JP3596858B2 - セルロース含有複合体とその製造方法、糖類化合物とその製造方法、紙の資源化方法、古紙の再資源化方法、及び成形体とその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明はセルロースの特性を改善したセルロース含有複合体とその製造方法、糖類化合物とその製造方法、紙の資源化方法、古紙の再資源化方法、及び成形体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは高等植物の細胞壁の主成分をなす構造多糖であって、植物体の1/3〜1/2を占め、地球上で最も多量に存在する有機化合物である。
【0003】
セルロースは、水酸基同士の水素結合が強いために主鎖間の結晶性が高く、また、熱可塑性を示さない高分子化合物である。セルロースには、植物由来のセルロースと微生物由来のバクテリアセルロースがあるが、その加工は、従来、以下のようにして行われていた。植物由来のセルロースはアルカリ処理や可溶性の置換基を導入することで、溶媒への溶解性を向上させ、次いでこの溶液を所望の形の型に入れ、溶媒を除去することによりセルロースの成形体を得ていた。一方、バクテリアセルロースの加工法としては、セルロース生産菌の培地にキサンタンガムを添加することにより、バクテリアセルロースの結晶構造を制御する方法が報告されている(特開平6−206904号公報参照)。他には、セルロース生産菌が生産したリボン状のミクロフィブリルよりなるバクテリアセルロース膜に加圧、加熱処理を施すことにより高力学強度を有するシート状材料を作成する方法が報告されている(特公平8−32798号公報参照)。また、微細粉末化したセルロースに対して加圧、加熱処理を施す方法、いわゆる粉末成形処理も知られている。
【0004】
ところで近年、環境問題や資源問題の深刻化に伴い、セルロースは生分解性を有し、かつ自然界で再生産される資源として再び注目を浴びている。しかしながらセルロースは一般溶媒に不溶で溶媒法に不向きであった。また銅アンモニア溶液等の特殊な溶媒にセルロースを溶解させた場合には溶媒法によってフィルム等の成形物を得ることはできるものの、この方法で得られる成形物は柔軟性に乏しく実用に供するにはその品質は十分なものとは言えなかった。更にセルロースは、熱可塑性を示さないので、加熱圧縮法で熱成形体を作製することが極めて困難であった。
【0005】
本発明は上記したような技術的背景に鑑みなされたもので、セルロース本来の生分解性を維持しつつ、セルロースの加工性をより一層改善することのできるセルロース含有複合体を提供することを目的とするものである。
また本発明は、セルロース本来の生分解性を損なうことなしに、セルロースの加工性を改善したセルロース含有複合体の製造方法を提供することを他の目的とするものである。
また本発明は、紙の資源化方法、古紙の再資源化方法、及びセルロース含有複合体の成形体とその製造方法を提供することを他の目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することのできるセルロース含有複合体は、セルロースと、下記(I)式で示される化合物とを含むことを特徴とする。
【0007】
【化4】
(式中、Rは置換若しくは未置換のアルキレン基または置換若しくは未置換のアリーレン基であり、Gは単糖残基またはオリゴ糖残基を表し、nは重合度であって1〜5000の整数である。)
【0008】
また上記の目的を達成することのできるセルロース含有複合体の製造方法の一実施態様は、セルロースと、下記(I)式で示される化合物とを含む複合体の製造方法であって、該セルロースと下記(I)式で示される化合物とを均一に混合した溶液を乾燥させる工程を有することを特徴とする。
【0009】
【化5】
(式中、Rは置換若しくは未置換のアルキレン基または置換若しくは未置換のアリーレン基であり、Gは単糖残基またはオリゴ糖残基を表し、nは重合度であって1〜5000の整数である。)
【0010】
また上記の目的を達成することのできるセルロース含有複合体の製造方法の他の実施態様は、セルロースと、下記(I)式で示される化合物とを含む複合体の製造方法であって、下記(I)式で示される化合物を含む培地において、セルロース生産菌を培養せしめてセルロースを生産させる工程を含むことを特徴とする。
【0011】
【化6】
(式中、Rは置換若しくは未置換のアルキレン基または置換若しくは未置換のアリーレン基であり、Gは単糖残基またはオリゴ糖残基を表し、nは重合度であって1〜5000の整数である。)
また、本発明は、上記(I)式で示される糖類化合物であって、(I)式中の単糖残基またはオリゴ糖残基を表すGが紙由来のものであることを特徴とする糖類化合物である。
また、本発明は、上記(I)式で示される糖類化合物の製造方法であって、
(i)セルロースを分解して上記(I)式中Gで表される単糖残基またはオリゴ糖残基を得る工程;及び
(ii)該単糖残基またはオリゴ糖残基を、上記(I)式中Rで示される部分を含むジカルボン酸と結合させる工程、とを有することを特徴とする糖類化合物の製造方法である。
また、本発明は、紙の資源化方法であって、
