JP3612302B2 - 水処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧水、医薬品の製造、半導体の製造、洗浄等の精製水を利用する分野における水の減菌または殺菌装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
化粧水、医薬品、洗浄水等で使用する精製水を製造するとき、多量の原水を使用する。この原水中には、細菌などの微生物が、無数に存在している。この微生物の存在は、化粧水、洗浄水等の製造において、反応を阻害し、製品の品質の分止まりを悪くしたり、悪臭、腐乱の原因になったりと、様々な問題を引き起こしている。このため、減菌又は殺菌された精製水の製造方法及び製造装置が、種々用いられている。例えば、精製水を製造する処理方法には、蒸留方法、イオン交換法、ろ過膜法などがある。
【0003】
原水は、一定圧力の下で一定の沸点を示して沸騰する。そこで、物質を加熱して蒸気の状態にして、別の場所に導き、ここで冷却して再びもとの液体の状態に戻す方法を蒸留方法いう。これにより、原水を精製することができる。蒸留方法では、効率よく精製水を取り出すために、減圧下にすることが好ましい。
【0004】
固体又は液体中のイオンがそれと接する外部溶液中にある同符号のイオンと交換する方法をイオン交換法という。イオン交換法は、陽イオン交換樹脂、及び、陰イオン交換樹脂の少なくともいずれか一方を詰めたガラス管に、原水を上方から流し込み、下方から流出してくる水を捕集して精製水とする方法である。イオン交換法では、簡単に陽イオン及び陰イオンを捕集することができ、連続操業、再生可能であるなどの特徴がある。
【0005】
膜の孔径によって水や低分子量の塩類を通し、分子量の高い物質と分離する方法をろ過膜法という。ろ過の細孔の径と溶質の粒子径等によって、ろ過膜の孔径が決まる。ろ過膜法では、ろ過膜の孔径によって、微生物を分離することができ、微生物の減菌を図ることが可能である
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の精製水の製造方法では、以下の問題点がある。
【0007】
蒸留方法では、減圧下にすると、圧力容器を用いる必要があったり、減圧にする装置が必要であったりと、設備費用が高くなっている、また、連続操業がし難く、大量の精製水を効率よく取り出すことが困難である。
【0008】
イオン交換法では、細菌などの微生物を減菌又は殺菌することまではできない。
【0009】
ろ過膜法では、孔径より小さい微生物は、ろ過膜をすり抜けてしまうため、完全に分離することはできない。膜の孔径が微細なものを使用することも可能であるが、処理容量、処理時間などの観点からも、望ましいものとはいえない。
【0010】
そこで、本発明は、原水中に含有する微生物を減菌又は殺菌し、良質の精製水を製造することができる製造装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、本発明は、微生物を含有する原水を減菌または殺菌処理するための水処理装置において、中空の金属パイプと、前記金属パイプの外周に非接触の状態で巻き付けられている加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を供給する高周波誘導加熱装置と、を少なくとも備え、前記金属パイプの中空部分には、前記原水が流されており、前記加熱コイルには、高周波電流が供給されていることを特徴とする水処理装置を提供する。
【0012】
これにより、原水中に含有する微生物の減菌又は殺菌を図り、一定品質を保持する精製水を製造することができる。
【0013】
金属パイプの外周に巻き付けている加熱コイルに、高周波誘導加熱装置から高周波電流を供給すると、磁力線が発生し、金属パイプに誘導電流が流れて、金属パイプ中にジュール熱が発生する。すなわち、電磁誘導によって、金属パイプ及び金属パイプ中のものに、電気エネルギーの形でエネルギーが伝達されたことになる。このように電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、利用する方法を誘導加熱という。これは、磁力線(コイル)中に置かれた導電性物体(金属パイプ)に生ずる渦電流損または磁気ヒステリシスにより加熱するものである。直接式は導電性被加熱物自身の中に生ずる渦電流損または磁気ヒステリシスにより加熱する方式であり、間接式は、絶縁性の被加熱物を導電性の容器に納め、容器中に生ずる渦電流損または磁気ヒステリシスによる発熱を主として伝導によって加熱する方式である。
【0014】
この高周波誘導加熱装置を用いる水処理方法は、被加熱物である原水に直接、紫外線や超音波等を照射して殺菌を行うものではない。
