JP3603479B2 - 板厚変動調質厚鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁・造船に用いられるテーパープレート、差厚プレート等の板内で板厚が異なる板厚変動鋼板の製造方法に関し、とくに、焼入れ焼戻しを施す板厚変動調質厚鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
板内で板厚が変動する板厚変動厚鋼板は、最近、橋梁・造船で使用されている。
このような板厚変動鋼板は、従来の同厚材と同じように熱処理炉に装入し、一定時間保持したのち、薄肉部と厚肉部を均一な温度としたのち水冷あるいは放冷する方法により製造されていた。しかし、このような方法では、薄肉部と厚肉部で冷却速度に差が生じ、薄肉部では冷却速度が大きく、また厚肉部では冷却速度が小さいため、薄肉部と厚肉部で組織差が生じ、同一条件の焼戻しを実施すると、薄肉部と厚肉部で機械的性質の相違、とくに強度差が生じてしまう。また、例えば、焼戻し条件を厚肉部の最適条件に合わせると、薄肉部は最適焼戻し条件から外れることになり、依然として鋼板内の強度差が残ることになる。また、強度を均一にするために焼戻し条件を選択すると、鋼板の所定強度を下回る場合もあり、板厚変動鋼板において、強度差のない鋼板を得ることは難しい問題であった。
【0003】
板厚変動鋼板の製造方法として、例えば特開平1−225720号公報には、誘導加熱装置を用い、その入力制御を鋼板の板厚に応じて行い、板厚に応じた加熱を施し、板厚の変動にかかわらず任意の機械的性質を有する板厚変動鋼板が得られる板厚変動鋼板の熱処理方法が提案されている。また、特開昭61−284524 号公報には、熱間圧延後、加速冷却設備を用いて、鋼板の所望強度分布に応じ鋼板の冷却速度を調整する異形非調質高張力鋼板の製造方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、いずれの方法も既存の設備のみでは実施できず、特殊な設備の設置が必須であり、すぐには実施できないという問題を残している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を有利に解決し、引張強さ570MPa以上を有し、しかも、焼入れ焼戻しを施した後に、板厚による強度差の少ない板厚変動調質厚鋼板の製造方法を提供することを目的にする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、板厚変動厚鋼板すなわちテーパプレートあるいは差厚プレート等の板内の板厚が異なっている厚鋼板に、焼入れしたのち焼戻しを施す、板厚変動調質厚鋼板の製造方法において、焼入れしたのち、焼戻し温度を、(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲とし、この温度範囲の雰囲気中に該厚鋼板を装入し、その最厚肉部の保持時間を、該最厚肉部の中心部が(雰囲気温度−10℃)に到達した時間から30min 以内とする焼戻しを施すことを特徴とする板厚変動調質厚鋼板の製造方法である。
【0007】
また、本発明では、該板厚変動厚鋼板の最厚肉部と、最薄肉部の最適焼戻し条件を焼戻し温度および保持時間でそれぞれ求め、ついでこれら焼戻し温度と保持時間から次(1)式
P =(T+273 )×(20+log ta )×10-3 …(1)
(ここに、T:焼戻し温度(℃)、ta :保持時間(hr))で定義されるP値を計算し、最適P値をそれぞれ、Pa(最厚肉部)、Pu(最薄肉部)とし、かつ、最厚肉部と最薄肉部の前記最適焼戻し条件での昇温曲線から決定される両部の昇温時間差を、同一焼戻し温度条件下での最厚肉部と最薄肉部の保持時間差Dとし、これらPa、PuおよびDから、次(2)、(3)式
Pa=(T+273 )×(20+log taa)×10-3 …(2)
Pu=(T+273 )×(20+log (taa+D))×10-3 …(3)
(ここに、taa:最厚肉部の保持時間(hr)、D:最厚肉部と最薄肉部の保持時間差(hr))を同時に満足するように、前記焼戻し温度および前記最厚肉部の保持時間を決定することも特徴とする。
【0008】
また、本発明では、前記厚鋼板が、重量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.30〜2.50%、Al:0.01〜0.10%、N:0.007 %以下を含み、さらに、Cu:0.05〜1.30%、Ni:0.10〜10.0%、Cr:0.05〜1.50%、Mo:0.03〜0.50%、V:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる厚鋼板であることが好ましい。
【0009】
