JP3612557B2 - 物理量計測装置および物理量計測方法 - Google Patents

物理量計測装置および物理量計測方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,電界,磁界,応力,電流,電圧,温度,振動,圧力,音響,歪み等の物理現象の微小な物理量を検出することのできる物理量計測装置および物理量計測方法に関するものである。特に,量子相関性の強い光を使用してショットノイズレベル(量子雑音)以下の微小な物理量を検出するものである。
【0002】
【従来の技術】
光のファラデー効果,電気光学効果等を偏光が変化する光学効果を利用して,電界,磁界,応力,電流,電圧,温度,振動,圧力,音響,歪み等の物理量を検出できることは従来から知られている。以後,そのような計測物理量の例として磁界もしくは電界について代表的に説明する。
【0003】
図9(a),図9(b)は,ファラデー効果素子を使用した従来の磁界測定装置を示す。図9(a)は,ファラデー効果の説明図であり,図9(b)はファラデー効果を利用した磁界測定装置の構成である。
【0004】
図9(a),図9(b)において,101は偏光子である。垂直方向の偏光面をもっているものである。102はファラデー効果素子であって,印加された磁界の大きさに従って,ファラデー効果素子に入力される直線偏光の偏光面を回転させるものである。103は偏光子であって,水平方向の偏光面をもつものである。121は偏光子101を通過した直線偏光である。122はファラデー効果素子102を通過する過程で,角度θだけ回転した偏光である。123は偏光122が偏光子103を通過して得られた偏光122の水平方向成分である。
【0005】
100はレーザ光源である。104は光−電気変換素子である。105は増幅器である。106は出力装置である。
【0006】
図9(a),図9(b)の構成において,被測定磁界Hがファラデー効果素子102の光軸方向に平行に印加されている。レーザ光が偏光子101を通過すると,垂直偏光成分が通過し,直線偏光121が得られる。直線偏光121はファラデー効果素子102を通過する時に,被測定磁界Hの強さに比例した角度だけ回転し,偏光122が得られる。偏光122は水平偏光の偏光子103を通過して水平方向の成分をもつ偏光123が得られる。水平方向の偏光123は光−電気変換素子104に送られ,電気量に変換され,増幅器105で増幅される。その出力値からファラデー効果素子102での偏光面の回転量がわかる。出力装置106はその被測定磁界Hの大きさに応じた信号を出力する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の磁界測定装置は,磁界の大きさが小さいとファラデー効果素子での偏光の回転量が小さいので,レーザ光の雑音の影響などで正確な磁界の大きさを測定することができなかった。
【0008】
本発明は,微小な磁界等の物理現象の計測物理量(計測対象の物理量)を正確に測定することのできる物理量計測装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本出願人は,光パラメトリック発振器により安定で,高出力の量子相関性の高いコヒーレント光の発振に成功した。そこで,この高出力の安定性の高いコヒーレント光ビームを使用して,微小な物理量を検出できる物理量計測装置を開発した。
【0010】
図8は本発明で使用する光パラメトリック発振器を示す。図8において,80はポンプ光生成部であって,ポンプ光光源であり,YAGレーザとその第二高調波発生装置により構成されるものである。81はKTPの結晶である。82,83は凹面ミラーであって,凹面に部分反射膜84,85を形成したものである。
【0011】
図8の構成において,ポンプ光生成部80は,532nmの第二高調波を発生し,凹面ミラー82を介してKTP81に入射する。KTPの結晶81において,凹面ミラー82と83の間で,反射を繰り返し,パラメトリック過程によりシグナル光ωs とアイドラ光ωi が発生する。TYPEIIのKTPの場合,ωs ,ωi は偏光面が直交している。
【0012】
光パラメトリック発振器で発生したシグナル光とアイドラ光の間には強い量子相関性がある。そのようなビーム間の光振幅差の揺らぎは量子雑音以下になり,片方のビームに埋もれた量子雑音以下の情報は,光ビームの量子相関性を利用して外部に信号として取り出すことができる。すなわち,一方の光ビームに微小な計測物理量の信号が埋め込まれた場合,両者の差をとることにより,両者に含まれる相関性の強い量子雑音(ショットノイズ)は除去されるが一方の光ビームに埋め込まれた微小な計測物理量の信号は残される。そのため,量子相関性のある光ビームを使用することにより微小な物理量を検出することが可能になる。
