JP3589510B2 - 新規鉄錯体、その製造方法及び用途 - Google Patents

新規鉄錯体、その製造方法及び用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規鉄錯体、その製造法及び用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄の錯体としては種々のものが知られているが、鉄4核錯体としては、僅かに下記式(3)
Na[Fe(O)(CO(dhpta)]・〜20HO‥‥‥(3)
で表されるものが知られている程度である(D.L.Jameson 他、J.Am.Chem.Soc.,109,740−746(1987))。
また鉄4核錯体については、その化学構造も未だ不明である点が多い。
【0003】
本発明者らは先に、下記一般式(4)
[Fe(O)(A)(dhpta)]・kX‥‥‥(4)
式中、M及びRは1価または2価のカチオンであり、
Aは中性または窒素、硫黄或いはリンのオキシ酸のアニオン性の配位子であり、
dhptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基であり、
Xは結晶溶媒であり、
p,q及びrは、式 mp+nq−ra=2を満足する数であって、ここで、mはカチオンMの価数であり、nはカチオンRの価数であり、aはアニオン性配位子の価数(絶対値)であり、p及びrはそれぞれ1以上で6以下の数、qは4以下の数であり、qはAが中性配位子の場合ゼロであるものとし、
kは30以下の数である、
で表される新規鉄4核錯体を提案した(特許出願中)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、2価及び/または3価の鉄イオンを含み且つ配位子として1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を含む新規鉄錯体の合成に成功し、この新規鉄錯体は一酸化窒素の吸着に有効であることを見いだした。
【0005】
本発明の目的は、2価及び/または3価の鉄イオンを含み且つ配位子として1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を含む新規鉄錯体、この新規鉄錯体が有機または無機のアニオン交換体に結合している錯体及びその製造法を提供するにある。
【0006】
本発明の他の目的は、一酸化窒素、特に気体状の一酸化窒素の吸着剤として有用な新規鉄錯体及び及びその製造法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、2価及び/または3価の鉄イオンを含有し且つ1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を配位子として含むことを特徴とする鉄錯体が提供される。
【0008】
本発明によればまた、2価及び/または3価の鉄イオンを含有し且つ1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を配位子として含む鉄錯体アニオンを有機または無機のアニオン交換体に結合させて成ることを特徴とする鉄錯体が提供される。
【0009】
本発明によればまた、2価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸と、水溶性亜硫酸塩とを、水性媒体中で、非酸化性雰囲気中で反応させ、必要に応じ、生成溶液を有機または無機のアニオン交換体と混合し、イオン交換生成物を分離することを特徴とする鉄錯体の製造方法が提供される。
【0010】
上記製造方法において、生成溶液或いはイオン交換生成物を酸化処理すると、3価の鉄イオンを含有する鉄4核錯体が生成する。
【0011】
本発明によれば更に、上記鉄錯体から成ることを特徴とする一酸化窒素ガス用吸着剤が提供される。
【0012】
【作用】
本発明の鉄錯体は、金属として2価及び/または3価の鉄イオンを含有し、配位子として1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を含有することが特徴である。
【0013】
