JP3598226B2 - 油膜検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海,河川,湖沼など公共用水域、あるいは浄水処理の取水や排水処理の排水などの油膜を検出する油膜検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
河川,湖沼,海など公共水域に有害物質が流入する水質汚染事故が増加しており、これら水質汚染事故の大半が油流出事故である。水質汚染は、環境破壊,生態系の変化など様々な問題を引き起こす。そのなかでも最も深刻な問題は飲料水の汚染である。
【0003】
浄水場では河川などから取水した原水に対し、通常、凝集沈殿処理により濁質の除去,塩素注入によるアンモニアや重金属の除去と滅菌を行い浄水を作り、飲料水として需要家に配水している。また、原水に油などが混入している場合は、例えば活性炭を注入して油分を除去する。原水中に油が多く活性炭で処理しきれない場合は、飲料水に油分が含まれるという重大事故に至ってしまうため、取水を停止しなければならない。また、浄水場に油が流入し、沈殿池やろ過池に付着した場合はその除去のために池を洗浄せねばならず、長時間断水に至ることもある。
【0004】
このように、公共水域から取水して飲料水を製造する浄水場では、取水原水の油有無を24時間連続監視し早期検知が重要である。また、原水中の油が浄水場に流入しても早期に対策を講じられるように、できるだけ上流側、取水場では接合井や沈砂部,浄水場では着水井などの入口で油の有無を検知しなければならない。また、公共水域に油の流出させる危険性のあるプラントの排水口にも当然 24時間連続監視せねばならない。
【0005】
従来、油の監視方法としては、水面の目視監視,水中の有機成分ガスクロマトグラフで直接計測する方法、一定容積の池の静電容量の変化で油を検出する比誘電率測定法抵抗検知法がある。水中の有機成分をガスクロマトグラフで直接計測するには前段で試料水のサンプリングと濃縮が必要なため、24時間連続で計測可能装置の実用化は困難である。また、比誘電率測定法では、大量の油が存在しないと静電容量の変化が表われないため、微量の油の検出が求められる飲料水用の原水監視には適用できない。
【0006】
抵抗検知法としては特開昭61−153538号公報のように、浮子に2本の電極を設け、この2本の電極間の電気抵抗値の変化によって水面の油膜を検知する方式が提案されている。しかし電気抵抗値は前記の比誘電率測定法と同様に大量の油膜が存在しないと変化しないため、微量の油膜の検出には適用できない。
【0007】
油の量は分からないが、油膜を検出する方法として反射率測定法がある。反射率測定法は、油膜の反射率が水の反射率よりも高いことを利用した方式が、原理は、水面に発光ダイオード光やレーザ光などを照射して、その反射光を受光し、反射光量の強度を計測し、反射量が水面の値よりも高くなったときは油膜ありと判定する。現在、発光手段と受光手段は発光手段と受光手段の2つを1つの検出器内に配置した方式が実用化されている。水面の反射率を精度良く測定するためには、発光手段,水面、及び受光手段の相対位置に適切に合わせる必要がある。
【0008】
そのためには、測定対象となる水面をできるだけ平滑にすること、水面と発光手段の距離を一定に保つことを前提条件としている。しかし、一般に自然界の河川の水位や浄水場の取水口の水位は大きく変動するので、適用に当たり、まず水面と発光手段の距離を一定に保つ条件を満たさねばならない。この方法として、一定量の原水をサンプリングして容器に流し込みオーバーフローさせ、水面の高さを常に一定にした状態で反射率を測定するサンプリング方法が考えられる。
【0009】
しかし、サンプリング方法では、採水後の再度油膜が形成するまでに時間を要するため迅速性に欠ける。また、サンプリング時や容器への流入時には試料水が撹拌されてしまうと、再度油膜を形成するとは限らない。このように、本サンプリング方式には限界がある。特に、浄水場への流入油の対応は迅速性が要求されるため、飲み水の安全を確保するための方式として適用することはできない。
【0010】
一方、水面と発光手段の距離を一定に保つ方法として、フロートに検出器を固定し検出器自体を水面に浮かす浮遊方法がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
