JP3617226B2 - 光読み出し型放射−変位変換装置、放射検出装置、並びにこれを用いた映像化装置 - Google Patents

光読み出し型放射−変位変換装置、放射検出装置、並びにこれを用いた映像化装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線、X線、紫外線などの不可視光を含む種々の放射を検出等する技術に関するものであり、特に、放射を光読み出し可能に変位に変換する光読み出し型放射−変位変換装置、放射検出装置、並びにこれを用いた映像化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、赤外線、X線、紫外線などの不可視光を検出することにより、可視光領域だけから得られる情報以外の物理情報を利用する研究が盛んに行われ、様々な産業分野への応用展開が期待されている。その一例として、赤外線の利用について述べる。
【0003】
従来の赤外線カメラに用いられている赤外線検出器は、赤外線を光電変換の原理により電子に変換し、その電子をCCDなどで読み出す方式が主流であり、この赤外線検出器は量子型赤外線検出器と呼ばれている。しかしながら、この量子型赤外線検出器では、赤外線を光電変換する場合には当該検出器を液体窒素温度程度まで冷却する必要があった。すなわち、赤外線のフォトンエネルギーは小さく、その値は常温物体における電子の持つ熱エネルギーに概ね等しいので、電子の持つ熱エネルギーによる影響を取り除くために検出器を液体窒素温度程度まで冷却する必要があった。この冷却器は、体積が大きく、機械振動を発生し寿命も短く、高価なものとなっていた。
【0004】
近年、この量子型赤外線検出器の原理とは別の、赤外線の熱エネルギーを利用したいわゆる熱型赤外線検出器が研究されている。この熱型赤外線検出器は、冷却する必要がなく、非冷却型の赤外線センサーとも呼ばれている。具体的には、入射した赤外線を吸収して熱エネルギーに変換し、検出器の温度に変化を生じさせ、それによる検出器の物性値の変化を電気的に読み出すものである。例えば、抵抗性ボロメーターでは温度が変わると抵抗値が変化する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の熱型赤外線検出器は、量子型赤外線検出器のような大がかりな冷却器は必要ないが、検出原理そのものに課題を持っている。それは、従来の熱型赤外線検出器では、入射赤外線のみによる検出器の温度変化を検出しなければならないにもかかわらず、温度変化を検出するために検出器に電流を流さねばならない点である。すなわち、温度変化検出のための電流により検出器が発熱(通常、自己発熱と呼ぶ。)してしまうので、入射赤外線のみによる温度変化を検出することが困難であり、検出精度が低下していた。
【0006】
また、前記従来の熱型赤外線検出器では、感度が低い欠点があった。従来の熱型赤外線検出器では、例えば、抵抗の温度が1゜C変化したときの抵抗の変化率が2%程度の物が使われているが、観測物体の温度によって放射される赤外線を受光して温度に変換する変換率はせいぜい1%程度である。よって、観測物体の温度が1゜C変化しても抵抗は0.02%しか変化しない。
【0007】
さらに、前記従来の熱型赤外線検出器では、外部の温度の影響を受け易く、それにより出力が大きく変化してしまう欠点があった。例えば、観測物体の温度によって放射される赤外線を受光して温度に変換する変換率はせいぜい1%程度である。よって、観測物体の温度を0.1゜Cの精度で観測するためには、検出器自身の温度変化は0.001゜C以下にしなければならない。このため、外部の温度の影響を受けないように厳密な温度制御が可能な制御手段が必要であり、コストアップを免れなかった。
【0008】
なお、以上述べたような事情は赤外線のみならず、他の放射についても同様である。
【0009】
本発明は、前述したような事情に鑑みてなされたもので、冷却器を必要とせずに検出精度及び感度が高く、しかも外部の温度の影響を受け難い放射検出装置、これに用いられる光読み出し型放射−変位変換装置、並びにこれらを用いた映像化装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、基体と、前記基体に支持された第1の被支持部であって、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、該放射吸収部にて発生した熱に応じて前記基体に対して変位する第1の変位部と、を有する第1の被支持部と、前記基体に支持された第2の被支持部であって、前記基体から受ける熱に応じて前記基体に対して変位する第2の変位部を有する第2の被支持部と、読み出し光を受光し、受光した読み出し光に前記第1の変位部と前記第2の変位部との間の相対的な変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させる光作用部と、を備え、熱の増減に対する前記第1の変位部の変位方向と前記第2の変位方向とが実質的に同一方向であるものである。
【0011】
この第1の態様では、前記放射吸収部は前記放射を一方の側から受け、前記光作用部は前記読み出し光を前記一方の側と反対の側から受光してもよい。また、前記第1の態様では、前記放射吸収部は前記放射を一方の側から受け、前記光作用部は前記読み出し光を前記一方の側と同じ側から受光してもよい。
【0012】
この第1の態様によれば、赤外線、X線、紫外線等の放射が第1の被支持部の放射吸収部に照射され、当該放射が放射吸収部により吸収されて熱に変換される。放射吸収部にて発生した熱に応じて第1の被支持部の第1の変位部が基体に対して変位する。すなわち、入射した放射が、その量に応じた第1の変位部の変位に変換される。第2の被支持部は放射吸収部を有しておらず、第2の被支持部の第2の変位部は入射放射によっては変位しない。一方、可視光やその他の光による読み出し光が光作用部に照射される。光作用部は、受光した読み出し光に前記第1の変位部と前記第2の変位部との間の相対的な変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させるので、結局、放射吸収部に照射された放射が読み出し光の変化に変換されることになる。したがって、光作用部から出射された読み出し光に基づいて放射を検出することができる。このため、光による変位検出は高感度で行うことができることから、前記第1の態様によれば、放射を高感度で検出することが可能となる。また、前記第1の態様では、前述した従来の熱型赤外線検出器と異なり、放射を熱を経て抵抗値(電気信号)に変換するのではなく、放射を熱及び変位を経て読み出し光の変化に変換するので、基体により支持された被支持部には電流を流す必要がなく、被支持部には自己発熱が生じない。したがって、前記第1の態様によれば、入射した放射のみによる熱を検出することになるので、検出精度が向上する。勿論、前記第1の態様では、前述した従来の熱型赤外線検出器と同様に、量子型赤外線検出器において必要であった冷却器は不要である。
【0013】
ところで、前記第1の変位部は、入射放射による放射吸収部からの熱によって変位するのみならず、外部の温度が変化すると、基体に支持されていることから基体を介して自身の温度変化が生ずるので、これによっても変位してしまう。しかし、前記第1の態様では、前記第2の変位部は、基体から受ける熱に応じて基体に対して変位し、熱の増減に対する前記第1の変位部の変位方向と前記第2の変位方向とが実質的に同一方向であるため、第1の変位部と第2の変位部との間の相対的な変位は、外部の温度による影響を差し引いた、入射放射による放射吸収部からの熱にのみよって生ずる第1の変位部の変位に近づくこととなる。したがって、光作用部は、受光した読み出し光に前記第1の変位部と前記第2の変位部との間の相対的な変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させることから、読み出し光の変化には外部の温度の影響が少なくなり、一層精度の良い放射検出を行うことができる。このため、外部の温度の影響を受けないようにするために温度制御を行う場合であっても、従来に比べて厳密な温度制御が必要なくなり、コストの低減を図ることができる。
【0014】
なお、前記第1の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、放射を読み出し光の変化に変換するものであり、その用途は、必ずしも入射する放射を検出する用途に限定されるものではない。前記第1の態様では、用途に応じて、入射する放射の種類や読み出し光の種類等は適宜選択することができる。
【0015】
本発明の第2の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第1の態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記第1の変位部及び第2の変位部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有するものである。この第2の態様は、変位部の例示であり、いわゆる熱バイモルフ構造を採用したものである。
【0016】
本発明の第3の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第1又は第2の態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記光作用部は、読み出し光を受光し、受光した読み出し光を前記相対的な変位に応じた干渉状態を有する干渉光に変えて出射させる干渉手段であるものである。この第3の態様は、光作用部の例示である。
【0017】
この第3の態様によれば、光作用部自体が干渉手段であり、光読み出し型放射−変位変換装置の内部において素子毎に独立して干渉光を得ることができるので、複数の素子が1次元状又は2次元状に配列された場合であっても、干渉縞が生じ難く、オフセット信号が発生し難い。また、前記第3の態様では、光読み出し型放射−変位変換装置の外部において干渉光学系を構成する必要がないので、干渉の原理に従って読み出し光学系を構成する場合であっても、当該読み出し光学系の構成が簡単となる。
【0018】
本発明の第4の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第3の態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記干渉手段は、前記第1の被支持部及び前記第2の被支持部のうちの一方の一部をなすとともに前記第1の変位部及び前記第2の変位部のうちの一方の変位に従って変位するハーフミラー部であって、受光した読み出し光の一部のみを反射するハーフミラー部と、前記第1の被支持部及び前記第2の被支持部のうちの他方の一部をなすとともに前記第1の変位部及び前記第2の変位部のうちの他方の変位に従って変位する反射部であって、前記ハーフミラー部と対向するように配置された反射部と、を有するものである。この第4の態様は、光作用部を構成する干渉手段の例示である。
【0019】
本発明の第5の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第1乃至第4のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記基体の温度に対する前記第1の変位部の変位量と前記基体の温度に対する前記第2の変位部の変位量とが、実質的に等しいものである。このように両者の変位量を実質的に等しくしておくと、外部の温度による影響をほぼ完全に打ち消すことができ、好ましい。
【0020】