(i)紙からセルロースを抽出する工程;及び
(ii)該セルロースと上記(I)式で示される化合物とを均一に混合した溶液を乾燥させてセルロースと上記(I)式で示される化合物とを含むセルロース含有複合体を製造する工程、とを有することを特徴とする紙の資源化方法である。
また、本発明は、古紙の再資源化方法であって、
(i)紙からセルロースを抽出する工程;及び
(ii)該セルロースと上記(I)式で示される化合物とを均一に混合した溶液を乾燥させてセルロースと上記(I)式で示される化合物とを含むセルロース含有複合体を製造する工程、とを有することを特徴とする古紙の再資源化方法である。
また、本発明は、上記のセルロース含有複合体を含むことを特徴とする成形体である。
また、本発明は、上記のセルロース含有複合体を加熱圧縮する工程を含む成形体の製造方法である。
【0012】
即ち、本発明者らは上記した様に、セルロースの加工性の悪さが、セルロースが有するミクロフィブリル構造に由来する主鎖間の強固な水素結合による結晶性の高さに由来しているとの知見、及びセルロースと上記構造式(I)で示される単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体の構造の類似性に着目して種々検討した結果、上記構造式(I)で示される化合物がセルロースとの結着性(親和性)が良く、且つ両者を混合しそして分子間の相互作用が生じるような複合体が、セルロースの加工性の悪さを大幅に改善することができ、且つこの複合体を用いて作製した成形体がその強度や柔軟性にも優れていることを見いだし、本発明を為すに至ったものである。
【0013】
尚、本発明の複合体が上記した種々の効果を奏する理由は明らかではないが、上記式(I)で示される化合物の糖部分(G)はセルロースと構造が類似し、水酸基を有しているが、ジカルボン酸部分は脂肪族炭化水素鎖または芳香族炭化水素鎖となっている。このことにより、水素結合により会合体を形成しやすい部分と、形成しない部分が適当な割合であるために、セルロース中の結晶性を低くしているのでないかと考えられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施態様にかかる複合体は、セルロースと下記構造式(I)で示される化合物を含むものである。
【0015】
【化7】
【0016】
(単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体)
本態様にかかる複合体に用いる化合物は、先にも述べた様に、セルロースとの間で分子間相互作用を持ち、且つセルロースの強い結晶性を緩和することができるような構造のものが好適に用いられる。
【0017】
セルロースと水素結合を形成することが可能な部位として、例えば、単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体の糖残基が有する水酸基、及び環内の酸素原子を挙げることができる。また、単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体の糖部分をアセチル基などのエステル基で置換したときには、アセチル基に含まれるカルボニル基とセルロースの水酸基間で水素結合が形成可能である。
【0018】
そしてこのような構造的な要求を満たす化合物としては、例えば単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体、具体的には下記(I)式で示した構造を有する化合物を挙げることができる。
【0019】
【化8】
【0020】
一般式(I)中、Rは炭素数1以上のアルキレン基、若しくはアリーレン基である。Gは単糖残基またはオリゴ糖残基を表わす。該アルキレン基は特には炭素数1以上20以下が好ましい。またGがオリゴ糖残基であるときに該アルキレン基として炭素数が6以上14以下のものを用いた場合、あるいはGが単糖残基であるときに該アルキレン基として炭素数が4以上14以下のものを用いた場合、得られる複合体に優れた熱可塑性を持たせることができ、該複合体に熱成形性を付与することができ特に好ましい。またアルキレン基及びアリーレン基は共に1箇所若しくは2箇所以上の水素原子が、他の基に置換されていてもよく、置換基の例としては、例えば炭素数1から6程度の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基等が挙げられる。
【0021】
なお、Gは二置換以上であっても良い。
また、nは重合度を表わし、1〜5000、好ましくは20〜3000の整数である。
【0022】
そして上記一般式(I)で示される単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体は、例えば単糖残基又はオリゴ糖残基の「G」を含む単糖またはオリゴ糖と「R」を分子内に含むジカルボン酸とを、糖の水酸基とジカルボン酸のCOOH基、あるいはCOCl基を反応させ、エステル結合を形成させたり、或いは、ジカルボン酸エステルと単糖またはオリゴ糖のエステル交換によって、更には酵素反応等を利用して、結合させることによって合成することができる。
