JP3618233B2 - プレス機械の診断方法および診断用計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は均圧クッション装置を有するプレス機械に係り、特に、均圧状態などを診断する診断方法および診断用計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プレス機械の一種に、(a) しわ押え荷重付与手段により所定の下降抵抗が付与されるクッションパッドと、(b) そのクッションパッドに配設されるとともに油圧室が互いに連通させられた複数の均圧用油圧シリンダと、(c) その油圧シリンダ上にそれぞれ配設されるとともに上端部でしわ押え型を支持している複数のクッションピンとを備え、(d) プレス上型(ダイス型)の下降時に、前記下降抵抗に基づいてそのプレス上型と前記しわ押え型との間でプレス素材を挟圧してしわ押えする際に、前記複数の均圧用油圧シリンダのピストンがそれぞれ中立状態とされることにより油圧を介してしわ押え荷重を略均等に伝達する均圧クッション装置を有し、(e) そのしわ押え型およびプレス上型が前記プレス素材を挟圧した状態で前記クッションパッドと共に前記下降抵抗に抗して下方へ相対移動させられることにより、プレス下型(ポンチ型)の成形面に沿ってそのプレス素材を成形(絞り加工)するものがある。実開平1−60721号公報に記載されている装置や図1のプレス機械はその一例で、このようなプレス機械においては、クッションピンの長さ寸法のばらつきやクッションパッドの傾き等に拘らず、油圧シリンダの油圧を介してしわ押え荷重が略均等にクッションピンに伝達されるため、クッションピンの配設形態に応じて所望するしわ押えの荷重分布が得られるようになる。
【0003】
ところで、このようなプレス機械においては、例えば油圧シリンダの油圧が適当でないと均圧状態が得られないし、しわ押え荷重付与手段の下降抵抗、例えばエアシリンダのエア圧が適当でないと所望するしわ押え荷重が得られず、何れの場合もプレス加工品質が損なわれる。このため、均圧状態については、例えば特開平6−312225号公報に記載されているように、プレス下死点における油圧およびエア圧に基づいて均圧状態か否かを診断することが提案されている。また、特開平6−304800号公報には、しわ押え荷重付与手段としてのエアシリンダのエア容量をプレス下死点のエア圧などに基づいて算出し、エア漏れやエア圧上昇を診断することが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の診断方法では、例えばプレス機械の下死点信号を取り込んで下死点油圧やエア圧を検出するため、プレス機械のストロークセンサや回転位置センサなどが必要で装置が高価になり、必ずしも十分に満足できるものではなかった。
【0005】
また、均圧用油圧シリンダの油漏れや油圧上昇、最大ピーク値、或いはその作動油のエア混入率なども、プレス異常の早期発見や異常原因の究明などに有効であるが、従来は診断に用いられていないか、診断に用いる場合も検出作業(処理)などが面倒で必ずしも満足できなかった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、簡単な手法で各種の診断を行うことができるプレス機械の診断方法、および診断用計測装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a-1) しわ押え荷重付与手段により所定の移動抵抗が付与されるクッションパッドと、(a-2) そのクッションパッドに配設されるとともに圧力室が互いに連通させられた複数の均圧用流体シリンダと、(a-3) その均圧用流体シリンダとしわ押え型との間に介在させられた複数のクッションピンとを備え、(a-4) 前記移動抵抗に基づいて前記しわ押え型とダイス型との間でプレス素材を挟圧してしわ押えする際に、前記複数の均圧用流体シリンダのピストンがそれぞれ中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を均等に伝達する均圧クッション装置を有し、(b) そのしわ押え型およびダイス型が前記プレス素材を挟圧した状態で前記クッションパッドと共に前記移動抵抗に抗してポンチ型に対してプレス方向へ相対移動させられることにより、そのポンチ型の成形面に沿ってそのプレス素材を成形するプレス機械の診断方法であって、(c) 前記ダイス型が前記ポンチ型に対して相対的に接近、離間させられる一連のプレス作動の過程で、前記均圧用流体シリンダの流体圧Psが予め定められた作動判定値PsM を越えた時の時間Ts を検出するとともに、その流体圧Psがその作動判定値PsM を下回った時の時間Te を検出する成形動作判断工程と、(d) 前記時間Ts からTe までの間の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psのデータおよび前記しわ押え荷重付与手段の移動抵抗のデータを保存する保存工程と、(e) 前記時間T s およびT e をパラメータとして予め定められた演算式に従って算出することにより、前記ダイス型がプレス加工側の移動端に達した時間T 1 を推定する工程と、 (f) その時間T 1 の時の前記均圧用流体シリンダの流体圧Ps 1 と前記しわ押え荷重付与手段の移動抵抗とに基づいて、その均圧用流体シリンダのピストンがそれぞれ中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を均等に伝達する均圧状態か否かを診断する均圧状態診断工程とを有することを特徴とする。
【0008】
第2発明は、第1発明の診断方法において、前記均圧用流体シリンダの流体圧Psの最大ピーク値PsP が、予め定められた上限判定値PsPmaxを越えているか否かによって、流体圧上限超過を診断する流体圧上限超過診断工程を有することを特徴とする。
【0009】
第3発明は、第1発明または第2発明の診断方法であって、(a) 前記ダイス型が前記プレス素材を挟んで前記しわ押え型に当接する成形動作開始より前の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psを作動前流体圧PsA として設定する第1作動前流体圧設定工程と、(b) 前記ダイス型が前記しわ押え型から離間する成形動作終了後となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Te から経過した時の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psを作動後流体圧PsB として設定する第1作動後流体圧設定工程と、(c) 前記作動前流体圧PsA と前記作動後流体圧PsB との差圧ΔPsA-B =PsA −PsB が予め定められた正の流体漏れ判定値PsF より大きいか否かによって流体漏れを診断する第1流体漏れ診断工程とを有することを特徴とする。
【0010】
第4発明は、第1発明または第2発明の診断方法であって、(a) 前記ダイス型が前記プレス素材を挟んで前記しわ押え型に当接する成形動作開始より前の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psを作動前流体圧PsA として設定する第1作動前流体圧設定工程と、(b) 前記ダイス型が前記しわ押え型から離間する成形動作終了後となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Te から経過した時の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psを作動後流体圧PsB として設定する第1作動後流体圧設定工程と、(c) 前記作動前流体圧PsA と前記作動後流体圧PsB との差圧ΔPsA-B =PsA −PsB が予め定められた負の流体圧上昇判定値PsR より小さいか否かによって流体圧上昇異常を診断する第1流体圧上昇異常診断工程とを有することを特徴とする。
【0011】
第5発明は、第1発明または第2発明の診断方法であって、(a) 前記しわ押え荷重付与手段は、圧縮性流体を用いた流体シリンダの流体圧に基づいて前記移動抵抗を前記クッションパッドに付与するものであり、(b) 前記ダイス型が前記プレス素材を挟んで前記しわ押え型に当接する成形動作開始より前の前記流体シリンダの流体圧Paを作動前流体圧PaA として設定する第2作動前流体圧設定工程と、(c) 前記ダイス型が前記しわ押え型から離間する成形動作終了後となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Te から経過した時の前記流体シリンダの流体圧Paを作動後流体圧PaB として設定する第2作動後流体圧設定工程と、(d) 前記作動前流体圧PaA と前記作動後流体圧PaB との差圧ΔPaA-B =PaA −PaB が予め定められた正の流体漏れ判定値PaF より大きいか否かによって流体漏れを診断する第2流体漏れ診断工程とを有することを特徴とする。
【0012】
