JP3612741B2 - 乗用型田植機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動操縦が可能な乗用型田植機の操向制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗用型田植機において、植付作業を停止させることなく苗補給等を行うために、直進走行或は既植条に沿った倣い走行させる自動操縦機能を備えたものは公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の自動操縦機能を備えた乗用型田植機を路上走行中、誤って自動操縦に切り替えると、ハンドルによる操舵が不可能となり、機体が暴走して非常に危険である。本発明は、このような誤操作による事故を防止することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、走行車体の後方に苗載台の苗を圃場に植え付ける植付作業機を備え、エンジンの動力がトランスミッションを経由して、前輪および後輪へ走行出力として伝動されるとともに、PTO出力として植付作業機へ伝動され、前記トランスミッションへの入力部に主クラッチが、また、PTO出力の伝動系に植付クラッチが設けられ、さらに、操向モードを、操縦者のハンドル操作に基づいて機体の操向を行うマニュアルモードと、外部からの入力信号に基づいて自動的に機体の操向を行うオートモードとに切替え可能とした操向制御装置を備える乗用型田植機において、前記操向制御装置は、主クラッチと植付クラッチが共に入状態であることを感知手段により感知している状態で、かつ、操縦者が人為的にモード切り替えスイッチを切り替えた時、もしくは植付作業機における苗載台の苗が一定量以下になった時、もしくは施肥装置を設けて該施肥装置のホッパ内の肥料が一定量以下になった時、もしくは操縦者がハンドルから手を離すか操縦席から離れた時にマニュアルモードからオートモードへの切替えが行われる構成とすると共に、機体の水平を維持する水平制御装置によって機体を水平に維持できない場合は、マニュアルモードからオートモードへ切替不能に構成した乗用型田植機としたものである。
【0005】
【作用】
この乗用型田植機は、主クラッチと植付クラッチが共に入状態であることを感知手段により感知している状態で、かつ、操縦者が人為的にモード切り替えスイッチを切り替えた時、もしくは植付作業機における苗載台の苗が一定量以下になった時、もしくは施肥装置を設けて該施肥装置のホッパ内の肥料が一定量以下になった時、もしくは操縦者がハンドルから手を離すか操縦席から離れた時にマニュアルモードからオートモードへの切替えが行われるが、機体の水平を維持する水平制御装置によって機体を水平に維持できない場合は、マニュアルモードからオートモードへ切替不能になっている。
【0006】
【実施例】
以下、本発明を図面に表された実施例に基づいて説明する。
【0007】
図1は移動農機の1例である乗用型田植機を表している。この乗用型田植機1は、自走式の走行車体2の後方に昇降リンク装置3を介して植付作業機4を昇降自在に装着し、さらに走行車体2の後部に施肥装置5を装備してなる。
【0008】
図2に示すように、走行車体2は、左右各一対の前輪7,7および後輪8,8を備えた四輪車両として構成されている。操舵輪である前輪7,7は変向自在なファイナルケース7a,7aに支持され、そのファイナルケース7a,7aに固着したナックルアーム10,10の先端部と、機体の前部上方に設けたハンドル11に連係作動するピットマンアーム12の先端部とがタイロッド13,13によって連結されている。また、ファイナルケース7a,7aは上下に伸縮可能で、該ファイナルケースを伸縮させることにより、機体に対する前輪7,7の上下位置を調節することができるようになっている。ファイナルケース7a,7aの伸縮作動は該ファイナルケースに組み込んだ油圧シリンダ7b,7bで行う。一方、後輪8,8は上下揺動自在なチエンケース8a,8aに支持されており、該チエンケースを上下揺動させることにより、機体に対する後輪8,8の上下位置を調節することができるようになっている。チエンケース8a,8aの上下揺動は油圧シリンダ8b,8bで行う。すなわち、前輪7,7および後輪8,8は、それぞれ個別に機体に対する上下位置を調節することが可能で、それによって機体を前後および左右に傾動させられる。
【0009】
ハンドル11の後方には操縦席15が設置されている。そして、操縦席15の下側にエンジン16が搭載されていて、その動力が無段変速装置(HST)17とトランスミッション18を経由して、前輪7,7および後輪8,8へ走行出力として伝動されるとともに、PTO出力として植付作業機4および施肥装置5へ伝動される。トランスミッション18への入力部には主クラッチ20が設けられている。また、PTO出力の伝動系には植付クラッチ21が設けられている。
【0010】
前記主クラッチ20および植付クラッチ21は入状態にあるか切状態にあるかが電気的に検出されるようになっている。これにより、主クラッチ20および植付クラッチ21は作業走行中であることを感知する感知手段となっている。また、走行車体2には、機体の向きを検出する方位センサS1と、機体の前後傾斜を検出する前後傾斜センサS2と、機体の左右傾斜を検出する左右傾斜センサS3と、機体前方にある障害物までの距離を検出する距離センサS4とが設けられている。
【0011】
