JP3604640B2 - 自動車用フロア敷設材、および該自動車用フロア敷設材のリサイクル方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リサイクル性に優れた自動車用フロア敷設材およびそのリサイクル方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車の室内の床面(フロアパネル)は、カーペット類の敷設材(自動車用フロアカーペット)で被覆することにより、装飾が施されている。
【0003】
一般に、自動車のフロアパネルには、細かな凹凸が多くあって平坦でないため、フロアパネル上に敷設する自動車用フロアカーペットは、フロアパネルに沿った形状に成形する必要がある。このため、自動車用フロアカーペットの裏面に熱可塑性樹脂からなる裏打ちを施し、この裏打ちを加熱して裏打ちを可塑化させた状態で、自動車用フロアカーペットをプレス成形によって所望の形状に成形する。
【0004】
自動車用フロアカーペットには、意匠性の他にも種々の特性が必要とされる。自動車用フロアカーペットに必要とされる特性としては、車外から自動車の室内に伝播する振動や音波を減衰、遮断する防音性、乗員の足元の触感を柔らかく保つクッション性、その他、保温性、吸湿性等が挙げられる。これらの特性を同時に満たすためには、自動車用フロアカーペットをフロアパネルに敷設する際、フロアパネルと自動車用フロアカーペットとの間に各種のフェルトを介在させることが多い。
【0005】
これらのフェルトの素材としては、合成繊維や綿等がある。また、フェルトの形態としては、繊維をバインダーで結合したバインダーフェルトや、繊維をニードルで突き固めたニードルパンチフェルト等がある。これらフェルトは、自動車毎の特性に合わせて繊維密度や厚さが設定される。特に、防音性については、必要とされるフェルトの形態が、自動車の形状等によって異なるため、防音特性を車種毎に評価しながらフェルトの形態が設定される。また、場合によっては複数種のフェルトを組み合わせて用いることもある。
【0006】
これらフェルトは、カーペットと別体とするよりも、カーペットの裏面に貼着してカーペットと一体化したほうが、搬送やフロアパネルへの敷設等の手間が軽減され、合理的である。カーペットとフェルトとを一体化する具体的な方法としては、カーペットの成形時にカーペットの成形型内にフェルトを配置しておき、成形時に可塑化される熱可塑性樹脂製の裏打ちに対して一部フェルトの毛羽を入り込ませ、成形と同時にカーペットの裏面側の所要の部位にフェルトを貼着する方法がある。
【0007】
ところで、自動車用フロアカーペットに対する新たな要求事項として、近年、リサイクル性に優れることが求められるようになってきている。すなわち、耐用年数を過ぎた自動車が廃棄された場合、従来のように粉砕して埋め立て処分を行うのではなく、再資源化できる部品をできるだけ多く回収し、リサイクルすることが求められている。この種のリサイクルにおいて現実的な問題は、回収にかかる手間をできるだけ少なくすることである。またその一方で、異種材料が混在する部品から同一種類の材料をまとめて回収しなくては、回収物の再利用価値が低下してしまう。
【0008】
このような要求に応じるために、自動車用フロアカーペットにおいても、リサイクルを容易にするために素材を統一しようとする各種の提案がなされてきた。例えば、特開平5−211935号公報は素材を6ナイロンに統一することを開示し、特開平6−72223号公報は素材をポリエステルに統一することを開示し、特開平8−53026号公報は素材をポリプロピレンに統一することを開示する。これらの発明では、いずれもカーペットの素材を一種類に限定することで、リサイクルが容易な構成としている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現実的には、上述のように自動車用フロアカーペットはその裏面にフェルト類が貼着により一体化されて用いられることが多いので、リサイクルのためには、フェルトを含めたフロアカーペット全体の素材の統一を図る必要があるが、上述した従来の提案ではフェルトを含めて素材を統一するに至っていない。これは、フェルトの形態が前述のように自動車ごとの必要特性に合わせて、形態(素材、密度、厚さ等)を設定していくものであるから、カーペットの素材に合わせてフェルト素材を統一的に設定することが困難であるからである。言い換えると、自動車用フロアカーペットとして求められる防音特性等の諸特性を満たすためには、カーペットと異なる素材からなるフェルトを使用することが不可欠となる場合があるからである。また、自動車用フロアカーペットの製造コストを抑えるため、フェルトとして安価な再生雑綿フェルトを使用することもあり、このことも、カーペットの素材とフェルトの素材を統一できない要因となっている。