【0013】
図1は,本発明の基本構成を示す図である。
図1(a)は本発明の基本構成を示す。
図1(a)において,1は光源部であって,2の光ビーム対生成部により,量子相関性の高い光ビーム対を生成するものである。
【0014】
20は計測部であって,微小な計測物理量を検出するものである。3は計測物理量検出部であって,計測物理量の情報が光ビームAに付加される。6は計測対象の物理量を表す。
【0015】
10は信号処理部であって,計測部からの光信号を電気信号に変換し,信号処理するものである。11は雑音除去部であって,計測部20から送られる量子相関性の高い,計測物理量の情報が付加された光ビームAと情報が付加されていない光ビームBを受光し,電気信号に変換して,光ビームAに含まれる雑音を除去し,計測物理量を取り出すものである。12’は出力部であって,電気信号に変換された信号を処理するものである。13は光−電気変換部である。
【0016】
図1(a)の構成の動作を説明する。
光源部1において,光ビーム対生成部2は量子相関性の高い光ビーム対(光ビームA,光ビームB)を生成する。計測部20において,計測物理量検出部3は量子相関性の高い光ビーム対の一方である光ビームAに計測物理量6の情報を付加する。例えば,微小な交番磁界で光ビームAを変調する。
【0017】
信号処理部10において,雑音除去部11は,光ビームAおよび光ビームBを受光し,光−電気変換部13でそれぞれ電気信号Aおよび電気信号Bに変換する。そして,電気信号Aと電気信号Bに含まれる量子雑音の量子相関性を利用して,例えば,電気信号Aと電気信号Bの差をとる等で光ビームAから変換した電気信号Aに含まれる量子雑音を除去する。光ビームAは量子雑音を除去されることにより計測物理量を表す信号が残される。そこで,出力部12’はその電気信号を処理し,計測物理量を表す電気信号を取り出すことにより計測物理量を検出することができる。
【0018】
図1(b),図1(c)は,本発明の微小な計測物理量の測定原理の説明図である。
図1(b)において,横軸は周波数であり,縦軸はノイズレベルを表す。Nはショットノイズレベルであり,光ビーム対をもとに変換した電気信号のもつノイズレベルである。Mは電気信号Aと電気信号Bの量子雑音を除去したあとのノイズレベルである。光ビームAは周波数Fの計測物理量Pの信号を持っている。
【0019】
図1(c)は光ビームAと光ビームBの光振幅差をとった後の信号のノイズレベルを表し,光ビームAに含まれる計測物理量の信号スペクトルである。
【0020】
図1(b)と図1(c)で示されるように,量子相関性の高い光ビーム対をもとに光ビームAと光ビームBについて光振幅差を取った場合には,光ビームAのショットノイズは除去され,スペクトルSが得られる。
【0021】
従って,この装置によって,ショットノイズレベル以下のような微小な計測物理量Pでも,光ビームAと光ビームBの量子相関性の高いことを利用して,光ビームAの雑音を除去することにより,図1(c)に示すように,微小な計測物理量Pの信号を取り出すことができる。その結果,微小な計測物理量を測定することができる。このように,本発明によれば,微小な計測物理量を測定することを可能にする。
【0022】
また,本発明によれば,量子相関性の高い光ビームAと光ビームBの双方がなければ,光ビームAに付加された計測物理量の情報は取り出せないので,計測物理量を秘密に信号処理部に送ることができる。そのため,計測物理量を離れた場所に秘密に送ることが可能になる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図2は本発明の実施の形態1を示す図である。本発明の実施の形態1は,光ビーム対の発生に光パラメトリック発振器を使用する場合を例として説明する。
【0024】
図2において,1は光源部である。2は光ビーム対生成部であって,例として光パラメトリック発振器を示す。21はポンプ光生成部であって,YAGレーザ装置である。本実施の形態ではその第二高調波(532nm)を利用する。22はλ/2波長板であり,ポンプ光生成部21から出力される光を減衰調整するものである。23は光アソレータ(ISO)である。24はλ/2波長板であり,光パラメトリック発振器へのポンプ光の偏光を結晶軸に対して調整するものである。
【0025】
