JP3618632B2 - 制御用端末装置、制御システム、および、そのプログラムが記録された記録媒体 - Google Patents

制御用端末装置、制御システム、および、そのプログラムが記録された記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリアルポートを介して制御プログラムが更新される制御ユニットを有する制御システムに関し、特に、従来の制御プログラム作成手段を流用できるにも拘らず、遠隔地から、制御ユニットの制御プログラムを更新可能な制御用端末装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プログラマブル・ロジック・コントローラ(以下、PLCと略称する)は、例えば、ベルトコンベアー式の自動組付機など、種々のターゲットシステムを制御する制御装置として、広く使用されている。さらに、近年では、ターゲットシステムの複雑化に伴って、複数台のPLCを互いに連携させて使用することも行われている。また、各PLCからのデータの表示、あるいは、PLCへの制御指示は、当該PLCの近傍などに配される表示装置で行われるだけではなく、例えば、これらの表示装置から離れた場所に設置した制御用ホストコンピュータでも、表示あるいは操作できるように、制御システムを構築することもある。
【0003】
具体的には、例えば、図8に示すように、従来の制御システム501では、PLC503が制御の中心として位置付けられており、各PLC503には、ターゲットシステム502の制御対象機器521aやセンサ521bと、表示および制御指示を行う制御用表示装置505とが接続されている。さらに、当該PLC503には、他のPLC503や制御用ホストコンピュータ507がシリアルケーブル504を介して接続されており、PLC503と制御用ホストコンピュータ507との間や各PLC503間における制御データの受け渡しは、PLC503の通信機能を利用して行われている。
【0004】
ここで、PLC503の上記各動作は、制御プログラムで規定されており、PLC503の動作開始前や、例えば、不具合を修正する際には、制御用ホストコンピュータ507にインストールされた制御プログラム作成ソフトなどによって、新たな制御プログラムが作成(修正)され、シリアルケーブル504を介してPLC503に伝送される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、制御プログラムの更新時に、PLC503に接続された制御用ホストコンピュータ507を操作するため、制御プログラムの作成者は、制御用ホストコンピュータ507やPLC503の近傍に赴く必要があり、手間がかかるという問題を生じる。
【0006】
また、PLC503は、シーケンサから発達してきた経緯から、多くの場合、製造会社毎、あるいは、同一会社であっても製品毎など、PLC503の機種毎に、データ通信に使用する通信プロトコルが異なっている。さらに、これらのPLC503では、多くの場合、機種毎に、CPUやアドレスマップなども異なっているため、制御プログラムを機種毎に作成する必要がある。したがって、制御プログラムの作成(修正)するために、それぞれの機種に対応した制御プログラム作成ソフトが必要となる。一方、各制御プログラム作成ソフトは、図8に示すように、シリアルケーブル504を介し、直接PLC503に制御プログラムを出力する構成を前提としており、遠隔地からPLC503の制御プログラムを更新できないものが多い。
【0007】
ところが、遠隔地から制御プログラムを更新可能な制御プログラム作成ソフトを新たに作成しようとすると、非常に手間がかかる。具体的には、制御プログラム作成ソフトは、個別のアプリケーションパッケージとして販売されていることが多いため、制御プログラム作成ソフトを修正する場合、アプリケーションパッケージの販売元へ依頼する必要がある。また、制御プログラム作成ソフトでは、例えば、ラダー図などから制御プログラムを作成するため、比較的複雑な処理が行われている。この結果、アプリケーションパッケージとは別に、新たに作成することは多くの手間がかかる。加えて、制御プログラムは、PLCの機種毎に異なっているので、各機種毎に制御プログラム作成ソフトを修正/新規作成する必要がある。したがって、制御プログラム作成ソフトの修正/新規作成は、いずれも現実的ではない。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の制御プログラム作成手段を流用できるにも拘らず、遠隔地から、制御ユニットの制御プログラムを更新可能な制御用端末装置を実現することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る制御用端末装置は、上記課題を解決するために、制御プログラムに従って、制御対象を制御する制御ユニットと、上記制御ユニットとシリアル・インターフェースを介して通信して、当該制御ユニットの制御状態を表示または制御する制御用表示装置とが設けられたローカル制御システムに広域ネットワークを介して接続可能な広域ネットワーク通信手段、並びに、実際には、制御ユニットがシリアルポートを介して直接接続されていないにも拘わらず、上記制御用端末装置に設けられた制御プログラム作成手段が当該シリアルポートへ出力しようとする当該制御ユニットの制御プログラムをシリアルポートの代わりに受け取るシリアルポート模擬手段を備え、上記シリアルポート模擬手段は、制御プログラムの転送先となる制御ユニットが設けられたローカル制御システムを予め設定すると共に、上記制御プログラム作成手段が受け取った制御プログラムと転送先の制御ユニットとを示す指示データを当該ローカル制御システムへ送信して、上記転送先の制御ユニットの制御プログラムの更新を指示するように、上記広域ネットワーク通信手段へ指示することを特徴としている。請求項2の発明に係る制御用端末装置は、上記構成に加えて、上記ローカル制御システムは、ネットワークを介して上記制御用表示装置と通信する制御用ホストコンピュータを備えるシステムであり、上記制御用ホストコンピュータは、上記ネットワークに接続された制御用表示装置を管理する設定部が設けられたものであって、上記シリアルポート模擬手段は、上記ローカル制御システムの制御用ホストコンピュータと予め通信して、当該制御用ホストコンピュータの設定部の記憶を参照すると共に、制御用表示装置の選択肢を表示して、転送先の制御ユニットに接続された制御用表示装置を使用者に特定させると共に、上記指示データとして、特定された制御用表示装置および当該制御用表示装置に接続された制御ユニットを示す識別子と制御プログラム自体を含むデータ列とを上記広域ネットワーク通信手段へ送信させることを特徴としている。請求項3の発明に係る制御用端末装置は、上記構成に加えて、上記広域ネットワークは、インターネットであることを特徴としている。
【0010】
