JP3609272B2 - ゴルフボールの傷検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ゴルフボールの傷を検査する装置に関し、特に検査の信頼性を向上させることのできるゴルフボールの傷検査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフ練習場など、多量のゴルフボールを扱い、かつ、繰り返し使う場合、傷の入ったゴルフボールを取り除く必要がある。従来は、人が目視で確認したり、1個1個床にゴルフボールをぶつけて、その音を聞き、割れや傷が発生していないか判断するという、熟練者の官能検査に頼ってきた。
【0003】
また、打音により対象物の検査を行う打音検査装置として、例えば壁部のタイルの剥離の検出を行う特開平6−3336号公報に示されたものがある。これは、打撃装置によりタイルの貼り付けられた壁を打撃し、発生した衝突音を検出して電気信号に変換し、帯域フィルタを通して診断に関係する所定の周波数帯域の成分を抽出する。この抽出された交流状態の信号電圧の波高値が所定の基準値を超えていないかどうかを判定し、超えた場合、画面表示装置に警報を出力するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、人の判断の場合は、測定者の勘や技能により診断結果に差異がある。また、上記のような従来の打音による検査装置においては、打撃により発生した音圧信号における最大値を比較しているだけであるので、複合周波数を特徴とする打音の検査では主成分以外の周波数に異常の特徴が現れる場合には正確に異常を検出することができなかった。
【0005】
また、周波数帯域の最大レベルを評価対象としているため、打音の特徴でもある、瞬間的に大きく発生した音圧と余韻が長くレベルの低い音圧とを区別することができないという問題があった。これらのため、上記のような検査装置をゴルフボールの検査に適用しようとしても、ゴルフボールの傷を的確に検出することは困難であった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、次のようなゴルフボールの傷検査装置を得ることを目的とする。
a.衝突により発生した振動の状態と基準状態とを比較して検査の信頼性を向上させることができる。
b.安価で高速処理ができる。
c.小形化でき、条件の変更に柔軟に対応できる。
【0007】
d.対象物に加えられる外力のばらつきの影響を防止できる。
e.周囲からの騒音やノイズによる影響を防止できる。
また、さらなる改良として、
f.適正範囲を外れた外力を与えた場合や入力が適正レンジを超えたことを知ることができる。
g.増幅器の増幅率を適切な値に容易に設定できる。
h.振動基準値を容易かつ的確に設定でき、検査の信頼性を向上させることができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、この発明にかかるゴルフボールの傷検査装置においては、外力を加えられたゴルフボールから発生する振動を振動信号として検出する信号検出手段と、振動信号を複数の所定の周波数帯域毎の時系列信号に変換する変換手段と、時系列信号の最大値を周波数帯域毎に抽出する抽出手段と、各最大値をあらかじめ設定された周波数帯域毎の振動基準値と比較する比較手段とを設けたものである。
振動信号を複数の周波数帯域毎の時系列信号に変換し、この各時系列信号における最大値を各々抽出するので、振動信号の周波数分解能が向上するとともに、時系列信号のなかから感度よく最大値を抽出できる。従って、衝突の特徴でもある発生直後の大きな音あるいは振動の特徴を的確に把握して比較を行うことができる。
【0009】
また、変換手段は振動信号の所定の周波数帯域の周波数成分を通過させる複数の帯域フィルタであり、抽出手段は各帯域フィルタを通過した周波数成分を整流しこの整流された周波数成分の各ピーク値の内最大のものを各々最大値として抽出するものであることを特徴とする。
変換手段を帯域フィルタとすると、処理を高速に行うことができ、装置も簡易で、安価になる。特に、アナログ帯域フィルタとすると、処理を高速化できる。デジタル帯域フィルタとすると、小形化でき、条件の変更に柔軟に対応できる。また、抽出手段は整流された周波数成分から最大値を抽出するので、振動信号の負符号部に最大値がある場合でも検出でき、振動信号が急激に減衰する場合でも的確に比較できる。
【0010】
さらに、変換手段は振動信号をウェーブレット変換するウェーブレット変換手段であり、抽出手段はウェーブレット変換手段による変換結果に基づき周波数帯域毎の最大値を抽出するものであることを特徴とする。
ウェーブレット変換手段とすると、各周波数帯域毎の時系列信号に分離する際の特性を向上させることができ、検査の信頼性が向上する。
【0011】
そして、変換手段は振動信号を短時間高速フーリエ変換する短時間高速フーリエ変換手段であり、抽出手段は短時間高速フーリエ変換手段による変換結果に基づき周波数帯域毎の最大値を抽出するものであることを特徴とする。
短時間高速フーリエ変換手段を用いると、周波数の分解能が向上する。
【0012】
さらに、加えられた外力の大きさを検出する外力検出手段を設けるとともに、外力の大きさに応じて振動信号、時系列信号、最大値、及び振動基準値の少なくとも1つを補正する補正手段を設けたことを特徴とする。
外力の大きさに応じて補正し、比較手段における比較において外力の大きさのばらつきの影響を受けるのを防止する。また、例えば周波数帯域毎に外力に応じて異なる補正をすることにより、加えられた外力に応じて周波数成分の分布が変化するような複雑な構造を持つ対象物に対しても高い信頼度で比較できる。
