JP3601782B2 - 血糖値検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は血糖値検出装置に関し、より詳しくは採血を行なわない非浸襲式の血糖値検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、採血を行なわずに生体の血糖値を検出する非浸襲式の血糖値検出装置は既に知られている(例えば特開平10−258036号公報)。
上記公報に開示された従来の検出装置は、波長が異なる2つの半導体レーザから放出されたレーザ光を生体の指に照射して、その指を透過してきたレーザ光を受光しその強度に基づいて血糖値を求めるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の検出装置は、次のような欠点が指摘されていたものである。すなわち、従来の検出装置においては、波長の異なる2つの半導体レーザを並列し、あるいは、1つの半導体レーザの出力波長を切換えて波長が異なる2つのレーザ光を照射するよう構成されており、照射される指の位置が異なる、もしくは、同じ位置であってもタイミングが異なるものであって、このことが検出精度に影響を及ぼすおそれがある。
しかも、半導体レーザはレーザ光を拡散して放出するため、指を透過する光量が少なく、さらに透過後に受光できる光量も少ない。そのため、同時に受光されるノイズ成分との強度差が小さく検出精度が悪いという欠点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した第1の本発明は、生体に波長の異なるレーザ光を照射して、その生体を透過してきたレーザ光の強度に基づいて生体の血糖値を求めるように構成した血糖値検出装置において、
励起光を発光させる励起光源と、該励起光で励起されて、少なくとも2つの異なる波長のレーザ光を重畳して放出する照射部を設け、該照射部が放出するレーザ光を生体に照射するように構成し、上記照射部は、上記励起光で励起されてレーザ光を放出する固体レーザ媒質と、この固体レーザ媒質から放出されたレーザ光を通過させて、該レーザ光を2つの異なる波長のレーザが重畳されたレーザ光として放出する光学素子とを備え、該光学素子から放出される2つの異なる波長のレーザ光を生体に照射するようにしたものである。
また、請求項2に記載した第2の本発明は、生体に波長の異なるレーザ光を照射して、その生体を透過してきたレーザ光の強度に基づいて生体の血糖値を求めるように構成した血糖値検出装置において、
励起光を発光させる励起光源と、該励起光で励起されて、少なくとも2つの異なる波長のレーザ光を重畳して放出する照射部を設け、該照射部が放出するレーザ光を生体に照射するように構成し、上記照射部は上記励起光で励起される第1の固体レーザ媒質および、これとは組成の異なる第2の固体レーザ媒質を備え、
第1の固体レーザ媒質から放出されて第2の固体レーザ媒質を通過してきたレーザ光と、上記励起光で励起されて第2の固体レーザ媒質から放出されたレーザ光を生体に照射するようにしたものである。
さらに、請求項3に記載した第3の本発明は、生体に波長の異なるレーザ光を照射して、その生体を透過してきたレーザ光の強度に基づいて生体の血糖値を求めるように構成した血糖値検出装置において、
励起光を発光させる励起光源と、該励起光で励起されて、少なくとも2つの異なる波長のレーザ光を放出する照射部と、上記照射部を間に位置させて、対向して配置した反射鏡および出力鏡と、出力鏡から出力されるレーザ光を受光する受光手段と、該受光手段が受光したレーザ光の強度に基づいて血糖値を求める検出手段とを備え、
上記反射鏡と出力鏡との間に生体を位置させて、上記照射部が放出するレーザ光を生体に照射するように構成したものである。
【0005】
上記第1及び第2の発明によれば、波長が異なる2つのレーザ光を重畳して生体へ透過させるので、上記従来のものと比較して血糖値の検出精度が向上される。
また、上記第3の発明によれば、反射鏡と出力鏡で共振させて増幅されたレーザ光を受光手段で受光し、それをもとに検出手段が血糖値を検出するので、上記従来の装置と比較して高精度な血糖値の検出が可能となる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1において1が生体の血糖値を検出する血糖値検出装置である。この血糖値検出装置1は、レーザ光Lを放出する照射部16およびこの照射部16から放出されたレーザ光Lを受光する受光部17を有する検出機構3と、この検出機構3の作動を制御するとともに該検出機構3の受光部17によって検出したレーザ光Lの強度をもとに血糖値を検出する制御装置4とから構成している。