本発明の第6の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第1乃至第5のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記基体の温度に対する前記第1の変位部の熱変化時定数と前記基体の温度に対する前記第2の変位部の熱変化時定数とが、実質的に等しいものである。このように両者の熱変化時定数を実質的に等しくしておくと、外部の温度の影響による過渡的な温度変化に対しても、その影響を打ち消すことができ、好ましい。
【0021】
本発明の第7の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、基体と、前記基体に支持された第1の被支持部であって、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、該放射吸収部にて発生した熱に応じて前記基体に対して変位する変位部と、を有する第1の被支持部と、前記基体に支持された第2の被支持部であって、熱の増減に対する前記変位部の変位方向とは逆の方向に前記基体からの熱に応じて変位しようとして前記変位部の変位を抑制する変位抑制部を有する第2の被支持部と、読み出し光を受光し、受光した読み出し光に前記変位部の変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させる光作用部と、を備えたものである。
【0022】
この第7の態様では、以下に説明するように、前記第1の態様と同様の利点が得られるが、外部温度の影響の打ち消し方が前記第1の態様と異なる。
【0023】
すなわち、前記第7の態様によれば、赤外線、X線、紫外線等の放射が第1の被支持部の放射吸収部に照射され、当該放射が放射吸収部により吸収されて熱に変換される。放射吸収部にて発生した熱に応じて第1の被支持部の変位部が基体に対して変位する。すなわち、入射した放射が、その量に応じた変位部の変位に変換される。一方、可視光やその他の光による読み出し光が光作用部に照射される。光作用部は、受光した読み出し光に前記変位部の変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させるので、結局、放射吸収部に照射された放射が読み出し光の変化に変換されることになる。したがって、光作用部から出射された読み出し光に基づいて放射を検出することができる。このため、光による変位検出は高感度で行うことができることから、前記第7の態様によれば、放射を高感度で検出することが可能となる。また、前記第7の態様では、前述した従来の熱型赤外線検出器と異なり、放射を熱を経て抵抗値(電気信号)に変換するのではなく、放射を熱及び変位を経て読み出し光の変化に変換するので、基体により支持された被支持部には電流を流す必要がなく、被支持部には自己発熱が生じない。したがって、前記第7の態様によれば、入射した放射のみによる熱を検出することになるので、検出精度が向上する。勿論、前記第7の態様では、前述した従来の熱型赤外線検出器と同様に、量子型赤外線検出器において必要であった冷却器は不要である。
【0024】
ところで、前記変位部は、入射放射による放射吸収部からの熱によって変位するのみならず、外部の温度が変化すると、基体に支持されていることから基体を介して自身の温度変化が生ずるのでこれによっても変位しようとする。しかし、前記第7の態様では、前記変位抑制部が、熱の増減に対する前記変位部の変位方向とは逆の方向に基体から受ける熱に応じて基体に対して変位しようとして前記変位部の変位を抑制するので、結局、前記変位部の変位は、外部の温度による影響を差し引いた、入射放射による放射吸収部からの熱にのみよって生ずる変位に近づくこととなる。したがって、光作用部は、受光した読み出し光に前記変位部の変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させることから、読み出し光の変化には外部の温度の影響が少なくなり、一層精度の良い放射検出を行うことができる。したがって、外部の温度の影響を受けないようにするために温度制御を行う場合であっても、従来に比べて厳密な温度制御が必要なくなり、コストの低減を図ることができる。
【0025】
なお、前記第7の態様による光読み出し型放射−変位変換装置も、放射を読み出し光の変化に変換するものであり、その用途は、必ずしも入射する放射を検出する用途に限定されるものではない。前記第7の態様においても、用途に応じて、入射する放射の種類や読み出し光の種類等は適宜選択することができる。
【0026】
本発明の第8の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第7の態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記変位抑制部は、熱抵抗の大きい結合部を介して前記変位部に機械的に結合されたものである。このように、変位抑制部と変位部とを熱抵抗の大きい結合部を介して結合すると、入射した放射により生じた熱が変位抑制部へ逃げ難くなるので好ましい。
【0027】
本発明の第9の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第7又は第8の態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記変位部及び前記変位抑制部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有するものである。この第9の態様は、変位部及び変位抑制部の例示であり、いわゆる熱バイモルフ構造を採用したものである。
【0028】
本発明の第10の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第7乃至第9のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記光作用部は、前記第1の被支持部の一部をなすとともに前記変位部の変位に従って変位する反射部であって、受光した読み出し光を反射する反射部であるものである。この第10の態様は、光作用部の例示である。
【0029】
本発明の第11の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記光作用部は、読み出し光を受光し、受光した読み出し光を前記変位部の変位に応じた干渉状態を有する干渉光に変えて出射させる干渉手段であるものである。
【0030】
前記第10の態様のように光作用部が反射部である場合には、例えば、光源からの光を複数に分割し、当該分割された光のうちの1つを前記読み出し光として前記各素子の前記反射部にそれぞれ照射し、前記各素子の前記反射部から出射した各反射光と前記分割された光のうちの他の1つである参照光とを干渉させて干渉光を得ることができ、反射部からの反射光を用いて光読み出し型放射−変位変換装置の外部において干渉光を得ることができる。しかしながら、この場合において、前記第1及び第2の被支持部及び前記光作用部を1個の素子として当該素子が1次元状又は2次元状に配列された場合には、放射が入射されていない際における各素子の反射部の高さがばらついていたり、前記参照光を反射させるミラーのアライメントがわずかでもずれていたりすると、放射が入射されていないにもかかわらず、干渉縞が生じてしまい、いわばオフセット信号が発生してしまう。この点、前記第11の態様によれば、前記第3の態様と同様に、光作用部自体が干渉手段であり、光読み出し型放射−変位変換装置の内部において素子毎に独立して干渉光を得ることができるので、複数の素子が1次元状又は2次元状に配列された場合であっても、干渉縞が生じ難く、オフセット信号が発生し難い。また、前記第11の態様では、前記第3の態様と同様に、光読み出し型放射−変位変換装置の外部において干渉光学系を構成する必要がないので、干渉の原理に従って読み出し光学系を構成する場合であっても、当該読み出し光学系の構成が簡単となる。
【0031】
本発明の第12の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第11の態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記干渉手段は、前記第1の被支持部の一部をなすとともに前記変位部の変位に従って変位するハーフミラー部であって、受光した読み出し光の一部のみを反射するハーフミラー部と、該ハーフミラー部と対向するように前記基体に対して固定された反射部と、を有するものである。この第12の態様は、光作用部を構成する干渉手段の例示である。
【0032】
本発明の第13の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第7乃至第12のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記基体の温度に対する前記変位部自体の変位しようとする量と前記基体の温度に対する前記変位抑制部自体の変位しようとする量とが、実質的に等しいものである。このように両者の変位量を実質的に等しくしておくと、外部の温度による影響をほぼ完全に打ち消すことができ、好ましい。
【0033】
本発明の第14の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第7乃至第13のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記基体の温度に対する前記変位部の熱変化時定数と前記基体の温度に対する前記第1の変位部の熱変化時定数とが、実質的に等しいものである。このように両者の熱変化時定数を実質的に等しくしておくと、外部の温度の影響による過渡的な温度変化に対しても、その影響を打ち消すことができ、好ましい。
【0034】
本発明の第15の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第1乃至第14のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記放射が赤外線であるものである。もっとも、前記第1乃至第14の態様では、前記放射が赤外線に限定されないことは、前述した通りである。
【0035】
本発明の第16の態様による光読み出し型放射−変位変換装置は、前記第1乃至第15のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置において、前記第1の被支持部、前記第2の被支持部及び前記光作用部を1個の素子として当該素子を複数個有し、当該素子が1次元状又は2次元状に配列されたものである。
【0036】
前記第1乃至第15の態様では、単に放射を検出する場合には1個の素子(画素に相当)のみを有していればよい。しかし、前記第16の態様のように、1次元状又は2次元状に配列された複数の素子を有していれば、放射による1次元又は2次元の光学像を形成したり、放射による1次元又は2次元の像を撮像したりすることができる。
【0037】
本発明の第17の態様による放射検出装置は、前記第1乃至第15のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置と、前記光作用部に前記読み出し光を照射し、前記光作用部から出射された前記変化した読み出し光に基づいて前記相対的な変位又は前記変位部の変位を検出する変位検出手段と、を備えたものである。
【0038】
この第17の態様によれば、読み出し光の変化が放射の量に相当することから、変位検出手段からの変位検出信号が、結局、放射検出信号となる。そして、前記第17の態様によれば、前記第1乃至第15のいずれかの態様による光読み出し型放射−変位変換装置が用いられているので、放射を高感度で検出することができるとともに、検出精度が向上し、しかも、外部の温度による影響を受け難い。