【0023】
(単糖またはオリゴ糖)
ここで用い得る単糖又はオリゴ糖の例は、セロビオース、マルトース、ラクトース、イソマルトース、ニゲロース、トレハロース、メリビオース、セロトリオース、マルトトリオース、セロテトラオース、マルトテトラオース、セロペンタオース、マルトペンタオース、セロヘキサオース、マルトヘキサオース等のオリゴ糖、及びグルコピラノース、マンノピラノース、ガラクトピラノース等の単糖が含まれる。また、これらの単糖及びオリゴ糖は、アセチル基などのエステル基で置換されていても良い。
【0024】
そして上記一般式(I)の誘導体の合成には、これらの単糖及びオリゴ糖の群から選ばれる1つ、或いは2つ以上の糖を用いることができる。
【0025】
そしてこれらの糖としては、例えば紙(古紙など)を分解して得たものを用いることは、資源の有効利用の観点から特に好ましい。
【0026】
即ち近年、複写機・プリンタの飛躍的な普及に伴い、紙ゴミはますます増大する傾向にある。旧来より、新聞紙や段ボール紙などについては、再生紙として再利用されるシステムが定着している。しかし、再生紙としての需要には限界があり、また、原料中の古紙の比率は66.1%が限界であると試算されている(「エコマテリアル事典」サイエンスフォーラム社)。さらに、最近のリサイクル志向が回収過程のみを促進し、皮肉にも余剰古紙の増大を助長する結果となっている。
【0027】
また、印刷量の多い紙、コート層を有する紙、添加物の多い紙などは、混入する不純物が多くなるために再生紙にできない場合も多い。
【0028】
しかしながら、紙の主たる構成要素であるセルロース自体を化学的に改変して糖にまで分解し、前記の糖誘導体とすることによって、上記したような低質な古紙を再生紙以外の用途に有効利用することができる。紙から上記した糖を製造する方法としては、例えば紙を構成するセルロース織維のβ1→4結合を、硫酸や塩酸等の酸やセルラーゼ等の酵素で切断してグルコース(単糖)およびセロオリゴ糖(2〜10糖)を得る方法が挙げられる。
【0029】
(ジカルボン酸)
また「R」を分子内に含むジカルボン酸の例は、例えば、脂肪族ジカルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など)を挙げることができる。
【0030】
(セルロース)
セルロースとしては、植物由来のセルロース、またはバクテリア由来のバクテリアセルロースを用いることができる。バクテリアセルロースの場合には、植物由来のセルロースより更に高純度な微細繊維状セルロースを得る事ができる。また、後述する様に本発明にかかる複合体をセルロース生産菌の培養中に製造できるという利点がある。またこのセルロースとして先に述べた紙(古紙等)由来のセルロースを用いることも、資源の有効利用の観点からは好ましい態様の一つである。具体的には、紙を弱アルカリ性水溶液中でほぐすことで紙中のセルロース繊維を抽出することができる。また先に述べた紙を糖類に分解する過程で出る残さとしてのセルロース繊維もまた本態様におけるセルロースとして使用可能である。またこれらのセルロース繊維を更にジメチルアセトアミドおよび塩化リチウムの混合溶媒等の有機溶媒を用いてセルロースを溶出させてもよい。
【0031】
(バクテリアセルロース生産菌)
バクテリアセルロースを生産する菌は特に限定されないが、例えばアセトバクター・アセチ・サブスピーシス・キシリナム(Acetobacter aceti subsp・xylinum)ATCCl0821、同パストウリアヌス(A・pasteurianus)ATCCl0821、同ランセンス(A・rancens)、サルシナ・ベントリクリ(Sarcina vntriculi)、バクテリウム・キシロイデス(Bacterium xyloides)、シュードモナス属細菌、アグロバクテリウム属細菌等でバクテリアセルロースを産生する公知のものを1種若しくは複数種用いることができる。
【0032】
これらの菌類にバクテリアセルロースを生産させる方法は、公知の菌培養条件に従って行えばよい。即ち炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する通常の栄養培地に微生物を接種し、静置又はゆるやかに通気撹拌を行なう事により、前記菌類はバクテリアセルロースを生産する。
【0033】
炭素源としては、グルコース、シュクロース、マルトース、澱粉加水分解物、糖蜜等が利用でき、またエタノール、酢酸、クエン酸等も単独あるいは上記の糖と併用して利用することができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸塩、尿素、ペプトン等の有機あるいは無機の窒素源が利用できる。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が利用できる。有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、更にはこれらの栄養素を含むペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆蛋白加水分解物等が利用でき、生育にアミノ酸等を要求する栄養要求性変異株を用いる場合には要求される栄養素を更に補添する必要がある。培養条件も通常でよく、pHを5〜9、そして温度を20〜40℃に制御しつつ、1〜30日間培養すればよい。
