JP3598861B2 - レーザ発振器ミラーの角度ずれ検出方法及び検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出するための方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ発振器は、その内部で発生したレーザ光を平行な2枚の共振器ミラーの間で数回往復させてレーザのエネルギーを増幅し、出力する。その際、2枚の共振器ミラーの平行度が悪いと、干渉により多重横モードが発生したり、レーザ光が拡散し、所定の出力が得られなくなる。そこで、共振器ミラーの角度合わせを行う必要がある。
【0003】
一般に、レーザ発振器の共振器ミラーの角度合わせは、レーザ発振を停止した状態でHe−Neレーザ光などを用いて行われる。He−Neレーザ光は可視光であるため、これを共振器ミラーの間で反射させてこの光路を合わせることによって共振器ミラーの角度を平行に合わせることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法では2枚の共振器ミラーを平行にすることはできるが、両方の共振器ミラーが平行であってもレーザ光の光路と光軸がずれている場合は合わせることができない。この場合は、レーザ発振中に出力を見ながら共振器ミラーの角度を調節し、最大効率点を見つける必要がある。しかしながら、実際には、共振器ミラーの角度がどの方向にどれだけずれているかがわからず、試行錯誤で合わせるため、作業効率が悪く時間がかかってしまう。
【0005】
また、レーザ発振中に共振器ミラーホルダーの熱変形などにより角度ずれが生じ、出力が低下する場合がある。このため、レーザ発振中にも共振器ミラ一の角度ずれを検出する必要がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、レーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を自動的に検出する角度ずれ検出装置を提供することにある。
【0007】
本発明はまた、上記の検出をレーザ発振中に行うことのできる角度ずれ検出装置を提供することにある。
【0008】
本発明は更に、上記の検出装置に適した検出方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、レーザ発振器の出力光の一部をスクリーンに照射し、該スクリーンに生じた発光部を撮像して得られた画像を画像処理して該発光部の輪郭検出を行い、検出された輪郭における輝度勾配の変化から該発光部における特徴量を抽出し、該特徴量からレーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出することを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出方法が提供される。
【0010】
本角度ずれ検出方法においては、前記特徴量の抽出は、前記検出された輪郭に複数の輝度勾配検出領域を設定してそれぞれの輝度勾配検出領域に含まれる各画素の輝度勾配から各輝度勾配検出領域における輝度勾配平均値を前記特徴量として算出するものであり、前記複数の輝度勾配検出領域において特定の位置関係にある2つの輝度勾配検出領域における輝度勾配平均値の差から、レーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出することを特徴とする。
【0011】
本発明によればまた、レーザ発振器の出力光の一部を受けるスクリーンと、該スクリーンに生じた発光部を撮像する撮像手段と、該撮像手段により撮像された画像を画像処理して該発光部の輪郭検出を行い、検出された輪郭における輝度勾配の変化から該発光部における特徴量を抽出し、該特徴量からレーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出する画像処理手段とを有することを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出装置が提供される。
【0012】
本角度ずれ検出装置においては、前記画像処理手段は、前記画像における各画素毎の輝度値を検出して画像データとして出力するための画像入力ボードと、前記画像データから前記発光部の輪郭検出を行うと共に、前記検出された輪郭に複数の輝度勾配検出領域を設定してそれぞれの輝度勾配検出領域に含まれる各画素の輝度勾配から各輝度勾配検出領域における輝度勾配平均値を前記特徴量として算出し、前記複数の輝度勾配検出領域において特定の位置関係にある2つの輝度勾配検出領域における輝度勾配平均値の差から、レーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出する処理手段とから成ることを特徴とする。
【0013】
なお、前記複数の輝度勾配検出領域は4つが好ましく、この場合、前記特定の位置関係にある2つの輝度勾配検出領域が上下、左右の2組設定される。
【0014】
また、共振器ミラーの角度ずれの指標として、少なくとも前記上下の輝度勾配平均値の差と前記左右の輝度勾配平均値の差とを表示する表示手段を備えていることが好ましい。
【0015】
更に、前記レーザ発振器は紫外光レーザ発振器である場合、前記スクリーンは紫外光により蛍光を発する蛍光板が使用される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は以下のような点に着目している。紫外光レーザでは蛍光板にレーザ光を照射することによって蛍光(可視光)が発せられる。この蛍光は、レーザ光の強度と相関がある。共振器ミラーの角度ずれが生じるとレーザ光の強度分布が変化するため、これが蛍光輪郭における輝度勾配の変化となって現れる。そこで、本発明では、紫外光レーザ発振器の出力光の一部を蛍光板に照射し、このレーザ光により発する蛍光を画像処理により観察して、レーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出するようにしている。
