JP3589016B2 - 高炉操業方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、羽口から微粉炭を吹き込む高炉操業方法に関し、特に、微粉炭吹き込み量を増加した場合、炉内通気抵抗を増大させることなく高炉生産性の向上を図ることができる高炉操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉においては、炉頂部から固体燃料(コークス)と交互に装入された原料(鉱石)は、炉内を降下しつつ、炉下部に設置された羽口から吹き込まれる熱風とコークスとの反応によって生成する還元性ガス(CO、H2 )の作用により徐々に加熱、還元され、軟化溶融帯を形成した後、炉芯コークス層の隙間を伝って炉底に溜まり溶銑となる。溶銑は、定期的に又は連続的に出銑口から抜き出される。
【0003】
高炉を安定にしかも効率よく操業するには、炉内の通気性、通液性を良好に保って炉内を上昇するガス(還元性ガス)と炉内を降下するコークス及び鉱石との熱交換ならびに反応を効率よく行わせることが重要である。
【0004】
高炉の操業は、近年、コークス比の低減を狙い、羽口から熱風とともに多量の微粉炭を吹き込む高PCI操業へ移行しており、炉頂から装入されるコークス量は鉱石量に比較して減少(鉱石/コークス比が増大)してきている。そのため、高炉上部においては、鉱石/コークス比の増大に伴ってコークスの平均粒径が低下するので塊状帯における通気抵抗が増大する。また、高炉下部でコークスと熱風とを反応させて鉱石の還元に必要な量の還元性ガスを生成させるためには単位コークス量あたりの反応量を増大させなければならなず、コークスの反応劣化が進んでコークスの粒径が低下するとともに、粉の発生量が増大して高炉下部の炉芯コークス層で空隙低下が起こる。さらに、羽口で燃焼しなかった微粉炭の炉内での蓄積によりコークス充填層での空隙低下が起こり、上昇ガスの通気抵抗及び溶銑滓の通液抵抗(溶銑滓が炉芯コークス層を滴下して炉底へ達する際の抵抗)が増大し易い状況になっている。
【0005】
さらに、近年、原燃料供給条件の変動、粗鋼生産需給動向、設備集約等に対処するため、高炉に対して大型反応器としての生産弾力性の拡大(とりわけ増産に迅速に対応し得る性能)が要求されており、特に高PCI操業下で増産を強いられた場合、炉内の銑鉄生成速度の上昇に伴って炉芯コークス層及びコークス充填層の空隙低下が起こる。銑鉄生成速度の上昇に伴って通液量が増加し、また、前記の高炉下部におけるコークスの反応劣化が加速され、コークスの粒径が低下し、粉の発生量が増大するとともに、未燃焼微粉炭の炉内での蓄積が生じるからである。
【0006】
このような状況下にあって、高炉操業の効率及び安定性を維持した上で、なおかつ生産性を高めるためには、炉内の、特にコークス充填層の通気性、通液性を良好に保つことが必要不可欠である。
【0007】
従来、低コストの下での出銑量の増加、高炉炉芯部の粉率の低下による通気性、通液性の改善等が可能な高炉操業方法が提案されている。
【0008】
例えば、特開平9−13109号公報には、微粉炭多量吹き込み時に、羽口から微粉炭を吹き込むとともに炉頂からスクラップ、直接還元ペレット等の金属鉄原料を装入することにより、微粉炭多量吹き込みにおいて通常必要とされている羽口への酸素富化量の増加を伴わずに生産量を増加させる高炉操業方法が示されている。また、特開平5−295410号公報には、高炉炉頂中心部からスクラップあるいは粒鉄を装入することにより、炉芯部において炭素未飽和鉄と粉コークスとの浸炭反応を促進させ、炉芯部における粉率を低下させる方法が開示されている。
【0009】
また、コークスとスクラップを混合装入することによってスクラップの溶解挙動を改善し、高炉の生産性、操業安定性を確保しながら比較的多量のスクラップを高炉で溶解できる高炉へのスクラップ装入方法も提案されている(特開平8−92615号公報)。
【0010】
しかしながら、これらの方法には次のような問題点がある。すなわち、特開平9−13109号公報に示されている高炉操業方法では、熱流比の上限値または炉頂温度の下限値により金属鉄原料の装入量の上限値を設定しているが、装入金属鉄原料の増加による生産量増加とそれに伴うコークスの反応劣化の進行、および微粉炭吹き込み量の増加、による高炉内通気性抵抗の増大を避けることができない。また、特開平5−295410号公報及び特開平8−92615号公報に記載される金属鉄原料の装入技術は、燃料比の低減には効果があるが、金属鉄原料の装入量の増大に伴い、高炉炉頂部の熱流比の上昇及び炉頂温度の低下を招くので、その使用量には限界がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、高炉操業において高PCI操業を行うと、炉頂から装入されるコークス量の減少(鉱石/コークス比が増大)に伴う高炉上部における原料(コークスと鉱石)の平均粒径の低下と、単位コークス量あたりの反応量の増大に起因する高炉下部におけるコークスの反応劣化の進行、及び未燃焼微粉炭の炉内充填層への蓄積による炉芯コークス層及びコークス充填層での空隙低下が起こり、通気抵抗及び通液抵抗が増大する傾向を示す。