また、本発明では、前記厚鋼板が、重量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.30〜2.50%、Al:0.01〜0.10%、N:0.007 %以下を含み、さらに、Cu:0.05〜1.30%、Ni:0.10〜10.0%、Cr:0.05〜1.50%、Mo:0.03〜0.50%、V:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0020%の群、Nb:0.005 〜0.06%、Ti:0.005 〜0.06%の群および、Ca:0.0010〜0.0040%、REM :0.001 〜0.020 %の群のうちの少なくとも2群から選ばれた、各群1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる厚鋼板であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の板厚変動厚鋼板とは、テーパープレートあるいは差厚プレート等の板内の板厚が異なっている厚鋼板をいう。本発明では、板厚の変動は鋼板の長手方向あるいは幅方向に板厚が一定勾配で変動している場合は勿論、不均一な変化であっても問題はない。
【0011】
本発明の板厚変動厚鋼板は、スラブを熱間圧延により、所定の形状の板厚変動厚鋼板とする。熱間圧延条件はとくに限定しないが、熱間圧延のためのスラブ加熱温度は、1000〜1300℃が好ましい。スラブ加熱温度が1000℃未満では、添加合金元素の均一固溶が達成できない。また、スラブ加熱温度が1300℃を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大化し、その後の圧延によっても細粒化せず、鋼材の靱性が劣化する。
【0012】
本発明の板厚変動厚鋼板は、熱間圧延後、直接あるいは再加熱後、焼入れする。焼入れ温度は、Ac3変態点以上であれば、とくに問題はないが、好ましくは 800〜1000℃の範囲とするのがよい。 800℃未満では、十分な焼入れ強度を得にくい。また、1000℃を超えると、結晶粒が粗大化し、靱性が劣化する。なお、より好ましくは 850〜950 ℃である。
【0013】
また、熱間圧延後、直接焼入れする場合に、鋼板温度が上記Ac3変態点未満の場合には、Ac3変態点以上に再加熱してもよい。
本発明の板厚変動厚鋼板は、焼入れ後焼戻しを施される。
焼戻し温度は、(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲とし、該最厚肉部の保持時間は、該厚鋼板の最厚部の中心部が(雰囲気温度−10℃)に到達した時間から30min 以内とする。
【0014】
焼戻し温度が(Ac1変態点−50℃)未満では、厚肉部と薄肉部の強度差が大きく、またAc1変態点を超えると、強度が急激に低下する。このため、焼戻し温度は、(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲とした。
また、本発明では、厚鋼板を上記温度の雰囲気中に装入し、短時間、すなわち、最厚部の保持時間で30min 以内の焼戻しを施す。30min を超える長時間では、強度低下が著しくなる。
【0015】
焼戻し温度は、上記した温度範囲の中で、さらに、最適温度を次のように決定する。
各板厚のうち、最厚肉部(厚部)と、最薄肉部(薄部)各々について、所定の強度を得るための最適焼戻し条件の温度、保持時間を求め、次(1)式で決まる最適P値を決定する。
【0016】
P =(T+273 )×(20+log ta )×10-3 ……(1)
ここに、T:焼戻し温度(℃)、ta :保持時間(hr)
ついで、厚部の最適P値をPa、薄部の最適P値をPu、厚部の保持時間をtaa、図2に示すような昇温曲線から求められる厚部と薄部の保持時間の差をDとすれば、各部の最適焼戻しを得るための板厚変動厚鋼板の焼戻し条件温度T、厚部の保持時間taaは、次式
Pa=(T+273 )×(20+log taa)×10-3 …(2)
Pu=(T+273 )×(20+log (taa+D))×10-3 …(3)
で表される。これは、厚部に比べ、薄部では、温度Tに保持される時間がDだけ長いことによる。Dは厚部と薄部の昇温時間差に等しい。本発明では、このDが、薄部と厚部ごとの前記最適焼戻し条件での昇温曲線から既知である厚部の昇温時間と薄部の昇温時間の差に等しいものとする。したがって(2)、(3)式を連立方程式として解くことにより、薄部および厚部の双方に共通した最適焼戻し条件となるT、taaを求めることができる。
【0017】
すなわち、薄・厚両部の双方に共通の最適焼戻し温度は、図1に示すように、厚部の最適焼戻しパラメータPa と薄部の最適焼戻しパラメータPu を、焼戻し温度と保持時間の関係でプロットし、厚部と薄部それぞれの最適焼戻し条件での昇温曲線から決定される昇温時間差に等しいものとした両部の保持時間差Dとなる焼戻し温度を求めることにより容易に決定できる。
本発明では、焼戻し温度を(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲でかつ(2)、(3)式を満足する温度とし、かつ保持時間を30min 以内で、(2)、(3)式を満足する保持時間とする。
【0018】
これにより、厚部および薄部ともに、所定の強度および靱性を有する最適焼戻し条件を満足し、しかも優れた靱性を有する板厚変動厚鋼板とすることができる。
本発明の厚鋼板は、焼入れ焼戻しののち、引張強さが570MPa以上を有するのが好ましい。
【0019】
つぎに、厚鋼板の組成の限定理由を説明する。
C:0.03〜0.20%
Cは、焼入れ性を増加する元素であり、強度確保の目的で添加する。このためには、0.03%以上を必要とするが、0.20%を超えると靱性および溶接性が劣化する。このようなことから、Cは0.03〜0.20の範囲とした。
【0020】