【0013】
また、加えられた外力の大きさを検出する外力検出手段を設けるとともに、外力の大きさが所定値を超えたとき信号検出手段、変換手段、抽出手段、及び比較手段の少なくとも1つの動作の開始を指令する指令手段を設けたことを特徴とする。
指令が出されるまで動作を開始しないので、指令がないときの周囲の騒音、振動、雑音等を振動信号として誤って処理をするおそれがない。従って、これらによる影響を防止でき、検査の信頼性が向上する。
【0014】
さらに、加えられた外力の大きさを外力信号として検出する外力検出手段を設けるとともに、外力信号を予め設定された外力基準値にて除した比率を求める比率演算手段と、上記比率に基づき振動信号と時系列信号と最大値と振動基準値とのうちの少なくとも1つを補正することにより比較手段における最大値と振動基準値との関係を変更する補正手段と、上記比率が所定範囲内であるか否かを判定する比率判定手段とを設けたことを特徴とする。
比率演算手段にて外力と外力基準値との比率が所定範囲内であるか否か、つまり対象物に与える外力、つまり加振力が小さすぎたり大きすぎたりしないかを判定し、この範囲外となるような不適切な外力を与えたことが判るようにする。加振力が小さすぎたり大きすぎたりすると、対象物が発する振動の周波数特性が異なる場合などに、誤った判定を防止できる。不適切な外力を与えたことが判れば再度外力を与えればよいので、それほど神経を使うことなく操作でき、操作性も向上する。
【0015】
さらに、外力信号を増幅して増幅外力信号として出力する外力信号増幅手段と振動信号を増幅して増幅振動信号として出力する振動信号増幅手段とを設け、比率演算手段を増幅外力信号を外力信号として用いるものとし、変換手段を増幅振動信号を振動信号として用いるものとし、増幅外力信号と増幅振動信号との少なくとも一方の波高値が所定値を超えたことを検出するレンジオーバ検出手段を設けたことを特徴とする。
測定の信頼性を確保するために、増幅外力信号や増幅振動信号が所定値を超えたことを、すなわち外力信号増幅手段や振動信号増幅手段が飽和するような大きな信号が入力されたことを検出する。
【0016】
また、外力信号増幅手段と振動信号増幅手段との少なくとも一方の増幅率を自動的に設定する増幅率自動設定手段を設けたことを特徴とする。
増幅外力信号や増幅振動信号が適切な出力範囲となるように増幅率を容易に設定することができ、操作性が向上する。また、S/N比の低下を防止でき検査の信頼性も向上する。
【0017】
そして、比較手段は、所定の状態のゴルフボールに外力が加えられたときに発生する振動信号に基づいて設定された振動基準値に基づき比較を行うものであることを特徴とする
ゴルフボールの状態に即した振動基準値を容易に設定することができ、検査の信頼性が高くなる。
【0018】
さらに、比較手段は、健全なゴルフボールを衝突部材上に落としたときに発生する振動信号に基づいて設定された振動基準値に基づき比較を行うものであることを特徴とする。
時系列信号のなかから感度よく最大値を抽出し、衝突の特徴でもある発生直後の音あるいは振動の特徴を的確に把握して比較を行い、小さい欠陥まで検出できるようにする。
【0019】
また、信号検出手段は、ゴルフボールを衝突部材上に落下させたときに上記衝突部材に発生する振動を振動信号として検出するものであることを特徴とする。
ゴルフボールを落下させ、加える外力を安定させる。
【0020】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の一形態を図1の構成図に基づいて説明する。図において、1は対象物であるゴルフボール、2はゴルフボールを落下させたときに衝突し打音を発生させる衝突部材である受け台である。11は受け台2に取り付けられゴルフボール1に与えた外力としての加振力を電気信号に変換する外力検出手段としての加振力センサである。12は加振力センサ11で変換された電気信号を増幅する増幅器、13は増幅器12で増幅された信号を直流に変換する整流器である。
【0021】
14は整流器13から出力される直流信号の最大値を保持するピークホールド、15はピークホールド14の出力と基準値設定器16に格納された外力基準値との比率を求める比率演算器である。17は整流器13の出力する直流信号からトリガを検出するトリガ検出器である。
【0022】
19は比率演算器15により求められた比率を判定する比率判定器である。20はピークホールド14から出力された最大値から増幅器12の増幅率を自動的に設定するレンジ自動設定器である。21はピークホールド14から出力された最大値からレンジオーバを検出するレンジオーバ検出器である。
【0023】
3は受け台2に取り付けられ衝突したゴルフボールが発する打音を電気信号に変換する信号検出手段としてのマイクロホン、4はマイクロホン3で変換された電気信号を増幅する増幅器である。5は増幅器4から得られる信号を各周波数帯毎に分離する変換手段としてのアナログBPFである。このアナログBPF5は、例えば人間の可聴域である20Hz〜20kHzをほぼ網羅すべく31.25Hz〜16kHzまでの9オクターブ分を対象とし、1/3オクターブ毎の分解能を与えるとして全28バンド分設ける。
【0024】
6はアナログBPF5から得られる各周波数帯毎の信号を整流して直流に変換する整流器である。7は整流器6からの出力の最大値を保持する抽出手段としてのピークホールド、8は比率演算器15から得られる比率からピークホールド7が出力する最大値を補正する補正器である。9は補正器8の出力と基準値設定器10に格納された振動基準値としての音圧基準値とを所定の方法で、つまり所定の比較基準で照らして比較する比較器である。18は各比較器9からの比較結果を基に全体の判定を行い異常であると判定したとき警報を出力する判定手段としての警報器である。