【0039】
本発明の第18の態様による映像化装置は、前記第16の態様による光読み出し型放射−変位変換装置と、前記各素子の前記光作用部にそれぞれ前記読み出し光を照射し、前記各素子の前記光作用部から出射された前記変化した読み出し光に基づいて前記各素子の前記相対的な変位又は前記変位部の変位に応じた光学像を形成する読み出し光学系と、を備えたものである。
【0040】
この第18の態様によれば、前記第16の態様による光読み出し型放射−変位変換装置を用いて、読み出し光学系により各素子の相対的な変位又は変位部の変位に応じた光学像を形成している。したがって、放射の像を精度良く当該光学像として形成することができるとともに、感度が高まり、しかも外部の温度による影響を受け難い。のみならず、前記第18の態様によれば、読み出し光に基づいて各素子の相対的な変位又は変位部の変位に応じた光学像を形成しているので、読み出し光として可視光を用いれば、放射の像に相当する当該光学像を肉眼により観察することができる。従来の赤外線撮像装置を用いた場合には、電気信号あるいは画像データに変換した後にそれに基づいて表示装置に像を表示しなければ赤外線の像を観察することが不可能であったのに対し、前記第18の態様では、読み出し光として可視光を用いれば、電気信号あるいは画像データを介在させることなく、肉眼で放射の像を観察することができるのである。勿論、形成された光学像を撮像手段で撮像してもよい。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による光読み出し型放射−変位変換装置、放射検出装置、並びにこれを用いた映像化装置について図面を参照して説明する。以下の説明では、放射を赤外線とし読み出し光を可視光とした例について説明するが、本発明では、放射を赤外線以外のX線や紫外線やその他の種々の放射としてもよいし、また、読み出し光を可視光以外の他の光としてもよい。
【0042】
(第1の実施の形態)
まず、本発明による第1の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置について、図1及び図2を参照して説明する。
【0043】
図1は本発明の第1の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図1(a)はその単位画素(単位素子)の2階建て構造の2階部分を模式的に示す平面図、図1(b)はその1階部分を模式的に示す平面図、図1(c)は図1(a)(b)中のA−A’線に沿った断面図、図1(d)は図1(a)(b)中のB−B’線に沿った断面図である。図2は、第1の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置の画素の配置状態を示す平面図である。
【0044】
本実施の形態による放射−変位変換装置は、基体としての基板1と、脚部2を介して基板1上に浮いた状態に支持された第1の被支持部3と、脚部4を介して基板1上に浮いた状態に支持された第2の被支持部5と、を備えている。本実施の形態では、第1及び第2の被支持部3,5は2階建て構造を構成しており、第1の被支持部3が2階部分、第2の被支持部5が1階部分となっている。
【0045】
本実施の形態では、基板1上に被支持部3,5が設けられ、基板1の下方から赤外線iが入射されるとともに基板1の上方から読み出し光jが入射されるように構成されているので、基板1は、赤外線iを透過する材料で構成されている。具体的には、基板1として、シリコン基板やGe基板などを用いることができる。もっとも、基板1の下方から読み出し光jが入射されるとともに基板1の上方から赤外線iが入射される場合には、読み出し光jを透過させる材料で基板1を構成しておけばよい。もっとも、基板1における赤外線又は読み出し光の所望の通過領域に開口を形成すれば、基板1の材料は何ら限定されるものではない。
【0046】
本実施の形態では、2階部分の第1の被支持部3は、脚部2に直接固定されて中央に配置され赤外線を受けて熱に変換する赤外線吸収膜6と、該赤外線吸収膜6にそれぞれ一端側部分が固定され赤外線吸収膜6の両側に配置された第1の変位部7と、各第1の変位部7の自由端側に固定され第1の変位部7とともに赤外線吸収膜6をコ字状に囲むように配置された、読み出し光jの一部のみを反射させるハーフミラー部8と、を備えている。第1の変位部7は、カンチレバーを構成している。本実施の形態では、赤外線吸収膜6は、第1の変位部7と熱的につながっているが、第1の変位部7が変位しても動かない構造になっている。
【0047】
前記赤外線吸収膜6の材料としては、例えば、例えば、金黒、セラミックス(例えば、ZrO,MnO,FeO,CoO,CuO,Al,MgO,SiOなどの混合焼結体)、ポジレジスト、ネガレジスト、グラファイト(カーボン)、SiNなどを用いることができる。
【0048】
前記第1の変位部7は、互いに重なった2つの膜7a,7bから構成されている。膜7a及び7bは、互いに異なる膨張係数を有する異なる物質で構成されており、いわゆる熱バイモルフ構造を構成している。したがって、本実施の形態では、第1の変位部7は、赤外線吸収膜6にて発生した熱に応じて基板1に対して変位する。下側の膜7aの膨張係数が上側の膜7bの膨張係数より大きい場合には、赤外線吸収膜6で発生した熱により上方に湾曲して傾斜する。逆に、下側の膜7aの膨張係数が上側の膜7bの膨張係数より小さくてもよく、この場合には、当該熱により下方に湾曲して傾斜することになる。
【0049】
膜7a,7bは互いに異なる膨張係数を有する任意の材料で構成すればよい。例えば、膜204,205の材料としては、Al、Ag、MgOなどやバイメタルの材料として知られている下記の表1に挙げる金属材料を用いることができる。
【0050】
【表1】
Figure 0003617226
【0051】
なお、前述したように被支持部3が基板1から浮いているので、被支持部3と基板1との間の熱抵抗が大きくなっている。さらに、本実施の形態では、脚部2は、SiOなどの絶縁材料により構成されており、被支持部3と基板1との間が電気的に絶縁されている。このような絶縁材料は熱伝導率が低くて熱抵抗が大きいので、被支持部3と基板1との間の熱抵抗が一層大きくなっている。したがって、被支持部3から熱エネルギーが逃げ難く、わずかな赤外線の入射によっても赤外線吸収膜6は温度上昇を生じ、赤外光検出感度が高まる。なお、脚部4も、脚部2と同様に、SiOなどにより構成されている。
【0052】
本実施の形態では、1階部分の第2の被支持部5は、脚部4に一端側部分が直接固定され前記両側の第1の変位部7のそれぞれ下方に配置された第2の変位部9と、各第2の変位部9の自由端側に固定され各第2の変位部9とともにコ字状をなすように配置された、ハーフミラー部8を透過した読み出し光を反射させる反射部としての全反射ミラー10と、を備えている。全反射ミラー10は前記ハーフミラー部8と対向している。第2の変位部9は、カンチレバーを構成している。第2の変位部9も、前記第1の変位部7と同様に、互いに重なった2つの膜9a,9bから構成されている。膜9a及び9bは、互いに異なる膨張係数を有する異なる物質で構成されており、いわゆる熱バイモルフ構造を構成している。したがって、本実施の形態では、膜9a,9bは、基体1から脚部4を介して受ける熱に応じて基板1に対して変位する。膜9a,9bも、前記膜7a,7bと同様に、互いに異なる膨張係数を有する任意の材料で構成すればよいが、熱の増減に対する第2の変位部9の変位方向は、第1の変位部7の変位方向と同一方向となるように設定されている。すなわち、本実施の形態では、第2の変位部9の下側の膜9aと上側の膜9bとの膨張係数の大小関係と、第1の変位部7の下側の膜7aと上側の膜7bとの膨張係数の大小関係とが同一となるように、各膜の材料が選定されている。
【0053】
図1(c)(d)に示すように、読み出し光jがハーフミラー部8に入射すると、当該読み出し光jの一部がハーフミラー部8で反射されて反射光jとなり、ハーフミラー部8に入射した読み出し光jの残りはハーフミラー部8を透過して全反射ミラー10で反射されて再度ハーフミラー部8に下面から入射する。下面からハーフミラー部8に再度入射した読み出し光のうちの一部がハーフミラー部8を透過し透過光jとなる。この透過光jと前記反射光jとの間には、ハーフミラー部8と全反射ミラー10との間の間隔の2倍に対応する光路長差がある。よって、反射光jと透過光jとの間でこの光路長差に応じた干渉が起こり、反射光j及び透過光jがこの光路長差に応じた(したがって、第1の変位部7と第2の変位部9との間の相対的な変位に応じた)干渉強度を有する干渉光となってハーフミラー部8から出射されることになる。なお、この干渉光の干渉強度は反射光jの強度と透過光jの強度とが等しいときに最も強くなるので、ハーフミラー部8の反射率を約38%にすることが望ましい。
【0054】
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、ハーフミラー部8及び全反射ミラー10が、読み出し光jを受光し、受光した読み出し光jを第1の変位部7と第2の変位部9との間の相対的な変位に応じた干渉状態を有する干渉光に変えて出射させる干渉手段を構成しており、ひいては、読み出し光jを受光し、受光した読み出し光jに第1の変位部7と第2の変位部9との間の相対的な変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させる光作用部を構成している。
【0055】
本実施の形態では、図2に示すように、第1及び第2の被支持部3,5、ハーフミラー部8、全反射ミラー10及び脚部2,4を単位画素(単位素子)として、当該画素が基板1上に2次元状に配置されている。もっとも、必要に応じて当該画素は基板1上に1次元状に配置してもよいし、単に放射の強度のみを検出するような場合には、単一の画素のみを基板1上に配置してもよい。この点は、後述する図6及び図7に示す変換装置、図10に示す変換装置、並びに図12に示す変換装置についても、同様である。
【0056】
また、本実施の形態による変換装置は、図1(c)(d)及び図2に示すように、照射される読み出し光jのうちの光作用部を構成するハーフミラー部8から出射する干渉光以外の光をマスクするマスク11を有している。マスク11は、ハーフミラー部8に対応する領域に開口11aを有している。このマスク11aは、例えば、本実施の形態による変換装置を収容し得る後述する図5に示す容器110に設けられた読み出し光用の入射窓113上に黒色の塗料を塗布することにより形成することができる。照射される読み出し光jのうちのハーフミラー部8から出射する干渉光が信号光であるが、読み出し光のうちの当該信号光以外の光(すなわち、ノイズ光)が当該信号光に混じると、いわゆるS/Nが低下してしまう。この点、本実施の形態によれば、マスク11を有しているので、当該ノイズ光が信号光に混じらず、S/Nが向上する。もっとも、本発明では、必ずしもマスク11を設ける必要はない。
【0057】
本実施の形態による図1及び図2に示す光読み出し型放射−変位変換装置は例えば半導体製造工程を利用して製造することができるが、その製造方法の一例について、図3を参照して説明する。
【0058】
図3は、この製造方法の各工程を示す概略断面図である。なお、図3(a)(b)は同一工程を示し、図3(c)(d)は同一工程を示し、図3(e)(f)は同一工程を示している。図3(a)(c)(e)は、図1(d)と対応しており、図1(a)(b)中のB−B’断面に相当している。図3(b)(d)(f)は、図1(c)と対応しており、図1(a)(b)中のA−A’断面に相当している。
