JP3610327B2 - ベルト摩擦係数測定装置及びベルト荷重測定用プーリ - Google Patents

ベルト摩擦係数測定装置及びベルト荷重測定用プーリ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動走行時にベルトとプーリに生じる摩擦係数を測定するために用いるベルト摩擦係数測定装置、及び駆動走行時のベルトによりプーリに付加される荷重を測定するために用いるベルト荷重測定用プーリに関し、特に平ベルト、Vベルト、Vリブベルト等のベルトの径方向荷重(面圧)及び周方向荷重(摩擦力)を測定し、摩擦係数を即座に算出すことができるベルト摩擦係数測定装置及びベルト荷重測定用プーリに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、駆動走行時のベルトとプーリに生じる摩擦係数を測定するベルト摩擦係数測定装置では、所定の長さに切断されたベルトを用いるデッドウェイト式の測定装置を用いる場合は特開平9−243482のように、張り側の張力(T1)、ゆるみ側の張力(即ち、重錘による張力:W)及びベルト巻き付き角度(θ)を測定することによって、オイラーの公式(μ=(1/α)×ln(T1/W))より摩擦係数を算出する必要があった。また、無端状態のベルトを用いる連続式の測定装置を用いる場合も特開2000−105189のように、張り側とゆるみ側の張力及びベルト巻き付き角度を測定することによって、オイラーの公式より摩擦係数を算出する必要があった。
【0003】
更に、従来の摩擦係数の測定は、張り側とゆるみ側の張力を測定し、その張力比から算出しているため、プーリ回転位置による摩擦係数の変化があったとしても検出することはできなかった。
【0004】
面圧(径方向荷重)は、スリット加工を行い、径方向の荷重を検知する歪みゲージを貼付したプーリにより測定されていた。ベルトに接触するスリットは面圧検出部のみであり、一つのプーリによって面圧と摩擦力の二つの力を同時に測定することはできなかった。
【0005】
また、駆動走行時にベルトがプーリに及ぼす力(荷重)を測定するには、ベルト荷重測定用プーリにスリット加工を行い、歪みゲージにより歪みを検出するのが一般的であった。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、従来のように張り側とゆるみ側の張力比から摩擦係数を算出するのではなく、ベルト荷重測定用プーリによってベルトの面圧と摩擦力をプーリの接触部で同時に測定することにより、即座にプーリの回転位置に応じた摩擦係数が算出することができるベルト摩擦係数測定装置、及びそれに用いられるベルト荷重測定用プーリを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の請求項1に記載のベルト摩擦係数測定装置は、プーリの周面とその周面に巻き掛けられたベルトとの摩擦係数を測定する摩擦係数測定装置において、前記ベルトが巻き掛けられる少なくとも一つのプーリと、前記プーリに巻き掛けられた前記ベルトに張力を付与する張力付与手段と、このプーリを回転駆動させる駆動手段と、前記プーリの回転位置を検出するエンコーダーと、前記周面の一部を含みその両面で開口するように前記プーリをスリット加工することにより形成される受け片に設けられ、回転駆動される前記プーリと前記ベルトとの滑りに起因して、前記ベルトが前記プーリに及ぼす周方向荷重を検出する第1検出部と、前記受け片に設けられ、又は、前記受け片に近接し前記周面の一部を含みその両面で開口するように前記プーリをスリット加工することにより形成される第2受け片に設けられ、前記ベルトが前記プーリに及ぼす径方向荷重を検出する第2検出部と、前記第1検出部からの検出信号と前記第2検出部からの検出信号とを、前記エンコーダーにより検出した前記プーリの回転位置に応じて入力させ、これら信号に基づいて前記プーリの回転位置に応じた摩擦係数を演算する演算手段と、を備えてなることを特徴としている。
【0008】
この請求項1の構成によると、ベルトが巻き掛けられる一つのプーリ(ベルト荷重測定用プーリ)において、第1検出部により周方向荷重を検出し、同時に第2検出部により径方向荷重を検出することができるため、摩擦係数を即座に算出することができる。また、エンコーダーにより検出したプーリの回転位置に応じて当該検出信号を入力させることにより、プーリの回転位置に応じた摩擦係数を演算することができる。
