JP3598072B2 - 混練リング及びスクリュ式混練押出機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂材料加工用スクリュ混練押出機のスクリュの一部を構成する混練調整リングに関し、特に、消費動力の減少及び省エネルギーを達成するための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成樹脂材料は、材料特性の均質化及び改質、あるいは添加材料を加えての機能特性付与のために、多くの場合、スクリュ式混練押出機により加工処理されている。このスクリュ式混練押出機は、外周にスクリュ溝が形成された長尺丸棒状のスクリュと、このスクリュが回転可能に挿入される長尺円筒形状のシリンダと、により構成されている。すなわち、このシリンダの内孔の軸直角断面形状は、前記スクリュ外周より僅かに大きい円形に形成されている。前記スクリュ式混練押出機には、一本の前記スクリュにより構成される単軸混練押出機と、二本のスクリュにより構成される二軸混練押出機と、がある。この二軸混練押出機については、さらに、二本の前記スクリュの溝が噛合った噛合式と、噛合わない非噛合式と、があり、また、二本のスクリュの回転方向が同じの同方向回転式と、回転方向が異なる異方向回転式と、がある。
【0003】
このような各種の前記スクリュ式混練押出機の前記スクリュは、基本的に螺旋状の溝が外周に形成されて構成され、このスクリュには、前記シリンダ内で回転駆動されることにより、合成樹脂材料を上流部から下流部へ輸送する機能、その間に、可塑化溶融する機能、十分に混練する機能、揮発成分を脱揮する機能などの諸機能が付加されている。また、このスクリュには、合成樹脂材料の種類及び特性、加工処理目的に応じて、前記の各機能部が適宜に配置され、何れかの機能部は必要に応じて複数箇所に配置されて構成されている。このような機能に対し、単純な一種類の螺旋状の溝だけで要求を満たすことは不可能である。従って、それぞれの機能を分担する部分に、要求機能を発揮できる形状及び構成のスクリュ部分が形成されて一本のスクリュが構成されている。
【0004】
このように構成される前記スクリュの1機能である混練機能を分担する混練部において、混練機能を発揮する構成として、従来より、図3に示す混練リングが用いられている。
すなわち、図3において、符号10で示されるものは混練リングであり、この混練リング10は、単純な円形リング形状であり、その円周外形は、軸方向に幅Wの同一外径からなる外周面11、この外周面11の幅方向両側から軸方向両端のスクリュ溝底へ向けてテーパ状に変化する上流円錐部12及び下流円錐部13により構成されている。
【0005】
このような混練リング10を溶融状態の合成樹脂材料が通過する場合に発生する圧力損失△Pは、一般に次式により計算される。
△P=α・Q・W・μ/L・δ3
α:係数
Q:流量
W:リングの円周外形幅
μ:合成樹脂材料の粘度
L:リングの円周外形長
δ:リングの外周とシリンダ内周との隙間
【0006】
以上のような混練リング10を設けて混練部を構成したスクリュ回転駆動されているスクリュ式混練押出機において、シリンダの上流端部からその内孔へ供給された合成樹脂材料は、スクリュの螺旋溝内に入り、スクリュの回転により下流方向へ押付けられながら、順次下流方向へ移動する。輸送部では合成樹脂材料の大部分がスクリュの溝内を移動し、溶融部及び混練部では大部分がスクリュの外周とシリンダの内周との隙間を通りながら下流方向へ移動する。合成樹脂材料は、スクリュの外周とシリンダの内周との狭い隙間を通過する際に、固定側のシリンダの内孔面と回転するスクリュの外周面との相対移動により剪断作用を受け、発熱し、可塑化溶融されるとともに混練される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の混練リングは、以上のように実施されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、混練リングの軸方向のほぼ中央位置に形成された外周面は、スクリュ長手直角方向よりみてほぼ直線であり、この外周面の長さは、混練リングの直径に比例し、直径に円周率を乗じた値に限られていた。
そのため、高粘度樹脂の混練や未溶融物、ゲルを含む樹脂を混練する際、混練効果を増すためにこの外周面とシリンダの内壁との間をせまくして混練を行うと、前述の式に示された圧力損失△Pが大となり、樹脂温度が上昇し、樹脂が劣化することになっていた。
従って、前述のL(リングの円周外形長)を長くするが、δ(リングの外周とシリンダ内周との隙間)を大とすると圧力損失△Pは小さくなるが、このLを長くすることは不可能であった。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、特に、外周面の形状をこれまでの直線状からジグザグの湾曲させた形状とすることにより、外周面の長さを従来よりも長くし、混練機能を低下させること無く、圧力損失△Pを小さくし、合成樹脂材料の温度上昇を押さえて劣化を抑えるようにしたスクリュ式混練押出機用スクリュに用いられる混練リング及びスクリュ式混練押出機を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によるスクリュ式混練押出機用のスクリュに用いられ輪状外周面を有する円形リング形状の混練リングにおいて、前記輪状外周面の上流側に形成され前記スクリュのスクリュ溝の溝底へ曲線的に変化する上流傾斜部と、前記輪状外周面の下流側に形成され前記スクリュのスクリュ溝の溝底へ曲線的に変化する下流傾斜部とを有し、前記輪状外周面は周方向へジクザグ状に湾曲し一周していると共に、前記輪状外周面は外周に切り欠きを有しない構成であり、また、この混練リングを混練部に用いたスクリュ式混練押出機の構成である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明によるスクリュ式混練押出機用スクリュの混練リング及びスクリュ式混練押出機の好適な実施の形態について説明する。