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸を促進し、さらに強度を増加する効果を有する。この効果は、0.05%以上の添加で認められるが、0.50%を超えると靱性が劣化する。このため、Siは0.05〜0.50%の範囲とした。
Mn:0.30〜2.50%
Mnは、靱性を損なうことなく強度を増加させる効果を有している。0.30%未満では、強度の増加は少なく、しかし、2.50%を超えると加工性が劣化する。このため、Mnは0.30〜2.50%の範囲とした。
【0021】
Al:0.01〜0.10%
Alは、脱酸剤として添加されるが、さらに結晶粒を微細化する効果も有している。結晶粒の微細化のためには、0.01%以上の添加が必要である。しかし、0.10%を超えると酸化物系介在物量が増加して靱性を劣化させる。このため、Alは0.01〜0.10%の範囲とした。
【0022】
N:0.007 %以下
Nは、Alと結合して、加熱時の結晶粒の粗大化を防止する。しかし、多量に含有すると溶接熱影響部の靱性を劣化させる。このため、Nは0.007 %以下とした。
Cu:0.05〜1.30%、Ni:0.10〜10.0%、Cr:0.05〜1.50%、Mo:0.03〜0.50%、V:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cuは、鋼中に固溶あるいは析出して強度を増加する。固溶強化により強度を増加させるためには、0.05%以上の添加が必要である。また、析出強化により強度を増加させるためには、0.50%以上の添加が必要である。しかし、1.3 %を超えると、効果が飽和するのに加えて、熱間加工性が劣化する。このため、Cuは0.05〜1.30%の範囲とした。
【0023】
Niは、強度を増加し、さらに靱性を向上させる。このためには、0.10%以上の添加を必要するが、10.0%を超えると経済的に高価となる。このようなことからNiは0.10〜10.0%の範囲とした。
Crは、焼入れ性を向上させ、強度を増加させる。このためには、0.05%以上の添加を必要とするが、1.50%を超えると溶接性の劣化を招く。このようなことからCrは0.05〜1.50%の範囲とした。
【0024】
Moは、焼入れ性を向上させ、焼戻し軟化抵抗を高め、強度を増加させる。このためには、0.03%以上の添加を必要とするが、0.50%を超えると、溶接性を劣化させ、しかも高価となる。このようなことからMoは0.03〜0.50%の範囲とした。Vは、窒化物あるいは炭化物を形成し、析出強化により強度を増加させる。このためには、0.01%以上の添加が必要であるが、0.15%を超えると靱性を劣化させる。このようなことからVは0.01〜0.15%の範囲とした。
【0025】
Bは、微量の添加で焼入れ性を向上させ、強度を増加させる。このためには、0.0003%以上の添加が必要であるが、0.0020%を超えると靱性を劣化させる。このようなことからBは0.0003〜0.0020%の範囲とした。
さらに、Cu:0.05〜1.30%、Ni:0.10〜10.0%、Cr:0.05〜1.50%、Mo:0.03〜0.50%、V:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0020%の群、Nb:0.005 〜0.06%、Ti:0.005 〜0.06%の群、および、Ca:0.0010〜0.0040%、REM :0.001 〜0.020 %の群の各群のなかの少なくとも2群から選ばれた、各群1種または2種以上を含有してもよい。
【0026】
Nb:0.005 〜0.06%、Ti:0.005 〜0.06%のうちから選ばれた1種または2種 Nbは、窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制し、あるいは熱間圧延時の結晶粒微細化、焼戻し時の析出強化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005 %以上の添加が必要であるが、0.06%を超えると溶接部の靱性を劣化させる。このようなことからNbは0.005 〜0.06%の範囲とした。
【0027】
Tiは、Nbと同様窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制する。このためには0.005 %以上の添加を必要とするが、0.06%を超えると、靱性が劣化する。このようなことからTiは0.005 〜0.06%の範囲とした。
Ca:0.0010〜0.0040%、REM :0.001 〜0.020 %のうちから選ばれた1種または2種
Caは、球状の硫化物を形成し、靱性を向上させる効果を有する。このためには、0.0010%以上の添加が必要であるが、0.0040%を超えると酸化物系介在物の増大を招き、靱性が劣化する。このようなことからCaは0.0010〜0.0040%の範囲とした。
【0028】
REM は、Caと同様に硫化物を球状化させ、靱性を向上させる。この効果を得るためには、0.001 %以上の添加を必要とするが、0.020 %を超えると、介在物量が増大し、靱性を劣化させる。このようなことからREM は0.001 〜0.020 %の範囲とした。