【0009】
請求項2に記載のベルト荷重測定用プーリは、プーリ周面に巻き掛けられたベルトが前記周面に及ぼす荷重を検出するベルト荷重測定用プーリであって、前記周面の一部を含んで形成され、前記ベルトが前記周面に及ぼす周方向荷重及び径方向荷重を受ける受け片と、この受け片から径方向に延びて前記周方向荷重を受けて撓む第1支持梁と、この第1支持梁の端から第1支持梁と交叉する方向に延び、その両端が前記プーリに支持され前記径方向荷重を受けて撓む第2支持梁と、前記第1支持梁の変位を検出する第1歪みゲージと、前記第2支持梁の変位を検出する第2歪みゲージとを備えてなることを特徴としている。
【0010】
この請求項2の構成によると、第1支持梁に貼付された第1歪みゲージにより周方向荷重を検出することができ、また、第2支持梁に貼付した第2歪みゲージにより径方向荷重を検出することができるため、一つのベルト荷重測定用プーリが有する共用の受け片により、プーリとベルトの接触面からベルトの周方向荷重と径方向荷重を同時に測定することができ、摩擦係数を即座に算出することができる。
【0011】
請求項3に記載のベルト荷重測定用プーリは、請求項2に記載のベルト荷重測定用プーリであって、前記第1歪みゲージは、前記第1支持梁の前記端付近に設けられ、前記第2歪みゲージは、前記第2支持梁の前記両端付近に設けられていることを特徴としている。
【0012】
この請求項3の構成によると、ベルトがプーリ周面に及ぼす荷重により受け片が周方向に滑ることによって第1支持梁の端付近が撓む変位を、周方向荷重を検出する第1歪みゲージにより測定することができる。また、同時に、ベルトがプーリ周面に及ぼす荷重により受け片が径方向に押圧される押圧力に比例して第2支持梁の両端付近が撓む変位を、径方向荷重を検出するための第2歪みゲージにより測定することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明のベルト摩擦係数測定装置及びベルト荷重測定用プーリの一実施形態例について説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るベルト摩擦係数測定装置の実施形態の一例を示したもので、(a)はベルト摩擦係数測定装置の概略図、(b)はプーリの周面に設けられた第1検出部及び第2検出部の概略図である。
【0015】
図1(a)に示すように、ベルト摩擦係数測定装置1は、ベルト2と、張力付与手段3と、駆動手段Mと、演算手段4と、プーリ10と、を備えてなる。また、ここではデッドウェイト式によるベルト摩擦係数測定装置1を示している。
【0016】
ベルト2は、図1(a)に示すように、所定の長さに切断され、プーリ10に巻き掛けてある。張力付与手段3は、重錘3aと、フレーム3cとを有しており、ベルト2の一方の端部に重錘3aを取り付け、ベルト2のもう一方の端部をフレーム3cに固定し、ベルト2に張力を付与することによりプーリ10周辺にベルト荷重が作用するようにしてある。駆動手段Mは、減速機付のモーターを用いて、プーリ10を所定の回転数で回転させる。
【0017】
プーリ10は、図1(b)に示すように、第1検出部10aと、第2検出部10bを有する。第1検出部10aは、プーリ10とベルト2の滑りに起因して、ベルト2がプーリ10に及ぼす周方向荷重を検出する。第2検出部10bは、第1検出部10aと荷重受け片12を共用するように一体に設けられている。また、第2検出部10bは、ベルト2がプーリ10に及ぼす径方向荷重を検出する。
【0018】
演算手段4は、図1(a)に示すように、第1検出部10aに電気的に接続された周方向荷重用動歪み計5と、第2検出部10bに電気的に接続された径方向荷重用動歪み計6と、FFTアナライザー7と、エンコーダー8と、PC9とを有している。周方向荷重用動歪み計5は、第1検出部10aから検出された電気信号が入力されるように構成されており、周方向荷重の大きさに比例して周方向荷重用動歪み計5に出力される電圧が大きくなるようにしてある。同様に、径方向荷重用動歪み計6は、第2検出部10bから検出された電気信号が入力されるように構成されており、径方向荷重の大きさに比例して径方向荷重用動歪み計6に出力される電圧が大きくなるようにしてある。周方向荷重用動歪み計5及び径方向動歪み計6で検出された電圧は、増幅されてFFTアナライザー7で演算処理されるようになっている。