この鉄錯体は、典型的な鉄4核錯体であり、その化学組成は、下記一般式(1)
[Fe(O)(SO2−n (SO (dhpta)]‥‥(1)
式中、Mはカチオンであり、
dhptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基であり、
nは0乃至1の数であり、
pは、式 mp=2乃至10を満足する数であって、ここで、mはカチオンMの価数である、
で表される。
【0014】
上記錯体中の鉄4核錯体アニオン、即ち下記一般式(2)
[Fe(O)(SO2−n (SO(dhpta)k−‥‥(2)
式中、dhptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基であり、
nは0乃至1の数であり、
kは2乃至10の数である、
で表されるアニオンは、有機または無機のアニオン交換体に容易に結合するので、水不溶性で取り扱いの容易な固体の形に転化することができる。
【0015】
有機のアニオン交換体としてはアニオン交換樹脂、また無機のアニオン交換体としては活性アルミナ、チタニアまたはジルコニアが使用でき、これらは粒子強度も高く、粒状物としての取り扱い性や耐久性の点でも優れている。また、無機のアニオン交換体として、アルミニウム含有複合金属水酸化物・炭酸塩も使用しうる。
【0016】
上記鉄4核錯体アニオンの内、2価の鉄イオンを含有するものの想定される原子配置を図1に示す。この図に示されるとおり、この錯体アニオンでは、4個の2価鉄イオンが、オキソ、アルコキソ、及び亜硫酸アニオン基で混合架橋された鉄(II)4核錯体であることが明らかである。1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸配位子は、アミノ窒素原子を介して鉄原子に結合しているが、4個のカルボキシル基は、遊離のカルボキシルアニオンとして存在している。2価の鉄イオンの場合、この鉄錯体アニオンは、一般式(2)の価数kは10価の値をとる。これが、このタイプの生成物が大きい水溶性を示す理由と考えられる。
【0017】
上記鉄4核錯体アニオンの内、3価の鉄イオンを含有するものでは、4個の3価鉄イオンが、オキソ、アルコキソ、及び亜硫酸アニオン基で混合架橋された鉄(II)4核錯体であることは、2価の鉄イオンの場合と同様であるが、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸配位子は、アミノ窒素原子を介して鉄原子に結合している他に、4個のカルボキシル基も鉄原子と反応して、図2に示すように、オクタデンテートリガンドを形成している。3価の鉄イオンの場合、この鉄錯体アニオンは、一般式(2)の価数kは6価の値をとる。また、2個の亜硫酸の内、1個以下が酸化されて硫酸根となっている(mは最大1である)。
【0018】
本発明の鉄錯体における4核錯体アニオンは、勿論、図1に示すものと、図2に示すものの何れであってもよいし、これら両者の任意の組成の混合物であってもよい。
【0019】
本発明による鉄錯体は、溶液の状態でも、或いは固定された固体の状態でも、また、2価の鉄イオンの状態でも、或いは3価の鉄イオンの状態でも、気体状の一酸化窒素に対して、優れた吸着性能を示す。添付図面図3及び図4は、実施例1の鉄錯体担持イオン交換体(未乾燥品)及び実施例2の鉄錯体担持イオン交換体(乾燥品)について、一酸化窒素の除去分率と、一酸化窒素の除去積算量との関係をプロットしたものである(詳細は後述する実施例参照)。この結果から、本発明による鉄錯体は、気体状の一酸化窒素の吸着除去に極めて有効であることが分かる。また、図3と図4との比較から、一酸化窒素の除去を水分の存在下に行うことが有効であることも了解される。
【0020】
本発明の鉄錯体における一酸化窒素の吸着は、必ずしもこれに拘束されるものではないが、鉄錯体中に存在する亜硫酸根の硫黄原子が吸着サイトとなって生じているものと認められる。
【0021】
本発明の鉄錯体は、2価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸と、水溶性亜硫酸塩とを、水性媒体中で、非酸化性雰囲気中で反応させることにより、溶液の状態で得られ、合成が容易であり、生成収率も化学量論的量に近いものである。