さらに増産を図ると、炉内での銑鉄生成速度の上昇に伴い、この傾向は一層顕著になる。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、高PCI操業下にあって、炉内の通気抵抗及び通液抵抗を増大させることなく高炉生産性の向上を可能とする高炉操業方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記の高炉操業方法にある。
【0014】
羽口からの微粉炭の吹き込み量を増加させる操作をともなう高炉操業方法であって、微粉炭吹き込み量の増加にともなって生じる送風圧Pに対する羽口と炉頂間の圧力損失ΔPの比(ΔP/P)の上昇量を測定し、あらかじめ求めてあるΔP/Pの上昇量と炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量の関係に基づいて前記金属鉄を含む鉄原料の炉頂からの装入量を増加させることを特徴とする高炉操業方法。
【0015】
前記の「金属鉄を含む鉄原料」とは、金属状態の鉄を含む鉄原料で、例えば、還元鉄、スクラップ等である。
【0016】
上記の高炉操業方法において、炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料として、平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄を用いるのが、高炉生産性の向上を図る上で好ましい。なお、ここでいう「平均粒径」とは、累積粒度分布曲線において、重量50%を示す点における粒径をいう。
【0017】
さらに、ΔP/P、すなわち、送風圧に対する羽口と炉頂間の圧力損失の比(この比を、以下、「炉内圧力損失比」という)の上昇量が微粉炭吹き込み量の増加量30kg/銑鉄tあたり0.025以上であるとき、炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料を平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄とし、その鉄源中における割合を下記(1)式を満たすようにする方法を採用するのが好ましい。
【0018】
X>{(△P/P)−(△P/P)o }×100 ・・(1)
ここで、
である。
【0019】
ここでいう「鉄源」とは、鉄鉱石、焼結鉱をはじめとする鉄原料であり、上記の「金属鉄を含む鉄原料」もこれに含まれる。
【0020】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく検討を進めるにあたり、羽口から多量の微粉炭を吹き込む高微粉炭吹き込み時に、焼結鉱に還元鉄を混合するとともに、高炉内融着帯の通気性の良否を判断する指標として高温通気抵抗KS値を用いることを試みた。高炉内融着帯の通気性の良否によって、炉内の通気抵抗及び通液抵抗が支配されるからである。
【0021】
高温通気抵抗KS値とは、「鉄と鋼」72(1986),P.1856に記載されている焼結鉱の品質評価基準である。
【0022】
図1は、KS値の測定に用いられる荷重軟化基礎試験装置の概要を示す図である。この装置は、炉の中心部に高炉内の温度、ガス組成及び荷重を模擬できる坩堝が配置され、その中に充填された鉄源試料が加熱されて軟化し、滴下する際の試料充填層内の圧力損失を測定することができるように構成されている。なお、試料温度、充填された鉄源試料の軟化に伴う収縮量、排ガス量・組成、及び滴下物重量の測定も可能である。前記試料充填層内の圧力損失から、下記(2)式により高温通気抵抗K(t) が求められる。
【0023】
図2は、この装置を用いて行った高温滴下試験結果の一例で、図示するように、高温通気抵抗K(t) は試料温度が上昇して軟化が始まると上昇し、滴下することにより低下する。図中のKSの符号を付した部分の面積、すなわち高温通気抵抗K(t) の温度積分値が高温通気抵抗KS値であり、下記(3)式で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
上記図1に示した装置を用いて金属化率の異なる還元鉄と焼結鉱の混合原料の高温性状を調査した。
【0026】
坩堝内最下層にコークス、その上部に鉄源としての焼結鉱と金属化率の異なる各種還元鉄粒子の均一混合物を充填した充填層を形成し、所定の昇温速度及びガス組成になるように制御するとともに、上部から所定の荷重をかけ、鉄源を溶融滴下させた。その際、充填層内で発生する圧力差ΔPを連続測定し、上記(3)式により、KS値を算出した結果を、図3に示す。焼結鉱単味の場合、KS値は900〜1000であるが、還元鉄の混合率が増加するほど、また、金属化率が高いほど、KS値は低下する。特に金属化率が50%の場合、KS値の低下は顕著で、還元鉄を50%以上混合することによりKS値は焼結鉱単味の場合に比べて10%以下に低下する。