【0019】
エンコーダー8は、プーリ10の回転位置を検出してFFTアナライザー7に入力させることにより、プーリ10の回転位置に応じて第1検出部10aからの検出信号と第2検出部10bからの検出信号とのデータを取得し、プーリ10の回転位置に応じた摩擦係数を演算してPC9に表示するようになっている。
【0020】
図2は、本発明に係るベルト荷重測定用プーリの実施形態の一例を示したもので、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。
【0021】
図2(a)に示すように、荷重測定用プーリ10は、ベルト懸架部11と、受け片12と、第1支持梁13と、第2支持梁14と、第1歪みゲージ15と、第2歪みゲージ16と、測定用孔(スリット)17と、固定用孔18と、固定用筒19とを備えてなる。
【0022】
プーリ10の周面の一箇所には測定用孔17が設けてある。この測定用孔17は、図2(a)に示すように、プーリ10の両面で開口するスリットとして形成してある。また、測定用孔17は縦穴部17aと、第1空洞部17bと、第2空洞部17cから構成されている。縦穴部17aの一方の端部はプーリ10の周面に開口させてあり、縦穴部17aのもう一方の端部は第1空洞部17b内に開口させてある。また、第1空洞部17b及び第2空洞部17cもプーリ10の両側に開口させて設けてある。
【0023】
受け片12は、プーリ10の周面の一部を含んで構成されており、受け片12が縦穴部17a内に位置するように、測定孔17内に配置している。受け片12は、プーリ10周面に巻き掛けられたベルトがプーリ10周面に及ぼす荷重を受けるようになっている。受け片12は、径方向側を第1支持梁13と接合すると共に、第1支持梁13に接合された第2支持梁14を介してプーリ10と一体に固定している。受け片12と縦穴部17aの内面との間に隙間が形成される構成されている。この隙間の寸法aは、正確に荷重測定をすることができるように、受け片12の周方向への変動により接触しない程度に十分な距離を設ける必要がある。
【0024】
第1支持梁13は、一方の端を受け片12に支持され、受け片12から径方向に延びて、もう一方の端を第2支持梁14の中央に支持されるように形成されている。第2支持梁14は、第1支持梁13の端から第1支持梁13と直交する方向に延び、両端をプーリ10に支持されるように形成されている。第2支持梁14とプーリ10との間には、隙間ができるように空洞部17cが設けられている。この隙間の寸法bは、正確に荷重測定をすることができるように、第2支持梁14の径方向の変動によりプーリ10に接触しない程度に十分な距離を設ける必要がある。
【0025】
第1支持梁13及び第2支持梁14の幅の寸法は、共に、変形可能な程度(1mm程度)に設定するのが好ましい。第1支持梁13の幅の寸法を細くするほど、第1支持梁13が撓む感度が高くなり、適切な歪み量を第1歪みゲージ15において測定することができるからである。また、第2支持梁14の幅の寸法を細くすると、受け片12が受ける押圧力に比例して第2支持梁14が撓む感度が高くなることにより、第2歪みゲージ16において検出される電気信号が小さすぎて正確に荷重測定することができなくなる、という恐れがなくなるからである。また、第2支持梁14の長さの寸法は、短く設定することが好ましい。第2支持梁14の長さの寸法を短くすると、歪みの程度が十分大きくなるため、第2歪みゲージ16による荷重の測定が容易になるからである。
【0026】
第1歪みゲージ15及び第2歪みゲージ16は、歪みに伴う電気抵抗値の変化を検出することによって、歪みを電気信号に変換して出力するようにしたゲージである。第1歪みゲージ15は周方向の荷重を測定するための歪みゲージであり、第2歪みゲージ16は径方向の荷重を測定するための歪みゲージである。第1歪みゲージ15は、第1支持梁13の端付近の両側に貼付されている。また、第2歪みゲージ16は、第2支持梁14の両端付近の両側に貼付されている。第1歪みゲージ15及び第2歪みゲージ16は、4枚または8枚(図示では第1歪みゲージ15及び第2歪みゲージ16をそれぞれ2枚)取り付けてホイーストンブリッジを形成するようにしている。
