JP3603822B2 - ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents

ポリカーボネートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はジフェニルカーボネートとビスフェノールA等のアルコール類を原材料とし、反応触媒,色調剤等の添加剤を混合してポリカーボネートをエステル交換法にて製造するのに好適なポリカーボネートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
日刊工業新聞社発行「ポリカーボネート樹脂」第66頁に記載の立形攪拌槽を使用する方法においては設備が大型化するにつれ、連続処理には多くの攪拌槽が必要となり、経済的でない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
経済的な装置構成にするためには、完全混合槽列モデルにおいて、数多くの完全混合槽を保有できる横形攪拌槽を用いるのが効果的である。
【0004】
機械工学便覧のC.エンジニアリング編C1−43の図2.49(b)に記載されているメガネ翼重合機は完全混合槽列数が多くとれ、理想的な押し出し流れ特性を示す連続攪拌槽であるが、処理液粘度が高くなると、攪拌中心軸表面に高粘度液が付着し滞留してしまい、シャープな滞留時間分布関数曲線が得られない。その様子を図8のデルタ応答曲線で示す。この図は完全混合槽列モデル槽数と滞留時間分布関数の関係を示す実験データである。メガネ翼重合機においては時間の無次元数t/toが1.3 を超える付近より理論曲線より外れてしまう。これは一部の液が攪拌のデッドゾーンに滞留していることを示す。その結果ポリマーの品質を悪化させる問題が生じてくる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
格子翼重合機は特公平6−21159号公報に記載される矩形枠の連なる攪拌中心軸を有さない攪拌槽であり、理論値に沿った曲線を示す。
【0006】
この結果から高粘度液を連続処理するには攪拌中心軸の無い攪拌翼の方が混合性能も良好で、処理液の品質向上に寄与する。したがって、ジフェニルカーボネートとビスフェノールA等のアルコール類を原材料として用い、処理液の粘度を高めてポリカーボネートを連続的に生産するには、攪拌中心軸をもたない水平に設置された横置き筒状の攪拌槽を1つ以上連ね、200℃から300℃の範囲の高温下で、かつ大気圧以下の真空下で1Pa・Sから5,000Pa・S の範囲に至るまで連続的に、重縮合反応させるのがよい。
【0007】
図9は各種横形攪拌槽の混合性能を比較した実験データである。
【0008】
単位段当たりの理論段数が大きいほど、混合性能が良く、装置の大きさも小さくでき経済的になる。図中の一軸攪拌槽は回転中心軸の無い攪拌槽で攪拌翼は連続して連なっており、翼先端と容器内壁との隙間は容器内面の全範囲に渡って1mmから50mmの範囲で確保されている。このデータの結果より、一軸攪拌槽はメガネ翼重合機より完全混合槽を保有する数が多く、混合性能の優っていることを示す。図10も混合性能を表すもので、400Pa・Sから600Pa・Sの粘度より高くなるとメガネ翼の混合性能は格子翼より劣ってくる。この図9,図
10の実験データから1Pa・Sから5,000Pa・S にかけての高粘度液を処理するには回転中心軸を有さない横形攪拌槽のほうが有利であることがわかる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1にポリカーボネートの製造方法の実施例を示す。ジフェニルカーボネートとビスフェノールAを原料としたエステル交換法によって製造する連続プロセスにおいては反応が進行するにつれて処理液粘度も高くなっていく。前段で初期重縮合反応で得られた1Pa・S以上の粘度のプレポリマーをポンプ6で第1攪拌槽1に連続供給する。この攪拌槽は一例として図2〜図7に示すように攪拌中心軸を有さない横形攪拌槽の攪拌翼構造のものを用いればよい。両側の回転軸19は端板22に接続され、両端板は数本の強度部材24で連結されている。強度部材24と垂直に両端板22間に処理液の粘度範囲によって形状の異なる処理液の長手方向へのショートパス防止のために設けられた複数の仕切り板10〜13が高粘度領域になるにつれて広い間隔で配列されている。なお、14は中間板である。
【0010】
攪拌翼15,16,17,18は処理液の粘度範囲によって板幅が異なり、また円周にわたって取り付け枚数が異なる。攪拌翼は容器内壁と1mmから50mmの範囲のわずかな隙間を確保しながら連続して長手方向に配列されている。回転軸はメガネ翼重合機において適用されていた15rpm〜20rpmから1rpm〜10rpmと低速で回転する。その結果、攪拌動力は数十分の1になる。両端板22の外側に設けられた掻き取り翼20,21は槽本体内壁とわずかな隙間を確保しながら処理液を内側へ押しもどす働きをするスクリュウ機能を有する。
【0011】
第1攪拌槽1から排出された約1,000Pa・S の粘度の処理液はポンプ6によって、第2攪拌槽2に供給される。第2攪拌槽は特公平6−21159号公報に記載される矩形枠の連なった連続な攪拌翼を有し、攪拌中心軸を有さない水平かつ平行に設けられた2軸の攪拌槽である。この反応槽で反応がさらに進み処理液の粘度は約5,000Pa・S にも高くなり、ポリマーが生産される。
【0012】
両攪拌槽において200℃から350℃の範囲の高温下で、大気圧から0.1Torrの範囲の真空下で重縮合反応が行われる。反応副生成物であるフェノールは蒸気になって攪拌槽上部より排出され、凝縮器4で凝縮され系外へ排出される。
【0013】
他の実施例としては第2攪拌槽2に上記第1攪拌槽1と同種のものを採用し、処理液の粘度範囲に応じて仕切り板の形状、ならびに間隔を広げて仕切り板を配置する。その結果、さらなる攪拌動力の低減が可能になる。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば回転中心軸を有さない連続的に連なる攪拌翼をもつ横形攪拌槽を用いることにより、処理液の品質向上を図ることができる。また設備および運転コストを低減できるポリカーボネートの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるポリカーボネートの製造方法の一実施例を示すプロセス概略図である。
【図2】第1攪拌槽の攪拌翼構造の一例を示す側面図である。
【図3】仕切り板の一例を示す正面図である。
【図4】仕切り板の一例を示す正面図である。
【図5】仕切り板の一例を示す正面図である。
【図6】仕切り板の一例を示す正面図である。
【図7】仕切り板の一例を示す正面図である。
【図8】デルタ応答曲線の一例を示す混合特性図である。
【図9】粘度と理論段数の関係の一例を示す特性図である。
【図10】粘度と混合性の関係の一例を示す特性図である。
【符号の説明】
1…第一攪拌槽、2…第二攪拌槽、3…攪拌中心軸の無い攪拌機、4…凝縮器、5…真空装置、6…ポンプ、7…処理液通路配管、8…蒸気通路配管、9…駆動モータ、12…中間板、15,16,17,18…攪拌翼、19…回転軸、
20,21…掻き取り翼、22…端板、23…開口、24…強度部材。