【0022】
また、上記の生成溶液を有機または無機のアニオン交換体と混合すると、鉄錯体アニオンがアニオン交換体上に極めて収率よく強固に固定されるので、粒子強度や耐久性に優れ、取り扱い性の良好な固体状生成物を分離することができる。
【0023】
2価の鉄イオンを含有する鉄錯体を酸化処理することにより、3価の鉄イオンを含有する鉄錯体を製造することができる。用いる2価の鉄錯体は、溶液状のものでも、アニオン交換体に固定したものでもよい。また、酸化処理は、空気と接触させることにより、容易に行うことができる。この酸化処理に伴って、原料鉄錯体中の亜硫酸根の一部が硫酸根に酸化されることは既に指摘したとおりである。
【0024】
以上述べたとおり、本発明によれば、新規な鉄錯体が収率良く容易に合成され、この鉄錯体は一酸化窒素ガス用吸着剤として有用である。
【0025】
【発明の好適態様】
2価の鉄塩としては、水溶性の鉄塩(II)であれば任意のものが使用される。一般には、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄、臭化第一鉄等が使用されるが、硫酸第一鉄が好適なものである。
【0026】
本発明では、キレート化剤として、種々のアミノ酸類の中でも、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸を使用する。このものは、下記式(5)
Figure 0003589510
で表される構造を有しており、本発明の配位構造を形成するものである。
【0027】
亜硫酸塩としては、水溶性亜硫酸塩であれば何れも使用可能であり、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等が使用される。
【0028】
鉄塩(II)と1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸との反応は、前記式(1)の化学量論的量比、即ち2:1のモル比で進行する。勿論、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸基準の収率を高める目的で鉄塩(II)を過剰に使用することは許容できる。
【0029】
使用する亜硫酸塩の量比は、特に制限を受けないが、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸当たりの収率を高めるために、化学量論的量比よりも過剰に使用するのが望ましく、一般に化学量論的量の2乃至10倍、特に4乃至6倍で用いるのが望ましい。
【0030】
この反応は、水性媒体中に上記各原料を溶解させ、一般に常温乃至100℃、特に40乃至60℃の温度で撹拌することにより行うことができる。反応時間は、温度によっても相違するが、一般に30分乃至10時間程度が適当である。
【0031】
この反応を、非酸化性雰囲気中で行うことにより、2価の鉄イオンを含む鉄錯体の溶液が生成する(以下完全嫌気合成と呼ぶ)。非酸化性雰囲気に維持するためには、系中の酸素を脱気し、系雰囲気を窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等に保つのがよい。2価の鉄イオンの鉄錯体が形成されている事実は、溶液の色が淡黄色を呈することにより確認できる。
【0032】
この反応の終段を、酸素雰囲気中で行うことにより、3価の鉄イオンを含む鉄錯体の溶液が生成する(有酸素系合成と呼ぶ)。反応の初期は、非酸化性雰囲気に維持する、即ち系中の酸素を脱気し、系雰囲気を窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等に保つのは完全嫌気合成と同様であるが、反応の終段で溶液を酸素と接触させる。酸素としては、通常空気で十分であるが、酸素ガスを使用しても勿論よい。3価の鉄イオンの鉄錯体が形成されている事実は、溶液の色が黒色を呈することにより確認できる。
【0033】
上記の2価及び/または3価の鉄イオン錯体を含有する溶液は、そのまま溶液の形で、一酸化窒素の吸着処理に使用し得るのは勿論のことであるが、これらの水溶液と有機または無機のアニオン交換体とを混合し、鉄錯体アニオンをイオン交換体上に固定することができる。