第6発明は、第1発明または第2発明の診断方法であって、(a) 前記しわ押え荷重付与手段は、圧縮性流体を用いた流体シリンダの流体圧に基づいて前記移動抵抗を前記クッションパッドに付与するものであり、(b) 前記ダイス型が前記プレス素材を挟んで前記しわ押え型に当接する成形動作開始より前の前記流体シリンダの流体圧Paを作動前流体圧PaA として設定する第2作動前流体圧設定工程と、(c) 前記ダイス型が前記しわ押え型から離間する成形動作終了後となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Te から経過した時の前記流体シリンダの流体圧Paを作動後流体圧PaB として設定する第2作動後流体圧設定工程と、(d) 前記作動前流体圧PaA と前記作動後流体圧PaB との差圧ΔPaA-B =PaA −PaB が予め定められた負の流体圧上昇判定値PaF より大きいか否かによって流体圧上昇異常を診断する第2流体圧上昇異常診断工程とを有することを特徴とする。
【0013】
第7発明は、(a-1) しわ押え荷重付与手段により所定の移動抵抗が付与されるクッションパッドと、(a-2) そのクッションパッドに配設されるとともに圧力室が互いに連通させられた複数の均圧用油圧シリンダと、(a-3) その均圧用油圧シリンダとしわ押え型との間に介在させられた複数のクッションピンとを備え、(a-4) 前記移動抵抗に基づいて前記しわ押え型とダイス型との間でプレス素材を挟圧してしわ押えする際に、前記複数の均圧用油圧シリンダのピストンがそれぞれ中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を均等に伝達する均圧クッション装置を有し、(b) そのしわ押え型およびダイス型が前記プレス素材を挟圧した状態で前記クッションパッドと共に前記移動抵抗に抗してポンチ型に対してプレス方向へ相対移動させられることにより、そのポンチ型の成形面に沿ってそのプレス素材を成形するプレス機械の診断方法であって、(c) 前記均圧用油圧シリンダのピストン動作量Xpと油圧Psとの関係からその均圧用油圧シリンダの作動油の体積弾性係数Kを求め、油の体積弾性係数K1および空気の体積弾性係数K2を用いて次式(1) に従ってエア混入率Raを求めるエア混入率診断工程を有することを特徴とする。
Ra=〔{(K1×K2)/K}−K2〕/(K1+K2) ・・・(1)
【0014】
第8発明は、第7発明に記載のプレス機械の診断方法において、前記均圧用油圧シリンダのピストン動作量Xpと油圧Psとの関係を求める際に用いられる診断用計測装置であって、(a) 前記クッションピンの代わりに前記均圧用油圧シリンダに配設され、その均圧用油圧シリンダを押圧してピストンを押し込むとともに、その押圧荷重を変更可能な押圧装置と、(b) その押圧装置の押圧荷重を検出する荷重センサと、(c) 前記均圧用油圧シリンダのピストン動作量Xpを検出する位置センサとを有することを特徴とする。
【0015】
【発明の効果】
第1発明のプレス機械の診断方法においては、均圧用流体シリンダの流体圧Psが作動判定値PsM を越えた時の時間Ts 、および流体圧Psが作動判定値PsM を下回った時の時間Te を検出し、その間の均圧用流体シリンダの流体圧Psおよびしわ押え荷重付与手段の移動抵抗を1回の成形動作中のデータとして保存して均圧状態か否かの診断を行うため、プレス機械のストロークやクランク回転位置などを検出する必要がなく、診断装置が簡単且つ安価に構成される。
【0016】
また、上記均圧用流体シリンダの流体圧データおよびしわ押え荷重付与手段の移動抵抗データを保存する一方、ダイス型がプレス加工側の移動端に達したと推定される時間T1 を、前記時間Ts およびTe をパラメータとして予め定められた演算式に従って算出し、その時間T1 の時の流体圧Ps1 およびしわ押え荷重付与手段の移動抵抗に基づいて均圧状態か否かを診断するため、プレス機械の移動端(下死点など)を検出する必要がないとともに移動端に達した時間T1 が簡単に求められ、処理作業が容易で装置が簡単且つ安価に構成される。
【0017】
第2発明では、均圧用流体シリンダの流体圧Psの最大ピーク値PsP が予め定められた上限判定値PsPmaxを越えているか否かによって流体圧上限超過を診断するため、例えば均圧クッション装置の流体回路の破損などを未然に防止できる。
【0018】
第3発明では、成形動作開始より前の作動前流体圧PsA および成形動作終了後の作動後流体圧PsB の差圧ΔPsA-B =PsA −PsB が流体漏れ判定値PsF より大きいか否かによって流体漏れを診断するため、例えば流体漏れに起因する均圧不良を未然に防止できるとともに、プレス異常の原因究明などに利用できる。また、作動後流体圧PsB は時間Te を基準として検出されるため、プレス機械のストロークやクランク回転位置などを検出する必要がなく、診断装置が簡単且つ安価に構成される。
【0019】
上記差圧ΔPsA-B =PsA −PsB が流体圧上昇判定値PsR より小さいか否かによって流体圧上昇異常を診断する第4発明についても、第3発明と同様の効果が得られる。流体圧上昇異常は、例えば逆止弁のようにボール等の弁子が弁座に着座することによって流路を閉塞して流体の流出を阻止するようになっている場合、ダイス型がポンチ型から離間して均圧用流体シリンダのピストンが押し出される時などに一時的に部分的に負圧になって流体が回路内に流入した場合などに発生する。
【0020】
第5発明は、前記しわ押え荷重付与手段として流体シリンダが用いられる場合で、成形動作開始より前の作動前流体圧PaA および成形動作終了後の作動後流体圧PaB の差圧ΔPaA-B =PaA −PaB が流体漏れ判定値PaF より大きいか否かによって流体漏れを診断するため、例えば流体漏れに起因するしわ押え不良(しわ押え荷重の低下)を未然に防止できるとともに、プレス異常の原因究明などに利用できる。また、作動後流体圧PaB は時間Te を基準として検出されるため、プレス機械のストロークやクランク回転位置などを検出する必要がなく、診断装置が簡単且つ安価に構成される。
【0021】
上記差圧ΔPaA-B =PaA −PaB が流体圧上昇判定値PaR より小さいか否かによって流体圧上昇異常を診断する第6発明についても、第5発明と同様の効果が得られる。流体圧上昇異常は、例えば流体シリンダの摺動部に潤滑油を間歇給油するようになっている場合、その潤滑油がシリンダ内やタンク等に蓄積することによって発生する。
【0022】
第7発明では、均圧用油圧シリンダのピストン動作量Xpと油圧Psとの関係から作動油の体積弾性係数Kを求め、油の体積弾性係数K1および空気の体積弾性係数K2を用いて前記(1) 式に従ってエア混入率Raを求めるため、例えば均圧用油圧シリンダの油圧Psの初期設定などをエア混入率Raをパラメータとして行うなど、エア混入率Raを考慮して各種の設定等を行うことができる。また、均圧用油圧シリンダのピストン動作量Xpと油圧Psとの関係を求めるだけで簡単にエア混入率Raを診断できるため、処理作業が容易で装置が簡単且つ安価に構成される。
【0023】
第8発明の診断用計測装置によれば、例えば1個の均圧用油圧シリンダに押圧装置を配設し、その押圧荷重を変化させながら均圧用油圧シリンダを押圧するとともに、その時の押圧荷重およびピストン動作量Xpを検出することにより、油圧Psとピストン動作量Xpとの関係を簡単に求めることができる。油圧Psは、均圧用油圧シリンダのピストンの受圧面積Asで押圧荷重を割算することによって求められる。
【0024】
なお、上記第8発明の診断用計測装置は、エア混入率Raを求める場合だけでなく、作動油の体積弾性係数Kを求めるだけの場合、或いはその体積弾性係数Kに基づいてn(ピン本数)/Fs(しわ押え荷重)線図を作成する場合などに利用することもできる。均圧用流体シリンダとして、作動油以外の液体やゲル状の流体などを用いたシリンダを使用している場合にも適用できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明が適用されるプレス機械は、例えばダイス型がプレス上型で、プレス下型である位置固定のポンチ型に対して下方へ向かって上下駆動されるようになっており、その場合は、前記移動抵抗は下降抵抗を意味し、移動端は下降端または下死点を意味し、クッションピンは油圧シリンダ上に載置されて上端部でしわ押え型を支持するように構成されるが、ダイス型或いはポンチ型を水平方向など上下以外の方向へ移動させてプレス加工を行うものであっても良い。
【0026】
しわ押え荷重付与手段としては、第5発明、第6発明のように圧縮性流体を用いた流体シリンダ、例えばエアシリンダ等のガスシリンダが好適に用いられ、移動抵抗はエア圧等の流体圧によって付与されるように構成されるが、スプリング等のばね力を利用したものなど他のしわ押え荷重付与手段を採用することもできる。第5発明、第6発明の流体シリンダの場合、その流体シリンダに連通する一連の流体回路への流体の出入りは、プレス加工前の調圧時を除いて阻止され、その容積は、プレス加工に伴う流体シリンダの容積変化を除いて一定に保持される。
【0027】
均圧用流体シリンダとしては、第7発明のように油圧シリンダが好適に用いられるが、作動油以外の液体やゲル状の流体などを用いたシリンダを使用することも可能である。複数の均圧用流体シリンダに連通する一連の流体回路は逆止弁などによって遮断され、プレス加工時には逆止弁からの流入を除いて流体の出入りは阻止されるとともに、その容積は、プレス加工(しわ押え)に伴う均圧用流体シリンダの容積変化を除いて一定に保持される。逆止弁は必須のものではなく、プレス加工時の流体の流入が防止されるようになっていても良い。また、均圧用流体シリンダは、シリンダをクッションパッドに固定することが望ましいが、ピストンをクッションパッドに固定するようにしても良い。