【0025】
31は増幅器4で増幅された信号を直流に変換する整流器である。32は整流器31からの出力の最大値を保持するピークホールド、33はピークホールド32から出力された最大値から増幅器4の増幅率を自動的に設定するレンジ自動設定器である。34はピークホールド32から出力された最大値からレンジオーバを検出するレンジオーバ検出器である。
【0026】
次に動作として基準となるゴルフボールを用いて外力基準値及び音圧基準値を設定する基準値設定モードについて説明する。
まず、増幅器4及び増幅器12の増幅率を最小とする。この状態で対象物である新品あるいは損傷のない健全なゴルフボール1を受け台2上に落下させ、発生した衝突音をマイクロホン3で電気信号に変換し、増幅器4、整流器31、ピークホールド32によりアナログBPF5を通さない音圧信号の最大値を求める。
【0027】
この最大値をレンジ自動設定器33に入力し適切な計測レンジとなるように増幅器4の利得を設定する。同様に衝突により受け台2に発生した振動を加振力センサ11で電気信号に変換した後、増幅器12、整流器13、ピークホールド14により振動信号の最大値を求める、この最大値をレンジ自動設定器20に入力し適切な計測レンジとなるように増幅器12の利得を設定する。
【0028】
適切な計測レンジとは、例えばこの実施の一形態のように加振力の差による補正を行っており、その範囲が1/2〜2倍だとすると基準値と比較して最大で2倍の入力を受け付ける必要があるため、この基準値設定モード時に入力される信号レベルが計測レンジの50%となるように利得を設定する。
【0029】
このようにして基準値設定モードの最初の1回目の衝突により振動、音両方の増幅率を設定する。
【0030】
次に、受け台2上に先ほどの基準とする健全なゴルフボール1を落とす。このとき受け台2に発生した振動を加振力センサ11で電気信号に変換し、増幅器12で、基準値設定モードの最初の1回目の衝突により設定された利得を与える。この増幅された信号は整流器13で直流に変換される。トリガ検出器17は整流器13からの直流信号とあらかじめ設定された基準値と比較を行い、直流信号がこの基準値を超えたときトリガ出力を行う。
【0031】
ピークホールド14は、整流器13から入力される直流信号の最大値を記録する。このとき、ピークホールド14の動作開始はトリガ検出器17からのトリガ信号により行われる。
こうした最大値の記録は落下衝突による受け台2の振動がある程度減衰するまでの一定の時間行われ、その後ピークホールド14からの出力を外力基準値として基準値設定器16に格納する。
【0032】
同様に衝突により発生した音波をマイクロホン3で電気信号に変換し、増幅器4で、基準値設定モードの最初の1回目の衝突により設定された利得を与える。この増幅された音圧信号を複数個設けられ、それぞれ異なった周波数帯を通過させるように設定されたアナログBPF5に入力し、各周波数帯毎の時系列信号に分離する。
【0033】
アナログBPF5で各周波数帯毎に分離された時系列信号は整流器6で直流信号に変換され、ピークホールド7に入力される。ピークホールド7の整流器6からの直流信号の最大値記録動作は、トリガ検出器7からのトリガ信号により開始し、振動用ピークホールド14と同様に対象物の音圧減衰までの一定時間行われる。
このようにして各周波数帯毎の瞬間的な最大値が記録される。
【0034】
音圧減衰までの一定時間終了後、ピークホールド7により記録された最大値は音圧基準値として基準設定器10に格納される。
このような基準値設定モードの動作により、基準値設定器16には衝突の強さを示す情報である外力基準値が格納され、基準値設定器10には打音の各周波数帯における瞬間的な最大音圧を示す情報である音圧基準値が格納される。
【0035】
次に対象物の検査を行う検査モードについて説明する。まず、受け台2上に検査の対象とするゴルフボール1を落下衝突させる。このとき基準値設定モードの時と同様に、受け台2に発生した振動を加振力センサ11で電気信号に変換し、増幅器12で増幅すると共に整流器13で直流に変換される。
【0036】
トリガ検出器17も同様に整流器13からの直流信号からトリガ出力を行い、ピークホールド14はトリガ出力から音圧減衰までの一定時間、直流信号の最大値を記録する。
検査モードの場合、音圧減衰までの一定時間終了後、ピークホールド14に記録された最大値を比率演算器15に入力し、比率演算器15は、ピークホールド14からの最大値と基準値設定器16に格納されている外力基準値との比率を演算し出力する。
【0037】
衝突により発生した音波も基準値設定モードと同様に、マイクロホン3で電気信号に変換すると共に増幅器4で増幅し、アナログBPF5により各周波数帯毎の時系列信号に分離し、整流器6で直流信号に変換され、ピークホールド7に入力される。ピークホールド7は、トリガ出力からの音圧減衰までの一定時間、直流信号の最大値を記録する。
【0038】
検査モードの場合、音圧減衰までの一定時間終了後、ピークホールド7により記録された最大値を補正器8に入力し、補正器8は比率演算器15から得られる比率から適切な補正値を演算しこの補正値にてピークホールド7から得られる最大値を補正し出力する。
【0039】
このとき、例えば振動レベルと音圧の補正を比例で行うとすると、基準値に対して2倍の比率が演算で得られた場合、ピークホールド7に記録された最大値に対して2の値で除算する。つまり基準値設定モード時における加振力に対して検査モード時の加振力が2倍になれば、発生する各周波数帯域毎の音圧も2倍に増加しているものとして得られた最大値を基準値設定モード時の加振力に換算するために2で除算する。