【0010】
そこで本発明は、自動車用フロア敷設材としてカーペットの裏面にカーペットと異なる素材のフェルトを貼着した構成においても、リサイクルを円滑に行える、自動車用フロア敷設材、およびそのリサイクル方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の自動車用フロア敷設材は、自動車のフロアに敷設される敷設材であって、
カーペットと、
前記カーペットの裏面の少なくとも一部位に貼着され、前記カーペットと同種の素材からなる第1のフェルト層と、
前記第1のフェルト層の裏面に貼着され、前記カーペットと異種の素材を含む第2のフェルト層とを有し、
前記第2のフェルト層に前記カーペットに対して剥離方向の力を付加した際に、前記第1のフェルト層と前記第2のフェルト層との間での剥離、および前記第2のフェルト層内での破断に優先して、前記第1のフェルト層内で破断が生じ、前記第1のフェルト層の一部を伴って前記第2のフェルト層が前記カーペットから分離される性質を有することを特徴とする。
【0012】
上記のとおり構成された本発明の自動車用フロア敷設材では、カーペットおよび第1のフェルト層は、ともに同種の素材からなるが、第2のフェルト層は、これらとは異種の素材を含んでいる。そのため、この自動車用フロア敷設材の特にカーペットをリサイクルする場合には、カーペットと第2のフェルト層とを分離する必要がある。ここで、本発明の自動車用フロア敷設材は、特に、第2のフェルト層にカーペットに対して剥離方向の力を付加した際に、上述のように第1のフェルト層内で破断が生じ、第1のフェルト層の一部を伴って第2のフェルト層がカーペットから分離される性質を有している。したがって、カーペットと異種の素材はカーペット側から確実に分離され、結果的にリサイクル性が向上する。また、リサイクルに際して第2のフェルト層をカーペットから確実に分離させることができることにより第2のフェルト層の素材が限定されなくなるので、第2のフェルト層を、自動車用フロア敷設材に要求される諸特性に応じて自由に設計することが可能となる。
【0013】
上述した第1のフェルト層の層内破断をより効果的に生じさせるためには、第1のフェルト層と第2のフェルト層との層間剥離力および第2のフェルト層の層内破断力が0.1kg/cm以上で、かつ、第1のフェルト層の層内破断力が0.1kg/cm未満であることが好ましい。
【0014】
さらに、第1のフェルト層の層内破断が生じる位置を安定させるためには、第1のフェルト層に、その厚さ方向について繊維同士の結合度合いを不均質化することによって形成された易破断面を形成することが好ましい。第1のフェルト層は、ニードルパンチにより繊維を相互に絡め合わせたり、繊維を加熱によって相互に融着して形成することができる。易破断面は、第1のフェルト層の他の領域と比較して繊維の絡み度合い、または繊維の溶着を適宜設定することによって形成することができる。また、易破断面を、第1のフェルト層の厚さ方向について中央よりも第2のフェルト層に近い位置に形成することで、第2のフェルト層とともにカーペットから分離される第1のフェルト層の量が少なくなり、カーペットと同種の素材のリサイクル効率が向上する。
【0015】
また、本発明の自動車用フロア敷設材において、カーペットおよび第1のフェルト層は実質的にオレフィン系素材からなるものであってもよいし、第1のフェルト層および第2のフェルト層の少なくとも一方が複層体であってもよい。
【0016】
本発明の自動車用フロア敷設材のリサイクル方法は、上述した本発明の自動車用フロア敷設材のリサイクル方法であって、
前記自動車用フロア敷設材の前記第2のフェルト層を、前記カーペットに対して剥離する方向に引っ張り、前記カーペットから前記第2のフェルト層を剥離する工程と、
前記第2のフェルト層が剥離された前記カーペットを溶融処理し、再生樹脂を作製する工程とを有する。
【0017】
本発明の自動車用フロア敷設材のリサイクル方法によれば、上述した本発明の自動車用フロア敷設材を用いているので、単に、第2のフェルト層をカーペットに対して剥離する方向に引っ張って第2のフェルト層を剥離するだけで、素材に応じた分別を容易に行うことができ、その結果、特に付加的な処理を施すことなく、溶融処理によってカーペットから容易に再生樹脂が得られる。
【0018】
なお、本発明において、「同種の素材」とは、同時にリサイクル処理するのに適した複数種の素材を意味し、「異種の素材」とは、同時にリサイクル処理するのに適さない複数種の素材を意味する。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるフロア敷設材の斜視図であり、図2は、図1に示すフロア敷設材のA‐A線断面図である。
