JP3591094B2 - 空気抵抗低減装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気抵抗低減装置に係り、特に、トラック等の車両に適用されて、その荷台前面に受ける空気の抵抗を低減する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、図10を用いて、上記装置を有しない通常のトラックにおける、走行中の空気の流れについて説明する。なお、ここで例示するトラックは、キャブの後方に箱(バン)型荷台を備え、その荷台がキャブルーフより高い位置に突出するタイプのものである。
【0003】
キャブa前面に当たってルーフb上にはね上げられた空気流f1 は、そのルーフb上にて渦r1 を発生させる。他方、渦r1 の上方の流れf1 は荷台cの前面部dに衝突する。そしてこの衝突した流れf1 は、衝突部eにてせき止められて流速がゼロとなり、流速による速度エネルギの圧力エネルギへの変換により、衝突部e付近に高圧を発生させる。この高圧は、トラックgの走行方向と反対方向の抗力を発生させ、この抗力が空気抵抗の大きな要因となる。
【0004】
衝突部eにてせき止められた流れf1 と、さらにその上方の流れf2 とは、荷台前面部dの上端縁hで剥離して荷台c上で剥離渦r2 を生じさせる。この剥離渦r2 に基づく剥離域の遅い流れは、後流中では流体の運動量の欠損として観測され、結果としてトラックgに対し抵抗として作用することになる。つまり、運動量保存の法則より、流体の単位時間当りの運動量変化は、その流体が受ける力に等しく、トラックgは流体即ち空気流f1 ,f2 の運動量を減小させた分、その空気流f1 ,f2 に力を加え、加えた力の反作用として抵抗力を受けることになる。
【0005】
このようなトラックの荷台が受ける空気抵抗を低減するための従来装置を以下に示す。
【0006】
図11に示すのはエアディフレクタ(以下エアデフという)iと称されるもので、これはルーフb前端縁と荷台前面部上端縁hとを結ぶ傾斜面jを有した、キャブルーフb上に設けられる略三角箱状のものである。エアデフiは、その外形形状が略流線形に仕上げられて流れを整流し、流れの淀み点となる上記衝突部eの高圧発生と、荷台c上の剥離に基づく後流中運動量欠損による抵抗の発生とを防止するようになっている。
【0007】
また、図12に示すのはフェンスkと称され、これは平板l1 ,l2 を水平及び垂直に井桁状に組んで荷台前面部dに装着するものである。これにおいては、図15に示すように、荷台前方から対向してくる流れf3 の一部が、水平平板l1 の前端縁で剥離して荷台前面部dとの間で渦r3 を生じさせる。そしてこの渦r3 は負圧を発生させ、つまりトラックgの走行方向に向かう圧力を発生させて上記衝突部eでの高圧発生を防止する。一方、渦r3 の上を通過する流れf3 は荷台上面部mに沿う流れとなり、これによって上記剥離の発生も減少させ、抵抗を低減できる。このような整流効果は、荷台c側部においても上下に延びた垂直平板l2 によって同様に起こる。なお、このフェンスに関連する従来の報告としては、SAE paper 931893、実開昭62−184092 号公報及び特開昭60−110575 号公報がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来装置には以下のような欠点がある。
【0009】
(1)エアデフ
▲1▼大型で重量がかさみ、且つ高価である。
【0010】
▲2▼荷台側部での整流効果を期待できない。
【0011】
図13に示すように、通常の小型・中型トラックでは、キャブaのルーフbがフロア側に比べ幅狭になっており、エアデフiの幅w1 は、そのルーフの幅w2 を超えることが法規制上許されていない。ルーフの幅w2 は荷台の幅w3 に比べかなり小さいため、エアデフiの側方には比較的大きい空間が存在し、この空間がエアデフiのない状態を作って空気流の衝突や渦の発生を起こさせる。
【0012】
▲3▼荷台の高さが高い場合、エアデフの装着が実質上不可能となる。
【0013】