【0017】
以下に、その好ましい実施の形態について説明する。本形態では、共振器ミラーの角度ずれによる蛍光輪郭の輝度勾配の変化から、共振器ミラーの角度ずれやずれの方向を検出するようにしている。
【0018】
図1を参照して、紫外光レーザ発振器10内には一対の共振器ミラー11A、11Bが配置されている。レーザ光の出力側とは反対側の共振器ミラー11Aは、角度調整可能に共振器ミラーホルダ12に保持されている。この共振器ミラーホルダ12は、紫外光レーザ発振器10外に設けられたつまみ等の手段により、後述するようにX軸及びY軸を中心に回動可能に構成されている。
【0019】
一方、レーザ光の出力側には、ビームスプリッタ21が配置される。ビームスプリッタ21は、レーザ光の強度の数%を90度の方向に反射し、残りを透過する。ビームスプリッタ21からの反射レーザ光は、蛍光板22に入射する。蛍光板22は、紫外光があたると蛍光(可視光)を発するガラスである。蛍光板22で発した蛍光は、CCDカメラ23で撮像される。撮像された画像信号は画像処理用の画像入力ボード24に送られる。画像入力ボード24は、CCDカメラ23からの画像信号をディジタル化し、画像の各画素ごとに輝度値のデータを画像データとしてコンピュータ25に出力するものである。コンピュータ25では、画像データから後述する検出動作及び判定動作により共振器ミラーの角度ずれやずれの方向を検出する。検出の結果、必要な情報がディスプレイ26にて表示される。
【0020】
以下に、図2〜図5をも参照して、本検出装置の動作について説明する。紫外光レーザ発振器10からのレーザ光を、エキシマレーザに代表される矩形ビームと仮定する。また、紫外光レーザ発振器10の出力側から見たレーザビーム断面の上下、左右方向が図2(b)、紫外光レーザ発振器10の出力側とは反対側の共振器ミラー11Aの上下、左右方向が図2(a)、CCDカメラ23で撮像し取り込んだ画像の上下、左右方向が図2(c)のようになるように、ビームスプリッタ21、CCDカメラ23の方向をセットするものとして説明する。
【0021】
1)紫外光レーザ発振器10内の共振器ミラー11A、11Bで発振したレーザ光を、ビームスプリッタ21で分光し蛍光板22に照射する。これにより、蛍光板22は蛍光を発する。
【0022】
2)蛍光をCCDカメラ23で撮像する。
【0023】
3)CCDカメラ23からの画像信号を画像入力ボード24に入力し、画像データ(各画素ごとの輝度値)をコンピュータ25のメモリに格納する。
【0024】
4)コンピュータ25では、メモリに格納された画像データから、各画素の輝度勾配の計算などの処理による輪郭検出を行い、図3のように蛍光領域を抽出する。
【0025】
5)コンピュータ25では、図4のように蛍光輪郭上側の辺上にある各画素の輝度勾配を計算し、その平均値を上側輝度勾配平均値G1とする。同じ処理を、蛍光輪郭下側、蛍光輪郭左側、蛍光輪郭右側についても行い、それぞれ下側輝度勾配平均値G2、左側輝度勾配平均値G3、右側輝度勾配平均値G4を計算する。
【0026】
6)コンピュータ25では更に、上下の輝度勾配平均値の差(G1−G2)と左右の輝度勾配平均値の差(G3−G4)を計算する。
【0027】
7)コンピュータ25は、上下の輝度勾配平均値の差(角度ずれ量)が正の場合は、図5の上方向に共振器ミラー11Aの角度がずれていると判定し、この値と蛍光の輝度分布をディスプレイ26に表示して警告する。この場合、オペレータは、図5のX軸用のつまみにより共振器ミラー11Aを図5中、時計方向(図5に付されている下方向)に回して差が0になるように角度ずれを補正すれば良い。上下の輝度勾配平均値の差が負の場合は、図5の下方向に共振器ミラー11Aの角度がずれていると判定し、この値と蛍光の輝度分布をディスプレイ26に表示して警告する。この場合、オペレータは、図5のX軸用のつまみにより共振器ミラー11Aを図5中、反時計方向(図5に付されている上方向)に回して差が0になるように角度ずれを補正すれば良い。
【0028】
一方、左右の輝度勾配平均値の差が正の場合は、図5の左方向に共振器ミラー11Aの角度がずれていると判定し、この値と蛍光の輝度分布をディスプレイ26に表示して警告する。左右の輝度勾配平均値の差が負の場合は、図5の右方向に共振器ミラー11Aの角度がずれていると判定し、この値と蛍光の輝度分布をディスプレイ26に表示して警告する。
【0029】
8)オペレータは、ディスプレイ26に表示された値を見て、紫外光レーザ発振器10におけるX軸用、Y軸用のつまみを操作して共振器ミラー11Aの角度を補正する。
【0030】
なお、上下、左右の輝度勾配平均値の差が共に0の場合は、共振器ミラー11Aの角度は合っているものとし、この値と蛍光の輝度分布をディスプレイ26に表示する。
【0031】
1)から7)を繰り返し、リアルタイムで紫外光レーザ発振器10の共振器ミラー11Aの角度ずれ検出を行うことができる。なお、この角度ずれ検出は、レーザ発振中に行われるが、常時検出動作を行う必要は無く、定期的に行われれば良い。
【0032】
レーザ光が矩形ビームではなく、円形ビームの場合には、図6に示すように、円形の蛍光領域を抽出し、その輪郭における90度間隔での一定範囲部分の蛍光の輝度勾配を計算して同様の処理を行えば良い。
【0033】
以上、本発明の実施の形態を、紫外光レーザ発振器を対象とした角度ずれ検出装置に適用した場合について説明した。しかし、本発明は紫外光レーザ発振器に限定されるものではなく、例えば可視光レーザでは、蛍光板の代わりに可視光を映すスクリーンを設置し、このスクリーン上に映るレーザの強度分布をCCDカメラで撮影するか、または直接CCDカメラにレーザ光を入射させて撮影することができる。したがって、上記の説明と同様の方法、装置で共振器ミラーの角度ずれ検出を行うことができる。