上記構成において、制御プログラム作成手段がシリアルポートへ制御プログラムを出力しようとすると、シリアルポート模擬手段がシリアルポートの代わりに制御プログラムを受け取り、予め設定されたローカル制御システムへ、転送先の制御ユニットと制御プログラムとを示す指示データを送出するように、上記広域通信手段へ指示する。一方、ローカル制御システムは、例えば、インターネットなどの広域ネットワークを介して指示データを受け取ると、当該指示データで特定される制御ユニットの制御プログラムを、指示データが示す制御データで更新する。
【0011】
これにより、シリアルポートのみに制御プログラムを出力可能な、従来の制御プログラム作成手段を流用する場合であっても、制御用端末装置は、制御プログラムの更新指示を、転送先の制御ユニットが含まれるローカル制御システムへ伝えることができる。この結果、広域ネットワークを介して制御プログラムを出力可能な制御プログラム作成手段を、制御ユニットの機種毎に新規作成せず、従来の制御プログラム作成手段を流用できるにも拘わらず、遠隔地から制御ユニットの制御プログラムを更新できる。また、ローカル制御システムの近傍に制御プログラムの作成要員を配置しなくても、短時間で制御プログラムを更新できるので、メンテナンス時の手間を削減できる。
【0012】
また、請求項4の発明に係る制御システムは、上記制御用端末装置と、上記制御用ユニット、制御用表示装置および制御用ホストコンピュータを含むローカル制御システムとを備えた制御システムであって、上記制御用表示装置は、上記シリアル・インターフェースを介し、上記制御ユニットの機種に専用のプロトコルで当該制御ユニットと通信して、当該制御ユニットの制御状態を表示または制御する専用プロトコル通信手段と、上記機種に独立して予め定められた共通のプロトコルにて、上記シリアル・インターフェースとは別の上記ネットワークを介して上記制御用ホストコンピュータと通信する共通プロトコル通信手段と、上記共通および専用プロトコル通信手段の通信を中継する中継手段とを備え、上記制御用ホストコンピュータは、上記広域ネットワークを介して、上記広域ネットワーク通信手段から受け取った指示データに基づいて、送信先の制御ユニットが接続された制御用表示装置を特定すると共に、特定された制御用表示装置へ、上記共通プロトコルで上記ネットワークを介して制御プログラムの更新を指示する表示装置特定手段を備えていることを特徴としている。
【0013】
上記構成において、制御用端末装置が指示データを送信すると、ローカル制御システムの表示装置特定手段が、指示データに基づいて、送信先の制御ユニットが接続された制御用表示装置を特定し、共通プロトコルにて、当該制御用表示装置に制御プログラムの更新を指示する。一方、制御用表示装置において、共通プロトコル通信手段が受け取った制御プログラムの更新指示は、中継手段で中継され、専用プロトコル通信手段およびシリアル・インターフェースを介して制御ユニットに伝えられる。これにより、制御ユニットの制御プログラムが更新される。
【0014】
上記構成では、ローカル制御システムに必須であり、しかも、表示/制御時に使用者とやり取りするため、制御ユニットに比べて演算能力や通信能力に余裕のある制御用表示装置が、制御ユニットに固有の専用プロトコルでの通信と、共通プロトコルでの通信とを中継する。これにより、互いに異なる機種の制御ユニットを、ローカル制御システムに混在する場合や、新たな機種の制御ユニットがローカル制御システムに追加される場合であっても、表示装置特定手段は、送信先の制御ユニットの機種に拘らず、常に共通プロトコルで制御プログラムの更新を指示すればよい。したがって、表示装置特定手段を製造する際の手間を削減できる。
【0015】
ところで、上記制御用端末装置は、ハードウェアで実現してもよいし、所定のプログラムをコンピュータに実行させて実現してもよい。具体的には、請求項5の発明に係る記録媒体は、制御プログラムに従って、制御対象を制御する制御ユニットと、上記制御ユニットとシリアル・インターフェースを介して通信して、当該制御ユニットの制御状態を表示または制御する制御用表示装置とが設けられたローカル制御システムに広域ネットワークを介して接続可能な広域ネットワーク通信手段が設けられたコンピュータを制御用端末装置として動作させるプログラムが記録された記録媒体であって、上記課題を解決するために、上記シリアルポート模擬手段として、上記コンピュータを動作させるプログラムが記録されていることを特徴としている。
【0016】
上記構成の記録媒体が上記コンピュータで読み取られ、実行されると、コンピュータは、上記制御用端末装置として動作する。したがって、広域ネットワークを介して制御プログラムを出力可能な制御プログラム作成手段を、制御ユニットの機種毎に新規作成せず、従来の制御プログラム作成手段を流用できるにも拘わらず、遠隔地から制御ユニットの制御プログラムを更新できる。また、ローカル制御システムの近傍に制御プログラムの作成要員を配置しなくても、短時間で制御プログラムを更新でき、メンテナンス時の手間を削減できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、本実施形態に係る制御システムは、例えば、ターゲットシステムがベルトコンベアー式の自動組付機の場合など、複数のプログラマブル・ロジック・コントローラ(以下では、PLCと略称する)が互いに連携して制御するようなターゲットシステムを制御する場合に、特に好適に使用されるシステムであって、例えば、図1に示すように、予め格納される制御プログラムに従って、ターゲットシステム2を制御するPLC(制御ユニット)3と、シリアルケーブル4を介してPLC3に接続され、多くの場合、ターゲットシステム2の近傍でターゲットシステム2のオペレータにより操作されるグラフィック操作パネル(制御用表示装置)5と、各グラフィック操作パネル5間を接続するネットワーク6と、当該ネットワーク6に接続され、多くの場合、グラフィック操作パネル5よりも離れた場所から、制御システム1全体の監視制御あるいは設定などを行う制御用ホストコンピュータ(表示装置特定手段)7と、遠隔地からインターネット8を介して制御用ホストコンピュータ7に接続し、PLC3の制御プログラムの更新を指示できる端末装置9とを備えている。なお、上記インターネット8が、特許請求の範囲に記載の広域ネットワークに対応し、端末装置9が制御用端末装置に対応する。
【0018】
ここで、端末装置9の構成について説明する前に、上記各部材2〜7からなるローカル制御システム11について説明すると、当該ローカル制御システム11では、表示内容または制御内容が同一の場合、PLC3の機種に拘らず、表示/制御の際にネットワーク6を伝送されるデータ列61(図3参照)が互いに同一になるように、ネットワーク6での伝送用のプロトコル(共通プロトコル)が規定されており、通信の中心に配されたグラフィック操作パネル5が、PLC3の機種毎に規定された専用プロトコルと上記共通プロトコルとを相互変換して、自らに接続されたPLC3と、制御用ホストコンピュータ7あるいは他のグラフィック操作パネル5との通信を中継する。これにより、各グラフィック操作パネル5に接続されたPLC3が互いに異なる専用プロトコルを採用している場合であっても、各グラフィック操作パネル5および制御用ホストコンピュータ7間は、共通プロトコルで通信できる。
【0019】
