JP3593657B2 - マーク付きベルト及びベルトのマーク形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、動力伝導や搬送に使用されるマーク付きベルト及びベルトのマーク形成方法に関するものである。なお、この明細書では「マーク」は文字、記号、数値、しるし等を意味するものとする。
【0002】
【従来の技術】
注型ウレタンベルトのマーク形成方法としては、例えば、成型後のベルトスラブ背面にスクリーン印刷、インクジェット印刷又は熱転写印刷でマークを形成するものがある。
【0003】
しかしながら、ベルトスラブ背面を研磨しない注型ウレタンベルトの場合、ベルト背面に外金型表面に塗布されている離型剤が転写して付着し、そのままスクリーン印刷等を行っても当該離型剤がインクをはじき、鮮明なマークが形成できない。
【0004】
そこで、印刷する部分のベルト背面をMEK等の有機溶剤を湿らせたウエスで拭いて離型剤を除去してから印刷を行っているが、有機溶剤の使用は作業者の健康を損ねる危険性がありまた大気中への放出は環境汚染につながるという問題がある(この問題はマークを、有機溶剤を溶媒とするインクで印刷する態様を採る限りゴムベルトや樹脂ベルトであっても避けられない)。またこのように離型剤を除去して印刷を行っても、ベルト背面は凹凸が少ない平滑な鏡面仕上げに近い状態となっているのでインクがウレタン内部に浸透しにくく、よって簡単にインクが剥がれたり、磨耗したりしてマークが消失するという問題があった。
【0005】
上記した全ての問題を解決する方法として、第3126937号特許公報には、ゴムベルトにレーザー光を照射してマークを深さ0.1〜1mm程度の刻印するものが開示されている。この方法によると、背面駆動用に使用されても鮮明なマークを残存させることができ、ゴムベルトの背面に刻印されたマーク形成部分のみが凹む形態となるので背面駆動面の騒音を減少させることができる。
【0006】
しかしながら、この方法では以下のA及びBに記載の理由により、ベルト背部が薄い小径小ピッチのベルトには採用できないという問題がある。
A.ベルト背部の厚みが薄いのでレーザー光の照射による刻印を浅く設定すると、マークは凹みで一応認識できるが前記凹みはベルト背面と同色であることからマークは鮮明なものにはならない。
B.マークの刻印を鮮明なものとすべく当該刻印を深いものにすると、照射されたレーザー光が芯線に損傷を与え、さらに、実際の走行においてはマークの刻印部分からクラックが発生して寿命を低下させてしまうという問題がある。
【0007】
したがって、マーク付きベルトを取り扱う業界では、ベルト背部が薄いものであっても、マーク形成位置でのクラックの発生がほとんどなく且つ長期使用してもマークが鮮明であるマーク付きベルトが開発されることを待ち望んでおり、また、ベルト背部が薄いものであっても、マーク形成位置でのクラックの発生がほとんどなく且つ長期使用してもマークが鮮明であり、作業者の健康問題や環境問題が生じないベルトのマーク形成方法が開発されることを待ち望んでいる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明では、ベルト背部が薄いものであっても、マーク形成位置でのクラックの発生がほとんどなく且つ長期使用してもマークが鮮明であるマーク付きベルトを提供することを課題とし、また、ベルト背部が薄いものであっても、マーク形成位置でのクラックの発生がほとんどなく且つ長期使用してもマークが鮮明であり、作業者の健康問題や環境問題が生じないベルトのマーク形成方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(請求項1記載の発明)
請求項1記載の発明は、背面にマークを設けたベルトにおいて、ベルト本体が、ベルト主材に発色性顔料又は顕色性顔料を混合したものから成り、ベルト本体の背面に照射されたレーザー光により、前記背面にマークとなる深さ10μm〜90μmの刻印が形成されていると共に、前記刻印を構成する壁面にある発色性顔料又は顕色性顔料がベルト本体の背面の色と異なる色に変色しており、前記壁面よりも深い位置にある発色性顔料又は顕色性顔料をも変色させてある。
(請求項2記載の発明)
