JP3590148B2 - 水田用除草剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は2種類の除草活性化合物を併用する水田用除草剤組成物に関する。より詳しく言えば、特定構造の置換ベンゾイルサイクリックエノン誘導体とフェノキシ酢酸系化合物とを有効成分として含む相乗的作用効果を示す薬剤組成物であって、水稲に対する薬害が少なく、少量の適用量で水田中の雑草を枯死に至らしめる水田用除草剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水田用除草剤としては、フェノキシ酢酸系、ジフェニルエーテル系、カ−バメート系、ヘテロ環系、尿素系等、種々の化合物や混合剤が知られている。しかしながら、これらの除草剤は、適用対象となる各種の雑草に対して広く十分な効果をあげるためには比較的多量の有効成分を必要としたり、処理時期、残効性等、水稲作の実際場面における要求を満たすために、毎耕作期、複数回の除草剤処理が必要であった。このため、除草剤コスト、労力の点で問題が多い。
【0003】
本願発明者らは、先に、水田用除草剤として使用したとき、稲に対する安全性が高く、かつ特に稲科の雑草種に対して長期にわたり卓越した効果を示す、下記一般式(I)
【化3】
(式中の記号は後記と同じ意味を表わす。)
で示される置換ベンゾイルサイクリックエノン誘導体(以下、「化合物A」という。)を提案した(特開平6−25144 号)。
しかし、一般式(I)で示される化合物は、生育の進んだ多年生広葉雑草やノビエに対しては必ずしも十分満足できる効果が期待できないことがある。
【0004】
一方、慣用薬剤の中でも比較的古くから知られているものとしてフェノキシ酢酸系除草剤がある。この一群の化合物は、植物ホルモン様物質であり、安息香酸やピコリン酸系の除草剤とともにホルモン型除草剤と呼ばれている。これらは構造上、フェノキシ酢酸またはこれに類する化合物の誘導体である。具体的には次式(II)
【化4】
X−O−Y−CO−Z (II)
(式中、Xは置換されていてもよいフェニルまたは置換されていてもよいナフチル基を表わし、Yは直鎖または分岐鎖の低級アルキレンを表わし、Zは水酸基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基、または低級アルキルもしくはフェニル基で置換されていてもよいアミノ基もしくはメルカプト基を表わす。)で示される構造を有する。
【0005】
市販されているフェノキシ酢酸系除草剤成分としては、
(1)クロメプロップ(Clomeprop )(一般名、以下同じ。):
2−(2,4−ジクロロ−3−メチルフェノキシ)プロピオンアニリド(以下、化合物Bという。) 、
【0006】
(2)ナプロアニリド(Naproanilide):
α−(2−ナフトキシ)プロピオンアニリド(以下、化合物Cという。)、
【0007】
(3)フェノチオール(MCPA−thioethyl):
S−エチル(2−メチル−4−クロルフェノキシ)エタンチオエート(以下、化合物Dという。)、
【0008】
(4)MCPB:
4−(2−メチル−4−クロロフェノキシ)酪酸(以下、化合物Eという。)、
【0010】
(5)2,4−D:
2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(以下、化合物Fという。)。
【0011】
化合物B〜Dは、それぞれ、特開昭 57−171904号、特開昭49−35533号、米国特許3,708,278 号、英国特許758,980 号等に記載されており、また、それぞれ市販され実用に供されている。
【0012】
フェノキシ酢酸化合物は、移植水稲に対して選択性を有する除草剤群であり、ウリカワなどの多年生広葉雑草に対して高活性を示す。しかし、ノビエやカヤツリグサ科雑草、葉齢の進んだコナギに対する効果は低いことが知られている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような水稲作での雑草防除の現状に鑑み、本発明者らが提案した一般式(I)で示される化合物の除草活性スペクトラムを拡大すると共に、より少量の有効成分で、単子葉類、双子葉類のいずれの重要雑草をも的確にかつ長期にわたり防除できる水田用除草剤組成物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、一般式(I)で表される化合物Aと他の除草活性化合物の併用について鋭意研究を続けた結果、化合物Aとフェノキシ酢酸系除草剤化合物の混合物が予想できない驚くべき相乗作用を示し、各々の単剤の使用に比べはるかに少量の施用で水田の重要雑草を的確にしかも一回の処理で長期にわたり防除し、なおかつ水稲に対して害を与えることなく、雑草の発生前から生育期までの幅広い処理時期で使用できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は以下の水田用除草剤組成物を提供する。
1)一般式(I)
【化5】