【0027】
固定用筒19は、図2(b)に示すように、プーリ10の片面の中央部にベルト懸架部11と一体に突設して設けられており、この固定用筒19内を通してプーリ10の両面に開口する固定用孔18が形成してある。
【0028】
上記のように形成されるベルト荷重測定用プーリ10は、図3に示すように、シャフト20の先端にプーリ10の固定用孔18を被挿し、固定用筒19に連結具21を嵌め込むと共に連結具21からボルト22をシャフト20にねじ込むことによって、シャフト20に取り付けて使用されるものである。
【0029】
また、ベルト荷重測定用プーリ10に設けた第1歪みゲージ15及び第2歪みゲージ16はスリップリング23を介してそれぞれ周方向荷重用動歪み計5及び径方向荷重用動歪み計6に接続するようにしてある。スリップリング23は互いに回転自在な固定側リング23aと可動側リング23bから構成してあり、固定側リング23aに設けた電気端子と可動側リング23bに設けた電気端子はブラシによって常に電気的に接続されるようにしてあり、第1歪みゲージ15及び第2歪みゲージ16を可動側リング23bの電気端子に、周方向荷重用動歪み計5及び径方向荷重用動歪み計6を固定側リング23aの電気端子に、それぞれ接続することによって、ベルト荷重測定用プーリ10を回転させても第1歪みゲージ15及び第2歪みゲージ16からの電気信号がスリップリング23を介して周方向荷重用動歪み計5及び径方向荷重用動歪み計6に入力されるようにしてある。
【0030】
図4は、本発明に係るベルト摩擦係数測定装置1及びベルト荷重測定用プーリ10で用いられる、多溝Vリブベルトで代表される伝動ベルト2の一部断面図を示している。ベルト2の心線ロープ2bには、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、芳香属ポリアミド繊維、ガラス繊維等からなる高強力低伸度のロープが使用されており、圧縮ゴム層2a及び伸張ゴム層2cには、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、あるいはウレタンエラストマー等が使用されている。また、背面帆布層2dには、経緯糸で織成されたゴム付き帆布がバイアス状に少なくとも一枚積層貼着されている。
【0031】
図5は、エンコーダー8によるプーリ10の回転位置を検出するためのトリガ位置について定義するものである。即ち、図5はトリガ信号とプーリ10のスリット位置の関係について示している。図5によると、トリガ信号はA位置(入口側で受け片12が完全にベルト2と接触した位置)と、B位置(出口側で受け片12が完全にベルト2と接触した位置)とに設定されている。従って、エンコーダー8は、プーリ10のA位置とB位置とを検出し、その間における第1検出部10aからの摩擦力に関する検出信号と、第2検出部10bからの面圧に関する検出信号とをFFTアナライザー7に入力して摩擦係数を算出するようになっている。
【0032】
次に、ベルト摩擦係数が算出されるときの手順について、図6を参照して説明する。図6は、ベルト摩擦係数が算出されるときの手順を示すフローチャートである。
【0033】
まず、ステップS1において、張力付与手段3を調整することによって、プーリ10周面に巻き掛けられたベルト2に付加される張力を設定する。次に、ステップS2において、回転駆動手段によりプーリ10を回転駆動させる。
【0034】
ステップS3では、ベルト2が回転駆動するプーリ10周面に及ぼす荷重により受け片12が周方向に滑り、第1支持梁13が撓むことによって生じた歪み量(周方向荷重)を第1歪みゲージ15により検出する。そして、第1歪みゲージ15で検出された周方向荷重は、電気信号に変換されて周方向荷重用動歪み計5に出力され、出力された電気信号は電圧が増幅されてFFTアナライザー7へ入力される。同様に、ステップS3´では、ベルト2が回転駆動するプーリ10周面に及ぼす荷重により受け片12が径方向に押圧され、受け片2が受ける押圧力に比例して第2支持梁14が撓むことによって生じる歪み量(径方向荷重)を第2歪みゲージ16により検出する。そして、第2歪みゲージ16で検出された径方向荷重は、電気信号に変換されて径方向荷重用動歪み計6に出力され、出力された電気信号は電圧が増幅されてFFTアナライザー7へ入力される。