【0059】
まず、前記基板1に相当するシリコン基板21上に全面にスピンコート法等によりポリイミド膜22を被着させ、該ポリイミド膜22における前記脚部4に相当する箇所にフォトリソエッチング法により穴をあける。その後、当該穴を埋めるように、プラズマCVD法などの低温工程でポリイミド膜22上の全面に前記脚部4の材料となるべきシリコン酸化膜23をデポジションする。次に、フォトリソエッチング法により、脚部4の形状に合わせてシリコン酸化膜23をパターニングする。次に、前記膜9a及び前記全反射ミラー10となるべき金属24をスパッタ法により被着させ、当該金属24を前記膜9a及び前記全反射ミラー10の形状に合わせてそれぞれフォトリソエッチング法によりパターニングする。その後、同様に、前記膜9bとなるべき金属25をスパッタ法により被着させ、当該金属25を前記膜9bの形状に合わせてそれぞれフォトリソエッチング法によりパターニングする(図3(a)(b))。
【0060】
次に、この状態の基板21上の全面にスピンコート法等によりポリイミド膜26を被着させ、該ポリイミド膜26における前記脚部2に相当する箇所にフォトリソエッチング法により穴をあける。その後、当該穴を埋めるように、プラズマCVD法などでポリイミド膜26上の全面に前記脚部2の材料となるべきシリコン酸化膜27をデポジションする。次に、フォトリソエッチング法により、脚部2の形状に合わせてシリコン酸化膜27をパターニングする。次いで、前記赤外線吸収膜6となるべき金黒28をスパッタ法により被着させ、当該金黒28を前記赤外線吸収膜6の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする。その後、前記膜7a,7bとなるべき金属29,30をスパッタ法により順次被着させ、当該金属29,30を前記膜7a,7bの形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする。次いで、この状態の基板21の全面にプラズマCVD法等により前記ハーフミラー部8の一部を構成する支持部となるべきシリコン酸化膜31をデポジションし、当該シリコン酸化膜31を前記ハーフミラー部8の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする。ハーフミラー部8を構成する支持部(図1では図示せず)はシリコン酸化膜31により構成されることから、可視光に対して透明である。その後、シリコン酸化膜31等の上に、前記ハーフミラー部8の一部を構成するハーフミラーの材料となるべきチタンなどの金属32を所望の反射率を得るように非常に薄くスパッタ法等により被着させ、当該金属32をハーフミラー部8の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図3(c)(d))。
【0061】
最後に、有機溶剤で溶出したり又はプラズマアッシングを行うなどによりポリイミド膜22,26を除去する(図3(e)(f))。これにより、図1及び図2に示す光読み出し型放射−変位変換装置が完成する。
【0062】
以上説明した本実施の形態による図1及び図2に示す光読み出し型放射−変位変換装置によれば、赤外線iが図1(c)(d)中の下方から入射される。この赤外線iは、基板1を透過して赤外線吸収膜6により吸収されて熱に変換される。赤外線吸収膜6にて発生した熱が変位部7に伝導され、その熱に応じて変位部7が上方又は下方に湾曲して傾斜する。第2の被支持部5は赤外線吸収膜を有しておらず、変位部9は赤外線iによっては変位しない。一方、後述する読み出し光学系により、可視光の読み出し光jが、図1(c)(d)中の上方からマスク11の開口11aを介して入射されてハーフミラー部8に照射される。その結果、前述したように、ハーフミラー部8に入射した読み出し光jは変位部7,9間の相対的な変位に応じた干渉状態を有する干渉光に変化させられ、当該干渉光がハーフミラー部8から図1(c)(d)の上方に出射される。したがって、赤外線吸収膜6に入射された赤外線iが読み出し光の干渉状態に変換されることになり、後述するように、この干渉光に基づいて赤外線を検出することができる。
【0063】
ところで、膜7a,7bの材料として、例えば、前記表1に挙げる金属材料を用いた場合、表1の比曲率K並びに変位部7の厚さd及び長さLから、変位部7の1゜Cの温度変化に対する、一端が固定されているときの自由端の変位Dは、次の数1により計算できる。
【0064】
【数1】
D=L×K/2d
【0065】
例えば、長さLが20μmで厚さdが0.1μmで比曲率Kが3×10−4であれば、変位Dは0.6μmとなる。さらに、観測物体の温度によって放射される赤外線を受光して温度に変換する変換率を前述したとおり1%とすると、バイメタルの変位は6nmとなる。
【0066】
前述したように、前記透過光jと前記反射光jとの間には、ハーフミラー部8と全反射ミラー10との間の間隔の2倍に対応する光路長差があり、これによって干渉が起こるので、例えば、読み出し光jの波長が500nmであれば、干渉は1/2波長ごとに強弱を繰り返すので、当該間隔が125nm変化するごとに強弱を繰り返す。
【0067】
よって、変位部7の変位6nmは干渉の周期125nmの4.8%に相当し、従来の抵抗変化0.02%に比べ非常に大きい。
【0068】
本実施の形態では、このように干渉という微小な変位を高感度で検出する技術を赤外線の検出に応用しているので、従来より高感度な検出が可能である。
【0069】
また、本実施の形態では、赤外線を熱を経て抵抗値(電気信号)に変換するのではなく、赤外線を熱及び変位を経て読み出し光の変化に変換するので、基板1により支持された被支持部3には電流を流す必要がなく、被支持部3には自己発熱が生じない。したがって、本実施の形態によれば、入射した赤外線のみによる熱を検出することになるので、S/Nが向上し、検出精度が向上する。勿論、本実施の形態では、量子型赤外線検出器において必要であった冷却器は不要である。
【0070】
ところで、第1の変位部7は、入射した赤外線iによる赤外線吸収膜6からの熱によって変位するのみならず、外部の温度が変化すると、脚部2を介して基板1に支持されていることから脚部2の熱抵抗が大きいとはいえ基板1を介して自身の温度変化が生ずるので、これによっても変位してしまう。しかし、本実施の形態では、第2の変位部9は、基板1から受ける熱に応じて基板1に対して変位部9と同方向に変位するため、第1の変位部7と第2の変位部9との間の相対的な変位(したがって、ハーフミラー部8と全反射ミラー10との間の相対的な変位)は、外部の温度による影響を差し引いた、入射した赤外線iによる赤外線吸収膜6からの熱にのみよって生ずる第1の変位部9の変位に近づくこととなる。したがって、ハーフミラー部8から得られる干渉光の干渉状態の変化には外部の温度の影響が少なくなり、一層精度の良い赤外線検出を行うことができる。このため、図5を参照して後述するように、外部の温度の影響を受けないようにするために温度制御を行う場合であっても、従来に比べて厳密な温度制御が必要なくなり、コストの低減を図ることができる。
【0071】
ところで、基板1の温度に対する第1及び第2の変位部7,9の変位量を実質的に等しくしておくと、外部の温度による影響をほぼ完全に打ち消すことができ、好ましい。この場合、具体的には、第1及び第2の変位部7,9を同じ材料と同じ寸法で製作すればよい。
【0072】
また、基体1の温度に対する前記第1及び第2の変位部7,9の熱変化時定数を実質的に等しくしておくと、外部の温度の影響による過渡的な温度変化に対しても、その影響を打ち消すことができ、好ましい。この場合、具体的には、脚部2と脚部4の熱抵抗はその他の部材の熱抵抗に較べて大きいので、この脚部2,4の長さや太さを調節し、両者の熱抵抗を等しくしておく。また、赤外線吸収層6と第1の変位部7とハーフミラー部8とからなる第1の被支持部3の熱容量と、第2の変位部9と全反射ミラー10とからなる第2の被支持部5の熱容量を等しくしておく。このように熱抵抗と熱容量を等しくしておけば熱時定数が等しくなる。必ずしも熱抵抗と熱容量の両方をそれぞれ等しくしなくても、熱抵抗と熱容量の積が等しくなるようにすればよい。
【0073】
なお、本実施の形態では、前述したように、赤外線吸収膜6は、第1の変位部7と熱的につながっているが、第1の変位部7が変位しても動かない構造になっている。したがって、赤外線吸収膜6の厚さを厚くして吸収率を上げても、変位部7の動き易さを妨げない。
【0074】
なお、本実施の形態においてハーフミラー部8と全反射ミラー10とを入れ換えてもよく、その場合には、読み出し光jを下方から照射すればよい。また、本実施の形態では、前記第1の被支持部3を2階部分とするとともに前記第2の被支持部5を1階部分としているが、逆に、前記第1の被支持部3を1階部分とするとともに前記第2の被支持部5を2階部分としてもよい。この場合、読み出し光jを下方から照射するときにはそのままの構造でよいが、本実施の形態と同様に読み出し光jを上方から照射するときにはハーフミラー部8と全反射ミラー10とを入れ換えればよい。
【0075】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態による映像化装置について、図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態による映像化装置を示す概略構成図である。
【0076】
本実施の形態による映像化装置は、前記第1の実施の形態による図1及び図2に示す光読み出し型放射−変位変換装置(図4においては符号100で示しており、図1(c)(d)中の上方向及び下方向が図4中の右方向及び左方向にそれぞれ対応している。)と、赤外線iを集光して変換装置100の赤外線吸収膜6が分布している面上に赤外線画像を結像させる赤外線用の結像レンズ40と、変換装置100の前記各素子(画素)のハーフミラー部8にそれぞれ前記読み出し光jを照射し、前記各素子のハーフミラー部8から出射された干渉光に基づいて前記各素子の第1及び第2の変位部7,9間の相対的な変位に応じた光学像を形成する読み出し光学系と、を備えている。したがって、この読み出し光学系は、前記各素子の光作用部にそれぞれ前記読み出し光jを照射し、前記各素子の前記光作用部から出射された前記変化した読み出し光に基づいて前記各素子の第1及び第2の変位部7,9間の相対的な変位に応じた光学像を形成することになる。
【0077】
具体的には、本実施の形態による映像化装置は、光源41、絞り42(これに代えて照明レンズを用いてもよい。)、ビームスプリッタ43、レンズ44,45を備えており、これらが前記読み出し光学系を構成している。
【0078】
本実施の形態では、結像レンズ40により、赤外線iが集光されて変換装置100の赤外線吸収膜6が分布している面上に赤外線画像が結像される。その結果、変換装置100の各画素の赤外線吸収膜6に対する入射赤外線の量に応じて、各画素の第1の変位部7が変位する。第2の被支持部5は赤外線吸収膜を有しておらず、第2の変位部9は赤外線iによっては変位しない。
【0079】
一方、光源41から発した光は、ビームスプリッタ43にて反射され、レンズ44を経て読み出し光jとして変換装置100に入射される。その結果、第1の実施の形態に関して説明したように、各素子(画素)の変位部7,9間の相対的な変位に応じた干渉強度を有する干渉光が各素子のハーフミラー部8からレンズ44へ向けて出射され、この干渉光が、レンズ44、ビームスプリッタ43及びレンズ45を経由し、干渉光による光学像が形成され、これが肉眼46にて観察される。このようにして、入射赤外線画像が可視画像に変換されることになる。