より詳細に説明すると、上記ターゲットシステム2は、例えば、バルブやモータなど、指示に応じた動作を行うデバイス21、あるいは、例えば、流量センサや温度センサなど、ターゲットシステム2各部の状態を検出するデバイス21を備えており、PLC3は、各デバイス21と通信しながら、予め格納された制御プログラムに従って、各デバイス21を制御している。当該制御プログラムは、後述するように、制御用ホストコンピュータ7から各PLC3に伝送される。
【0020】
ここで、PLC3は、リレーを使用したシーケンサから発達してきた経緯もあって、例えば、製造会社毎や製品の種別毎など、PLC3の機種毎に制御プログラムが異なるだけではなく、PLC3の機種毎に独自の専用プロトコルを備えているものが多い。したがって、PLC3は、シリアルケーブル4を介して、グラフィック操作パネル5と接続されており、当該PLC3が通信可能な通信プロトコルで、グラフィック操作パネル5と通信する。
【0021】
上記専用プロトコルでは、データの読み出しを指示する場合、概ね、図2に示すように、次に伝送されるコードが命令であることを示す制御コード(ESC)と、PLC3へデータの読み出しを指示するコマンドコード(RD)と、読み出し開始アドレス(X0001)と、読み出しサイズ(5)と、伝送の終了を示す制御コード(RET)とを含むデータ列41が伝送される。ただし、各PLC3間では、コマンドコードを含むコマンド体系は、もちろん、アドレスやサイズなどの並び順や、制御コード自体、あるいは、アドレスやサイズを表現する際の表現形式(数値を示す際のビット幅や文字を示す際のコード種別など)も互いに異なっていることが多い。
【0022】
一方、本実施形態に係るネットワーク6は、例えば、イーサネット(商標:ゼロックス社)などのローカル・エリア・ネットワークで実現されており、各グラフィック操作パネル5や制御用ホストコンピュータ7は、TCP/IPプロトコルで相互に通信している。これにより、TCP/IPで通信可能な通信機器であれば、ローカル制御システム11の運用会社とは異なる場所から電話回線を介して接続する場合であっても、他の通信機器間のデータ伝送を阻害することなく、ネットワーク6に自由に参加できる。なお、TCP/IPプロトコルでは、データ列61を伝送する際、TCPモジュールやIPモジュールなどの各モジュールが伝送用のヘッダを付加しているが、本明細書の中では、「ネットワーク6で伝送されるデータ列61」を、後述するサーバ部72など、「より上層がTCPモジュールへ伝送を依頼し、受信側のTCPモジュールが、より上層へ受け渡すデータ列」の意味で使用する。
【0023】
ここで、本実施形態にて、上記ネットワーク6での伝送用に規定されている共通プロトコルにおいて、データ列61は、図3に示すように、例えば、表示/制御用のデータか制御プログラムかなどを識別するための識別データ62と、データ本体63とを含んでいる。さらに、表示/制御用のデータとして、例えば、データ読み出しを指示する命令をPLC3へ伝える際のデータ本体63rには、命令の内容を示す共通コード64と、当該共通コード64に付随する関連情報65として、読み出し開始アドレス65aおよび読み出しサイズ65bとが含まれている。また、データ書き込みを指示する際のデータ本体63wには、関連情報65として、書き込み開始アドレス65cおよび書き込みデータ65dが含まれる。
【0024】
上記共通コード64は、各PLC3が理解可能な命令のうち、互いに同一内容の命令間では、各PLC3のコマンドコードに拘らず、コードが統一されている。また、例えば、読み出し開始アドレス65aおよび読み出しサイズ65bなど、関連情報65内のデータを伝送する順番および伝送時の表現形式もPLC3の機種に拘らず統一されている。これにより、共通プロトコルでは、グラフィック操作パネル5に接続されているPLC3に拘らず実行させるべき命令を一意的に特定でき、表示/制御の際にネットワーク6を伝送されるデータ列61は、表示内容または制御内容が同一の場合、PLC3の機種に拘らず、同一のデータ列になる。
【0025】
ここで、上記グラフィック操作パネル5には、図1に示すように、シリアル・インターフェース51およびシリアルケーブル4を介してPLC3と通信するPLC側通信処理部(専用プロトコル通信手段)52と、ネットワーク・インターフェース53およびネットワーク6を介して他のグラフィック操作パネル5や制御用ホストコンピュータ7と通信するネットワーク側通信処理部(共通プロトコル通信手段;中継手段)54と、オペレータの操作やPLC3との通信に応じて、グラフィック操作パネル5の表示を更新する表示更新処理部55と、上記専用プロトコルと共通プロトコルとが互いに異なる場合、両プロトコルを相互に変換するプロトコル変換部56とが設けられている。
【0026】
本実施形態では、グラフィック操作パネル5の入出力手段として、液晶表示装置とタッチパネルとが使用されており、上記表示更新処理部55は、例えば、画面上に表示すべきデバイス21のデバイスアドレスを図示しない記憶部に書き込むなどにより、上記PLC側通信処理部52へ指示して、当該デバイスアドレスのデータ読み出し命令をPLC3へ送出させる。さらに、PLC側通信処理部52がPLC3からの応答を受け取ると、応答に基づき、デバイス21の状態を上記液晶表示装置に表示する。一方、タッチパネルの操作により、デバイス21への制御が指示されると、PLC側通信処理部52へ指示して、デバイス21のデバイスアドレスへのデータ書き込み命令を送出させる。
【0027】
また、他のグラフィック操作パネル5aに接続されたデバイス21の状態を表示/制御する場合、表示更新処理部55は、ネットワーク側通信処理部54に指示して、当該デバイス21へのデータ読み書き命令を、グラフィック操作パネル5aに出力する。ここで、当該データ読み書き命令は、共通プロトコルで指定される。したがって、表示更新処理部55は、他のグラフィック操作パネル5aに接続されたPLC3の機種を把握することなく、当該PLC3と通信できる。
【0028】
一方、PLC側通信処理部52は、PLC3に固有の専用プロトコルでPLC3と通信しており、プロトコル変換部56や表示更新処理部55からの要求に基づいて、PLC3へデータ読み書き命令を出力したり、PLC側通信処理部52が出力した制御プログラムをPLC3に出力できる。なお、各部52・55・56から略同時にPLC3との通信指示を受け取った場合、PLC側通信処理部52は、例えば、それらを一時記憶し、順次処理するなどして、各通信指示に応じた命令や制御プログラムを出力する。
【0029】
さらに、上記ネットワーク側通信処理部54は、TCP/IPプロトコルで、他のグラフィック操作パネル5や制御用ホストコンピュータ7とデータ列61を送受すると共に、受信したデータ列61の識別データ62に基づいて、データ本体63の用途を識別し、表示/制御用のデータの場合は、上記プロトコル変換部56へデータ本体63を受け渡す。また、制御プログラムの場合は、データ本体63をPLC側通信処理部52へ渡して、PLC3へ送出させる。さらに、例えば、グラフィック操作パネル5の背景画像や、デバイス21に応じた図形要素の配置などを示す画面データの場合、ネットワーク側通信処理部54は、データ本体63を表示更新処理部55へ渡して、画面データを更新できる。これとは逆に、プロトコル変換部56、PLC側通信処理部52あるいは表示更新処理部55からデータ本体63を受け取った場合、ネットワーク側通信処理部54は、当該データ本体63に識別データ62を付加し、他のグラフィック操作パネル5や制御用ホストコンピュータ7へ送出する。
