JP3594717B2 - 構造部材の亀裂監視装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁等を支える構造部材に発生する亀裂疲労を目視により早期発見できるようにした構造部材の亀裂監視装置の改良(疲労亀裂モニタリングセンサ)に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、鉄道が大量輸送に果たす役割は大きく、特に高度経済成長期に登場した新幹線が在来線の常識を覆す高速輸送時代の幕開けとなったことは記憶に新しい。こうした高速輸送がもたらす恩恵の陰には、鉄路の安全を維持管理する地道な努力があることは言うまでもないが、新幹線等の高速鉄道も開設以来数十年の時を経たことで、鉄路や橋梁といった基幹部分の構造部材の一部に、金属疲労が原因と見られる亀裂が目立ち始めており、老朽化した構造部材を補強するか或いは交換する必要に迫られているのも事実である。こうした構造部材に発生する金属疲労は、いち早く発見することが事故防止に不可欠であり、様々な角度から定期的或いは非定期の検査が実施されている。特に、河川に敷設したコンクリートの橋脚に、鉄路を支える鉄骨部材を複雑に組み合わせて構成され橋梁は、車両が通過するたびに繰り返し振動荷重が加わる上、風雪による錆が見えない部分に傷を作り、それが亀裂を大きく広げる原因となるなど、苛酷な環境にさらされるだけに損耗も激しく、重点的な点検作業が要求される。
【0003】
一般に、保線区で鉄路の管理維持に当たる作業員は、列車走行の合間を縫うか、或いは列車が走行しない夜間等を利用して、橋脚の隅々までを目視によりチェックする必要がある。このため、例えば応力集中が予想される箇所の構造部材に、予め楔状の亀裂を形成した検査部材を張り付けておき、この検査部材の亀裂の深さを目視により観察し、一定限界を越えて亀裂が生じている場合は、その部分の構造部材に生じた金属疲労が危険レベルに達しているものと判断するなどの監視体制が採られてきた。
【0004】
具体的には、図6,7に側面図と平面図の一部を概略示す橋梁1の場合、枕木2を並べてその上に敷設した鉄路3と直交し、橋脚4によって支えられる横桁となるI型鋼5や、これらのI型鋼5,5間に橋架される他のI型鋼(図示せず)のうち、応力集中が予想される箇所の構造部材を選んで検査部材6を張り合わせる。この検査部材6は、図8に示したように、I型鋼5のフランジ部5aの一部に、楔状の切り欠き6の付いた金属板をボルト締め固定したものであり、疲労亀裂を監視するフランジ部5aに作用する応力が検査部材6にも作用することを受け、金属疲労に比例して切り欠き6aが成長するため、切り欠き6aが危険レベルまで伸長した時点で構造部材の補強或いは交換の目安としていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の亀裂監視装置7は、I型鋼5等の構造部材の応力集中が予想される箇所に切り欠き付6aきの検査部材6を張り付ける構成であり、図示したように、I型鋼5のフランジ部5aに比べ数分の一又は数十分の一の大きさの検査部材6を用いるため、I型鋼5に作用する応力と同じ応力が検査部材6に作用しているとは限らず、実際に荷重を支えるI型鋼5と検査部材6との応力環境のギャップから、実際よりもかなり早期に疲労限界に近づきつつあると判断してしまったり、或いはその逆にI型鋼5が疲労限界に達しているにもかかわらず、検査部材6からはI型鋼5が既に疲労限界に達したことを把握できず、金属疲労を看過したことで大事に至ることがある等の課題を抱えていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、構造部材に直に切り欠きを形成し、かつ切り欠きを設けた部分の応力挙動を変化させないよう、構造部材の切り欠き部を補強する補強部材により、切り欠きが一定深さ以上進行する前に危険を報知できるようにするか、或いは構造部材に対しほぼ同一形状の検査部材を張り合わせ、構造部材と等価な応力環境に置かれた検査部材により、亀裂疲労を的確に検出することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、亀裂疲労の監視対象とされ、所定箇所に楔状の切り欠きが形成された構造部材と、該構造部材の前記切り欠きの近傍に組み付けられ、前記切り欠きの形成に伴う強度の低下を補償するとともに、疲労限界に対応する切り欠きの成長限界を指示する補強部材とを具備することを特徴とする構造部材の亀裂監視装置を提供することにより、前記目的を達成するものである。