【0080】
なお、肉眼46で観察する代わりに、2次元CCD等を配置して前記光学像を撮像してもよい。この場合には、感度ばらつきやオフセットなどを電気的に補正することもできる。なお、このCCDの画素数は変換装置100の画素数と一致している必要はないが、同程度であることが望ましい。
【0081】
前記読み出し光学系は図4に示す構成に限定されるものではない。変換装置100はその内部で干渉を起こすのであるから、外部に干渉を起こすための光学系は必要なく、単に干渉を起こす読み出し光を供給し、その干渉強度を観察できる光学系があれば十分である。また、読み出し光は単色光に限らず、白色光でも良い。白色光であれば干渉強度は干渉色として観察される。また、読み出し光として波長の異なる2種類の単色光を用いれば、単色光ではわからない一周期以上ずれた干渉の場合でも光路長差がわかるので、単色光を用いる場合に比べて、よりダイナミックレンジの広い赤外線を観察できる。
【0082】
ところで、図1に示す光読み出し型放射−変位変換装置100(後述する図6及び図7に示す変換装置、図10に示す変換装置並びに図12に示す変換装置も同様。)は、使用に際して、図5に示すような内部110aを真空にした容器110内に収容することが好ましい。このように真空の容器110内に変換装置100を収容すると、断熱性能が向上し、赤外線による膜4,5の温度上昇が大きくなり、外部の温度変化に対しての基板1の温度変化を小さくできる。さらに、変換装置100の基板1の温度の変化を抑えるためには、ペルチェ素子のような発熱や吸熱を行える温度コントロール装置111を容器110に熱的に密に接触させ、温度制御を行うことも有効である。この場合、前述したように、変換装置100自体が外部の温度の影響を受け難いので、当該温度制御を厳密に行う必要がなくなる。
【0083】
図10(a)は、容器110内に変換装置100を収容した状態を模式的に示す断面図であり、変換装置100は容器110に取り付けてある。容器110の赤外線iの入射側には、不要な光をカットしかつ内部110aを真空を保持するための窓112が取り付けてある。容器110の読み出し光jの入射側には、不要な光をカットしかつ内部110aを真空に保持するための窓113が取り付けてある。容器110の内部110aは、真空に排気されている。
【0084】
図10(b)は、図10(a)中のB−B’矢視図である。温度コントロール装置111は読み出し光jの入射を妨げないように中心をくりぬいた環状の形になっている。
【0085】
なお、図面には示していないが、例えば、変換装置100に接してあるいは変換装置110の基板1内に温度センサを設け、該温度センサからの検出信号を利用して温度コントロール装置111の温度制御が行われる。
【0086】
また、図4に示す映像化装置(後述する図14に示す映像化装置も同様。)では、使用に際して、光読み出し型放射−変位変換装置を含んだ光学系全体を、被支持部3,5の機械的な共振周波数では共振しないような防震容器に入れておくことが望ましい。
【0087】
(第3の実施の形態)
次に、本発明による第3の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置について、図6及び図7を参照して説明する。
【0088】
図6及び図7は本発明の第3の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図6(a)はその単位画素(単位素子)を模式的に示す平面図、図6(b)は図6(a)中のD−D’線に沿った断面図、図6(c)は図6(a)中のE−E’線に沿った断面図、図7(a)は図6(a)中のF−F’線に沿った断面図、図7(b)は図6(a)中のG−G’線に沿った断面図である。
【0089】
本実施の形態による放射−変位変換装置は、基体としての基板51と、脚部52を介して基板51上に浮いた状態に支持された第1の被支持部53と、脚部54を介して基板51上に浮いた状態に支持された第2の被支持部55と、を備えている。本実施の形態では、第1及び第2の被支持部53,55は略同一の高さに設けられている。
【0090】
本実施の形態では、基板51上に被支持部53,55が設けられ、基板51の下方から赤外線iが入射されるとともに基板51の上方から読み出し光jが入射されるように構成されているので、基板51は、赤外線iを透過する材料で構成されている。もっとも、基板51の下方から読み出し光jが入射されるとともに基板51の上方から赤外線iが入射される場合には、読み出し光を透過させる材料で基板51を構成しておけばよい。この場合には、例えば、後述するハーフミラー部58を全反射ミラーとするとともに後述する全反射ミラー61をハーフミラーとすればよい。もっとも、基板51における赤外線又は読み出し光の所望の通過領域に開口を形成すれば、基板51の材料は何ら限定されるものではない。
【0091】
本実施の形態では、第1の被支持部53は、図1中の2階部分の被支持部3と同様に構成されている。すなわち、第1の被支持部53は、脚部52に直接固定されて中央に配置され赤外線を受けて熱に変換する赤外線吸収膜56と、該赤外線吸収膜56にそれぞれ一端側部分が固定され赤外線吸収膜56の両側に配置された変位部57と、各変位部57の自由端側に固定され変位部57とともに赤外線吸収膜56をコ字状に囲むように配置された、読み出し光jの一部のみを反射させるハーフミラー部58と、を備えている。変位部57は、カンチレバーを構成している。本実施の形態においても、赤外線吸収膜56は、変位部57と熱的につながっているが、変位部57が変位しても動かない構造になっている。基板51上におけるハーフミラー部58と対向する領域には、ハーフミラー部58を透過した読み出し光を反射させる反射部としての全反射ミラー61が形成されている。
【0092】
前記変位部57は、図1中の第1の変位部7と同様に、互いに重なった2つの膜57a,57bから構成されている。膜57a及び57bは、互いに異なる膨張係数を有する異なる物質で構成されており、いわゆる熱バイモルフ構造を構成している。
【0093】
なお、脚部52,54、赤外線吸収膜56、膜57a,57bの材料としては、それぞれ前述した図1中の脚部2,4、赤外線吸収膜6、膜7a,7bと同様の材料を用いることができる。
【0094】
図6(c)及び図7(a)に示すように、読み出し光jがハーフミラー部58に入射すると、当該読み出し光jの一部がハーフミラー部58で反射されて反射光jとなり、ハーフミラー部58に入射した読み出し光jの残りはハーフミラー部58を透過して全反射ミラー61で反射されて再度ハーフミラー部58に下面から入射する。下面からハーフミラー部58に再度入射した読み出し光のうちの一部がハーフミラー部58を透過し透過光jとなる。この透過光jと前記反射光jとの間には、ハーフミラー部58と全反射ミラー61との間の間隔の2倍に対応する光路長差がある。よって、反射光jと透過光jとの間でこの光路長差に応じた干渉が起こり、反射光j及び透過光jがこの光路長差に応じた(したがって、変位部57の変位に応じた)干渉強度を有する干渉光となってハーフミラー部58から出射されることになる。なお、ハーフミラー部58の反射率を約38%にすることが望ましい。
【0095】
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、ハーフミラー部58及び全反射ミラー61が、読み出し光jを受光し、受光した読み出し光jを変位部57の変位に応じた干渉状態を有する干渉光に変えて出射させる干渉手段を構成しており、ひいては、読み出し光jを受光し、受光した読み出し光jに変位部57の変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させる光作用部を構成している。
【0096】
本実施の形態では、第2の被支持部55は、第1の被支持部53の両側にそれぞれ配置されている。第2の被支持部55は、脚部54に一端側部分が直接固定された変位抑制部59を有しており、該変位抑制部59はカンチレバーを構成している。変位抑制部59は、変位部57と同様に、互いに重なった2つの膜59a,59bから構成されている。膜59a,59bは、互いに異なる膨張係数を有する異なる物質で構成されており、いわゆる熱バイモルフ構造を構成している。膜59a,59bは、前記膜57a,57bと同様に、互いに異なる膨張係数を有する任意の材料で構成すればよいが、熱の増減に対する変位抑制部59の変位しようとする方向は、変位部57の変位方向と逆方向となるように設定されている。すなわち、本実施の形態では、変位抑制部59の下側の膜59aと上側の膜59bとの膨張係数の大小関係と、変位部57の下側の膜57aと上側の膜57bとの膨張係数の大小関係とが逆になるように、各膜の材料が選定されている。変位抑制部59の自由端側は、熱抵抗の大きい結合部60を介してハーフミラー部58に機械的に結合され、ひいては変位部57に機械的に結合されている。したがって、本実施の形態では、変位抑制部59は、熱の増減に対する変位部57の変位方向とは逆方向に、基体51から脚部54を介して受ける熱に応じて基板1に対して変位しようとして変位部57の変位を抑制する。
【0097】
なお、図面には示していないが、本実施の形態においても、第1及び第2の被支持部53,55、ハーフミラー部58、全反射ミラー61及び脚部52,54を単位画素(単位素子)として、当該画素が基板1上に2次元状に配置されている。
【0098】
また、本実施の形態においても、図6及び図7に示すように、図1及び図2中のマスク11と同様のマスク62が設けられている。マスク62は、ハーフミラー部58に対応する領域に開口62aを有している。
【0099】
次に、本実施の形態による図6及び図7に示す光読み出し型放射−変位変換装置の製造方法の一例について、図8及び図9を参照して説明する。
【0100】
図8はこの製造方法の各工程を示す概略断面図、図9は図8に示す工程に引き続く工程を示す概略断面図である。なお、図8(a)〜(d)は同一工程を示し、図8(e)〜(h)は同一工程を示し、図8(i)〜(l)は同一工程を示し、図9(a)〜(d)は同一工程を示し、図9(e)〜(h)は同一工程を示している。図8(a)(e)(i)及び図9(a)(e)は図6(b)と対応しており、図6(a)中のD−D’断面に相当している。図8(b)(f)(j)及び図9(b)(f)は図6(c)と対応しており、図6(a)中のE−E’断面に相当している。図8(c)(g)(h)及び図9(c)(g)は図7(a)と対応しており、図6(a)中のF−F’断面に相当している。図8(d)(h)(l)及び図9(d)(h)は図7(b)と対応しており、図6(a)中のG−G’断面に相当している。
【0101】
まず、前記基板51に相当するシリコン基板71上に前記全反射ミラー61の材料となるべきチタンなど高融点金属72をスパッタ法等により被着させ、当該高融点金属72を全反射ミラー61の形状に合わせてパターニングする。次いで、この状態の基板71の全面にスピンコート法等によりポリイミド膜73を被着させ、該ポリイミド膜73における前記脚部52,54に相当する箇所にフォトリソエッチング法により穴をあける。その後、当該穴を埋めるように、プラズマCVD法などの低温工程でポリイミド膜73上の全面に前記脚部52,54の材料となるべきシリコン酸化膜74をデポジションする。その後、フォトリソエッチング法により、脚部52,54の形状に合わせてシリコン酸化膜74をパターニングする。次いで、前記赤外線吸収膜56となるべき金黒75をスパッタ法により被着させ、当該金黒75を前記赤外線吸収膜56の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図8(a)〜(d))。