【0027】
図4は、炉内容積2700Nm3 の高炉の操業中に得られた結果で、鉄源として使用した焼結鉱のKS値と炉内圧力損失比ΔP/Pの関係を表すものである。図示するように、焼結鉱のKS値と炉内圧力損失比ΔP/Pの間には、明瞭な正の相関関係があり、高温通気抵抗KS値を通気性の良否を判断する指標として使用できることが明らかである。
【0028】
これらの結果から、微粉炭吹き込み量を増加した場合、炉内圧力損失比の上昇(換言すれば、通気抵抗の増大)に応じて炉頂から装入する鉄源、例えば焼結鉱のKS値を低下させてやれば、通気抵抗を増大させることなく高炉操業を行うことができると考えられる。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
前記のように、高炉操業において高PCI操業を行うと、塊状帯における通気抵抗が増大し、また、炉芯コークス層及びコークス充填層で空隙低下が起こって通気抵抗及び通液抵抗が増大する。さらに増産を図ると、この傾向は一層顕著になる。本発明は、このような高PCI操業において、微粉炭吹き込み量を増加した場合、炉内圧力損失比ΔP/Pの上昇の程度に応じ、あらかじめ求めてある炉内圧力損失比と炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量の関係に基づいて前記金属鉄を含む鉄原料の炉頂からの装入量を増加させる高炉操業方法である。
【0031】
微粉炭吹き込み量を増加した場合、前述したように、コークスの反応劣化の進行、羽口での未燃焼微粉炭の炉内蓄積等に起因して炉内圧力損失比が上昇するが、その上昇量に応じて炉頂からの金属鉄を含む鉄原料の装入量を増加させるのである。前記の図3に示した結果から類推されるように、鉄源(例えば、焼結鉱)に金属鉄を含む鉄原料を混合することによって焼結鉱のKS値は低下し、一方、前記の図4に示したように、鉄源のKS値の低下に伴い炉内圧力損失比も低下するので、微粉炭吹き込み量の増加による炉内圧力損失比の上昇は相殺され、もしくは緩和される。
【0032】
前記の「あらかじめ求めてある炉内圧力損失比と炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量の関係」は、実炉による操業データを基にして求めるのがよいが、実操業との相関性が確認されていれば、一部前記の荷重軟化基礎試験装置によるデータを用いてもよい。
【0033】
例えば、先に述べた図3は、鉄源が焼結鉱、金属鉄を含む鉄原料が還元鉄の場合の金属鉄を含む鉄原料量と使用する鉄源のKS値の関係の一例であり、また、図4は鉄源のKS値と炉内圧力損失比の関係の一例であるが、これら両図を金属鉄を含む鉄原料量と炉内圧力損失比の関係を示す図に置き換えることにより求めることができる。なお、置き換えに際しては、上記両関係における鉄源のT.Fe(全鉄成分値)を考慮し、両者が同じT.Feになるように配慮する。
【0034】
金属鉄を含む鉄原料の炉内への装入は炉頂から行う。焼結鉱その他の鉄源の装入時に、あらかじめ定めた装入量になるように適宜混合してやればよい。
【0035】
上記本発明の高炉操業方法によれば、高PCI操業下にあっても、炉内の通気抵抗及び通液抵抗を増大させることなく高い生産性を維持しつつ操業を行うことができる。
【0036】
上記本発明の高炉操業方法において、炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料として、平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄を用いるのが、高炉生産性の向上を図る上で好ましい。これは、前記の図3に示した結果から明らかである。
【0037】
また、次の図5に示す結果から、平均粒径25mm以上の還元鉄を用いるのが好ましいといえる。
【0038】
図5は、炉内容積3m3 の試験高炉において、平均粒径が15mm〜25mmの範囲の焼結鉱に、金属化率がいずれも90%で、平均粒径が5mm〜15mm、20mm〜30mm、または45mm〜55mmの範囲に入るように調整した3種類の還元鉄を、別々に、それぞれ混合比率を変えて混合し、5日間の連続操業を行った際に得られた還元鉄混合比率と炉内圧力損失比の関係を示した図である。なお、図中に示した「炉全体」というのは、これまで述べてきた炉内圧力損失比(ΔP/P;ΔPは羽口と炉頂間における圧力損失、Pは羽口からの送風圧)を意味するが、「炉上部」とは、高炉の上部、すなわち融着帯の上端(塊状帯の下端)の部分と炉頂間における圧力損失の送風圧Pに対する比である。また、平均粒径が5mm〜15mm、20mm〜30mm、および45mm〜55mmの範囲に入るように調整した還元鉄をそれぞれ平均粒径10mm、平均粒径25mm、および平均粒径50mmの還元鉄という(ただし、図5では還元鉄粒径10mm、25mm、および50mmと表示)。