【0030】
また、本実施形態に係るプロトコル変換部56は、プロトコルを相互変換するためのプロトコル情報として、専用プロトコルで伝送されるデータ列41のフォーマットを示すデータ転送フォーマットFMTと、専用プロトコルでのコマンドコードと、上述の共通コードとの対応関係を示すコマンド変換テーブルTBLとを記憶している。
【0031】
具体的には、図2に示すように、上記データ転送フォーマットFMTは、上記データ列41のうち、例えば、読み書きするデータ内容自体や、データのサイズ、あるいは、読み書きするアドレスなど、実際に伝送するデータ内容によって変化する部分を未定義としたスケルトン状のデータ列であって、未定義の部分は、用途のみが定義されている。なお、コマンドコードの領域を未定義とすれば、実際の伝送されるデータ列から抽出されたデータ転送フォーマットFMTが、複数のコマンド間で共通になる場合、コマンドコードの領域をも未定義として、これらの命令間でデータ転送フォーマットを共用してもよい。
【0032】
また、コマンド変換テーブルTBLには、図4に示すように、共通コード64と、シリアルケーブル4に接続されているPLC3のコマンドコードとの対応が格納されており、プロトコル変換部56は、一方のコードから、他方のコードに変換できる。
【0033】
上記データ転送フォーマットFMTおよびコマンド変換テーブルTBLの組み合わせは、グラフィック操作パネル5およびPLC3が、表示/制御に関するデータを通信する前に、PLC3の通信プロトコルに合わせて設定され、異なる通信プロトコルを採用したPLC3が接続されると、当該プロトコル情報は切り換えられる。例えば、機種AのPLC3から機種Bに変更する場合、図4に示すコマンド変換テーブルTBLaからコマンド変換テーブルTBLbに切り換えられる。
【0034】
なお、通信プロトコルの選択方法は、例えば、制御用ホストコンピュータ7やグラフィック操作パネル5を操作して、使用者が選択してもよい。さらに、グラフィック操作パネル5が自らが送出可能な通信プロトコルを順次選択しながら、PLC3の通信プロトコルを特定可能な命令を、PLC3へ送出し、PLC3からの応答コードによって、通信プロトコルを自動的に判別してもよい。また、グラフィック操作パネル5は、自らに接続可能なPLC3が採用している通信プロトコル全てに関して、上記プロトコル情報を格納しておいてもよいし、現在、接続されているPLC3の通信プロトコルのみを格納しておき、必要に応じて、制御用ホストコンピュータ7から、あるいは、記録媒体を介してなど、種々の方法でダウンロードしてもよい。
【0035】
このように、PLC3との間で受け渡すデータ列41を、ローカル制御システム11の動作中にリアルタイムに生成することにより、グラフィック操作パネル5は、入力されたデータがどこから来たかを問うことなく、PLC3へデータを受け渡しできると共に、PLC3が変更された場合にあっても、ローカル制御システム11を停止することなく即応できる。
【0036】
ここで、グラフィック操作パネル5は、ローカル制御システム11に必須の構成であるが、近年では、高解像度の画像を表示するために、例えば、数Mバイト程度の記憶容量を持ち、表示に十分な演算速度を有している。したがって、グラフィック操作パネル5は、十分余力を持って、上記プロトコル変換できる。
【0037】
一方、PLC3は、シーケンサから発達してきた経緯から、スイッチのオンオフ制御やセンサーからのデータ取り込みといったI/O制御に関する処理を得意としている。したがって、図8に示すように、データ通信の中心として、制御システム501の通信の大半を処理するには、能力が不足することが多く、仮に処理可能であったとしても負担が大きい。例えば、ターゲットシステム502を制御するだけであれば、PLC503は、通常、数十kバイト程度の記憶容量と、記憶容量に応じた処理能力とで十分であるが、この記憶容量や処理能力では、通信の大半を十分な速度で処理することは難しい。
【0038】
これに対して、本実施形態に係るローカル制御システム11では、グラフィック操作パネル5と制御用ホストコンピュータ7との間に、PLC3が介在していないため、PLC3は、ターゲットシステム2の制御に専念できる。したがって、図8に示す従来の制御システム501のように、通信の大半を処理する場合よりも、記憶容量や処理能力を削減できる。なお、通信量の大きな処理の例として、ターゲットシステム2が製造する製品を変換する際など、制御用ホストコンピュータ7からグラフィック操作パネル5へ画面データをダウンロードする処理などが挙げられる。ところが、本実施形態に係るローカル制御システム11では、画面データは、PLC3を通過しないので、PLC3は、画面データをダウンロードする場合であっても、負担が少なく、正常に動作し続けることができる。
【0039】
また、PLC3の機種に拘らず、各グラフィック操作パネル5および制御用ホストコンピュータ7の間は、共通のプロトコルで通信される。したがって、同じローカル制御システム11内に、複数機種のPLC3を混在させることができ、機種選択の幅が広くなる。さらに、図8に示す従来の制御システム501のように、通信プロトコルが異なるPLC503aを混在させるために、制御システム501を、互いに異なる通信プロトコルのサブネットワークに分割し、サブネットワーク間に変換器510を配する場合とは異なり、ローカル制御システム11のネットワーク6では、通信プロトコルが共通である。したがって、例えば、ハブやブリッジ、ルータなど、ネットワーク6に接続される機器を自由に転用でき、これらの機器やPLC3の配置に関する自由度も向上できる。加えて、変換器510が不要なので、ローカル制御システム11全体の製造費を低減できる。
【0040】
一方、制御用ホストコンピュータ7は、図1に示すように、ネットワーク・インターフェース71・ネットワーク6を介して、各グラフィック操作パネル5と通信するサーバ部72と、当該サーバ部72へ指示して、例えば、各デバイス21の状態を表示/制御したり、集計するなどの処理を行うユーザ処理部73と、例えば、各グラフィック操作パネル5の局名やIPアドレスなど、ローカル制御システム11全体の設定を行う設定部74とを備えている。
【0041】
上記設定部74は、ネットワーク6に接続されているグラフィック操作パネル5について、例えば、図5に示すように、各グラフィック操作パネル5の局名とIPアドレスと、接続されているPLC3のメーカや形式およびバージョンと、各PLC3に接続されているデバイス21となどを管理している。これらのネットワーク参加局リストは、ローカル制御システム11の管理者が制御用ホストコンピュータ7の入力手段(キーボードなど)を用いて設定してもよい。また、例えば、設定部74がサーバ部72へ指示してネットワーク6へ配信したノード探索信号に応じて、各グラフィック操作パネル5が、自機器のIPアドレスや、接続されているPLC3などを示すステータス情報を送出すると共に、上記設定部74が各ステータス情報に基づいて、ネットワーク参加局リストを自動作成してもよい。