【0021】
フロア敷設材1は、裏打ち12が施されたカーペット11と、カーペット11の裏打ち12側の所望の領域に貼着された第1のフェルト層13と、第1のフェルト層13の裏面(裏打ち12に貼着されていない側の面)に貼着された第2のフェルト層14とを有する。以下に、これらについて詳細に説明する。
【0022】
(カーペットおよび裏打ち)
カーペット11は、オレフィン系の素材からなり、従来のこの種のフロア敷設材に用いられているものと同様のものを用いることができる。このようなカーペット11としては、基布に対してパイル糸をタフティングして立毛パイルを形成したタフトカーペットや、繊維を引きそろえ重ねたウェブを高密度の針板でニードリングして繊維を絡み合わせて形成したニードルパンチカーペットなどが挙げられる。
【0023】
いずれの場合でも、カーペット11の裏面に熱可塑性樹脂の裏打ち12を施し、カーペット繊維の安定化を図るとともに、加熱成形性を付与している。カーペット11は、この裏打ち12とともにプレス成形され、このフロア敷設材1が敷設される自動車の室内のフロア形状に沿った形状とされている。また、フロア敷設材1の敷設作業性を良好にするため、裏打ち12の単位面積質量は、200〜2000g/m2であることが好ましい。また、裏打ち12は、オレフィン系の素材からなる。
【0024】
(第1のフェルト層)
第1のフェルト層13は、カーペット11(裏打ち12も含む)と後述する第2のフェルト層14との貼着の仲立ちをするもので、カーペット11と同時にリサイクル処理するのに適した同種の素材からなるものであれば、どのようなものであってもよい。第1のフェルト層13の形態としては、例えば、短繊維のウェブを高密度の針板でニードリングして繊維を絡み合わせて成形した、ニードルパンチ法によるものや、加熱により繊維を相互に融着させた、熱成形法によるもの等が挙げられる。
【0025】
第1のフェルト層13は、第1のフェルト層13が厚み方向に引っ張られたときに第1のフェルト層13の特定の位置で安定的に層内破断を生じさせるようにするための易破断面を有するのが好ましい。易破断面は、第1のフェルト層13の中で他の領域と比較して繊維同士の結合度合いを低くした領域であり、第1のフェルト層13をその厚さ方向に二分するように、第1のフェルト層13の一端から他端へわたって形成されていることが望ましい。
【0026】
第1のフェルト層13がニードルパンチ法によるものである場合には、易破断面は、第1のフェルト層13の厚さ方向にニードリングを不均質化することによって形成することができる。より詳しくは、表裏両方向からのニードリングの深さの設定によって繊維の絡み度合いの少ない領域を設けることで、この繊維の絡み度合いの少ない領域を易破断面とすることができる。また、予め、易破断面とする領域に、繊維径の異なる繊維を配しておくことによって易破断面を形成することもできる。
【0027】
一方、第1のフェルト層13が熱成形法によるものである場合には、易破断面は、第1のフェルト層13の厚さ方向に繊維相互の融着を不均質化することによって形成することができる。より詳しくは、加熱条件の制御によって繊維の融着の少ない領域を設けることで、この繊維の融着の少ない領域を易破断面とすることができる。また、予め、易破断面とする領域に、他の領域の繊維と比べて融点の高い繊維を配しておくことによって易破断面を形成することもできる。
【0028】
第1のフェルト層13の厚さは10mm未満、単位面積質量は20〜200g/m2であることが好ましい。また、第1のフェルト層13は、カーペット11(裏打ち12)と同種素材であるオレフィン系素材からなり、特に、ポリプロピレン繊維からなることが好ましい。
【0029】
第1のフェルト層13の層内破断力は、後述するリサイクル時に第2のフェルト層14をカーペット11から容易に分離させるためには、0.1kg/cm未満であることが好ましい。ただし、層内破断力が小さすぎると、繊維がばらけやすくフェルトの形態を維持するのが困難になるため、層内破断力は少なくとも0.01kg/cm以上であることが好ましい。
【0030】
第1のフェルト層13は、カーペット11の成形と同時に、裏打ち12に対して一部フェルトの毛羽を入り込ませて貼着されることが好ましい。フェルトの毛羽が裏打ち12の内部に入り込んでいると、裏打ち12と第1のフェルト層13との界面での剥離は起こらない。
【0031】
(第2のフェルト層)
第2のフェルト層14は、カーペット11および第1のフェルト層13と同時にリサイクル処理をするのに適さない異種の素材からなり、その形態は主に自動車に必要とされる防音性等の各種必要性能によって決定される。