【0035】
ステップS4及びステップS4´では、エンコーダー8によりプーリ10の回転位置を検出し、プーリ10のスリット位置が図5に示すA位置にあるかどうかが判断される。そして、プーリ10のスリット位置がA位置にあると判断されると(ステップS4及びステップS4´:YES)、ステップS5及びステップS5´において、受け片12の入口側に設定されたトリガ信号がエンコーダー8を介してFFTアナライザー7へ入力される。
【0036】
次に、ステップS6及びステップS6´では、エンコーダー8によりプーリ10の回転位置を検出し、プーリ10のスリット位置が図5に示すB位置にあるかどうかが判断される。そして、プーリ10のスリット位置がB位置にあると判断されると(ステップS6及びステップS6´:YES)、ステップS7及びステップS7´において、受け片12の出口側に設定されたトリガ信号がエンコーダー8を介してFFTアナライザー7への入力される。
【0037】
ステップS8において、トリガ信号に基づいて、A位置からB位置間の周方向荷重のデータが取得される。同様に、ステップS8´において、トリガ信号に基づいて、A位置からB位置間の径方向荷重のデータが取得される。
【0038】
ステップS9において、ステップS8で取得されたA位置からB位置間の周方向荷重のデータ、及びステップS8´で取得されたA位置からB位置間の径方向荷重のデータ、の比を求めることにより摩擦係数が算出される。その後、ステップS10で、算出された摩擦係数がPC9に表示される。
【0039】
次に、上記実施例におけるベルト摩擦係数測定装置1及びベルト荷重測定用プーリ10を用いた摩擦係数の測定結果について説明する。測定は、平ベルトを用い、ゆるみ側張力一定のデッドウェイト式測定法による測定方法を用いる。平ベルトについては、ベルト幅がリブベルトの3山相当で、ベルト厚みが5.0mmのものを使用した。また、ベルト2のプーリ10への巻き付き角(図1のα)が90度である。測定波形のトリガ信号は、図5におけるA位置とB位置で設定している。この条件での測定結果を図10に示す。図10(a)はゆるみ側張力4kgfの荷重を与えたものである。図10(b)はゆるみ側張力8kgfの荷重を与えたものである。
【0040】
図10にみられるように、径方向荷重(即ち面圧)が常に周方向荷重(即ち摩擦力)よりも大きくなっており摩擦係数は1を超えていない。また、測定結果から摩擦力と面圧は分離して測定することが可能である。なお、摩擦力方向と面圧方向に分けて荷重を与え、それぞれ一方に荷重している場合に他方の出力がどの程度出るのかひずみゲージの較正結果を確認したところ、摩擦力方向に荷重した場合の面圧方向に加わる荷重は2%であり、また面圧方向に荷重した場合の摩擦力方向へ加わる荷重は1%であることから、それぞれ他方の影響は小さいと考えられるため、補正は行う必要はない。
【0041】
以上のように、本実施の形態のベルト荷重測定用プーリ10によると、ベルト2の周方向荷重と径方向荷重を同時に測定することができる。また、本実施の形態のベルト摩擦係数測定装置1によると、エンコーダー8がプーリ10の回転位置を検出することにより、プーリ10の回転位置に応じて周方向荷重と径方向荷重のデータを取得することができる。これにより、即座にプーリの回転位置に応じた摩擦係数が算出することができるようになる。
【0042】
なお、本発明に係るベルト摩擦係数測定装置及びベルト荷重測定用プーリは、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0043】
例えば、ベルト荷重測定用プーリ30は、図7に示すように、プーリ30の周面に設けてある測定用孔37を台形状にスリット加工し、受け片32から径方向に延びた第1支持梁33をプーリ30に支持させ、第2支持梁34は第1支持梁33の途中に四角枠状に形成して第1支持梁33に支持させてもよい。この場合、第1支持梁33の基端に周方向荷重を検出する第1歪みゲージ35を設け、第1支持梁33から直交して延在する第2支持梁34の両端に径方向荷重を検出する第2歪みゲージ36を設ける。
【0044】