本発明では、残部はFeおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物は、P: 0.025%以下、S: 0.015%以下まで許容できる。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により 260mm厚のスラブとした。該スラブを厚板圧延により、図3に示す形状のテーパープレートとした。
最厚肉部(厚部)は75mm厚、最薄肉部(薄部)は55mm厚である。このテーパプレートを 930℃に加熱後、水冷した。
【0030】
焼入れ後、厚部および薄部それぞれで最適焼戻し条件を求め、最適P値を(1)式から計算し、表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すような厚部と薄部の昇温時間差から厚部と薄部の保持時間の差Dを求めた。この場合D値は34min となる。このテーパープレートの厚部、薄部の最適焼戻しP値は、次式でかける。
18.2 =(T+273 )×(20+log t aa)×10-3 …(2A)
18.9 =(T+273 )×(20+log (t aa+D))×10-3 …(3A)
となる。(2A)、(3A)式を図示すると図4となる。ここで、D=34min となるT(焼戻し温度)を求めると、T=680 ℃が得られる。
【0034】
上記焼入れのままテーパープレートを焼戻し温度680 ℃で、厚部の保持時間8 min (在炉128min)で焼戻したときの、各部の強度を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
表3から、厚部と薄部の強度差は、10MPa 以内と非常に小さくなっている。
比較例として、実施例と同一のテーパープレートを同じ焼入れ条件で焼入れしたのち、厚部の最適焼戻し条件、640 ℃×175min(在炉)で焼戻した例を表3に併記した。この比較例では、当然ながら、薄部の強度が高すぎ、厚部と薄部の強度差が70MPa 以上ある。
【0037】
(実施例2)
表4に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により 215mm厚のスラブとし、厚板圧延により所定の形状のテーパープレートとした。
このテーパプレートを焼入れしたのち、厚部および薄部それぞれで最適焼戻し条件を求め、最適P値を(1)式から計算し、ついで、前記最適焼戻し条件での厚部と薄部それぞれの昇温曲線から決定した厚部と薄部の昇温時間差に等しいものとして保持時間の差Dを求め、最適P値と、D値から(2)、(3)式を用い、焼戻し温度を求め、その焼戻し温度でテーパープレートを焼戻した。焼戻し後の強度を調査し表5に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
本発明の範囲の組成と、本発明の範囲の焼戻し温度であれば、引張強さ570MPa以上を満足している。そして、各部の強度差も小さく均一な強度を有するテーパープレートとなっている。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、板厚が板内で変動する板厚変動厚鋼板の強度が、板厚の相違にもかかわらず板内で均一とすることが可能となり、設計上の自由度が増加し、また均一な強度を有する板厚変動厚鋼板を用いることにより、建築物あるいは構造物の安全性が向上する等、産業上多大の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】Pa、Pu値となる焼戻し温度と保持時間の関係を示す模式的関係図である。
【図2】板厚変動厚鋼板の厚肉部(厚部)、薄肉部(薄部)の焼戻し時昇温曲線を示す模式図である。
【図3】テーパープレートの寸法形状を示す断面図である。
【図4】Pa、Pu値となる焼戻し温度と保持時間の関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁・造船に用いられるテーパープレート、差厚プレート等の板内で板厚が異なる板厚変動鋼板の製造方法に関し、とくに、焼入れ焼戻しを施す板厚変動調質厚鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
板内で板厚が変動する板厚変動厚鋼板は、最近、橋梁・造船で使用されている。
このような板厚変動鋼板は、従来の同厚材と同じように熱処理炉に装入し、一定時間保持したのち、薄肉部と厚肉部を均一な温度としたのち水冷あるいは放冷する方法により製造されていた。しかし、このような方法では、薄肉部と厚肉部で冷却速度に差が生じ、薄肉部では冷却速度が大きく、また厚肉部では冷却速度が小さいため、薄肉部と厚肉部で組織差が生じ、同一条件の焼戻しを実施すると、薄肉部と厚肉部で機械的性質の相違、とくに強度差が生じてしまう。また、例えば、焼戻し条件を厚肉部の最適条件に合わせると、薄肉部は最適焼戻し条件から外れることになり、依然として鋼板内の強度差が残ることになる。また、強度を均一にするために焼戻し条件を選択すると、鋼板の所定強度を下回る場合もあり、板厚変動鋼板において、強度差のない鋼板を得ることは難しい問題であった。
【0003】