【0032】
例えば、カーペットおよび第1のフェルト層がオレフィン系素材であった場合、第2のフェルト層14としては、例えば、ポリエステル繊維のフェルトや、熱硬化性バインダーを含む再生雑綿フェルト等が用いられる。
【0033】
第2のフェルト層14は、第1のフェルト層13に対して、好ましくは接着剤(ホットメルト)で接着される。第1のフェルト層13と第2のフェルト層14との層間剥離力、および第2のフェルト層14の層内破断力は、いずれも第1のフェルト層13の層内破断力よりも大きく、その値は、好ましくは0.1kg/cm以上である。また、第2のフェルト層14は、第1のフェルト層13との機能の相違から、厚さは5〜50mmの範囲で第1のフェルト層13の厚さよりも厚く、単位面積質量は100〜3000g/m2であることが好ましい。第2のフェルト層14の下面(フロアパネルに接する面)は、フロアパネルに合う細かな凹凸が形成されていてもよい。
【0034】
次に、上述したフロア敷設材1の製造方法の一例について図3を参照して説明する。
【0035】
予め、裏打ち12が施されたカーペット11を、不図示の加熱装置によって、裏打ち12の軟化点以上の温度に加熱して裏打ち12を可塑化しておき、成形が可能な状態としておく。一方、カーペット11のプレス成形用の一対の型である上型21および下型22のうち下型22の所定の位置に、予め互いに接着されている第1のフェルト層13および第2のフェルト層14を、第1のフェルト層13を上に向けて設置しておく。
【0036】
この状態で、上型21と下型22との間に、カーペット11を、裏打ち12が第1のフェルト層13と対面するように配した後、上型21と下型22とを型閉し、さらに型締めする。これにより、カーペット11は所望の形状に成形され、また、それと同時に、第1のフェルト層13の表面の毛羽が、可塑化している裏打ち12に入り込み、第1のフェルト層13がカーペット11に貼着される。その後、上型21と下型22とを開き、カーペット11を取り出すことで、所望のフロア形状に成形されるとともに、予め接着されていた第1のフェルト層13と第2のフェルト層14とからなる積層フェルト層がカーペット11の裏面側に貼着されたフロア敷設材1が得られる。
【0037】
ここではフロア敷設材1の製造方法として、積層フェルト層とカーペット11とをプレス成形により一体化した例を述べたが、フロア敷設材1の製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば特開平11−48848号に開示されるように、裏打ち12が施されたカーペット11の裏面側に第1のフェルト層13を予め貼着しておく一方、プレス成形用の型内に第2のフェルト層14を設置しておき、第1のフェルト層13と第2のフェルト層14とをプレス成形により貼着し一体化することによりフロア敷設材1を製造することもできる。
【0038】
次に、フロア敷設材1のリサイクル方法について説明する。
【0039】
図4(a)に示すように、フロア敷設材1は、裏打ち12が施されたカーペット11の裏面側に第1のフェルト層13と第2のフェルト層14とが積層された構造となっている。ここで、カーペット11はオレフィン系の素材からなるのに対して第2のフェルト層14はカーペット11とは同時にリサイクルするのに適さない素材からなるので、フロア敷設材1のリサイクルに際しては、カーペット11と第2のフェルト層14とを分離する必要がある。
【0040】
第2のフェルト層14を分離するのに最も簡単な方法は、第2のフェルト層14に、カーペット11に対して剥離する方向の力を加えることである。この際、第2のフェルト層14の分離の形態として、以下の3つの形態がある。
【0041】
第1に、図4(b)に示すように、第1のフェルト層13に層内破断が生じ、第2のフェルト層14が第1のフェルト層13の一部を伴って剥離する形態である。これは、第1のフェルト層13の層内破断力が、第1のフェルト層13と第2のフェルト層14との層間剥離力、および第2のフェルト層14の層内破断力よりも小さい場合に生じる。この場合は、カーペット11側に第1のフェルト層13の一部が残るが、カーペット11と第1のフェルト層13とは同種の素材からなるので、そのままリサイクルすることが可能である。
【0042】