【0040】
このようにして補正された最大値は、比較器9で基準値設定器10に格納された音圧基準値と所定の方法あるいは所定の比較基準に基づいて比較される。この実施の形態では、補正された最大値があらかじめ設定された所定の関係から外れた場合に比較結果信号を警報器18に出力する。
【0041】
このときの所定の関係とは、例えばあるバンドにおいては、補正された最大値がそのバンドの音圧基準値に対して、例えば80%〜120%の範囲内であるとき正常、この範囲から外れたときは範囲外とし比較結果信号を出力するように比較基準を設定しておく。また、他の、あるバンドにおいてはそのバンドの音圧基準値に対して、例えば70%〜110%の範囲内を正常として比較結果信号は出さず、範囲外のとき比較結果信号を出すように比較基準を設定しておく。
【0042】
さらに、音圧基準値が全体的な音圧に比べて小さい場合には、範囲の下限を解除する等の処置により主成分で無い周波数帯域において誤って比較結果信号を出さないようにする。
【0043】
警報器18は、各周波数帯における比較器9からの比較結果信号を入力し、比較結果信号があらかじめ設定された個数、例えば2個を超えると異常と判定するよう判定基準が定められ、異常と判定されたとき外部に警報出力する。
【0044】
比率判定器19は比率演算器15により求められた比率が所定の関係を超えた時に補正範囲外警報を出力する。この時の所定の関係とは、例えば1/2倍〜2倍として設定しておく。すると1/2未満や2倍を超える入力があった場合に補正範囲外警報が出力される。
【0045】
加振力が極端に変化すると発生する音の周波数成分は大きく変化するため補正が困難となる。このゴルフボールの場合のように加振力が極端に弱い場合や極端に強い場合には、検査目的であるゴルフボールの割れや傷の検査とは関係の無い音が発生し、検査の信頼性を大きく低下させることとなる。しかし、このように加振力による補正に範囲の制限を設けることにより、加振力が極端に変化した場合に発生する衝突音の周波数特性が変化する対象物に対しても確実に判定でき、加振力の極端な変化による誤判定を防止することができる。
【0046】
なお、補正は、振動信号の大きさに応じて波形分析結果と音圧基準値、つまり比較器9における基準値設定器10に記憶されている音圧基準値との関係を補正すればよいので、増幅器12の出力、各アナログBPF5の出力、整流器6の出力、あるいは基準値設定器10に記憶されている音圧基準値などのうちの一つあるいは複数を補正するようにしてもよい。
【0047】
また、加振力センサ11にて検出される振動の大きさが所定値を超えたときに、ピークホールド14、抽出手段としてのピークホールド7に動作の開始を指令するトリガ検出器17を設けたので、周囲からのノイズ等の影響を軽減し、検査の信頼性を向上させることができる。
【0048】
なお、トリガ検出器17のトリガ信号をピークホールド7に与えるものを示したが、マイクロホン3、増幅器4、変換手段としてのアナログBPF5、整流器6、補正手段としての補正器8、比較手段としての比較器9等に与えて最大値の記憶動作の開始あるいは比較動作の開始等をするようにしても同様の効果を奏する。
【0049】
基準値設定モード、検査モードの各モード時においてレンジオーバ検出器21は、振動信号についてピークホールド14から得られる最大値を入力し、最大値が所定の関係を超えたときにレンジオーバ警報を出力する。レンジオーバ検出器34は、音の信号についてピークホールド7から得られる最大値を入力し、計測信号が所定の関係を超えたときにレンジオーバ警報を出力する。
【0050】
この時の所定の関係とは、例えば計測レンジの99%として設定しておく。この場合、99%を超えた信号が入力されるとレンジオーバ警報が出力される。
【0051】
また、基準値設定モード時の最初の1回目の衝突で適切な計測レンジを設定することにより、手動で計測レンジを設定する煩わしさが無くなり、操作性が向上する。
さらに、手動で設定する際にはレンジが適切でない場合にはS/N比が低下し、検査の信頼性が低下するが、自動で適切なレンジに設定されるためこのようなことは発生せず、検査の信頼性を向上させた打音傷検査装置を得ることが可能となる。
【0052】
また、各信号の入力が飽和する直前でレンジオーバ警報を出力することで、増幅器の飽和による誤判定を防止し、検査の信頼性を向上させた打音傷検査装置を得ることが可能となる。
なお、アナログBPFを用いることで検査を高速に行うことが可能となる。
【0053】
実施の形態2.
図2は、この発明の他の実施の形態を示すゴルフボールの傷検査装置の構成図である。図2において、次の点が図1に示したものと異なるが、他の構成については図1に示したものと同様のものである。ピークホールド7で抽出された各周波数帯域毎の音圧の最大値は補正器8にて補正された後、基準設定器10へ入力される点、及び基準設定器10は入力された最大値の平均値を求めて音圧基準値とするとともに最大値のばらつきの範囲を求め、そのばらつきの範囲に基づき比較基準を決定する機能を有している点が異なる。
【0054】
次に、動作について説明する。まず、健全性を確認したゴルフボール1を1個用意し、受け台2上に落下させ衝突させる。このとき受け台2に発生した振動を加振力センサ11でゴルフボール1に加えられた外力として検出して電気信号に変換し、ピークホールド14にて最大値を抽出する。ピークホールド14にて抽出された最大値は、基準設定器16に外力基準値として記憶する。このとき、比率演算器15は比率1を出力する。これらは、図1の実施の形態で示したものと同様である。