【0015】
高周波電流は、周波数が高いと、金属の表皮効果で金属パイプの表面付近で電流が集中し、周波数が低いと、金属パイプの中心付近まで浸透する。
【0016】
加熱コイルは、金属パイプの外周に載置することが好ましい。これにより加熱コイルと金属パイプとを無接触の状態のまま、電気エネルギーを熱エネルギーに変換できるため、スパーク等により金属パイプ表面が傷つかない。
【0017】
加熱コイルを金属パイプの外周に載置する場合には、金属パイプの外周面にわずかな距離を保ち、加熱コイルを巻き付ける方法がある。従って、金属パイプと加熱コイルとは、無接触の状態である。また、金属パイプの外周に、コイル状に巻かれた加熱コイルを1又は2以上、載置する方法もある。このときも、金属パイプと加熱コイルとは、無接触の状態である。
【0019】
以上のことから、本発明の水処理装置を使用することにより、原水中に含有する微生物の減菌又は殺菌を図り、良質の精製水を製造することができるという技術的意義を有する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下、説明する。但し、本発明に係る水処理装置は、本実施の形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明に係る水処理装置10を示す概略図である。図2は、加熱コイル12と金属パイプ20との断面図である。
【0022】
水処理装置10は、高周波誘導加熱装置11と、高周波誘導加熱装置11に接続されている加熱コイル12と、加熱コイル12を巻き付けている金属パイプ20と、精製水31を貯蔵する貯水タンク40と、貯水タンク40に貯蔵される精製水31を汲み出すための容器50と、から構成されている。金属パイプ20中には、原水30が流されており、その原水30は、加熱コイル12により殺菌処理され精製水31となる。
【0023】
高周波誘導加熱装置11は、加熱コイル12を備えており、高周波誘導加熱装置11内で変換した高周波電流を加熱コイル12に供給する。
【0024】
本発明の実施の形態で使用する高周波誘導加熱装置11は、昭和機械商事株式会社製のものや、株式会社ミヤデン製のもの等を使用することができる。
【0025】
高周波誘導加熱装置11は、交流電源(図示しない)を使用している。
【0026】
高周波誘導加熱装置11は、受電電圧200/220V、公称出力10〜80KW、発信周波数5〜300KHz、受電容量10〜100KVA程度のものを使用する。高周波電流とは、一般に、周波数が100Hz以上の電流である。
【0027】
加熱コイル12は、高周波誘導加熱装置11と連結され、高周波誘導加熱装置11内で変換した高周波電流が、供給されてくる。高周波電流を効率よく加熱コイル12に伝達するため、加熱コイル12は、純銀製のものが好ましいが、コスト面から、銅製、鉄製、銀メッキを施した鉄製なども使用できる。
【0028】
図2は、加熱コイル12と金属パイプ20との断面図である。
【0029】
金属パイプ20の外周に巻き付けている加熱コイル12に、高周波誘導加熱装置11から高周波電流を供給すると、磁力線が発生し、金属パイプ20に誘導電流が流れて、金属パイプ20中にジュール熱が発生する。
【0030】
加熱コイル12に交流電流である高周波電流が流れる。この高周波電流は、金属パイプ20内に、誘導電流を生じさせる。この誘導電流が、磁力線を発生させる。これにより、金属パイプ20内に誘導電流が流れて、ジュール熱が発生することになる。
【0031】
金属パイプ20は、温度むらなく常に100〜1000℃以上の高温に保たれる。温度むらが生じないのは、加熱コイル12と、金属パイプ20とが、接触しておらず、金属パイプ20内に生じた誘導電流によって金属パイプ20全体が加熱されるためである。これにより、金属パイプ20に流れる原水30は、減菌又は殺菌され、精製水31を製造することができる。
【0032】
高周波電流の周波数を調整することにより、金属パイプ20内の浸透度を調節することができる。高周波電流は、周波数が高いと、金属の表皮効果で金属パイプ20の表面付近に電流が集中し、周波数が低いと、金属パイプ20の中心付近まで浸透する。
【0033】
金属パイプ20は、加熱コイル12と、接触しないように、金属パイプ20の外周面に巻き付ける。このときの金属パイプ20の外周面と加熱コイル12との距離は、所望により調節することができるが、2〜5mm程度が好ましい。
【0034】
金属パイプ20は、熱伝導性の観点から、銀製、鉄製、鉄鋼製のものが好ましいが、これに限定されるものではない。金属パイプ20は、パイプが中空のものを使用した。金属パイプ20の肉厚は、強度、熱伝導度等の観点から、5〜10mm程度が好ましい。この金属パイプ20の中空には、原水30を流している。