【0042】
ここで、上述したように、本実施形態に係るローカル制御システム11では、グラフィック操作パネル5がプロトコル変換部56を備えており、ネットワーク6を伝送されるデータ列61は、同じ表示内容/制御内容を示していれば、PLC3の機種に拘らず、同一になっている。したがって、制御用ホストコンピュータ7のユーザ処理部73は、PLC3の機種が異なっていても、同一の手順でサーバ部72へ指示することによって、PLC3へ制御を指示し、PLC3からのデータを受け取ることができる。したがって、図8に示す従来の制御システム501の場合、すなわち、制御用ホストコンピュータ507と制御用表示装置(グラフィック操作パネル)505との双方が専用プロトコルで通信する場合と異なり、PLC3との通信が必須のグラフィック操作パネル5のみに、専用プロトコルで通信するプログラムを用意すればよい。また、新たな通信プロトコルで通信するPLC3が開発されたとしても、グラフィック操作パネル5のみが対応すればよい。この結果、制御システム501に比べて、ローカル制御システム11の製造および維持管理の手間を削減できる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る制御システム1では、インターネット8を介して、ローカル制御システム11に接続可能な端末装置9が設けられている。当該端末装置9は、インターネット8を介して接続可能なインターネット通信処理部(広域ネットワーク通信手段)91と、PLC3の制御プログラムを作成あるいは修正すると共に、シリアルポートで出力可能な形式で当該制御プログラムを出力する制御プログラム作成部(制御プロトコル作成手段)92と、シリアルポートの代わりに制御プログラムを受け取り、PLC3を有するローカル制御システム11の制御用ホストコンピュータ7へ、制御プログラム自体と転送先のPLC3とを示す指示データを送信するように、上記インターネット通信処理部91へ指示するシリアルポート・エミュレータ(シリアルポート模擬手段)93とを備えている。一方、制御用ホストコンピュータ7には、インターネット8を介して、端末装置9のインターネット通信処理部91と接続可能なインターネット通信処理部75が設けられており、当該インターネット通信処理部75は、受け取った指示データに基づいて、転送先のPLC3を特定すると共に、当該PLC3に接続されたグラフィック操作パネル5へ共通プロトコルで制御プログラムを送信するように、上記サーバ部72へ指示する。これにより、端末装置9は、インターネット8に接続可能な任意の場所から、PLC3の制御プログラムを更新できる。
【0044】
ここで、本実施形態に係る制御システム1では、シリアルポート・エミュレータ93が設けられているので、制御プログラム作成部92を実現する際、例えば、図8に示す制御用ホストコンピュータ507など、シリアルポートを介してPLC3に直接接続される装置で使用されていた制御プログラム作成ソフトを流用できる。これにより、PLC3の機種毎の制御プログラム作成ソフトを新たに開発することなく、例えば、ニーモニック、ラダー回路図、フローチャートあるいはシーケンシャルファンクション・チャート(SFC)などを用いて、制御プログラムを記述できる。また、上記制御プログラム作成部92は、PLC3と直接接続することを前提にしており、シリアルポートに出力するデータ列として、制御プログラムを出力するように形成されている。
【0045】
一方、本実施形態に係るシリアルポート・エミュレータ93は、転送先のPLC3を特定するために、PLC3を有するローカル制御システム11の制御用ホストコンピュータ7と、PLC3が接続されたグラフィック操作パネル5とを予め設定できる。なお、グラフィック操作パネル5に複数のPLC3が接続されている場合は、転送先のPLC3自体も設定される。
【0046】
具体的には、シリアルポート・エミュレータ93は、例えば、予めPLC3の制御プログラム更新が許可されているローカル制御システム11のリストを提示し、使用者に選択を促すなどして、インターネット通信処理部91が接続する制御用ホストコンピュータ7を設定できる。なお、インターネット8上におけるアドレスやドメイン名など、制御用ホストコンピュータ7を特定するデータは、予め格納されている。
【0047】
また、シリアルポート・エミュレータ93は、使用者にグラフィック操作パネル5を特定させる際、上記図5に示すネットワーク参加局リストに表示されている情報のうちでグラフィック操作パネル5を特定可能な情報、すなわち、IPアドレスまたは局名を入力または選択するボックスを表示するなどして、グラフィック操作パネル5を特定させる。なお、シリアルポート・エミュレータ93は、制御用ホストコンピュータ7と予め通信して、設定部74の記憶を参照すれば、自動的に選択肢を表示できる。これにより、シリアルポート・エミュレータ93の使用者は、制御用ホストコンピュータ7の設定部74でグラフィック操作パネル5を特定する際と同じ方法で、送信先を指定できる。
【0048】
さらに、シリアルポート・エミュレータ93は、制御プログラム作成部92から上記PLC3用の制御プログラムを示すデータ列を受け取ると、上記グラフィック操作パネル5およびPLC3を示す識別子と、制御プログラム自体を示すデータ列とを含む指示データを、インターネット8を介して、予め設定された制御用ホストコンピュータ7へ送信するように、インターネット通信処理部91へ指示できる。
【0049】
ここで、PLC3の機種が異なり、記憶領域の大きさや配置などのアドレスマップ、あるいは、CPUなどの演算部が理解可能な機械語などが異なっていると、各PLC3用の制御プログラムを作成する必要がある。一方、制御プログラム作成ソフトは、上述したように、例えば、ラダー図などから制御プログラムを作成するため、比較的複雑な処理が行われている。したがって、インターネット8を介して制御用ホストコンピュータ7に制御プログラムを出力可能な制御プログラム作成ソフトを、各PLC3の機種毎に新規作成すると、当該ソフトの作成に手間がかかる。
【0050】
これに対して、本実施形態では、シリアルポート・エミュレータ93を設けることで、従来の制御プログラム作成ソフトを流用できる。したがって、端末装置9の各部材(91〜93)を実現するためのプログラムを作成する手間を大幅に削減できる。
【0051】
なお、上記各部51〜56(71〜75・91〜93)は、CPUなどの演算手段が、ROMやRAMなどの記憶手段に格納されたプログラムを実行し、タッチパネルや液晶表示装置などの入出力手段、あるいは、インターフェース制御回路などの通信手段を制御することによって実現される機能ブロックである。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体(例えば、CD−ROMなど)を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態に係るグラフィック操作パネル5、制御用ホストコンピュータ7および端末装置9を実現できる。なお、例えば、シリアルケーブル4、ネットワーク6またはインターネット8、あるいは、他の通信路を介してプログラムをダウンロードするためのプログラムが、上記コンピュータに予めインストールされていれば、当該通信路を介して、上記コンピュータへ上記プログラムを配付することもできる。