これは、荷台上面部の高さ位置がキャブルーフの高さ位置よりもかなり高い場合に生ずる問題で、キャブルーフの前端と荷台前面部上端とを結ぶようにエアデフを形成しようとすれば、エアデフを縦長な巨大なものとせざるを得ず、上記▲1▼の欠点を増長しかねない。これに対し、図14(a)に示すように、エアデフiの大きさを、荷台前面部上端hに届かない大きさで済まそうとすれば、荷台前面部dにエアデフiで覆われない部分ができてしまい、その効果をあまり期待できない。また、図14(b)に示すように、仮にエアデフiを巨大としても、その上端部付近で傾斜面jの曲りがきつくなって荷台上面部で剥離域(剥離渦r2 )ができ易くなる問題が生ずる。
【0014】
▲4▼車種に応じて寸法を最適化した、複数のバリエーションを用意することは実際上困難である。なお、荷台の高さに応じて傾斜面角度を調節できるものもあるが、構造が複雑で高価となる。
【0015】
(2)フェンス
フェンスはエアデフの上記欠点をある程度緩和するもので、即ち平板のみで構成されるため小型・軽量且つ安価であり、垂直平板で荷台側部での整流効果を発揮すると共に、荷台の高さによらず装着でき、平板の長さを調節するだけで広汎な車種に対応できるといったメリットがある。そしてフェンスは、局所的な流れの方向を変化させるため、荷台の高さによらない整流効果を発揮することができる。
【0016】
しかしながら、以下のような欠点も存在する。
【0017】
▲1▼図15に示すように、水平平板l1 の下側に淀み点としての衝突部sができてしまい、高圧が発生する。
【0018】
▲2▼荷台上面部mに剥離域tがやや残る。
【0019】
▲3▼水平平板l1 の上側にくる流れf3 は、流れの平均水平傾角が非定常に変化し、即ちf4 とf5 の状態を交互に非定常にとるため水平平板l1 に一定角度で流れを与えられないので、効果も低減する。(以上、▲1▼,▲2▼は垂直平板についても言えることである)
これらの理由から、フェンスの場合、空気抵抗低減効果が最適形状のエアデフに比べ20〜30%劣ることが、模型又は実車による風洞実験、及び実走試験結果等から確認されている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、荷台と、該荷台の前方に離隔して設けられ、上記荷台の上面より高さ位置の低い上面を有するキャブと、上記荷台の前面上部に前方に突出して設けられ、上記キャブから離隔された架装物とを有する車両にて、それら荷台前面及び架装物前面に受ける空気の抵抗を低減する装置において、上記架装物の前端部且つ上端部のコーナー部に凹部を形成し、該凹部を、上記架装物の上面から所定距離だけ下方に延びる前面形成部と、該前面形成部の延出端から前方に延出する延出部と、該延出部の前端に形成され所定角度だけ下方に屈折された屈折部とから構成し、上記キャブの上面前部であって、上記屈折部から離隔したその屈折部の前方下部の位置に、上記屈折部に空気を導く導風板を設けたものである。
【0023】
この構成は、特に荷台前面に架装物が設けられた車両に適用される。延出部と屈折部とは、キャブに設けられた導風板とともに空気抵抗を効果的に低減する。特に、延出部と屈折部とからなる凹部は架装物に一体的に形成される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0025】
図1は、本発明に係る空気抵抗低減装置が装備されたバン型トラックを示す斜視図である(トレーラートラクタにおいても同様である)。
【0026】
図示するように、トラック1は、キャブ2の後方に箱(バン)型荷台3を有し、荷台3は、トラック即ち車両長手方向に長い直方体形状とされている。荷台3は所定の幅W3 を有し、その幅W3 はキャブルーフ(屋根)2aの幅W2 より大きい。荷台3の上面部3aの高さ位置H3 は、キャブ2のルーフ(屋根)2aの高さ位置H2 より高い位置に設定されている。これによって荷台3は、キャブルーフ2aよりも高い位置に突出するようになり、キャブ2は、荷台前面部3bの上端縁3dから下方乃至高さ中心側に隔てられた位置にて前方に突出するようになる。
【0027】
キャブ2のルーフ2a上で且つ荷台前面部3bの前方の空間には本発明に係る空気抵抗低減装置4が配置されている。空気抵抗低減装置4は、荷台前面部3bから前方に延出された第1の導風板5と、キャブルーフ2aから斜め後方に起立された第2の導風板6とから主に構成される。
