JP3602703B2 - 空気清浄機、プラスチック部材及びこれを用いたフィルター - Google Patents

空気清浄機、プラスチック部材及びこれを用いたフィルター Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒薄膜を備えた空気清浄機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の空気清浄機では悪臭などの日常生活における有害物質を除去するために、おおむね活性炭を含有するフィルターが使用されており、活性炭に有害物質を吸着させる方法がとられている。
【0003】
また、吸着以外の方法で悪臭を除去する事例としては、特開平7−323081 号公報に示されているように、空気清浄機本体内部にオゾン発生装置を設置し、オゾンによって、空気清浄機内部を流れる例えば煙草の煙などの室内悪臭を含む空気を脱臭する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、上記活性炭を含有するフィルターを使用する場合には、長期間空気清浄機を運転すると活性炭の吸着能力が低下し、一定量の有害物質を吸着すると脱臭効果が無くなっていた。このため、活性炭を含有するフィルターを定期的に交換しなければならず、フィルターの経費と交換の手間がかかるという欠点があった。
【0005】
更に特開平7−323081 号公報に記載の技術においては、空気清浄機本体内部にオゾン発生装置を配設するようにしているので空気清浄機が大型化したり、発生したオゾンがPP,ABS,スチロール等の樹脂を劣化させてしまうので、実際の製品に採用するには困難であった。
【0006】
これを解決するための手段として、近年、TiO光触媒による有機物の分解作用を利用して、防汚,脱臭,抗菌効果を発現する材料が注目を集めている。空気清浄機に光触媒薄膜を応用した事例としては、特開平8−206454 号公報に記載の技術のように、光触媒とそれを担持する担体と該光触媒と担体の保持力を更に高めるための微細繊維から構成される複合凝集体水溶液を用いて、熱可塑性樹脂に塗設するかあるいは混合抄紙して一体化する技術や、特開平5−76715号公報に示されているように、空気清浄機内部に紫外線ランプ及びこの紫外線ランプによって作用する光触媒を用いた脱臭装置を備えることによって、室内の悪臭を除去する方法などが挙げられる。
【0007】
一方、成膜法としては酸化物薄膜は基板上にスパッタリングのような物理的方法によるものとゾルゲル法のような塗布法などの化学的な方法によるものとがある。前者は真空装置等を用いて低い温度で成膜が可能である。後者はスピンコート,スプレーなど簡単な装置で基板上に塗布し、通常数百℃の温度で処理することによって膜を得ることができる。抗菌防臭用の材料であるTiOはアナターゼ型の結晶が有効であり、機能発現には結晶化が有効であることが報告されている(Patent No.(PCT)WO94/11092,(PCT)WO95/15816)。またTiOにV,Fe等を添加して高性能化したものが報告されている(W.choi,A.Termin,M.R.hoffman,J.Phys.Chem.,98,13669−13679(1994))。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記技術を用いて、耐熱性の低い基材、例えばプラスチック製部品上への光触媒薄膜を形成するためには不充分な点がある。
【0009】
ゾルゲル法により成膜したものには数百℃の熱処理が必要であり、耐熱性の低い基材上への成膜は困難である。光触媒微粒子を分散させたシリカゾルを用いた場合、耐熱性の無い基板上への成膜は、熱処理の温度が低いために充分な焼結ができず、形成した光触媒薄膜の強度及び耐水性が不充分となる。いちおう、光触媒形成基材として耐熱性のある金属やセラミックを用いることも可能ではあるが、製品全体の重量や価格のアップにつながるため、現実的でない。
【0010】
一方、数百℃の熱処理を必要としないスパッタリング,CVD,真空蒸着法といったような物理的方法では、真空装置等の大がかりな装置が必要であり生産コストが高い。また、成膜時高真空下において膜が形成されるため、光触媒の組成比ずれが大きく、光触媒性能が悪化する。さらに、成膜時には有機材料を基板とする場合、逆スパッタされ基板にダメージを与え、基板の変形等を招く等の問題点がある。
【0011】
ところで、光触媒の最大の問題点は、有機物は分解できても無機物を処理することができないことである。無機物の汚れは有機物の汚れの上に極端に付着するため、光触媒作用により有機物の汚れを除去すれば、無機物の汚れの付着もある程度防止できるが、一旦無機物が付着すれば付着した部分は光が透過することがなく光触媒作用が失われ、有機物の汚れを分解できず、結果として汚れが促進する。光触媒成形品が平坦なものであれば、Patent No.WO96/29375に報告されているように、超親水性光触媒を用いて親水性を向上させ、水洗により無機物の汚れを洗浄できる改善がなされているが、繊維やフィルター等の目の細かいものであれば、洗い流すだけでは汚れを落すことができず、ブラシ等で機械的に洗浄する必要が生じる。しかし、上記プラスチック製品に応用した光触媒は、酸化チタンにシリカ等の無機バインダーを添加した物であり、プラスチック表面との密着性が不十分であるうえに、柔軟性がないためフィルターなど基材の変形時に剥離してしまう。しかも、このような酸化チタン粒子を無機バインダーに分散した光触媒は、酸化チタンのみから構成される光触媒に比べ、酸化チタンの占有面積が小さい分、性能が低下するという問題があった。特に、膜強度を必要とする場合は無機バインダーを多く添加するため、強度は強くなるけれども、活性は著しく低下するという問題があった。
【0012】