【0052】
上記構成によれば、表示/制御を行う通常処理に先立って、制御用ホストコンピュータ7の設定部74は、図6に示すステップ1(以下では、S1のように略称する)にて、ネットワークに加入する各グラフィック操作パネル5について、IPアドレスや局名、および、それぞれに接続されているPLC3を設定し、ネットワーク設定する。なお、グラフィック操作パネル5のプロトコル変換部56が、現在接続されているPLC3のプロトコル情報を持っていない場合、制御用ホストコンピュータ7の設定部74から、グラフィック操作パネル5のプロトコル変換部56へ、当該プロトコル情報をダウンロードすることもできる。この場合、図3に示すデータ列61として、プログラム情報の内容を示すデータ本体63と、プロトコル情報であることを示す識別データ62とが伝送され、ネットワーク側通信処理部54によって、データ本体63がプロトコル変換部56へ渡される。
【0053】
ここで、通常処理の一例として、制御用ホストコンピュータ7がPLC3へ制御を指示する場合、ユーザ処理部73は、図3に示す共通プロトコルでPLC3へデータ書き込み命令を送出するように、サーバ部72へ指示する。一方、サーバ部72は、上記S1でのネットワーク設定を参照して、当該PLC3が接続されているグラフィック操作パネル5のIPアドレスを取得し、当該IPアドレスへ、データ書き込み命令を示すデータ列61を送出する(S3)。
【0054】
一方、グラフィック操作パネル5では、S4において、ネットワーク側通信処理部54が当該データ列61の識別データ62に基づいて、表示/制御用のデータと判断して、データ本体63をプロトコル変換部56へ渡す。プロトコル変換部56は、共通プロトコルのデータ本体63から、共通コード64と関連情報65とを抽出し、図4に示すコマンド変換テーブルTBLを参照して、PLC3が認識可能で、共通コード64に対応するコマンドコードを選択する。また、必要に応じて、関連情報65の表現形式は、PLC3が認識可能な表現形式に変換される。これらの結果、PLC3へ伝送すべきコマンドコード、データ内容自体、データのサイズおよびアドレスなどが決定されると、プロトコル変換部56は、上記データ転送フォーマットFMTを参照して、PLC3へ送出するデータ列41を作成し、PLC側通信処理部52へデータ列41の送出を指示する。
【0055】
さらに、PLC側通信処理部52は、表示更新処理部55からのデータ列41の送出要求や、ネットワーク側通信処理部54からの制御プログラムの転送要求など、他の部材からの送出要求と、プロトコル変換部56からの送出要求とに基づいて、それぞれで指示されたデータ列41を順次シリアルケーブル4に送出する(S5)。一方、PLC3は、S6において、自らの専用プロトコルでのデータ書き込み命令を受け取ると、当該命令に応じて、デバイス21の状態を制御する。
【0056】
なお、上述では、データ書き込み命令の場合を例にして説明したが、データ読み出し命令の場合も同様に、プロトコル変換部56がプロトコル変換する。また、PLC3から制御用ホストコンピュータ7へのデータ転送は、上述と逆の手順で行われ、プロトコル変換部56は、PLC3からデータ列41を受け取った場合、上記データ転送フォーマットFMTに当てはめて、当該データ列41の示すコマンド、データ内容自体、データのサイズおよびアドレスなどを抽出し、上述とは逆の手順で、共通プロトコルのデータ本体63を作成し、ネットワーク側通信処理部54に出力する。これにより、制御用ホストコンピュータ7のユーザ処理部73は、PLC3の機種に拘らず、共通プロトコルにてPLC3からのデータ列を受け取ることができる。
【0057】
一方、制御プログラムの更新時には、図7に示す処理が行われる。すなわち、制御プログラムの更新に先立って、端末装置9のシリアルポート・エミュレータ93において、制御プログラムの送信先が設定される(S11)。当該送信先は、上述したように、制御用ホストコンピュータ7とグラフィック操作パネル5の局名やIPアドレス自体と、PLC3との組み合わせなどであり、制御用ホストコンピュータ7を除いて、上記S1でのネットワーク設定と同じ情報で特定される。ここで、サーバ部72は、S1での設定を参照すれば、PLC3が接続されたグラフィック操作パネル5のIPアドレスを取得できる。したがって、シリアルポート・エミュレータ93がインターネット通信処理部91、インターネット8およびインターネット通信処理部75を介して、サーバ部72に問い合わせることで、シリアルポート・エミュレータ93の使用者は、新たな特定方法を学習することなく、ネットワーク設定と同じ方法でグラフィック操作パネル5を特定できる。
【0058】
なお、上記S11あるいは後述のS14など、インターネット8を介して通信する際、制御用ホストコンピュータ7のインターネット通信処理部75は、例えば、端末装置9のインターネット通信処理部91から受け取った識別番号およびパスワードが、予め定められた組み合わせであるか否かを確認するなどして、制御データの更新が、上記端末装置9、または、その使用者に許可されているか否かを認証し、許可されていない端末装置9からのアクセスを拒否する。なお、認証に失敗した端末装置9は、制御用ホストコンピュータ7でアクセスを拒否されるため、当該端末装置9からのデータは、ネットワーク6を流れない。したがって、ローカル制御システム11の安全性を向上できる。
【0059】
また、制御プログラム作成部92は、S12において、制御プログラムを作成あるいは修正したり、予め作成された制御プログラムを選択するなどして、PLC3へ送出する制御プログラムを決定する。
【0060】
さらに、制御プログラム作成部92が、S13において、例えば、オペレーティングシステム(OS)などに対して、当該制御プログラムをシリアルポートへ送出するように指示すると、シリアルポート・エミュレータ93は、S14において、送出指示を横取りするなどして、シリアルポートの代わりに制御プログラムを受け取る。また、シリアルポート・エミュレータ93は、上記S11にて設定したグラフィック操作パネル5およびPLC3を示す識別子と、受け取った制御プログラムとを示す指示データを作成し、上記S11にて設定した制御用ホストコンピュータ7へ送出するように、インターネット通信処理部91へ指示する。さらに、インターネット通信処理部91は、インターネット8を介して、制御用ホストコンピュータ7のインターネット通信処理部75へ、指示データを送出する。
【0061】
一方、制御用ホストコンピュータ7において、インターネット通信処理部75が指示データを受け取ると、インターネット通信処理部75は、指示データに基づいて特定したグラフィック操作パネル5へ、制御プログラムを送信するように、サーバ部72へ指示する(S15)。
【0062】
