JP3599777B2 - イオン交換樹脂およびその樹脂を充填した脱塩装置 - Google Patents

イオン交換樹脂およびその樹脂を充填した脱塩装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、従来より分子鎖の長い架橋剤を用いた高クラッド除去型イオン交換樹脂およびそのイオン交換樹脂を充填した脱塩装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
BWR型原子力発電所では、原子炉圧力容器の内部(以下、炉内と記す)を常に清浄な状態に維持するため、タービン復水器から炉内へ流入する復水を復水脱塩装置によって浄化処理し高度に浄化したのち炉内への冷却水として利用している。
【0003】
この復水脱塩装置は、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とが混合して充填された混床式脱塩塔であって、復水中のイオン成分とクラッドをイオン交換・ろ過および吸着によって分離し、復水を浄化するものである。
【0004】
そして、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合して混床を形成する方法としては、(1)ゲル型陽イオン交換樹脂とゲル型陰イオン交換樹脂とを用いる方法、(2)ポーラス型陽イオン交換樹脂とポーラス型陰イオン交換樹脂とを用いる方法が提案されている。
【0005】
従来の陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂とも架橋剤に、下記化学式1に示すジビニルベンゼン(DVB)が使用されている。化学式2は従来の陽イオン交換樹脂を、化学式3は従来の陰イオン交換樹脂の化学構造式を示している。
【化1】
Figure 0003599777
【0006】
【化2】
Figure 0003599777
【0007】
【化3】
Figure 0003599777
【0008】
従来から復水中のイオン成分およびクラッドの分離についてクラッドの分離機能を強化することにより、冷却水から原子炉へ持ち込まれるクラッドの量を低減し、プラント定検時の被ばく線量を減らすことが求められている。
【0009】
従来の粒状イオン交換樹脂を用いる方法では、イオン交換樹脂に捕捉されたクラッドを逆洗再生により除去してイオン交換樹脂のクラッド分離機能を回復していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
近年、イオン交換樹脂におけるクラッド捕捉能力はイオン交換樹脂表面におけるクラッド吸着領域の大きさおよびイオン交換樹脂表面から粒内への拡散速度に支配されることがわかってきた。これらの因子は樹脂の架橋度と密接な関係がある。架橋度は、通常8%程度のものを標準架橋度樹脂、これより高いものを高架橋度樹脂、低いものを低架橋度樹脂と呼んでいる。
【0011】
図1に示すようにクラッド捕捉能力は、低架橋度樹脂ほど大きくなる。しかし、図2に示すように架橋度が低くなると逆に有機不純物の指標である全有機炭素(TOC)溶出速度が高くTOC溶出量が増加する傾向がある。なお、図1はクラッド除去率と架橋度との関係を、図2はTOC溶出速度と架橋度との関係を示しており、黒丸印は後述する本発明の実施例を示している。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、クラッドの捕捉能力が大きく、かつ不純物溶出量が少ないイオン交換樹脂およびこのイオン交換樹脂を充填したクラッドの捕捉能力が大きい脱塩装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の少なくとも一方の樹脂の架橋剤がジビニルベンゼンのベンゼン環とビニル基の間に少なくともメチレン基1個を有し、前記架橋剤の含有率を少なくとも8%として合成してなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明はジビニルベンゼンのベンゼン環とビニル基の間に少なくとも1個のメチレン基を有する架橋剤を使用し、この架橋剤の含有率を少なくとも8%としたイオン交換樹脂を充填して樹脂床を形成してなることを特徴とする。
【0015】
【作用】
ゲル型イオン交換樹脂には、ミクロポアと呼ばれる細孔があり、水中でこの細孔内に水が入り、水分含有率50%程度となる。この細孔径とDVB%との間には図3に示すような関係があり、クラッド捕捉はこの細孔の大きさに比例していると考えられる。図3は強酸性陽イオン交換樹脂の架橋度と細孔の平均径との関係を示している。
【0016】
本発明のイオン交換樹脂は、従来のイオン交換樹脂の架橋剤より分子鎖の長いものを使用するため、イオン交換樹脂層内の細孔が大きく、かつ従来並み、もしくはそれ以上の強度を有するものとなり、クラッドの捕捉能力が大きくなるとともに、酸化による架橋切れが抑制され不純物を溶出することが少なくなる。
【0017】
【実施例】
本発明に係るイオン交換樹脂の一実施例を説明する。
陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂において、下記化学式4に示すジアリルベンゼンを架橋剤とする。ジアリルベンゼンは、化学式1に示す従来の架橋剤であるジビニルベンゼンより分子鎖が長い架橋剤である。化学式5は本発明の陽イオン交換樹脂を、化学式6は陰イオン交換樹脂の化学構造式を示している。
【化4】
Figure 0003599777
【0018】
【化5】
Figure 0003599777
【0019】
【化6】
Figure 0003599777
【0020】
図2に示すように、架橋度が低いとイオン交換樹脂からのTOC溶出速度が大きい傾向にある。しかし、本発明のイオン交換樹脂は、標準架橋度の約8%相当(DVB換算)であるので、イオン交換樹脂からのTOC溶出速度は低い、つまり当該イオン交換樹脂で処理した水は、従来標準架橋度品と同等の溶出不純物濃度の水となる。
【0021】
また、図1に示されるように、クラッド除去は架橋度が低いほど大きい傾向にある。本発明のイオン交換樹脂は架橋度が標準架橋度の約8%相当であるが、架橋剤に従来の架橋剤であるジビニルベンゼンより架橋の長さが−CH−の2つ分長い架橋剤を使用する。
【0022】
したがって、化学式2および3に示すような従来架橋剤であるジビルベンゼンを使用したイオン交換樹脂と比較して、化学式5および6に示す本発明に係るイオン交換樹脂は、樹脂内の細孔(ミクロポア)が大きくなる。よって従来の樹脂よりもクラッド除去率が大きくなる。
【0023】
従来、イオン交換樹脂の架橋度を低くして、クラッド除去性能を向上させていた。そのために、イオン交換樹脂からのTOC溶出が大きくなる傾向があった。本実施例では、イオン交換樹脂の架橋度を標準架橋度とし、架橋剤にジビニルベンゼンより直鎖の長い架橋剤を使用する。
【0024】
これにより、図4に示すようなクラッド除去性能が大きく、しかもTOC溶出の小さい樹脂を提供できる。図4はTOC溶出速度とクラッドの除去率を示しており、黒丸印が本実施例を示している。
【0025】
なお、本発明に係るイオン交換樹脂の実施例では、架橋剤としてジアリルベンゼンを使用した例を示したが、架橋剤としてはジビニルベンゼンのベンゼン環とビニル基の間に少なくともメチレン基1ケを有する架橋剤にも適用できる。
【0026】
つぎに上記構成のイオン交換樹脂を充填したBWR型原子力発電プラントに適用する混床式復水脱塩装置の実施例を説明する。
すなわち、上記実施例により合成したイオン交換樹脂をタンク内に充填し、樹脂床を形成して復水脱塩装置を構成する。この実施例によれば、クラッド捕捉能力が大きく、溶出不純物の少ないBWR型原子力発電プラントの混床式脱塩装置を提供することができる。
【0027】
また、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂による混床の上層部に上記実施例のイオン交換樹脂を充填して樹脂床を形成して脱塩装置を構成することもできる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、イオン交換樹脂の架橋剤として従来の架橋剤よりも分子鎖の長いものを使用するため、クラッド捕捉能力が大きく、不純物の溶出量を低減することが可能となる。
【0029】
また、上記イオン交換樹脂を充填した混床式脱塩装置により、クラッド濃度が低くかつ不純物の少ない高純度水を得ることができ、原子炉水質を高純度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオン交換樹脂の架橋度とクラッド除去率との関係を示す曲線図。
【図2】イオン交換樹脂の架橋度とTOC溶出速度との関係を示す曲線図。
【図3】強酸性陽イオン交換樹脂の架橋度と細孔の平均径の関係を示す曲線図。
【図4】イオン交換樹脂のクラッド除去率とTOC溶出速度との関係を示す曲線図。

Claims (3)

  1. 陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の少なくとも一方の樹脂の架橋剤がジビニルベンゼンのベンゼン環とビニル基の間に少なくともメチレン基1個を有し、前記架橋剤の含有率を少なくとも8%として合成してなることを特徴とするイオン交換樹脂。
  2. ジビニルベンゼンのベンゼン環とビニル基の間に少なくともメチレン基1個を有する架橋剤を使用し、この架橋剤の含有率を少なくとも8%として合成されるイオン交換樹脂を充填して樹脂床を形成してなることを特徴とする脱塩装置。
  3. 陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂による混床の上層部にジビニルベンゼンのベンゼン環とビニル基の間に少なくともメチレン基1個を有する架橋剤を使用し、この架橋剤の含有率を少なくとも8%として合成される陽イオン交換樹脂を充填して樹脂床を形成したことを特徴とする脱塩装置。
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