第2に、図5に示すように、第1のフェルト層13と第2のフェルト層14との界面で剥離する形態である。これは、第1のフェルト層13と第2のフェルト層14との層間剥離力が、第1のフェルト層13の層内破断力、および第2のフェルト層14の層内破断力よりも小さい場合に生じる。この場合は、第1のフェルト層13と第2のフェルト層14とを接着している接着剤がどちらの層に多く残るかは予想できない。また、接着剤を用いない場合であっても、界面での繊維の交じり合いは避けられない。したがって、カーペット11側に、カーペット11とは異種の素材が多少なりとも残ってしまうので、カーペット11のリサイクル性は悪化することになる。
【0043】
第3に、図6に示すように、第2のフェルト層14内で層内破断が生じる形態である。これは、第2のフェルト層14の層内破断力が、第1のフェルト層13の層内破断力、および第1のフェルト層13と第2のフェルト層14との層間剥離力よりも小さい場合に生じる。この場合は、カーペット11側に、カーペット11および第1のフェルト層13と異種の素材からなる第2のフェルト層14の繊維が多く残ることになり、カーペット11のリサイクルは困難となる。
【0044】
以上のことから、カーペット11のリサイクルを考慮した場合、最も好ましい分離形態は、図4(b)に示した第1の分離形態である。しかし、一般的に、カーペット11の裏面側に第1のフェルト層13および第2のフェルト層14を貼着した構成において、第2のフェルト層14に、カーペット11に対して剥離方向の力を付与することによって第1のフェルト層13での層内破断を安定して生じさせることはできない。特に、第1のフェルト層13の厚さよりも第2のフェルト層14の厚さが厚い構成では、第2のフェルト層14で層内破断が生じる場合が多い。
【0045】
そこで本実施形態では、前述したように、第1のフェルト層13の層内破断力、第1のフェルト層13と第2のフェルト層14との層間剥離力、および第2のフェルト層14の層内破断力のうち、第1のフェルト層13の層内破断力が最も小さくなるように構成している。これにより、第2のフェルト層14に、カーペット11に対して剥離する方向の力を加えたとき、3つの分離形態のうち第1の分離形態で、カーペット11から第2のフェルト層14が分離されることになる。
【0046】
その結果、カーペット11側には、裏打ち12と、第1のフェルト層13の一部とが含まれることになるが、これらは全てオレフィン系の素材で統一されている。そのため、裏打ち12および第1のフェルト層13の一部を含むカーペット11は、素材の融点以上の温度に加熱して混練、均一化した後、ストランド状に押し出し、裁断を経て、再生ペレットとすることにより、再利用することができる。カーペット11から再生リペレットを作製するのに際し、素材の統一がなされているため、相溶化剤等の添加も不要であり、物性の低下の少ない再生ペレットが得られる。
【0047】
一方、カーペット11から剥離された第2のフェルト層14は、第1のフェルト層13の一部が残り、異種素材を含むものであるが、フェルトの構成繊維を開繊し、繊維をひき揃えて混繊フェルトとして再び利用することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、カーペット11から異種素材である第2のフェルト層14を簡単かつ確実に分離することが可能となり、リサイクル性を向上させることができる。また、第2のフェルト層14を確実に分離することができることにより、第2のフェルト層14の素材の選択に際し、リサイクルのためにカーペット11の素材との統一を図る必要もなくなるので、防音特性等、フロア敷設材1に必要とされる諸特性を満足させるための設計の自由度が高くなる。
【0049】
また、前述したように第1のフェルト層13に易破断面を設けることで、第2のフェルト層14の分離をより容易かつ確実に行うことができる。この場合、易破断面を、第1のフェルト層13の厚さ方向について中央よりも第2のフェルト層14に近い位置に設けることで、第2のフェルト層14とともに分離される第1のフェルト層13の量を少なくすることができ、カーペット11と同種の素材(本実施形態でいえばオレフィン系素材)のリサイクル効率をより向上させることができる。
【0050】
上述した実施形態では、第1のフェルト層13および第2のフェルト層14は、それぞれ単層のものとして説明したが、少なくとも一方を複層体で構成してもよい。フェルト層を複層体で構成する場合、少なくとも第1のフェルト層13については、それを構成する各層(単位層)はカーペット11と同種素材で構成される。また、この場合における第1のフェルト層13の層内破断は、第1のフェルト層13を構成するいずれかの単位層内での破断のみを意味するのではなく、互いに隣接する単位層の界面で破断する場合も含む。複層化された第1のフェルト層13に易破断面を形成する場合、この単位層の界面に易破断面を形成することも可能である。