JP3591716B2 - 融雪装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、融雪装置、詳しくは、降雪地域における車道、歩道、駐車場等の積雪や凍結を防止するために敷設される融雪装置に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】
降雪地域の道路等では、路面への積雪や凍結が発生し、危険であるばかりか、交通機関の渋滞を引き起こし、ひいては物流経済の停滞を招いている。
【0003】
このような路面の積雪や凍結を防止するために、機械的な除雪以外に種々の工夫がなされている。その一例として、ニクロム線等を媒介とした電気発熱装置を路面に埋設する方法が挙げられる。
【0004】
従来の電気発熱装置としては、実用新案登録第3006758号公報に記載されているように、線状発熱体を繊維構造体で被覆したロードヒータが知られている。しかし、このヒータは1本の長尺物を引き回しつつ、適宜位置で固定しながら敷設する必要があり、敷設作業が非能率であった。また、1本の長尺物では電気抵抗の増大を防止するためにどうしても径が太くなり、これでは屈曲性がなくなって折れやすく、さらに、1箇所でも断線すると全体として使用不能になるという問題点をも有していた。
【0005】
さらに、特開平10−106729号公報に記載されている面状発熱体、即ち、導線を蛇行させて可撓性エポキシ樹脂で被覆したマット状の発熱体が知られている。この面状発熱体はコンクリートの基層とアスファルトの表面層との間に敷設される。しかし、基層と表面層とが面状発熱体で完全に分離されるため、路面が強度的に弱くなるという問題点を有していた。また、屈曲性がないため、カーブした道路に沿わせて敷設するという適応性に欠けていた。
【0006】
さらに、特開平9−78517号公報に記載されているように、線状発熱体をネット上に引き回した融雪ユニットも知られている。この融雪ユニットは網目状のネットで構成されているため、道路の基層と表面層との接合力不足といった問題点は解消されている。しかし、屈曲性の点からカーブした道路に沿って敷設しにくいこと、1本の線状発熱体で構成されているために1箇所での断線で全体が使用不能になる問題点は残されている。
【0007】
一方、施工現場では、発熱線と電源コードとを電気的に接続している。しかし、この接続作業はいちいち被覆を剥離して絶縁テープを巻回して絶縁シールしながら接続しなければならず、かつ、発熱線と電源コードの線径が異なるために作業が煩雑であった。しかも、アスファルトの熱や荷重で絶縁不良が生じるおそれも有していた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、屈曲性を有し、道路の基層と表面層との接合性を損なうことがない融雪装置を提供することにある。本発明の他の目的は、1箇所の断線でも全体がダウンしない融雪装置を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、現場での作業性が良好で絶縁破壊のおそれのない融雪装置を提供することにある。
【0009】
【発明の構成、作用及び効果】
以上の目的を達成するため、本発明に係る融雪装置は、略U字形状に屈曲され、両端部分以外が移動自在な少なくとも2本の発熱線と、各発熱線の両端部分を固定、保持する固定部材と、該固定部材内において発熱線の端部を電気的に接続する接続線とを備えたことを特徴とする。
【0010】
以上の構成からなる本発明においては、略U字形状に屈曲された少なくとも2本の発熱線はその両端部分が固定部材によって固定、保持され、他の部分は移動自在であるため、発熱線の端部が固定されて整列状態を保ち、道路等のカーブに沿って敷設することが可能である。しかも、道路の基層と表面層との接合を損なうことがなく、表面層の強度を低下させることがない。
【0011】
さらに、前記本発明では、複数の発熱線を使用しているため、接続線を介して電気的に並列回路を構成することにより、全体としての電気抵抗の増大が抑えられるために発熱線の大径化を来すことがなく、しかも、その1本に断線を生じたとしても全体が使用不能となるおそれが解消される。
【0012】
さらに、各発熱線の端部を接続線及び電源コードと圧着端子によって前記固定部材内において予め電気的に接続しておけば、施工現場において配線を行うという煩雑な作業を省略することができる。しかも、固定部材をゴム製や樹脂製とすれば、絶縁性、耐荷重性が良好となる。
【0013】