【0034】
(製造方法)
次に、上記本発明のセルロース含有複合体の製造方法は、特に限定されないが、例えばセルロースと単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体とが化学的な相互作用を生じるような状態を形成させることが好ましい。具体的には例えば、微細繊維状及び/又は微細粉末状としたセルロースと単糖又はオリゴ糖誘導体とを、単糖又はオリゴ糖誘導体が溶解または膨潤するような溶媒中で混合し、この混合溶液を加熱乾燥することで本発明の複合体を得ることができる。このような溶媒は単糖又はオリゴ糖誘導体はその分子量等によって溶解性が変化する為、一概に特定することはできないが、例えば、水、アセトン、アルコール(メタノール、エタノールなど)、エーテル(テトラヒドロフランなど)等、或いはこれらの混合溶媒等が挙げられる。また、混合前にセルロースを界面活性剤等で表面処理することも可能である。
【0035】
またセルロースとして紙由来のセルロースを用いる場合に、先に述べた様にジメチルアセトアミドおよび塩化リチウム等にセルロースを溶出させた溶液と単糖又はオリゴ糖誘導体を溶解状態もしくは膨潤状態で含む溶媒とを混合することによってもセルロースと単糖又はオリゴ糖誘導体との間での化学的相互作用が生じた複合体を得ることができる。
【0036】
一方、バクテリアセルロースの場合には、セルロース生産菌の培地中に糖誘導体を添加して、該セルロース生産菌がセルロースを生産可能な条件で培養し、セルロースを生産させることによって、容易に本発明にかかる複合体を製造することが可能である。
【0037】
このような処理によってセルロース分子内に存在する水素結合の数を減少させる事ができ、その結果セルロースよりも加工性に優れた複合体が得られる。この事を図1、図2を用いて説明する。
【0038】
図1にセルロースとセロビオース誘導体(「G」がセロビオース由来の残基からなる式(I)の化合物)からなる複合体の一例を模式的に示した。図1において円形はグルコピラノース残基を示し、破線はグルコピラノース残基間に働く水素結合を示す。11はセロビオース誘導体分子を示し、1laは該誘導体を構成する非糖質残基を示す。12、13はセルロース分子(模式的に8個のグルコピラノース残基から構成されているとした)を示す。これら3つの分子は同一平面上にあるとする。セロビオース誘導体11を構成するセロビオース残基はセルロース分子12、13と水素結合を形成する。
【0039】
一方、3つのセルロース分子(8個のグルコース残基から構成されるとする)からなる系を図2に模式的に示す。21、22、23は同一平面上にある3つのセルロース分子であり、グルコピラノース残基間に水素結合が形成されている。図1と図2を比較すると明らかな様に、本発明に関する複合体ではセルロース分子間に形成される水素結合が糖誘導体(式(I)の化合物)によりブロックされている。このため複合体中のセルロース分子間に形成される水素結合数は、減少させられている。その結果、本発明に関する複合体には以下の様な性質を付与する事ができる。
【0040】
第一に、複合体を凍結せずに室温で粉砕処理を施しても、粉末表面のセルロース分子の中には糖誘導体(式(I)の化合物)で遮蔽されている領域がある。このため、粉砕中に粉末同士が再結合する事をかなり防止する事ができる。
第二に糖誘導体によってセルロース分子間の強固な水素結合が緩和されるためか、セルロース単体からなるフイルムと比較して柔軟性に富んだ成形体を得られる。
第三に、熱可塑性を示す糖誘導体(式(I)の化合物)とセルロースが相互作用によって、熱可塑性を有し、また熱成形が可能である。
【0041】
なお、本発明に関するセルロース含有複合体中における化合物の比率は、複合体の凝集性、熱特性、機械的強度等の特性が損なわれない範囲で適当に選択できる。例えば、セルロース含有複合体中における糖誘導体の比率としては、1〜60%程度、好ましくは10〜40%程度である。
【0042】
(成形加工方法)
本発明にかかる複合体は、従来公知の加工法である溶媒法または加熱圧縮法を用いることができる。そしてこの複合体は、アセトン、メタノール、テトラヒドロフラン等の溶媒に対して比較的良好な溶解性を示す為、特殊な溶媒を用いることなしに、溶媒法で成形が可能である。また溶媒法を用いる場合には、複合体の合成と成形加工とを同時に行ってもよい。
【0043】
また加熱圧縮法にしても、例えば炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸を用い、且つGとして単糖残基を有する様に合成した式(I)の化合物を含む複合体、あるいは炭素数6以上14以下の脂肪族ジカルボン酸を用い、且つGとしてオリゴ糖残基を有する様に合成した式(I)の化合物を含む複合体は、熱可塑性を示すため、加熱成形が可能であり、また熱成形体の強度もまた従来のセルロース成形体よりも優れたものとなる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。即ち、以下の実施例で用いたセルロース含有複合体に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0045】