【0055】
一方、ピークホールド7により抽出された音圧信号の最大値は、上記比率演算器15が出力する比率が1であるので補正器8をそのまま通過し基準設定器10に入力され、音圧基準値として記憶される。
【0056】
次に、音圧信号の平均値を求め音圧基準値とする。また、最大値のばらつきを求める。傷のない健全と思われるゴルフボール1を100個用意し、順次受け台2上に落下させる。ゴルフボールは、図示していないが落下口が受け台2から所定の高さに設定された落下用の樋から順次落下させる。落下毎に振動センサ11から得られる音圧の最大値、すなわちピークホールド7にて抽出された各周波数帯域毎の最大値は、補正器8にて比率演算器15がその都度算出する比率にて補正され、基準値設定器10に記憶される。すなわち、比率が1.05ならば、今回の加えられた外力は先に基準設定器16に外力基準値を記憶させたときの外力の1.05倍であったとして、1.05で除して正規化する。このようにして、各周波数帯域毎に100個のデータを得る。なお、この実施の形態では、ゴルフボールを所定の高さの所から落下させるので、受け台2との衝突する力の大きさのばらつきは小さいので、比率演算器15や補正器8を省略してもよい。
【0057】
そして、その平均値を求めて音圧基準値とする。また、最大値のばらつきの範囲を各周波数帯域毎に求める。例えば、周波数帯域番号A1においては、音圧基準値を100として95〜110、周波数帯域番号A2においては90〜105のごとく、以下全28帯域についてそのばらつきの範囲を求める。なお、標準偏差σの3倍をはみ出した場合は、不良品によるデータであったとして、このデータを除外して最大値の平均値及びばらつきの範囲を求める。このようにすれば、健全と思われるゴルフボールの中に万一不良品があっても、これを音圧基準値や比較基準に取り込むことを防止できる。
【0058】
そして、上記のようにして定めたばらつきの範囲内ならば比較器9は比較結果信号を出さず、これをはみ出せば比較結果信号を警報器18に出力するように比較基準を定める。また、サンプル中では予想出来ないばらつきを考慮する必要がある場合には各周波数毎の音圧基準値のばらつきに対してたとえば10%等の余裕を構じる等の処置を行っても良い。
【0059】
警報器18においては、正常であっても上記100個から得られたデータからはみ出す可能性もあるとして、比較結果信号が1個出されただけでは異常と判定せず、3個以上の時に異常と判定して、警報するように判定基準を定める。
【0060】
以上のように、十分な個数の健全と思われるゴルフボールを衝突させて振動信号の周波数帯域毎の時系列信号の最大値を求め、これを基準にして比較を行えば、ゴルフボールにしかるべき欠陥があれば上記周波数帯域のどこかで異常が現れ比較基準からはみ出すので、確実に欠陥を検出できる。従って、あえて最初に欠陥のあるゴルフボールを集めてきてデータをとらなくてもよい。
なお、上記の方法で設定した比較基準を、さらに後の実際の検査において得られたデータによって修正し、学習させることもできる。
【0061】
実施の形態3.
実施の形態1では各周波数帯域毎の最大値を求めるのに、アナログBPFを用いたが、デジタルBPFを用いてもよい。この実施の形態ではデジタルBPFを用いた場合について図3の構成図に基づいて説明する。図3において、51は整流器13からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、52は増幅器4からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器である。53はA/D変換器51の出力の最大値を演算する最大値演算器である。
【0062】
61はデジタル信号を各周波数帯域毎の時系列信号に変換する変換手段としてのデジタルBPFである。デジタルBPF61は、例えば図1の実施の形態と同様に人間の可聴域である20〜20,000Hzをほぼ網羅すべく31.25〜16,000Hzまでの9オクターブ分を対象とし、1/3オクターブ毎の分解能を与えるとして全28バンド分設ける。62はデジタルBPFからの交流信号を整流する整流器、63は整流されたデジタル信号から最大値を抽出する抽出手段としての最大値演算器である。
【0063】
64は補正器であり、比率演算器15から得られる比率により最大値演算器63が出力する最大値を補正して補正値を出力する。65は比較器であり、補正器64の出力と基準値設定器66に格納された音圧基準値とを所定の方法で比較する。なお、整流器62、ピークホールド回路63、補正器64、比較器65、基準値設定器66は全28バンド分設けられたデジタルBPF61にそれぞれ対応して28個設けられている。
【0064】
41は最大値演算器であり、整流器31により整流されたA/D変換器52からのデジタル信号から最大値を抽出する。
その他の構成については、図1に示されたものと同様のものであるので、相当するものに同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
次に動作を説明する。まず、基準となる対象物である健全なゴルフボールを用いて各基準値を設定する基準値設定モードについて説明する。
A/D変換器51は、整流器13からのアナログの直流信号をデジタル信号に変換する。このとき、A/D変換器51はトリガ検出器17からのトリガ信号を受けて動作を開始し、衝突による対象物の発生音圧が所定値以下に減衰するまでの一定の時間継続して行われる。最大値演算器53は、A/D変換器51からデジタル信号の最大値を抽出し、この最大値が基準値設定器16に外力基準値として収納される。
【0066】