〔式中、Aは、S(O)nR1基(基中、R1は(i)炭素数2〜3の低級アルコキシカルボニル基で置換されていてもよい低級アルキル基、(ii)シクロアルキル基、(iii)ハロゲン原子、メチル基およびニトロ基のうち同一または異なる基1〜3個により置換されていてもよいベンジル基、または(iv)炭素数1〜2のアルキル基もしくはアルキルスルホニル基により置換されたアミノ基、1〜5個のハロゲン原子または1〜3個の炭素数1〜4個のアルキル基により置換されていてもよいフェニル基を表わし、nは0または2である。)またはOR2基(基中、R2は1〜5個のハロゲン原子および/または炭素数1〜3の低級アルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表わす。)を表わし;Bはハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキル基または低級アルキルスルホニル基を表わし;Dは水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルコキシメチル基または低級アルコキシカルボニル基を表わし;Eはハロゲン原子、1〜3個のフッ素原子によって置換されていてもよい低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基、1〜3個のフッ素原子によって置換されていてもよい低級アルキルスルホニル基または低級アルキルスルホニルオキシ基を表わす。〕で示される少なくとも1種類の置換ベンゾイルサイクリックエノン誘導体と除草活性を有する少なくとも1種類のフェノキシ酢酸系化合物とを有効成分として含有することを特徴とする水田用除草剤組成物。
2)フェノキシ酢酸系化合物が、
(RS)−2−(2,4−ジクロロ−m−トリルオキシ)−プロピオンアニリド、
N−フェニル−2−(2−ナフトキシ)プロピオンアミド、
S−エチル−4−クロロ−o−トリルオキシチオアセテート、
4−(4−クロロ−o−トリルオキシ)酪酸、および
2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択される前記1に記載の水田用除草剤組成物。
3)置換ベンゾイルサイクリックエノン誘導体が、
(1) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−フェニルチオ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(2) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(3−メチルフェニルチオ)ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(3) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−フェニルスルホニル−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(4) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジメチルフェニルチオ)−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(5) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(3−クロロフェニルチオ)−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(6) 3−(2−ニトロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジメチルフェニルチオビシクロ)[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(7) 3−(2−ニトロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジクロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(8) 3−(2−ニトロ−4−メチルチオベンゾイル)−4−(3−クロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、および
(9) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジクロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンから選択される前記1に記載の水田用除草剤組成物。
【0018】
本発明の水田用除草剤組成物に含まれる第一の成分は、上記一般式(I)で表わされる置換ベンゾイルサイクリックエノン誘導体である。一般式(I)中、Aが−S(O)nR1基を表わす場合、R1は以下の(i)〜(iv)のいずれかである。
(i)置換されていてもよい低級アルキル基。アルキル主鎖は好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。好適な置換基としては炭素数2〜3の低級アルコキシカルボニル基が挙げられる。
(ii)シクロアルキル基、好ましくは、炭素数3〜6のシクロアルキル基。