合成例1
先ず実施例及び比較例で用いる、下記の構造式(a)で示される式(I)の化合物(オリゴ糖誘導体)を以下の方法によって合成した。
【0046】
【化9】
【0047】
即ち、セロビオース50gをN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)400mlに入れ、ピリジン100mlを加えた。窒素雰囲気下70℃に加熱した。ここへ、セバシン酸クロリド40mlをDMF100mlで希釈したものを滴下し、3時間撹拌した。反応終了後、溶媒を一部留去した後、反応液を水中に注いで撹拌した。精製した沈殿物をメタノールで洗浄し、白色粉末(以降「化合物No.I−1」と称する)が得られた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、化合物No.I−1の分子量を測定するとMw=200,000であった。なお測定条件は以下の通りである。
【0048】
測定装置:東ソー製 HLC8020
カラム :ポリマーラボラトリーズ製 Mixed−B*2本
溶離液 :DMF+0.1%LiBr
カラムオーブン温度:50℃
標準 :ポリサッカライド(ポリマーラボラトリーズ製)換算
【0049】
また、IR測定により、1743cmのC=O伸縮ピーク、13C−NMR測定より、175ppmのC=O基と24.8ppmと34.lppmのセバシン酸メチレン基を確認し、糖エステル共重合体が合成できたことを確認した。
【0050】
次にセロビオース及びセバシン酸の組合わせを下記表1の組合わせに代えた以外は上記と同様の方法によって式(I)の化合物を合成した。尚、化合物の糖残基「G」のアセチル化は、通常の合成方法、即ち、化合物を酢酸ナトリウム−無水酢酸中、130℃で加熱撹拌することによって行った。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1
(溶媒法によるセルロース含有複合体の成形体作製)
▲1▼ 微細粉末セルロース(KCフロック400G;日本製紙社製)の30重量%水懸濁液に、化合物No.I−8のマルトトリオース誘導体を20重量%添加後、50℃で加熱撹拌した。次に、この水懸濁液を95℃で加熱乾燥した後、得られた乾燥膜を室温にて粉砕機にかけた結果、大きさ(平均粒径を表す。以下同様とする)が約10μmの微細粉末が得られた。この粉末は凝集する事はなかった。この粉末をメタノールに溶解させ、該メタノール溶液をテフロンシート上にキャスト成形し、乾燥させて膜厚0.5mmのシート状の成形体を得た。
【0053】
▲2▼ 微細繊維状セルロース(セリッシュFD100;ダイセル化学工業社製)の20重量%水懸濁液に化合物No.I−23のラクトース誘導体を10重量%添加後、50℃で加熱撹拌した。次に、この水懸濁液を100℃で加熱乾燥した後、得られた乾燥膜を室温にて粉砕機にかけた結果、大きさが約10μmの微細粉末が得られた。この粉末は凝集する事はなかった。この粉末をアセトンに溶解させ、該アセトン溶液を上記▲1▼と同様にしてテフロンシート上にキャスト成形し、シート状の成形体を得た。
【0054】
▲3▼ 微細繊維状セルロース(アビセル;旭化成社製)の20重量%メタノール懸濁液に化合物No.I−10のセロテトラオース誘導体を10重量%添加後、50℃で加熱撹拌した。その後、このメタノール溶液を上記▲1▼と同様にしてテフロンシート上にキャスト成形し、シート状の成形体を得た。
【0055】
▲4▼ ヘストリン−シュラムの標準培地(グルコース2.0%、ペプトン0.5%、イースト抽出物0.5%、リン酸2ナトリウム塩0.15%、クエン酸0.27%:%は重量基準である)に、グルコピラノース誘導体(化合物No.I−15)を5重量%添加した培地にて、28℃でアセトバクター・キシリヌム(菌体番号ATCC23769)を静置培養した。30日後、培養液の上層に蓄積したゲル状の膜が得られた。この膜を充分水洗した後、プレス機にかけて膜が吸収していた水分を絞り出した。更に、このプレス処理した膜を105℃で加熱乾燥した。この乾燥膜を室温で粉砕機にかけた結果、大きさが約10μmの微細粉末が得られた。この粉末は凝集する事はなかった。この粉末をアセトンに溶解させ、該アセトン溶液を上記▲1▼と同様にしてテフロンシート上にキャスト成形し、シート状の成形体を得た。
【0056】
▲5▼ PPC用再生紙(キヤノン販売社、EN−500、A4)の使用済のもの(片面にNPコピー機で印字)を5mm角に裁断し、その100gを酵素溶液3リットルに投入し、45℃で6時間撹拌した。酵素溶液は、セルラーゼ(メイセラーゼTP60、明治製菓社製)10gを酢酸/酢酸ナトリウム水溶液(pH4.5)3リットルに溶解したものを用いた。反応後、メタノール200mlを加えた後、不溶性残査を濾別し、さらにイオン交換樹脂カラム(オルガノ社、アンバライトIR−120B)50cmを通過させ、溶媒留去により微黄色粉末64gを得た。