更なる問題点としては、前記の光触媒応用技術の発明の中では、TiOを主成分とした光触媒の有機物分解効果自体を高める工夫については、言及がない。従って、屋内のような光強度の低い環境においては、TiO自体の有機物の分解等の分解速度が充分でなく、特に配設した別の光源を必要とするという問題点も抱えたものであった。例えば前述した特開平5−76715号公報においても、光触媒自体の活性度が充分でないために、紫外線ランプを併設することで分解反応を高めている。紫外線ランプとしては、通常高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどが用いられるが、電源装置や、冷却機構などの機構が必要となり、応用製品全体の重量や価格や消費電力のアップにつながる。また、ランプの寿命が2000時間程度であり、定期交換作業が必要となるなど、実用性に問題があった。分解効率を上げるための従来技術では、このほか、TiOにFe,Vを添加する技術が公知ではあるが、数百℃の高温処理を行うことにより高性能化しており、耐熱性に乏しい基板材料への応用が困難であった。
【0013】
また、特開平8−206454 号公報に記載の技術のように空気清浄機のフィルターに光触媒を用いることが提案されているが、その光源となる太陽光を光触媒が作用するように効果的に取り入れる方法については一切考慮されていなかった。
【0014】
以上、従来技術の問題点を鑑みるに、本発明の目的は、光分解効率がTiO単体での分解効率より向上し、従来必要とされた光強度より少ない強度でも付着物を分解できるような高活性な性能を有し、かつバインダーを多量に添加しても該光触媒の性能低下を生じることのない光触媒を、柔軟性の有る耐熱性の乏しい材料、例えばプラスチック繊維部材に形成し、さらに無機物の汚れを除去するためブラシや水洗等の機械的な洗浄を行っても膜剥がれが生じず、従って、該光触媒薄膜形成部材の洗浄回数及び部品交換を少なくする空気清浄機を提供することにある。
【0015】
また、通常の空気清浄機使用環境レベルの光を効果的に取り入れて光触媒に作用させ、脱臭・抗菌を行うことのできる空気清浄機を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、空気を取り入れ、通風路中に設けたフィルターを通過させて浄化した後に排出する空気清浄機において、前記フィルターは、プラスチック繊維の表面に酸化チタン及び有機樹脂を添加した光触媒薄膜を形成したものであり、前記有機樹脂の添加量が10〜70wt%であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、空気を取り入れ、通風路中に設けたフィルターを通過させて浄化した後に排出する空気清浄機において、前記フィルターは、プラスチック繊維の表面に酸化チタン及び有機樹脂を添加した光触媒薄膜を形成したものであり、前記有機樹脂のガラス転移温度が30℃以下であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、空気を取り入れ、通風路中に設けたフィルターを通過させて浄化した後に排出する空気清浄機において、前記フィルターは、プラスチック繊維の表面に酸化チタン及び有機樹脂を添加した光触媒薄膜を形成したものであり、前記有機樹脂の分子量が30000より大きいことを特徴とする。
【0019】
また、本発明のプラスチック部材は、酸化チタン及び有機樹脂を添加した光触媒薄膜が表面に形成され、前記有機樹脂の添加量が10〜70wt%であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のプラスチック部材は、酸化チタン及び有機樹脂を添加した光触媒薄膜が表面に形成され、前記有機樹脂のガラス転移温度が30℃以下であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のプラスチック部材は、酸化チタン及び有機樹脂を添加した光触媒薄膜が表面に形成され、前記有機樹脂の分子量が30000より大きいことを特徴とする。
【0022】
これらにより、光分解効率がTiO単体での分解効率より向上し、従来必要とされた光強度より少ない強度でも付着物を分解できるような高活性な性能を有し、かつバインダーを多量に添加しても該光触媒の性能低下を生じることのない光触媒を、柔軟性の有る耐熱性の乏しい材料、例えばプラスチック繊維部材に形成し、さらに無機物の汚れを除去するためブラシや水洗等の機械的な洗浄を行っても膜剥がれが生じず、従って、該光触媒薄膜形成部材の洗浄回数及び部品交換を少なくする空気清浄機を提供できた。また、通常の空気清浄機使用環境レベルの光を効果的に取り入れて光触媒に作用させ、脱臭・抗菌を行うことのできる空気清浄機を提供できた。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を添付の図面を参照し、説明する。
【0024】
(実施例1)
図1に本発明の一実施例に係る濾過型の空気清浄機の運転時の外観斜視図である。同図において1は本体フレーム、2は本体フレーム1の後ケース、3は本体フレーム1の前面に取り付けられ、後述するスライドパネル13を支持するガイドパネルである。
【0025】
本体フレーム1には、リモコンスイッチ4に設けられた赤外線発光部5から発せられる赤外線信号によって後述モータ11をオン・オフする受光センサ7や、連続運転・タイマー運転等を選択するセレクトスイッチ8,指タッチ方式による運転オン・オフ操作に必要なメンブレムスイッチ9、更には各種表示ランプ等を備えた操作パネル6が取り付けられている。
【0026】
図2は本発明の一実施例に係る濾過型の空気清浄機の分解図である。同図において、10は本体フレーム1の空気吸込口であり、モータ11は本体フレーム1の背部に取り付けられている。なお、モータ11のオン・オフ動作は、リモコンスイッチ4に代えて、指タッチ方式によるメンブレムスイッチ9やその他のスイッチ類とリモコンスイッチ4とを併用するようにしてもよい。
【0027】
後ケース2には、シロッコファン12が収容されており、シロッコファン12はモータ11によって回転駆動される。