【0028】
第1の導風板5は、金属、樹脂或いはプラスチック等の矩形平板を折曲成形して一体的に形成される。第1の導風板5は、荷台前面部3bの上端近くに取り付けられると共に荷台3の幅方向に沿ってその全長に亘り延出され、その後端部が荷台前面部3bに重ねて取り付けられて取付部5aを形成する。図2にも示すように、取付部5aからは前方に向けて略直角の角度で折曲げられ、これにより取付部5aに連続する略水平部5bが一体的に形成される。略水平部5bより前方の部分は斜め下方に所定の角度で折曲げられ、これにより略水平部5bに連続する屈折部5cが一体的に形成されることになる。これら取付部5a、略水平部5b及び屈折部5cの前後長乃至前後幅は荷台幅方向に沿って一定である。
【0029】
第2の導風板6も前記同様、金属、樹脂或いはプラスチック等の矩形平板により一体的に形成される。そして第2の導風板6は、キャブルーフ2aの前端縁2bに沿って接続されると共にその全幅に亘り延出され、その前後長乃至前後幅はキャブルーフ2aの幅方向に沿って一定である。
【0030】
ここで、これら第1の導風板5及び第2の導風板6の各寸法の決定方法について説明する。なおここでは、図2に示すトラック1の側面図を参照されたい。
【0031】
▲1▼ キャブルーフ2aの前端縁2bと荷台前面部3bの上端縁3dとに接する(つまり各コーナーに接する)仮想線Lsを考える。
【0032】
▲2▼ キャブルーフ2aの前端縁2bと荷台前面部3bとの間の距離をLとして、第1の導風板5の略水平部5bの前後長L1 を次式により定める。
【0033】
0.15L≦L1 ≦0.25L …(1)
▲3▼ 仮想線Ls上に一端P1 を有し、荷台前面部3b上に他端P2 を有する水平仮想線LH を仮定し、このLH の長さが(1) 式によるL1 の長さと等しくなるよう、P2 の位置を決定する。そしてこのP2 の位置を、略水平部5bの後端の位置とする。なおこのときのP2 と荷台前面部3bの上端縁3dとの距離をhとする。
【0034】
▲4▼ LH に対する略水平部5bの傾斜角αを、図3に示すL1 との関係から定める。
【0035】
▲5▼ 次に、屈折部5cの前後長L2 を次式の通りとする。
【0036】
L2 =0.2L …(2)
▲6▼ 屈折部5cの略水平部5bに対する傾斜角βを次式の通りとする。
【0037】
40≦β≦50(°) …(3)
▲7▼ さらに、第2の導風板6の前後長L3 を次式により定める。ここでHは、キャブルーフ2aと荷台上面部3aとの間の高さ方向の距離である。
【0038】
S=√(L2 +H2 )
0.25S≦L3 ≦0.3S …(4)
▲8▼ 第2の導風板6のLsに対する傾斜角δを以下の通りとする。
【0039】
5≦δ≦9(°) …(5)
以上の結果は風洞実験等により得られたもので、これらに基づき第1の導風板5及び第2の導風板6の各寸法を決定することで、各パラメータの変動にそれ程影響を受けない、常に安定した一定の効果を得ることができる。
【0040】
こうして、第1の導風板5においては、略水平部5bが、荷台前面部3bの上端縁3dから高さ中心側にhだけ隔てられた位置で前方に延出され、屈折部5cが、略水平部5bの前端にて所定角度βだけ高さ中心側に屈折されるようになる。そして第2の導風板6は、キャブルーフ2aの前端縁2bにて、屈折部5cの斜め下前方で斜め上後方に起立されるようになる。
【0041】
次に図4は、第1の導風板5の荷台前面部3bへの取付方法を示す図で、第1の導風板5の取付部5aには、荷台幅方向に沿った所定間隔でスタッドボルト11が取り付けられている。またスタッドボルト11の位置に対応して、荷台前面部3bにはボルト挿通孔7が設けられる。スタッドボルト11は、外側パッキン8を介してボルト挿通孔7に荷台3外側から差し込まれ、荷台3内側から内側パッキン9を介してナット10が締め込まれることで、第1の導風板5を固定する。
【0042】
