JP3614269B2 - ハードディスク用サスペンションのフレキシャ剛性測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハードディスクドライブ用サスペンション等に用いられるフレキシャのロール及びピッチ剛性を測定するための測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスクドライブのサスペンションの技術に於ては、ハードディスクの容量の増大に伴い、スライダとディスクとの間のすき間を定めるFH(Fly Height)を一定の低い値に保持する必要が生じてきた。そのために、負圧スライダの使用や、組み付け作業の高精度化を行ってきたが、より一層フレキシャの高精度化が求められている。例えば、特開昭55−22296号公報には、ロードビームに衝当するべきディンプルをフレキシャに設け、アクセス用ヘッドをロール及びピッチ方向に変位可能に保持する構成が開示されているが、ロール特性をより一層改善することが望まれる。特に、近年ピコスライダと呼ばれる1(W)×1.25(L)×0.3(D)(mm)のオーダの小型のスライダを用いるようになると、得られる揚力が小さく、FHを安定化することが一層困難となることが問題となっている。
【0003】
このようなハードディスク用サスペンションに於いては、読み書き用のヘッドのフライハイトを好適に制御するために、フレキシャの剛性特にロール方向並びにピッチ方向の剛性を正確に管理する必要がある。そこで、従来からロール及びピッチ剛性のFEN解析、測定等が行われていたが、使用状態に近い状態で測定することが困難であることから、通常、間接的な方法によって測定するため、その精度が必ずしも十分ではない場合が多かった。
【0004】
例えば、フレキシャの先端に、既知の慣性2次モーメントを有する重錘を取り付け、そのロール及びピッチ運動の振動数を測定して、フレキシャのロール及びピッチ剛性を計算する方法が知られている。しかしながら、この方法では、慣性質量即ち慣性2次モーメントの大きさを正確に把握するのが困難であり、しかも振動数の測定に大きなばらつきが生じるため、十分に高い精度を得ることは困難であった。また、使用状態に近い状態、特に荷重状態に於ける測定も困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記したような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その主な目的は、ハードディスクドライブのサスペンション等に於いて、アクセス用ヘッドを、相対移動する対象面に対して、安定に近接して、しかもロール及びピッチ方向に変位可能に保持し得るようにするために、フレキシャのロール及びピッチ剛性を簡単にしかも正確に測定するための装置を提供することにある。
【0006】
本発明の第2の目的は、ハードディスクドライブのサスペンション等に於いて、フレキシャの使用状態、特に荷重状態に於けるロール及びピッチ剛性を測定するための装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した目的は本発明によれば、ロードビ−ムの先端部に取り付けられたフレキシャを有し、両部分のいずれかに設けられたディンプルを介して前記フレキシャを前記ロードビームに対して支持してなるハードディスク用サスペンションに於けるフレキシャの剛性を測定するための装置であって、ロードビームの基端部を保持するクランプ部と、前記ディンプルに対して左右あるいは前後に離隔した点にて前記フレキシャに負荷を加えるための第1及び第2の負荷ロッドと、前記両ロッドを個別に軸線方向に変位させるための第1及び第2の駆動手段と、前記両ロッドのそれぞれに作用する軸線方向力を検出する第1及び第2のロードセルと、前記両ロッドのそれぞれの軸線方向変位を検出する第1及び第2の変位検出手段とを有することを特徴とする装置を提供することにより達成される。
【0008】