さらに、前記固定部材がゴムや樹脂で製作する際、各発熱線の端部を接続線及び電源コードと予め接続しておき、これらの接続部分を含めてゴム又は樹脂で被覆し、一体的に成形することができる。固定部材をこのように製作すれば、電気的接続部分がゴムや樹脂内に埋設され、絶縁性等が確実に保障されることになる。
【0014】
【発明の実施形態】
以下、本発明に係る融雪装置の実施形態につき、添付図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態、図1〜6参照)
本発明の第1実施形態である融雪装置1は、図1に示すように、所定の間隔で互いに平行状態に並べられた複数の発熱線10と、各発熱線10の両端部分を固定、保持するための固定部材20と、各発熱線10の中間部分を所定の間隔に保持するための略棒状の補助固定部材30と、電源コード35とで構成されている。
【0016】
各発熱線10は、図2に示すように、中心部から外側に、発熱体11、絶縁体12、シース13、ブレード14にて構成されている。さらに、発熱体11は芯線11aと発熱抵抗線11bとからなる。芯線11aは耐熱性で高強度を有する糸であり、芳香族ポリアミド繊維(例えば、デュポン社から商品名ケブラーとして販売されているもの)やグラスファイバーを使用することが好ましい。
【0017】
発熱抵抗線11bは芯線11aの外周面にスパイラル状に巻回したもので、マイクロメタルファイバー、例えば、日本精線株式会社製ステンレス鋼繊維(商品名:ナスロン)を使用することができる。本第1実施形態では、芳香族ポリアミド繊維からなる芯線11aの外周面に、前記ステンレス鋼繊維(直径12μm×100本を1本として)を8本並べてスパイラル状に巻回した。なお、発熱抵抗線11bとしては、ニッケルクロム線、銅線、銅ニッケル線等を使用することもできる。
【0018】
絶縁体12は耐熱性のゴム材が好ましく、例えば、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴムを使用することができる。シース13も絶縁性を有する材料、例えば、クロロプレンゴムが好適である。ブレード14は外圧や引っ張り力に対応するため、ステンレスワイヤからなるメッシュを使用することが好ましい。
【0019】
固定部材20は、ゴム材あるいは樹脂材からなり、各発熱線10の両端部を固定、保持している。補助固定部材30は、ゴム材あるいは樹脂材からなり、図3に示すように、切欠き部31に前記発熱線10を嵌合状態で保持する。この補助固定部材30は複数の発熱線10を所定の間隔に保持するために使用されるものであり、その設置個数は任意である(図1参照)。
【0020】
また、各発熱線10は、図4に示すように、固定部材20の内部において、3本を一組として並列に電気的に接続されている。即ち、各発熱線10の端部には端子15が取り付けられ、接続線16によって配線されている。また、電源コード35とも端子15で配線されている。端子15として圧着端子を使用すれば、接続作業が容易である。しかも、施工前に予め工場で配線しておくことにより、現場での配線作業が不要であり、配線のチェックも確実なものとなる。
【0021】
また、固定部材20はゴム製あるいは樹脂製とされているため、絶縁性を確保できることは勿論、道路等に敷設した際の表面層(アスファルト)からの荷重にも耐えることができる。
【0022】
ところで、固定部材20は、図示しない金型内に、各発熱線10の両端部を接続線16及び電源コード35と電気的に接続した状態で挿入したうえ、金型内に未加硫ゴム生地を充填し、プレス成形により加硫成形したものである。従って、各発熱線10の両端接続部分はゴム層内に埋設されて確実に固定、保持されることになる。
【0023】
また、固定部材20は、前記プレス成形に限らず、ゴム材あるいは樹脂材を射出成形法等によって発熱線10の両端接続部分を被覆した状態に一体的に成形したものであってもよい。
【0024】
以下に示す表1は本発明者らが実際に製作し、実験を行った2種類の仕様表であり、実施例1は全長が2mタイプ、実施例2は4mタイプで、いずれもワット密度が300W/m2とされている。
【0025】
【表1】
【0026】
次に、以上の構成からなる融雪装置1を模型的に製作したアスファルト道路に埋設し、発熱線10上と発熱線10間のそれぞれの温度の上昇具合を測定した結果を図5に示す。この測定は、図6に示すように、発熱線10を深さ2cmでアスファルトの表面層51の下に敷設して行われた。なお、符号52はコンクリート製の基層である。
【0027】