上記検出機構3は、図示しない固定フレームに取付けた上下一対の保持部材5,6を備えており、これらの保持部材5,6は、所定の間隔を隔てて水平に支持されている。上方側の保持部材5に照射部16を設ける一方、下方側の保持部材6に受光部17を設けてあり、それら照射部16と受光部17とを上下位置で相互に対向させている。これら照射部16と受光部17との間に被検査体となる人の手の指7を位置させて、その状態でレーザ光Lを指7に照射して透過させるようにしている。
後に詳述するが、照射部16は反射鏡11を備えており、他方、受光部17は出力鏡8を備えており、照射部16と受光部17とによって実質的な共振器を構成している。本実施例では、出力鏡8と反射鏡11との間に指7を位置させて、それら出力鏡8と反射鏡11との間でレーザ光Lを共振させてその過程で指7に照射し透過させるようにしている。そして、増幅されて強度が上昇したレーザ光Lが出力鏡8を透過して出力されたものを、受光部17に備えた受光素子2で受光するようにしている。
【0007】
本実施例において照射部16は、固体レーザ媒質としてのレーザ結晶14と、さらに、レーザ結晶14の底面に接合した光学素子としての複屈折フィルタ15とから構成している。さらに、励起光源としての半導体レーザ素子13を備え、この半導体レーザ素子13の底面に反射鏡11をコーティングにより設け、この反射鏡11とレーザ結晶14の上面を接合して、これらを照射部16と一体に構成している。
半導体レーザ素子13は制御装置4によって作動を制御されるようになっており、半導体レーザ素子13が作動されると、パルス発振で波長が0.94μmの励起光を下方に向けて発光するようになっている。
反射鏡11は、半導体レーザ素子13から放出される励起光の波長域は透過させるが、照射部16から放出される波長域のレーザ光Lは反射するようになっており、半導体レーザ素子13から放出された励起光は反射鏡11を透過してレーザ結晶14に照射されて該レーザ結晶14を励起させる。
レーザ結晶14は、YAG結晶を母体結晶としてYbイオンを添加したYb:YAG結晶からなり、半導体レーザ素子13が発光する励起光で励起されて、波長が1.05〜1.03μmの範囲に及ぶレーザ光を放出する。
複屈折フィルタ15は、方解石により構成され、レーザ結晶14から放出されるレーザ光を通過させると、それを2つの異なる波長のレーザ光が重畳されたレーザ光Lとして放出して、下方に向けて照射するようになっている。より詳細には、レーザ結晶14が放出したレーザ光は、グルコースに吸収されやすい波長である1.05μmをピークとするレーザ光と、グルコースに吸収されにくい波長である1.03μmをピークとするレーザ光とが重畳されたレーザ光Lとして、複屈折フィルタ15から放出されるようになっている。
なお、上述したように半導体レーザ素子とレーザ結晶を接合して一体化して構成したものをマイクロチップレーザという。
【0008】
一方、受光部17は、受光面を照射部16に向けた受光手段としての受光素子2と、その上面にコーティングして設けた出力鏡8とから構成している。
出力鏡8は、レーザ光Lの異なる2つの波長の波長域が透過可能で、所定強度以上のレーザ光Lを所定の透過率で透過させることができ、透過しないレーザ光Lは反射させるようになっている。
受光素子2は一つの素子から構成され、制御装置4によって供給電流を制御したりあるいは素子の温度を制御することにより、レーザ光Lに重畳されている異なる2つの波長に対応して受光波長を切換えるようになっている。そして、指7を透過して出力鏡8から出力されたレーザ光Lを受光して、各々の強度を電圧に変換し制御装置4の検出部4Aに入力するようになっている。
このように本発明によれば、反射鏡11と出力鏡8とにより実質的に共振器が構成され、その間に指7を位置させてレーザ光Lを照射するようになっている。共振器内のレーザ光は共振器内における損失より強度が高まると出力鏡から一気に放出されるものであり、出力鏡が透過させる強度はこれより小さく設定されている。本発明においては、指7の血中グルコースによる吸収が損失に相当する。よって、血糖値が高い場合には、共振器内の損失が大きくなり、出力されるレーザ光Lの強度は低くなる。他方血糖値が低い場合には、損失が小さく出力されるレーザ光Lの強度は高くなるものであって、血糖値(血中グルコース濃度)の違いに応じてレーザ光Lの損失が異なるので、出力されるレーザ光Lの強度に基づいて血糖値を求めることができる。
また、レーザ光Lは共振により増幅されているので、受光素子2で受光されるレーザ光Lの強度は、単発で放出されたものを受光素子2によって受光する場合に比較して強くなっている。これにより、受光素子2で受光されるノイズ成分と、本来のレーザ光Lとの強度差が顕著なものとなるため、検出精度が高くなる。