【0057】
ゲル濾過クロマトグラフィーおよび赤外吸収スペクトルから、グルコース、セロビオース、セロトリオースを主成分とする混合物であることを確認した。こうして得た糖混合物50gをアセトニトリル400ml、ピリジン200mlの混合溶媒に懸濁させ、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。ここへ、セバシン酸クロリド40mlをアセトニトリル200mlに希釈したものを加え、さらに2時間撹拌した。溶媒を一部留去した後、水中に注いで撹拌して沈殿を生成させた。この沈殿をアセトンで洗浄、乾燥し、淡黄色粉末42gを得た。重量平均分子量は約5万であった。こうして得た糖鎖化合物を前記▲1▼の化合物No.I−8に代えた以外は、前記▲1▼と同様にしてシート状の成形体を得た。
【0058】
▲6▼ PPC用再生紙(キャノン販売社製、EN−500)の使用済のもの(片面にコビー機で印字)を2mm角に裁断し、この古紙片100gを水1リットル中で5時間加熱還流した後、メタノールで洗浄し、乾燥した。これを、無水塩化リチウム70gを含むジメチルアセトアミド1リットルに投入し、70℃で6時間撹拌した。その後、溶液を濾過してセルロース溶液を得た。このセルロース溶液に化合物No.I−1のセロビオース誘導体を20g添加し、室温で撹伴した。次にこの溶液をテフロンシート上にキャスト成形し、乾燥させて膜厚0.5mmのシート状の成形体を得た。
【0059】
上記▲1▼〜▲6▼で作製したセルロース含有複合体の成形体から短冊型試験片(幅lcm×長さ6cm×厚さ0.5mm)を切り出し、オートグラフ(インストロン社製)を用いてその柔軟性を評価した。測定条件は、曲げ速度:0.5mm/min、支点間距離:30mmで行ない、目視で成形体にひび割れ等が観察されなかった場合には○、観察された場合には×と判定した。その結果を表2に示す。
【0060】
また、▲1▼〜▲6▼で作製した成形体を熟成コンポスト中に埋めた後、6ヶ月後に成形体が分解し原形を保持していない場合には○、分解せず原形を保持している場合を×として、生分解性の評価も行なった。
【0061】
比較例1
微細粉末セルロース(KCフロック400G;日本製紙社製)の2重量%銅アンモニア溶液を上記▲1▼と同様にしてテフロンシート上にキャスト成形し、シート状の成形体を得た。この成形体の柔軟性及び生分解性を上記▲1▼から▲6▼で得た成形体と同様にして評価した。その結果を下記表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示すように、▲1▼〜▲6▼で作製した複合体からなる成形体は、セルロースのみからなるフィルムが有する脆さを改善することができた。またセルロースの有する生分解性という優れた特性は維持していることが確認できた。
【0064】
実施例2
(加熱圧縮法によるセルロース含有複合体の成形体作製)
▲1▼ 微細繊維状セルロース(セリッシュFD100;ダイセル化学工業社製)の20重量%水懸濁液に化合物No.I−1のセロビオース誘導体を20重量%添加した後、50℃で加熱撹拌した。次に、この水懸濁液を105℃で加熱乾燥した後、得られた乾燥膜を室温にて粉砕機にかけた結果、大きさが約10μmの微細粉末が得られた。この粉末は凝集する事はなかった。この粉未を試験用ホットプレス機(商品名:ミニテストプレス−10;東洋精機(株)社製)を用いて、140℃、25kg/cm2で加熱圧縮処理を施して板状の成形体を得た。
【0065】
▲2▼ 界面活性剤(ノイゲンET−149;第一工業製薬社製)の1重量%メタノール溶液20g中に微細繊維状セルロース(KC−フロックW−100;日本製紙製)30gを加え、ホモジナイザーで10000rpmで5分間撹拌した。吸引濾過して、循風乾燥機で90℃、10分間乾燥し、表面処理を行った。表面処理したセルロース25gに、化合物No.I−3のマルトース誘導体を15g添加後、ローラー分散を24時間行った。24時間後、均一な粉末となり、この粉末は凝集する事はなかった。この粉末を試験用ホットプレス機(商品名:ミニテストプレス−10;東洋精機(株)社製)を用いて、120℃、30kgf/cm2で加熱圧縮処理して板状の成形体を得た。
【0066】
▲3▼ 微細繊維状セルロース(アビセル;旭化成社製)を▲2▼と同様に界面活性剤で表面処理した。この表面処理したセルロース30gに、化合物No.I−20のセロヘキサオース誘導体を20g添加し、THF中50℃で加熱撹拌した。この溶液を80℃で加熱乾燥させた。次に、この乾燥膜を室温にて粉砕機にかけた結果、大きさが約1lμmの微細粉末が得られた。この粉末は凝集する事はなかった。この粉末を試験用ホットプレス機(商品名:ミニテストプレス−10;東洋精機(株)社製)を用いて、127℃、28kgf/cm2で加熱圧縮処理して板状の成形体を得た。
【0067】
▲4▼ 微細繊維状セルロース(KC−フロックW−300;日本製紙社製)の25重量%水懸濁液に、化合物No.I−25のガラクトピラノース誘導体を15重量%添加後、55℃で加熱撹拌した。次に、この水懸濁液を100℃で加熱乾燥した後、得られた乾燥膜を室温にて粉砕機にかけた結果、大きさが約10μmの微細粉末が得られた。この粉末は凝集する事はなかった。この粉末を試験用ホットプレス機(商品名:ミニテストプレス−10;東洋精機(株)社製)を用いて、120℃、25kgf/cm2で加熱圧縮処理して板状の成形体を得た。