【0028】
第1発明の作動判定値PsM は、プレス機械が成形動作中であること、すなわちダイス型がプレス素材を挟んでしわ押え型に当接させられ、実際にしわ押えを含むプレス成形中であることを検出するためのもので、例えば圧力センサ等の検出誤差などを考慮して成形動作開始前の初期圧より僅かに高い圧力値で、しわ押え荷重Fsに対応する流体圧よりも十分に小さい圧力値を設定することが望ましい。上記作動判定値PsM は絶対圧力で設定しても良いが、成形動作開始前の初期圧を基準にして設定することもできる。
【0029】
第1発明の保存工程は、好適には、ダイス型がプレス素材を挟んでしわ押え型に当接する成形動作開始時から、そのダイス型がしわ押え型から離間する成形動作終了までのデータを保存するように、予め定められた余裕時間Tt だけ前記時間Ts 、Te の前後のデータを含んで保存するように構成される。現在より余裕時間Tt よりも長い所定時間前までのデータを逐次RAM等の記憶装置に一時記憶するようにしておけば良い。
【0030】
第3発明、第4発明の第1作動前流体圧設定工程、第5発明、第6発明の第2作動前流体圧設定工程は、例えば成形動作開始より前であることを作業者が確認してスイッチ操作されることにより、その時の流体圧Ps、Paを設定するように構成されるが、成形動作開始より前となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Ts より前の流体圧Ps、PaをPsA 、PaA として設定するように構成することもできる。所定時間よりも長い時間分のデータを逐次RAM等の記憶装置に一時記憶するようにしておけば良い。
【0031】
本発明の診断方法は、何れもコンピュータを用いて必要な情報を与えることにより自動的に行われるようにすることが望ましい。また、第1発明〜第6発明の診断は、実際のプレス加工時にオンラインで継続的に、或いは定期的に行うこともできるが、診断のみを目的としてプレス機械を作動させて実施するようにしても良い。プレス不良が生じた場合に、原因究明のために診断する場合であっても良いなど、実施する目的や時期などは適宜定められる。
【0032】
第8発明の押圧装置は、例えば受圧面積が均圧用油圧シリンダと等しい計測用油圧シリンダを用いて構成し、荷重センサとしてその計測用油圧シリンダの油圧Pkを検出する油圧センサを用いれば、その油圧Pk=Psとなり、押圧荷重から油圧Psを求める換算作業が不要になる。但し、均圧用油圧シリンダと受圧面積が異なる計測用油圧シリンダを用いることもできるし、送りねじを利用したものなど他の種々の押圧装置を採用できる。荷重センサとしては、油圧センサの他、押圧装置の形態に応じて歪ゲージ(ロードセルなど)やトルクセンサなどが好適に用いられる。
【0033】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1において、ポンチ型10が取り付けられるボルスタ12はプレスキャリア14を介してベース16上に配設されている一方、ダイス型18が取り付けられるプレススライド20は図示しない駆動機構により上下方向へ駆動されるようになっている。ボルスタ12には、クッションピン22を配設するために多数の貫通孔24が碁盤目状に設けられており、ボルスタ12の下方には、それ等のクッションピン22を支持するクッションパッド26が略水平な姿勢で配設されている。クッションピン22は、上記ポンチ型10と共に配設されるしわ押えリング28を支持するもので、そのしわ押えリング28の形状に応じて予め定められた所定の位置に任意の数だけ配設される。ポンチ型10には、クッションピン22の配設位置に対応して複数の貫通孔が設けられている。また、クッションパッド26は、上記貫通孔24に対応して多数の油圧シリンダ30を備えており、クッションピン22の下端部はそれぞれその油圧シリンダ30のピストンロッドに当接させられるようになっている。上記ポンチ型10はプレス下型に相当し、ダイス型18はプレス上型に相当し、しわ押えリング28はしわ押え型に相当し、油圧シリンダ30は均圧用流体シリンダに相当する。
【0034】
上記クッションパッド26は、前記プレスキャリア14内に上下方向の移動可能に配設されており、常にはエアシリンダ32により上方へ付勢されている。エアシリンダ32の圧力室はエアタンク34に連通させられているとともに、そのエアタンク34には、エア圧源36からエア圧制御回路38を介して圧力エアが供給されるようになっている。エアタンク34には、開閉弁37およびエア圧センサ39が接続されており、上記エア圧制御回路38および開閉弁37により、エアタンク34やエアシリンダ32内のエア圧Paがしわ押え荷重に応じて調圧される。すなわち、前記ダイス型18がプレススライド20と共に下降させられると、エアシリンダ32のエア圧Paに基づく付勢力に従ってダイス型18としわ押えリング28との間でプレス素材40の周縁部が挟圧されてしわ押えされ、その状態でしわ押えリング28およびダイス型18がクッションパッド26と共にエアシリンダ32の付勢力に抗して更に下降させられると、ポンチ型10の成形面に沿って絞り加工が行われるのである。エア圧Paの調圧後は、エアシリンダ32に連通する一連のエア回路へのエアの出入りは阻止され、その容積は、プレス加工に伴うエアシリンダ32の容積変化を除いて一定に保持される。本実施例ではエアシリンダ32,エアタンク34,エア圧源36,およびエア圧制御回路38等を含んでしわ押え荷重付与手段42が構成されており、エアシリンダ32の付勢力すなわちエア圧Paはクッションパッド26の移動抵抗に対応する。また、エアシリンダ32はガスシリンダ、更には圧縮性流体を用いた流体シリンダに相当する。
【0035】
前記複数の油圧シリンダ30の油圧室(圧力室)は、クッションパッド26内に設けられた油路46を介して互いに連通させられているとともに、油路46はフレキシブルチューブ48を介して配管50に接続され、エア駆動式の油圧ポンプ52によってタンク54から汲み上げられた作動油が逆止弁56を経て供給されるようになっている。配管50には、リリーフ弁等を備えた油圧制御回路58が接続されており、この油圧制御回路58および上記油圧ポンプ52により配管50や油圧シリンダ30内の作動油の油圧Psが、絞り加工時にしわ押えに関与する総ての油圧シリンダ30、すなわち前記クッションピン22が配設された油圧シリンダ30のピストンが中立状態となるように調圧される。これにより、複数のクッションピン22からしわ押えリング28にしわ押え荷重が均等に伝達される。複数の油圧シリンダ30に連通する一連の油圧回路は逆止弁56および油圧制御回路58によって遮断され、プレス加工時には逆止弁56からの流入を除いて作動油の出入りは阻止されるとともに、その容積は、プレス加工(しわ押え)に伴う油圧シリンダ30の容積変化を除いて一定に保持される。上記油圧Psは、油路46に接続された油圧センサ60によって検出されるようになっている。本実施例では、クッションピン22、クッションパッド26、油圧シリンダ30、前記しわ押え荷重付与手段42を含んで均圧クッション装置44が構成されている。
【0036】
上記油圧Ps、前記エア圧Paの調圧制御は、図示しない制御装置により行われるようになっており、プレス金型の段替え時などプレス加工に先立ってそれぞれ所定の圧力Ps0 、Pa0 に調圧される。油圧Ps0 は、プレス加工時に油圧シリンダ30のピストンが中立状態となるように、試打や演算式などによって設定される。演算式によって求める場合、例えば油圧シリンダ30のピストンの平均追い込み寸法をXav、油圧シリンダ30の受圧面積をAs、使用する作動油の体積弾性係数をK、油量をV、しわ押え荷重をFs、クッションピン22の使用本数すなわちしわ押えに関与する油圧シリンダ30の数をnとすると、油圧Ps0 は次式(2) を満足するように定められる。平均追い込み寸法Xavは、総てのクッションピン22をしわ押えリング28に当接させるためのピストンの追い込みストロークであり、クッションピン22の長さ寸法のばらつきやクッションパッド26の傾き等に拘らず、総てのピストンがクッションピン22によってシリンダ内へ押し込まれるとともに、プレス加工時の衝撃等に拘らずストローク端に達することがないように、予め実験等によって定められる。また、油量Vは、総ての油圧シリンダ30のピストンが突き出し端に位置させられた状態において、その油圧シリンダ30の油圧室内やその油圧室に連通している一連の油圧回路内の作動油の全容量である。
Xav=(Fs−n・As・Ps0 )V/n2 ・As2 ・K ・・・(2)
【0037】
また、エア圧Pa0 は、所定のしわ押え荷重Fsが得られるように、例えばエアシリンダ32の受圧面積Aa、クッションパッド26の重量Wc、クッションパッド26の摺動抵抗ΔFc、クッションピン22の使用本数n、クッションピン22の重量Wp、しわ押えリング28の重量Wrを用いて次式(3) に従って求められる。しわ押え荷重Fsは、所望するプレス品質が得られるように予めトライプレスなどによって設定される。なお、プレス加工時には、クッションパッド26の下降に伴ってエア容積が減少し、それに伴ってエア圧Paは上昇するため、プレス下死点で所望のエア圧Paが得られるように初期エア圧Pa0 を設定することも可能である。
Pa0 =(Fs+Wc+n・Wp+Wr−ΔFc)/Aa ・・・(3)
【0038】