【0035】
金属パイプ20は、加熱コイル12が巻き付けられている箇所のみ、銀製のものを使用し、加熱コイル12が巻き付けられていない箇所は、ステンレス製のものを使用し、金属パイプ20と連結して、水処理装置10に使用することが好ましい。加熱コイル12より常に加熱されている金属パイプ20のみの取り替えが容易に行えるからである。
【0036】
原水30は、有機物や細菌などの微生物を含有している。原水30は、常温でもよいが、温水の方が好ましい。高周波誘導加熱装置11にて、加熱処理するため、予め加熱されている方が、加熱効率が良いからである。また、原水30の温度、流速を調整することにより、原水30を蒸発させるか、蒸発させず高温処理させるか、を適宜選択することができる。
【0037】
例えば、本実施の形態で使用する水処理装置10による処理水量は、3.0〜10m3/Hrである。
【0038】
水処理装置10の動作を説明する。
【0039】
金属パイプ20に、非接触の状態で加熱コイル12が巻き付けられており、加熱コイル12には、高周波誘導加熱装置11から高周波電流が供給されている。高周波電流が供給されると、ほぼ瞬時に金属パイプ20にジュール熱が発生し、金属パイプ20内が加熱される。金属パイプ20は、常に100〜1000℃以上に保たれており、高周波誘導加熱装置11にて金属パイプ20内の温度調節が行われている。
【0040】
30〜50℃程度に温めた原水30を金属パイプ20に供給する。原水30の水量は減菌又は殺菌の程度、金属パイプ20の太さ、長さ、加熱度合い等により、適宜変更することが好ましい。原水30の流速は、1.0〜10.0m/secが好ましい。金属パイプ20に流れていた原水30は、金属パイプ20内で、加熱され、減菌又は殺菌が行われる。従って、金属パイプ20内で原水30は、精製水31に変換される。原水30が金属パイプ20で、加熱された後、原水30から変換された精製水31が、金属パイプ20から流出していくときの水温は50℃〜100℃程度が好ましい。金属パイプ20から流出した精製水31は、金属パイプ20と貯水タンク40とをつなぐ連結管を通って、貯水タンク40に送られる。貯水タンク40内で、貯蔵した精製水31は、ポット50に詰められて、化粧水、医薬品の製造、半導体の製造、洗浄等に使用される。以上により、精製水31を製造することができる。
【0041】
【実施例1】
図4は、実施例1に係る水処理装置60を示す概略図である。図5は、実施例1に係る加熱コイル70と金属パイプ20とを示す概略図である。図3(a)は、実施例1における加熱コイル70と金属パイプ20との断面図であり、図3(b)は、実施例1における加熱コイル70と金属パイプ20との断面に対する浸透度を示すグラフである。
【0042】
水処理装置60は、高周波誘導加熱装置11と、高周波誘導加熱装置11に備える2つの加熱コイル70と、加熱コイル70に挟まれている金属パイプ20と、貯水タンク40と、精製水31を冷却する冷却装置80と、から構成されている。
【0043】
金属パイプ20の外周面に、加熱コイル70を2つ載置する。この加熱コイル70の個数は2つに限られるものではなく、1又は3以上でも良い。加熱コイル70は、金属パイプ20を挟んで対向するように、載置する。加熱コイル70と、金属パイプ20との間は、2〜5mm程度、接触しないように載置することが好ましい。加熱コイル70の原材料、寸法等は、実施の形態で示したものを使用する。
【0044】
図5に示すように、加熱コイル70に高周波誘導加熱装置11からの高周波電流を供給する。加熱コイル70に高周波電流が供給されると、加熱コイル70に磁力線が発生する。これは、加熱コイル70のコイル内中心を通り、さらにコイルの外周面にそって、磁力線を形成する。この磁力線を形成することにより、金属パイプ20内にジュール熱が発生する。ジュール熱の発生により、金属パイプ20内を通過する原水30の減菌又は殺菌を行うことができる。
【0045】
金属パイプ20からつながる連結管には、冷却装置80を取り付けている。金属パイプ20内で発生した精製水31の蒸気を冷却するためである。
【0046】
実施例1に係る水処理装置60の動作を説明する。
【0047】
水処理装置10と同様の箇所は、省略する。
【0048】
高周波誘導加熱装置11から、加熱コイル70に高周波電流を供給する。加熱コイル70は、高周波電流の供給をうけ、金属パイプ20内に、磁力線を形成し、金属パイプ20内にジュール熱を発生させる。このジュール熱により、金属パイプ20内を通過する原水30の減菌又は殺菌を行い、精製水31を製造する。
【0049】
ここで金属パイプ20は、100〜1000℃以上に加熱されている。原水30は、流速1.0〜10.0m/secで、金属パイプ20から連結管を通り、冷却装置80、貯水タンク40へと導かれる。
