JP3589446B2 - 電力増幅器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、マルチビーム通信衛星や、アレーアンテナを用いる移動体通信用基地局に用いられ、複数の信号をそれぞれ増幅する増幅器に関し、特に8入力、8出力ポートを備えた電力増幅器の構成法に関わる。
【0002】
【従来の技術】
マルチビーム通信衛星や、アレーアンテナを用いる移動体通信用基地局では、入力Nポート、出力Nポートの入力用方向性結合器の出力にN個の等利得、等位相の単位増幅器を接続し、その出力に入力と同等な出力用方向性結合器を接続し、N入力信号を増幅するマルチポート電力増幅器が利用されることがある。
これは、入力用方向性結合器で入力ポートの信号を各単位増幅器に等しく分配し、増幅した後、再び出力用方向性結合器で対応する出力ポートに合成するものである。各単位増幅器は各入力信号を共通に増幅するので、入力信号間のレベルの偏りがある場合でも各単位増幅器の電力レベルを均一にすることができる。
【0003】
ここでは、N=8に相当するマルチポート電力増幅器の従来技術による構成法について図1を用いて説明する。図1はマルチポート電力増幅器1の全体構成を示したもので、入力用方向性結合器11と出力用方向性結合器12と8個の増幅器13〜20が従属に接続されている。この回路構成法は江上、川合:「多端子電力合成型マルチビーム送信系」電子情報通信学会誌、Vol.J69−B No.2 pp206〜212(1986年2月発行)に報告されている。
【0004】
上記文献において、入力用および出力用方向性結合器11、12は各々図2のような構成になっている。すなわち、入力用および出力用方向性結合器11、12は、4ポート方向性結合器33、34とπ/2ハイブリッド29〜32から構成され、さらに4ポート方向性結合器33、34はπ/2ハイブリッド21、22、25、26およびπ/2ハイブリッド23、24、27、28とから構成される。
【0005】
次にマルチポート電力増幅器の動作について説明する。図1において入力ポート35への入力信号は図2に示す入力用方向性結合器11の入力ポート51aに入力される。そして、π/2ハイブリッド21により2分配され、同様に正確な位相関係のもとに2分配された入力ポート52aからの信号と合成され、その出力はπ/2ハイブリッド25および26に入力される。π/2ハイブリッド25の出力には正確な位相関係のもと4分配された入力ポート51a〜54aの信号が合成され、それらはπ/2ハイブリッド29および30に入力される。同様に考えると、出力ポート51bには正確な位相関係のもとに8分配された入力ポート51a〜58aの信号がそれぞれ正確な位相関係のもとに合成されたものが現れる。
【0006】
次に出力ポート51b〜58bの信号は単位増幅器13〜20によって増幅され、出力用方向性結合器12に入力される。入力用方向性結合器11と同様な構成をとる出力用方向性結合器12では、分配された信号を合成し再びもとの信号に戻す。
ここで、図1におけるマルチポート電力増幅器1の出力ポート50に出力される信号は入力ポート35より入力された信号が増幅された信号となる。他の入力ポート36〜42に入力された信号も同様に増幅され、それぞれ出力ポート49〜43に出力される。
【0007】
方向性結合器の構成法については、従来技術によりいくつかのものが考えられるが、多層誘電体基板を用いたものについては、石川、竹原、西田「電力合成分配装置」特開平4−249402号公報に報告されている。
入力用および出力用方向性結合器11、12は図3(a)および図3(b)に示すように多層基板74上に構成される。図3(b)は図3(a)の反対側の面を示している。また、各番号は図2に対応させてある。多層基板74は上から第1層の誘電体基板75と第2層の誘電体基板76がグランド77を挟んだ構成となっている。
【0008】
環状にかつ直列に接続された4本の伝送線路からなるπ/2ハイブリッドはマイクロストリップ線路またはストリップ線路により図12に示すように誘電体基板上に形成される。ここで、マイクロストリップ線路によって構成されたπ/2ハイブリッドへの信号の入出力には50Ω線路を用いる。
図2における4ポート方向性結合器33は2つのπ/2ハイブリッド21、22を2つのπ/2ハイブリッド25、26で結合していることから、これらπ/2ハイブリッド21、22、25、26の並びを図4に示すように変えることで、襷がけ状の配線が不要となり図5に示すようにマイクロストリップ線路またはストリップ線路で誘電体基板68上に形成される。ここで、π/2ハイブリッド間の接続には所定の電気長のマイクロストリップ線路またはストリップ線路を用いる。
【0009】
そして、4ポート方向性結合器33を第1誘電体基板75上に形成し、もう1つの4ポート方向性結合器34を上記第1の誘電体基板に対向して配設される第2の誘電体基板76上に形成する。さらに、上記第1の誘電体基板に形成された上記4ポート方向性結合器33の各出力端子と上記第2の誘電体基板に形成された上記もう1つの4ポート方向性結合器32の出力端子を4個のπ/2ハイブリッド回路29、30、31、32を介して電気的に接続させれば、図3aおよび図3bに示す8ポート方向性結合器を多層基板上に形成することができる。なお、4個のπ/2ハイブリッド回路29、30、31、32は上記第1、第2の誘電体基板を貫通するスルーホールに形成されたスルーホール導体59〜66を含む。