【0009】
制御装置4は、検出部4Aと表示部4Bを備えている。検出部4Aは、受光素子2で受光されたレーザ光Lの2つの異なる波長毎の強度に基づいて血糖値を求め、表示部4Bは、その結果を表示するようになっている。
本実施例では、検出部4Aは、受光した2つの異なる波長の強度の値からそれらの比を演算し、予め記憶しているこれら波長の強度比とグルコース濃度の相関データを参照して、これに基づいて血糖値を求めるようにしている。
なお、検出部4Aにおける血糖値の求め方については、生体に波長の異なるレーザ光を照射して、その生体を透過してきたレーザ光の強度に基づいて生体の血糖値を求めるようにしたものであれば、特開平10−258036号公報、特開平5−176917号公報等で開示されるような公知の検出方法を採用することができる。
【0010】
以上の構成において、血糖値検査装置1によって被検査体となる人の血糖値を検出する際には、先ず、手の指7を照射部16と受光部17との間に位置させる。この時、本実施例では爪7aが上方に位置するようにして両保持部材5、6の間に指7を挿入し、爪7aを照射部16の直下位置に位置させているが、爪7aが下方あるいは側方に位置するように挿入しても良い。
この状態となったら、制御装置4によって半導体レーザ素子13を作動させると、該半導体レーザ素子13によって励起光がパルス発振で発光されて、その励起光は反射鏡11を透過して下方側のレーザ結晶14に照射される。これにより、レーザ結晶14からレーザ光が誘導放出されて、そのレーザ光は複屈折フィルタ15に照射される。すると、複屈折フィルタ15は入射されたレーザ光を、異なる2つの波長が重畳されたレーザ光Lとして下方へ放出する。
そして、このレーザ光Lは指7を透過して、下方側の出力鏡8に入射し、その出力鏡8によって上方側へ向けて反射されてからさらに指7を透過して複屈折フィルタ15、レーザ結晶14を透過して反射鏡11に入射する。これら上下位置の反射鏡11と出力鏡8との間でレーザ光Lが共振されて所定強度以上に増幅されると、一気に出力鏡8を透過して受光部17の受光素子2によって受光される。
受光素子2によって受光されたレーザ光Lの強度が制御装置4の検出部4Aに入力されると、検出部4Aはその強度に基づいて血糖値を検出して、その検出した血糖値を表示部4Bに表示する。
【0011】
図2は本発明の第2実施例を示したものである。この第2実施例においては、照射部16を構成するレーザ結晶14に、YAG結晶を母体結晶としてNdイオンを添加したNd:YAG結晶を用い、光学素子としてLiNbO結晶から構成される非線形光学素子15Aを用いている。そして、半導体レーザ素子13は、制御装置4に制御されて波長が0.808μmの励起光を発光するようになっていて、この励起光で励起されてNd:YAG結晶からなるレーザ結晶14からは波長が1.06μmのレーザ光が放出される。
このレーザ光を非線形光学素子15Aに通過させると、グルコースに吸収されやすい波長の1.2μmのレーザ光とグルコースに吸収されにくい波長の0.9μmのレーザ光が重畳されてレーザ光Lとして放出され、このレーザ光Lを生体に照射するようになっている。
その他の構成は、前記、第1実施例と変わるところがなく詳細な説明は省略するが、このような第2実施例においても第1実施例と同様の作用、効果を得ることができる。
【0012】
図3は本発明の第3実施例を示したものである。この第3実施例においては、前記、第1実施例、第2実施例とは異なり、照射部16を第1の固体レーザ媒質であるレーザ結晶14Aと、これとは組成の異なる第2の固体レーザ媒質であるレーザ結晶14Bとから構成している。これらレーザ結晶14A,14Bは上下に接合されて一体化されて照射部16を構成しており、上方に位置するレーザ結晶14Aの上面を、半導体レーザ素子13の底面にコーティングされた反射鏡11に接合して、保持部材5に設けられている。
レーザ結晶14Aは、YLF結晶を母体結晶としてNdイオンを添加したNd:YLF結晶からなり、レーザ結晶14Bは、YVO結晶を母体結晶としてNdイオンを添加したNd:YVO結晶としている。そして、半導体レーザ素子13は,制御装置4に制御されて波長が0.808μmの励起光を発光するようになっていて、この励起光で励起されてNd:YLF結晶からなるレーザ結晶14Aからは、グルコースに吸収されにくい波長の1.04μmのレーザ光が放出される。他方、Nd:YVO結晶からなるレーザ結晶14Bは、レーザ結晶14Aを通過してくる半導体レーザ素子13が発光した波長が0.808μmの励起光で励起されて、グルコースに吸収されやすい波長の1.064μmのレーザ光を放出する。