光ビーム対生成部2(以後,光パラメトリック発振器2として説明する)において,26はKTPであり,TYPEIIのKTP結晶である。27は凹面ミラーである。光パラメトリック発振器2において,シグナル光ωs とアイドラ光ωi の光ビーム対が発生する。TYPEIIのKTPで構成した場合には,シグナル 光とアイドラ光の偏光は直交する。本実施例形態では,ωs ,ωi がほぼ同じ波長の1064nm近傍になるように結晶軸の角度を選んでいる。
【0026】
28はλ/2波長板であり,光パラメトリック発振器2の出力光の偏光面をPBS(29)に対して,角度調整するものである。
20は計測部である。29は偏光ビームスプリッタ(PBS)であって,互いに直交している光ビーム対のうちの一方(アイドラ光)を出射し,他方(シグナル光)を計測物理量検出素子30の側に導くものである。30は計測物理量検出素子であって,計測物理量6の情報をシグナル光に付加するものである。計測物理量検出素子30は,例えば,磁界測定のためにはファラデー効果素子等の磁気光学効果を利用した素子を使用する。あるいは電界測定であればポッケルス素子等の電界で偏光する素子を使用する。その他,音響,振動,ひずみ,温度等計測物理量に応じて偏光面が変化するものであれば目的に応じて使用することができる。計測物理量検出素子30は計測物理量6によりシグナル光の偏光を回転させる。31はPBSであって,交番磁界で回転した偏光の一定方向の成分変化を求めるものである。計測物理量検出素子30は計測部20から光ファイバーで接続したまま外部に引出し,被測定物の近くで測定するようにすることができる。あるいは,計測部自体の大きさを小型にして,計測部20の全体を被測定物の近くに置くようにしても良い。
【0027】
10は信号処理部である。32はフォトダイオードであって,受光された光ビームを電気信号に変換するものである。35はフォトダイオードであって,受光された光ビームを電気信号に変換するものである。33は増幅器であって,フォトダイオード32で変換された電気信号を増幅する低雑音増幅器である。34は増幅器であって,フォトダイオード35で変換された電気信号を増幅する低雑音増幅器である。
【0028】
53は差信号検出器であって,電気信号Aと電気信号Bとの振幅の差をとるものである。差信号検出器53は,差動回路であり,例えば,差動増幅器,あるいは180度ハイブリッドジャンクション等を使用する。54は増幅器であって,差信号検出器53の出力を増幅するものである。55はスペクトラムアナライザであって,差信号検出器53の出力のスペクトルを観測するものである。
【0029】
56はローカル発振器であって,増幅器54の出力信号と混合するための信号である。58はローパスフィルタであって,信号混合部で混合された信号のうちの低周波成分を通過させるものである。59はオシロスコープであって,ローパスフィルタを通過した計測物理量の信号を観測するものである。
【0030】
図2の構成の動作を説明する。
ポンプ光生成部21はレーザ光を発生する。その第二高調波成分(532nm)をλ/2波長板22,ISO(23(光アイソレータ)),λ/2波長板24,レンズ系25を介して,光パラメトリック発振器2に入射する。λ/2波長板22はポンプ光生成部21の発生する入射光を減衰調整してISO23に入射する。光パラメトリック発振器2において,ポンプ光ωP を入射することにより,KTP26の一端に形成された反射膜と凹面ミラー27との間で反射を繰り返し,光パラメトリック発振器によりシグナル光ωS とアイドラ光ωi が発生する。λ/2波長板24はポンプ光の偏光を調整する。
【0031】
光パラメトリック発振器2で用いる非線型結晶が,TYPEIIのKTP結晶の場合,シグナル光とアイドラ光は偏光面が互いに直交している。このような光に対しては,波長板28を用いて通過する光の偏光面の角度を調整することにより偏光ビームスプリッタ29でシグナル光とアイドラ光を分離することができる。
【0032】
PBS(29)に入射するシグナル光とアイドラ光の偏光面の角度が,PBS(29)においてシグナル光とアイドラ光が互いに直角な方向に出射されるような角度になるように,λ/2波長板28により偏光角度を調整する。その結果,PBS29に入射されたアイドラ光はPBS29で直角に曲げられ,信号処理部10に送られる。
【0033】
一方,シグナル光はPBS29を直進し,光ファイバにより計測物理量検出素子30に入射される。計測物理量検出素子30は,例えば,ファラデー効果素子であって,交番磁界の場合シグナル光の偏光面を変調する。計測物理量6で変調されたシグナル光はPBS31を通過して信号処理部に送られる。