【0102】
次に、前記膜57a,57bとなるべき金属76,77をスパッタ法により順次被着させ、当該金属76,77を前記膜57a,57bの形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする。また、前記膜59a,59bとなるべき金属78,79をスパッタ法により順次被着させ、当該金属78,79を前記膜59a,59bの形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図8(e)〜(h))。
【0103】
次に、この状態の基板71の全面にプラズマCVD法等により前記ハーフミラー部58の一部を構成する支持部となるべきシリコン酸化膜80をデポジションし、当該シリコン酸化膜80を前記ハーフミラー部58の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする。ハーフミラー部58を構成する支持部(図1では図示せず)はシリコン酸化膜80により構成されることから、可視光に対して透明である。その後、シリコン酸化膜80等の上に、前記ハーフミラー部58の一部を構成するハーフミラーの材料となるべきチタンなどの金属81を所望の反射率を得るように非常に薄くスパッタ法等により被着させ、当該金属81をハーフミラー部58の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図8(i)〜(l))。
【0104】
次に、この状態の基板71の全面にプラズマCVD法等により前記結合部60となるべきシリコン酸化膜82をデポジションし、当該シリコン酸化膜82を前記結合部60の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図9(a)〜(d))。
【0105】
最後に、有機溶剤で溶出したり又はプラズマアッシングを行うなどによりポリイミド膜73を除去する(図9(e)〜(h))。これにより、図6及び図7に示す光読み出し型放射−変位変換装置が完成する。
【0106】
以上説明した本実施の形態による図6及び図7に示す光読み出し型放射−変位変換装置によれば、赤外線iが図6(b)(c)及び図7中の下方から入射される。この赤外線iは、基板51を透過して赤外線吸収膜56により吸収されて熱に変換される。赤外線吸収膜56にて発生した熱が変位部57に伝導され、その熱に応じて変位部57が上方又は下方に湾曲して傾斜する。一方、読み出し光学系により、可視光の読み出し光jが、図6(b)(c)及び図7中の上方からマスク62の開口62aを介して入射されてハーフミラー部58に照射される。その結果、前述したように、ハーフミラー部58に入射した読み出し光jは変位部57の変位に応じた干渉状態を有する干渉光に変化させられ、当該干渉光がハーフミラー部58から図6(b)(c)及び図7の上方に出射される。したがって、赤外線吸収膜56に入射された赤外線iが読み出し光の干渉状態に変換されることになり、この干渉光に基づいて赤外線を検出することができる。
【0107】
本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同様に、このように干渉という微小な変位を高感度で検出する技術を赤外線の検出に応用しているので、従来より高感度な検出が可能である。
【0108】
また、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同様に、赤外線を熱を経て抵抗値(電気信号)に変換するのではなく、赤外線を熱及び変位を経て読み出し光の変化に変換するので、基板1により支持された被支持部53には電流を流す必要がなく、被支持部53には自己発熱が生じない。したがって、本実施の形態によれば、入射した赤外線のみによる熱を検出することになるので、S/Nが向上し、検出精度が向上する。勿論、本実施の形態では、量子型赤外線検出器において必要であった冷却器は不要である。
【0109】
ところで、変位部57は、入射した赤外線iによる赤外線吸収膜56からの熱によって変位するのみならず、外部の温度が変化すると、脚部52を介して基板51に支持されていることから脚部52の熱抵抗が大きいとはいえ基板51を介して自身の温度変化が生ずるので、これによっても変位しようとする。しかし、本実施の形態では、変位抑制部59が熱の増減に対する変位部57の変位方向とは逆の方向に基板51から受ける熱に応じて基板51に対して変位しようとして変位部57の変位を抑制するので、結局、変位部57の変位は、外部の温度による影響を差し引いた、入射した赤外線による赤外線吸収膜56からの熱にのみよって生ずる変位に近づくこととなる。したがって、前述した第1の実施の形態と同様に、ハーフミラー部58から得られる干渉光の干渉状態の変化には外部の温度の影響が少なくなり、一層精度の良い赤外線検出を行うことができる。このため、外部の温度の影響を受けないようにするために温度制御を行う場合であっても、従来に比べて厳密な温度制御が必要なくなり、コストの低減を図ることができる。
【0110】
ところで、本実施の形態においては、基板51の温度に対する変位部57自体の変位しようとする量と基板51の温度に対する変位抑制部59の変位しようとする量とを実質的に等しくしておくと、外部の温度による影響をほぼ完全に打ち消すことができ、好ましい。この場合、具体的には、変位部57及び変位抑制部59を同じ材料と同じ寸法で製作すればよい。
【0111】
また、基体51の温度に対する変位部57及び変位抑制部59の熱変化時定数を実質的に等しくしておくと、外部の温度の影響による過渡的な温度変化に対しても、その影響を打ち消すことができ、好ましい。この場合、具体的には、脚部52と脚部54の熱抵抗はその他の部材の熱抵抗に較べて大きいので、この脚部52,54の長さや太さを調節し、両者の熱抵抗を等しくしておく。また、赤外線吸収層56と変位部57とハーフミラー部58とからなる第1の被支持部53の熱容量と、変位抑制部59からなる第2の被支持部55の熱容量を等しくしておく。このように熱抵抗と熱容量を等しくしておけば熱時定数が等しくなる。必ずしも熱抵抗と熱容量の両方をそれぞれ等しくしなくても、熱抵抗と熱容量の積が等しくなるようにすればよい。
【0112】
なお、本実施の形態では、前述したように、赤外線吸収膜56は、変位部57と熱的につながっているが、変位部57が変位しても動かない構造になっている。したがって、赤外線吸収膜56の厚さを厚くして吸収率を上げても、変位部57の動き易さを妨げない。
【0113】
ところで、前記変位部57の変位の範囲を制限しなければ、干渉の強度は光路長差が読み出し光の波長の1/2毎に強弱を繰り返すので、ある強度以上の赤外線が入射すると逆に干渉の強度が反転するという反転現象が起こってしまう。そこで、変位部57の変位による干渉強度の変化が単調変化となるように、変位部57の変位の範囲を読み出し光の波長の1/4以下に制限することが好ましい。例えば、変位部57を温度が上昇したときに図6(b)(c)中の下向きに曲がるようにし、ハーフミラー部58と全反射ミラー61との間隔を読み出し光の波長の1/4以下とすれば、過剰の赤外線が入射しても変位部57の動きはハーフミラー部58と全反射ミラー61とが接した所で止まる。このときに干渉強度が最大となるので反転現象は発生しない。以上は読み出し光として単色光を用いた場合であるが、読み出し光として白色光を用いた場合にも、同様に、変位部57の変位による干渉色の変化が単調変化となるように、変位部57の変位の範囲を制限すればよい。なお、変位部57の変位の範囲を制限するための特別な制限部を設けてもよいことは、勿論である。なお、この点は、後述する図10に示す変換装置及び図12に示す変換装置についても、同様である。
【0114】
なお、本実施の形態による図6及び図7に示す光読み出し型放射−変位変換装置は、前述した図4に示す映像化装置において、変換装置100に代えて用いることができる。
【0115】
(第4の実施の形態)
次に、本発明による第4の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置について、図10を参照して説明する。
【0116】
図10は本発明の第4の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図10(a)はその単位画素(単位素子)を模式的に示す平面図、図10(b)は図10(a)中のH−H’線に沿った断面図、図10(c)は図10(a)中のJ−J’線に沿った断面図、図10(d)は図10(a)中のK−K’線に沿った断面図である。図10において、図6及び図7中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0117】
図10に示す変換装置が図6及び図7に示す変換装置と異なる所は、赤外線吸収膜56と変位部57とが積層されて一体化されている点である。なお、赤外線吸収膜56と膜57aを単一の膜で兼用することもできる。
【0118】
本実施の形態による図10に示す変換装置も、図6及び図7に示す光読み出し型放射−変位変換装置と同様の利点が得られる。
【0119】
なお、本実施の形態による図10に示す光読み出し型放射−変位変換装置は、前述した図4に示す映像化装置において、変換装置100に代えて用いることができる。
【0120】
ここで、本実施の形態による変換装置の製造方法の一例について、図11を参照して説明する。
【0121】
図11は、この製造方法の各工程を示す概略断面図である。なお、図11(a)(b)は同一工程を示し、図11(c)(d)は同一工程を示し、図11(e)(f)は同一工程を示し、図11(g)(h)は同一工程を示し、図11(i)(j)は同一工程を示している。図11(a)(c)(e)(g)(i)は、図10(c)と対応しており、図10(a)中のJ−J’断面に相当している。図11(b)(d)(f)(h)(j)は、図10(d)と対応しており、図10(a)中のK−K’断面に相当している。
【0122】
まず、前記基板51に相当するシリコン基板121上に前記全反射ミラー61の材料となるべきチタンなど高融点金属122をスパッタ法等により被着させ、当該高融点金属122を全反射ミラー61の形状に合わせてパターニングする。次いで、この状態の基板121の全面にスピンコート法等によりポリイミド膜123を被着させ、該ポリイミド膜123における前記脚部52,54に相当する箇所にフォトリソエッチング法により穴をあける。その後、当該穴を埋めるように、プラズマCVD法などの低温工程でポリイミド膜123上の全面に前記脚部52,54の材料となるべきシリコン酸化膜124をデポジションする。その後、フォトリソエッチング法により、脚部52,54の形状に合わせてシリコン酸化膜124をパターニングする(図11(a)(b))。
【0123】
次に、それぞれ前記赤外線吸収膜56、前記膜57a,57bとなるべき金黒125、金属126,127をスパッタ法により被着させ、当該金黒125、金属126,127を前記赤外線吸収膜56及び前記膜57a,57bの形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする。また、前記膜59a,59bとなるべき金属128,129をスパッタ法により順次被着させ、当該金属128,129を前記膜59a,59bの形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図11(c)(d))。
【0124】