【0034】
有機のアニオン交換体としては、アニオン交換樹脂、例えば、強塩基型、中塩基型、弱塩基型の交換樹脂は全て使用でき、例えば第4級アンモニウム基や、1級、2級、または3級のアミノ基を有する樹脂が使用できる。アニオン交換樹脂のマトリックス樹脂としては、スチレン系樹脂を骨格とするもの、アクリル系誘導体を骨格とするもの、フェノール樹脂を骨格とするもの、エポキシ−ポリアミン縮合物を骨格とするもの、セルロース系イオン交換体等が挙げられ、これらの樹脂は、ジビニルベンゼン等の架橋剤で架橋されたものであってもよい。これらのアニオン交換樹脂のイオン交換容量は、特に制限されないが、乾燥基準で、1乃至20meq/gの範囲にあるものが適当である。強塩基型アニオン交換樹脂(イオン交換基として第4級アンモニウム基を有するもの)が好適である。
【0035】
アニオン交換樹脂は、その取り扱いが容易なように、球状、顆粒状、ペッレット状等の形状であることが望ましく、その粒径は、5μm乃至8mmの範囲にあるのが望ましい。
【0036】
一方、無機のアニオン交換体としては、活性アルミナ、チタニアまたはジルコニア等を使用でき、これらのイオン交換体も、交換樹脂と同様の粒径、粒子径状で使用するのがよい。
【0037】
無機のアニオン交換体としては、アルミニウム含有複合金属水酸化物・炭酸塩、例えばハイドロタルサイト類や、リチウムアルミニウム複合水酸化物・炭酸塩等も使用できる。
【0038】
有機または無機のアニオン交換体に水溶液中の鉄錯体アニオンを固定させるには、格別面倒な操作は不要であり、水溶液と有機または無機のアニオン交換体とを混合し、必要により、濾過、洗浄等を行えばよい。3価の鉄イオンの鉄錯体の場合には特に必要でないが、2価の鉄イオンの鉄錯体の場合には、これらの操作を非酸化性雰囲気中で行うのがよい。イオン交換体中への水溶液の浸透を促進するために、イオン交換体を予め脱気しておくこともできる。
【0039】
アニオン交換体への鉄錯体の担持量は、乾燥基準で、アニオン交換体100重量部当たり、10乃至45重量部、特に15乃至40重量部の範囲にあるのが望ましい。鉄錯体の担持量が上記範囲よりも低いと、一酸化窒素の吸着容量が少なくなり、一方上記範囲よりも多いと、安定した固体としての取り扱いが困難となる傾向がある。
【0040】
2価の鉄イオンの鉄錯体を担持させた固体生成物では、これに酸素が接触することにより、交換体上の鉄錯体が容易に3価の鉄への転化が起こりにくい。
【0041】
本発明の鉄錯体は、2価及び/または3価の鉄イオンを含有し、且つ配位子として、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を含有している。
【0042】
鉄が2価である場合、上記錯体中の鉄4核錯体アニオンは、理想的には、式(6)
[Fe(O)(SO(dhpta)10− ‥‥(6)
式中、dhptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基である、
で表される構造をとる。
【0043】
鉄が3価である場合、上記錯体中の鉄4核錯体アニオンは、理想的には、式(7)
[Fe(O)(SO(SO(dhpta)6−‥‥(7)
式中、dhptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基である、
で表される構造をとる。
【0044】
上記式(6)と式(7)とでは、dhptaと鉄とがとるリガンドとの配位構造が相違するために、アニオンの価数に大きな相違が生まれる。実際の鉄錯体では、式(6)と式(7)との中間の構造のものや、両者の構造が混在することがある点に注意する必要がある。これは鉄錯体アニオンを、有機または無機のアニオン交換体に固定したものにおいても同様である。
【0045】
本発明の新規鉄錯体は、一酸化窒素ガスの吸着剤として有用である。水溶液状の鉄錯体の場合、一酸化窒素と鉄錯体溶液の気−液接触は、例えば、鉄錯体溶液中に一酸化窒素を吹き込む、一酸化窒素の気流中に鉄錯体溶液を噴霧する、充填塔、棚段塔、泡鐘塔、濡壁塔等のそれ自体公知の気−液接触装置で両者を接触させて、一酸化窒素の吸着を行わせることができる。