(iii)置換されていてもよいベンジル基。好適な置換基としてはハロゲン原子、メチル基およびニトロ基が挙げられる。これらの置換基のうち同一または異なる基により1〜3個の水素原子が置換されたベンジル基が好ましい。
(iv)置換アミノ基、1〜5個のハロゲン原子または1〜3個の炭素数1〜4個のアルキル基によって置換されていてもよいフェニル基。好適な置換アミノ基としては、炭素数1〜2のアルキル基またはアルキルスルホニル基により置換されたアミノ基が挙げられる。
【0019】
一般式(I)中、AがOR2 基を表わす場合、R2 は置換されていてもよいフェニル基である。R2 の好適な置換基としては、1〜5個のハロゲン原子および/または炭素数1〜3の低級アルキル基が挙げられる。
一般式(I)中、Bはハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキル(好ましくは炭素数1〜2)または低級アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜2)である。
【0020】
また、Dは水素原子、低級アルキル(好ましくは炭素数1〜2)、低級アルコキシ(好ましくは炭素数1〜4)、低級アルコキシメチル(好ましくは炭素数1〜3)または低級アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜5)である。Eはハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルコキシ、低級アルキルチオ(好ましくは炭素数1〜3)、低級アルキルスルホニルまたは低級アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜3)であり、低級アルコキシと低級アルキルスルホニルは、好ましくは1〜3個の炭素数を有し、1〜3個のフッ素原子によって置換されていてもよい。
【0021】
上記一般式(I)で示される化合物のうち、除草活性、殺草スペクトラム、選択性、水に対する溶解度、土壌への浸透性、魚毒性、土壌中の安定性と崩壊性のバランス等から、次式(III)
【化7】
〔式中、A′は−S(O)nR11基(基中、R11は、無置換のフェニル基または1〜5個のハロゲン原子もしくは1〜3個の炭素数1〜4個のアルキル基によって置換されているフェニル基を表わし、nは0または2である。)を表わし;B′はハロゲン原子またはニトロ基を表わし;D′は水素原子を表わし;E′はハロゲン原子または1〜3個のフッ素原子によって置換されていてもよい炭素数1〜3個の低級アルキルスルホニル基を表わす。〕で示される化合物が特に好ましい。
【0022】
好ましい化合物の具体例を挙げれば下記の通りである。
(1) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−フェニルチオ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=C6H5S、B′=Cl、D′=H、E′=CH3SO2の化合物)、
(2) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(3−メチルフェニルチオ)ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=3−CH3C6H4S、B′=Cl、D′=H、E′=CH3SO2の化合物)、
(3) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−フェニルスルホニル−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=C6H5SO2、B′=Cl、D′=H、E′=CH3SO2の化合物)、
(4) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジメチルフェニルチオ)−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=2,6−(CH3)2C6H3S、B′=Cl、D′=H、E′=CH3SO2の化合物)、
【0023】
(5) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(3−クロロフェニルチオ)−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=3−ClC6H4S、B′=Cl、D′=H、E′=CH3SO2の化合物)、
(6) 3−(2−ニトロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジメチルフェニルチオビシクロ)[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=2,6−(CH3)2C6H3S、B′=NO2、D′=H、E′=CH3SO2の化合物)、
(7) 3−(2−ニトロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジクロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=2,6−(Cl)2C6H3S、B′=NO2、D′=H、E′=CH3SO2の化合物)、