さらに、サーバ部72は、S16において、制御プログラム自体としてのデータ本体63pに、制御プログラムであることを示す識別データ62pを付加して、データ列61p(図3参照)を作成し、上記グラフィック操作パネル5のIPアドレスへ送出する。なお、送信先がIPアドレス以外で指定された場合は、図6に示すS1でのネットワーク設定を参照して、送信先のIPアドレスを特定する。
【0063】
また、グラフィック操作パネル5のネットワーク側通信処理部54は、データ列61pの識別データ62pに基づいて、データ本体63pが制御プログラムであると判定して、データ本体63pを、そのまま送出するように、PLC側通信処理部52へ指示する。また、PLC側通信処理部52は、これに応じて、データ本体63pをPLC3へ送出する(S17)。
【0064】
ここで、データ本体63pは、制御プログラム作成部92が出力したデータ列、すなわち、シリアルポートへ出力する際のデータ列と同一のデータ列である。したがって、PLC側通信処理部52がデータ本体63pを出力することによって、制御プログラムの伝送路中に、インターネット8およびネットワーク6が存在しているにも拘らず、PLC3は、何ら支障なく、制御プログラムを受け取ることができ、自らの制御プログラムを更新できる(S18)。
【0065】
上記構成では、上記制御用ホストコンピュータ7と端末装置9とが、インターネット8を介して通信するので、両者が離れて設置されている場合であっても、それぞれに最寄のインターネットサービスプロバイダ(ISP)まで公衆回線で接続すれば、相互通信可能になる。したがって、回線交換型の公衆電話回線を介して相互に接続する場合よりも、通信料金を大幅に削減できる。
【0066】
加えて、インターネット8を介して通信するので、端末装置9と、ローカル制御システム11とが、それぞれ別の国に設置されている場合であっても、端末装置9の使用者は、何ら支障なく、制御用ホストコンピュータ7を操作する場合と同様に、制御プログラムを更新して、ローカル制御システム11の運用者をサポートできる。したがって、ローカル制御システム11の近くに多くのサポート要員を配することなく制御プログラムを更新でき、サポート時の手間を削減できる。
【0067】
なお、本実施形態では、端末装置9のシリアルポート・エミュレータ93が、グラフィック操作パネル5を指定して、PLC3を特定する場合を例にして説明したが、これに限るものではない。例えば、指示データ中に、制御システム1全体でPLC3を特定可能な識別子を付加し、制御用ホストコンピュータ7のインターネット通信処理部75が、識別子に基づいて、グラフィック操作パネル5を特定しても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
ただし、本実施形態のように、シリアルポート・エミュレータ93が、制御用ホストコンピュータ7の設定部74と同様の指定方法で、PLC3を特定した場合、シリアルポート・エミュレータ93の使用者は、設定部74と別の指定方法を覚える必要がないので、より使いやすい制御システム1を実現できる。
【0069】
また、本実施形態では、表示または制御する側からの要求に応じて、PLC3が応答する場合を例示したが、PLC3またはグラフィック操作パネル5が所定の周期毎または所定のイベント毎に、データを配信してもよい。この場合は、当該データがネットワーク6を伝送される際の表現形式を、PLC3の機種に拘らず、規定すればよい。いずれの場合であっても、PLC3の機種に拘らず、同じ制御指示または同じ状態を示すデータがネットワーク6の伝送時に互いに同一になるように、ネットワーク6の表示/制御データの転送プロトコル(共通プロトコル)が規定されており、グラフィック操作パネル5が共通プロトコルと機種毎に専用のプロトコルとを相互変換していれば、同様の効果が得られる。
【0070】
【発明の効果】
請求項1の発明に係る制御用端末装置は、以上のように、制御ユニットとシリアル・インターフェースを介して通信して、当該制御ユニットの制御状態を表示または制御する制御用表示装置が設けられたローカル制御システムに広域ネットワークを介して接続可能な広域ネットワーク通信手段、並びに、実際には、制御ユニットがシリアルポートを介して直接接続されていないにも拘わらず、上記制御用端末装置に設けられた制御プログラム作成手段が当該シリアルポートへ出力しようとする当該制御ユニットの制御プログラムを、上記シリアルポートの代わりに受け取るシリアルポート模擬手段を備え、上記シリアルポート模擬手段は、制御プログラムの転送先となる制御ユニットが設けられたローカル制御システムを予め設定すると共に、上記制御プログラム作成手段が受け取った制御プログラムと転送先の制御ユニットとを示す指示データを当該ローカル制御システムへ送信して、上記転送先の制御ユニットの制御プログラムの更新を指示するように、上記広域ネットワーク通信手段へ指示する構成である。請求項2の発明に係る制御用端末装置は、上記構成に加えて、上記ローカル制御システムは、ネットワークを介して上記制御用表示装置と通信する制御用ホストコンピュータを備えるシステムであり、上記制御用ホストコンピュータは、上記ネットワークに接続された制御用表示装置を管理する設定部が設けられたものであって、上記シリアルポート模擬手段は、上記ローカル制御システムの制御用ホストコンピュータと予め通信して、当該制御用ホストコンピュータの設定部の記憶を参照すると共に、制御用表示装置の選択肢を表示して、転送先の制御ユニットに接続された制御用表示装置を使用者に特定させると共に、上記指示データとして、特定された制御用表示装置および当該制御用表示装置に接続された制御ユニットを示す識別子と制御プログラム自体を含むデータ列とを上記広域ネットワーク通信手段へ送信させる構成である。請求項3の発明に係る制御用端末装置は、上記構成に加えて、上記広域ネットワークは、インターネットである構成である。
【0071】
上記構成によれば、制御プログラム作成手段がシリアルポートへ制御プログラムを出力しようとすると、シリアルポート模擬手段がシリアルポートの代わりに制御プログラムを受け取り、広域ネットワーク通信手段が、予め設定されたローカル制御システムへ、転送先の制御ユニットと制御プログラムとを示す指示データを送出する。この結果、従来の制御プログラム作成手段を流用できるにも拘わらず、遠隔地から制御ユニットの制御プログラムを更新できるという効果を奏する。また、ローカル制御システムの近傍に制御プログラムの作成要員を配置しなくても、短時間で制御プログラムを更新できるので、メンテナンス時の手間を削減できるという効果を併せて奏する。
【0072】
請求項4の発明に係る制御システムは、以上のように、上記の制御用端末装置と、上記制御用ユニット、制御用表示装置および制御用ホストコンピュータを含むローカル制御システムとを備えた制御システムであって、上記制御用表示装置は、機種に固有の専用プロトコルで当該制御ユニットと通信して、当該制御ユニットの制御状態を表示または制御する専用プロトコル通信手段と、共通プロトコルにて上記シリアル・インターフェースとは別の上記ネットワークを介して上記制御用ホストコンピュータと通信する共通プロトコル通信手段と、上記共通および専用プロトコル通信手段の通信を中継する中継手段とを備え、上記制御用ホストコンピュータは、上記広域ネットワークを介して受け取った指示データに基づいて、送信先の制御ユニットが接続された制御用表示装置を特定すると共に、当該制御用表示装置へ、上記共通プロトコルで制御プログラムの更新を指示する表示装置特定手段を備えている構成である。