【0046】
一方、固体の鉄錯体の場合、一酸化窒素と鉄錯体との接触は、固定床、移動床、或いは流動床の鉄錯体粒状物と一酸化窒素ガスとを接触させることにより行うことができる。固体の鉄錯体粒状物を用いる場合、水分の存在下に両者を接触させることが吸着速度を高めるために有効であり、この水分は、鉄錯体粒状物中に予め含有させておいてもよく、或いは一酸化窒素ガスと同時に水蒸気の形で供給してもよい。
【0047】
本発明の鉄錯体を用いる一酸化窒素の吸着処理は、室温でしかも任意の圧力下で行うことができ、格別の制限がないので、操作が簡単であり、しかも高い吸着率が達成される。
【0048】
一酸化窒素を吸着した鉄錯体の再生は、例えば水素を導入する方法等で行うことができる(実施例6参照)。
【0049】
【実施例】
本発明の実施例を次に示す。
【0050】
実施例1
[錯体水溶液の合成]
a)完全嫌気合成
内径38mmの100cmシュレンク管に50cmの純水を入れ15分間減圧脱気し硫酸第一鉄7水塩0.56g(2mmol)、DHPTA(1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸)0.32g(1mmol)、亜硫酸ナトリウム0.51g(4mmol)を加え、アルゴン雰囲気下50℃で30分間攪拌溶解させた(この時溶液は淡黄色を示した)。溶解しきった所で目的の鉄4核錯体0.5mmolを含む水溶液が得られる。この錯体水溶液を試料No.1aとする。
【0051】
b)有酸素系合成
上記と同じ100cmのシュレンク管に純水50cmを入れ脱気した後、硫酸第一鉄7水塩3.35g(12mmol)、DHPTA1.93g(6mmol)、亜硫酸ナトリウム3.07g(24mmol)を加え、アルゴン雰囲気下50℃で30分間攪拌溶解させ淡黄色の鉄4核錯体3mmolを含む錯体水溶液を得た。その後この溶液を空気中で100cmビーカーに移し、パラフィルムで覆い20時間静置した(この時溶液は瞬時に黒色化した)。また20時間後パラフィルムがへこんだのが確認された。
空気中にてこの溶液の1/6をとり、脱気しない水で50cmに希釈し、0.50g(4mmol)の亜硫酸ナトリウムを加え溶解させた。これを試料No.1bとする。
【0052】
[NOの除去試験]
902ppmのNOを含む窒素ガスを100cmシュレンク管中で上記試料No.1aおよびNo.1bの溶液内を直径10mm(平板)のグラスフィルター(G3)を通してバブリングさせNO除去試験を行った。この時溶液水面からバブリングフィルター下端までの距離は48mmであった。
試料1aの場合はバブリングとともに溶液の色は淡黄色から徐々に緑色に変り後にはモスグリーンを呈した。一方1bの場合は色の変化は確認できなかった。出口ガスを一定体積のテドラーバッグに留め、その所要時間から流量を逆算し(株)ガステック製の検知管No.10(No.11A)を用いてNO濃度を求めNO除去率を算出した。
10l流した時のNO除去率、流量逆算値は下記の通りであった。
Figure 0003589510
【0053】
実施例2
200cmのシュレンク管に純水100cmを入れ脱気した後、硫酸第一鉄7水塩2.23g(8mmol)、DHPTA1.29g(4mmol)、亜硫酸ナトリウム2.03g(16mmol)を加え、アルゴン雰囲気下50℃で20分間攪拌溶解させる。溶解しきった所で鉄4核錯体2mmolを含む水溶液が生成する。これを取扱いやすい固体にするため強塩基性陰イオン交換樹脂ダウエックス(Dowex)2−X8、Cl型、200〜400メッシュに吸着固定化する。ダウエックスの予備処理は下記の通りである。
陰イオン交換樹脂ダウエックス約20gにメタノール50cmを加え、ロータリエバポレータを用いて充分に脱気し樹脂の細孔中に浸透させる。その後アルゴン雰囲気下にメタノールを濾別し真空乾燥させた。この操作を2回繰り返した。
上記の鉄4核錯体水溶液に予備処理したダウエックスをアルゴン雰囲気下攪拌しつつ加え、1時間攪拌を続けた後アルゴン雰囲気下に濾過した。濾液は淡黄色であった。
鉄4核錯体水溶液を吸収したダウエックスを減圧濾過した後、50℃で水洗後メタノールで洗浄し、空気中で風乾しメタノールを完全に揮発させた。