【0010】
従来の技術による多層基板上で形成された2つの方向性結合器を用いた電力増幅器の一例を図6に示す。図6は多層基板によって形成された入力用方向性結合器11と出力用方向性結合器12の間にケーブル78等を用いて接続している。なお、入力用方向性結合器11と増幅器群13〜20および増幅器群13〜20と出力用方向性結合器12を結ぶケーブルは各々同じ長さのものを使用するため、増幅器の配置によってケーブル長の調整が必要となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
図6に示したような構成法では、入力用方向性結合器11および出力用方向性結合器12の入出力の位置関係から8個の増幅器13〜20を対称に配置することができず、ケーブル長を調整する必要があり、小スペース設計には不利である。すなわち、設置面積が大きく必要であり、特に移動体通信用基地局などに使用する場合には、その設置面積の縮小と装置全体の小型化が要求される。さらにこの場合、入力用方向性結合器11と8個の増幅器13〜20の接続にケーブルを用いるためにケーブルでの電力損失が避けられない。また、接続ケーブルも最も長く必要な長さに合わせる必要があり、ケーブル長の違いに各伝送路間で位相差が生じてはならないため、装置の最適設計を行なうことが難しい。
【0012】
この発明は、装置の設置面積の縮小を可能とする、小型で最適設計可能なマルチポート電力増幅器の構成法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明の電力増幅器は、複数の入力ポートと複数の出力ポートを備え、入力用および出力用方向性結合器と増幅器を従属接続し、方向性結合器は複数のπ/2ハイブリッドを環状に配置して形成し、これら2つの方向性結合器を積み重ね1つの多層基板上にマイクロストリップ線路およびストリップ線路により構成することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明の電力増幅器は、請求項1に記載の電力増幅器において、複数の入力ポートおよび複数の出力ポートの数が8であり、増幅器が8個であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明の電力増幅器は、請求項1および請求項2に記載の電力増幅器において、入力用方向性結合器および出力用方向性結合器は1つの多層基板上に形成し、対称に配置された8個の増幅器とケーブル等を用いて接続されることを特徴とする。
【0015】
従って、ケーブル長の調整が容易となる。
また、請求項4に記載の発明の電力増幅器は請求項1および請求項2に記載の電力増幅器において、入力用方向性結合器および出力用方向性結合器および8個の増幅器を1つの多層基板上に構成することを特徴とする。
従って、従来平面状に配置していた入力用および出力用方向性結合器と8個の増幅器を1つの多層基板で形成するために、設置面積の縮小と装置の小型化が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
請求項1〜5に記載の実施例を説明する。
まず、入力用方向性結合器11および出力用方向性結合器12を1つの多層基板上に構成する一例を図7に示す。
ここで、入力用方向性結合器11を、出力用方向性結合器12を構成する2つの層で挟む構成を示している。
【0017】
多層基板の各層は上側から出力用方向性結合器12の一部を形成するマイクロストリップ線路71、誘電体層78、グランド層79、誘電体層80、入力用方向性結合器11の一部を形成するストリップ線路81、誘電体層82、グランド層83、誘電体層84、入力用方向性結合器11の一部を形成するマイクロストリップ線路85、グランド層86、誘電体層87、誘電体層88、出力用方向性結合器の一部を形成するマイクロストリップ89からなる。
【0018】
多層基板の内側に構成される入力用方向性結合器11には、2つのグランド層で挟まれた構造であるストリップ線路を用いているため、多層に重ね合わせても結合がなく、良好な特性を得ることができる。
この例では、入力用方向性結合器11を出力用方向性結合器12で挟む構成を示したが、同様に出力用方向性結合器12を入力用方向性結合器11で挟む構成としてもよい。また、上下にさらに誘電体層およびグランド層をそれぞれ一層ずつ追加し、全てをストリップ線路により構成しても良い。
【0019】
なお、入力用および出力用方向性結合器は従来技術と同様にスルーホール73を通して電気的に接続される。
入力用方向性結合器11および出力用方向性結合器12を含んだ多層基板の外観を図8に示す。ここで、入力用方向性結合器11の入出力は入力ポート90〜97、出力ポート98〜105であり、出力用方向性結合器12の入出力は入力ポート106〜113、出力ポート114〜121である。
【0020】
次に、入力用方向性結合器11と出力用方向性結合器12を積み重ね1つの多層基板で実現した図8を用いた電力増幅器の構成例を図9に示す。
入力用方向性結合器11の8個の入力ポート90〜97に入力された信号はそれぞれ8分配され、正確な位相関係のもとに合成された信号が入力用方向性結合器11の8個の出力ポート98〜105に出力される。