同様に、衝突により発生した音波は、マイクロホン3で電気信号に変換され、増幅器4で適当な利得を与えらえれた後、A/D変換器52でデジタル信号に変換される。このとき、A/D変換器52はトリガ検出器17からのトリガ信号により動作を開始し、衝突による対象物の発生音圧が所定値以下に減衰するまでの一定時間の間動作する。この変換されたデジタル信号は、それぞれ異なった周波数帯域を通過させるように設定された28個のデジタルBPF61に入力され、各周波数帯域毎の時系列信号に分離される。
【0067】
デジタルBPF61で各周波数帯域毎に分離された時系列信号は整流器62で直流信号に変換され、最大値演算器63に入力される。最大値演算器63は、この直流信号の最大値を抽出し、基準値設定器66に格納する。このようにして各周波数帯域毎の瞬間的な最大値が抽出され、音圧基準値として基準値設定器66に格納される。
【0068】
このような基準値設定モードの動作により、基準値設定器16には衝突の強さを示す情報である外力基準値が格納され、基準値設定器66には打音の各周波数帯域における瞬間的な最大音圧を示す情報である音圧基準値が格納される。
【0069】
次に対象物の検査を行う検査モードについて説明する。まず受け台2上に対象物であるゴルフボール1を落下させる。このとき基準値設定モードの時と同様に、受け台2に発生した振動を加振力センサ11で電気信号に変換し、増幅器12で増幅すると共に整流器13で直流に変換する。トリガ検出器17も同様に整流器13からの直流信号からトリガ信号を出力し、A/D変換器51はトリガ出力から音圧減衰までの一定時間、直流信号をデジタル信号に変換する。最大値演算器53はデジタル信号の最大値を抽出し出力する。
【0070】
検査モードの場合、最大値演算器53により抽出された最大値は比率演算器15に入力され、比率演算器15は、最大値と基準値設定器16に格納されている外力基準値との比率を演算し出力する。
【0071】
衝突により発生した音波も基準値設定モードと同様に、マイクロホン3で電気信号に変換すると共に増幅器4で増幅し、A/D変換器52によりデジタル信号に変換される。このときA/D変換器52の動作はトリガ検出器17からのトリガ信号により開始され、音圧減衰までの一定時間行われる。デジタル信号はデジタルBPF61により各周波数帯域毎の時系列信号に分離され、整流器62で直流信号に変換され、最大値演算器63に入力される。最大値演算器63は、直流信号の最大値を抽出し出力する。
【0072】
検査モードの場合、最大値演算器63により抽出された最大値は補正器64に入力され、補正器64は比率演算器15から得られる比率に基づき適切な補正値を演算し最大値演算器63から得られる最大値を補正し出力する。
【0073】
補正された最大値は、比較器65で基準値設定器66に格納された音圧基準値と比較され、あらかじめ設定された所定の関係から外れた場合に比較結果信号が警報器18に出力される。設定する所定の関係は、図1に示した実施の形態と同様に、例えばあるバンドにおいては、補正された最大値がそのバンドの音圧基準値に対して80%〜120%の範囲内であるとき正常として比較結果信号は出さず、この範囲から外れたとき、すなわち80%未満及び120%超のとき異常として比較結果信号を出力するように設定しておく。また、他の、あるバンドにおいてはそのバンドの音圧基準値に対して70%〜110%から外れたとき範囲外として比較結果信号を出すように設定しておく。
【0074】
また、音圧基準値が全体的な音圧に比べて小さい場合には、下限側の比較を解除する等の処置により主成分で無い周波数帯域において誤って比較結果信号を出さないようにする。
警報装置18は、入力された比較結果信号があらかじめ設定された数、例えば2個を超えると報知要としてブザーを鳴らすとともにランプを点滅して警報する。
【0075】
このように各周波数帯域毎の時系列信号を求める手法としてデジタルBPF61を用いることで装置を小型化できるとともに、ソフトウェア(S/W)で処理するためフィルタ特性の変更や診断する周波数帯域の追加などに柔軟に対応することが可能である。
【0076】
実施の形態4.
図4は、さらにこの発明の他の実施の形態を示すゴルフボールの傷検査装置の構成図である。図3の実施の形態では各周波数帯域毎の最大値を求めるのに、デジタルBPFを用いたが、ウェーブレット変換(Wavelet Transform)を用いてもよい。以下、ウェーブレット変換を用いた場合について図4の構成図に基づいて説明する。
【0077】
この実施の形態においては、ウェーブレット変換演算器71を設け、各周波数帯域毎の時系列信号を求めるようにしたものであり、その他の動作は、図3の実施の形態と同様である。なお、ウェーブレット変換は、その解析演算により実効値を算出するので、整流手段を設ける必要はない。
【0078】
図において、71は変換手段としてのウェーブレット変換(Wavelet Transform)演算器であり、基底関数(マザーウェーブレット)を拡大あるいは縮小することにより、デジタル音圧信号を各周波数帯域毎の時系列信号に分離する。ウェーブレット変換された信号は、28組設けられた最大値演算器63、補正器64、比較器65に入力される。
【0079】
比較器65は、図1や図3に示されたものと同様に基準値設定器66に格納された音圧基準値と比較され、あらかじめ設定された所定の関係に該当する場合に比較結果信号を警報器18に出力する。
【0080】
この際に、測定波形や観測したい現象に合わせて適切な基底関数を選択することにより周波数の分離特性が向上し、検査の信頼性を向上させることができる。また、ウェーブレット変換演算器を用いることで装置を小型化することができる。
【0081】
実施の形態5.
