JP3609750B2 - 光造形品とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、三次元モデルを平行スライスした各層を光造形による光硬化型樹脂の硬化層として積層形成して得られる光造形品、特に流体通路を有する該光造形品とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車、航空機、建造物、家電、玩具、日用雑貨等の各種工業分野における製品や部品の設計・デザイン構成をCAD、CAM、CAE等のコンピュター上で行う手法が広く普及している。そして、このようなコンピュター上で設計された三次元モデルを具象化した実体モデルを製作する最新の手段として、例えば図4(イ)に示すようにコンピュターC上で設計モデルM0 を、同図(ロ)の如く厚さ数十〜数百μm単位の多数層P1 〜Pn に平行スライスした時の各断面パターンのデータを作成し、このデータから直接に立体樹脂モデルを得る光造形法が登場している。
【0003】
この光造形法では、図4(ハ)に示すように、紫外線硬化型樹脂の如き光硬化性樹脂の溶液30を収容した造形槽31内に昇降台座32を有し、この造形槽31上にXYスキャナー付きのレーザヘッド33が配置した光造形装置を用いる。そして、レーザヘッド33の制御装置(図示省略)に前記断面パターンのデータを入力し、まず昇降台座32の上面位置を溶液30の液面30aから前記スライスした一層分の厚みに相当する深さに設定し、液面30aにレーザービームLを最下層P1 の断面パターンに沿って照射することにより、該断面パターン形状の硬化樹脂層P1 を形成し、次いで昇降台座32を前記一層分の厚みだけ下降させてリコーター(図示省略)にて層P1 上に溶液30を行き渡らせ、同様にレーザービームLを照射して硬化樹脂層P2 を層P1 上に形成し、以降同様にして順次一層分ずつ昇降台座32を下降させてレーザービームLを照射することにより、最終的に同図(ニ)に示すように硬化樹脂層P1 〜Pn が積層一体化した樹脂モデルMを作製する。
【0004】
しかして、このような樹脂モデルは、設計モデルの形態確認用として用いる以外に、試作品として各種の特性試験に供したり、部品として機械装置に組み込んで実機テストを行うのにも利用される。とりわけ、流体通路を有する物品の設計においては、光造形した樹脂モデルに実際に流体を通して流れの状態や流体力学的特性を調べることにより、設計品の実用性評価を行えると共に、完成品に向けての改良点の示唆が得られるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、流体通路を有する実際の物品が金属製である場合は樹脂モデルとの材質差が大きいことから、特性試験や実機テストにおいて樹脂モデルの接続用開口部を流体導出入用の器材や機械装置の流体導出入部等に接続すると、この接続部分に充分な強度を確保できないという難点があった。特に適用する流体圧が大きい物品では漏れ防止のために接続部分の締め付けを強くする必要があるが、樹脂モデルにおいては、例えば筒状の接続用開口部にホースを接続する際に金属製締結バンドによる締め付けを強めると破損や亀裂を生じ易く、物品本来の圧力条件での特性試験や実機テストを行えないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、流体通路を有する実際の物品が金属製であって且つ適用する流体圧が大きいものであっても、光造形による樹脂モデルを利用して物品本来の圧力条件での特性試験や実機テストを行うことを可能にする光造形品とその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る光造形品は、図面の参照符号を付して示せば、流体通路とホースを接続する筒状の接続用開口部とを有する金属製物品の設計モデルを多数層に平行スライスした際の各層が光硬化性樹脂の硬化層として積層形成されてなる光造形物1Aにおいて、該光造形物1Aの前記筒状の接続用開口部11に、金属製で短管状の口金2が挿嵌固着されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、光造形品を特性試験や実機テストに供する際、筒状の接続用開口部11にホース6Aを接続する際、その接続部の上から巻き締める金属製締結バンド7Aの緊締力が短管状の口金2で受け止めるられるから、締め付けを強めても光造形品側の破損や亀裂を回避できる。
【0009】
請求項2の発明に係る光造形品は、流体通路とホースを接続する筒状の接続用開口部とを有する金属製物品の設計モデルを多数層に平行スライスした際の各層が光硬化性樹脂の硬化層として積層形成されてなる光造形物1Bにおいて、該光造形物1Bの前記筒状の接続用開口部13に、筒軸状の口金4が該接続用開口部13に基部側を挿嵌固着して外側へ突出する状態に取り付けられていることを特徴としている。この場合、光造形品の特性試験や実機テストにおいて、筒軸状の口金4自体をホース6Bの接続用の金具として利用できると共に、締結バンド7Bによる緊締力は口金4に作用するだけであるから、接続用開口部13が強度に乏しくても支障がない。