【0073】
上記構成によれば、ローカル制御システムに必須で、演算能力や通信能力に余裕のある制御用表示装置が、両プロトコルでの通信を中継する。これにより、互いに異なる機種の制御ユニットを、ローカル制御システムに混在する場合であっても、表示装置特定手段は、送信先の制御ユニットの機種に拘らず、常に共通プロトコルで制御プログラムの更新を指示すればよい。したがって、表示装置特定手段を製造する際の手間を削減できるという効果を奏する。
【0074】
請求項5の発明に係る記録媒体は、上記制御用端末装置を実現するプログラムが記録されている構成である。それゆえ、当該プログラムをコンピュータに実行させることで、制御用端末装置を実現できる。したがって、上記制御用端末装置と同様に、従来の制御プログラム作成手段を流用できるにも拘わらず、遠隔地から制御ユニットの制御プログラムを更新できるという効果を奏する。また、ローカル制御システムの近傍に制御プログラムの作成要員を配置しなくても、短時間で制御プログラムを更新できるので、メンテナンス時の手間を削減できるという効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、制御システムの要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記制御システムにおいて、シリアルケーブルで伝送されるデータ形式を示す説明図である。
【図3】上記制御システムにおいて、ネットワークで伝送されるデータ形式を示す説明図である。
【図4】上記制御システムのグラフィック操作パネルにおいて、プロトコル変換時に使用されるコマンド変換テーブルを示す説明図である。
【図5】上記制御システムにおいて、ネットワーク設定時の表示画面を例示する説明図である。
【図6】上記制御システムにおいて、通常の表示/制御時の動作を示すフローチャートである。
【図7】上記制御システムにおいて、制御プログラムの更新時の動作を示すフローチャートである。
【図8】従来例を示すものであり、制御システムの要部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 制御システム
3 PLC(制御ユニット)
5 グラフィック操作パネル(制御用表示装置)
6 ネットワーク
7 制御用ホストコンピュータ(表示装置特定手段)
8 インターネット(広域ネットワーク)
9 端末装置(制御用端末装置)
11 ローカル制御システム
21 デバイス(制御対象)
51 シリアル・インターフェース
52 PLC側通信処理部(専用プロトコル通信手段)
54 ネットワーク側通信処理部(共通プロトコル通信手段;中継手段)
91 インターネット通信処理部(広域ネットワーク通信手段)
92 制御プログラム作成部(制御プログラム作成手段)
93 シリアルポート・エミュレータ(シリアルポート模擬手段)

Claims (5)

  1. 制御プログラムに従って、制御対象を制御する制御ユニットと、上記制御ユニットとシリアル・インターフェースを介して通信して、当該制御ユニットの制御状態を表示または制御する制御用表示装置とが設けられたローカル制御システムに広域ネットワークを介して接続可能な広域ネットワーク通信手段を備えた制御用端末装置であって、
    実際には、制御ユニットがシリアルポートを介して直接接続されていないにも拘わらず、上記制御用端末装置に設けられた制御プログラム作成手段が当該シリアルポートへ出力しようとする当該制御ユニットの制御プログラムを、上記シリアルポートの代わりに受け取るシリアルポート模擬手段を備え、
    上記シリアルポート模擬手段は、制御プログラムの転送先となる制御ユニットが設けられたローカル制御システムを予め設定すると共に、上記制御プログラム作成手段が受け取った制御プログラムと転送先の制御ユニットとを示す指示データを当該ローカル制御システムへ送信して、上記転送先の制御ユニットの制御プログラムの更新を指示するように、上記広域ネットワーク通信手段へ指示することを特徴とする制御用端末装置。
  2. 上記ローカル制御システムは、ネットワークを介して上記制御用表示装置と通信する制御用ホストコンピュータを備えるシステムであり、
    上記制御用ホストコンピュータは、上記ネットワークに接続された制御用表示装置を管理する設定部が設けられたものであって、
    上記シリアルポート模擬手段は、上記ローカル制御システムの制御用ホストコンピュータと予め通信して、当該制御用ホストコンピュータの設定部の記憶を参照すると共に、制御用表示装置の選択肢を表示して、転送先の制御ユニットに接続された制御用表示装置を使用者に特定させると共に、上記指示データとして、特定された制御用表示装置および当該制御用表示装置に接続された制御ユニットを示す識別子と制御プログラム自体を含むデータ列とを上記広域ネットワーク通信手段へ送信させることを特徴とする請求項1記載の制御用端末装置。
  3. 上記広域ネットワークは、インターネットであることを特徴とする請求項1または2記載の制御用端末装置。
  4. 請求項1、2または3記載の制御用端末装置と、上記制御用ユニット、制御用表示装置および制御用ホストコンピュータを含むローカル制御システムとを備えた制御システムであって、
    上記制御用表示装置は、上記シリアル・インターフェースを介し、上記制御ユニットの機種に専用のプロトコルで当該制御ユニットと通信して、当該制御ユニットの制御状態を表示または制御する専用プロトコル通信手段と、上記機種に独立して予め定められた共通のプロトコルにて、上記シリアル・インターフェースとは別の上記ネットワークを介して上記制御用ホストコンピュータと通信する共通プロトコル通信手段と、上記共通および専用プロトコル通信手段の通信を中継する中継手段とを備え、
    上記制御用ホストコンピュータは、上記広域ネットワークを介して、上記広域ネットワーク通信手段から受け取った指示データに基づいて、送信先の制御ユニットが接続された制御用表示装置を特定すると共に、特定された制御用表示装置へ、上記共通プロトコルで上記ネットワークを介して制御プログラムの更新を指示する表示装置特定手段を備えていることを特徴とする制御システム。
  5. 制御プログラムに従って、制御対象を制御する制御ユニットと、上記制御ユニットとシリアル・インターフェースを介して通信して、当該制御ユニットの制御状態を表示または制御する制御用表示装置とが設けられたローカル制御システムに広域ネットワークを介して接続可能な広域ネットワーク通信手段が設けられたコンピュータを制御用端末装置とし て動作させるプログラムが記録された記録媒体であって、
    請求項1、2または3に記載のシリアルポート模擬手段として、上記コンピュータを動作させるプログラムが記録された記録媒体。
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