【0068】
▲5▼ 実施例1の▲4▼で用いたヘストリン−シュラムの標準培地に、化合物No.I−13のセロヘキサオース誘導体を5重量%添加した培地にて、28℃でアセトバクター・キシリヌムを静置培養した。30日後、培養液の上層に蓄積したゲル状の膜が得られた。この膜を充分水洗した後、プレス機にかけて膜が吸収していた水分を絞り出した。更に、このプレス処理した膜を105℃で加熱乾燥した。次に、この乾燥膜を室温で粉砕機にかけた結果、大きさが約10μmの微細粉末が得られた。この粉末は凝集する事はなかった。この粉末を試験用ホットプレス機(商品名:ミニテストプレス−10;東洋精機(株)社製)を用いて、125℃、28kgf/cm2で加熱圧縮処理して板状の成形体を得た。
【0069】
▲6▼ 実施例1の▲4▼で用いたヘストリン−シュラムの標準培地に、化合物No.I−17のマンノピラノース誘導体を5重量%添加した培地にて、28℃でアセトバクター・キシリヌムを静置培養した。30日後、培養液の上層に蓄積したゲル状の膜が得られた。この膜を充分水洗した後、プレス機にかけて膜が吸収していた水分を絞り出した。更に、このプレス処理した膜を105℃で加熱乾燥した。次に、この乾燥膜を室温で粉砕機にかけた結果、大きさが約10μmの微細粉末が得られた。この粉末は凝集する事はなかった。この粉末を試験用ホットプレス機(商品名:ミニテストプレス−10;東洋精機(株)社製)を用いて、118℃、23kgf/cm2で加熱圧縮処理して板状の成形体を得た。
【0070】
▲7▼ 実施例2の▲1▼の化合物No.I−1を、実施例1の▲5▼と同様にして合成した糖鎖化合物に代えた以外は、前記実施例2の▲1▼と同様にして板状の成形体を得た。
【0071】
▲8▼ 実施例2の▲1▼の微細繊維状セルロースの20重量%水懸濁液を、実施例1の▲6▼のセルロース溶液に代えた以外は前記実施例2の▲1▼と同様にして板状の成形体を得た。
【0072】
上記▲1▼から▲8▼で作製した各々の成形体から短冊型試験片(幅lcm×長さ6cm×厚さ0.5mm)を切り出し、オートグラフDSC−R−500(島津製作所社製)を用いて引っ張り強度を評価した。測定条件は、ロードセル:50kg、クロスヘッドスピード:50mm/min、チャック間:10mmであった。対照例として汎用ポリエステル(PET)からなる成形体から切り出した同形状の短冊型試験片を用いて比較検討した。PETと比較して、引っ張り強度が優れているものを◎、同等のものを○、劣るものを×とした。この結果を表3に示した。
【0073】
また、実施例2の▲1▼から▲8▼と同様に作製した8種類の成形体の生分解性に関しても評価した。熟成コンポスト中に埋めた後、6ヶ月後に成形体が分解しているものを○、分解しないものを×とした。この結果を表3に示した。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示すように、実施例2の▲1▼から▲8▼と同様に作製した複合体からなる成形体は、引っ張り強度が十分実用の範囲にあり、かつ生分解性を有する成形体であることを確認した。
【0076】
比較例2
実施例2の▲1▼と同様にして調製した微細繊維状セルロースの20重量%水懸濁液を50℃で加熱撹拌した後、この水懸濁液を105℃で加熱乾燥させた。次に、この乾燥したものを室温で粉砕機にかけた。しかし、実施例2の▲1▼で得られた様な微細粉末は得られず、その大きさは150μmを超えていた。しかも粉末は凝集しやすかった。更に、この粉末を実施例2の▲1▼と同様にして加熱圧縮処理を試みた。しかし、板状の成形体を得ることはできなかった。
【0077】
比較例3
実施例2の▲5▼で述べた培養液に糖誘導体を添加しない場合に得られたバクテリアセルロースに対して実施例2の▲5▼と同様に処理を施した。しかし、実施例2の▲5▼で得られた様な微細粉末は得られず、その大きさは100μmを超えていた。しかも粉末は凝集しやすかった。更に、この粉末を実施例2の▲5▼と同様にして加熱圧縮処理を試みた。しかし、板状の成形体を得ることはできなかった。
【0078】
実施例3
実施例1の▲1▼と同様にして作製した複合体の粉末をpH8.6に調製したエステラーゼ酵素(ベーリンガーマンハイム社製)中で、40℃で7日間撹拌した。反応混合液を濾過して、セルロースを濾別した。次に、濾液をpH5になるように0.lN塩酸で調整した後、生じた不溶分を濾別した。濾液は、イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B、オルガノ社製)を通過させた後、乾固させた。赤外スペクトルを測定した結果、不溶分はアジピン酸、可溶分はマルトトリオースである事を確認した。
【0079】