【0034】
信号処理部10において,シグナル光はフォトダイオード32で電気信号Aに変換され,増幅器33で増幅される。また,アイドラ光は,フォトダイオード35で電気信号Bに変換され,増幅器34で増幅される。電気信号Aと電気信号Bは,差信号検出器53で振幅差が取られ,雑音が除去され,電気信号Aに含まれる計測物理量を表す信号が取り出される。
【0035】
差信号検出器53で取り出された,計測物理量を表す信号は増幅器54で増幅され,ローカル発振器56からのローカル信号と信号混合部57で周波数混合される。そして計測物理量の信号周波数とローカル発振器の周波数との差の信号成分がローパスフィルタ58により取り出され,計測物理量を表す信号が得られる。
【0036】
例えば,測定対象の計測物理量を4MHzの交番磁界とし,ローカル発振周波数を3.95MHzとするとローパスフィルタ58を50KHzの信号が通過し,オシロスコープで波形を観測することができる。
【0037】
なお,上記説明においては,光パラメトリック発振器2をTYPEIIの非線型結晶(KTP等)により構成し,PBS29によりシグナル光とアイドラ光を分離する場合について説明したが,光パラメトリック発振器2をTYPE Iの非線型結晶(LiNbO3 等)により構成した場合には,シグナル光とアイドラ光の偏光は同じ方向になる。そのため,PBS29により,シグナル光とアイドラ光を分離することができない。このような場合には,シグナル光とアイドラ光の周波数の違いを利用し,プリズム等を使用して分離する。あるいはシグナル光は通過するがアイドラ光は反射するような反射膜を形成したビームスプリッタあるいはフィルタにより分離する。
【0038】
非線型結晶として,上記実施の形態ではKTPを例として説明したが,本発明では,その他LiNbO3 ,KDP,Ba2 NaNb5 15,CO(NH2 2 ,BBO等が使用できる。また,ポンプ用光源も,YAGレーザ装置を使用する場合について説明したが,光ビーム対生成用非線型結晶に応じて,Nd3+:CaWO4 ,Nd3+:glass,ruby,Ar+ ,Ti:Sapphire等のレーザ装置が使用できる。
【0039】
図3は本発明の実施の形態2であって,ファラデー効果素子としてファラデーガラスを使用し,微小な交番磁界を検出する場合の構成を示す。
図3において,図2と共通の参照番号は共通部分を示す。また,図3の構成において,光源部1の構成は図2の場合と同様である。
計測部20において,29はPBSである。30は計測物理量検出素子であって,ファラデーガラス(例えはFR−5(商標))である。31はPBSである。
【0040】
信号処理部10において,32,35は光−電気変換素子(フォトダイオード)である。53は差信号検出器である。54は増幅器であって,差信号検出器53で得られた差信号を増幅するものである。55はスペクトラムアナライザである。
【0041】
図3の構成の動作を説明する。計測物理量検出素子30は微小交番磁界(Hac)を検出し,Hacの大きさに応じてファラデーガラスでシグナル光(計測物理量検出光)の偏光面が回転する。その計測物理量検出光がPBS31を通過すると,その回転量に応じて光振幅の変化が得られる。PBS31を通過した光を光−電気変換素子32に入力することにより,交番磁界の大きさに応じた電気信号を出力する。電気信号の処理で,光−電気変換素子32,35の出力を増幅する増幅器は図では省略されている。また,図3では,差信号検出器53の出力をスペクトラムアナライザで観測する構成としている。
【0042】
図4は,本発明の実施の形態2で検出した信号の例を示す。図4(a)はショットノイズレベルである。図4(b)は,量子相関性によりショットノイズ部分を除去したスペクトルである。
【0043】
図4は,4MHzの微小交番磁界を図3の構成で測定した場合の実験データである。横軸は周波数であり,左端は1.60MHzに対応し,右端は12.00MHzに対応する。本実施の形態2では,4MHzの交番磁界を印加しているので,図4(b)の4MHzに対応する位置に交番磁界の信号が生じている。
図4(b)からわかるように,通常の測定ではショットノイズレベル(図4(a)のレベル)で埋もれて検出てきないような低レベルの信号でも,本発明によれば,図4(b)のように,二つの光ビームの量子相関性を利用して検出することが可能になる。
【0044】
図5は,本発明の実施の形態3の電界計測の説明図である。