【0028】
ガイドパネル3には、スライドパネル13が前後方向にスライド自在に取り付けられている。
【0029】
同期モータ14は、空気清浄機のスイッチオンと同時にシロッコファン駆動用モータ11と同期してあらかじめ設定の一定角度回転で停止し、空気清浄機のスイッチオフでフリーとなる。
【0030】
15は本体フレーム1とガイドパネル3との間にセットされたフィルターで、各種汚れや臭いを除去するための機能を持たせるために複合構造となっている。
フィルター15は、図に示すように外表面を覆う層である外フィルター15aと、外フィルター15aの内部にある内フィルター15bより構成される。いずれのフィルターも基本構造は、塵埃類を濾過するために、ポリエステルやウレタン,セルロース,ナイロンあるいはエレクトレット化処理したポリオレフィン類などの不織布層やスポンジ状の多孔質層が用いられる。内フィルター15bには、これら基本構造に加えて、臭気を吸着するための活性炭粒子や繊維類が混合や混紡、あるいは封入される。また、繊維自体に臭気を中和するための薬剤が浸透あるいは、表面に展着させる場合もある。薬剤としては、各種有機酸やフラボノイド類のアルカロイドなどのほかに、微生物の繁殖を抑制するための抗菌剤類も合わせて用いられる。近年では安全性の高いキチン,キトサン類やカテキン誘導体等も用いられる。
【0031】
16は後ケース2に設けられた空気吐出口である。
【0032】
以上の構成において、スイッチオンによってモータ11が回転し、シロッコファン12が回転して空気吸込口10から空気を吸入して空気清浄作用が開始されると同時に、同期モータ14が一定角度回転する。同期モータ14が一定角度回転すると、スライドパネル13を前方向に押し出し、スライドパネル13とガイドパネル3との全周囲方向から、塵埃や、煙,油微粒子や、微生物や微生物の死骸類,花粉類や悪臭などを含む室内の汚れた空気を吸込む。この吸込まれた空気は、フィルター15で濾過されて清浄な空気となり、シロッコファン12により後ケース2の空気吐出口16から室内に放出されるというサイクルを繰り返しおこなう。発生させる風量は約2〜3(m/分)であり、8畳の室内では30分間の運転で70〜95%の煙草の煙を除去する能力を有する。
【0033】
一方、スイッチオフによってモータ11が回転を停止するとスライドパネル
13を後退させ、スライドパネル13とガイドパネル3間の隙間を閉鎖する。これにより前面パネルの空気吸込口部分が常にオープンの状態にある場合の不具合、すなわち、運転停止時、運転中にフィルターで捕集した汚れに含まれる臭気、例えば煙草のヤニの臭いが空気吸込口から室内に放出される不具合や、運転停止時でも空気吸込口には塵や埃がたまりやすく、ガイドパネルやスライドパネルなどの狭い格子部分にたまった汚れを掃除するには煩わしさをともなうといった不具合をなくすことができる。
【0034】
本実施例では、濾過型の空気清浄機において図1のように、本体のスライドパネル13とガイドパネル3を無色透明ABS部品に、光触媒外フィルター15aはアクリル不織布でできているが、この光触媒外フィルター15a表面には後述実施例6のサンプルNo.17の光触媒薄膜が形成されている構成となっている。膜の形成方法については後述の実施例4で詳細に説明するが、所定のゾルを調整して、アクリル不織布にスプレーで塗装した後に120℃で15分間処理して、光触媒薄膜が形成されたフィルターを作製した。
【0035】
光触媒外フィルター15aはスライドパネル13とガイドパネル3との間の空気吸込口より取り入れた汚れた空気を最初に濾過する部品であり、塵埃や、煙,油微粒子や、微生物や微生物の死骸類,花粉類や悪臭などの各種異物が多量に付着する。光触媒薄膜を形成させた部品表面に光が照射されるにあたり、外光などが直射される必要は必ずしもなく、透明な素材である透明プラスチックやガラスからなる部品を透過させた光が照射されるような構成にしても効果が得られる。つまり空気清浄機本体に透明なスライドパネル13と透明なガイドパネル3とを搭載することで、外光が光触媒外フィルター15aに到達することができる。この光によって、光触媒外フィルター15aの表面に捕集された異物は酸化分解される。また空気中に浮遊する細菌類や黴のような各種微生物類は、高活性光触媒の分解作用によって死滅、あるいは繁殖が抑制される。このように、空気清浄機本体に光源を搭載することなく充分な光触媒の脱臭・抗菌効果を得ることが可能となった。
【0036】
ではここで、実施例のような、外光が透明ABS樹脂を透過して光触媒薄膜形成フィルターに到達するようにした構成装置の、室内空気中に存在する汚染物質の代表である煙草の煙,アンモニア,大腸菌に対する除去作用について評価を行ったので以下に示す。
【0037】
先ず最初に煙草の煙汚れの除去作用について評価を行った。試験方法は次のとおりである。
【0038】
送風量が5m/分の換気扇の吸いこみ側である前面に、対象面積が10cm×10cmのアクリル繊維不織布フィルターを貼り付けて固定した。この不織布付きの換気扇を、容量が45,000cmの透明ABS容器の中に設置して密封した。この容器の中には煙草の煙発生装置を併置した。この煙草の煙の発生装置は、着火した煙草のフィルター側にチューブを取り付けてあり、このチューブはダイヤフラムポンプに連結してある。このダイヤフラムポンプを1,800cm/分の風量で駆動させて、煙草側のチューブ端を減圧すると煙草のフィルターを通過した煙がポンプの吐出側から排気され、約1.5 分間で1本の煙草を燃焼する。このような構成の容器の中で煙草の煙発生装置と換気扇を駆動すると、換気扇の排気も同容器内に排出されるので、容器内に充満した煙草の煙は何回も不織布フィルターを通過することになる。3本の煙草を連続して燃焼させ、換気扇を5分間駆動させた後に容器を開放して不織布フィルターを取外して汚れ付着試料とした。この不織布フィルターの繊維表面には、本実施例で用いた光触媒サンプルNo.