板厚変動鋼板の製造方法として、例えば特開平1−225720号公報には、誘導加熱装置を用い、その入力制御を鋼板の板厚に応じて行い、板厚に応じた加熱を施し、板厚の変動にかかわらず任意の機械的性質を有する板厚変動鋼板が得られる板厚変動鋼板の熱処理方法が提案されている。また、特開昭61−284524 号公報には、熱間圧延後、加速冷却設備を用いて、鋼板の所望強度分布に応じ鋼板の冷却速度を調整する異形非調質高張力鋼板の製造方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、いずれの方法も既存の設備のみでは実施できず、特殊な設備の設置が必須であり、すぐには実施できないという問題を残している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を有利に解決し、引張強さ570MPa以上を有し、しかも、焼入れ焼戻しを施した後に、板厚による強度差の少ない板厚変動調質厚鋼板の製造方法を提供することを目的にする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、板厚変動厚鋼板すなわちテーパプレートあるいは差厚プレート等の板内の板厚が異なっている厚鋼板に、焼入れしたのち焼戻しを施す、板厚変動調質厚鋼板の製造方法において、焼入れしたのち、焼戻し温度を、(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲とし、この温度範囲の雰囲気中に該厚鋼板を装入し、その最厚肉部の保持時間を、該最厚肉部の中心部が(雰囲気温度−10℃)に到達した時間から30min 以内とする焼戻しを施すことを特徴とする板厚変動調質厚鋼板の製造方法である。
【0007】
また、本発明では、該板厚変動厚鋼板の最厚肉部と、最薄肉部の最適焼戻し条件を焼戻し温度および保持時間でそれぞれ求め、ついでこれら焼戻し温度と保持時間から次(1)式
P =(T+273 )×(20+log ta )×10-3 …(1)
(ここに、T:焼戻し温度(℃)、ta :保持時間(hr))で定義されるP値を計算し、最適P値をそれぞれ、Pa(最厚肉部)、Pu(最薄肉部)とし、かつ、最厚肉部と最薄肉部の前記最適焼戻し条件での昇温曲線から決定される両部の昇温時間差を、同一焼戻し温度条件下での最厚肉部と最薄肉部の保持時間差Dとし、これらPa、PuおよびDから、次(2)、(3)式
Pa=(T+273 )×(20+log taa)×10-3 …(2)
Pu=(T+273 )×(20+log (taa+D))×10-3 …(3)
(ここに、taa:最厚肉部の保持時間(hr)、D:最厚肉部と最薄肉部の保持時間差(hr))を同時に満足するように、前記焼戻し温度および前記最厚肉部の保持時間を決定することも特徴とする。
【0008】
また、本発明では、前記厚鋼板が、重量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.30〜2.50%、Al:0.01〜0.10%、N:0.007 %以下を含み、さらに、Cu:0.05〜1.30%、Ni:0.10〜10.0%、Cr:0.05〜1.50%、Mo:0.03〜0.50%、V:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる厚鋼板であることが好ましい。
【0009】
また、本発明では、前記厚鋼板が、重量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.30〜2.50%、Al:0.01〜0.10%、N:0.007 %以下を含み、さらに、Cu:0.05〜1.30%、Ni:0.10〜10.0%、Cr:0.05〜1.50%、Mo:0.03〜0.50%、V:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0020%の群、Nb:0.005 〜0.06%、Ti:0.005 〜0.06%の群および、Ca:0.0010〜0.0040%、REM :0.001 〜0.020 %の群のうちの少なくとも2群から選ばれた、各群1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる厚鋼板であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の板厚変動厚鋼板とは、テーパープレートあるいは差厚プレート等の板内の板厚が異なっている厚鋼板をいう。本発明では、板厚の変動は鋼板の長手方向あるいは幅方向に板厚が一定勾配で変動している場合は勿論、不均一な変化であっても問題はない。
【0011】
本発明の板厚変動厚鋼板は、スラブを熱間圧延により、所定の形状の板厚変動厚鋼板とする。熱間圧延条件はとくに限定しないが、熱間圧延のためのスラブ加熱温度は、1000〜1300℃が好ましい。スラブ加熱温度が1000℃未満では、添加合金元素の均一固溶が達成できない。また、スラブ加熱温度が1300℃を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大化し、その後の圧延によっても細粒化せず、鋼材の靱性が劣化する。
【0012】
本発明の板厚変動厚鋼板は、熱間圧延後、直接あるいは再加熱後、焼入れする。焼入れ温度は、Ac3変態点以上であれば、とくに問題はないが、好ましくは 800〜1000℃の範囲とするのがよい。 800℃未満では、十分な焼入れ強度を得にくい。また、1000℃を超えると、結晶粒が粗大化し、靱性が劣化する。なお、より好ましくは 850〜950 ℃である。
【0013】