請求項1記載の発明のベルトのマーク形成方法は、ベルト主材に発色性顔料又は顕色性顔料を混合したものから成るベルト本体の背面におけるマークを形成する部分にレーザー光を照射し、前記背面に深さ10μm〜90μmの刻印を形成させると共に前記刻印を構成する壁面にある発色性顔料又は顕色性顔料をベルト本体の背面の色と異なる色に変色させるようにし、前記壁面よりも深い位置にある発色性顔料又は顕色性顔料をも変色させるようにしてある。
【0010】
なお、この発明のマーク付きベルト及びベルトのマーク形成方法については以下の発明の実施の形態の欄で説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を実施形態として示した図面に従って説明する。
〔実施形態1〕
図1はこの発明の実施形態の歯付きベルト1の斜視図であり、図2は前記歯付きベルト1のベルトスラブを成型するための成型装置の断面図であり、図3は前記歯付きベルト1の背面にマークMを刻印するためのレーザー装置の概略図である。
【0012】
歯付きベルト1は、図1に示すように、ベルト本体1aの背面にマークMを形成して成るものであり、前記ベルト本体1aは背面10から歯面11にかけて全体をレーザー光に感応する発色性顔料又は顕色性顔料を混合したウレタンエラストマーで構成されていると共に、その内部に複数本の芯線12を埋設するようにして構成してある。
【0013】
マークMの刻印の深さは10〜90μmに設定されており、背部の厚み(ベルト背面から芯線12の頂部までの距離)が90μm程度である場合には10μmに、背部の厚みが300〜400μm程度である場合には90μm程度に、設定することが好ましい。
【0014】
ここで、上記歯付きベルト1は、図2に示すベルト本体1aの製造工程と、図3に示すベルト本体1aの背面10にマークM(例えばABCD)を形成するマーク形成工程とにより製造されている。なお、この実施形態ではマークMはABCDとしてあるが、実際のベルトではマークMは会社名、製品名、製造番号等である。
(ベルト本体1aの製造工程について)
▲1▼.第1工程
外周面に歯形溝を設けた円筒状の内型8の表面に、芯線12を張力をかけてスパイラル状に巻き付ける。
▲2▼.第2工程
前記内型8に芯線12の装着が完了すれば、図2に示すように、内型8を円筒状の外型9に挿入して、所定の空間Kができるように組み合わせ、内型8の両端部は上下蓋70,71で封鎖し固定する。
▲3▼.第3工程
前記内外型8,9を加熱した後、注型用容器72内の液状ウレタンエラストマーUEをピストン73により加圧し、注型用管74を経て前記空間K内に液状ウレタンエラストマーUEを充填する。空間K内に液状ウレタンエラストマーUEが充填されると、上蓋70の脱気孔75から液状ウレタンエラストマーUEが流出するので、流出した時点で脱気孔75に開閉ネジ76を螺着し、脱気孔75を密閉して所定時間、所定の温度及び圧力で加熱加圧する。そして成型後、上下蓋70,71を取り外し、内・外型8,9を分離した後、ウレタンベルトスラブ1’を脱型する。
【0015】
なお、上記したベルト主材である液状ウレタンエラストマーUEにはCO2 レーザー光(又はYAGレーザー光)が照射されると変色する発色性顔料(又は顕色性顔料)を混合してあるが、これらの混合比率は、刻印を構成する壁面にある変色した発色性顔料又は顕色性顔料がベルト本体の背面の色と確実に識別でき且つベルトの物性に悪影響を与えないように設定してある。
(マーク形成工程について)
マーク形成工程としては、図3に示すように、CO2 (又はYAG)のレーザー光Lを照射してベルトスラブ1’にマークMを刻印する方法を採用している。
▲1▼.背面側を外側にする態様で上記ウレタンベルトスラブ1’をベルトスラブ支持台74に外挿させ、動かないようにしっかりと止着する。具体的にはウレタンベルトスラブ1’の背面側がベルトスラブ支持台74の上面と平行になるようにセットする。
▲2▼.レーザー発振部70から発振したレーザー光Lを集光レンズ71に集めて表面でレーザースポットが最小になるようにし、図示しない制御部によってスキャンミラー72,73を走査させてレーザー光Lの反射角度を調整しながら移動可能な支持台74上にセットされたウレタンベルトスラブ1’の背面に照射してマークMを刻印する。
【0016】
なお、このレーザー光Lは、予めマークMのデータを入力した図示しない制御部が入力したプログラムにしたがって自動的にスキャンミラー72,73を走査し、かつレーザー光LのON,OFFを制御することにより入力した所望のマークMを描くことができる。