浄水場では、朝昼夕夜の時間帯,曜日,天候,季節などで水の需要量は大きく変動するため、水需要量に合わせて原水の取水量を制御している。取水量の変化は、取水場内の池の水位の変化として表われる。従って、場内の水位変動は±1〜3mと大きい。また、原水は流動しているため水面には常に波が存在しており、池が屋外開放されている場合は、風雨の影響を受けて水面には複雑な波が発生する。このため、水面は平滑ではない。さらに、河川,湖沼,ダムから取水した原水には木の葉などの様々の夾雑物(ゴミ)が含まれているため、沈砂池の水面にはこれらのゴミが浮遊し、水面の平滑を乱している。従って、河川などで形成される油膜の監視のためには、水位変動,水面の波,ゴミの浮遊に対応可能な油膜検出装置が不可欠である。
【0012】
上記従来技術の検出器を水面に浮かせる浮遊方法によれば、水位変動が大きくても水面と光源の距離を一定に保つことができる。しかし、フロートに検出器を固定した場合、水面と発光手段と受光手段の相対位置の調整が困難であり、反射光を的確に受光できないという課題がある。仮に地上で調整しても、水面で浮遊させた場合は地上と条件は同一にならない。また、水面に浮遊したフロート上では、少しでも力を加えると水面と検出器の光軸がずれるため微調整が困難である。加えて、水面の波や風によるフロートの揺れが発生するため、調整は不可能と言わざるを得ない。その結果、基準となる油膜の存在しない水面の反射量が変動してしまう、反射量からは油膜の存在を検知できない。
【0013】
本発明の目的は、上記従来技術に対処してなされたもので、その目的とするところは水面の反射量を精度良く測定し、反射光に基づいて油膜検出の確率を高くできる油膜検出装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴とするところは、水面に光を照射する発光手段と水面からの反射光を受光する受光手段とを収納した検出手段とを収納した検出手段をフロートの上に設置されている架台に宙づり状態で自由端となるように支持するようにしたことにある。
【0015】
換言すると、本発明は架台が揺れた際に発光手段が水面に光を照射でき、受光手段が反射光を受光できるように前記検出手段が揺れるように支持するようにしたことにある。
【0016】
本発明によれば、検出手段が水面に浮いているので、水面と検出手段の距離は常に一定になり、また、検出手段は浮遊手段と自由端で接続しているので、水面の波や風によって検出手段は揺れ動き、水面から乱反射される反射光を高い確率で受光できる。これにより、水面の反射光の最大値を高精度で計測可能になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図1により説明する。
【0018】
図1に、本発明の一実施例を示す。図1は本発明の油膜検出装置を河川水の水路に適用した一例を示している。図1において、水路1には油膜の監視対象となる河川水2が流入している。油膜検出装置はフロート10と架台(円筒状)20,接続手段30a,30b,30c、検出器40からなり、河川水2の水面に浮かべられている。接続手段30は図2に示すようにリング30a,フック30b,ワイヤーロープ30cから構成され、水面と検出器40の距離を常に一定にしている。接続手段30は架台20と検出器40を自由端で接続している。発光手段50は例えば発光ダイオード光又はレーザ光の平行光を水面に向かって照射する。照射光は水面で反射され、反射光となって受光手段60で受光される。架台20には穴20aが設けられており、該穴20aを介して照射光と反射光は、水面と検出器40間を行き来する。
【0019】
反射量演算手段70は受光手段60で受光した反射光を所定の計測時間に計測し、その計測時間内の反射光量の最大値を反射量として判定手段80に出力する。反射量演算手段70は、反射光量の最大値を保持する。判定手段80は反射量が油膜のない通常の水面の値よりも高い場合に油膜ありの信号を出力し、反射量が水面の値よりも低い場合に水面に異物が存在しているとしての異物ありの信号を出力する。油膜が存在するときの反射率は、通常の水面の2倍程度まで高くなるので、この反射率の差から判定のしきい値を適切に設定すれば油膜の有無が検出できる。
【0020】
図8に本発明による油膜検出装置の構成を理解し易くするための外観図を示す。
【0021】
