抗体と抗原抗体反応させて該不溶性粒子を凝集させ、その凝集の度合いを検出することにより、該ミエロペルオキシダーゼ量を測定する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定方法。
  7. リウマトイド因子に対する抗原又は不溶性担体に固定化されたリウマトイド因子に対する抗原の成分、及び抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子からなることを特徴とする慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬。
  8. 請求項7記載の抗ミエロペルオキシダーゼ抗体が固定化された不溶性粒子と、ミエロペルオキシダーゼとの抗原抗体反応により生じる凝集の度合いを検出することを特徴とする請求項7記載の慢性関節リウマチ特異的細胞性免疫能の測定試薬。
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