また、熱間圧延後、直接焼入れする場合に、鋼板温度が上記Ac3変態点未満の場合には、Ac3変態点以上に再加熱してもよい。
本発明の板厚変動厚鋼板は、焼入れ後焼戻しを施される。
焼戻し温度は、(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲とし、該最厚肉部の保持時間は、該厚鋼板の最厚部の中心部が(雰囲気温度−10℃)に到達した時間から30min 以内とする。
【0014】
焼戻し温度が(Ac1変態点−50℃)未満では、厚肉部と薄肉部の強度差が大きく、またAc1変態点を超えると、強度が急激に低下する。このため、焼戻し温度は、(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲とした。
また、本発明では、厚鋼板を上記温度の雰囲気中に装入し、短時間、すなわち、最厚部の保持時間で30min 以内の焼戻しを施す。30min を超える長時間では、強度低下が著しくなる。
【0015】
焼戻し温度は、上記した温度範囲の中で、さらに、最適温度を次のように決定する。
各板厚のうち、最厚肉部(厚部)と、最薄肉部(薄部)各々について、所定の強度を得るための最適焼戻し条件の温度、保持時間を求め、次(1)式で決まる最適P値を決定する。
【0016】
P =(T+273 )×(20+log ta )×10-3 ……(1)
ここに、T:焼戻し温度(℃)、ta :保持時間(hr)
ついで、厚部の最適P値をPa、薄部の最適P値をPu、厚部の保持時間をtaa、図2に示すような昇温曲線から求められる厚部と薄部の保持時間の差をDとすれば、各部の最適焼戻しを得るための板厚変動厚鋼板の焼戻し条件温度T、厚部の保持時間taaは、次式
Pa=(T+273 )×(20+log taa)×10-3 …(2)
Pu=(T+273 )×(20+log (taa+D))×10-3 …(3)
で表される。これは、厚部に比べ、薄部では、温度Tに保持される時間がDだけ長いことによる。Dは厚部と薄部の昇温時間差に等しい。本発明では、このDが、薄部と厚部ごとの前記最適焼戻し条件での昇温曲線から既知である厚部の昇温時間と薄部の昇温時間の差に等しいものとする。したがって(2)、(3)式を連立方程式として解くことにより、薄部および厚部の双方に共通した最適焼戻し条件となるT、taaを求めることができる。
【0017】
すなわち、薄・厚両部の双方に共通の最適焼戻し温度は、図1に示すように、厚部の最適焼戻しパラメータPa と薄部の最適焼戻しパラメータPu を、焼戻し温度と保持時間の関係でプロットし、厚部と薄部それぞれの最適焼戻し条件での昇温曲線から決定される昇温時間差に等しいものとした両部の保持時間差Dとなる焼戻し温度を求めることにより容易に決定できる。
本発明では、焼戻し温度を(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲でかつ(2)、(3)式を満足する温度とし、かつ保持時間を30min 以内で、(2)、(3)式を満足する保持時間とする。
【0018】
これにより、厚部および薄部ともに、所定の強度および靱性を有する最適焼戻し条件を満足し、しかも優れた靱性を有する板厚変動厚鋼板とすることができる。
本発明の厚鋼板は、焼入れ焼戻しののち、引張強さが570MPa以上を有するのが好ましい。
【0019】
つぎに、厚鋼板の組成の限定理由を説明する。
C:0.03〜0.20%
Cは、焼入れ性を増加する元素であり、強度確保の目的で添加する。このためには、0.03%以上を必要とするが、0.20%を超えると靱性および溶接性が劣化する。このようなことから、Cは0.03〜0.20の範囲とした。
【0020】
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸を促進し、さらに強度を増加する効果を有する。この効果は、0.05%以上の添加で認められるが、0.50%を超えると靱性が劣化する。このため、Siは0.05〜0.50%の範囲とした。
Mn:0.30〜2.50%
Mnは、靱性を損なうことなく強度を増加させる効果を有している。0.30%未満では、強度の増加は少なく、しかし、2.50%を超えると加工性が劣化する。このため、Mnは0.30〜2.50%の範囲とした。
【0021】
Al:0.01〜0.10%
Alは、脱酸剤として添加されるが、さらに結晶粒を微細化する効果も有している。結晶粒の微細化のためには、0.01%以上の添加が必要である。しかし、0.10%を超えると酸化物系介在物量が増加して靱性を劣化させる。このため、Alは0.01〜0.10%の範囲とした。
【0022】
N:0.007 %以下
Nは、Alと結合して、加熱時の結晶粒の粗大化を防止する。しかし、多量に含有すると溶接熱影響部の靱性を劣化させる。このため、Nは0.007 %以下とした。
Cu:0.05〜1.30%、Ni:0.10〜10.0%、Cr:0.05〜1.50%、Mo:0.03〜0.50%、V:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0020%のうちから選ばれた1種または2種以上
Cuは、鋼中に固溶あるいは析出して強度を増加する。固溶強化により強度を増加させるためには、0.05%以上の添加が必要である。また、析出強化により強度を増加させるためには、0.50%以上の添加が必要である。しかし、1.3 %を超えると、効果が飽和するのに加えて、熱間加工性が劣化する。このため、Cuは0.05〜1.30%の範囲とした。