このような構造によれば、両ロッドに加わる合力として与えられるフレキシャに対する荷重を正確に制御しつつ、純粋な偶力として、ロールまたはピッチ方向の負荷をフレキシャに与えることができ、使用状態に近い状態に於けるフレキシャのロール及びピッチ剛性を正確かつ容易に求めることが可能となる。特に、フレキシャに対して負荷を加える点を、ディンプルを中心として左右または前後対称に設定することにより、測定を単純化させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態について添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用された典型的なフレキシャ(Flexure)支持構造を示すもので、比較的に剛性の高いロードビーム1の遊端に、可撓性に富むフレキシャ2の一端を接合し、フレキシャ2に切り抜かれた舌片3に磁気ヘッド等のアクセスヘッド4が固着される。ロードビーム1及びフレキシャ2は、適切な特性を有する任意の金属材料からなるものであってよいが、ステンレス鋼(SUS)からなるのが一般的である。図2に示されるように、ロードビーム1にはディンプル5と呼ばれる、通常0.25mm程度の半径を有する球面状の突起が設けられており、それによって、ディスク面にヘッド4がアクセスする際に、ヘッド4のピッチ方向の運動(図2)及びロール方向の運動(図3)を許容するように、フレキシャ3の背面を支持している。然るに、アクセスヘッド4読み書き位置6が、ヘッド4の一方の側に配置されており、アクセスヘッド4がフライングしているときの姿勢がFHに対して大きな影響を及ぼす。特に、アクセスヘッド4のロール方向の運動がFHに大きな影響を与えることが知られている。
【0011】
ディンプルずれと静的ロ−ルを伴うヘッド4が水平状態(ディスク面)で静止した場合のモデルを図4に示す。この時の力の釣り合いは次式になる。
【0012】
【数1】
【0013】
但し、Fi、F0は、ヘッドの両側部即ちレールがディスク面から受ける反力であり、S0はフレキシャのロール剛性であり、θsはフレキシャの静的ロール角である。この2式から次式が導かれる。
【0014】
【数2】
【0015】
式3、式4は荷重F/2の状態でF・ΔX/X±S0・(θs/X)の荷重がスパンXの両端に逆方向に作用していることを表し、即ち、その力は偶力となっている。従ってディンプル回りのトルクは次式となる。
【数3】
【0016】
以下、このトルクを静的トルク、またFi、F0を静的荷重と呼ぶことにする。以上からディンプルずれと静的ロ−ルのある場合には必ず各レールの静的荷重に差が生じ、静的トルクが働くことがわかる。
【0017】
前述の状態でディスクが回転を始めるとヘッドは浮上するが、静的荷重がFi≠F0の場合には図5に示すように浮上量に差が生じる。この時の力の釣り合いは次式となる。
【数4】
但し、P0、Piは、スライダの各レールに加わる空気の動圧であり、Ao、Aiは各レールの面積である。
【0018】
ここで、圧力が浮上量の2乗に反比例するならば以下の関係式が成り立つ。
【数5】
ここで、Cは実験的に求められる定数であり、Hi、 H0は、各スライダの浮上量である。幾何学的な関係から次式が成り立つ。
【数6】
【0019】
θ≒0の場合、次式が成り立つ。
【数7】
【0020】
式6〜10は未知数5個(Po、Pi、θ、Hi、H0)で、方程式が5式となるので解くことができる。
【0021】
式6、7を整理すると次式となる。
【数8】
【0022】
式3、式4、式8、式9を利用して式12、式13を整理すると次式となる。
【数9】
【0023】
従って、FHであるHi、H0及び姿勢角θは静的荷重Fi、F0及び荷重状態ロール剛性(スティフネス)SL、レール面積Ai、A0に支配されることがわかる。そして、動的姿勢角θ及び静的姿勢角θSがある場合、荷重状態及び無荷重状態ロール剛性SLがFHに影響を及ぼすことが分かる。従って、荷重をパラメータとした剛性の測定が重要である。また、FEM解析では、無荷重状態ロール剛性は比較的容易に計算することができるが、荷重状態ロール剛性の計算はかなり難しい。
【0024】
図6には、本発明に基づくフレキシャ荷重状態ロール剛性の測定原理を示すものである。フレキシャ角度が0degと、そうでない場合とを図6に(a)及び(b)として示した。
【0025】
フレキシャ角度が0degの場合のロードビーム荷重とトルクは次式となる。
【数10】
【0026】
ここで、fはロードビーム荷重(gf)、f1はフレキシャ角度0deg時の左側ロードセル荷重(gf)、f2はフレキシャ角度0deg時の右側ロードセル荷重(gf)、T0はフレキシャ角度0deg時のトルク(gf・mm)、L1はディンプルと左側荷重点との距離(mm)、L2はディンプルと右側荷重点との距離(mm)である。
【0027】
この場合において、トルク変動をあたえると、
【数11】
【0028】
ここで、Δfはトルクの変動を与えるための荷重変動(gf)、Taはフレキシャ角度θdeg時のトルク(gf・mm)である。