また、別の実施例に係るベルト荷重測定用プーリ40は、図8に示すように、周方向の荷重を受けるT字型の受け片41と径方向の荷重を受ける逆T字型の受け片42とをプーリ40の周面に近接して形成しても良い。なお、T字型受け片41と逆T字型受け片42の周方向の幅cが等しくなるよう構成する。この場合は、T字型受け片41から径方向に延びる梁43の端に周方向荷重を検出する第1歪みゲージ45を設け、逆T字型受け片42の梁44の両端に径方向荷重を検出する第2歪みゲージ46を設ける。なお、受け片41と受け片42とを所定回転角度だけ離した場合、周方向荷重と径方向荷重とは前記所定回転角度だけ、一方の荷重をずらせたうえで合成される。
【0045】
また、本実施の形態に係るベルト摩擦係数測定装置1においては、デッドウェイト式の測定装置を用いたが、これに限らず、連続式の測定装置を用いても良い。図9は連続式のベルト摩擦係数測定装置101の概略図を示したものである。
【0046】
図9において、ベルト摩擦係数測定装置101は、駆動プーリ130と、従動プーリ140と、ベルト荷重測定用プーリ110の3軸で構成され、駆動プーリ130の軸は、図示されない軸受台に支承された歯付プーリ又はチェーンスプロケット132に接続されている。同様に、従動プーリ140の軸は、図示されない軸受台に支承された歯付プーリ又はチェーンスプロケット142に接続されている。この歯付プーリ又はチェーンスプロケット132、142は、それぞれ歯付ベルト又はチェーン133、143を介してモーター150軸上の歯付プーリまたはチェーンスプロケット131、141に連結されている。また、ベルト荷重測定用プーリ110は、所定の軸受台160に搭載され、所定の方向に移動可能に構成されており、その端部には重錘Wが滑車を介して懸架されている。
【0047】
このような構成のベルト摩擦係数測定装置101において、駆動プーリ130、従動プーリ140及びベルト荷重測定用プーリ110に無端ベルト102そ巻きつけ、この状態でモーター150を回転させると、無端ベルト102は、駆動プーリ130の上では早く回ろうとし、従動プーリ140の上では遅く回ろうとする。その結果、第1検出部によりベルト荷重測定用プーリ110とベルト102との滑りに起因して生じる周方向荷重を周方向荷重用動歪み計105検出する。また、第1検出部が設けられたプーリに設けられた第2検出部によりベルト102がベルト荷重測定用プーリ110に及ぼす径方向荷重を径方向荷重用動歪み計106により検出する。更に、エンコーダー108で回転位置を検出する。そして、検出された電気信号の電圧を増幅してFFTアナライザー107に入力し、摩擦係数を算出して、PC109に表示することができる。
【0048】
また、本実施の形態に係るベルト摩擦係数測定装置1のように、第2支持梁は、第1支持梁と直交する方向に設けることが好ましいが、軸方向に荷重がかかることにより第2支持梁が撓むものであればよく、第1支持梁と交叉する方向に設けられているものであってもよい。例えば、第1支持梁の端から周方向に延び、第2支持梁が湾曲するものであってもよい。
【0049】
更に、本実施の形態に係るベルト摩擦係数測定装置1のように、第1検出部と第2検出部は一体又は近接して設けられることが好ましいが、ベルトの長手方向の位置で摩擦係数が変動することはないため、同じプーリに設けられていれば離れて設けられていてもよい。例えば、第1検出部と第2検出部とを、180°ずらして設け、演算する際に位相をずらしてを重ね合わせるものであってもよい。
【0050】
なお、本実施の形態に係るベルト摩擦係数測定装置1及びベルト荷重測定用プーリ10の測定実験(図10)においては、平ベルトを用いているが、そのほか、Vベルト、Vリブベルト等についても摩擦係数の測定が可能である。
【0051】
【発明の効果】
本発明のベルト摩擦係数測定装置によると、ベルトがプーリに接触する部分において、径方向荷重(面圧)及び周方向荷重(摩擦力)を同時に測定することができる。このため、その比を算出することにより接触部の摩擦係数を即座に求めることが可能である。また、プーリ巻き付き位置による摩擦係数の変化があったとしても、径方向荷重(面圧)及び周方向荷重(摩擦力)を検出することが可能である。また、本発明のベルト荷重測定用プーリによると、プーリに設けられた共有の受け片により、同時に径方向荷重及び周方向荷重を測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るベルト摩擦係数測定装置の一実施形態例を示すものであり、(a