図5は,計測物理量検出素子としてポッケルス効果素子,もしくはカー効果素子等の電界により偏光面が回転する素子を使用して,電界を測定するものである。
【0045】
71は電気光学効果結晶(LiNbO3 等)であって,結晶に加わる電界により入射光の偏光面を回転させるものである。74は偏光子である。
y方向へ電気光学効果結晶に入射したシグナル光(直線偏光)は,周囲の電界強度の大きさにより偏光面が回転して,楕円偏光して出射される。偏光子74を通過する光は入射される楕円偏光の形により透過率が変わるので,その出射光の光強度は電界に応じて変わり,光強度変調される。
【0046】
本発明で利用できる計測物理量検出素子は,音響信号,圧力,歪み,温度変化等により偏光面が回転する素子を使用して,微小な音圧,振動,応力,歪み,温度変化等を検出することも可能である。
【0047】
図6は発明の実施の形態4を示す図である。図6は微小な直流磁界を測定する場合の構成を示す。
【0048】
図6において,図3と共通の参照番号は共通部分を示す。図6において,光源部1は図3の本発明の実施の形態2と同様であるので説明は省略する。信号処理部10も図3の本発明の実施の形態2と同様であるので,説明は省略する。
【0049】
計測部20において,29はPBSであり,光源部1から送られる光ビームを光ビームAと光ビームBに分離するものである。61はλ/2波長板である。62はEOM(電気光学変調素子)であって,印加電圧に応じて偏光面が回転するものである。63は交流電源であり,EOM62に交流電圧(例えば4MHz)を印加するものである。64はPBSであって,EOM62から出力される交流で変調された光ビームを分けるものである(偏光面はPBSに対して,45度の角度になるようにする)。65,66は反射鏡である。
【0050】
30は計測物理量検出素子であり,EOM62で変調されている光の偏光面を被検出対象の直流磁界Hdcの大きさに応じて,回転させるものである。31はPBSであって,計測物理量検出素子30からの光ビームと反射鏡65からの光ビームとを合成するものである。
【0051】
図6の動作を説明する。
PBS29で分離した光ビームの一方はλ/2波長板61でPBS64に対して45度の偏光方向に調整され,EOM62に入射される。分離した他方の光ビームは光−電気変換素子35に入射される。EOM62に入射した光ビームは交流電圧により変調され,電圧の向きと大きさに応じて偏光面が回転する。EOM62を通過した光ビームは,PBS64で分けられる。PBS64で分けられた光ビームの変調成分(例えば,4MHz)は分けられた光ビーム間で180度の位相差を持っている。
【0052】
反射鏡66で反射された光ビームは計測物理量検出素子30で直流磁界Hdcにより偏光面が回転され,PBS31に入射する。PBS31で反射鏡65で反射した光と計測物理量検出素子30で偏光面が回転した光が合成される。
【0053】
PBS64において,反射鏡65の側に進む光と反射鏡66の側に進む光ビームの変調成分は位相差が180度あるので,計測物理量検出素子30で磁界が印加されていなければ,PBS31で合成された光ビームに変調成分は現れないが,反射鏡66で反射した光ビームが磁界Hdcで偏光面が回転されている場合には,PBS31で合成される180度位相の異なる成分の大きさにアンバランスが生じ,PBS31で合成された光ビームに変調された成分(4MHz)が現れる。
【0054】
PBS31の出力光は光−電気変換素子32で電気信号に変換される。光−電気変換素子35と光−電気変換素子32の出力の差が差信号検出器53で得られ,光−電気変換素子35で変換された電気信号と光−電気変換素子32で変換された電気信号に含まれる量子相関性のショットノイズ成分が除去され,EOM62で変調された信号成分が現れ,その大きさは被測定磁場の大きさに応じて,振幅の大小が得られる。従って,スペクトラムアナライザ55でEOM62で変調された信号のスペクトルを観測することによりその有無および大きさにより,磁場Hdcの存在の有無,大きさを観測することができる。
【0055】
図7は,本発明の実施の形態5と実施の形態6を示す。
図7(a)は本発明の実施の形態5であり,発光素子Aと発光素子Bとにより量子相関性の高い光を生成するものである。
光パラメトリック発振器以外でも量子相関性の高い光を生成することができる。例えば,レーザダイオードあるいは発光ダイオードを複数個直列に接続しておき,安定度の極めて高い電流源を使用して駆動することにより直列に接続した発光素子から量子相関性のある光を発光することが可能である。
【0056】
