JP3592494B2 - 大気圧レーザー気化質量分析装置及び方法 - Google Patents

大気圧レーザー気化質量分析装置及び方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、質量分析装置における試料のイオン化法、特に、大気圧下でのレーザーイオン化法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ペプチドやDNAを質量分析計で質量分析する場合、MALDI−TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time Of Flight)法が用いられてきた。これは、ペプチドやDNA等の試料を緩衝剤と混ぜてドロリとした粘稠な液体を調製し、緩衝剤のマトリックス中に試料分子を担持させた状態でレーザー光を照射して質量分析を行なう方法である。
【0003】
図1は、MALDI−TOF法を模式的に示したものである。この方法では、緩衝剤と試料の混合物4を真空中のサンプルスライド3上に少量付着させ、そこに集光レンズ2で集光されたレーザー1のレーザー光を照射して、試料を気化させている。気化された試料イオンは、イオン加速器5で加速される。そして、イオンが検出器6に到達するまでの飛行時間が質量ごとに異なることを利用することによって、イオンの質量を分析している。
【0004】
MALDI−TOF法の場合、高粘性の試料が極少量あれば十分であり、この方法で液体クロマトグラフィの溶離液のような低粘性の試料を多量に取り扱うことは困難である。また、MALDI−TOF法では、真空中のレーザーイオン源に液体試料を連続的に導入することも容易でない。
【0005】
一方、液体試料を大気圧下でイオン化させる方法としては、TSP(サーモスプレイ)法やESI(エレクトロスプレイ)法が従来法としてあるが、これらは液体試料を霧化するための機構であり、試料の消費量が多いという欠点を持つ。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の技術は、真空中で極少量の高粘性試料を質量分析するための方法、あるいは、大気中で多量の液体試料を霧化ないしイオン化するための方法であって、これらの方法を大気圧下、比較的少量の液体試料に対して適用することはできなかった。
【0007】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、比較的少量の液体試料で効率的に質量分析できる、大気圧下でのレーザーイオン化法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の大気圧レーザー化質量分析装置は、
液体試料にレーザー光を照射するための集光系と、
液体試料を冷却し、凍結固化ないし高粘性化させるための試料ホルダと、
前記凍結固化ないし高粘性化させた液体試料を、キャリアーガス下、レーザー光照射によって気化させるための試料セルと、
気化した液体試料を脱溶媒するための冷却部と、
脱溶媒された液体試料をイオン化するための二次イオン化室と、
試料イオンを質量分析する質量分析計と
から成り、
前記試料セル、冷却部、二次イオン化室、質量分析計の間は、キャリアーガスの流路で連通されており、該キャリアーガスは、試料セルから、冷却部、二次イオン化室、質量分析計の順に流れるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の大気圧レーザー化質量分析法は、液体試料を冷却することによって凍結固化ないし高粘性化させ、キャリアーガス下、その試料にレーザー光を照射することによって試料を気化ないしイオン化させるようにした大気圧レーザー気化質量分析法であって、
該キャリアーガスは、試料セルから質量分析計に向けて流れるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図2は本発明の一実施例である。液体試料7の入った試料セル8は、レーザー光を照射するための集光系9の直下に置かれている。集光されたレーザー光が試料セル8に照射されている様子を観測するための観測系10は、集光系9から横方向に枝分かれして延びている。レーザー光照射によって気化した液体試料7を脱溶媒するための冷却部11は、試料セル8の隣に置かれている。脱溶媒された液体試料7をイオン化するための二次イオン化室12は、さらに冷却部11の隣に置かれている。イオン化された試料の質量を分析するための質量分析計13は、さらに二次イオン化室12の隣に置かれている。
【0011】
これらのうち、試料セル8、冷却部11、二次イオン化室12、及び、質量分析計13の間は、ガスの流路で連通されていて、試料セル8で生成した微粒子状の試料は、キャリアーガスによって冷却部11、二次イオン化室12を経て、質量分析計13まで運ばれる構造になっている。
【0012】
集光系9の内部には、レーザー14から発振されたレーザー光を液体試料7に集光するための集光レンズ15と、レーザー光が液体試料7に集光されている様子を映すためのハーフミラー16が設けられている。
【0013】
ハーフミラー16に映った液体試料14の映像は、観測系8のCCDカメラ17によって撮影され、ディスプレイ18にモニターされる。
【0014】
液体試料7が入れられた試料セル8の上面は、レーザー光が照射できるように窓ガラス19になっている。また内部には、ペルチェ素子等の冷却機構20によって冷却可能な試料ホルダ21が設けられていて、冷却電源22からの電力供給によって、液体試料7を冷却可能に保持している。
【0015】
冷却部11の外周面にはパイプ状をした冷媒流路23が巻回されていて、冷却部11の器壁を常時例えば2〜3℃に冷却している。冷却部11の底部には、冷却部11の壁面に結露する液体を排出するためのドレイン24が設けられている。
【0016】
なお、試料セル8と冷却部11からの廃液は、キャリアーガスが逃げないような、例えば脈流ポンプ等(図示しない)で排出される。
【0017】
二次イオン化室12の内部には、針状の放電電極25があって、微粒子状の試料をイオン化するための役割が与えられている。放電電極25には、高圧電源26から3kV程度の高電圧がかけられていて、先端部でコロナ放電が起きるようになっている。放電電極25のコロナ放電によってイオン化された微粒子状の試料は、二次イオン化室12の内部に設けられた円盤状のリタード電極27、円筒状のドリフト電極28、円盤状のレンズ電極29、及び、円錐状のサンプリング電極30によって形成される軸対称の電界の作用によって、質量分析計13のオリフィス31(イオン流入孔)に集中的にフォーカスされて、質量分析計13に導入される。
【0018】
質量分析計13と二次イオン化室12との間には、質量分析計12の真空度を維持するため、差動排気壁32が用いられている。
【0019】
かかる構成において、液体試料7は、試料ホルダ21上で冷却機構20によって冷却され、適度の粘性と硬さを与えられている。レーザー14がこの液体試料7を光照射すると、液体試料7の一部が気化し、微粒子状になって舞い上がる。
【0020】
舞い上がった微粒子状の液体試料は、ヘリウムやアルゴンなどのイオン化ポテンシャルの高いキャリアーガスによって運ばれて、冷却部11に流入する。
【0021】
冷却部11に流入した微粒子の中に含まれている溶媒は、冷却部11の低温の器壁に接することによって、壁面に結露し、微粒子の脱溶媒化が起きる。壁面に結露した溶媒は、冷却部11の底部に設けられたドレイン24から、冷却部11の外部に排出される。
【0022】
こうして脱溶媒された微粒子状の試料は、キャリアーガスとともに二次イオン化室12に流入し、針状の放電電極25のコロナ放電によってイオン化される。そして、生成された試料イオンは、質量分析計13に導入されて質量分析が行なわれる。
【0023】
なお、図示しないが、試料ホルダ21に溝を設け、そこに試料セル8の外部からの配管を通して液体クロマトグラフィの溶離液を流せば、本装置をLC/MSとして用いることもできる。また、液体試料の粘性がもともと高い場合、冷却機構20が不要の場合もある。
【0024】
【発明の効果】
本発明の結果、大気圧下での液体試料のレーザーイオン化が可能となり、液体試料を効率よく質量分析できるようになった。また、LC/MSとしての構成も可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の実施例を示す図である。
【図2】本発明の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
1・・・レーザー、2・・・集光レンズ、3・・・サンプルスライド、4・・・試料混合物、5・・・イオン加速器、6・・・検出器、7・・・液体試料、8・・・試料セル、9・・・集光系、10・・・観測系、11・・・冷却部、12・・・二次イオン化室、13・・・質量分析計、14・・・レーザー、15・・・集光レンズ、16・・・ハーフミラー、17・・・CCDカメラ、18・・・ディスプレイ、19・・・窓ガラス、20・・・冷却機構、21・・・試料ホルダ、22・・・冷却電源、23・・・冷媒流路、24・・・ドレイン、25・・・放電電極、26・・・高圧電源、27・・・リタード電極、28・・・ドリフト電極、29・・・レンズ電極、30・・・サンプリング電極、31・・・オリフィス、32・・・差動排気壁。