【0034】
ところで、レーザ発振器の出力低下には、共振器ミラーの角度ずれの他にいろいろな原因が挙げられる。本検出装置により、共振器ミラーの角度ずれがあるかどうかを診断することができるので、レ一ザ出力低下の問題発生時の原因診断装置の一部として活用することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、レーザ発振しているときの、レーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれ、ずれの方向を自動的に検出し、オペレータに警告することができる。従来は、共振器ミラーのアライメント調整時に、共振器ミラーのずれている方向が分からないまま試行錯誤で出力が最大効率となるように共振器ミラーの角度調整を行っていた。しかし、本発明を適用することによって共振器ミラーのずれ方向がわかるので、その方向だけ上記の輝度勾配平均値の差が0になるように共振器ミラーを動かせば良く、作業がはるかに容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による共振器ミラーの角度ずれ検出装置とレーザ発振器の構成を示した図である。
【図2】レーザ発振器における共振器ミラー、出力レーザビームの断面、蛍光板に発生した画像におけるそれぞれの上下、左右の関係を示した図である。
【図3】蛍光板に生じた画像の輪郭抽出過程を説明するための図である。
【図4】図3で抽出された輪郭における上下、左右の輝度勾配算出過程を説明するための図である。
【図5】図1における共振器ミラーの角度ずれ方向を説明するための図である。
【図6】出力レーザ光が円形ビームの場合の上下、左右の輝度勾配算出方法を説明するための図である。
【符号の説明】
10 レーザ発振器
11A、11B 共振器ミラー
12 共振器ミラーホルダ
21 ビームスプリッタ
22 蛍光板
23 CCDカメラ
24 画像入力ボード
25 コンピュータ
26 ディスプレイ
Claims (7)
- レーザ発振器の出力光の一部をスクリーンに照射し、該スクリーンに生じた発光部を撮像して得られた画像を画像処理して該発光部の輪郭検出を行い、検出された輪郭における輝度勾配の変化から該発光部における特徴量を抽出し、該特徴量からレーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出することを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出方法。
- 請求項1記載の角度ずれ検出方法において、前記特徴量の抽出は、前記検出された輪郭に複数の輝度勾配検出領域を設定してそれぞれの輝度勾配検出領域に含まれる各画素の輝度勾配から各輝度勾配検出領域における輝度勾配平均値を前記特徴量として算出するものであり、前記複数の輝度勾配検出領域において特定の位置関係にある2つの輝度勾配検出領域における輝度勾配平均値の差から、レーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出することを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出方法。
- レーザ発振器の出力光の一部を受けるスクリーンと、
該スクリーンに生じた発光部を撮像する撮像手段と、
該撮像手段により撮像された画像を画像処理して該発光部の輪郭検出を行い、検出された輪郭における輝度勾配の変化から該発光部における特徴量を抽出し、該特徴量からレーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出する画像処理手段とを有することを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出装置。 - 請求項3記載の角度ずれ検出装置において、前記画像処理手段は、
前記画像における各画素毎の輝度値を検出して画像データとして出力するための画像入力ボードと、
前記画像データから前記発光部の輪郭検出を行うと共に、前記検出された輪郭に複数の輝度勾配検出領域を設定してそれぞれの輝度勾配検出領域に含まれる各画素の輝度勾配から各輝度勾配検出領域における輝度勾配平均値を前記特徴量として算出し、前記複数の輝度勾配検出領域において特定の位置関係にある2つの輝度勾配検出領域における輝度勾配平均値の差から、レーザ発振器内の共振器ミラーの角度ずれとずれ方向を検出する処理手段とから成ることを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出装置。 - 請求項4記載の角度ずれ検出装置において、前記複数の輝度勾配検出領域は4つであり、前記特定の位置関係にある2つの輝度勾配検出領域が上下、左右の2組設定されていることを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出装置。
- 請求項5記載の角度ずれ検出装置において、共振器ミラーの角度ずれの指標として、少なくとも前記上下の輝度勾配平均値の差と前記左右の輝度勾配平均値の差とを表示する表示手段を備えていることを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出装置。
- 請求項3記載の角度ずれ検出装置において、前記レーザ発振器は紫外光レーザ発振器であり、前記スクリーンは紫外光により蛍光を発する蛍光板であることを特徴とするレーザ発振器ミラーの角度ずれ検出装置。
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