【0029】
従って、トルクの変動は次式により与えられる。
【数12】
【0030】
ここで、ΔTはトルクの変動(gf・mm)、L3(=L1+L2)は左右荷重点間の距離(mm)である。
よって、以上のように左右の荷重変動を等しく(偶力)してトルクの変動を与える場合、ロードビーム荷重は変動せず、L1とL2は必ずしも等しくする必要はない。
【0031】
他方、この時のフレキシャ角度は次式となる。
【数13】
【0032】
ここで、θはフレキシャ角度(deg)、h1は左側荷重点の変位(mm)、h2は右側荷重点の変位(mm)、h3=h1+h2(mm)である。
【0033】
従って、ねじりばね定数(剛性)は次式となる。
【数14】
ここで、Ktはねじりばね定数(gf・mm/deg)である。
【0034】
図7は、このような測定方法を実行するための装置の一例を示すもので、固定ベース11上には垂直線軸周りに回転可能に回転ステージ12が取り付けられ、該回転ステージ12上には、それに対してX軸方向及びY軸方向に、つまみ或いはアクチュエータ13a、14aにより変位可能なX軸ステージ13及びY軸ステージ14がそれぞれ設けられ、更にY軸ステージ14に対して前後傾斜方向に変位可能な傾斜ステージ15が設けられている。
【0035】
傾斜ステージ15上にはロードビーム1の基端部を保持するクランプ部16が設けられている。クランプ部16に保持されたロードビーム1の先端に設けられたフレキシャ2の遊端部には、左右方向に延在するロッド部材からなるフィクスチャ17が固定されている。フィクスチャ17の左右端に対しては、負荷ロッド18の先端が当接しており、該負荷ロッド18は、ロードセル20を介してZ軸ステージ21に固定されている。
【0036】
Z軸ステージ21は、固定フレーム19に対して、Z軸方向即ち上下方向に変位可能に支持されている。Z軸ステージ21の上下方向変位は、変位計22により検出される。尚、図面中には一方の負荷ロッド18についての構造のみが示されているが、容易に理解されるように両負荷ロッド18についてそれぞれ対称をなすように、それぞれZ軸ステージを含む2組の構造が備えられている。
【0037】
上記した構造体の前方には、固定ベース23に対してX軸方向に変位可能に支持されたX軸ステージ24が設けられ、該X軸ステージ24に立設された柱25には鏡筒26が固定され、フレキシャ2の先端部を拡大して、観測し得るようにしてある。それにより、鏡筒26によりディンプルに照準を合わせ、次に左右の負荷ロッド18がフィスクチャ17に当接する位置に照準が合うまで鏡筒26をX軸方向に変位させ、その変位量からh1、h2を求めることができる。
【0038】
左右の負荷ロッド18について得られた変位及び負荷の値は、制御ユニット28に送られ、(式21)の計算式により直ちに算出することができる。測定に際しては、先ず、負荷ロッド18がフィクスチャ17に当接するまで、負荷ロッド18をフレキシャ方向に駆動する。当接の瞬間は、ロードセル20の検出値の急変する時点として検出することができる。次に、左右の両負荷ロッド18を更に軸線方向に駆動し、所望のたわみ量(荷重値)に達したなら、各負荷ロッド18を逆方向に駆動させて、その時のΔf及びh3から、フレキシャ2のロール剛性を(式21)から計算することができる。
【0039】
このような構成によれば、両負荷ロッド18により加わる力の合力(f=f1+f2)を制御することにより、前記したようにフレキシャ2に加わる負荷を設定することができ、両負荷ロッド18により加わる力を同量(Δf)増減することにより、この力に対して加重されるような偶力を発生させることができる。このようにして、値を自由に設定可能な一定荷重状態に於けるロール剛性を、左右いずれの方向にも、しかも連続的に測定することが出来る。特に、L1=L2に調整すれば、h1=h2とすることが出来るために、測定がより容易となる。
【0040】
また、図8に示すように、フィクスチャ17をピッチ方向すなわち前後方向に取り付け、回転ステージ12を90°回転させることで、前記ロール剛性と同様にしてピッチ剛性を測定することができる。なお、フィクスチャ17の代わりに、図9に示すような十字形状のフィクスチャ29を用いれば、ロール並びにピッチの両方向の剛性を測定する際の作業性を高めることができる。
【0041】