これらの信号は、ケーブル等を通して8個の増幅器に入力され、増幅された後、ケーブル等で出力用方向性結合器12の8個の入力ポート106〜113に入力される。出力用方向性結合器12で再び合成され、その8個の出力ポート114〜121に出力される。このような構成にすることにより、図9に示すように増幅器を対称に配置することができるため、ケーブル等による接続も容易となるという利点を有する。
【0021】
次に、8個の電力増幅器を多層基板上に入力用、出力用方向性結合器11、12と共に構成する。図10に多層基板上に入力用方向性結合器11および出力用方向性結合器12および8個の増幅器を構成した例を示す。この場合、入力用方向性結合器11および出力用方向性結合器12の構成は上記に示したものと同様であるが、出力用方向性結合器12を形成している誘電体層78、88に合計8個の増幅器を配置する。そして、入力用方向性結合器11の8個の出力ポート98〜105をスルーホールを通して8個の増幅器にそれぞれ50Ω線路を用いて接続する。さらに、増幅器の8出力を出力用方向性結合器12の8個の入力ポート106〜113に50Ω線路等で接続する。この構成の電力増幅器の動作も上記と同様に、入力用方向性結合器11の8個の入力ポート90〜97に入力された信号はそれぞれ8分配され、正確な位相関係のもとに合成された信号が入力用方向性結合器11の8個の出力ポート98〜105に出力される。
【0022】
これらの信号は、基板に設けられたスルーホールを通して8個の増幅器に入力され、増幅された後、マイクロストリップ線路等で形成された50Ω線路を通り、出力用方向性結合器12の8個の入力ポート106〜113に入力される。出力用方向性結合器12で再び合成され、その8個の出力ポート114〜121に出力される。
なお、上記実施例において、各誘電体層に異なる誘電率をもつ材料を用いることにより、線路を調整し、配置を最適化することもできる。また、入出力ポート数が5〜8の場合には不要なポートは無反射終端する。このような構成をとることによって、入力用方向性結合器11、出力用方向性結合器12と8個の増幅器との接続に用いていたケーブルが不要となり、ケーブルにより生じる可能性のある損失およびアンバランスをなくし、最適設計が可能である。
【0023】
また、同一の多層基板上に構成するために、設置面積の縮小および装置の小型化が可能であるという利点を有する。従って、従来各個別回路を分けて構成していた電力増幅器を一つの多層基板で実現するために、設置面積を小さくでき、装置全体としても小型化することができるという利点を有する。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、増幅器を対称に配置できる構成により、ケーブル長の調整を容易とし、増幅器を多層基板内に含めればケーブル自体も不要となり、電力損失を少なくできるなどの利点がある。さらに、入力用、出力用方向性結合器を構成する複数のπ/2ハイブリッドを1つの多層基板上に形成したので、設置面積が小さくでき基地局装置などへの利用の際に要求される、装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の技術の電力増幅器の構成を示すブロック図。
【図2】従来の技術の方向性結合器の回路構成を示すブロック図。
【図3】従来の技術による8ポート方向性結合器の回路パターンを示す図。
【図4】4ポート方向性結合器の構成を示す図。
【図5】4ポート方向性結合器の回路パターンを示す図。
【図6】従来の技術による電力増幅器の構成を示す図。
【図7】本発明の多層基板による方向性結合器の回路パターンを示す図。
【図8】本発明の多層基板による方向性結合器の外観を示す図。
【図9】本発明の実施例である電力増幅器の構成を示す図。
【図10】本発明の実施例である多層基板による電力増幅器のパターンを示す図。
【図11】本発明の実施例である電力増幅器の外観を示す図。
【図12】π/2ハイブリッドの回路パターンを示す図。
【符号の説明】
11 入力用方向性結合器
12 出力用方向性結合器
13〜20 増幅器
21〜32 π/2ハイブリッド
33、34 4ポート方向性結合器
35〜42 入力ポート
43〜50 出力ポート
73 スルーホール
74 多層基板
75 第1層の誘電体基板
76 第2層の誘電体基板
77 グランド

Claims (4)

  1. 複数の入力ポートと複数の出力ポートを備えた入力用方向性結合器と複数の増幅器と、複数の入力ポートと複数の出力ポートを供えた出力用方向性結合器とを従属接続した電力増幅器において
    上記入力用方向性結合器および上記出力用方向性結合器の一方は、他を構成する2つの層で、それらはグランド層を介して挟まれて積み重ねられていることを特徴とする電力増幅器。
  2. 請求項1に記載の電力増幅器において、
    上記複数の入力ポートと上記複数の出力ポートが8個であり、上記増幅器が8個であることを特徴とする電力増幅器。
  3. 請求項1または2に記載の電力増幅器において、
    上記入力用方向性結合器と上記出力用方向性結合器に複数の単位増幅器を線路を用いて従属接続することを特徴とする電力増幅器。
  4. 請求項1または2に記載の電力増幅器において、
    上記複数の増幅器を上記1つの多層基板上に設けることを特徴とする電力増幅器。
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