【0023】
Niは、強度を増加し、さらに靱性を向上させる。このためには、0.10%以上の添加を必要するが、10.0%を超えると経済的に高価となる。このようなことからNiは0.10〜10.0%の範囲とした。
Crは、焼入れ性を向上させ、強度を増加させる。このためには、0.05%以上の添加を必要とするが、1.50%を超えると溶接性の劣化を招く。このようなことからCrは0.05〜1.50%の範囲とした。
【0024】
Moは、焼入れ性を向上させ、焼戻し軟化抵抗を高め、強度を増加させる。このためには、0.03%以上の添加を必要とするが、0.50%を超えると、溶接性を劣化させ、しかも高価となる。このようなことからMoは0.03〜0.50%の範囲とした。Vは、窒化物あるいは炭化物を形成し、析出強化により強度を増加させる。このためには、0.01%以上の添加が必要であるが、0.15%を超えると靱性を劣化させる。このようなことからVは0.01〜0.15%の範囲とした。
【0025】
Bは、微量の添加で焼入れ性を向上させ、強度を増加させる。このためには、0.0003%以上の添加が必要であるが、0.0020%を超えると靱性を劣化させる。このようなことからBは0.0003〜0.0020%の範囲とした。
さらに、Cu:0.05〜1.30%、Ni:0.10〜10.0%、Cr:0.05〜1.50%、Mo:0.03〜0.50%、V:0.01〜0.15%、B:0.0003〜0.0020%の群、Nb:0.005 〜0.06%、Ti:0.005 〜0.06%の群、および、Ca:0.0010〜0.0040%、REM :0.001 〜0.020 %の群の各群のなかの少なくとも2群から選ばれた、各群1種または2種以上を含有してもよい。
【0026】
Nb:0.005 〜0.06%、Ti:0.005 〜0.06%のうちから選ばれた1種または2種 Nbは、窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制し、あるいは熱間圧延時の結晶粒微細化、焼戻し時の析出強化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.005 %以上の添加が必要であるが、0.06%を超えると溶接部の靱性を劣化させる。このようなことからNbは0.005 〜0.06%の範囲とした。
【0027】
Tiは、Nbと同様窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制する。このためには0.005 %以上の添加を必要とするが、0.06%を超えると、靱性が劣化する。このようなことからTiは0.005 〜0.06%の範囲とした。
Ca:0.0010〜0.0040%、REM :0.001 〜0.020 %のうちから選ばれた1種または2種
Caは、球状の硫化物を形成し、靱性を向上させる効果を有する。このためには、0.0010%以上の添加が必要であるが、0.0040%を超えると酸化物系介在物の増大を招き、靱性が劣化する。このようなことからCaは0.0010〜0.0040%の範囲とした。
【0028】
REM は、Caと同様に硫化物を球状化させ、靱性を向上させる。この効果を得るためには、0.001 %以上の添加を必要とするが、0.020 %を超えると、介在物量が増大し、靱性を劣化させる。このようなことからREM は0.001 〜0.020 %の範囲とした。
本発明では、残部はFeおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物は、P: 0.025%以下、S: 0.015%以下まで許容できる。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により 260mm厚のスラブとした。該スラブを厚板圧延により、図3に示す形状のテーパープレートとした。
最厚肉部(厚部)は75mm厚、最薄肉部(薄部)は55mm厚である。このテーパプレートを 930℃に加熱後、水冷した。
【0030】
焼入れ後、厚部および薄部それぞれで最適焼戻し条件を求め、最適P値を(1)式から計算し、表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すような厚部と薄部の昇温時間差から厚部と薄部の保持時間の差Dを求めた。この場合D値は34min となる。このテーパープレートの厚部、薄部の最適焼戻しP値は、次式でかける。
18.2 =(T+273 )×(20+log t aa)×10-3 …(2A)
18.9 =(T+273 )×(20+log (t aa+D))×10-3 …(3A)
となる。(2A)、(3A)式を図示すると図4となる。ここで、D=34min となるT(焼戻し温度)を求めると、T=680 ℃が得られる。
【0034】
上記焼入れのままテーパープレートを焼戻し温度680 ℃で、厚部の保持時間8 min (在炉128min)で焼戻したときの、各部の強度を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
表3から、厚部と薄部の強度差は、10MPa 以内と非常に小さくなっている。