図5は、さらにこの発明の他の実施の形態を示すゴルフボールの傷検査装置の構成図である。図3の実施の形態では各周波数帯域毎の最大値を求めるのに、デジタルBPFを用いたが、短時間FFTを用いてもよい。以下、短時間FFTを用いた場合について図5に基づいて説明する。この実施の形態においては、短時間FFT演算器81を設け、各周波数帯域毎の時系列信号を求めるようにしたものである。
【0082】
その他の動作は、図3に示した実施の形態と同様である。なお、短時間FFTは、その解析演算により実効値を算出するため、整流手段を設ける必要はない。図5において、81は変換手段としての短時間FFT(SFFT:Short−Time Fast Fourier−Transform)演算器であり、各周波数帯域毎の時系列信号を求めるようにしたものである。
【0083】
このようにフーリエ変換器である短時間FFT演算器81を設けて各周波数帯域毎の時系列信号を求めることにより、周波数の分解能を向上させることができる。
【0084】
従って、短時間FFTの優れた分解能を利用して、ゴルフボールの性状や構成により周波数の変化に特徴が現れるといった場合に診断の信頼性を向上させることができる。また、短時間FFT演算器を用いることで装置を小型化することができる。
【0085】
また、上記各実施の形態においては受け台2上にゴルフボール1を落下させて外力を加えるものを示したが、他の手段により外力が加えられるもの、例えば柔らかいコイルスプリング上にゴルフボールを乗せてこれを小さなハンマで軽く打撃を与えたり、電磁波やシリンダ等により加振力を与えたりすることもできる。
【0086】
上記各実施の形態においては、可聴周波数のものを音、これより広い周波数範囲のものを振動と呼んでいるが、この発明においては、傷検査装置は音によるものに限らず、音と振動を区別せず、振動によるものを含むものである。
【0087】
なお、警報器18により警報するものを示したが、このような判定における各信号や演算された値、例えば図1の実施の形態において設定器10に記憶された各音圧基準値及び比較器9に設定された比較結果信号を出すか否かの基準となる範囲、比率演算器15により算出された補正値、判定における各補正器8からの補正された最大値等を点や帯状にCRTに表示し、かつ範囲外となったものは赤色等で色分けするなどして、容易に確認できるようにして、操作性を向上させることもできる。
【0088】
補正器8により補正された最大値を正常範囲に重ねて図示し、視覚的に把握できるようにすることもできる。このとき、比較結果が所定の関係から外れた場合は、そのとき検出された最大値を赤色で表示する等してもよい。
【0089】
また、実施の形態3〜5に示した音圧基準値、比較基準の代りに、実施の形態2に示したものと同様の定め方により求めた音圧基準値、比較基準を用いることもできる。
【0090】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したように構成されているので、次に記載するような効果を奏する。
【0091】
外力を加えられたゴルフボールから発生する振動を振動信号として検出する信号検出手段と、振動信号を複数の所定の周波数帯域毎の時系列信号に変換する変換手段と、時系列信号の最大値を周波数帯域毎に抽出する抽出手段と、各最大値をあらかじめ設定された周波数帯域毎の振動基準値と比較する比較手段とを設けたので、打音の特徴でもある発生直後の大きな音圧の周波数分布を的確に把握でき、比較の信頼性を向上させることができる。
【0092】
また、変換手段は振動信号の所定の周波数帯域の周波数成分を通過させる複数の帯域フィルタであり、抽出手段は各帯域フィルタを通過した周波数成分を整流しこの整流された周波数成分の各ピーク値の内最大のものを各々最大値として抽出するものであることを特徴とするので、変換手段を帯域フィルタとすると、処理を高速に行うことができ、装置も簡易で、安価になる。また、抽出手段は整流された周波数成分から最大値を抽出するので、振動信号の負符号部に最大値がある場合でも検出でき、振動信号が急激に減衰する場合でも的確に比較できる。
【0093】
さらに、変換手段は振動信号をウェーブレット変換するウェーブレット変換手段であり、抽出手段はウェーブレット変換手段による変換結果に基づき周波数帯域毎の最大値を抽出するものであることを特徴とするので、各周波数帯域毎の時系列信号に分離する際の特性を向上させることができ、比較及び検査の信頼性を向上させることが可能となる。
【0094】
そして、変換手段を短時間高速フーリエ変換手段とし、抽出手段を短時間高速フーリエ変換手段による変換結果に基づき周波数帯域毎の最大値を抽出するものとしたので、周波数の分解能を向上させることができる。
【0095】
さらに、加えられた外力の大きさを検出する外力検出手段を設けるとともに、外力の大きさに応じて振動信号、時系列信号、最大値、及び振動基準値の少なくとも1つを補正する補正手段を設けたことを特徴とするので、外力の大きさに応じて補正することにより、比較手段における比較において外力の大きさのばらつきの影響を受けるのを防止でき、比較の信頼性が向上する。
【0096】
また、加えられた外力の大きさを検出する外力検出手段を設けるとともに、外力の大きさが所定値を超えたとき信号検出手段、変換手段、抽出手段、及び比較手段の少なくとも1つの動作の開始を指令する指令手段を設けたことを特徴とし、指令が出されるまで動作を開始しないので、指令がないときの周囲の騒音、振動、雑音等を振動信号として誤って処理をするおそれがない。従って、これらによる影響を防止でき、検査の信頼性が向上する。
【0097】
さらに、加えられた外力の大きさを外力信号として検出する外力検出手段を設けるとともに、外力信号を予め設定された外力基準値にて除した比率を求める比率演算手段と、上記比率に基づき振動信号と時系列信号と最大値と振動基準値とのうちの少なくとも1つを補正することにより比較手段における最大値と振動基準値との関係を変更する補正手段と、上記比率が所定範囲内であるか否かを判定する比率判定手段とを設けたことを特徴とするので、所定範囲外となるような不適切な外力を与えたことが判り、比較の信頼性を向上させることができる。
【0098】
さらに、外力信号を増幅して増幅外力信号として出力する外力信号増幅手段と振動信号を増幅して増幅振動信号として出力する振動信号増幅手段とを設け、比率演算手段を増幅外力信号を外力信号として用いるものとし、変換手段を増幅振動信号を振動信号として用いるものとし、増幅外力信号と増幅振動信号との少なくとも一方の波高値が所定値を超えたことを検出するレンジオーバ検出手段を設けたことを特徴とするので、増幅外力信号や増幅振動信号が所定値を超えたことを、すなわち外力信号増幅手段や振動信号増幅手段が飽和するような大きな信号が入力されたことを検出して、検査の信頼性の確保が可能となる。
【0099】