【0008】
また、本発明は、亀裂疲労の監視対象とされる構造部材と、該構造部材とほぼ同一形状を有し、所定箇所に楔状の切り欠きが形成され、該構造部材に組み付けられ、前記構造部材の疲労限界を示す切り欠きの成長限界を指示する検査部材とを具備することを特徴とする亀裂監視装置を提供することにより、前記目的を達成するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1ないし図5を参照して説明する。図1は、本発明の構造部材の亀裂監視装置の一実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示した構造部材の一部拡大斜視図、図3は、図1に示した構造部材と補強部材の関係を示す平面図、図4は、本発明の構造部材の亀裂監視装置の他の実施形態を示す斜視図、図5は、図4に示した構造部材の一部拡大図である。
【0010】
図1に示す構造部材の亀裂監視装置11は、橋梁等の主要骨格部分の実際の構造部材として用いられるI型鋼の亀裂疲労を監視するものであり、構造部材であるI型鋼12の端面に溶接されたフランジ部12aに例えば楔状の切り欠き13を形成し、この切り欠き13の最深部に端面を合わせ、図2に示したように、補強部材、例えば補強板14を例えば、ボルト締め固定して構成してある。この場合、注目すべきは、補強板14を構造部材に取付けても構造部材自体の応力分布は変らない、即ち、応力の流れは同じであり、この切り欠きが全て切れて構造部材が破断したときに補強板が補強の役目を果すことである。
【0011】
補強板14は、図3に示したように、I型鋼12の切り欠き13の近傍に締結ボルト15を用いて組み付けられ、切り欠き13の形成に伴う強度の低下を補償するとともに、疲労限界に対応する切り欠き13の成長限界を指示する。具体的には、切り欠き13の成長限界を示す位置に、補強板14の前縁部を合わせ、その位置で締結ボルト15を用いて補強板14をI型鋼12に組み付けてある。
【0012】
フランジ部12aに形成した切り欠き13は、金属疲労の進行とともにその深さを増すが、切り欠き13の最深部が補強板14の端面に達した時点で、疲労限界と判断することができる。従って、ここに示した疲労監視装置11によれば、I型鋼5の近傍に配設した検査部6材に切り欠き6aを形成して構造部材の亀裂疲労を検査する従来の装置7と異なり、構造部材であるI型鋼12自体に切り欠き13を形成したことで、I型鋼12を取り囲む現実の応力環境のなかでI型鋼12の疲労の程度を正確に把握することができる。従って、構造部材とは応力環境が異なる検査部材を通じた検査が原因で疲労限界に達した旨の判断が遅れたり、時期尚早であったりすることはなく、I型鋼12の亀裂疲労を確実にしかも正確に検査することができる。
【0013】
なお、上記実施例では、I型鋼12に直接切り欠き13を形成するようにしたが、図4,5に示す疲労監視装置21のごとく、I型鋼22には切り欠きを形成せず、検査対象となるI型鋼22のフランジ部22aと同一形状の検査部材23で、予め切り欠き23aが形成済みのものを用意し、これをI型鋼22に締結ボルト等により張り合わせ、検査部材23に形成した切り欠き23aの成長を監視する構成とすることもできる。すなわち、従来のように構造部材の数分の一或いは数十分の一の大きさしかない検査部材を単に切り欠きをもった部材として応力集中箇所に張り付けるのではなく、補強部材ともなる検査部材23をもって、亀裂疲労を監視するのである。
【0014】
この場合、検査部材23が構造部材であるI型鋼22の強度を補強し、同時にまたI型鋼22が検査部材23を補強するという相互の補強効果によって、検査部材23がI型鋼23単体の疲労を体現しにくくなるといった懸念もあるが、I型鋼5のフランジ部5aの数分の一又は数十分の一の大きさの検査部材6を用いる従来の疲労監視装置1に比べ、以下の点で優れている。
【0015】
(1) 構造部材(I型鋼22のフランジ部22a)と検査部材23が同一形状であり、両者を張り合わせてあるため、応力の再現性が優れる。すなわち、構造部材に作用する応力が検査部材23に作用する応力として正確に再現され、検査部材23を監視することが構造部材を監視することと等価となる。
【0016】