比較例として、実施例と同一のテーパープレートを同じ焼入れ条件で焼入れしたのち、厚部の最適焼戻し条件、640 ℃×175min(在炉)で焼戻した例を表3に併記した。この比較例では、当然ながら、薄部の強度が高すぎ、厚部と薄部の強度差が70MPa 以上ある。
【0037】
(実施例2)
表4に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により 215mm厚のスラブとし、厚板圧延により所定の形状のテーパープレートとした。
このテーパプレートを焼入れしたのち、厚部および薄部それぞれで最適焼戻し条件を求め、最適P値を(1)式から計算し、ついで、前記最適焼戻し条件での厚部と薄部それぞれの昇温曲線から決定した厚部と薄部の昇温時間差に等しいものとして保持時間の差Dを求め、最適P値と、D値から(2)、(3)式を用い、焼戻し温度を求め、その焼戻し温度でテーパープレートを焼戻した。焼戻し後の強度を調査し表5に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
本発明の範囲の組成と、本発明の範囲の焼戻し温度であれば、引張強さ570MPa以上を満足している。そして、各部の強度差も小さく均一な強度を有するテーパープレートとなっている。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、板厚が板内で変動する板厚変動厚鋼板の強度が、板厚の相違にもかかわらず板内で均一とすることが可能となり、設計上の自由度が増加し、また均一な強度を有する板厚変動厚鋼板を用いることにより、建築物あるいは構造物の安全性が向上する等、産業上多大の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】Pa、Pu値となる焼戻し温度と保持時間の関係を示す模式的関係図である。
【図2】板厚変動厚鋼板の厚肉部(厚部)、薄肉部(薄部)の焼戻し時昇温曲線を示す模式図である。
【図3】テーパープレートの寸法形状を示す断面図である。
【図4】Pa、Pu値となる焼戻し温度と保持時間の関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 板厚変動厚鋼板すなわちテーパプレートあるいは差厚プレート等の板内の板厚が異なっている厚鋼板に、焼入れしたのち焼戻しを施す、板内で板厚が変動する板厚変動調質厚鋼板の製造方法において、焼入れしたのち、焼戻し温度を、(Ac1変態点−50℃)〜Ac1変態点の温度範囲とし、この温度範囲の雰囲気中に該厚鋼板を装入し、その最厚肉部の保持時間を、該最厚肉部の中心部が(雰囲気温度−10℃)に到達した時間から30min 以内とする焼戻しを施すこととし、該板厚変動厚鋼板の最厚肉部と最薄肉部の最適焼戻し条件を焼戻し温度および保持時間でそれぞれ求め、ついでこれら焼戻し温度と保持時間から下記(1)式で定義されるP値を計算し、最適P値をそれぞれ、Pa(最厚肉部)、Pu(最薄肉部)とし、かつ、最厚肉部と最薄肉部の前記最適焼戻し条件での昇温曲線から決定される両部の昇温時間差を、同一焼戻し温度条件下での最厚肉部と最薄肉部の保持時間差Dとし、これらPa、PuおよびDから、下記(2)、(3)式を同時に満足するように、前記焼戻し温度および前記最厚肉部の保持時間を決定することを特徴とする板厚変動調質厚鋼板の製造方法。
記
P =(T+273 )×(20+log ta )×10-3 …(1)
Pa=(T+273 )×(20+log taa)×10-3 …(2)
Pu=(T+273 )×(20+log (taa+D))×10-3 …(3)
ここに、T:焼戻し温度(℃)、
ta :保持時間(hr)、
taa:最厚肉部の保持時間(hr)
D :最厚肉部と最薄肉部の保持時間差(hr) - 前記厚鋼板が、重量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.30〜2.50%、
Al:0.01〜0.10%、
N:0.007 %以下
を含み、さらに、
Cu:0.05〜1.30%、
Ni:0.10〜10.0%、
Cr:0.05〜1.50%、
Mo:0.03〜0.50%、
V:0.01〜0.15%、
B:0.0003〜0.0020%
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載の板厚変動調質厚鋼板の製造方法。 - 前記厚鋼板が、重量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.30〜2.50%、
Al:0.01〜0.10%、
N:0.007 %以下
を含み、さらに、
Cu:0.05〜1.30%、
Ni:0.10〜10.0%、
Cr:0.05〜1.50%、
Mo:0.03〜0.50%、
V:0.01〜0.15%、
B:0.0003〜0.0020%
の群、
Nb:0.005 〜0.06%、
Ti:0.005 〜0.06%
の群および、
Ca :0.0010〜0.0040%、
REM :0.001 〜0.020 %
の群のうちの少なくとも2群から選ばれた、各群1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1または2記載の板厚変動調質厚鋼板の製造方法。
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