植付作業機4は、苗を載せて保持しその苗を所定の苗取り位置に1株づつ供給する苗載台23、該苗載台によって前記苗取り位置に供給される苗を水田表土面に植え付けてゆく植付条数分の植付装置24,…、整地用のフロート25,…等を備えている。苗載台23の苗が一定量以下になると、苗切れセンサS5がそれを検出し、苗切れランプL1によって操縦者に知らせる。なお、走行車体の機体前部の左右両側には、予備の苗を載せておく予備苗載台27,27が設けられている。
【0012】
施肥装置5は、各条共用のホッパ29内に貯蔵されている肥料を繰出器30,…によって下方に繰り出し、その繰り出された粒状物を施肥ホース31,…内を搬送し、植付条の側部近傍に設けた施肥ガイド32,…まで導く構成となっている。ホッパ29内の肥料が一定量以下になると、肥料切れセンサS6がそれを検出し、肥料切れランプL2によって操縦者に知らせる。
【0013】
この移動農機は、前記ハンドル11を人為操作して操縦するマニュアルモードによる走行とは別に、直進走行や倣い走行等の自動操縦するオートモードによる走行が可能で、その操向制御装置は図3に示すようになっている。
【0014】
まず、ステアリング操作系の構成は次のようになっている。すなわち、ハンドル11を取り付けたステアリングシャフト35の下端部は、電磁クラッチ36を介して、パワーステアリングユニット37の入力軸37aと操作力の伝達を入切可能に連結され、パワーステアリングユニット37の出力軸37bに前記ピットマンアーム12が取り付けられている。また、オートステアリング用の電動モータ38が設けられており、このモータ38の回転がギヤG1,G2を介してパワーステアリングユニット37の入力軸37aに伝えられるようになっている。
【0015】
そして、走行車体2に搭載したコントローラ40に、上記電磁クラッチ36および電動モータ38、モード切替スイッチ41、感知手段である前記主クラッチ20および植付クラッチ21が接続されている。モード切替スイッチ41は、マニュアルモードとオートモードに選択的に切り替えるスイッチであり、ハンドル11の下側の操作パネルに設けられている。さらに、コントローラ40には、前記方位センサS1、前後傾斜センサS2、左右傾斜センサS3、距離センサS4が接続されている。
【0016】
モード切替スイッチ41でマニュアルモードを選択すると、電磁クラッチ36を入にする信号がコントローラ40から出力されるとともに、電動モータ38には制御信号が出力されなくなる。よって、ハンドル11に加えられた回転操作力がパワーステアリングユニット37の入力軸37aに直接伝えられる。パワーステアリングユニット37によって増幅された操作力は、ピットマンアーム12、タイロッド13,13、ナックルアーム10,10の順に伝えられ、ハンドル11の操作量に応じた角度だけ前輪6,6が変向する。
【0017】
モード切替スイッチ41でオートモードを選択すると、電磁クラッチ36を切にする信号がコントローラ40から出力されるとともに、方位センサS1によって検出されたモード切替直前の機体の進路をメモリ40aが記憶し、その後逐次入力される方位センサS1からの方位信号とメモリ40aに記憶されている方位信号を比較し、両信号が一致するようにコントローラ40から電動モータ38へドライブ信号が出力される。すると、パワーステアリングユニット37の入力軸37aが回転駆動され、それに応じた角度だけ前輪6,6が変向する。よって、機体の進行方向が常に一定に維持された直進走行になる。このように、オートモードで直進制御するように構成するだけでなく、隣接する既植条と平行に機体を走行させる倣い制御するように構成してもよい。
【0018】
マニュアルモードからオートモードへの切替えは、主クラッチ20と植付クラッチ21が共に入状態にある場合のみ可能である。主クラッチ20が入状態であっても、植付クラッチ21が切状態である場合は、マニュアルモードからオートモードへ切替不能である。また、主クラッチ20が切状態である場合は、植付クラッチ21の状態に関係なくマニュアルモードからオートモードへ切替不能である。(表1参照)
【0019】
【表1】
【0020】
主クラッチ20と植付クラッチ21が共に入状態であるということは、植付走行中であることを意味し、その場合のみマニュアルモードからオートモードへの切替えが可能とすることにより、路上走行時に誤ってマニュアルモードからオートモードへ切り替え、機体が暴走するという事故を防止することができるようになっている。なお、主クラッチ20の入切状態をコントローラ40に入力する代わりに、走行車体に車速センサを設け、そのセンサの検出結果をコントローラ40に入力するようにしてもよい。(表2参照)
【0021】
【表2】
【0022】
オートモードで走行中、マニュアル操作が割り込むと、オートモードからマニュアルモードに切り替わるようになっている。オートモードからマニュアルモードに切り替わった後、ハンドル操作を中断してもオートモードには戻らない。このため、オートモードにして苗補給や肥料補給を行い、これらの作業が終わってハンドル操作を再開すると、自動的にマニュアルモードになる。ハンドル操作を中断するとオートモードに復帰するようになっていると、圃場内作業が終わった際に、モード切替スイッチをマニュアルモードに切り替え忘れたまま路上に出てしまうと、路上走行中、急にオートモードになることがある。しかしながら、本例は、ハンドル操作を中断してもオートモードには戻らないので、上記危険を回避できる。
【0023】