(8) 3−(2−ニトロ−4−メチルチオベンゾイル)−4−(3−クロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=3−ClC6H4S、B′=NO2、D′=H、E′=CH3Sの化合物)、
(9) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジクロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン(式(III)で、A′=2,6−(Cl)2C6H3S、B′=Cl、D′=H、E′=CH3SO2の化合物)。
【0024】
これらの化合物は特開平6−25144 号に記載の方法によって合成することができる。
本発明の組成物に含まれる第二の成分は、除草活性を有する少なくとも1種類のフェノキシ酢酸化合物である。かかるフェノキシ酢酸化合物は、前記一般式 (II)で示される。具体的には、上記の化合物B〜Fが挙げられる。
【0025】
本発明による水田用除草剤組成物は、上記の第一成分と第二成分とを混合してなる。
一般に、薬剤化合物を混合することによる除草活性が、個々の化合物による活性の単純な合計(期待される活性)よりも大きくなることを相乗作用という。2種の除草剤の特定の組み合わせにより期待される活性は、次のようにして算出することが出来る。(Colby S.R.除草剤の組み合わせの相乗及び拮抗作用反応の計算「Weed」15巻20〜22頁、1967年を参照。)
【0026】
【数1】
E=α+β−α・β÷10
α:除草剤Aをakg/haの量で施用したときの抑制評価値
β:除草剤Bをbkg/haの量で施用したときの抑制評価値
E:除草剤Aをakg/ha、除草剤Bをbkg/haの量で併用した場合に期待される抑制評価値
【0027】
実際の抑制評価値が、上記計算式による理論値Eより大きいならば、個々の除草活性の単なる和以上の効果が示されたことになる。すなわち、組み合わせによる相乗作用が認められると言うことができる。
後述の通り、本願発明の組成物による雑草抑制率は、種々の雑草に対し理論値よりも大きな値を示しており、広範囲の種の雑草に対し相乗的除草効果が認められる。また、いずれか一方の成分のみの施用では効果が小さく、十分な効果をあげるためには多量の薬剤を必要とし、結果として稲への薬害が避けられないような場合であっても、本願の組成物を用いる場合には、実質的に稲への薬害をもたらすことのない施用量で十分な効果をあげることができる。
【0028】
本願発明組成物における置換ベンゾイルサイクリックエノン誘導体(第一成分)とフェノキシ酢酸化合物(第二成分)との組合わせは文献未記載の新規なものであり、もちろんその特異的な効力増強を言及した文献もない。本発明に係る相乗作用は広い範囲の混合比で認められる。一般式(I)で示される第一成分化合物1重量部に対して、第二成分化合物を各々0.1 〜50重量部、好ましくは1:0.03〜1:20重量部の割合で混合して、有用な除草剤を得ることができる。なお、第一成分、第二成分とも、それぞれ一種類の化合物でもよいし、複数の化合物の組合わせでもよい。
【0029】
本発明の除草剤組成物は、農薬製薬上の常法に従い、使用上都合のよい形状に製剤化して使用するのが一般的である。すなわち、上記の各有効成分を、適当な不活性担体に、要するなら補助剤と一緒に、適当な割合で配合して溶解、分離、懸濁、混合、含浸、吸着または付着させるか、あるいは適当な噴射剤等と混合して、適宜の剤型、例えば懸濁液、乳剤、溶液、水和剤、粉剤、粒剤、錠剤、フロアブル剤、エアロゾル剤等に製剤することができる。
補助剤としては、界面活性剤、担体、結合剤、分解防止剤、着色剤や各種農薬類などを必要量含有することができる。これらの成分は、従来の農薬製剤分野において用いられているものであれば特に限定されるものではない。
【0030】
例えば、界面活性剤は有効成分化合物の乳化、分散、可溶化および/または湿潤の目的で用いられる。具体例としては、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルアリールスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、ラウリル硫酸塩、ポリカルボン酸型高分子活性剤等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等の非イオン性界面活性剤などをあげることができる。これらの界面活性剤は、1種だけの単独で用いても、あるいは2種以上混合して用いてもよく、その場合の混合比も任意に選択できる。
【0031】