次に、この状態の基板121の全面にプラズマCVD法等により前記ハーフミラー部58の一部を構成する支持部となるべきシリコン酸化膜130をデポジションし、当該シリコン酸化膜130を前記ハーフミラー部58の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする。その後、シリコン酸化膜130等の上に、前記ハーフミラー部58の一部を構成するハーフミラーの材料となるべきチタンなどの金属131を所望の反射率を得るように非常に薄くスパッタ法等により被着させ、当該金属131をハーフミラー部58の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図11(e)(f))。
【0125】
次に、この状態の基板121の全面にプラズマCVD法等により前記結合部60となるべきシリコン酸化膜132をデポジションし、当該シリコン酸化膜132を前記結合部60の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図11(g)(h))。
【0126】
最後に、有機溶剤で溶出したり又はプラズマアッシングを行うなどによりポリイミド膜123を除去する(図11(i)(j))。これにより、図10に示す光読み出し型放射−変位変換装置が完成する。
【0127】
(第5の実施の形態)
次に、本発明による第5の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置について、図12を参照して説明する。
【0128】
図12は本発明の第5の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図12(a)はその単位画素(単位素子)を模式的に示す平面図、図12(b)は図12(a)中のL−L’線に沿った断面図、図12(c)は図12(a)中のM−M’線に沿った断面図、図12(d)は図12(a)中のN−N’線に沿った断面図である。図12において、図10中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0129】
図10に示す変換装置が図6及び図7に示す変換装置と異なる所は、ハーフミラー部58及び全反射ミラー61が取り除かれ、変位部57を構成している膜57bが、照射された読み出し光jを反射する反射部を兼用している点である。なお、赤外線吸収膜56と膜57aを単一の膜で兼用することもできる。
【0130】
本実施の形態では、反射部を構成しており、読み出し光jを受光し、受光した読み出し光に変位部としての膜57a,57bの変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させる光作用部を構成している。すなわち、反射部としての膜57bは、読み出し光jを受光し、受光した読み出し光に変位部としての膜57a,57bの変位に応じた反射方向の変化や反射位置の変化を与えて当該変化した読み出し光を反射光として出射させる。
【0131】
本実施の形態によれば、赤外線iが図12(b)〜(d)中の下方から入射される。この赤外線iは、基板51を透過して赤外線吸収膜56により吸収されて熱に変換される。赤外線吸収膜56にて発生した熱に応じて変位部57が上方又は下方に湾曲して傾斜する。すなわち、入射した赤外線iが、その量に応じた変位部57の変位に変換される。一方、後述する読み出し光学系により、可視光の読み出し光jが、図12(b)〜(d)中の上方から入射されて反射部を兼ねる膜57bに照射される。膜57bは、その変位に応じた反射方向の変化や反射位置の変化を与えて当該変化した読み出し光を反射光として出射させるので、結局、膜57bに照射された赤外線が読み出し光の反射光の変化に変換されることになる。したがって、後述するように、膜57bにて反射された読み出し光の反射光に基づいて赤外線を検出することができる。
【0132】
本実施の形態による変換装置は、以上の点以外は、前述した図10に示す変換装置と同様であり、図6及び図7に示す光読み出し型放射−変位変換装置と同様の利点が得られる。
【0133】
ここで、本実施の形態による変換装置の製造方法の一例について、図13を参照して説明する。
【0134】
図13は、この製造方法の各工程を示す概略断面図である。なお、図13(a)(b)は同一工程を示し、図13(c)(d)は同一工程を示し、図13(e)(f)は同一工程を示し、図13(g)(h)は同一工程を示している。図13(a)(c)(e)(g)は、図12(c)と対応しており、図12(a)中のM−M’断面に相当している。図13(b)(d)(f)(h)は、図12(d)と対応しており、図12(a)中のN−N’断面に相当している。
【0135】
まず、前記基板51に相当するシリコン基板141上の全面にスピンコート法等によりポリイミド膜142を被着させ、該ポリイミド膜142における前記脚部52,54に相当する箇所にフォトリソエッチング法により穴をあける。その後、当該穴を埋めるように、プラズマCVD法などの低温工程でポリイミド膜142上の全面に前記脚部52,54の材料となるべきシリコン酸化膜143をデポジションする。その後、フォトリソエッチング法により、脚部52,54の形状に合わせてシリコン酸化膜143をパターニングする(図13(a)(b))。
【0136】
次に、それぞれ前記赤外線吸収膜56、前記膜57a,57bとなるべき金黒144、金属145,146をスパッタ法により被着させ、当該金黒144、金属145,146を前記赤外線吸収膜56及び前記膜57a,57bの形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする。また、前記膜59a,59bとなるべき金属147,148をスパッタ法により順次被着させ、当該金属147,148を前記膜59a,59bの形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図13(c)(d))。
【0137】
次に、この状態の基板141の全面にプラズマCVD法等により前記結合部60となるべきシリコン酸化膜149をデポジションし、当該シリコン酸化膜49を前記結合部60の形状に合わせてフォトリソエッチング法によりパターニングする(図13(e)(f))。
【0138】
最後に、有機溶剤で溶出したり又はプラズマアッシングを行うなどによりポリイミド膜142を除去する(図13(g)(h))。これにより、図12に示す光読み出し型放射−変位変換装置が完成する。
【0139】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態による映像化装置について、図14を参照して説明する。図3は、本実施の形態による映像化装置を示す概略構成図である。
【0140】
本実施の形態による映像化装置は、前記第5の実施の形態による図12に示す光読み出し型放射−変位変換装置(図14においては符号200で示しており、図12(b)〜(d)中の上方向及び下方向が図14中の右方向及び左方向にそれぞれ対応している。)と、赤外線iを集光して変換装置200の赤外線吸収膜56が分布している面上に赤外線画像を結像させる赤外線用の結像レンズ220と、変換装置200の前記各素子(画素)の反射部としての膜57bにそれぞれ前記読み出し光を照射し、前記各素子の膜57bで反射された読み出し光の反射光に基づいて前記各素子の変位部57の変位に応じた光学像を形成する読み出し光学系と、前記光学像を撮像する撮像手段としての2次元CCD221,222,223と、を備えている。
【0141】
具体的には、本実施の形態による映像化装置は、白色ランプ等の白色光源224、レンズ225,226,227,228、ビームスプリッタ229,230、全反射ミラー231、R光反射ダイクロイックミラー232及びB光反射ダイクロイックミラー233を備えており、これらが前記読み出し光学系を構成している。本実施の形態では、この読み出し光学系は、干渉を利用して前記光学像を形成するように構成されている。変換装置200の反射部としての膜57bが分布している面とCCD221〜223の受光面とが、レンズ225,226〜228に関して、互いに共役な位置に配置されている。なお、CCD221〜223、レンズ226〜227及びダイクロイックミラー232,233は、3板式の可視光用CCDカメラを構成している。なお、白色光源224とビームスプリッタ229との間には、適宜照明レンズを配置してもよい。
【0142】
本実施の形態では、結像レンズ220により、赤外線iが集光されて変換装置200の赤外線吸収膜57bが分布している面上に赤外線画像が結像される。その結果、変換装置200の各画素の赤外線吸収膜57bに対する入射赤外線の量に応じて、前記第5の実施の形態に関して説明したように、各画素の変位部37が変位する。
【0143】
一方、白色光源224から発した光は、ビームスプリッタ229にて反射され、レンズ225を経てビームスプリッタ230に達し、当該ビームスプリッタ230を透過して変換装置200に照射される読み出し光と、当該ビームスプリッタ230にて反射されて全反射ミラー231に向かう参照光とに分割される。変換装置200に照射された読み出し光は、変換装置200の各画素の膜57bにて反射されてビームスプリッタ230を透過してレンズ225へ向かう。一方、前記参照光は、全反射ミラー231にて反射されてビームスプリッタ230でさらに反射されてレンズ225へ向かう。したがって、各画素の膜57bにて反射された読み出し光と全反射ミラー231にて反射された参照光とがビームスプリッタ230により合成される。合成された2つの光は、干渉の原理によりその位相差に応じて強め合ったり弱め合ったりして干渉光となる。このため、この干渉光は、変換装置200の各画素の膜57bの変位量に応じてスペクトル分布が元の白色光源24に対してずれた分布の光強度を有しており(すなわち、各画素の膜5の変位量に応じた干渉色の分布を有しており)、ビームスプリッタ230からレンズ225を図14中右方向に透過し、更にビームスプリッタ229を透過する。ビームスプリッタ229を透過した干渉光は、ダイクロイックミラー232,233にて色分解され、当該干渉光のうちのR光成分による光学像がレンズ227を介してCCD222上に形成され、当該干渉光のうちのB光成分による光学像がレンズ228を介してCCD223上に形成され、当該干渉光のうちのG光成分による光学像がレンズ229を介してCCD224上に形成され、それらの像がCCD222,223,224により撮像される。このようにして、入射赤外線画像が可視画像に変換され、当該可視画像が撮像されることになる。
【0144】
なお、本実施の形態では、前記可視画像をCCD222,223,224で撮像しているが、当該可視画像を肉眼で観察するようにしてもよい。この場合、例えば、図14において、ダイクロイックミラー232,233、レンズ227,228及びCCD221〜223を取り除き、CCD221の位置に形成された可視画像を肉眼で観察すればよい。
【0145】
また、白色光源224に代えて、レーザーなどの単色光源を用いてもよい。この場合、その波長における変換装置200の各画素の膜57bの変位量に応じた強弱の変化の分布を持った干渉像が得られるので、白黒タイプのCCDカメラを用いればよい。具体的には、例えば、図14において、ダイクロイックミラー232,233、レンズ227,228及びCCD222,223を取り除けばよい。この場合にも、CCD221を取り除いて、CCD221の位置に形成された単色の可視画像を肉眼で観察してもよい。なお、白色光源224に代えて、波長の異なる2種類の単色光を発する光源を用いれば、単色光ではわからない一周期以上ずれた干渉の場合でも光路長差がわかるので、単色光源を用いる場合に比べて、よりダイナミックレンジの広い赤外線を撮像できる。
【0146】
なお、レンズ225及び全反射ミラー231に代えて、市販されている干渉対物レンズを用いてもよい。