図7(a)はこのように光ビーム対を発生させる構成を示す。95は発光素子Aであって,レーザダイオードもしくは発光ダイオードである。96は発光素子Bであって,レーザダイオードもしくは発光ダイオードである。97は電流源であり,ゆらぎの極めて小さい,安定度の高い電流源である。
【0057】
図7(b)は,本発明の実施の形態6であって,検出側装置と信号処理側装置を光ビームを一本にして送信する場合の構成を例示する。
【0058】
計測物理量の情報を持つ光ビームと情報をもたない光ビームを光源部1において合成し,一本の光ビームにより信号処理側に送信するものである。信号処理部10で光ビームを光分離し,分離した光をそれぞれ電気信号に変換する。そして,量子相関性を利用して量子雑音を除去し,計測物理量を表す信号を取り出すことができる。
【0059】
図7(b)で光源部1から信号処理部10への光伝送は偏光面保存光ファイバ等の伝送する光の偏光面がくずれないような光ファイバを使用する。
【0060】
図7(b)において,1は光源部である。2は光ビーム対生成部である。29は光分離器(図2のPBS29に同じ)であって,光ビーム対生成部2の発生する光ビームを光ビームAと光ビームBに分離するものである。29’は光合成器であって,計測物理量の情報をもつ光ビームAと光ビームBを合成して,一本の光ビームにするものである(例えば,PBSを使用する)。
【0061】
計測部20において,30は計測物理量検出素子であって,計測物理量で光ビームAの偏光の方向を変化させるものである。31は偏光子である。
10は信号処理部である。85は光分離部であり,受光した光ビーム91から,偏光A(92)と偏光B(93)を分離するものである。13は光−電気変換部Aであって,光ビームA(92)を電気信号Aに光−電気変換するものである。14は光−電気変換部Bであって,光ビームB(93)を電気信号Bに光−電気変換するものである。61,62はそれぞれ増幅器A,増幅器Bであって,それぞれ電気信号を増幅するものである。53は差信号検出器である。
【0062】
図7(b)の構成の動作を説明する。
光ビーム対生成部2は光ビームAと光ビームBの光ビーム対を生成する。光分離器29は一本の光ビームを光ビームAと光ビームBに分離する。計測物理量検出素子30は,計測物理量で光ビームA(92)の偏光の方向を回転させる。その後,偏光子31で,一方向の偏光成分が取り出される。光合成器29’は,計測物理量の情報をもつ光ビームAと光ビームBを一本の光ビーム91に合成する。信号処理部10は光ビームAと光ビームBを含む光ビーム91を受光する。光分離部85は光ビーム91を光ビームA(92)と光ビームB(93)に分離する。光−電気変換部A(13)は光ビームA(92)を電気信号Aに変換する。光−電気変換部B(14)は光ビームB(93)を電気信号Bに変換する。さらに,増幅器A(61)と増幅器B(62)でそれぞれ計測物理量の情報をもつ電気信号Aと情報をもたない電気信号Bを増幅する。差信号検出器53は電気信号Aと電気信号Bの振幅差をとり,量子雑音を除去する。差信号検出器53から量子雑音を除去された計測物理量の情報を含む電気信号が出力される。なお,図7(b)では,光ビーム対を光分離器で分離して2本の光ビームにし,一方を計測物理量検出素子に入力するようにしているが,光ビーム対を光分離しないで一本の光ビームのまま,計測物理量検出素子に入力し,一方の偏光(偏光A)に計測物理量の情報を乗せ,情報を乗せた偏光Aと偏光Bを含む一本の光ビームを信号処理部に送るようにしても良い。
【0063】
また,図7(b)では,光ビーム対生成部は光ビームAと光ビームBを含む一本の光ビームを生成し,光分離器で光分離するようにしているが,例えば,図7(a)のような装置構成で光ビームAと光ビームBの光ビーム対を生成すれば,光分離器29はなくても良い。
【0064】
上記においては,微小な電界および磁界を測定する場合について説明したが,本発明は,電界,磁界以外の応力,電流,電圧,温度,振動,圧力,音響,歪み等の物理現象の微小な物理量を,偏光が変化する光学的効果によりそれぞれの計測物理量を検出できる素子を使用することにより測定できるものである。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば,量子相関性をもつ光ビーム対の量子相関性を利用して,ショットノイズ(量子雑音)以下の微小な計測物理量を測定もしくは検出することができる。また,シグナル光とアイドラ光の両方の信号がなければ,計測物理量を取り出すことができないので,計測物理量を信号処理側に秘密に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2の実験データの例を示す図である。