)は概略図、(b)はプーリの周面に設けられた第1検出部及び第2検出部の概
略図である。
【図2】本発明に係るベルト荷重測定用プーリの一実施形態例を示すものであり、(a
)は正面図、(b)は側面断面図である。
【図3】図2におけるベルト荷重測定用プーリの使用状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係るベルト摩擦係数測定装置1及びベルト荷重測定用プーリ10で用
いられる、多溝Vリブベルトで代表される伝動ベルト2の一部断面図である。
【図5】本発明に係るベルト荷重測定用プーリ10のスリット位置とトリガ信号との関
係を示すグラフである。
【図6】本発明に係るベルト摩擦係数測定装置1及びベルト荷重測定用プーリ10を用
いて、ベルト摩擦係数が算出されるときの手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係るベルト荷重測定用プーリの他の一実施形態例を示すものであり、
ベルト荷重測定用プーリの一部を拡大した正面図である。
【図8】本発明に係るベルト荷重測定用プーリの他の一実施形態例を示すものであり、
ベルト荷重測定用プーリの一部を拡大した正面図である。
【図9】本発明に係るベルト摩擦係数測定装置の他の実施形態例を示す概略図である。
【図10】(a)、(b)はそれぞれ本発明に係るベルト摩擦係数測定装置及びベルト荷重
測定用プーリ用いた場合の荷重測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ベルト摩擦係数測定装置
2 ベルト
3 張力付与手段
4 演算手段
5 周方向荷重用動歪み計
6 径方向荷重用動歪み計
8 エンコーダー
10 ベルト荷重測定用プーリ
12 受け片
13 第1支持梁
14 第2支持梁
15 第1歪みゲージ
16 第2歪みゲージ

Claims (3)

  1. プーリの周面とその周面に巻き掛けられたベルトとの摩擦係数を測定する摩擦係数測定装置において、
    前記ベルトが巻き掛けられる少なくとも一つのプーリと、
    前記プーリに巻き掛けられた前記ベルトに張力を付与する張力付与手段と、このプーリを回転駆動させる駆動手段と、
    前記プーリの回転位置を検出するエンコーダーと、
    前記周面の一部を含みその両面で開口するように前記プーリをスリット加工することにより形成される受け片に設けられ、回転駆動される前記プーリと前記ベルトとの滑りに起因して、前記ベルトが前記プーリに及ぼす周方向荷重を検出する第1検出部と、
    前記受け片に設けられ、又は、前記受け片に近接し前記周面の一部を含みその両面で開口するように前記プーリをスリット加工することにより形成される第2受け片に設けられ、前記ベルトが前記プーリに及ぼす径方向荷重を検出する第2検出部と、
    前記第1検出部からの検出信号と前記第2検出部からの検出信号とを、前記エンコーダーにより検出した前記プーリの回転位置に応じて入力させ、これら信号に基づいて前記プーリの回転位置に応じた摩擦係数を演算する演算手段と、を備えてなるベルト摩擦係数測定装置。
  2. プーリ周面に巻き掛けられたベルトが前記周面に及ぼす荷重を検出するベルト荷重測定用プーリであって、前記周面の一部を含んで形成され、前記ベルトが前記周面に及ぼす周方向荷重及び径方向荷重を受ける受け片と、この受け片から径方向に延びて前記周方向荷重を受けて撓む第1支持梁と、この第1支持梁の端から第1支持梁と交叉する方向に延び、その両端が前記プーリに支持され前記径方向荷重を受けて撓む第2支持梁と、前記第1支持梁の変位を検出する第1歪みゲージと、前記第2支持梁の変位を検出する第2歪みゲージとを備えてなるベルト荷重測定用プーリ。
  3. 前記第1歪みゲージは、前記第1支持梁の前記端付近に設けられ、前記第2歪みゲージは、前記第2支持梁の前記両端付近に設けられている請求項2に記載のベルト荷重測定用プーリ。
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