17が形成してある。
【0039】
このように作製した汚れ付着フィルター上の汚れの色を色差計で経時的に測定して分解効率を評価した。なお、本試験はJIS−Z−8730(色差表示法)に従ったもので、用いた測定機はJIS−Z−8722に準じた、日本電色工業(株)製のZ1001DPである。
【0040】
まず、煙草の煙によるフィルターの汚れ具合を経時的に測定した結果を図5に示す。同条件で試験を行った無処理アクリルフィルターと比較して、光触媒薄膜形成フィルター(サンプルNo.17)は約4倍変色が速く、すなわち約4倍煙汚れの捕集効率が向上していることがわかった。
【0041】
次に、この汚れ付着光触媒フィルターと蛍光灯の間に透明ABS板を介在させた構成で蛍光灯の光を照射し、付着した汚れの分解効率を評価した。結果を図6に示す。図中の積算光量とは、250〜350(nm)の波長の光が照射された積算値を表し、分解率とは光照射前の汚れた状態からの変化量を表す。比較のため同条件で試験を行った無処理アクリルフィルターでは殆ど分解効果は認められないが、光触媒薄膜形成フィルター(サンプルNo.17)の場合光照射に伴って汚れが分解されたことがわかる。
【0042】
実際の環境で、上記の装置を用いた本試験と同レベルの汚れ量を光触媒フィルターに付着させるためには、密閉した6畳間(約20m)で20本の煙草を燃焼させた後、上記の換気扇を120分間稼働させた後の汚れ量に相当するものであった。
【0043】
では、次にアンモニアの除去作用について評価を行った。上記の煙草の場合と全く同じ構成で検討を行い、煙草の煙発生装置のかわりにABS容器内部に一定量のアンモニアガスを注入した。アクリルフィルターの繊維表面には、上記煙草の汚れ分解試験と同様に本実施例で使用した光触媒サンプルNo.17が形成されている。
【0044】
まず最初に、アンモニアガスの捕集効果を測定した結果を図7に示す。容器内部のアンモニアガス濃度を25ppm に調整した上で、光触媒アクリルフィルターを取り付けた換気扇を駆動させ、残存アンモニア濃度をガステック製アンモニア検知管にて測定した結果である。光触媒無処理アクリルフィルターでは、1時間後でも90%以上のアンモニアガスが残留しているのに対して、光触媒薄膜形成アクリルフィルターの場合は、1時間後で50%以下の濃度まで吸着除去されたことがわかる。すなわち光触媒薄膜形成フィルター(サンプルNo.17)にはアンモニアガスの捕集効果が認められる。
【0045】
次にこのアンモニアガスを飽和するまで吸着させた後に、再び容器内部にアンモニアを25ppm 注入し、換気扇を駆動させながら透明ABS容器外部に配設した白熱灯を点灯して、フィルター面に光が当たるようにした。容器内のアンモニアガス濃度を上記同様に経時測定し、アンモニア分解効果を評価した。この結果を図8に示す。
【0046】
光触媒無処理フィルターではほとんど濃度変化は認められないのに対して、光触媒薄膜形成アクリルフィルターの場合、光照射に伴ってアンモニアガス濃度は低下し、分解除去されたことがわかる。すなわち、アンモニア飽和した光触媒フィルターが光照射により、分解性能が再生したといえる。
【0047】
同様の脱臭性能評価試験を別の悪臭物質として、アセトアルデヒド及びメチルメルカプタン,硫化水素について評価を行ったが、アンモニアの場合同等かそれ以上の分解効果が得られており、対象とする悪臭はアンモニアのみならず各種の悪臭を分解できることを確認している。
【0048】
最後に、光触媒薄膜形成フィルター(サンプルNo.17)を用いて、抗菌試験を行った。このフィルター上に大腸菌を植え付け、この面に光があたるように蛍光灯を2m離れたところから点灯させ、大腸菌の生存数を経時測定した。初期状態からの生存率を求め、抗菌性の評価をした。比較として光触媒無処理フィルターでも同様の実験を行った。
【0049】
その結果を図9に示す。光触媒薄膜形成フィルターでは大腸菌は8時間で85%殺菌し、16時間で93%まで死滅する。そして24時間後には、ほぼ無くなるのに対して、無処理フィルターでは菌数は全く減らない。従って光触媒薄膜形成フィルターには抗菌効果があることが認められた。
【0050】
以上の結果から、スライドパネルとガイドパネルを透明プラスチック部品にして高活性光触媒フィルターを搭載することで、空気清浄機本体に光源を搭載することなく充分な光触媒の効果を得ることができるといえる。また、本実施例の光触媒薄膜は密着性が高いため、塵埃などの、光触媒が分解できない無機汚れを水洗によって除去した後も膜剥がれが無く、分解性能の劣化は見られずフィルターの繰り返し使用が可能であった。従って、光触媒のセルフクリーニング作用によってフィルターの交換回数が少なくてすむという効果や、光触媒用光源の消費電力が節約できるという効果がある。
【0051】
また、光触媒フィルターは、排気を脱臭するという能力と、居住空間に存在する菌を除去する能力を同時に備えているため、フィルターを多層厚型にする必要が無く空気清浄機本体をコンパクトに抑えることができるという効果もある。
【0052】
(実施例2)