Claims (4)

  1. 液体試料にレーザー光を照射するための集光系と、
    液体試料を冷却し、凍結固化ないし高粘性化させるための試料ホルダと、
    前記凍結固化ないし高粘性化させた液体試料を、キャリアーガス下、レーザー光照射によって気化させるための試料セルと、
    気化した液体試料を脱溶媒するための冷却部と、
    脱溶媒された液体試料をイオン化するための二次イオン化室と、
    試料イオンを質量分析する質量分析計と
    から成り、
    前記試料セル、冷却部、二次イオン化室、質量分析計の間は、キャリアーガスの流路で連通されており、該キャリアーガスは、試料セルから、冷却部、二次イオン化室、質量分析計の順に流れるように構成されていることを特徴とする大気圧レーザー化質量分析装置。
  2. 前記液体試料は、液体クロマトグラフィからの溶離液である請求項1記載の大気圧レーザー気化質量分析装置。
  3. 液体試料を冷却することによって凍結固化ないし高粘性化させ、キャリアーガス下、その試料にレーザー光を照射することによって試料を気化ないしイオン化させるようにした大気圧レーザー気化質量分析法であって、
    該キャリアーガスは、試料セルから質量分析計に向けて流れるように構成されていることを特徴とする大気圧レーザー化質量分析法。
  4. 前記液体試料は、液体クロマトグラフィからの溶離液である請求項記載の大気圧レーザー化質量分析
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