また図5は第2の導風板6の取付方法を示す図で、ここで第2の導風板6はキャブルーフ2aに取付部材12を介して取り付けられるようになっている。取付部材12はその基端部に、車両長手方向に延出する挟持部12aを有する。挟持部12aの断面は二股状に形成され、その内面はキャブルーフ2aの側端縁部2cに適合する形状とされる。そして挟持部12aは、キャブルーフ2aの側端縁部2c即ちレインガターを外側から挟持し、複数のボルト13で上下から固定されることになる。挟持部12aには、キャブルーフ2a上を幅中心側に延出して上方に延びる延出部12bが接続され、さらに延出部12bの先端乃至上端部には第2の導風板6を実質的に取り付ける取付部12cが形成される。取付部12cは第2の導風板6を前述の角度で傾斜させるよう傾けられている。そして取付部12cの孔12dには下方からボルト14が挿通され、ボルト14は第2の導風板6の裏面部の厚肉部6aに形成されたネジ付穴6bに締め込まれて第2の導風板6を固定する。なお仮想線でドア15を示す。
【0043】
次にかかる装置4による空気の流れについて説明する。
【0044】
図6に示すように、キャブ2前面に当ってはね上げられた空気流F1 は、そのまま第2の導風板6に案内されて且つそれに沿って流れるようになる。そしてその空気流F1 は第2の導風板6の上端縁6cから離脱し、後方に移動してこんどは第1の導風板5の屈折部5cに到達する。このとき、空気流F1 は屈折部5cに斜めに衝突するため、衝突によって流速がゼロとはならず高圧も発生しない。従って空気抵抗の増加も非常に少ないものとなる。なお、空気流F1 の一部は第2の導風板6の上端縁6cからの離脱に伴い剥離し、第2の導風板6の後方で渦S1 を生じさせる。
【0045】
屈折部5cに衝突した空気流F1 は、そのまま屈折部5cに沿って斜め上方にはね上げられる。そしてその一部は屈折部5c及び略水平部5bの接続点で剥離し、略水平部5b上且つ荷台前面部3bの前方の空間にて渦S2 を生じさせる。この渦S2 が負圧を発生させ、空気抵抗を低減するのはフェンスの場合と同様である。さらに、屈折部5cにてはね上げられた空気流F1 は、屈折部5cの角度設定により従来のフェンス平板の場合(f3 で示す)よりも前方に案内され、それよりも上方の空気流F2 により下方に押し下げられ、荷台前面部3bの上端縁3d付近の位置では、水平方向即ち荷台上面部3aに沿う流れに流向が変更される。これにより、空気流F1 の荷台上面部3aでの剥離域の発生は防止される。
【0046】
本装置4では、第2の導風板6が空気流F1 を常に安定した角度で屈折部5c(又は略水平部5b)に案内するため、流向が安定し、従来フェンス平板の下側に流れ込んでいたような流れや、水平平板の上側と下側に交互に向く非定常な流れを防止できる。そして第2の導風板6後方の渦S1 により、このような空気流F1 の屈折部5cへの案内を助長することができる。
【0047】
また図7に示すように、荷台3側部においては、第1の導風板5が荷台3全幅に亘り延出されるため、これに導かれた空気流F3 が、荷台側面部3cの表面に沿う流れに変更されて剥離なくスムーズに流れることも、実験結果により確認されている。従って本装置4は、荷台3側部における空気抵抗の低減にも効果を発揮するものである。
【0048】
図8には、従来装置と本装置4との性能を比較したグラフを示し、縦軸には装置無の通常のトラックに対するCd低減率ΔCdがとってある。これから分かるように、フェンスの場合エアデフに比べΔCd値がかなり落ち込むのに対し、本装置4の場合はエアデフよりも高いΔCd値が得られ、良好な性能を得られるものである。
【0049】
このように、かかる装置4によれば、従来のフェンスに生じていた前述の欠点▲1▼〜▲3▼を解消することができ、またフェンスと同様な簡単な構成のためエアデフの欠点も解消できて、小型・軽量且つ安価で、荷台の高さに制約を受けず、広汎な車種に長さ調節のみで適用可能な装置とすることができる。換言すれば本装置4は、フェンスの利点を損わずにその欠点を解消し、同時にエアデフと同等以上の性能を得られるものである。
【0050】