図2は、上記のようなプレス機械を診断するための診断装置62のブロック線図で、パソコンなどにて構成される診断用コンピュータ64には、前記油圧センサ60、エア圧センサ39からAD変換器66を経て油圧Ps、エア圧Paに関する情報が取り込まれる。診断用コンピュータ64は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、ROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、均圧状態や油漏れ、油圧上昇異常、油圧最大ピーク値PsP の上限超過、エア漏れ、エア増圧などを診断し、診断結果などを表示装置68に表示する。表示装置68は、例えば図3のように構成されていて、油圧Psやエア圧Pa、しわ押え荷重Fsなどの変化をリアルタイムで表示する波形表示部70や「未均圧」、「均圧」、「胴突」を表示するランプ72、74、76、「油漏れ」、「油圧上昇」、「上限超過」、「エア漏れ」、「エア増圧」の異常をそれぞれ点灯表示する異常表示部78などを備えている。また、表示装置68には、計測開始ボタン80、初期圧計測ボタン82、波形表示部70の表示を切り換える表示切替ボタン84等の操作装置86が一体的に組み込まれている。
【0039】
なお、この診断装置62は、本実施例では種々のプレス機械に対して診断を行うことができるように、油圧センサ60、エア圧センサ39との接続具を含んで単独で構成されているが、油圧Psやエア圧Paを自動的に調圧する制御装置を有するプレス機械の場合、その制御装置に一体的に組み込むことも可能である。
【0040】
図4は、均圧状態を診断する際の作動(信号処理)を説明するフローチャートで、通常のプレス加工時に実施される。ステップS1では、前記計測開始ボタン80がON操作されたか否かを判断し、ON操作されるとステップS2で初期圧計測ボタン82がON操作されたか否かを判断する。計測開始ボタン80がON操作されると、波形表示部70には油圧Psやエア圧Paなどがリアルタイムで表示され、プレス加工が行われると例えば図8、図12に示すような波形が表示されるため、作業者は、圧力変化が殆ど無い初期圧であることを確認して初期圧計測ボタン82をON操作すれば良い。
【0041】
初期圧計測ボタン82がON操作されると、ステップS3およびS4を実行し、その時の油圧Psを初期油圧PsA に設定するとともに、エア圧Paを初期エア圧PaA に設定する。これ等の初期油圧PsA 、初期エア圧PaA は作動前流体圧に相当し、プレス機械に何の異常もなければプレス加工に先立って予め設定された油圧Ps0 、エア圧Pa0 と略同じ値である。ステップS5では、初期油圧PsA を基準とする油圧上昇値ΔPs=Ps−PsA が予め設定されたトリガレベル値Pst よりも大きくなったか否かを判断し、ΔPs>Pst になるとステップS6を実行する。トリガレベル値Pst は、プレス機械が成形動作に入ったこと、言い換えればダイス型18がプレス素材40を挟んでしわ押えリング28に当接してしわ押えを含むプレス成形中であることを検出するためのもので、センサの検出誤差などを考慮してできるだけ小さい油圧値が設定される。このトリガレベル値Pst は作動判定値PsM に対応するもので、PsM =PsA +Pst になる。
【0042】
なお、本実施例では通常のプレス加工時に診断を行うようになっているため、特にプレス機械の作動に関する信号処理は含まれていないが、診断のみを目的としてプレス機械を作動させる場合には、ステップS4に続いてプレス機械を1往復だけ作動させ、その作動過程でステップS5以下を実行するようにすれば良い。
【0043】
ステップS6では、ΔPs>Pst になった時の時間Ts を基準として、それよりも予め定められた余裕時間Tt だけ前の時間Tts以後の油圧Ps、エア圧Paに関するデータを保存する。余裕時間Tt よりも長い所定時間前までのデータを逐次RAM等の記憶装置に一時記憶するようになっていて、そのデータを読み出して保存するようになっている。ステップS7では、油圧上昇値ΔPsがトリガレベル値Pst を下回ったか否かを判断し、ΔPs<Pst になるとステップS8を実行する。ステップS8では、ΔPs<Pst になった時の時間Te を基準として、それよりも予め定められた余裕時間Tt だけ後の時間Tteまでの油圧Ps、エア圧Paに関するデータを保存し、これによりデータの保存を終了する。余裕時間Tt は、ダイス型18がプレス素材40を挟んでしわ押えリング28に当接した成形動作開始より前から、ダイス型18がプレス素材18から離間する成形動作終了後までのデータを含むように、言い換えればしわ押えを含む一連の成形動作中の油圧Ps、エア圧Paのデータが得られるように、トリガレベル値Pst などを考慮して設定される。時間は、例えば水晶発振子等のクロック信号源から出力されるクロック信号に基づいて計測される。なお、時間Ts より前の余裕時間Tt と、時間Te より後の余裕時間Tt とを、必要に応じて異なる時間に設定しても良い。
【0044】
ステップS9では、保存された油圧Psのデータ(図8参照)を解析し、その最大値を最大ピーク値PsP に設定する。また、ステップS10では、ダイス型18がプレス加工側の移動端すなわち下死点に達したと推定される時間T1 を、上記時間Ts およびTe をパラメータとして予め定められた次式(4) に従って算出するとともに、その時間T1 の時の油圧Psを下死点油圧Ps1 (図8参照)とし、ステップS11では、保存されたエア圧Paのデータ(図12、図13参照)に基づいて、上記時間T1 の時のエア圧Paを下死点エア圧Pa1 とする。数式(4) は、プレス機械の作動原理などに基づいて適宜定められる。なお、図12、図13のクッションパッド降下範囲は、均圧用油圧シリンダ30のピストンストローク時間分だけ図9〜図11の成形動作中の範囲よりも狭い。
T1 =(TS +Te )/2 ・・・(4)
【0045】
次のステップS12では、上記下死点エア圧Pa1 、下死点油圧Ps1 に基づいてぞれぞれ次式(5) 、(6) に従ってしわ押え荷重Fs0、Fs1を算出する。但し、Aa:エアシリンダ32の受圧面積、Wc:クッションパッド26の重量、ΔFc:クッションパッド26の摺動抵抗、n:クッションピン22の使用本数(プレス加工に関与する油圧シリンダ30の数)、Wp:クッションピン22の重量、Wr:しわ押えリング28の重量、As:油圧シリンダ30の受圧面積である。
Fs0=Pa1 ・Aa−Wc+ΔFc−n・Wp−Wr ・・・(5)
Fs1=Ps1 ・As・n−n・Wp−Wr ・・・(6)
【0046】
その後、ステップS13でFs0−Fs1>αであるか否かを判断するとともに、ステップS14でFs0−Fs1<−αであるか否かを判断する。判定値αは、上記(5) 式、(6) 式の各パラメータに全く誤差が無ければ略0で良いが、摺動抵抗ΔFcなど誤差が避けられないため、それ等の誤差に応じて例えばプレス機械毎に予め定められる正の値である。そして、−α<Fs0−Fs1<αの場合、すなわちFs0≒Fs1の場合は、エアシリンダ32によってクッションパッド26に付与される下降抵抗(しわ押え荷重)が、総て油圧シリンダ30の油圧を介して均等にしわ押えリング28に伝達されること、言い換えればプレス加工に関与する総ての油圧シリンダ30のピストンが中立状態であることを意味しており、ステップS15において均圧状態であることを表すランプ74を点灯する。Fs0−Fs1>αの場合は、少なくとも一部の油圧シリンダ30のピストンが胴突きであると判断し、ステップS17で胴突きのランプ76を点灯する一方、Fs0−Fs1<−αの場合は、一部の油圧シリンダ30が初期状態でそのクッションピン22が機能していない未均圧状態であると判断し、ステップS16で未均圧のランプ72を点灯する。
【0047】
ここで、本実施例では油圧シリンダ30の油圧上昇値ΔPsがトリガレベル値Pst を越えた時の時間Ts 、および油圧上昇値ΔPsがトリガレベル値Pst を下回った時の時間Te を検出し、その間の一連の油圧Psおよびエア圧Paのデータを1回の成形動作中のデータとして保存して診断を行うため、プレス機械のストロークやクランク回転位置などを検出する必要がなく、診断装置62が簡単且つ安価に構成される。特に、本実施例では時間Ts よりも余裕時間Tt だけ前から、時間Te よりも余裕時間Tt だけ後までデータを保存するため、成形動作開始より前から成形動作終了後までのデータを確実に保存できる。
【0048】
また、上記時間Ts とTe との中間の時間T1 =(Ts +Te )/2の時にダイス型18が下死点に達したと推定して、その時間T1 の時の油圧Psおよびエア圧Paをそれぞれ下死点油圧Ps1 、下死点エア圧Pa1 として求め、それ等の下死点油圧Ps1 、下死点エア圧Pa1 に基づいて均圧状態か否かを診断するため、プレス機械の下死点を検出する必要がないとともに下死点に達した時間T1 が簡単に求められ、処理作業が容易で診断装置62が簡単且つ安価に構成される。
【0049】
図4は第1発明の実施例に相当し、ステップS5およびS7は成形動作判断工程で、ステップS6およびS8は保存工程で、ステップS10〜S17は均圧状態診断工程である。また、ステップS10において、前記 (4) 式に従って時間T 1 を算出する工程は、ダイス型がプレス加工側の移動端に達した時間T 1 を推定する工程である。
【0050】