乾燥物は約18gであった。(試料No.2)
乾燥物を100cmビーカーに入れ、1,2分アルゴンでビーカー中を置換しパラフィルムで覆い保存した。
【0054】
[NO除去]
内径8mmのガラス管に上記試料No.2 7.8g(8.5cm)−錯体1.48mmol−を充填し、902ppmのNOを含む窒素ガスを420cm/minの流量で流し出口のNO濃度を(株)ガステック製の検知管No.10(No.11A)を用いて定量し、NOの除去率を算出した。NO除去率が0となるまでの累積NO吸着量(mmol)とNO除去率の関係を図3に示す。
NO除去率は初期において95%を示し、3.8時間95l通気した時点で除去率は0(破過点)となり、累積NO吸着量は3.5mmolであった。
【0055】
実施例3
実施例2と同一の装置、原料、方法によって得られた錯体含有ダウエックス風乾物7.8gを内径8mmのガラス管に充填し、1.2気圧、23℃の乾燥窒素ガスを135分間通して完全乾燥させた。得られた完全乾燥錯体含有ダウエックスを試料No.3とする。
【0056】
[NO除去]
試料No.3の充填層(8mmφカラム)を902ppmのNOを含む窒素ガス500cm/分の流量で流し実施例2と同じ方法により累積NO吸着量(mmol)対NO除去率の関係を求め図4に示した。
これによりNO除去率は初期でも40%以下となり破過までの累積NO吸着量等は2.8mmol、2.3時間70lであった。
この結果は錯体含有レジンのNO吸着には水分の存在が極めて有効であることを示している。
【0057】
実施例4
錯体の固定化剤として無機のイオン交換体としての活性アルミナを用いた例を示す。
用いた活性アルミナは水澤化学工業(株)製ネオビードDN−1Aでその物性は下記の通りである。
水分1.0%(150℃)、粒径0.105mm以下90%、芳香族吸着指数(AAI)20、化学分析値は強熱減量5.4%、塩酸不溶分0.5%、Al93.6%、Fe0.1%、NaO 0.4%
実施例1と同様の鉄4核錯体水溶液を20gの活性アルミナ(ネオビードDN−1A)に吸収させ濾過、水洗、メタノール洗浄を行い風乾した。
【0058】
[NO除去]
この風乾物を試料NO.4とし、実施例2〜3と同様、内径8mmのガラス管に(8.5cm)を充填、902ppmのNOを含む窒素ガスを250cm/分の流量で流し出口ガスのNO濃度を(株)ガステックの検知管No.10(No.11A)で測定した。
10l流した時のNOの除去率は92%に達していた。
活性アルミナも錯体固定化剤として有効であることが示された。
【0059】
実施例5
[錯体の合成]
300cmのシュレンク管に純水100cmを入れ脱気した後、硫酸第一鉄7水塩8.90g(32mmol)、DHPTA5.18g(16mmol)、亜硫酸ナトリウム8.10g(64mmol)を加え窒素雰囲気下50℃で30分間攪拌溶解せしめる。淡黄色の水溶液が得られた。その後雰囲気を空気に置き換えることによって錯体溶液は酸化されて黒色の水溶液となった。(一晩放置)
予めダウエックス(Dowex)2−X8(a型、200〜400メッシュ)約20gにメタノール50cmを加え樹脂を壊さないようによく洗い減圧濾過をした。この操作を2回行いよく乾燥させた。
これを200ccビーカーに入れ、中をアルゴンで置換し、パラフィルムで覆い保存した。
上記鉄4核錯体の黒色水溶液に予め用意したダウエックス2−X8を空気雰囲気下に攪拌しながら加えた。更に50℃で60分間攪拌を続けた後メタノールで洗いながら減圧濾過空気中で乾燥した。得られた鉄4核錯体を含む樹脂を試料No.5と称する。
【0060】
〔NOの除去試験〕
試料No.5 7.8g(8.5cm)を内径8mmのガラス管に充填し、902ppmのNOを含む窒素ガスを500cm/分の流量で流し出口ガス中のNOを(株)ガステック製の検知管No.10(No.11A)で定量しNO除去率を算出した。10l流した時点で82%に達した。鉄4核錯体の鉄イオンは2価でも3価でもNO除去はその機能を有し酸素の存在は何等妨害しないことを示している。
【0061】
実施例6
上記実施例3のNO除去試験終了後、純水素ガスを500cm/分の流量で1時間流し再生した。
この再生処理後のサンプル層に再び902ppmのNOを含む窒素ガスを500cm/分の流量で流した時のNO除去率を実施例3と同様の方法により求めた。