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、自動車用フロア敷設材の一部を構成する第2のフェルト層にカーペットに対して剥離方向の力を付加した際に、第1のフェルト層内で優先的に破断が生じ、第1のフェルト層の一部を伴って第2のフェルト層がカーペットから分離される性質を有しているので、第2のフェルト層が、カーペットおよび第1のフェルト層と異種の素材を含んでいても、カーペット側から異種の素材を簡単かつ確実に分離することができ、その結果、リサイクルも容易に行うことができるようになる。また、第2のフェルト層の素材が限定されなくなるので、第2のフェルト層の設計の自由度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるフロア敷設材の斜視図である。
【図2】図1に示すフロア敷設材のA−A線断面図である。
【図3】図1に示すフロア敷設材の製造方法の一例を説明する図である。
【図4】図1に示すフロア敷設材における、カーペットからの第2のフェルト層の分離形態を示す図である。
【図5】第1のフェルト層と第2のフェルト層との層間剥離力が最も小さい場合の、カーペットからの第2のフェルト層の分離形態を示す図である。
【図6】第2のフェルト層の層内破断力が最も小さい場合の、カーペットからの第2のフェルト層の分離形態を示す図である。
【符号の説明】
1 フロア敷設材
11 カーペット
12 裏打ち
13 第1のフェルト層
14 第2のフェルト層
21 上型
22 下型
Claims (9)
- 自動車のフロアに敷設される敷設材であって、
カーペットと、
前記カーペットの裏面の少なくとも一部位に貼着され、前記カーペットと同種の素材からなる第1のフェルト層と、
前記第1のフェルト層の裏面に貼着され、前記カーペットと異種の素材を含む第2のフェルト層とを有し、
前記第2のフェルト層に前記カーペットに対して剥離方向の力を付加した際に、前記第1のフェルト層と前記第2のフェルト層との間での剥離、および前記第2のフェルト層内での破断に優先して、前記第1のフェルト層内で破断が生じ、前記第1のフェルト層の一部を伴って前記第2のフェルト層が前記カーペットから分離される性質を有することを特徴とする自動車用フロア敷設材。 - 前記第1のフェルト層と前記第2のフェルト層との層間剥離力および前記第2のフェルト層の層内破断力が0.1kg/cm以上であり、前記第1のフェルト層の層内破断力が0.1kg/cm未満である、請求項1に記載の自動車用フロア敷設材。
- 前記カーペットおよび前記第1のフェルト層が実質的にオレフィン系素材からなる、請求項1または2に記載の自動車用フロア敷設材。
- 前記第1のフェルト層には、前記第1のフェルト層の厚さ方向について繊維同士の結合度合いを不均質化することによって形成された易破断面を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動車用フロア敷設材。
- 前記第1のフェルト層は、ニードルパンチにより繊維を相互に絡め合わせて形成されたものであり、前記易破断面は、前記第1のフェルト層の他の領域と比較して前記繊維の絡み度合いの少ない領域である、請求項4に記載の自動車用フロア敷設材。
- 前記第1のフェルト層は、繊維を加熱により相互に融着して形成されたものであり、前記易破断面は、前記第1のフェルト層の他の領域と比較して前記繊維の融着の少ない領域である、請求項4に記載の自動車用フロア敷設材。
- 前記易破断面は、前記第1のフェルト層の厚さ方向について中央よりも前記第2のフェルト層に近い位置に形成されている、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の自動車用フロア敷設材。
- 前記第1のフェルト層および前記第2のフェルト層の少なくとも一方が複層体である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の自動車用フロア敷設材。
- 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の自動車用フロア敷設材のリサイクル方法であって、
前記自動車用フロア敷設材の前記第2のフェルト層を、前記カーペットに対して剥離する方向に引っ張り、前記カーペットから前記第2のフェルト層を剥離する工程と、
前記第2のフェルト層が剥離された前記カーペットを溶融処理し、再生樹脂を作製する工程とを有する、自動車用フロア敷設材のリサイクル方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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