前述実施例1のようにフィルターに光触媒薄膜を形成することに加えて、透明なガイドパネルや透明なスライドパネルやその他の外装部品にも光触媒薄膜を形成するのも好ましい。これら外装部品に前述したような各種異物汚れが付着しても、外光が照射されることにより光触媒フィルター表面上に付着した汚れと同様に酸化分解されるからである。
【0053】
本実施例では、図1において本体フレーム1,後ケース2,透明なガイドパネル3,リモコンスイッチ4,スイッチ操作部6,透明なスライドパネル13、及び外フィルター15aに実施例5の光触媒サンプルNo.21を成形したものである。
【0054】
特に、透明なガイドパネル3および透明なスライドパネル13に光触媒薄膜を形成しておくと、これらの上に付着した汚れが、付着するやいなや酸化分解され常にプラスチックの透明度が保たれるという自浄作用を有する。このため、外光は、透明ガイドパネル3および透明なスライドパネル13を最大限の光量で透過して光触媒薄膜フィルターに到達することができる。従って、フィルター上の光触媒機能を、室内環境における最大限引き出すことができる。
【0055】
また、上記外装部品は、フィルター交換時や運転開始停止時には素手で触れる部品であり、付着した汗などの体脂類を栄養分として、細菌類が繁殖しやすく、従来イミダゾール系,チアゾリン系等の有機物系の抗菌剤や、銅系,亜鉛系,銀系等の無機物系の抗菌剤を成形樹脂中に練り込んで抗菌効果を得ていたが、これらの処理が不要となる。
【0056】
また、空気吸込口部分には塵や埃がたまりやすく、ガイドパネルやスライドパネルなどの狭い格子部分にまで汚れが付着することが多い。これを防ぐために、従来各種界面活性剤や、ポリアミド,ポリエチレングリコール系等の親水性高分子類を成形樹脂中に混練し、表面抵抗を低下させることで防止してきたが、本実施例では、表面の抵抗値を低下させることができる光触媒薄膜を用いているので、電気抵抗値の高いABS類の成形樹脂でも塵埃等の付着を防止する効果も併せて得ることができる。
【0057】
また、前記スイッチ操作部6に設けられている受光センサ7と、リモコンスイッチ4に設けられた赤外線発光部5の表面には光触媒薄膜が形成されているために、汚れによる赤外線信号の受発信の阻害を防止する効果が得られる。
【0058】
次に、空気清浄機外装部品に光触媒薄膜を形成させた場合の具体的な防汚効果を評価した結果を以下にまとめる。試料としては、最も良く外装部品に用いる射出成形用の熱加塑性ABS樹脂(テクノポリマー社:タフレックス451,白色着色品)を用いた。5cm×5cmの板状の成形品を作成し、この表面をコロナ放電処理した。このコロナ放電処理面に、本実施例で使用したサンプルNo.21の組成の光触媒薄膜を形成させた。
【0059】
実施例1の光触媒薄膜フィルターの汚れ分解試験と全く同じ構成で、同様に煙草の煙による汚れ分解の評価を行った。換気扇中央部に5cm×5cmのABS板を固定し、10本の煙草を燃焼させた後、120分間換気扇を駆動させ、白いABS板を茶色く汚染させた。このABS板を取外し、前と同様に蛍光灯を照射して、その前後の色差測定により汚れ除去率を評価した。この結果を図10に示す。比較用に光触媒無処理ABS板についても同様に成形板表面に煙汚れを付着させて評価した。
【0060】
この結果、光触媒無処理ABS板ではほとんど汚れ分解がみとめられないが、光触媒薄膜形成ABS板(サンプルNo.21)の場合、光照射に伴って煙汚れは減少し、分解除去されたことがわかる。
【0061】
また本実施例で用いた光触媒サンプルNo.21はATO(Antimony Tin Oxideの頭文字)を添加成分として配合してあるため抗菌性がより優れている。照射強度0.1(mW/cm2)のブラックライトで光照射したときの効果を表1に示す。
【0062】
【表1】
Figure 0003602703
【0063】
ATOが添加されているサンプルNo.21はATOが添加されていないサンプルNo.17と比較すると、2時間後の残存大腸菌数が1/100まで減少している。以上によりATO添加光触媒フィルターがより優れた抗菌効果を有することがわかった。
【0064】
(実施例3)
本実施例では静電気集塵式の空気清浄機に光触媒を応用した例を示す。
【0065】
図4にその断面図を示す。全体はフロントカバー17およびリアカバー18より構成される。フロントカバー17,パネル19に空気吸込口20と空気排出口21を設け、空気吸込口20と空気排出口21を結ぶ通風路中には着脱自在のプレフィルター22がある。後方には、集塵電極23と、放電電極24を対峙させて設け、さらに、集塵電極23と、放電電極24より発生するオゾンを除去するためのオゾン除去フィルター25があり、プレフィルター22,集塵電極23,放電電極24,オゾン除去フィルター25が枠体26に装着された集塵ユニットがある。さらに後方には、集塵ユニットとの接触部に緩衝材27,送風機28と集塵ユニットを接続するダクト29、および送風機28があり、緩衝材27はダクト29に取り付けられ、さらにダクト29は送風機28に取り付けられ、同一体で構成された送風ユニットがある。清浄化された空気は空気排出口21より排気される。