次に、図9には変形例を示す。これにおいては、トラック1の外観スタイル(デザイン)にマッチ(適合)するよう、第1の導風板5と第2の導風板6とにより流線的で立体的なフォルム(形状)が与えられている。ここで注目すべきは、第1の導風板5と第2の導風板6とに側壁部5d,6dが形成されている点である。図7に示すように、上記装置(側壁部無し)の実験結果によれば、流れF 3 の流線パターンは第1の導風板5の側方で既に荷台側面部3cに沿う流れとなっているため、側壁部5d,6dを有する本装置の場合にも流線はあまり変化せず、よって空気抵抗低減効果もそれ程変化しないことが予想される。一方、側壁部5d,6dによって美観や取付強度等の向上が図れるため、この点で本装置は有利である。なお本装置による第1の導風板5と第2の導風板6とは樹脂やプラスチック等による中空の一体成形品である。
【0051】
そしてまた、本装置の適用例として以下のようなものもある。
【0052】
一般に、冷蔵車や冷凍車として用いられるトラックにおいては、冷蔵・冷凍室を形成する荷台(冷蔵・冷凍コンテナ)の前面部に、エバポレータ(蒸発器、庫内側冷却器)が設けられる場合が多い。
【0053】
図16はこのようなトラックgを示し、その荷台前面部dに設けられたエバポレータカバー(以下エバポカバーという)n内にエバポレータ(図示せず)が収容されている。エバポカバーnはエバポレータを保護すると同時に、空気抵抗の低減や外観向上等も図っている。しかし、これによってもやはり空気流動の大きな妨げになることは免れない。
【0054】
つまり、走行中の空気の流れは図示する通りである。キャブa前面に当たってはね上げられた空気流f6 は、エバポカバーnの前面に衝突し淀み点pを形成する。この淀み点p近傍が高圧となるため、これが空気抵抗の大きな要因となる。また、図示例ではエバポカバーnの前面上端が角ばっており、この角部で流れf6 が剥離するため、荷台c上面部で剥離域tが生じ、これが後流中の運動量損失となって空気抵抗を増大させる。
【0055】
一方、キャブルーフb上を通過する別の空気流f7 は、エバポカバーnの存在により上方への抜けが遮られ、キャブaと荷台cとの隙間に入り込んで下方に向かい、隙間の最下端から車両床下qに噴出するようになる。
【0056】
しかし、この噴出流f8 によって、車両床下qの流れは大きく乱されてしまい、結果的に走行安定性の悪化という別の事態を招いてしまう。即ち、走行中、好ましくは車両床下qにて空気流をスムーズ且つ高速に通過させ、車両床下qの圧力を下げ、揚力発生を防止しタイヤの接地圧を高める訳であるが、噴出流f8 は、車両床下qのフレーム、サスペンション、タイヤ等に衝突して車両床下qの流れを大きく乱す。こうなると空気流が高速とならないため床下の圧力上昇を招き、これが揚力となってタイヤの接地圧を低下させ、走行安定性(直進安定性)を悪化させてしまう。なお、噴出流f8 自体が下向きに噴出されるため、これのみによっても揚力発生の原因となる。
【0057】
また、図17に示す如く、エバポカバーnを全体として曲面構成とし、その前面上端に丸みを持たせた場合、その部分で流れf6 の剥離が緩和され、前述の剥離域は減少して抵抗の低減が認められるものの、依然として小さいながらも剥離域は存在し、淀み点pも存在するため、相当量の抵抗が残存してしまう。また、隙間に入り込んで車両床下qに噴出する流れf7 も依然として残る。
【0058】
一方、これらの問題の解決策として、図18に示すようにエアデフiを装着する方法がある。しかしながら、エアデフiでエバポカバーnを完全に覆うことは実際上困難で、特に図示例の如く、エバポカバーnの上面部が荷台cの上面部より下方に位置する場合、エアデフi、エバポカバーn及び荷台前面部dで囲まれた空間に剥離による渦r4 を生じ、これが抵抗の原因となる。また、エアデフiの大型で重く高価という欠点は依然として残る。
【0059】
このように、荷台前面部に、エバポカバー(エバポレータ)を代表とする架装物を設けた場合であっても、空気抵抗の低減及び走行安定性の悪化防止という要請は確実に存在している。
【0060】
そこで、本発明はこのような要請に応え得るもので、本発明の装置を用いれば、確実に空気抵抗の低減が図れ、また、車両床下への噴出流を防止して走行安定性の向上も図ることができる。
【0061】
図19に示すように、荷台前面部3bに設けられたエバポカバー20は、荷台3全幅に亘る略直方体の箱状に形成されている。そしてエバポカバー20の上面部20aは、荷台上面部3aと同一高さに位置されて同一平面を形成している。エバポカバー20の前面部20bは上面部20aに対し垂直な面とされ、前面部20bと上面部20aとは角張った形状で連続され、丸み(アール)は付けられていない。この角が、エバポカバー前面部20bの上端縁20dを形成する。一方、エバポカバー20の下面部20eは、前面部20bから斜め下方に延出され且つ角張った形状で連続されている。