その結果56%のNO除去率を得た。再生後の方がNO除去率が向上し、水素ガス再生の有効なことが示された。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、2価及び/または3価の鉄イオンを含み且つ配位子として1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を含む新規鉄錯体、及びこの新規鉄錯体アニオンが有機または無機のアニオン交換体に結合している錯体が提供され、この鉄錯体は、一酸化窒素、特に気体状の一酸化窒素の吸着剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における式(2)の鉄錯体アニオンの内、2価の鉄イオンを含むものの原子構造を示す図である。
【図2】本発明における式(2)の鉄錯体アニオンの内、3価の鉄イオンを含むもののオクタデンテートリガンドを示す説明図である。
【図3】実施例1の鉄錯体担持イオン交換体(未乾燥品)について、一酸化窒素の除去分率と、一酸化窒素の除去積算量との関係をプロットしたグラフである。
【図4】実施例2の鉄錯体担持イオン交換体(乾燥品)について、一酸化窒素の除去分率と、一酸化窒素の除去積算量との関係をプロットしたグラフである。

Claims (10)

  1. 2価及び/または3価の鉄イオンを含有し且つ1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を配位子として含むことを特徴とする鉄錯体。
  2. 下記一般式(1)
    [Fe(O)(SO2−n (SO(dhpta)]‥‥(1)
    式中、Mはカチオンであり、
    dhptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基であり、
    nは0乃至1の数であり、
    pは、式 mp=2乃至10を満足する数であって、ここで、mはカチオンMの価数である、
    で表される組成を有する請求項1記載の鉄錯体。
  3. 2価及び/または3価の鉄イオンを含有し且つ1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸及び亜硫酸根を配位子として含む鉄錯体アニオンが有機または無機のアニオン交換体に結合して成ることを特徴とする鉄錯体。
  4. 前記鉄錯体アニオンが下記一般式(2)
    [Fe(O)(SO2−n (SO(dhpta)k−‥‥(2)
    式中、dhptaは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸の残基であり、
    nは0乃至1の数であり、
    kは2乃至10の数である、
    で表される組成を有する請求項3記載の鉄錯体。
  5. 有機のアニオン交換体がアニオン交換樹脂である請求項3または4記載の鉄錯体。
  6. 無機のアニオン交換体が活性アルミナ、チタニアまたはジルコニアである請求項3または4記載の鉄錯体。
  7. 無機のアニオン交換体がアルミニウム含有複合金属水酸化物・炭酸塩である請求項3または4記載の鉄錯体。
  8. 2価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸と、水溶性亜硫酸塩とを、水性媒体中で、非酸化性雰囲気中で反応させ、所望により酸化することを特徴とする鉄錯体の製造方法。
  9. 2価の鉄の水溶性塩類と、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−四酢酸と、水溶性亜硫酸塩とを、水性媒体中で、非酸化性雰囲気中で反応させ、生成溶液を有機または無機のアニオン交換体と混合し、生成物を分離し、所望により有機または無機のアニオン交換体との混合の前或いは後に酸化処理することを特徴とする鉄錯体の製造方法。
  10. 請求項1乃至7の何れかに記載の鉄錯体から成ることを特徴とする一酸化窒素ガス用吸着剤。
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