【0147】
なお、図12に示す変換装置とともに用いられる読み出し光学系は前述した構成に限定されるものではなく、例えば、共焦点顕微鏡、偏光顕微鏡、微分干渉顕微鏡、位相差顕微鏡などに用いられている光学系を適用することができる。
【0148】
なお、図6及び図7に示す変換装置並びに図10に示す変換装置において、ハーフミラー部58に代えて全反射ミラーを設けるとともに全反射ミラー61を取り除いてもよい。このような変換装置は、例えば、前述した図14に示す映像化装置において、変換装置200に代えて用いることができる。
【0149】
なお、赤外線画像を映像化するのではなく、単に赤外線の強度のみを検出するような場合には、例えば、前述した各映像化装置において、光読み出し型放射−変位変換装置を1つの素子(画素)のみを有するように構成しておき、読み出し光学系を当該素子に関連する部分のみを残すことによって、赤外線検出装置を得ることができる。
【0150】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0151】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、冷却器を必要とせずに検出精度及び感度の向上を図ることができ、しかも外部の温度の影響を受け難くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図1(a)はその単位画素の2階建て構造の2階部分を模式的に示す平面図、図1(b)はその1階部分を模式的に示す平面図、図1(c)は図1(a)(b)中のA−A’線に沿った断面図、図1(d)は図1(a)(b)中のB−B’線に沿った断面図である。
【図2】図1に示す光読み出し型放射−変位変換装置の画素の配置状態を示す平面図である。
【図3】図1に示す光読み出し型放射−変位変換装置の製造方法の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による映像化装置を示す概略構成図である。
【図5】容器内に光読み出し型放射−変位変換装置を収容した状態を模式的に示す図であり、図5(a)はその断面図、図5(b)は図5(a)中のB−B’矢視図である。
【図6】図6は本発明の第3の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図6(a)はその単位画素を模式的に示す平面図、図6(b)は図6(a)中のD−D’線に沿った断面図、図6(c)は図6(a)中のE−E’線に沿った断面図である。
【図7】図7は本発明の第3の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図7(a)は図6(a)中のF−F’線に沿った断面図、図7(b)は図6(a)中のG−G’線に沿った断面図である。
【図8】図6及び図7に示す光読み出し型放射−変位変換装置の製造工程の一例を示す図である。
【図9】図6及び図7に示す光読み出し型放射−変位変換装置の製造工程であって図19に引き続く製造工程を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図10(a)はその単位画素を模式的に示す平面図、図10(b)は図10(a)中のH−H’線に沿った断面図、図10(c)は図10(a)中のJ−J’線に沿った断面図、図10(d)は図10(a)中のK−K’線に沿った断面図である。
【図11】図10に示す光読み出し型放射−変位変換装置の製造方法の一例を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態による光読み出し型放射−変位変換装置を示す図であり、図12(a)はその単位画素を模式的に示す平面図、図12(b)は図12(a)中のL−L’線に沿った断面図、図12(c)は図12(a)中のM−M’線に沿った断面図、図12(d)は図12(a)中のN−N’線に沿った断面図である。
【図13】図12に示す光読み出し型放射−変位変換装置の製造方法の一例を示す図である。
【図14】本発明の第6の実施の形態による映像化装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1,51 基板
2,4,52,54 脚部
3,53 第1の被支持部
5,55 第2の被支持部
6,56 赤外線吸収膜
7 第1の変位部
8,58 ハーフミラー部
9 第2の変位部
10,61 全反射ミラー
11,62 マスク
57 変位部
59 変位抑制部
60 結合部

Claims (18)

  1. 基体と、
    前記基体に支持された第1の被支持部であって、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、該放射吸収部にて発生した熱に応じて前記基体に対して変位する第1の変位部と、を有する第1の被支持部と、
    前記基体に支持された第2の被支持部であって、前記基体から受ける熱に応じて前記基体に対して変位する第2の変位部を有する第2の被支持部と、
    読み出し光を受光し、受光した読み出し光に前記第1の変位部と前記第2の変位部との間の相対的な変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させる光作用部と、
    を備え、
    熱の増減に対する前記第1の変位部の変位方向と前記第2の変位方向とが実質的に同一方向であることを特徴とする光読み出し型放射−変位変換装置。
  2. 前記第1の変位部及び第2の変位部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有することを特徴とする請求項記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  3. 前記光作用部は、読み出し光を受光し、受光した読み出し光を前記相対的な変位に応じた干渉状態を有する干渉光に変えて出射させる干渉手段であることを特徴とする請求項1又は2記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  4. 前記干渉手段は、前記第1の被支持部及び前記第2の被支持部のうちの一方の一部をなすとともに前記第1の変位部及び前記第2の変位部のうちの一方の変位に従って変位するハーフミラー部であって、受光した読み出し光の一部のみを反射するハーフミラー部と、前記第1の被支持部及び前記第2の被支持部のうちの他方の一部をなすとともに前記第1の変位部及び前記第2の変位部のうちの他方の変位に従って変位する反射部であって、前記ハーフミラー部と対向するように配置された反射部と、を有することを特徴とする請求項3記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  5. 前記基体の温度に対する前記第1の変位部の変位量と前記基体の温度に対する前記第2の変位部の変位量とが、実質的に等しいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  6. 前記基体の温度に対する前記第1の変位部の熱変化時定数と前記基体の温度に対する前記第2の変位部の熱変化時定数とが、実質的に等しいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  7. 基体と、
    前記基体に支持された第1の被支持部であって、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、該放射吸収部にて発生した熱に応じて前記基体に対して変位する変位部と、を有する第1の被支持部と、
    前記基体に支持された第2の被支持部であって、熱の増減に対する前記変位部の変位方向とは逆の方向に前記基体からの熱に応じて変位しようとして前記変位部の変位を抑制する変位抑制部を有する第2の被支持部と、
    読み出し光を受光し、受光した読み出し光に前記変位部の変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させる光作用部と、
    を備えたことを特徴とする光読み出し型放射−変位変換装置。
  8. 前記変位抑制部は、熱抵抗の大きい結合部を介して前記変位部に機械的に結合されたことを特徴とする請求項7記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  9. 前記変位部及び前記変位抑制部の各々は、異なる膨張係数を有する異なる物質の互いに重なった少なくとも2つの層を有することを特徴とする請求項7又は8記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  10. 前記光作用部は、前記第1の被支持部の一部をなすとともに前記変位部の変位に従って変位する反射部であって、受光した読み出し光を反射する反射部であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  11. 前記光作用部は、読み出し光を受光し、受光した読み出し光を前記変位部の変位に応じた干渉状態を有する干渉光に変えて出射させる干渉手段であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  12. 前記干渉手段は、前記第1の被支持部の一部をなすとともに前記変位部の変位に従って変位するハーフミラー部であって、受光した読み出し光の一部のみを反射するハーフミラー部と、該ハーフミラー部と対向するように前記基体に対して固定された反射部と、を有することを特徴とする請求項11記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  13. 前記基体の温度に対する前記変位部自体の変位しようとする量と前記基体の温度に対する前記変位抑制部自体の変位しようとする量とが、実質的に等しいことを特徴とする請求項7乃至12のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  14. 前記基体の温度に対する前記変位部の熱変化時定数と前記基体の温度に対する前記第1の変位部の熱変化時定数とが、実質的に等しいことを特徴とする請求項7乃至13のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  15. 前記放射が赤外線であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  16. 前記第1の被支持部、前記第2の被支持部及び前記光作用部を1個の素子として当該素子を複数個有し、当該素子が1次元状又は2次元状に配列されたことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置。
  17. 請求項1乃至15のいずれかに記載の光読み出し型放射−変位変換装置と、
    前記光作用部に前記読み出し光を照射し、前記光作用部から出射された前記変化した読み出し光に基づいて前記相対的な変位又は前記変位部の変位を検出する変位検出手段と、
    を備えたことを特徴とする放射検出装置。
  18. 請求項16記載の光読み出し型放射−変位変換装置と、
    前記各素子の前記光作用部にそれぞれ前記読み出し光を照射し、前記各素子の前記光作用部から出射された前記変化した読み出し光に基づいて前記各素子の前記相対的な変位又は前記変位部の変位に応じた光学像を形成する読み出し光学系と、
    を備えたことを特徴とする映像化装置。
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