図5は、油圧シリンダ30の油漏れおよび油圧上昇異常を診断する際の作動(信号処理)を説明するフローチャートで、前記操作装置86等に設けられたスイッチ操作により油漏れおよび油圧上昇異常の診断が選択された場合などに、図4のフローチャートと併せて実行される。なお、図4のフローチャートの実行時に常に図5の各ステップが実行されるようにしても良い。
【0051】
図5のステップS21は、図4のステップS8よりも後に実行されるもので、ダイス型18がプレス素材40(しわ押えリング28)から離間する成形動作終了後となる前記時間Tteの時の油圧Psを初期油圧PsB (図9、図10参照)に設定する。この初期油圧PsB は作動後流体圧に相当し、プレス機械に何の異常もなければプレス加工に先立って予め設定された油圧Ps0 や作動前流体圧である前記初期油圧PsA と略同じ値である。
【0052】
ステップS22は、図4の各ステップが総て終了した後に実行されるもので、前記初期油圧PsA とPsB との差圧ΔPsA-B =PsA −PsB が予め定められた正の流体漏れ判定値PsF より大きいか否かを判断し、YES(肯定)の場合は油漏れ(流体漏れ)と判断してステップS23で異常表示部78の「油漏れ」を点灯表示する。ステップS22の判断がNOの場合は、ステップS24で差圧ΔPsA-B =PsA −PsB が予め定められた負の流体圧上昇判定値PsR より小さいか否かを判断し、YES(肯定)の場合は油圧上昇異常(流体圧上昇異常)と判断してステップS25で異常表示部78の「油圧上昇」を点灯表示する。油圧上昇異常は、例えばダイス型18がポンチ型10から離間して油圧シリンダ30のピストンが突き出す時などに一時的に部分的に負圧になって逆止弁56から作動油が流入した場合などに発生する。上記流体漏れ判定値PsF 、流体圧上昇判定値PsR は、油圧センサ60の検出誤差や前記摺動抵抗ΔFcのばらつきなどを考慮してプレス機械毎に設定される。判定値PsF 、PsR の絶対値が同じであっても良い。図9は油漏れの場合で、図10は油圧上昇異常の場合である。
【0053】
このように、成形動作開始より前の初期油圧PsA および成形動作終了後の初期油圧PsB の差圧ΔPsA-B が流体漏れ判定値PsF より大きいか否かによって油漏れを診断するとともに、差圧ΔPsA-B が流体圧上昇判定値PsR より小さいか否かによって流体圧上昇異常を診断するため、例えば油漏れや油圧上昇に起因する均圧不良を未然に防止できるとともに、プレス異常の原因究明などに利用できる。また、初期油圧PsA は作業者が初期圧計測ボタン82をON操作することによって検出され、初期油圧PsB は時間Te を基準として定められる時間Tteの時の油圧Psであるため、プレス機械のストロークやクランク回転位置などを検出する必要がなく、診断装置62が簡単且つ安価に構成される。
【0054】
図5は第3発明、第4発明の実施例に相当し、ステップS2およびS3は第1作動前流体圧設定工程で、ステップS21は第1作動後流体圧設定工程で、ステップS22およびS23は第1流体漏れ診断工程で、ステップS24およびS25は第1流体圧上昇異常診断工程である。
【0055】
図6は、油圧シリンダ30の油圧最大ピーク値PsP の上限超過を診断する際の作動(信号処理)を説明するフローチャートで、前記操作装置86等に設けられたスイッチ操作により上限超過の診断が選択された場合などに、図4のフローチャートと併せて実行される。なお、図4のフローチャートの実行時に常に図6の各ステップが実行されるようにしても良い。
【0056】
図6のステップS31は、図4のステップS9の後、或いは図4の総てのステップが終了した後に実行されるもので、図4のステップS9で設定された最大ピーク値PsP が予め定められた上限判定値PsPmax(図11参照)より大きいか否かを判断し、YES(肯定)の場合は油圧上限超過と判断してステップS32で異常表示部78の「上限超過」を点灯表示する。上限判定値PsPmaxは、プレス加工時の衝撃によって均圧クッション装置44の油圧回路の配管50、逆止弁56等が破損することを防止するためのもので、油圧回路各部の耐圧強度等を考慮してプレス機械毎に設定される。
【0057】
このように、成形動作中の油圧Paのデータを保存し、その油圧Paの保存データの最大値を最大ピーク値PsP に設定するとともに、その最大ピーク値PsP が上限判定値PsPmaxを越えているか否かによって油圧上限超過を診断するため、均圧クッション装置44の油圧回路の破損が未然に防止される。
【0058】
図4および図6は第2発明の実施例に相当し、図4のステップS9および図6のステップS31、S32は流体圧上限超過診断工程である。
【0059】
図7は、エアシリンダ32のエア漏れおよびエア圧上昇異常を診断する際の作動(信号処理)を説明するフローチャートで、前記操作装置86等に設けられたスイッチ操作によりエア漏れおよびエア圧上昇異常の診断が選択された場合などに、図4のフローチャートと併せて実行される。なお、図4のフローチャートの実行時に常に図7の各ステップが実行されるようにしても良い。
【0060】
図7のステップS41は、図4のステップS8よりも後に実行されるもので、ダイス型18がプレス素材40(しわ押えリング28)から離間する成形動作終了後となる前記時間Tteの時のエア圧Paを初期エア圧PaB (図12、図13参照)に設定する。この初期エア圧PaB は作動後流体圧に相当し、プレス機械に何の異常もなければプレス加工に先立って予め設定されたエア圧Pa0 や作動前流体圧である前記初期エア圧PaA と略同じ値である。
【0061】
ステップS42は、図4の各ステップが総て終了した後に実行されるもので、前記初期エア圧PaA とPaB との差圧ΔPaA-B =PaA −PaB が予め定められた正の流体漏れ判定値PaF より大きいか否かを判断し、YES(肯定)の場合はエア漏れ(流体漏れ)と判断してステップS43で異常表示部78の「エア漏れ」を点灯表示する。ステップS42の判断がNOの場合は、ステップS44で差圧ΔPaA-B =PaA −PaB が予め定められた負の流体圧上昇判定値PaR より小さいか否かを判断し、YES(肯定)の場合はエア圧上昇異常(流体圧上昇異常)と判断してステップS45で異常表示部78の「エア増圧」を点灯表示する。エア圧上昇異常は、例えばエアシリンダ32の摺動部に間歇給油される潤滑油がエアタンク34内に蓄積することによって発生する。上記流体漏れ判定値PaF 、流体圧上昇判定値PaR は、エア圧センサ39の検出誤差や前記摺動抵抗ΔFcのばらつきなどを考慮してプレス機械毎に設定される。判定値PaF 、PaR の絶対値が同じであっても良い。図12はエア漏れの場合で、図13はエア圧上昇異常の場合である。
【0062】
このように、成形動作開始より前の初期エア圧PaA および成形動作終了後の初期エア圧PaB の差圧ΔPaA-B が流体漏れ判定値PaF より大きいか否かによってエア漏れを診断するとともに、差圧ΔPaA-B が流体圧上昇判定値PaR より小さいか否かによってエア圧上昇異常を診断するため、例えばエア漏れやエア圧上昇に起因するしわ押え不良を未然に防止できるとともに、プレス異常の原因究明などに利用できる。また、初期エア圧PaA は作業者が初期圧計測ボタン82をON操作することによって検出され、初期エア圧PaB は時間Te を基準として定められる時間Tteの時のエア圧Paであるため、プレス機械のストロークやクランク回転位置などを検出する必要がなく、診断装置62が簡単且つ安価に構成される。
【0063】
図7は第5発明、第6発明の実施例に相当し、ステップS2およびS4は第2作動前流体圧設定工程で、ステップS41は第2作動後流体圧設定工程で、ステップS42およびS43は第2流体漏れ診断工程で、ステップS44およびS45は第2流体圧上昇異常診断工程である。
【0064】
次に、第7発明および第8発明の実施例を説明する。
図14は、前記図1に記載のようなプレス機械について、第7発明の診断方法に従って診断を行う診断装置90の構成図で、携帯して持ち運び可能なキャリングケース92と、第8発明の一実施例である診断用計測装置100とを備えている。キャリングケース92には、パソコン等の診断用コンピュータ94、油圧発生源96等が収納されており、油圧発生源96は配管98を介して診断用計測装置100のマニホルド102に接続されるようになっている。診断用コンピュータ94は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、ROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記油圧シリンダ30の作動油の体積弾性係数K、n/Fs線図(図22参照)、エア混入率Raを求めるとともに、それ等の診断結果や指示メッセージ等を表示装置104に表示する。診断用コンピュータ94には、診断用計測装置100に設けられた圧力センサ106、位置センサ108から油圧Pk、離間距離dを表す信号がそれぞれ供給されるとともに、計測スイッチ110からON−OFF信号が供給されるようになっている。
【0065】