【0017】
ここで、この実施形態ではレーザー光Lによる刻印の深さは照射時間の調整により30μm程度の浅いもの(背部の厚みに応じて10μm〜90μmの範囲に設定する)に設定している。
【0018】
したがって、マークMとなる刻印は30μm程度の浅いものとなるが、前記刻印を構成する壁面にある発色性顔料又は顕色性顔料がベルト本体1aの背面10の色と異なる色に変色しているから、マークMは鮮明であると共に長期使用して背部が磨耗してもマークが鮮明さは維持される。また、マークMとなる刻印は30μm程度の浅いものになるから、マーク形成位置でのクラックの発生がほとんどなく、よって寿命に悪影響を与えることがない。さらに、背面に刻印されたマークMの形成部分のみが凹む形態であるから、背面が駆動面である場合でも騒音が大きくなることはない。
〔他の実施形態〕
なお、上記実施形態では、ベルト本体を構成するベルト主材を液状ウレタンエラストマーとしているが、これに限定されるものではなく、ベルト主材をゴムや熱可塑性樹脂としたゴムベルトや樹脂ベルトにもこの発明を採用できる。つまり、ベルト本体が、ゴムや樹脂に発色性顔料又は顕色性顔料を混合したものから成り、ベルト本体の背面に照射されたレーザー光により、前記背面にマークとなる浅い刻印が形成されていると共に前記刻印を構成する壁面にある発色性顔料又は顕色性顔料がベルト本体の背面の色と異なる色に変色しているものとしてもよい。この場合においても上記実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0019】
また、この発明は他の形態の歯付きベルトその他種類のベルト(平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト)にも採用できる。
【0020】
さらに、上記実施形態では、マークMとなる刻印を構成する壁面にある発色性顔料又は顕色性顔料を変色させているが、マークMとなる刻印を構成する壁面にある発色性顔料又は顕色性顔料だけでなく、それよりも深い位置にある発色性顔料又は顕色性顔料をも変色させるようにしてもよい。
【0021】
【発明の効果】
この発明は上記のような構成であるから次の効果を有する。
(請求項1、2記載の発明の効果)
発明の実施の形態の欄の内容から明らかなように、これら発明ではベルト背部が薄いものであっても、マーク形成位置でのクラックの発生がほとんどなく且つ長期使用してもマークが鮮明であるマーク付きベルトを提供できる。
(請求項3、4記載の発明の効果)
発明の実施の形態の欄の内容から明らかなように、これら発明ではベルト背部が薄いものであっても、マーク形成位置でのクラックの発生がほとんどなく且つ長期使用してもマークが鮮明であり、作業者の健康問題や環境問題が生じないベルトのマーク形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態の歯付きベルトの斜視図。
【図2】前記歯付きベルトの製造工程についての説明図。
【図3】前記歯付きベルトにマークとなる刻印を形成するマーク形成工程についての説明図。
【符号の説明】
L レーザー光
M マーク
1 歯付きベルト
1a ベルト本体
10 歯面
11 背面
12 芯線
Claims (2)
- 背面にマークを設けたベルトにおいて、ベルト本体が、ベルト主材に発色性顔料又は顕色性顔料を混合したものから成り、ベルト本体の背面に照射されたレーザー光により、前記背面にマークとなる深さ10μm〜90μmの刻印が形成されていると共に、前記刻印を構成する壁面にある発色性顔料又は顕色性顔料がベルト本体の背面の色と異なる色に変色しており、前記壁面よりも深い位置にある発色性顔料又は顕色性顔料をも変色させてあることを特徴とするマーク付きベルト。
- ベルト主材に発色性顔料又は顕色性顔料を混合したものから成るベルト本体の背面におけるマークを形成する部分にレーザー光を照射し、前記背面に深さ10μm〜90μmの刻印を形成させると共に前記刻印を構成する壁面にある発色性顔料又は顕色性顔料をベルト本体の背面の色と異なる色に変色させるようにし、前記壁面よりも深い位置にある発色性顔料又は顕色性顔料をも変色させるようにしてあることを特徴とするベルトのマーク形成方法。
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