本発明で使用することのできる不活性担体としては、固体、液体のいずれであってもよい。固体の担体となりうる材料としては、例えば、ダイズ粉、穀物粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、タバコ茎粉、クルミ殻粉、ふすま、繊維類粉末、植物エキス抽出後の残滓等の植物性粉末;紙、ダンボール、ふるぎれ等の繊維製品;粉砕合成樹脂等の合成重合体;粘土類(例えばカオリン、ベントナイト、酸性白土)、タルク類(例えばタルク、ピロフィライト)、シリカ類(例えば珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン〔含水微粉珪素、含水珪酸とも言われる合成高分散珪酸で、製品により珪酸カルシウムを主成分として含有するものがある。〕)、活性炭、イオウ粉末、軽石、焼成珪藻土、レンガ粉砕物、フライアッシュ、砂、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、パライト等の無機鉱物性粉末;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、クエン酸、コハク酸、フマル酸、乳糖、果糖、ブドウ糖等の水溶性粉末;硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料、堆肥等を挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上の混合物の形で用いてもよい。
【0032】
液体の担体となりうる材料としては、それ自体溶媒能を有するもののほか、溶媒能を有さずとも補助剤の助けにより有効成分化合物を分散させうることとなるものから選ばれ、例えば、水、アルコール類(例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル類(例えばエチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン)、脂肪族炭化水素類(例えばガソリン、鉱油)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン)、ハロゲン化炭化水素類(例えばジクロロエタン、塩素化ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素)、エステル類(例えば酢酸エチル、ジブチルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジオクチルフタレート)、酸アミド類(例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、ニトリル類(例えばアセトニトリル)、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上の混合物の形で用いてもよい。
【0033】
その他の補助剤としては、下記のものを挙げることができる。これらの補助剤は目的に応じて使用される。
有効成分化合物の分散安定化、粘着および/または結合の目的のためには、例えば次のものを用いることもよい:カゼイン、ゼラチン、澱粉、アルギン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、松根油、灯油、ベントナイト、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。固体製品の流動性の改良のためには、例えばワックス類、ステアリン酸塩、燐酸アルキルエステル等が使用できる。
懸濁性製品の解膠剤としては、例えばナフタレンスルホン酸縮合物、縮合燐酸等が使用できる。
消泡剤、例えばシリコーン油等を添加することも可能である。
【0034】
本発明組成物において、有効成分の配合量は必要に応じて加減し得る。粉剤あるいは粒剤とする場合は、第一成分および第二成分の合計量として、通常、0.2 〜20重量%、また、乳剤あるいは水和剤とする場合は、0.1 〜50重量%が適当である。
このようにして得られた混合物の施用量は混合物の有効成分量として0.01 kg〜5kg/haの広い範囲で使用可能であるが、標準的には0.05〜1kg/haの範囲での使用が好ましい。本発明に係わる除草剤組成物は雑草の発生前から生育期の広い範囲で任意の時期に施用でき、高い効果を得ることができる。
【0035】
本発明による除草剤組成物は、他の除草剤の1種または2種以上、殺虫剤、殺菌剤、植物生長調節剤等の農薬、土壌改良材または肥料等と混合使用が可能であるのはもちろんのこと、これらと混合製剤することも可能であり、場合によっては相乗効果も期待できる場合がある。特に除草剤として一層の効果の向上のために他の除草剤を併用することが望ましい場合がある。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例(配合例、試験例)によりさらに具体的に説明するが、本発明における化合物、製剤量、剤形等はこれのみに限定されるものではない。以下の記載において、第一成分化合物とは一般式(I)で表される置換ベンゾイルサイクリックエノン誘導体を、第二成分化合物とはフェノキシ酢酸化合物を意味する。第一成分化合物としては下記第1表に示す化合物A−No.1〜A−No.6を用いた。第二成分化合物としては前記の化合物B〜Fを用いた。なお、「部」は全て重量部を意味する。
【0037】
【表1】
【0038】
配合例1:水和剤
【表2】
上記の配合成分を均一に混合粉砕して水和剤とした。
【0039】
配合例2:水和剤
【表3】
上記配合成分を均一に混合粉砕して水和剤とした。