【図5】本発明の電界を測定するための計測物理量検出素子の実施の形態3を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態4を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態5および実施の形態6を示す図である。
【図8】光パラメトリック発振器の例を示す図である。
【図9】従来の技術を示す図である。
【符号の説明】
1:光源部
2:光ビーム対生成部
3:計測物理量検出部
6:計測物理量
10:信号処理部
11:雑音除去部
12’:出力部
13:光−電気変換部

Claims (4)

  1. 量子相関性のある光ビームAと光ビームBよりなる光ビーム対を生成する光源部と,計測物理量を検出する計測部と,光ビームを入力して信号処理する信号処理部を備えた物理量計測装置において,
    光源部は光ビームAを該計測部に送信し,計測部は物理量検出素子を備え,該物理量検出素子は光源部から光ケーブルにより引き出されているものであって,光源部から離れたところにある被測定物を被測定物の近くで測定できるように構成され,該物理量検出素子は光ビームAを入力して計測物理量に基づいて得られる信号を光ビームAのショットノイズレベル以下の大きさとして光ビームAに付加し,光源部に該信号を秘密に送信するものであり,
    光源部は該光合成器を備えて,光ビームBと計測部から送られてくる光ビームAを合成し,一本の光ビームとして,信号処理部に送信するものであって,光ビームAもしくは光ビームBのみでは該信号を検出できないように信号処理部に送信するものであって,
    信号処理部は,入力光ビームを光ビームAと光ビームBに分離する光分離部を備え,光源部から送信される一本の光ビームを入力し,該光ビームを光ビームAと光ビームBに分離し,光ビームAを電気信号に変換する光−電気変換部Aと光ビームBを電気信号に変換する光−電気変換部Bと,光−電気変換部Aで光−電気変換された信号と光−電気変換部Bで光−電気変換された信号の差をとり,それぞれの信号に含まれる雑音の量子相関性を利用して雑音を除去することにより計測物理量を出力する信号処理部とを備え,計測物理量に基づく信号を秘密に送信するものであることを特徴とする物理量計測装置。
  2. 光源部は,光ビームAを発光する発光素子Aと光ビームBを発光する発光素子Bを備え,光ビームAと光ビームBは量子相関性があることを特徴とする請求項1に記載の物理量計測装置。
  3. 量子相関性のある光ビームAと光ビームBよりなる光ビーム対を生成する光源部と,計測物理量を検出する計測部と,光ビームを入力して信号処理する信号処理部を備えた物理量を計測する物理量計測方法において,
    光源部は該光ビームAを計測部に送信し,計測部は物理量検出素子を備え,該物理量検出素子は光源部から光ケーブルにより引き出されているものであって,光源部から離れたところにある被測定物を被測定物の近くで測定できるように構成され,該物理量検出素子は光ビームAを入力して計測物理量に基づいて得られる信号を光ビームAのショットノイズレベル以下の大きさとして光ビームAに付加し,光源部に該信号を秘密に送信し,
    光源部は光合成器により光ビームBと計測部から送られてくる計測物理量に基づく情報を付加した光ビームAを合成し,一本の光ビームとして電気信号処理部に送信し,
    電気信号処理部は,入力光ビームを光ビームAと光ビームBに分離する光分離部を備え,光源部から送信される一本の光ビームを入力して,該光ビームを光ビームAと光ビームBに分離し,光ビームAを電気信号に変換する光−電気変換部Aおよび光ビームBを電気信号に変換する光−電気変換部Bとを備え,
    光−電気変換部Aにおいて光ビームAを光−電気変換し,該光−電気変換部Bにおいて光ビームBを光−電気変換し,それぞれの信号の差をとり,それぞれの信号に含まれる雑音の量子相関性を利用して雑音を除去することにより計測物理量を出力し,計測物理量に基づく信号を秘密に送信することを特徴とする物理量計測方法。
  4. 光源部は,光ビームAを発光する発光素子Aと光ビームBを発光する発光素子Bを備え,光ビームAと光ビームBは量子相関性があることを特徴とする請求項3に記載の物理量計測方法。
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