【0066】
該プレフィルター22は、濾過型の空気清浄機の場合での外フィルター15aと同様の役割を果たす。
【0067】
本実施例では、このプレフィルター22はポリエステル製の不織布であり、この表面には後述に示すサンプルNo.21の光触媒薄膜が形成されている。
【0068】
ところで、前述実施例1においては、光触媒フィルターに外光が届くようにスライドパネル13とガイドパネル3を無色透明ABS部品としたが、他に好適な例をあげると、PMMA,AS,PC,PS,PVC,ポリ−4メチルペンテン(TPX)がある。
【0069】
また、製品デザイン的な観点からこれらの透明プラスチック素材に顔料や染料を混練させて着色してもよい。しかしながら、着色させる場合には、黄色や赤色や緑色系の着色は、短波長の光を吸収するために分解効果を低下させるので好ましくない。着色する場合好ましい色調は青色系或いは黒色系(スモーク)である。以下議論する透明部品の色については、JIS−Z−8730に示されるような、Hunter法(Lab法)で規定する。すなわち、無彩色である白黒の度合(明度)を表すL値、赤色と緑色の度合を表すa値、並びに青色と黄色の度合を表すb値によって表現するものである。この表現法によると、L値は、大きい程好ましい。色彩については、黄色系の透明部品は他の色に比較して、光触媒における分解反応に必要な短波長の光の吸収が大きく、分解率を低下させるため、b値が少ない程好ましい。また、a値については、一定値以上,一定値以下の範囲になるようにすることが好ましい。
【0070】
本実施例では図4において、フロントカバー17,パネル19を透明青色PMMA樹脂部品(三菱レーヨン(株);アクリペットMDライトブルー)にした。この透明青色PMMA樹脂部品の色をLab法で表すと、L=79.8,a=−6.68,b=−16.5である。
【0071】
では、実際に透明プラスチック部品の色と煙草の煙汚れ分解効率の関係を評価した。実施例1煙分解試験と同様の条件で作製した汚れ付着フィルター上にPMMA樹脂をベースとして各種の顔料によって着色させたカラープレート板を置いて蛍光灯の光を照射し付着した汚れの分解率を測定した。このPMMA樹脂は、三菱レーヨン(株)のアクリペットMDを各色に着色した厚み2.2mm のカラープレートであり、紫外線吸収剤が添加されているため360nm付近の紫外線を吸収する。
【0072】
結果を図11に示す。図中の分解率とは、2mの距離で40ワットの蛍光灯の光を汚したフィルターに20時間照射した後の、色差変化より求めた脱色率を表す。色差変化とは、光照射前の汚れた状態の色差を100%とし、煙草の煙による汚れを付着させる前の色差を0%としたものである。実際の喫煙環境では、本条件の試験で40%以上の分解率がえられれば、煙による汚れが蓄積することなく連続使用に耐えうるものである。
【0073】
この分解率結果から、L値が+50以上であり、かつa値が−20以上+20以下であり、かつb値が+20となる条件の場合、40%以上の分解率を得ることができるとわかった。また、本実施例の透明青色(ライトブルー)は分解率
88%と非常に高く、蛍光灯という、空気清浄機が使用される光環境下で充分な汚れ物質分解効果が得られることが認められた。
【0074】
次に、上記実施例1〜3の中における、外光が照射される部品類の表面に形成した、光触媒薄膜の配合組成並びに、膜の硬化条件および各配合組成の特性等について説明する。
【0075】
概要をまとめると次のようになる。
【0076】
光触媒をプラスチック表面にコ−ティングする場合、無機バインダーであるシリカを用いた場合は、有機物であるプラスチック表面との接着は不十分であり、バインダーとしては有機樹脂が有効で、その添加量は10〜70wt%が良好であることがわかった。特にフィルターなど柔軟なプラスチック素材に対しては樹脂の硬さが重要で、硬すぎると柔軟性がなくなり変形時に剥離する。そのために有機樹脂のTg(ガラス転移温度)は比較的小さな値をとるのがよいと考えられ、30℃以下が良好であることがわかった。また、プラスチック基材との密着性を保ちつつ、光触媒の性能を向上させるには、Li,Na,Mg,K,Zn及びATO,RSO(Ruthenium Strontium Oxideの頭文字)の少なくとも1種類を添加すれば良く、その添加量は2〜20wt%が良好であることがわかった。
【0077】
一方、有機樹脂は基材に合わせて材料の選択を行えば、接着力は充分となり洗浄に耐えられる強度を生じる。しかし、有機樹脂は光触媒作用により分解していく。これを防ぐためには樹脂の分子構造を安定化するか無機系の材料を使用することが望ましい。そこで、樹脂の分子量を大きくすると共に、有機樹脂の側鎖に無機系の官能基を導入して、酸化チタン表面との接触部を無機系により結合させることで分解を抑制できる。すなわち、分子量が30000より大きく、有機樹脂の側鎖にシラノール基を有すると良好であることがわかった。
【0078】
では、以下の実施例で詳細を説明する。
【0079】
(実施例4)