【0040】
配合例3:粒剤
【表4】
上記配合成分を均一に混合粉砕して後少量の水を加えて撹拌混合捏和し、押し出し式造粒機で造粒し、乾燥して粒剤にした。
【0041】
配合例4:粒剤
【表5】
上記配合成分を均一に混合粉砕して後少量の水を加えて撹拌混合捏和し、押し出し式造粒機で造粒し、乾燥して粒剤にした。
【0042】
配合例5:懸濁剤
【表6】
上記配合成分を混合したものを湿式粉砕機し、この懸濁液に2%キサンタンガム水溶液15gを加えて撹拌混合し、懸濁状組成物100gを得た。
【0043】
配合例6:懸濁剤
【表7】
上記配合成分を混合したものを湿式粉砕機し、この懸濁液に2%キサンタンガム水溶液15gを加えて撹拌混合し、懸濁状組成物100gを得た。
【0044】
試験例1:湛水土壌処理ポット試験(雑草発生前処理)
1/2000ア−ルのワグネルポットに、沖積土壌を充填し、入水代かきの後、水深を3cmに保持した。翌日、クログワイ、ウリカワの塊茎を3cmの深さに埋めこんだ後、タイヌビエ、ホタルイを土壌表層から1cmの深さに混層播種し、コナギ種子、ミズガヤツリ塊茎を土壌表面に置床した。さらに 2.5葉期のイネ苗(品種コシヒカリ)を1株1本植えで3cmの深度に4株移植した。薬剤処理は、播種3日後に配合例1、2に準拠して製造した水和剤の所定量を水2mlに希釈して、ピペットにてポット内に均一になるように水面に滴下処理を行った。処理翌日から3日間、1日あたり3cmの漏水操作を行ない、薬剤処理後30日目に下に示す基準で除草効果および薬害を概況観察した。なお、試験は23〜30℃のガラス温室内で実施した。
結果を第9表から第14表に示す。表中の除草効果および薬害の判定基準および略記号の意味は以下の通りである。また、理論値は前述のColby の式により算出した値である。
除草効果および薬害の判定基準:
【0045】
【表8】
【0046】
第9表〜第12表中の略記号:
E.C.:タイヌビエ、 S.J.:ホタルイ、 M.V.:コナギ、
C.S.:ミズガヤツリ、 E.K.:クログワイ、 S.P.:ウリカワ、
O.S.:移植水稲。
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
【表11】
【0050】
【表12】
【0051】
【表13】
【0052】
【表14】
【0053】
試験例2:湛水土壌処理ポット試験(雑草生育期処理)
1/2000ア−ルのワグネルポットに、沖積土壌を充填し、入水代かきの後、水深を3cmに保持した。翌日クログワイ、ウリカワの塊茎を3cmの深さに埋めこんだ後、タイヌビエ(ノビエ)、ホタルイを土壌表層から1cmの深さに混層播種し、コナギ種子、ミズガヤツリ塊茎を土壌表面に置床した。さらに 2.5葉期のイネ苗(品種コシヒカリ)を1株1本植えで3cmの深度に4株移植した。薬剤処理は、播種7日後タイヌビエ 1.5葉期の時期に配合例1、2に準拠して製造した水和剤の所定量を水2mlに希釈して、ピペットにてポット内に均一になるように水面に滴下処理を行った。処理翌日から3日間、1日あたり3cmの漏水操作を行なった。薬剤処理後30日目に下に示す基準で除草効果および薬害を概況観察した。なお、試験は23〜30℃のガラス温室内で実施した。
結果を第15表から第20表に示す(表中の除草効果および薬害の判定基準および略記号の意味は第9表〜第14表に同じ)。
【0054】
【表15】
【0055】
【表16】
【0056】
【表17】
【0057】
【表18】
【0058】
【表19】
【0059】
【表20】
【0060】
試験例3:湛水土壌処理圃場試験(雑草発生前処理)
水田圃場をプラスチック板により1m2の方形区に区切り、代かきと同時にタイヌビエ、ホタルイを播種した。田面均平化の後、ウリカワの塊茎を3cmの深度に、コナギ種子、ミズガヤツリの塊茎を土壌表面に置床した。1週間後、2.5葉期のイネ苗(品種コシヒカリ)を1株2本として田植えを行った。田植え3日後、雑草の発生前からタイヌビエ0.5葉期の時に配合例4に準拠して製造した粒剤の所定量を散布した。なお試験地は関東北部、土質は埴壌土、減水深1.5cm/dayであり、5月初旬から試験を行った。調査は薬剤処理後30日目および56日目に残草量を測定し、対無処理区比を求め、前述の基準で評価した。結果を第21表から第24表に示す(表中の除草効果および薬害の判定基準および略記号の意味は第9表〜第14表に同じ)。
【0061】
【表21】
【0062】
【表22】
【0063】
【表23】
【0064】
【表24】
【0065】
試験例4:湛水土壌処理試験(圃場試験)
水田圃場をプラスチック板により1m2の方形区に区切り、代かきと同時にタイヌビエ、ホタルイを播種した。田面均平化の後、ウリカワの塊茎を3cmの深度に、コナギ種子、ミズガヤツリの塊茎を土壌表面に置床した。1週間後、2.5葉期のイネ苗(品種コシヒカリ)を1株2本として田植えを行なった。田植え1週間後、タイヌビエ(ノビエ)1.5〜2葉期の時に配合例4に準拠して製造した粒剤の所定量を散布した。なお試験地は関東北部、土質は埴壌土、減水深1.5cm/dayであり、6月中旬に試験を行った。調査は薬剤処理後30日目および8週間後(56日目)に残草量を測定し、対無処理区比を求め、前述の基準で評価した。結果を第25表および第26表に示す(表中の除草効果および薬害の判定基準および略記号の意味は第9表〜第14表に同じ)。