レーザ結晶14Aが放出したレーザ光のうち下方に放出されたものは、レーザ結晶14Bを通過するので、レーザ結晶14Bからは波長が1.04μmのレーザ光と、レーザ結晶14B自体が励起されて放出した波長が1.064μmのレーザ光が重畳されてレーザ光Lとして放出され、このレーザ光Lを生体に照射するようになっている。
その他の構成は、前記、第1実施例、第2実施例と変わるところがなく詳細な説明は省略するが、このような第3実施例においても第1実施例、第2実施例と同様の作用、効果を得ることができる。
なお、上述した第3実施例におけるレーザ結晶14A,14Bの各組成は、上記説明とは逆に、レーザ結晶14AをNd:YVO結晶とし、レーザ結晶14BをNd:YLF結晶として構成しても良いものである。
また、上記で説明した第1の本発明に係る各実施例では、照射部16は2つの異なる波長のレーザ光を重畳して放出するものとして説明したが、3つ以上の波長が必要である場合には、照射部16に組成の異なる固体レーザ媒質を追加するなどして、放出する波長を増やすことも可能である。また、第2の本発明に係る各実施例については、さらに、組成の異なる固体レーザ媒質を並列させて照射部16を構成し、2つもしくはそれ以上の異なる波長のレーザ光を同時に照射するようにすることも可能である。
また、上記各実施例において、指7に代えて耳朶など生体の他の部位を保持部材5,6の間に位置させるよう構成しても良い。
【0013】
【発明の効果】
以上のように、第1及び第2の本発明によれば、少なくとも2つの異なる波長のレーザ光を重畳して生体に照射するので、従来のものと比較して血糖値の検出精度が向上されるという効果が得られる。また、第3の本発明によれば、反射鏡と出力鏡の間に生体を位置させて、反射鏡と出力鏡で共振されて増幅されたレーザ光を受光するようになっているので、従来の装置と比較して高精度な血糖値の検出が可能となるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す断面図。
【図2】本発明の第2実施例を示す断面図。
【図3】本発明の第3実施例を示す断面図。
【符号の説明】
1…血糖値検出装置 2…受光素子(受光手段)
4A…検出部(検出手段) 7…指(生体)
8…出力鏡 11…反射鏡
13…半導体レーザ素子(励起光源) 16…照射部
14…レーザ結晶(固体レーザ媒質)
15…複屈折フィルタ(受光素子)

Claims (3)

  1. 生体に波長の異なるレーザ光を照射して、その生体を透過してきたレーザ光の強度に基づいて生体の血糖値を求めるように構成した血糖値検出装置において、
    励起光を発光させる励起光源と、該励起光で励起されて、少なくとも2つの異なる波長のレーザ光を重畳して放出する照射部を設け、該照射部が放出するレーザ光を生体に照射するように構成し、上記照射部は、上記励起光で励起されてレーザ光を放出する固体レーザ媒質と、この固体レーザ媒質から放出されたレーザ光を通過させて、該レーザ光を2つの異なる波長のレーザが重畳されたレーザ光として放出する光学素子とを備え、該光学素子から放出される2つの異なる波長のレーザ光を生体に照射することを特徴とする血糖値検出装置。
  2. 生体に波長の異なるレーザ光を照射して、その生体を透過してきたレーザ光の強度に基づいて生体の血糖値を求めるように構成した血糖値検出装置において、
    励起光を発光させる励起光源と、該励起光で励起されて、少なくとも2つの異なる波長のレーザ光を重畳して放出する照射部を設け、該照射部が放出するレーザ光を生体に照射するように構成し、上記照射部は上記励起光で励起される第1の固体レーザ媒質および、これとは組成の異なる第2の固体レーザ媒質を備え、
    第1の固体レーザ媒質から放出されて第2の固体レーザ媒質を通過してきたレーザ光と、上記励起光で励起されて第2の固体レーザ媒質から放出されたレーザ光を生体に照射することを特徴とする血糖値検出装置。
  3. 生体に波長の異なるレーザ光を照射して、その生体を透過してきたレーザ光の強度に基づいて生体の血糖値を求めるように構成した血糖値検出装置において、
    励起光を発光させる励起光源と、該励起光で励起されて、少なくとも2つの異なる波長のレーザ光を放出する照射部と、上記照射部を間に位置させて、対向して配置した反射鏡および出力鏡と、出力鏡から出力されるレーザ光を受光する受光手段と、該受光手段が受光したレーザ光の強度に基づいて血糖値を求める検出手段とを備え、
    上記反射鏡と出力鏡との間に生体を位置させて、上記照射部が放出するレーザ光を生体に照射することを特徴とする血糖値検出装置。
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