TiO微粒子分散液に有機樹脂を添加した溶液を作製した。この溶液を用いてアクリル繊維上にTiO膜を形成し、光触媒付きフィルターを作製した。以下にその手順を説明する。
【0080】
まず、コーティング液の作製法について示す。TiO微粒子分散液及び有機樹脂は市販のものを用いた。TiO微粒子分散液は石原産業製のSTS−21を、有機樹脂は日立化成製のAE8200を各々用いた。コーティング液はTiO微粒子分散液と有機樹脂を所定量添加し、1時間撹拌して作製した。また、固形分濃度は5wt%とし、必要量水を加えて調整した。
【0081】
次に、光触媒付フィルターの作製法を示す。アクリル繊維に作製したコーティング液をスプレーによりコートして、120℃で15分間処理して光触媒膜をコートしたフィルターを形成した。
【0082】
光触媒フィルターとしては、空気中に存在する悪臭成分及び細菌,タバコの煙等の除去が可能である。特に、従来のフィルターが吸着剤による吸収除去であるため飽和吸着後にその効果が失われ交換する必要があるのに対して、光触媒付きフィルターは吸着した悪臭成分及び細菌,タバコの煙等を光触媒作用により除去できるためフィルター交換回数を少なくすることができる。そこでフィルターの性能を調べるために、たばこの分解試験及び光触媒の密着性を評価した。
【0083】
たばこの分解試験は、前述実施例1における分解試験と全く同様の構成で行い、密着性評価試験については、折曲げて剥離する程度は×、10回たたいて剥離する程度は△、ナイロンたわしでこすって剥離する場合は○で剥離しなければと評価した。つぎに、フィルターを水洗して強度変化を調べた。水洗は水中でもみ洗いした後、60℃で30分乾燥し行った。この水洗を10回行った後同様の密着性試験を行い評価した。また、水洗後のたばこの分解試験を行い、水洗前後の変化も調べた。
【0084】
表2に樹脂の添加量に対する結果を示した。
【0085】
【表2】
Figure 0003602703
【0086】
結果は樹脂添加量は70%〜20%であれば、性能に大きな変化は見られず、たばこの分解及び密着性の良好なフィルターを得ることができることが分かった。また、特に30〜70%が好ましいことも分かった。樹脂の添加量が10%では初期のたばこの分解性は良好であるが密着性が悪い。80%では密着性は良好であるがたばこの分解ができない。70〜20%であれば初期のたばこの分解及び密着性は良好で、水洗後もほぼ変化がない。また、30〜70%であればたばこの分解はもちろんのことナイロンたわしで洗浄可能で有り、膜の密着性に優れたフィルターを作製できることが分かった。
【0087】
光触媒は光を吸収して生じたラジカルにより有機物を分解することができる。しかし、無機物の汚れについては効果がない。フィルターのような目の細かいものの場合、埃等が目に詰まったりした場合、本実施例の様な密着性に優れた材料で有れば、たわし,ブラシ等で目に詰まった汚れを除去しても、光触媒の劣化はなくフィルターとして繰り返し使用できる。従ってフィルターの交換回数を少なくすることができる。また、アクリル繊維のほか、ポリエステル繊維及びポリプロピレン繊維の表面に作製しても同様の結果がえられ効果を確認できた。
【0088】
なお、AE8200はアクリル樹脂のエマルジョン溶液であり、Tgが20℃、分子量30000の特性を有する。後述するが、本発明によれば、Tgが30℃以下、分子量30000以上の有機樹脂の使用が好ましく、不織布などに塗布した場合でも、充分に追従できる柔軟さと水洗い後も膜剥がれが生じない密着性が得られる。また、AE8200のようなアクリル主鎖以外に、エポキシ主鎖の樹脂を用いても同様の結果が得られた。
【0089】
また、アクリル樹脂の側鎖にシラノール基を付加したものも用いることができる。シラノール側鎖を付加したグレードとしてはSW6003などが挙げられるが、これらは配合する酸化チタンやシリカ等の無機素材と有機バインダーとの密着性を高め、膜強度を高める効果がある。
【0090】
(実施例5)
添加する樹脂の性質により密着性が変化する。特に樹脂の硬さが変化すれば柔軟性がなくなり洗浄時の剥離が大きくなる。表3には樹脂のTg(ガラス転移温度)を変化させ、たばこの分解及び密着性を評価した結果を示した。
【0091】
【表3】
Figure 0003602703
【0092】
Tgが50℃以上では初期密着性は不良で、洗浄後のたばこの分解性能の変化も大きい。30℃以下で有れば良好な結果が得られており、比較的柔かい樹脂が有効で有ることが分かった。
【0093】
(実施例6)
光触媒の性能を向上させるために、実施例4で用いた有機樹脂添加光触媒コーティング液に添加剤を添加して実施例4同様のたばこの分解試験及び密着性評価を行った。表4にその結果を示した。
【0094】
【表4】
Figure 0003602703
【0095】
この表はLiNO,ATO添加について調べたものである。LiNOの添加量が2〜20%で、さらにATOを2〜20%添加すれば、密着性に変化がなくたばこの分解性を向上できることが分かった。また、Li以外のNa,Mg,K,Zn及びRSOについても試験を行ったところ、同様の結果が得られ効果を確認できた。