【0066】
【表25】
【0067】
【表26】
【0068】
以上の試験例1、2、3、4に示されるように、本発明による除草剤組成物は稲に害を与えることなく、田植え前から雑草生育期までの広い範囲で多年生雑草を含む、水田の重要雑草を的確に防除できた。すなわち、本発明の除草剤組成物においては、混合剤化による相補作用により殺草スペクトラムが拡大されている。 また、これらの結果より、一般式(I)で示される化合物のうち少なくとも1種以上とフェノキシ酢酸系除草剤成分とを含有する混合物により、それぞれの単独の薬剤の効果からは予想もできない顕著な相乗作用を示されることがわかる。すなわち、その除草効果はそれぞれの単剤に比べ優れたものであり、かかる相乗効果を奏する結果、各々の化合物を単独で使用して同等の効果を得ようとする場合よりも少ない薬量での使用が可能である。
さらにまた、本発明による除草剤組成物は、雑草発生時期から雑草生育期までの任意の時期に施用しても顕著な効果を示し、かつ一回の処理でほぼ完全に水田の重要雑草を防除でき、しかも、8週間(56日間)以上の長期にわたって雑草抑草効果を示している。
【0069】
【発明の効果】
本発明の水田用除草剤組成物は、単子葉類、双子葉類、一年草、多年草の広い範囲に及ぶ殺草スペクトラムを有する。かつ、成分薬剤の相乗効果により、イネに対し薬害の発生のない少量の使用で対象とする雑草類を的確に除草する。しかも、残効期間の延長により、1回の施用で稲の生育に重要な期間を通しての雑草の抑制が実現できる。このため、除草剤の散布に要する労力やコストを大きく低減することができる。
また、近年、抑草型水田用除草剤の普及に伴い、水田雑草草種の変遷が起こり、これに起因する難防除雑草の発生拡大が各地で報告されているが、本発明の除草剤組成物は、広い殺草スペクトラムを有し、重量雑草を長期にわたり的確に防除できることから、こうした雑草草種の変遷に起因する問題の解消にも寄与することができる。
Claims (3)
- 一般式(I)
- フェノキシ酢酸系化合物が、
(RS)−2−(2,4−ジクロロ−m−トリルオキシ)−プロピオンアニリド、
N−フェニル−2−(2−ナフトキシ)プロピオンアミド、
S−エチル−4−クロロ−o−トリルオキシチオアセテート、
4−(4−クロロ−o−トリルオキシ)酪酸、および
2,4−ジクロロフェノキシ酢酸から選択される請求項1に記載の水田用除草剤組成物。 - 置換ベンゾイルサイクリックエノン誘導体が、
(1) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−フェニルチオ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(2) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(3−メチルフェニルチオ)ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(3) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−フェニルスルホニル−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(4) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジメチルフェニルチオ)−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(5) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(3−クロロフェニルチオ)−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(6) 3−(2−ニトロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジメチルフェニルチオビシクロ)[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(7) 3−(2−ニトロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジクロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、
(8) 3−(2−ニトロ−4−メチルチオベンゾイル)−4−(3−クロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オン、および
(9) 3−(2−クロロ−4−メチルスルホニルベンゾイル)−4−(2,6−ジクロロフェニルチオビシクロ)−[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンから選択される請求項1に記載の水田用除草剤組成物。
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