Claims (5)

  1. 横置き筒状の容器と、この容器内に連続的に配置され、回転中心軸から容器内壁側にずれた位置で連結された中空円板状の仕切り板と中空円板状の仕切り板の外周側で仕切り板に交差して設けられた撹拌翼とからなる撹拌回転軸をもたない一軸の横形の形式撹拌槽によりジフェニルカーボネートとビスフェノールA等のアルコール類との混合液を、1Pa・Sから1,000Pa・S の粘度範囲で撹拌混合処理する前段工程と、この前段工程から得られた混合液を横形二軸格子翼撹拌槽により100Pa・Sから5,000Pa・S の粘度範囲で撹拌混合処理する後段工程とからなり、上記両工程を200℃から300℃の範囲の高温下で、かつ大気圧以下の真空下で行って上記混合液を重縮合反応させ、1Pa・Sから5,000Pa・S の範囲に至るまで粘度を高めて連続的にポリカーボネートを生産することを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
  2. 請求項1記載のポリカーボネートの製造方法において、上記一軸の横形撹拌槽はその容器内壁と撹拌翼との隙間が1mm〜50mmにされ、撹拌回転数は1rpm 〜10rpm の範囲にされ、上記横形二軸格子翼撹拌槽はその撹拌回転数が1rpm 〜15rpm の範囲にされることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
  3. 横置き筒状の容器と、この容器内に連続的に配置され、回転中心軸から容器内壁側にずれた位置で連結された中空円板状の仕切り板と中空円板状の仕切り板の外縁側で仕切り板に交差して設けられた撹拌翼とからなり、ジフェニルカーボネートとビスフェノールA等のアルコール類とが供給され、これら原材料を1Pa・Sから1,000Pa・S の粘度範囲で混合撹拌処理する撹拌回転軸をもたない一軸の横形の形式の撹拌槽と、
    この一軸の横形撹拌槽から得られた混合液を100Pa・Sから5,000Pa・Sの粘度範囲で撹拌混合処理する横形二軸格子翼撹拌槽とからなり、上記両撹拌混合処理を200℃から300℃の範囲の高温下で、かつ大気圧以下の真空下で行い、上記混合液を重縮合反応させ、1Pa・S から5,000Pa・Sの範囲に至るまで粘度を高めて連続的にポリカーボネートを生産するポリカーボネートの製造装置。
  4. 横置き筒状の容器と、この容器内に連続的に配置され、回転中心軸から容器内壁側にずれた位置で連結された中空円板状の仕切り板と中空円板状の仕切り板の外縁側で仕切り板に交差して設けられた撹拌翼とからなる撹拌回転軸をもたず、容器側壁に最も近接した撹拌翼に処理液を内側に押しもどすスクリュウ部が設けられた一軸の横形の形式の撹拌槽によりジフェニルカーボネートとビスフェノールA等のアルコール類との混合液を、1Pa・Sから1,000Pa・S の粘度範囲で撹拌混合処理する前段装置と、この前段工程から得られた混合液を横形二軸格子翼撹拌槽により100Pa・Sから5,000Pa・S の粘度範囲で撹拌混合処理する後段装置とからなり、上記両工程を200℃から300℃の範囲の高温下で、かつ大気圧以下の真空下で行って上記混合液を重縮合反応させ、1
    Pa・Sから5,000Pa・S の範囲に至るまで粘度を高めて連続的にポリカーボネートを生産することを特徴とするポリカーボネートの製造装置。
  5. 請求項4記載のポリカーボネートの製造装置において、上記一軸の横形撹拌槽はその容器内壁と撹拌翼との隙間が1mm〜50mmにされ、撹拌回転数は1rpm 〜10rpm の範囲にされ、上記横形二軸格子翼撹拌槽はその撹拌回転数が1rpm 〜15rpm の範囲にされることを特徴とするポリカーボネートの製造装置。
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