【0096】
(実施例7)
有機樹脂をバインダーに用いる場合、バインダーである樹脂が光触媒により分解してしまうことが多く、一般に用いられることが少ない。そこで、紫外線を照射して密着性の変化を調べ、フィルターの寿命を測定した。紫外線の照射条件は、360nmの光を3mW/cmの強度で照射した。通常蛍光灯の紫外線強度は10cmの距離で0.03mW/cmであり、今回の試験条件は生活環境に比べ約
100倍以上の加速試験に相当する。したがって、3日で1年未満、7日で約2年、10日で3年、30日で10年以上に相当することになる。表5は、実施例4で作製した樹脂添加量30%の光触媒付フィルターについて試験した結果である。試験内容は、所定の紫外線照射時間経過後に、実施例4同様に密着性試験及びたばこの分解試験を行ったものである。
【0097】
【表5】
Figure 0003602703
【0098】
結果はたばこの分解性は10日後に若干低下するが密着性は変化がない。20日後にはたばこの分解及び密着性に大きな変化が見られる。このことから、このフィルターは室内のような生活環境下では2〜3年は使用可能で有ることが分かった。
【0099】
次にフィルターの寿命と樹脂の分子量について調べた。試験条件は先と同様である。
【0100】
【表6】
Figure 0003602703
【0101】
結果は表6に示したように分子量が大きくなるほどフィルターの寿命が延びることが分かる。室内のような生活環境下での寿命に換算すると、分子量30000 以上ならば1年以上使用可能となり、製品的に許容できる範囲である。実施例4〜6で用いた樹脂は分子量30000のもので、さらに100000まで大きくすることで3年間は使用可能となる。さらに、表中のサンプルNo.35のように樹脂の側鎖にシラノール基を20%導入したものを用いると、分解率が劣化しない期間は、紫外線照射時で20日であるから室内のような生活環境下では6〜7年使用できることになる。このように、使用する樹脂の分子量を大きくしたり、シラノール基のような無機物を導入することにより、光触媒により分解されにくくなり、フィルターの寿命を延ばせることが分かった。
【0102】
【発明の効果】
光分解効率がTiO単体での分解効率より向上し、従来必要とされた光強度より少ない強度でも付着物を分解できるような高活性な性能を有し、かつバインダ−を多量に添加しても該光触媒の性能低下を生じることのない光触媒を、柔軟性の有る耐熱性の乏しい材料、例えばプラスチック繊維部材に形成し、さらに無機物の汚れを除去するためブラシや水洗等の機械的な洗浄を行っても膜剥がれが生じず、従って、該光触媒薄膜形成部材の洗浄回数及び部品交換を少なくする空気清浄機を提供することができた。
【0103】
また、通常の空気清浄機使用環境レベルの光を効果的に取り入れて光触媒に作用させ、脱臭・抗菌を行うことのできる空気清浄機を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る濾過型の空気清浄機の運転時の外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る濾過型の空気清浄機の分解図である。
【図3】本発明の一実施例に係る濾過型の空気清浄機のフィルターの外観斜視図である。
【図4】本発明の一実施例の空気清浄機の外観斜視図である。
【図5】煙草の煙に対する捕集率を示す図である。
【図6】煙草の煙汚れに対する光分解効果を示す図である。
【図7】アンモニアに対する捕集率を示す図である。
【図8】アンモニアに対する光分解効果を示す図である。
【図9】大腸菌に対する抗菌効果を示す図である。
【図10】煙付着ABS板における光分解効果を示す図である。
【図11】各カラープレート透過光による煙付着フィルターの光分解効果を示す図である。
【符号の説明】
1…本体フレーム、2…後ケース、3…ガイドパネル(透明)、4…リモコンスイッチ、5…赤外線発光部、6…スイッチ操作部、7…受光センサ、8…セレクトスイッチ、9…メンブレムスイッチ、10…空気吸込口、11…モータ、
12…シロッコファン、13…スライドパネル(透明)、14…同期モータ、
15…フィルター(光触媒)、16…空気吐出口、17…フロントカバー、18…リアカバー、19…パネル、20…空気吸込口、21…空気排出口、22…プレフィルター(光触媒)、23…集塵電極、24…放電電極、25…オゾン除去フィルター、26…枠体、27…緩衝材、28…送風機、29…ダクト。

Claims (1)

  1. 空気を取り入れ、通風路中に設けたフィルターを通過させて浄化した後に排出する空気清浄機において、
    前記フィルターは、プラスチック繊維の表面に酸化チタンとアクリル樹脂もしくはエポキシ樹脂とを添加した光触媒薄膜を形成したものであり、前記アクリル樹脂もしくはエポキシ樹脂の添加量が10〜70wt%、ガラス転移温度が30℃以下、分子量が30000以上であることを特徴とする空気清浄機。
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