図1及び図2において、符号10で示されるものは混練リングであり、この混練リング10はリング形状に構成されている。この混練リング10には、軸方向に沿う幅Wの輪状外周面11が形成され、この輪状外周面11の幅方向両側からスクリュ溝の溝底へ曲線的に変化する上流側の上流傾斜部12及び下流側の下流傾斜部13が形成されている。前記輪状外周面11は、その円周方向へ曲線的あるいは直線的なジグザグ状に湾曲して一周して形成されている。前記上流傾斜部12及び下流傾斜部13は、ジグザグ状の前記輪状外周面11に合わせて、円弧、あるいは円弧と直線とを組合せた曲線形状による曲面により構成されている。従って、前記輪状外周面11の実質的な長さLは、従来よりも長くなる。
【0011】
以上のような混練リング10を周知の図示しないスクリュ式混練押出機の混練部に装着し、シリンダの上流側からその内孔へ合成樹脂材料を供給すると、この合成樹脂材料は、スクリュの螺旋溝内に入り、スクリュの回転により下流方向へ押付けられながら、順次下流方向へ移動する。図示しない輸送部では合成樹脂材料の大部分がスクリュの溝内を移動し、溶融部及び混練部では大部分がスクリュの外周とシリンダの内周との隙間を通りつつ下流方向へ移動する。合成樹脂材料は、スクリュの外周とシリンダの内周との狭い隙間を通過する際に、固定側のシリンダの内孔面と回転するスクリュの外周面との相対移動により剪断作用を受け、発熱し、可塑化溶融されるとともに混練される。
【0012】
次に、前記混練リング10を溶融状態の合成樹脂材料が通過する場合に発生する前述の圧力損失△Pは従来の技術に示した式により求められるが、この式において、圧力損失△Pが混練リング10の円周外形長Lに反比例することが示されている。従って、本発明による混練リング10の場合、円周外形長Lは輪状外周面11のジグザグの周長に相当し、同一径のスクリュでは、従来の直線状の円周外形長より大きくなり、圧力損失△Pを小さくする方向に作用する。
【0013】
実施例
日本製鋼所製のスクリュ径69mm、噛合い同方向回転二軸スクリュ式混練押出機により、バイモダール高密度ポリエチレン(メルトインデックスが2.1kg荷重で約0.07)について、第2混練部に従来及び本発明による混練リングを装着して比較試験を行い、以下の表1の第1表の結果を得た。
【0014】
【表1】
【0015】
以上の試験結果から、押出量及びスクリュ回転数が同一の場合、比エネルギー及び押出される合成樹脂材料温度が、本発明による混練リング10を使用することにより低下することが証明された。また、混練押出しされた材料中の未溶融物の個数がほぼ同等に抑えられ、混練機能が低下しないことも証明された。なお、本発明で用いたスクリュ式混練押出機は周知であるため、図示していない。
【0016】
【発明の効果】
本発明による混練リング及びスクリュ式混練押出機は、以上のように構成されていることにより、次のような効果を得ることができる。
すなわち、混練リングの輪状外周面をジグザグ状に湾曲させて実質的な円周外形長を長くしているため、混練機能を低下させること無く混練リングにおける圧力損失△Pを小さくすることが可能となり、その結果として比エネルギー及び押出される合成樹脂材料の温度が、従来と比較して低くなった。
また、比エネルギー及び押出される合成樹脂材料温度が低くなったことにより、スクリュ式混練押出機の所要動力が小さくなり、運転効率が上昇した。
さらに、押出される合成樹脂材料温度が低くなったことにより、合成樹脂材料の劣化を起こすことが無くなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による混練リングの正面図である。
【図2】図1のA−A’矢視部分断面図である。
【図3】従来の混練リングの正面図である。
【符号の説明】
10 混練リング
11 輪状外周面
12 上流傾斜部
13 下流傾斜部
Claims (2)
- スクリュ式混練押出機用のスクリュに用いられ輪状外周面(11)を有する円形リング形状の混練リングにおいて、前記輪状外周面(11)の上流側に形成され前記スクリュのスクリュ溝の溝底へ曲線的に変化する上流傾斜部(12)と、前記輪状外周面(11)の下流側に形成され前記スクリュのスクリュ溝の溝底へ曲線的に変化する下流傾斜部(13)とを有し、前記輪状外周面(11)は周方向へジグザグ状に湾曲し一周して構成され、前記輪状外周面 (11) は外周に切り欠きを有しないことを特徴とする混練リング。
- 請求項1記載の混練リングを混練部に用いたことを特徴とするスクリュ式混練押出機。
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JP2001087672A JP3598072B2 (ja) | 2001-03-26 | 2001-03-26 | 混練リング及びスクリュ式混練押出機 |
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Family Applications (1)
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- 2001-03-26 JP JP2001087672A patent/JP3598072B2/ja not_active Expired - Fee Related
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