図10は、このようにして得られた様々な荷重状態に於けるフレキシャの有効剛性(スティフネス)の実際の測定結果の一例を示す。その結果によれば、ディンプルに係わる荷重の増加に従って剛性が大きくなり、しかもヒステリシスを伴う非線形の度合が強くなることが判る。即ち、ディンプルに加わる荷重が小さい場合には、剛性が計算値に近く、かつヒステリシスが小さく、逆に荷重が大きい場合には、剛性が大きくなるばかりでなく、ヒステリシスが大きくなる。特に、ヒステリシスが大きくなると、FHの安定性が損なわれ、ディスク面に対する追従性が低下する傾向がある。これは、ディンプルに対する荷重のために、フレキシャ等が変形したり、ディンプルとフレキシャとの間の摩擦によるものと考えられる。
【0042】
また、今まで必ずしも計算値と実測値が一定せず、計算の検証が十分でなかったが、この装置による測定によって0.08〜0.4fgmm/degreeの広い範囲での検証が出来た。また、配線付きフレキシャなどの積層フレキシャについては、各層の物性が正確に得られていない。従って、本発明に基づく装置により実測することが出来、逆にフレキシャの物性値(銅やポリイミド)を推計することができる。
【0043】
【発明の効果】
このように、負荷即ちf(=f1+f2)の大きさに応じてロール及びピッチ剛性が大きく変化することを理解することが出来ることから、このような測定結果に基づき、フレキシャの作動条件を精密に最適化することができ、ハードディスクの高性能化及び高信頼性化に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された磁気ディスクサスペンションの構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1の要部を示す縦断面図である。
【図3】図1の要部を示す横断面図である。
【図4】ヘッド(スライダ)の静止時に於ける力の釣り合いを示す説明図である。
【図5】ヘッドのフライング時に於ける力の釣り合いを示す図4と同様の図である。
【図6】(a)及び(b)からなり、本発明に基づく計測装置の測定原理を説明するためのダイヤグラム図である。
【図7】本発明に基づく測定装置によるロール剛性の測定状況を一部破断して示す模式的斜視図である。
【図8】図7に示した測定装置によるピッチ剛性の測定状況を示す図7と同様の模式的斜視図である。
【図9】フィクスチャの変形例を示す斜視図である。
【図10】種々の荷重条件下におけるフレキシャの有効剛性(スティフネス)の実測結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ロードビーム
2 フレキシャ
3 舌片
4 ヘッド
5 ディンプル
11 固定ベース
12 回転ステージ
13 X軸ステージ
14 Y軸ステージ
15 傾斜ステージ
16 クランプ部
17 フイクスチャ
18 負荷ロッド
19 固定フレーム
20 ロードセル
21 Z軸ステージ
22 変位計
23 固定ベース
24 X軸ステージ
25 柱
26 鏡筒
28 制御ユニット
29 フィクスチャ
Claims (3)
- ロードビ−ムの先端部に取り付けられたフレキシャを有し、両部分のいずれかに設けられたディンプルを介して前記フレキシャを前記ロードビームに対して支持してなるハードディスク用サスペンションに於けるフレキシャの剛性を測定するための装置であって、
ロードビームの基端部を保持するクランプ部と、
前記ディンプルに対して左右あるいは前後に離隔した点にて前記フレキシャに負荷を加えるための第1及び第2の負荷ロッドと、
前記両ロッドを個別に軸線方向に変位させるための第1及び第2の駆動手段と、
前記両ロッドのそれぞれに作用する軸線方向力を検出する第1及び第2のロードセルと、
前記両ロッドのそれぞれの軸線方向変位を検出する第1及び第2の変位検出手段とを有することを特徴とする装置。 - 前記第1及び第2のロッドの前記フレキシャに対する作用点の、前記ディンプルからの距離を計測する手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記距離計測手段が、前記第1及び第2のロッドに正対して配置された鏡筒からなることを特徴とする請求項2に記載の装置。
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- 1997-02-14 JP JP03070997A patent/JP3614269B2/ja not_active Expired - Lifetime
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