また、外力信号増幅手段と振動信号増幅手段との少なくとも一方の増幅率を自動的に設定する増幅率自動設定手段を設けたことを特徴とするので、増幅外力信号や増幅振動信号が適切な出力範囲となるように増幅率を容易に設定することができ、操作性が向上する。また、S/N比の低下を防止でき検査の信頼性も向上する。
【0100】
そして、比較手段は、所定の状態のゴルフボールに外力が加えられたときに発生する振動信号に基づいて設定された振動基準値に基づき比較を行うものであることを特徴とするので、ゴルフボールの状態に即した振動基準値を容易に設定することができ、検査の信頼性を向上させることができる。
【0101】
さらに、比較手段は、健全なゴルフボールを衝突部材上に落としたときに発生する振動信号に基づいて設定された振動基準値に基づき比較を行うものであることを特徴とするので、時系列信号のなかから感度よく最大値を抽出でき、衝突の特徴でもある発生直後の音あるいは振動の特徴を的確に把握して比較を行い、小さい欠陥まで検出できる。
【0102】
また、信号検出手段は、ゴルフボールを衝突部材上に落下させたときに上記衝突部材に発生する振動を振動信号として検出するものであることを特徴とするので、ゴルフボールを落下させることにより外力を加えるため、加える外力が安定し、検査の信頼性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態であるゴルフボールの傷検査装置の構成図である。
【図2】この発明の他の実施の形態であるゴルフボールの傷検査装置の構成図である。
【図3】さらに、この発明の他の実施の形態であるゴルフボールの傷検査装置の構成図である。
【図4】さらに、この発明の他の実施の形態であるゴルフボールの傷検査装置の構成図である。
【図5】さらに、この発明の他の実施の形態であるゴルフボールの傷検査装置の構成図である。
【符号の説明】
1 ゴルフボール、2 受け台、3 マイクロホン、4 増幅器、
5 アナログBPF、6 整流器、7 ピークホールド回路、8 補正器、
9 比較器、10 基準値設定器、11 加振力センサ、12 増幅器、
13 整流器、14 ピークホールド、15 比率演算器、
16 基準値設定器、17 トリガ検出器、18 警報器、19 比率判定器、
20 レンジ自動設定器、21 レンジオーバ検出器、31 整流器、
32 ピークホールド、33 レンジ自動設定器、34 レンジオーバ検出器、
41 最大値演算器、51,52 A/D変換器、53 最大値演算器、
61 デジタルBPF、62 整流器、63 最大値演算器、64 補正器、
65 比較器、66 基準値設定器、71 ウェーブレット変換演算器、
81 短時間FFT演算器。
Claims (12)
- 外力を加えられたゴルフボールから発生する振動を振動信号として検出する信号検出手段と、上記振動信号を複数の所定の周波数帯域毎の時系列信号に変換する変換手段と、上記時系列信号の最大値を上記周波数帯域毎に抽出する抽出手段と、上記各最大値をあらかじめ設定された上記周波数帯域毎の振動基準値と比較する比較手段とを備えたゴルフボールの傷検査装置。
- 変換手段は振動信号の所定の周波数帯域の周波数成分を通過させる複数の帯域フィルタであり、抽出手段は上記各帯域フィルタを通過した上記周波数成分を整流しこの整流された周波数成分の各ピーク値の内最大のものを各々最大値として抽出するものであることを特徴とする請求項1に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 変換手段は振動信号をウェーブレット変換するウェーブレット変換手段であり、抽出手段は上記ウェーブレット変換手段による変換結果に基づき周波数帯域毎の最大値を抽出するものであることを特徴とする請求項1に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 変換手段は振動信号を短時間高速フーリエ変換する短時間高速フーリエ変換手段であり、抽出手段は上記短時間高速フーリエ変換手段による変換結果に基づき周波数帯域毎の最大値を抽出するものであることを特徴とする請求項1に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 加えられた外力の大きさを検出する外力検出手段を設けるとともに、外力の大きさに応じて振動信号、時系列信号、最大値、及び振動基準値の少なくとも1つを補正する補正手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 加えられた外力の大きさを検出する外力検出手段を設けるとともに、外力の大きさが所定値を超えたとき信号検出手段、変換手段、抽出手段、及び比較手段の少なくとも1つの動作の開始を指令する指令手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 加えられた外力の大きさを外力信号として検出する外力検出手段を設けるとともに、上記外力信号を予め設定された外力基準値にて除した比率を求める比率演算手段と、上記比率に基づき振動信号と時系列信号と最大値と振動基準値とのうちの少なくとも1つを補正することにより比較手段における最大値と振動基準値との関係を変更する補正手段と、上記比率が所定範囲内であるか否かを判定する比率判定手段とを設けたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 外力信号を増幅して増幅外力信号として出力する外力信号増幅手段と振動信号を増幅して増幅振動信号として出力する振動信号増幅手段とを設け、比率演算手段を上記増幅外力信号を外力信号として用いるものとし、変換手段を上記増幅振動信号を振動信号として用いるものとし、上記増幅外力信号と上記増幅振動信号との少なくとも一方の波高値が所定値を超えたことを検出するレンジオーバ検出手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 外力信号増幅手段と振動信号増幅手段との少なくとも一方の増幅率を自動的に設定する増幅率自動設定手段を設けたことを特徴とする請求項8に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 比較手段は、所定の状態のゴルフボールに外力が加えられたときに発生する振動信号に基づいて設定された振動基準値に基づき比較を行うものであることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 比較手段は、健全なゴルフボールを衝突部材上に落としたときに発生する振動信号に基づいて設定された振動基準値に基づき比較を行うものであることを特徴とする請求項10に記載のゴルフボールの傷検査装置。
- 信号検出手段は、ゴルフボールを衝突部材上に落下させたときに上記衝突部材に発生する振動を振動信号として検出するものであることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のゴルフボールの傷検査装置。
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