油圧発生源96は、油タンク112、油タンク112から作動油を汲み上げて出力する手動式のポンプ114、リリーフ弁116、手動式の切換弁118を有して構成されている。切換弁118の接続ポートAは逆止弁120を介して前記配管98に接続されており、接続ポートBは、逆止弁122および流量制御弁124が並列接続された回路を介して配管98に接続されている。切換弁118は、手動操作でa側へ切り換えられることにより接続ポートAがポンプ114に接続されるとともに接続ポートBがドレーンされ、b側へ切り換えられることにより接続ポートAがドレーンされるとともに接続ポートBがポンプ114に接続される。また、図に示す中立位置では接続ポートA、B何れも遮断される。上記流量制御弁124は手動操作で流量(流通断面積)を調整できるようになっており、配管98には圧力メータ126が接続されて回路内の油圧Pkを表示するようになっている。
【0066】
診断用計測装置100は、前記油圧シリンダ30のピストン動作量Xpと油圧Psとの関係を求めるためのもので、図15のように前記ボルスタ12をクッションピン22と共に移動させた状態で、1つ或いは適当数の油圧シリンダ30に配設される。ここでは1つの油圧シリンダ30に配設した場合について説明する。この診断用計測装置100は、図16に示すように油圧シリンダ30に対向して一体的に配設される計測用油圧シリンダ130を主体として構成されており、前記油圧発生源96から作動油が供給されることにより、その油圧Pkに応じてピストン130pが下方へ突き出されるとともに、それに伴って油圧シリンダ30のピストン30pが押し込まれる。ピストン130pの受圧面積Akは油圧シリンダ30のピストン30pの受圧面積Asと同じで、ピストン30pおよび130pが共に中立状態の時には、計測用油圧シリンダ130の油圧Pk=Psになる。ピストン30pと130pとの間には、ピストン30pの動作量Xpを検出するための検出片132が配設されており、計測用油圧シリンダ130のハウジングに位置固定に配設される光学式の位置センサ108により検出片132までの離間距離dが検出されることにより、その離間距離dの初期値d0 からの変化量Δdがピストン動作量Xpとして求められる。計測用油圧シリンダ130は前記油圧発生源96と共に押圧装置を構成しており、油圧Pkと受圧面積Akとを掛算した値Pk・Akは押圧荷重で、油圧Pkを検出する圧力センサ106は荷重センサに相当する。
【0067】
均圧用の油圧シリンダ30は、図17に示すように4隅に配設される4本のボルト134により油漏れを生じることがないようにクッションパッド26に一体的に固設されており、計測用油圧シリンダ130は図18の(a) 〜(h) に示す手順で油圧シリンダ30に一体的に配設される。図17の(a) は正面図で、(b) は上方から見た平面図である。図18の(a) は油圧シリンダ30のみの取付状態(図17と同じ)で、(b) では先ず対角線上に位置する2本のボルト134を取り外す。非プレス加工時の油圧Ps0 の状態であれば、対角線上の2本のボルト134を取り外しても油漏れの恐れはない。(c) では、取り外した2本のボルト134の代わりに連結用ボルト(実施例では全長にねじが切られた寸切りボルト)136を取り付け、(d) でそれ等の連結用ボルト136にナット138を締め付けて油圧シリンダ30を再び4本のボルト134および136でクッションパッド26に固定する。続く(e) では、高さ調整のためにナット138を適当数だけ螺合し、(f) では、残る2本のボルト134を同様にして連結用ボルト136に取り替えてナット138を螺合する。ナット138は少なくとも1本の連結用ボルト136に対して1個ずつ配設されれば良く、残りはスペーサなどで置き換えることもできる。計測用油圧シリンダ130の取付高さは、例えばピストン130pが突き出されることにより油圧シリンダ30のピストン30pが略下降端(胴突き)に達するように調整すれば良い。
【0068】
その後、(g) において計測用油圧シリンダ130を油圧シリンダ30に対向するように下向きに載せ、(h) において油圧シリンダ130から上方へ突き出す4本の連結用ボルト136の上端にそれぞれナット140を螺合して、油圧シリンダ130を油圧シリンダ30に一体的に固定する。連結用ボルト136は、両油圧シリンダ30および130を挿通して上端部が上方へ突き出すように、その長さ寸法が設定される。また、前記検出片132は、(g) の段階でピストン30pとピストン130pとの間に挟んで配設されるが、ピストン130pに予め一体的に固定しておいても良い。
【0069】
図14に戻って、前記マニホルド102には、前記配管98と計測用油圧シリンダ130の圧力室と圧力センサ106とを連通する連通路が設けられており、図18のようにして計測用油圧シリンダ130が油圧シリンダ30の上部に固設された状態で、複数のボルトによって計測用油圧シリンダ130の上に一体的に固設されるようになっている。
【0070】
次に、本実施例の作動を図19および図20のフローチャートを参照しつつ説明する。図19は、作業者によって実行される作業手順を説明するフローチャートで、図20は、診断用コンピュータ94による処理内容を説明するフローチャートである。
【0071】
図19のステップH1では先ず流量制御弁124を全閉とし、ステップH2で切換弁118をa側へ切り換えるとともに、ステップH3で計測スイッチ110をON操作する。続くステップH4では、手動ポンプ114により計測用油圧シリンダ130に作動油を圧送し、表示装置104にリアルタイムで表示される離間距離dが変化しなくなったら、ステップH5で手動ポンプ114の操作を中止するとともに流量制御弁124を適当に開放して作動油をドレーンする。離間距離dは、図21に示すように油圧Pkの上昇に伴って増大するが、油圧シリンダ30が胴突きになるか油圧シリンダ130が突出し端に達すると変化しなくなる。また、流量制御弁124が所定の開度で開放されて油圧Pkが低下すると、計測用油圧シリンダ130のピストン130pは油圧シリンダ30によって押し戻される。そして、表示装置104にリアルタイムで表示される油圧Pkが移動最低油圧Pk1 まで低下したら、ステップH6で計測スイッチ110をOFFにする。移動最低油圧Pk1 は、ピストン30pが押し込まれ始めた時の油圧Pk、すなわち油圧シリンダ30の初期油圧PsC で、診断用コンピュータ94により求められて表示装置104に表示される。
【0072】
一方、上記ステップH3で計測スイッチ110がON操作されると、診断用コンピュータ94は図20のステップR1においてそのことを検知し、ステップR2以下を実行する。ステップR2では、圧力センサ106、位置センサ108から油圧Pkおよび離間距離dを表す信号を逐次読み込み、表示装置104にそれ等の値をリアルタイムで数値表示するとともに図21に示すようにグラフで表示する。図21において、離間距離dは、計測用油圧シリンダ130の油圧Pkが油圧シリンダ30の初期油圧PsC に達するまでは初期値d0 のままで、油圧Pkが初期油圧PsC に達すると油圧Pkの上昇に伴って直線的に増加し、油圧シリンダ30が胴突きになるか油圧シリンダ130が突出し端に達すると再び一定になる。油圧Pk1 は、離間距離dが増加し始めた時の油圧、すなわち移動最低油圧で、初期油圧PsC と等しい。初期油圧PsC は、プレス機械に何等異常が無ければ初期設定油圧Ps0 と等しい。そして、その移動最低油圧Pk1 から離間距離dの変化が停止する移動最高油圧Pk2 までの間では、油圧Pk=Psで、離間距離dの初期値d0 からの変化量Δdはピストン動作量Xpであり、ピストン動作量Xpと油圧Psとの関係が求められる。
【0073】
ステップR3では、上記油圧Pkおよび離間距離dの変化から移動最低油圧Pk1 (=初期油圧PsC )を求めて表示装置104に数値表示する。また、ステップR4では、計測スイッチ110がOFF操作されたか否かを判断し、油圧Pkが移動最低油圧Pk1 まで低下したことを作業者が確認して前記ステップH6で計測スイッチ110がOFF操作されると、ステップR5で油圧Pkおよび離間距離dのデータをハードディスクに記憶する。記憶するデータは、油圧Pkの上昇時のものでも良いが、下降時のものでも良い。上昇時はポンプ114による圧力変動が避けられないため、一定の流量でドレーンされる油圧下降時のデータを記憶することが望ましい。
【0074】
次のステップR6は、ハードディスクに記憶された上記油圧Pkおよび離間距離dのデータに基づいて、油圧シリンダ30の作動油の体積弾性係数K(kgf/cm2 )を演算する。具体的には、前記移動最低油圧Pk1 と移動最高油圧Pk2 との間の油圧Pk=Ps(kgf/cm2 )、その間の離間距離dの変化量Δd=Xp(cm)として、予め定められた所定領域の変化量ΔPsおよびΔXpを求め、次式(7) に従って容積変化量ΔVを算出するとともに、次式(8) に従って体積弾性係数Kを算出する。但し、As:油圧シリンダ30の受圧面積(cm2 )、V:初期油量(cm3 )である。求めた体積弾性係数Kはハードディスク等に記憶されるとともに、表示装置104に表示される。また、プリンタを接続してプリントアウトすることもできる。
ΔV=ΔXp・As ・・・(7)
K=−ΔPs/(ΔV/V) ・・・(8)
【0075】
ステップR7では、上記体積弾性係数Kを用いて次式(9) に従って図22に示すようなn/Fs線図を自動的に作成する。但し、Fs:しわ押え荷重(kgf)、As:油圧シリンダ30の受圧面積(cm2 )、X:ピストン追込み寸法