以上の融雪装置1においては、複数の発熱線10及び補助固定部材30の間にアスファルトが充填されるため、基層と表面層との接合性を損なうことがなく、表面層の強度を充分に保持することができる。また、発熱線10の間隔は補助固定部材30によって所定の間隔に保持されているために施工が容易であると共に、全体としての屈曲性をも保持し、カーブした道路に沿って敷設することも容易である。
【0028】
また、複数の発熱線10を電気的に並列回路を構成するように接続しているため、全体としての電気抵抗の増大が抑えられ、発熱抵抗線11bの大径化を来すことがなく、しかも、1本の発熱線に断線が生じたとしても他の発熱線の機能が損なわれることはなく、全体が使用不能となるおそれはない。
【0029】
(第2実施形態、図7参照)
本発明の第2実施形態である融雪装置60は、図7に示すように、略U字形状に屈曲された2本の発熱線10と、各発熱線10の両端部分を固定、保持するための固定部材20とからなり、電源コード35及び接続線16は各発熱線10の端部に圧着端子15によって接続されている。この配線は2本の発熱線10が並列回路となるように構成され、図7に示す1ユニットの融雪装置60を複数ユニット敷設した場合、1本の発熱線10が断線しても他の発熱線10には影響を及ぼさないようになっている。但し、2本の発熱線10は直列回路となるように配線されていてもよい。また、前記第1実施形態で示した補助固定部材30を使用してもよい。
【0030】
本第2実施形態で使用されている発熱線10や固定部材20は前記第1実施形態で説明したものと同様であり、その説明は省略する。また、第2実施形態の作用効果も基本的には前記第1実施形態と同様である。
【0031】
(発熱線と固定部材の接合部の耐屈曲性)
前記第1,2実施形態では、発熱線10の端部はゴム製あるいは樹脂製の固定部材20に接続、固定されている。そこで、本発明者らは、発熱線10の固定部材20への接続部分を角度約100°で左右に首を振るように、1000回、10000回、50000回屈曲させ、その後の状態を調べた。結果を表2に示す。なお、実験に用いた固定部材20はゴム製であり、発熱線10は前述した芳香族ポリアミド繊維とマイクロメタルファイバーとの組み合わせからなる。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から明らかなように、50000回の屈曲後であっても、抵抗値の変化はなく、絶縁抵抗値及び外観に異常はみられなかった。
【0034】
なお、本発明に係る融雪装置は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0035】
特に、寸法的には前記実施例1,2以外にも道路状況や発熱性能に合わせて任意に設定することができる。また、発熱線の構造や電気的配線も任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である融雪装置を示し、(A)は正面図、(B)は平面図。
【図2】前記融雪装置を構成する発熱線を示す斜視図。
【図3】前記融雪装置の補助固定部材を示す斜視図。
【図4】前記融雪装置における発熱線の電気的接続状態を示す説明図。
【図5】前記融雪装置の昇温特性を示すグラフ。
【図6】前記昇温特性を測定したときの状態を示し、(A)は断面図、(B)は平面図。
【図7】本発明の第2実施形態である融雪装置を示す平面図。
【符号の説明】
1,60…融雪装置
10…発熱線
11…発熱体
11a…芯線
11b…発熱抵抗線
15…圧着端子
16…接続線
20…固定部材
30…補助固定部材
35…電源コード
Claims (5)
- 略U字形状に屈曲され、両端部分以外が移動自在な少なくとも2本の発熱線と、
前記各発熱線の両端部分を固定、保持する固定部材と、
前記固定部材内において前記発熱線の端部を電気的に接続する接続線と、
を備えたことを特徴とする融雪装置。 - 前記発熱線は地中に埋設されるものであることを特徴とする請求項1記載の融雪装置。
- 前記発熱線は互いに並列回路を構成するように電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の融雪装置。
- 前記各発熱線の端部は接続線及び電源コードと圧着端子によって前記固定部材内において電気的に接続されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の融雪装置。
- 前記固定部材は、各発熱線の端部を接続線及び電源コードとの接続部分を含めてゴム又は合成樹脂にて被覆し、一体的に成形されたものであることを特徴とする請求項4記載の融雪装置。
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