【0010】
請求項3の発明に係る光造形品の製造方法は、上記請求項1又は2に記載の光造形物1A,1Bにおける筒状の接続用開口部11,13の内周面と、該接続用開口部に挿嵌する金属製の口金2,4の外周面との少なくとも一方に光硬化性樹脂の溶液を塗着し、この口金2,4を前記接続用開口部11,13に挿嵌したのち、光照射によって塗着した光硬化性樹脂を硬化させることにより、該口金2,4を光造形物1A,1Bに固着一体化させることを特徴としている。
【0011】
この請求項3の方法によれば、光造形物1A,1Bの接続用開口部11,13に対する口金2,4の固着を光照射によって簡単に且つ短時間で行うことができる共に、固着に使用する光硬化性樹脂が光造形物1A,1Bと同じ材質で完全に一体化するから、大きな固着強度が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光造形品とその製造方法について、図面を参照して具体的に説明する。図1及び図2は本発明の第一実施例、図3は同第二実施例を示す。
【0013】
図1(イ)に示す第一実施例の光造形品は、自動車エンジン用ラジエータのサーモスタットハウジングの光造形物1Aに本発明を適用したものである。この光造形物1Aは、変形パイプ状の主管1aに縦短円筒状のハウジング本体部1bが一体化され、主管1aの一端側寄りに分岐管1cを備えると共に、ハウジング本体部1bから径大と径小の側管1d,1eが延出しており、該本体部1bの上面側が円形に開いた接続用開口部12をなしている。18は分岐管1cの先端に設けた連結用フランジ部、19は主管1aの他端近傍に設けた連結用フランジ部であり、両フランジ部18,19共に一対のねじ挿通孔20,20が設けられている。21は主管1aの一端寄りに設けた取付用突片であり、ねじ挿通孔21aを有している。
【0014】
なお、この光造形物1Aは、既述の図3(イ)〜(ニ)を用いて説明した通常の光造形法に準じ、コンピュター上で設計した三次元モデルを多数層に平行スライスした断面パターンのデータを作成し、このデータを光造形装置のコントローラーに入力して自動操作により、紫外線硬化型樹脂の溶液表面に各層の断面パターンに沿って紫外線波長域のレーザービームを照射し、形成される硬化樹脂層を一層ずつ最下層から順次に積層一体化させ、最終的に設計モデルを具象化した樹脂モデルとして得られたものである。
【0015】
第一実施例の光造形品は、図1(ロ)に示すように、この光造形物1Aに対し、その主管1aの一端側の接続用開口部11に、金属製で短管状の口金2を挿嵌固着すると共に、ハウジング本体部1bの接続用開口部12の周縁3ヵ所に等配形成された各ねじ挿通孔16に、金属製の筒状ナット3を挿嵌固着したものである。
【0016】
しかして、このように口金2及び筒状ナット3を固着するには、これら部材2,3の外周面と挿嵌部つまり接続用開口部11及びねじ挿通孔16の内周面との一方又は両方に紫外線硬化型樹脂の溶液を塗着した状態で、これら部材2,3を該挿嵌部11,16に挿嵌したのち、その挿嵌した部分に局所的に紫外線を数秒照射することにより、塗着した紫外線硬化型樹脂を硬化させればよい。すなわち、この方法によれば、口金2及び筒状ナット3の固着を簡単に且つ短時間で行える共に、固着に使用した樹脂成分が光造形物1Aの同じ樹脂に完全に一体化するから、大きな固着強度が得られる。
【0017】
しかして、ラジエータのサーモスタットハウジングは、エンジン温度を一定に保つために、その内部に温度センサー及び流路切換弁を組み込み、該センサーにて検知した水温に基づいて流路切換弁を開閉制御し、冷却水流路を切換えるようになっている。従って、このようなサーモスタットハウジングの光造形品を特性試験や実機テストに供する際、ハウジング本体部1bに温度センサー及び流路切換弁(図示省略)を内蔵させ、実際に内部に冷温水を通すことにより、流れの状態、流体力学的特性、流路切換弁の作動性、温度による流路切換の応答性等を調べることになる。
【0018】
このとき、図2に示すように、主管1aの接続用開口部11にホース6Aを接続し、その上から金属製締結バンド7Aを巻き締める一方、ハウジング本体部1bの接続用開口部12に被せたハウジングカバー8の半球形蓋板部8aをボルト9によって締め付けて封止する。8bはハウジングカバー8に一体形成された管路である。しかして、実際の使用条件に対応してエアー圧を大きくする場合、接続部での漏れを防止するために締結バンド7A及びボルト9による締め付けを強くする必要があるが、接続用開口部11では口金2によって充分な耐圧強度が確保されているから、該接続用開口部11の破損や亀裂を生じる懸念はなく、また接続用開口部12でもボルト9が金属製のナット3に螺合しているから、ねじ挿通孔16自体をねじ孔にした場合のような潰れや割れを生じることなく強い締め付けを行える。