(ピストン動作量Xpと同じ)(cm)、n:クッションピン22の使用本数、V:油圧シリンダ30に連通する作動油の油量(cm3 )、PsC :油圧シリンダ30の初期油圧(kgf/cm2 ) =Pk1 で、例えばX=0.5(cm)でnを1〜80の範囲で順次代入しながらしわ押え荷重Fsを算出することにより、X=0.5の時のn/Fs線図が作成され、ピストン追込み寸法Xが最大(胴突き)となるまで所定の間隔で繰り返しFsを算出することにより、各ピストン追込み寸法Xのn/Fs線図が求められる。nを先に設定してXを逐次変化させながらFsを算出するようにしても良い。このようなn/Fs線図は、均圧クッション装置44の保守や管理だけでなく、しわ押え荷重Fsに応じたクッションピン22の使用本数nの設定などに用いられる。求めたn/Fs線図はハードディスク等に記憶されるとともに、表示装置104に表示される。また、プリンタを接続してプリントアウトすることもできる。
Fs=(As2 ・K・X・n2 /V)+As・PsC ・n ・・・(9)
【0076】
また、ステップR8では、上記体積弾性係数Kを用いて前記(1) 式に従ってエア混入率Raを算出する。体積弾性係数(混合弾性係数)Kは、油の体積弾性係数K1、空気の体積弾性係数K2、およびエア混入率Raを用いて次式(10)で表すことができるため、これを変形することによって(1) 式が得られる。油の体積弾性係数K1、空気の体積弾性係数K2は、本などに載っている値を用いれば良い。このエア混入率Raについても、ハードディスク等に記憶されるとともに、表示装置104に表示される。また、プリンタを接続してプリントアウトすることもできる。ステップR6およびR8はエア混入率診断工程である。
K=(K1+K2)/{K2+Ra(K1+K2)} ・・・(10)
【0077】
このように、本実施例では油圧シリンダ30のピストン動作量Xpと油圧Psとの関係から作動油の体積弾性係数Kを求め、油の体積弾性係数K1および空気の体積弾性係数K2を用いて(1) 式に従ってエア混入率Raを求めるため、例えば油圧シリンダ30の油圧Psの初期設定などをエア混入率Raをパラメータとして行うなど、エア混入率Raを考慮して各種の設定等を行うことができる。また、油圧シリンダ30のピストン動作量Xpと油圧Psとの関係を求めるだけで簡単にエア混入率Raを診断できるため、処理作業が容易で診断装置90が簡単且つ安価に構成される。
【0078】
また、油圧シリンダ30に計測用油圧シリンダ130を取り付け、その油圧Pkを変化させながら油圧シリンダ30のピストン30pを押圧するとともに、その時の油圧Pkおよび離間距離dを検出することにより、油圧Psとピストン動作量Xpとの関係を簡単に求めることができる。本実施例では計測用油圧シリンダ130の受圧面積Akが均圧用油圧シリンダ30の受圧面積Asと同じであるため、油圧Pkをそのまま油圧Psとして用いればよく、計算処理が一層容易になる。
【0079】
図23の診断装置144は、前記切換弁118や流量制御弁124の代わりに配管98に電磁切換弁146および流量制御弁148を直列に接続し、診断用コンピュータ94によって電磁切換弁146がドレーン側(a側)へ切り換えられることにより、自動的に作動油がドレーンされるようにした場合で、作業者の負担が軽減される。診断用コンピュータ94は、油圧シリンダ30が胴突きになるか油圧シリンダ130が突出し端に達して離間距離dが一定になる移動停止状態を監視し、移動停止状態に達したら電磁切換弁146をドレーン側へ切り換えるように構成される。また、流量制御弁148は予め所定の開度に調整される。なお、150はリリーフ弁である。
【0080】
図24の診断装置154は、電動式のポンプ156を有する油圧発生源158を備えているとともに、その油圧発生源158は電磁切換弁160および流量制御弁162を介して配管98に接続されており、計測スイッチ110がON操作されることにより、診断用コンピュータ94によってポンプ156が作動させられるとともに電磁切換弁160が供給側(a側)へ切り換えられ、前記診断用計測装置100に自動的に作動油が圧送される。また、油圧シリンダ30が胴突きになるか油圧シリンダ130が突出し端に達して離間距離dが一定になる移動停止状態を監視し、移動停止状態に達したら、ポンプ156を停止するとともに電磁切換弁160を遮断側(b側)へ切り換える一方、前記電磁切換弁146をドレーン側(a側)へ切り換える。流量制御弁148、162は、それぞれ予め所定の開度に調整される。
【0081】
図25は、均圧用油圧シリンダ30の油圧を介して伝達される伝達荷重を直接検出する伝達荷重測定装置170を説明する図で、プレス加工に使用されない任意の油圧シリンダ30に配設される。伝達荷重測定装置170は、図26に示すように、平板状のプレート172と、そのプレート172の上面に貼り付けられた歪みゲージ174とから構成されており、プレート172の下面にはピストン30pと係合する凹所176が形成されている。プレート172は、ピストン30pが僅かに押し込まれるように、言い換えれば油圧Psがピストン30pを介してプレート172に作用するように、スペーサ178を介して4本のボルト180により油圧シリンダ30と共に一体的にクッションパッド26に固設される。図26において一点鎖線で示すピストン30pは、伝達荷重測定装置170を取り付ける前の突出端位置を表している。図27は、プレート172の下側の面を示す底面図である。
【0082】
上記歪ゲージ174によって検出される伝達荷重Fpは、油圧Psと受圧面積Asとを掛算したものであり、例えば前記油圧センサ60により油圧Psを検出しながら出力信号と伝達荷重Fpとの関係を予め求めておくことにより、伝達荷重Fpを高い精度で検出できる。この伝達荷重Fpは、実際にプレス加工に関与している油圧シリンダ30やクッションピン22の伝達荷重と同じであり、プレス加工時の伝達荷重Fpを高い精度で検出することが可能で、油圧センサ60を省略することも可能である。実際にプレス加工に関与している他の油圧シリンダ30に配設されたクッションピン22の伝達荷重を歪ゲージやロードセルなどで検出して、歪ゲージ174の出力信号と伝達荷重Fpとの関係を求めるようにしても良い。
【0083】
なお、この伝達荷重測定装置170についても、前記計測用油圧シリンダ130の場合と同様に連結用ボルトや複数のナットを用いて、図18のように油漏れを生じることなく簡単に油圧シリンダ30に取り付け得るようにすることができる。
【0084】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】均圧クッション装置を有するプレス機械の一例を説明する構成図である。
【図2】本発明の診断方法に従ってプレス機械の診断を行う診断装置の構成を説明するブロック線図である。
【図3】図2の診断装置の表示装置および操作装置の具体例を示す図である。
【図4】図2の診断装置によって図1のプレス機械の均圧状態を診断する際の作動を説明するフローチャートである。
【図5】図2の診断装置によって図1のプレス機械の油漏れおよび油圧上昇異常を診断する際の作動を説明するフローチャートである。
【図6】図2の診断装置によって図1のプレス機械の油圧上限超過を診断する際の作動を説明するフローチャートである。
【図7】図2の診断装置によって図1のプレス機械のエア漏れおよびエア圧上昇異常を診断する際の作動を説明するフローチャートである。
【図8】図1のプレス機械の均圧用油圧シリンダの油圧変化の一例で、診断が行われる際の時間Tts、Tteなどを併せて示す図である。
【図9】図1のプレス機械の均圧用油圧シリンダの油圧変化の一例で、油漏れの場合を示す図である。
【図10】図1のプレス機械の均圧用油圧シリンダの油圧変化の一例で、油圧上昇異常の場合を示す図である。
【図11】図1のプレス機械の均圧用油圧シリンダの油圧変化の一例で、最大ピーク値PsP および上限判定値PsPmaxを併せて示す図である。
【図12】図1のプレス機械のエアシリンダのエア圧変化の一例で、エア漏れの場合を示す図である。
【図13】図1のプレス機械のエアシリンダのエア圧変化の一例で、エア圧上昇異常の場合を示す図である。
【図14】診断装置の別の例を説明する構成図である。
【図15】図14の診断用計測装置を均圧用油圧シリンダに配設して診断を行う際のプレス機械の状態を説明する図である。
【図16】図14の診断用計測装置が均圧用油圧シリンダに配設された状態を示す断面図である。
【図17】図1のプレス機械の均圧用油圧シリンダのクッションパッドに対する取付状態を説明する図で、(a) は正面図、(b) は平面図である。
【図18】図17の均圧用油圧シリンダに診断用計測装置の計測用油圧シリンダを取り付ける手順を説明する図である。
【図19】図14の診断装置を用いて診断を行う際の作業者の手順を説明するフローチャートである。
【図20】図14の診断装置の診断用コンピュータによる処理内容を説明するフローチャートである。
【図21】図14の診断装置の計測用油圧シリンダの油圧Pkと離間距離dとの関係を示すグラフである。
【図22】図14の診断装置によって診断されるn/Fs線図の一例を示す図である。
【図23】図14の診断装置のドレーン部分を自動化した例を示す図である。
【図24】図23の診断装置の油圧供給部分を自動化した例を示す図である。
【図25】図1のプレス機械の均圧用油圧シリンダの油圧による伝達荷重を測定する装置の取付状態を示す図である。
【図26】図25の伝達荷重測定装置が均圧用油圧シリンダに取り付けられた状態を示す一部を切り欠いた正面図である。
【図27】図26の伝達荷重測定装置の下面を示す底面図である。
【符号の説明】
10:ポンチ型
18:ダイス型
22:クッションピン
26:クッションパッド