【0062】
このエバポカバー20の前面部20bに、本装置4の第1の導風板5が取り付けられている。またキャブルーフ2aの前端縁2bに、本装置4の第2の導風板6が取り付けられている。第1の導風板5と第2の導風板6とは前記同様に構成され、それらの各寸法や取付位置は、荷台前面部3bの上端縁3dをエバポカバー前面部20bの上端縁20dと置き換えて上記方法により決定される。
【0063】
この場合、空気の流れは図示する通り、前述した流れと同様となる。即ち、キャブ2前面に当ってはね上げられた空気流F3 は、そのまま第2の導風板6に案内されて第1の導風板5の屈折部5cに斜めから衝突する。この斜めからの衝突により、高圧発生が防止されて抵抗が大巾に減小される。この後、空気流F3 は斜め上方にはね上げられ、その一部が屈折部5c及び略水平部5bの接続点で剥離することにより渦S3 を生じさせる。この渦S3 は負圧を発生させて空気抵抗の低減を担う。さらに残りの大部分の空気流F3 は、前記同様に、エバポカバー前面部20bの上端縁20d付近で水平方向の流れとなり、その上端縁20dで剥離を起こすことなく、エバポカバー上面部20a及び荷台上面部3aに沿ってスムーズに流れるようになる。これらによって、空気抵抗を増大させていた要因が全て解消され、大巾な空気抵抗の低減が図れることになる。
【0064】
一方、第2の導風板6に沿う空気流F3 の一部は、第2の導風板6の上端縁6cから剥離して渦S4 を生じさせる。この渦S4 によってキャブルーフ2a上の流れは激減し、これにより車両床下への流れを減少させ走行安定性を向上することができる。或いは、第2の導風板6がキャブルーフ2a上の流れを阻止するついたて板の如く機能し、さらには、第2の導風板6上方の上向きの流れによるエアカーテンを生成する機能を発揮するため、キャブルーフ2a上の流れを阻止し、車両床下への噴出流を減少させるということもいえる。
【0065】
図20は、角に丸み(アール)が付けられた別のエバポカバー21を示し、ここでエバポカバー21においては、前面部21bに対し上面部21a及び下面部21eがそれぞれ湾曲形状で連続されている。このときにも流れは前記同様となり、大巾な空気抵抗低減と走行安定性向上とが同時に達成できる。即ち、エバポカバーの上面部21aにわずかに残っていた剥離域が消失するため、この剥離域が後流中にもたらす運動量欠損に基づく抵抗が減少する。また、エバポカバーの前面部21bに生ずる淀み点が消失するため、淀み点の高圧に起因する抵抗が減少する。
【0066】
図21は、第1の導風板5に相当する構成をエバポカバー22に一体的に付加した例を示している。具体的に説明すると、エバポカバー22の前端部且つ上端部のコーナー部分には、荷台3全幅に亘る凹部23が形成されて、この凹部23の外面形状が部分的に第1の導風板5と同一形状をなしている。より詳細には、凹部23は、第1の導風板5の略水平部5bに相当する略水平部23b(延出部)と、第1の導風板5の屈折部5cに相当する屈折部23cと、上面部22aから略水平部23bの後端縁まで立ち下げられて延出する垂直面部22b(前面形成部)とから構成されている。ここで垂直面部22bは、先の例による荷台前面部或いはエバポカバー前面部に相当する部分となる。屈折部23cからは前面下部22dが斜め下方且つ後方に連続され、これによりエバポカバー22は尖頭状の前面部22cを有することになる。なお、キャブ2の上面前端縁には、第2の導風板6(導風板)がそのまま残される。
【0067】
この例にあっても、空気流の流れは図示するように、図19或いは図20で示したものと同様となる。従って、空気抵抗は確実に低減され、これと同時に走行安定性の確保も達成できる。特にこの例では、架装物たるエバポカバー22を利用して第1の導風板5を一体形成したものであるから、これにより製作コストや取付作業の手間等を大巾に削減できるという効果がある。
【0068】