(2) 同一条件で使用される同種の構造部材が多数含まれる橋梁の亀裂検査方法として、すべての構造部材に補強部材を付加するのではなく、代表的な部材に対してだけ補強を兼ねて検査部材23を付加するだけで済むため、非常に安価に監視体制を築くことができる。
【0017】
(3) 仮に検査部材23が破断するに至っても、構造部材は現存するため、精密検査により構造部材が疲労限界に達していないことが分かれば、検査部材23の交換だけで監視体制を継続することができ、構造部材には傷を付けないことのメリットを最大限活かすことができる。
【0018】
このように、上記の構造部材の亀裂監視装置21によれば、構造部材であるI型鋼22のフランジ部22aとほぼ同一の形状を有し、所定箇所に楔状の切り欠き23aが形成された検査部材23をフランジ部22aに組み付け、フランジ部22aの疲労限界を示す切り欠き23aの成長限界を指示するようにしたから、検査部材23に関する応力の再現性が優れており、また代表的な構造部材に対してだけ補強を兼ねて検査部材23を付加するため、監視コストを抑えることができ、また仮に検査部材23が破断するに至っても、検査部材23の交換だけで監視体制を継続することができるため、監視体制の維持コストも少なくて済む。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、亀裂疲労の監視対象とされる実際の構造部材に切り欠きを設けると共に、この切り欠きの形成に伴う強度の低下を補償するとともに、疲労限界を示す切り欠きの成長限界を指示する補強部材を構造部材に取付けるようにしたから、構造部材の近傍に配設した検査部材に切り欠きを形成して構造部材の亀裂疲労を検査する従来の装置と異なり、構造部材自体に切り欠きを形成したことで、構造部材が受ける現実の応力環境のなかで構造部材の疲労の程度を実際に把握することができ、厳密には構造部材とは応力環境が異なる検査部材を通じた検査によって、疲労限界に達した旨の判断が遅れたり、時期尚早であったりすることはなく、構造部材の亀裂疲労を確実にしかも正確に検査することができる等の優れた効果を奏する。
【0020】
また、本発明は、亀裂疲労の監視対象とされる構造部材と、該構造部材と同程度の大きさを有し、所定箇所に楔状の切り欠きが形成され、該構造部材に組み付けられ、前記構造部材の疲労限界を示す切り欠きの成長限界を指示する検査部材とを具備する構成としたから、構造部材とほぼ同一の形状を有し、所定箇所に楔状の切り欠きが形成された検査部材を、構造部材に組み付け、前記構造部材の疲労限界を示す切り欠きの成長限界を指示するようにしたから、検査部材に関する応力の再現性が優れており、また代表的な構造部材に対してだけ補強を兼ねて検査部材を付加するため、監視コストを抑えることができ、また仮に検査部材が破断するに至っても、検査部材の交換だけで監視体制を継続することができるため、監視体制の維持コストも少なくて済む等の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構造部材の亀裂監視装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した構造部材の一部拡大斜視図である。
【図3】図1に示した構造部材と補強部材の関係を示す平面図である。
【図4】本発明の構造部材の亀裂監視装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4に示した構造部材の一部拡大図である。
【図6】橋梁の側面図である。
【図7】図6に示した橋梁の平面図である。
【図8】図7に示した検査部材の取付け箇所を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
11,21 構造部材の亀裂監視装置
12,22 I型鋼
12a,22a フランジ部
13,23a 切り欠き
14 補強板
15 締結ボルト
23 検査部材

Claims (1)

  1. 疲労亀裂の監視対象とされる実際の構造部材に切り欠きを形成すると共に、該構成部材の前記切り欠きの形成に伴う強度の低下を補償し且つ疲労限界に対応する切り欠きの成長限界を指示する補強部材を前記構造部材に取り付け、前記補強部材は、金属疲労の進行と共にその切り欠きの深さを増す方向に設けられたことを特徴とする構造部材の亀裂監視装置。
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