【0019】
上記第一実施例の光造形品ではホース6Aを光造形品1Aの接続用開口部11に直接に外嵌しているが、第二実施例の光造形品のように口金自体をホース接続用の金具として利用することも可能である。すなわち、図3(イ)に示す光造形物1Bでは径小で短い筒状の接続用開口部13を有するが、この接続用開口部13に筒軸状の口金4を同図(ロ)のように突出状態に挿嵌固着した光造形品とすれば、特性試験や実機テストに供する際、この口金4の突出部に同図(ロ)のようにホース6Bを外嵌させ、締結バンド7Bにて締め付けて接続することができる。
【0020】
この場合、締結バンド7Bによる緊締力は口金4に作用するだけであるから、接続用開口部13が径小で強度に乏しくても支障がない。なお、このような筒軸状の口金4を用いれば、光造形物の接続用開口部が外側へ突出しない単なる孔状であっても、ホース接続が可能となる。しかして、口金4の基部側の固着は、前記同様に紫外線硬化型樹脂の溶液を挿嵌界面に介在させ、紫外線の照射によって該樹脂を硬化させればよい。
【0021】
なお、本発明を適用する光造形物は、流体通路を有する金属製物品の樹脂モデルであればよく、その外形や内部構造、接続用開口部の形態等については特に制約はない。
【0022】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、流体通路を有する金属製物品の樹脂モデルである光造形品として、前記流体通路の筒状をなす接続用開口部に金属製の口金が固着されていることから、当該光造形品を利用して金属製物品本来の圧力条件での特性試験や実機テストを行う場合に、その接続用開口部に金属製接続バンドを介してホースを接続する際、該締結バンドによる締め付けを強めても破損や亀裂を回避できる。
【0023】
請求項2の発明によれば、上記の光造形品において、接続用開口部に外側へ突出する筒軸状の口金が固着されていることから、特性試験や実機テストにおいて、この口金自体をホースの接続用の金具として利用できると共に、接続用開口部が強度に乏しくても支障がないという利点がある。
【0024】
請求項3の発明に係る光造形品の製造方法によれば、上記の光造形物における口金の固着を簡単に且つ短時間で行うことができる共に、大きな固着強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光造形品の第一実施例を示し、(イ)図は光造形品の斜視図、(ロ)図は同分解斜視図である。
【図2】同第一実施例の光造形品にホース及び蓋部材を取り付けた状態の斜視図である。
【図3】同光造形品の第二実施例を示し、(イ)図は光造形物の接続用開口部に対する口金の固着前の状態を示す要部の斜視図、(ロ)図は同口金を固着後の光造形品の要部を示す斜視図、(ハ)図は同光造形品にホースを接続した状態を示す斜視図である。
【図4】光造形法の基本原理を説明するものであって、(イ)図は設計した三次元モデルの画像を表示したコンピュターの正面図、(ロ)図は該三次元モデルを上下多数層に平行スライスする状態を示す模式図、(ハ)図は光造形装置によに光造形の初期段階を示す概略縦断側面図、(ニ)図は同光造形の最終段階を示す概略縦断側面図である。
【符号の説明】
1A〜1C 光造形物
2,4 口金
3,5 ナット
6A,6B ホース
7A,7B 締結バンド
9 ボルト
11〜14 接続用開口部
15,16 ボルト挿通孔
Claims (3)
- 流体通路とホースを接続する筒状の接続用開口部とを有する金属製物品の設計モデルを多数層に平行スライスした際の各層が光硬化性樹脂の硬化層として積層形成されてなる光造形物において、該光造形物の前記筒状の接続用開口部に、金属製で短管状の口金が挿嵌固着されていることを特徴とする光造形品。
- 流体通路とホースを接続する筒状の接続用開口部とを有する金属製物品の設計モデルを多数層に平行スライスした際の各層が光硬化性樹脂の硬化層として積層形成されてなる光造形物において、該光造形物の前記筒状の接続用開口部に、筒軸状の口金が該接続用開口部に基部側を挿嵌固着して外側へ突出する状態に取り付けられていることを特徴とする光造形品。
- 請求項1又は2に記載の光造形物における筒状の接続用開口部の内周面と、該接続用開口部に挿嵌する金属製の口金の外周面との少なくとも一方に光硬化性樹脂の溶液を塗着し、この口金を前記接続用開口部に挿嵌したのち、光照射によって塗着した光硬化性樹脂を硬化させることにより、該口金を光造形物に固着一体化させることを特徴とする光造形品の製造方法。
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