他にも変形例は様々考えられ、本発明は上記の形態に限定されるものではない。またかかる装置は、トラックに限らず、船舶の上部構造物、建築物、或いは鉄道車両等の他の物体、特に風を受ける前面に突出部を有する物体に適用可能である。そして上記装置を90°回転させて、物体の側部に適用することも可能である。トラックとしては、上記箱形荷台を備えたものに限らず、貯液タンクの如き円柱乃至楕円柱形状の荷台を備えたもの(タンクローリ等)も考えられる。
【0069】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0070】
(1) 従来の空気抵抗低減装置に比べて、簡便、小型、軽量、安価で同等以上の性能を得ることができる。
【0071】
(2) 荷台前面に架装物が存在する場合であっても、空気抵抗の低減が図れ、同時に車両床下への噴出流を防止して走行安定性の向上を図れる。
【0072】
(3) 第1の導風板に相当する構成を架装物に一体的に付加して、製作コストや取付作業の手間等を大巾に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る空気抵抗低減装置が装備されたトラックを示す斜視図である。
【図2】第1の導風板及び第2の導風板の各寸法を示すためのトラックの側面図である。
【図3】αとL1 との関係を示すグラフである。
【図4】第1の導風板の取付方法を示す分解縦断側面図である。
【図5】第2の導風板の取付方法を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】第1の導風板及び第2の導風板による空気の流れを示す側面図である。
【図7】荷台側部における空気の流れを示す平面図である。
【図8】従来装置と本装置とを比較するためのグラフである。
【図9】変形例を示す斜視図である。
【図10】通常のトラックにおける空気の流れを示す側面図である。
【図11】従来の空気抵抗低減装置(エアディフレクタ)が装備されたトラックを示す斜視図である。
【図12】従来の空気抵抗低減装置(フェンス)が装備されたトラックを示す斜視図である。
【図13】エアディフレクタによる空気の流れを示す平面図である。
【図14】荷台の高さが高い場合におけるエアディフレクタの装着例を示す側面図である。
【図15】フェンスによる空気の流れを示す側面図である。
【図16】架装物を備えたトラックにおける空気の流れを示す側面図である。
【図17】別形状の架装物を備えたトラックにおける空気の流れを示す側面図である。
【図18】架装物及びエアディフレクタを備えたトラックにおける空気の流れを示す側面図である。
【図19】架装物を備えたトラックへの本装置の適用例を示す側面図である。
【図20】別形状の架装物を備えたトラックへの本装置の適用例を示す側面図である。
【図21】第1の導風板に相当する構成が架装物に一体的に付加された例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 トラック
2 キャブ
3 荷台
3b 前面部(前面)
3d 上端縁(端縁)
4 空気抵抗低減装置
5 第1の導風板
5b 略水平部
5c 屈折部
6 第2の導風板(導風板)
20,21,22 エバポレータカバー(架装物)
22b 垂直面部(前面形成部)
23 凹部
23b 略水平部(延出部)
23c 屈折部
h 距離
β 角度
Claims (1)
- 荷台と、該荷台の前方に離隔して設けられ、上記荷台の上面より高さ位置の低い上面を有するキャブと、上記荷台の前面上部に前方に突出して設けられ、上記キャブから離隔された架装物とを有する車両にて、
それら荷台前面及び架装物前面に受ける空気の抵抗を低減する装置において、
上記架装物の前端部且つ上端部のコーナー部に凹部を形成し、
該凹部を、
上記架装物の上面から所定距離だけ下方に延びる前面形成部と、
該前面形成部の延出端から前方に延出する延出部と、
該延出部の前端に形成され所定角度だけ下方に屈折された屈折部とから構成し、
上記キャブの上面前部であって、上記屈折部から離隔したその屈折部の前方下部の位置に、上記屈折部に空気を導く導風板を設けた
ことを特徴とする空気抵抗低減装置。
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