操縦者が人為的にモード切替スイッチ41をマニュアルモードからオートモードへ切り替えた場合の他に、苗切れセンサS4が苗切れを検出した時や肥料切れセンサS5が肥料切れを検出した時に、自動的にマニュアルモードからオートモードへ切り替わるようにしてもよい。苗切れや肥料切れが発生すると、操縦者はハンドル操作を中断して苗補給作業や肥料補給作業を行う。或は、操縦者がハンドル11から手を離した時や操縦席から離れると、自動的にマニュアルモードからオートモードへ切り替わるようにしてもよい。
【0024】
このようなマニュアルモードからオートモード或はオートモードからマニュアルモードへ切り替わる際、音声でそれを操縦者に知らせる告知手段42を設けておくと、操縦者が状況を正確に把握することができて良い。
【0025】
また、この動力農機1は機体の水平制御装置を備え、前後傾斜センサS2、左右傾斜センサS3の検出結果に応じて前記油圧シリンダ7b,7b,8b,8bに作動信号を出力し、機体の前後水平および左右水平を維持するように構成されている。このため、オートステアリング中に席を立って苗補給や肥料補給をしている時、或は高速走行時に機体水平が保たれ安全である。
【0026】
上記水平制御装置による制御によって機体を水平に維持できない場合は、マニュアルモードからオートモードへ切替不能になっている。これにより、傾斜した機体上での苗補給や肥料補給等の危険な作業を防止できる。なお、このような場合には、前記告知手段42を用いて音声で告知や警告を発するようにすると良い。例えば、「オートモードへ切替不能です」、「減速してください」、「停止してください」等。
【0027】
さらに、この動力農機1は自動減速・停止装置を備えている。この自動減速・停止装置は、オートモードで走行中、機体の傾きや向きが頻繁に変化する時は、HST17の変速アーム17aを操作する電動シリンダ43に作動信号を出力し、オートステアリングの充分な精度が得られる速度まで減速し、それでも機体の傾きや向きが発生する場合は走行を停止させるようになっている。機体の傾きや向きの頻度を計測する方法としては、前後傾斜センサS2、左右傾斜センサS3および方位センサS1の検出値が所定角度以上変動した回数をカウンタ40bでカウントし、そのカウント数が所定の設定時間あたりで所定回数以上になった場合に自動減速・停止指令を出すようにしている。
【0028】
さらに、オートモードで走行中、機体と畦等の障害物との距離が一定以下になったことを距離センサS4が検出すると自動減速し、さらに障害物に接近すると自動停止する。このため、苗補給等に気を取られて機体が畦等に近づいているのに気づかない場合でも、畦等に衝突することを防止できる。
【0029】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明にかかる乗用型田植機は、作業走行中に操縦者が操向を自動制御にして苗補給や肥料補給の作業を行うことができるので、実用上きわめて便利なものであるのみならず、路上走行時に誤ってマニュアルモードからオートモードへ切替操作を行っても、実際にはマニュアルモードからオートモードに切り替わらないので、機体の暴走を防止でき、安全性の高いものとなった。然も、機体の水平を維持する水平制御装置によって機体を水平に維持できない場合は、マニュアルモードからオートモードへ切替不能になっているので、傾斜した機体上での苗補給や肥料補給等の危険な作業を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】移動農機の側面図である。
【図2】走行車体の一部を省略した平面図である。
【図3】操向制御装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 移動農機
2 走行車体
4 植付作業機
5 施肥装置
11 ハンドル
20 主クラッチ(感知手段)
21 植付クラッチ(感知手段)
36 電磁クラッチ
37 パワーステアリングユニット
38 電動モータ
Claims (1)
- 走行車体の後方に苗載台の苗を圃場に植え付ける植付作業機を備え、エンジンの動力がトランスミッションを経由して、前輪および後輪へ走行出力として伝動されるとともに、PTO出力として植付作業機へ伝動され、前記トランスミッションへの入力部に主クラッチが、また、PTO出力の伝動系に植付クラッチが設けられ、さらに、操向モードを、操縦者のハンドル操作に基づいて機体の操向を行うマニュアルモードと、外部からの入力信号に基づいて自動的に機体の操向を行うオートモードとに切替え可能とした操向制御装置を備える乗用型田植機において、前記操向制御装置は、主クラッチと植付クラッチが共に入状態であることを感知手段により感知している状態で、かつ、操縦者が人為的にモード切り替えスイッチを切り替えた時、もしくは植付作業機における苗載台の苗が一定量以下になった時、もしくは施肥装置を設けて該施肥装置のホッパ内の肥料が一定量以下になった時、もしくは操縦者がハンドルから手を離すか操縦席から離れた時にマニュアルモードからオートモードへの切替えが行われる構成とすると共に、機体の水平を維持する水平制御装置によって機体を水平に維持できない場合は、マニュアルモードからオートモードへ切替不能に構成したことを特徴とする乗用型田植機。
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1994
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