図6に検出器40と架台20の接続を自由端にせずに固定方式にした構成において油膜のない水面を計測した例を示す。反射量演算手段70から出力される反射量のヒストグラムによると、実際の水面の反射量は約32であるが、計測期間中反射量の大半は32以下を示しており、精度は悪い。よって固定方式では反射率の非常に高い油膜しか検出できない。
【0022】
一方、図1に検出器40と架台20の接続を自由端にした本発明によって計測した水面の反射量のヒストグラムを示す。図6と同一期間計測したところ、水面の反射量はほぼ32一定を示し、計測値が安定していることが分かる。このように本発明の装置では計測値の精度が高められており、反射率の低い油膜でも高精度で検出可能である。
【0023】
図5に本発明を適用して、油膜なしの水面と油膜ありの水面の計測例を示す。
【0024】
油膜なしS(図中実線)の反射光量は32一定であるが、油膜ありS(図中破線)の場合は通常の水面に比べて明らかに高い。本実施例では反射量のしきい値を例えばL とすれば油膜を検知できる。油膜の反射率は、油種,厚さ,異物の影響を受けて異なるので、反射率が通常水面より5〜10程度とわずかに高いケースもある。このケースについても、通常水面の反射量が安定して計測できるので、しきい値を低く設定すれば反射率の小さい油膜でも検知可能である。
【0025】
また、ゴミ等の異物の反射率は水面より明らかに低く図中の異物ありS のように10以下を示す。
【0026】
反射量のしきい値をL に設定すれば水面に木の葉,ゴミなどの異物の存在を検知できる。
【0027】
図9に接続手段他の例を示す。
【0028】
架台20に固定した軸31aの軸端に球面のみぞ31bを設け、このみぞに球体31cをはめ込んでいる。球体31cと検出器40は軸31dで接続している。検出器40は架台20が揺れ動いても、検出器40自体の自重があるので、架台20と一体となって動くことはない。球面のみぞ31bと球体31c間の摩擦を小さくすることにより、架台20が動くと検出器40は、架台20とは非同期で揺れ動く。この動きと水面の波の相乗効果によって水面で乱反射する反射光を受光する確率が高くなる。
【0029】
図2に接続手段30の一実施例を示す。
【0030】
接続手段30は、架台20に固定されたリング30a,検出器40と架台20を接続するフック30b、及びワイヤーロープ30cから構成されている。波のない静水面状態を図2(a)に、水面の波により架台20が傾斜した状態を図2(b)に示す。図2(a)の状態では検出器40は自重により垂直になり、反射光を常に受光できる。一方、水面に波があると反射光は乱反射となるので受光の確率は低くなる。図2(b)のように架台20が波で揺れると検出器40も、自重により垂直方向を中心として揺れ動くため受光の確率が高くなり計測時間T内においては数回以上必ず反射光を受光できる。
【0031】
図3に反射量演算手段70と判定手段80の一実施例を示す。
【0032】
水面からの反射光は変換器71によって光量から電気信号に変換され、最大値保持回路72に送られる。最大値保持回路72は、計測時間設定回路73において設定された計測時間Tの間の反射光量の電気信号の最大値を保持し、判定手段80に反射量として出力する。判定手段80の比較回路81は入力された反射量が油膜しきい値設定回路82に設定されているしきい値よりも大きい場合に油膜ありの信号を出力する。また、比較回路83は入力された反射量が異物しきい値設定回路84に設定されているしきい値よりも小さい場合に、異物ありの信号を出力する。
【0033】
図4に反射量演算手段70の動作の一例を示す。
【0034】
図4の区間aは、油膜がなく、かつ波の非常に少ない水面における反射光量の時系列データの例で、反射光量入力値は32付近に一定である。区間a計測終了後に反射量出力値として32が出力される。また、区間b,cは油膜がなく、かつ波のある水面の例である。波が存在すると反射光量入力値は20以下に低下することもあるが、計測時間T内には必ず正しい水面の反射光量を受光できるので、区間bまたはcの終了時点には反射量出力値は32が出力される。一方、区間dは油膜があり、かつ波のある水面の例である。油膜の反射率は水面より高く本実施例では反射量入力値が2回43を示しているので、区間d終了時点において、反射量出力値は43となる。
【0035】
以上説明した実施例によれば検出器の揺れによって照射光が到達する水面の範囲が広くなるので計測範囲が広がる。
【0036】