28:しわ押えリング(しわ押え型)
30:油圧シリンダ(均圧用流体シリンダ)
32:エアシリンダ(流体シリンダ)
40:プレス素材
42:しわ押え荷重付与手段
44:均圧クッション装置
62、90、144、154:診断装置
96、158:油圧発生源(押圧装置)
100:診断用計測装置
106:圧力センサ(荷重センサ)
108:位置センサ
130:計測用油圧シリンダ(押圧装置)
ステップS5、S7:成形動作判断工程
ステップS6、S8:保存工程
ステップS10〜S17:均圧状態診断工程
ステップS9、S31、S32:流体圧上限超過診断工程
ステップS2、S3:第1作動前流体圧設定工程
ステップS21:第1作動後流体圧設定工程
ステップS22、S23:第1流体漏れ診断工程
ステップS24、S25:第1流体圧上昇異常診断工程
ステップS2、S4:第2作動前流体圧設定工程
ステップS41:第2作動後流体圧設定工程
ステップS42、S43:第2流体漏れ診断工程
ステップS44、S45:第2流体圧上昇異常診断工程
ステップR6、R8:エア混入率診断工程
Claims (8)
- しわ押え荷重付与手段により所定の移動抵抗が付与されるクッションパッドと、該クッションパッドに配設されるとともに圧力室が互いに連通させられた複数の均圧用流体シリンダと、該均圧用流体シリンダとしわ押え型との間に介在させられた複数のクッションピンとを備え、前記移動抵抗に基づいて前記しわ押え型とダイス型との間でプレス素材を挟圧してしわ押えする際に、前記複数の均圧用流体シリンダのピストンがそれぞれ中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を均等に伝達する均圧クッション装置を有し、
該しわ押え型およびダイス型が前記プレス素材を挟圧した状態で前記クッションパッドと共に前記移動抵抗に抗してポンチ型に対してプレス方向へ相対移動させられることにより、該ポンチ型の成形面に沿って該プレス素材を成形するプレス機械の診断方法であって、
前記ダイス型が前記ポンチ型に対して相対的に接近、離間させられる一連のプレス作動の過程で、前記均圧用流体シリンダの流体圧Psが予め定められた作動判定値PsM を越えた時の時間Ts を検出するとともに、該流体圧Psが該作動判定値PsM を下回った時の時間Te を検出する成形動作判断工程と、
前記時間Ts からTe までの間の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psのデータおよび前記しわ押え荷重付与手段の移動抵抗のデータを保存する保存工程と、
前記時間T s およびT e をパラメータとして予め定められた演算式に従って算出することにより、前記ダイス型がプレス加工側の移動端に達した時間T 1 を推定する工程と、
該時間T 1 の時の前記均圧用流体シリンダの流体圧Ps 1 と前記しわ押え荷重付与手段の移動抵抗とに基づいて、該均圧用流体シリンダのピストンがそれぞれ中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を均等に伝達する均圧状態か否かを診断する均圧状態診断工程と
を有することを特徴とするプレス機械の診断方法。 - 前記均圧用流体シリンダの流体圧Psの最大ピーク値PsP が、予め定められた上限判定値PsPmaxを越えているか否かによって、流体圧上限超過を診断する流体圧上限超過診断工程を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のプレス機械の診断方法。 - 請求項1または2に記載のプレス機械の診断方法であって、
前記ダイス型が前記プレス素材を挟んで前記しわ押え型に当接する成形動作開始より前の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psを作動前流体圧PsA として設定する第1作動前流体圧設定工程と、
前記ダイス型が前記しわ押え型から離間する成形動作終了後となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Te から経過した時の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psを作動後流体圧PsB として設定する第1作動後流体圧設定工程と、
前記作動前流体圧PsA と前記作動後流体圧PsB との差圧ΔPsA-B =PsA −PsB が予め定められた正の流体漏れ判定値PsF より大きいか否かによって流体漏れを診断する第1流体漏れ診断工程と
を有することを特徴とするプレス機械の診断方法。 - 請求項1または2に記載のプレス機械の診断方法であって、
前記ダイス型が前記プレス素材を挟んで前記しわ押え型に当接する成形動作開始より前の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psを作動前流体圧PsA として設定する第1作動前流体圧設定工程と、
前記ダイス型が前記しわ押え型から離間する成形動作終了後となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Te から経過した時の前記均圧用流体シリンダの流体圧Psを作動後流体圧PsB として設定する第1作動後流体圧設定工程と、
前記作動前流体圧PsA と前記作動後流体圧PsB との差圧ΔPsA-B =PsA −PsB が予め定められた負の流体圧上昇判定値PsR より小さいか否かによって流体圧上昇異常を診断する第1流体圧上昇異常診断工程と
を有することを特徴とするプレス機械の診断方法。 - 請求項1または2に記載のプレス機械の診断方法であって、
前記しわ押え荷重付与手段は、圧縮性流体を用いた流体シリンダの流体圧Paに基づいて前記移動抵抗を前記クッションパッドに付与するものであり、
前記ダイス型が前記プレス素材を挟んで前記しわ押え型に当接する成形動作開始より前の前記流体シリンダの流体圧Paを作動前流体圧PaA として設定する第2作動前流体圧設定工程と、
前記ダイス型が前記しわ押え型から離間する成形動作終了後となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Te から経過した時の前記流体シリンダの流体圧Paを作動後流体圧PaB として設定する第2作動後流体圧設定工程と、
前記作動前流体圧PaA と前記作動後流体圧PaB との差圧ΔPaA-B =PaA −PaB が予め定められた正の流体漏れ判定値PaF より大きいか否かによって流体漏れを診断する第2流体漏れ診断工程と
を有することを特徴とするプレス機械の診断方法。 - 請求項1または2に記載のプレス機械の診断方法であって、
前記しわ押え荷重付与手段は、圧縮性流体を用いた流体シリンダの流体圧Paに基づいて前記移動抵抗を前記クッションパッドに付与するものであり、
前記ダイス型が前記プレス素材を挟んで前記しわ押え型に当接する成形動作開始より前の前記流体シリンダの流体圧Paを作動前流体圧PaA として設定する第2作動前流体圧設定工程と、
前記ダイス型が前記しわ押え型から離間する成形動作終了後となるように予め定められた所定時間だけ前記時間Te から経過した時の前記流体シリンダの流体圧Paを作動後流体圧PaB として設定する第2作動後流体圧設定工程と、
前記作動前流体圧PaA と前記作動後流体圧PaB との差圧ΔPaA-B =PaA −PaB が予め定められた負の流体圧上昇判定値PaF より大きいか否かによって流体圧上昇異常を診断する第2流体圧上昇異常診断工程と
を有することを特徴とするプレス機械の診断方法。 - しわ押え荷重付与手段により所定の移動抵抗が付与されるクッションパッドと、該クッションパッドに配設されるとともに圧力室が互いに連通させられた複数の均圧用油圧シリンダと、該均圧用油圧シリンダとしわ押え型との間に介在させられた複数のクッションピンとを備え、前記移動抵抗に基づいて前記しわ押え型とダイス型との間でプレス素材を挟圧してしわ押えする際に、前記複数の均圧用油圧シリンダのピストンがそれぞれ中立状態とされることにより油圧を介してしわ押え荷重を均等に伝達する均圧クッション装置を有し、
該しわ押え型およびダイス型が前記プレス素材を挟圧した状態で前記クッションパッドと共に前記移動抵抗に抗してポンチ型に対してプレス方向へ相対移動させられることにより、該ポンチ型の成形面に沿って該プレス素材を成形するプレス機械の診断方法であって、
前記均圧用油圧シリンダのピストン動作量Xpと油圧Psとの関係から該均圧用油圧シリンダの作動油の体積弾性係数Kを求め、油の体積弾性係数K1および空気の体積弾性係数K2を用いて次式
Ra=〔{(K1×K2)/K}−K2〕/(K1+K2)
に従ってエア混入率Raを求めるエア混入率診断工程を有することを特徴とするプレス機械の診断方法。 - 請求項7に記載のプレス機械の診断方法において、前記均圧用油圧シリンダのピストン動作量Xpと油圧Psとの関係を求める際に用いられる診断用計測装置であって、
前記クッションピンの代わりに前記均圧用油圧シリンダに配設され、該均圧用油圧シリンダを押圧してピストンを押し込むとともに、その押圧荷重を変更可能な押圧装置と、
該押圧装置の押圧荷重を検出する荷重センサと、
前記均圧用油圧シリンダのピストン動作量Xpを検出する位置センサと
を有することを特徴とするプレス機械の診断用計測装置。
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