【0050】
金属パイプ20内で、精製水31を蒸発させる。精製水31を加熱処理することにより確実に殺菌を行うためである。金属パイプ20内で発生する精製水31の蒸気は、連結管を通って、冷却装置80へと送られる。冷却装置80へ送られてきた蒸気は、冷却装置80より冷却され、液体の精製水31となり、貯水タンク40へと送られる。貯水タンク40に貯蔵された精製水31は、化粧水、医薬品の製造等に使用されるため、ポット50に詰められる。
【0051】
これにより、微生物を含有する原水30の減菌又は殺菌処理が可能となり、良質の精製水31を得ることができる。
【0052】
【発明の効果】
以上のことから、本発明の水処理装置を使用することにより、原水中に含有する微生物の減菌又は殺菌を図り、良質の精製水を製造することができる。
【0053】
高周波誘導加熱装置を用いる高周波電流による誘導加熱は、高速加熱と高温加熱を可能にするという特徴を持つ。これは、被加熱材自身に高密度の熱を発生することができるからである。
【0054】
無酸化加熱であるという特徴を持つ。これにより真空中でも加熱ができるため、殺菌処理に適している。また、活性金属や特殊金属の加熱に有効である。さらに、加熱に酸素、水素、炭素等を必要としないことから、燃焼生成物が生じないため、極めて清潔である。
【0055】
排ガスを生じず、内部から加熱可能であるという特徴を持つ。断熱性を高めることが容易である。加熱部分の容積を小さくすることができ、熱容量を小さくすることもできる。高速加熱が可能であるので、連続操業、バッチ操業のいずれの場合でも、高い加熱効率を持つことができる。
【0056】
無接触加熱であり、接点が不必要でスパーク等により材料表面を傷つけないという特徴がある。また、損失は、加熱コイルのみであるので、効率が高い。これらは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するからである。
【0057】
磁力線の配置と周波数を適当に選定することにより被加熱物の表面のみの加熱、または被加熱物全体の加熱を行うことができるという特徴を持つ。不必要な部分がないので、熱効率がよく、周波数を選択することにより必要な深さまで加熱することができる。
【0058】
温度制御が容易で迅速である。これは、電源電圧の制御で温度を制御することができることによる。
【0059】
被加熱物と電極のような電気的接続をすることなく、被加熱物内部へ電流を通じ加熱できるので、熱の絶縁が容易となるとういう特徴を持つ。
【0060】
直接加熱においては、急速加熱、溶湯の自己撹拌作用による均一加熱も容易にできる。
【0061】
高周波誘導加熱装置は、以上のような特徴を持つ。この特徴を利用して、本発明は、良質の精製水を製造するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水処理装置を示す概略図である。
【図2】加熱コイルと金属パイプとの断面図である。
【図3】(a)は、加熱コイルと金属パイプとの断面図である。(b)は、加熱コイルと金属パイプとの断面に対する浸透度を示すグラフである。
【図4】実施例1に係る水処理装置を示す概略図である。
【図5】実施例1に係る加熱コイルと金属パイプとを示す概略図である。
【符号の説明】
10 水処理装置
11 高周波誘導加熱装置
12 加熱コイル
20 金属パイプ
30 原水
31 精製水
40 貯水タンク
50 ポット
60 水処理装置
70 加熱コイル
80 冷却装置
Claims (2)
- 微生物を含有する原水を減菌または殺菌処理するための水処理装置において、中空の金属パイプと、前記金属パイプの外周に非接触の状態で巻き付けられている加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を供給する高周波誘導加熱装置と、を少なくとも備え、前記金属パイプの中空部分には、前記原水が流されており、前記加熱コイルには、高周波電流が供給されていることを特徴とする水処理装置。
- 微生物を含有する原水を減菌または殺菌処理するための水処理装置において、中空の金属パイプと、前記金属パイプの外周に、前記金属パイプを間に挟んで対向するように、前記金属パイプとは非接触の状態で載置されている一対の加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を供給する高周波誘導加熱装置と、を少なくとも備え、前記金属パイプの中空部分には、前記原水が流されており、前記加熱コイルには、高周波電流が供給されていることを特徴とする水処理装置。
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