また、検出器の揺れと水面の波の相乗効果によって反射光を受光する確率を高めることができる。また、常に垂直方向に検知器を向けることができるので、検出器の光軸調整が不要になり装置が簡素化される。
【0037】
図9に接続手段30の他の例を示す。図9は軸31aの端部に設けた球面溝 31bに球体31cを遊嵌させ、球体31cと検出器40を軸31dで連結したものである。
【0038】
図9の接続手段31でも、検出器40は架台20が揺れ動いても、検出器40自体の自重があるので、架台20と一体となって動くことはない。球面溝32と球体33間の摩擦により、架台20が動くと検出器40は、架台20とは非同期で揺れ動く。この動きと水面の波の相乗効果によって水面で乱反射する反射光を受光する確率が高くなる。
【0039】
以上説明した実施例は、河川水を導く水路への適用事例を説明したが、海域,湖沼,河川の水面の計測に適用してもなんら支障はない。また、浄水場の取水,石油化学プラントなど油を貯蔵した施設の排水,廃水処理設備の排水など油を含む可能性のある水にも当然適用できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、水位変動の大きい河川や湖沼,海域における油膜の存在を精度良く検出できるので、油流出事故を早期に検知でき、対策を早期に実施できる。浄水場であれば、取水の停止や活性炭の散布であり、また、廃水処理設備や石油化学プラントからの排水の場合は、オイルフェンスやオイルマットの布設,油中和剤の散布などである。これらの対策は、油膜検知信号を受けて自動的に実施させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図。
【図2】(a)及び(b)は接続手段の一実施例を示す構成図。
【図3】本発明の反射量演算手段と判定手段の一実施例を示す機能図。
【図4】反射量演算手段の動作を示す図。
【図5】反射量の時系列変化を示す特性図。
【図6】反射量のヒストグラムを示す特性図。
【図7】反射量のヒストグラムを示す特性図。
【図8】本発明の一実施例の外観図。
【図9】接続手段の他の例を示す構成図。
【符号の説明】
1…水路、2…河川水、30…接続手段、31,34…軸、33…球体、35…ワイヤー、40…検出器、50…発光手段、60…受光手段、70…反射量演算手段、80…判定手段。

Claims (6)

  1. 水面に光を照射する発光手段と水面からの反射光を受光する受光手段とを収納した検出手段と、前記検出手段を水面に浮遊設置するためのフロートと、前記フロートの上に設置されている架台と、前記検出手段が宙づり状態で自由端となるように前記架台に支持する接続手段と、前記受光手段に受光された反射光量を求める光量測定装置と、前記光量測定装置の測定値と設定値を比較して油膜の有無を判定する油膜判定手段とを具備することを特徴とする油膜検出装置。
  2. 請求項1において、前記接続手段は、前記架台が揺れた際に前記発光手段が水面に光を照射でき、前記受光手段が反射光を受光できるように前記検出手段が揺れるように支持することを特徴とする油膜検出装置。
  3. 請求項1において、前記接続手段は前記検出手段をロープで宙づり状態に支持するものであることを特徴とする油膜検出装置。
  4. 請求項1において、前記光量測定装置は連続して受光する反射光量の所定時間における最大値を測定値として出力することを特徴とする油膜検出装置。
  5. 請求項1において、前記油膜判定装置は前記光量測定装置の測定値が清水面の反射光量に比べ大きい第1の設定値より大のときに油膜有りと判定し、清水面の反射光量に比べ小さい第2の設定値より小のときに異物有りと判定することを特徴とする油膜検出装置。
  6. 水面に発光ダイオード光を照射する発光ダイオードと水面からの反射光を受光し電気信号に変換する受光素子とを収納した検出手段とを収納した検出手段と、前記検出手段を水面に浮遊設置するためのフロートと、前記フロートの上に設置されている有蓋円筒部を有する架台と、前記検出手段が宙づり状態で自由端となるように前記架台の有蓋円筒部内に支持するロープと、前記受光素子の電気信号を入力し反射光量を求める光量測定装置と、前記光量測定装置の測定値と設定値を比較して油膜の有無を判定する油膜判定手段とを具備することを特徴とする油膜検出装置。
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