また、分取したマルトトリオースとアジピン酸を再重合の原料として用い、ここで、アジピン酸は塩化チオニルを用いてアジピン酸クロリドにした。このように、回収したマルトトリオースとアジピン酸クロリドから、合成例と同様にして糖誘導体(化合物No.I−8)が合成できた。また、この再合成した糖誘導体(化合物No.I−8)と回収したセルロースを用いて実施例1の▲1▼に記載の方法によって再び複合体を作製することができ、リサイクルが可能である事を確認した。
【0080】
同様に以下、実施例1の▲2▼から▲6▼、及び実施例2の▲1▼から▲8▼と同様に作製した各成形体を、上記の酵素による加水分解と同様にして、糖類、ジカルボン酸、及びセルロースとに分離でき、この糖類とジカルボン酸を原料にして該当する糖誘導体を再合成することができた。また、この再合成した糖誘導体と回収したセルロースを用いて成形体を作製することができ、リサイクルが可能である事を確認した。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば以下の効果がある。
セルロースと単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体からなるセルロース含有複合体は、セルロース分子間の水素結合を阻害することにより微細粉末化が可能となる。また、熱可塑性を有する糖誘導体を含有することでセルロースの成形加工性を向上させることができる。
【0082】
セルロースと単糖誘導体またはオリゴ糖誘導体からなるセルロース含有複合体の成形体は、汎用ポリエステル(PET)よりも優れた機械的強度を有する。
また、このセルロース含有複合体の成形体は、セルロース、単糖またはオリゴ糖という天然物を用いている為、安全性に優れると共に、生分解性、リサイクル性等の機能を発現することができる。
【0083】
更に本発明によれば、古紙等の紙を原材料として活用し、その主成分であるセルロース、またはセルロースに由来する糖類化合物を化学的に改変することによって、リサイクル性の高い糖類高分子化合物および組成物を得ることができ、廃棄物の削減および資源の有効利用に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセルロースとセロビオース誘導体からなるセルロース含有複合体の構造を説明する模式図である。
【図2】セルロースの構造を説明する模式図である。
【符号の説明】
11 セロビオース誘導体
1la 非糖質残基
12、13、21、22、23 セルロース分子
Claims (26)
- 前記糖残基Gが、グルコピラノース、セロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、ラクトースの少なくとも一つである請求項1記載の複合体。
- 前記糖残基Gが、セロビオースである請求項2記載の複合体。
- 前記糖残基Gが、マルトースである請求項2記載の複合体。
- 前記糖残基Gが、ラクトースである請求項2記載の複合体。
- 前記糖残基Gが、グルコピラノースである請求項2記載の複合体。
- 前記糖残基Gが、紙由来の糖残基である請求項1、3または6のいずれかの項に記載の複合体。
- 前記セルロースが植物由来のセルロースである請求項1記載の複合体。
- 前記セルロースがバクテリアセルロースである請求項1記載の複合体。
- 前記セルロースが紙由来のセルロースである請求項1記載の複合体。
- 前記溶液が、微細繊維状のセルロースの懸濁液と前記(1)式で示される化合物とを混合した溶液である請求項11記載の製造方法。
- 該セルロースがバクテリアセルロースである請求項11又は12記載の製造方法。
- 前記溶液が、セルロースを溶解してなるジメチルアセトアミドおよび無水塩化リチウムの混合溶媒と前記(1)式で示される化合物とを混合した溶液である請求項11記載の製造方法。
- 該セルロースを溶解してなるジメチルアセトアミドおよび無水塩化リチウムの混合溶媒が、紙をアルカリ性溶液中でほぐしてセルロース繊維とする工程および該セルロース繊維をジメチルアセトアミドおよび無水塩化リチウムの混合溶媒に加えてセルロースを該混合溶媒に溶解させる工程を経て製造されるものである請求項14記載の製造方法。
- 前記(I)式で示される化合物が、
(i)紙中のセルロースを分解して前記(I)式中Gで表される単糖残基もしくはオリゴ糖残基を得る工程と、
(ii)該単糖残基もしくはオリゴ糖残基を、前記(I)式中Rで示される部分を含むジカルボン酸と結合させる工程、とを含む方法によって得られたものである請求項11乃至15の何れかの項に記載の製造方法。 - 該紙が古紙である請求項18記載の糖類化合物。
- 該セルロースが紙又は古紙から抽出されたものである請求項20に記載の糖類化合物の製造方法。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載のセルロース含有複合体を含むことを特徴とする成形体。
- 該成形体が加熱圧縮成形体である請求項24に記載の成形体。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載のセルロース含有複合体を加熱圧縮する工程を含む請求項24に記載の成形体の製造方法。
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