【0039】
この図に示されるように、「炉全体」の炉内圧力損失比(通気抵抗)は、荷重平均粒径10mmの場合を除いて低下しており、還元鉄の混合率が高くなるほど低下の度合いが大きい。すなわち、炉内圧力損失比が小さくなる。すなわち、平均粒径25mm以上の還元鉄を用いるのが好ましいといえる。
【0040】
なお、平均粒径10mmの還元鉄を使用した場合、混合比率が50%までは逆に通気抵抗が増大する傾向が見られたが、これは、以下の理由によるものと推測できる。
【0041】
まず、図5の「炉上部」の圧力損失比(通気抵抗)を見ると、通気抵抗は平均粒径50mmの還元鉄を混合した場合を除いて、混合率が高くなるほど、また、還元鉄の粒径が小さくなるほど増大している。炉上部の塊状帯においては、還元鉄の粒径が小さくなる(つまり、比表面積が大きくなる)と通気抵抗が上昇するためである。一方、融着帯及び炉下部においては、KS値の低下と還元鉄を使用することによるスラグ量の低下によって逆に通気抵抗は低下し、その低下の程度は塊状帯における通気抵抗の上昇幅を上回る。したがって、「炉全体」でみた場合は、還元鉄の混合率が高くなるほど通気抵抗は低下する。
【0042】
しかし、特に粒子径の小さい平均粒径10mmの還元鉄を混合した場合は、焼結鉱の粒子径との差異により、還元鉄が焼結鉱の各粒子の間に入り込んでって密に充填された状態となり、目詰まりが生じ、混合比率が50%に達するまでは、上記とは逆に炉上部における通気抵抗の上昇の方が融着帯の通気抵抗低下幅を上回る。したがって、混合比率が50%までは逆に通気抵抗が増大すると考えられる。
【0043】
さらに、本発明の高炉操業方法においては、炉内圧力損失比の上昇量が微粉炭吹き込み量の増加量30kg/銑鉄tあたり0.025以上であるとき、すなわち、微粉炭吹き込み量に対する炉内圧力損失比の上昇比率(勾配)に換算して、0.025/30 0.00083以上であるとき、炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料として、平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄を使用し、その還元鉄の鉄源中における割合(混合比率)を前記(1)式を満たすようにする方法を採用するのが好ましい。
【0044】
「炉内圧力損失比の上昇量が微粉炭吹き込み量の増加量30kg/銑鉄tあたり0.025以上であるとき」という規定は、微粉炭吹き込み量を増大させた場合の炉内圧力損失比の上昇量についての実高炉における実績値、及び高炉ガス流れモデルによる計算値により得られた結果に基づくものである。
【0045】
また、「炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料として、平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄を使用する」こととしたのは、前述した理由により好ましい手段だからである。
【0046】
還元鉄の装入量を「前記(1)式を満たす」こととしたのは、これを満たす量であれば、高炉内の通気抵抗の増大を防止し、炉況の悪化を避けることができるからである。なお、還元鉄の装入量の上限は特に規定していない。技術的には、還元鉄の装入量に何ら制限はないからである。
【0047】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
【0048】
【実施例】
炉内容積2700m3 の高炉により本発明の操業方法を実施した。また、同じ高炉で従来の操業方法及び比較のための操業方法も実施した。
【0049】
表1にそれら各方法の操業条件とガス抜け回数および出銑量(計画と実績)を示す。また、図6にそれら各方法で操業したときの微粉炭吹き込み量と炉内圧力損失比の関係を示す。なお、図6中における右上がりの直線は、従来の方法で操業しながら微粉炭を吹き込んだ場合の炉内圧力損失比の増大割合を表す。
【0050】
従来の操業方法(従来例1及び2)では、微粉炭吹き込み量を150kg/銑鉄t(従来例1)から180kg/銑鉄t(従来例2)に増加させたとき、炉内圧力損失比は、前記の右上がりの直線に沿って増加した(図6参照)。炉内圧力損失比が0.02上昇したが、操業上特に問題はなかった。
【0051】
比較例1は、微粉炭吹き込み量180kg/銑鉄tのままで計画出銑量を5400t/Dから5600t/Dへ変更した場合で、炉内圧力損失比の上昇(図6参照)に見られる炉況悪化により増産への対応ができず、何らかの対策を講じることを余儀なくされた。
【0052】
そこで、比較例2に示すように、還元鉄を炉頂から全装入鉄源の5重量%になるように装入した。その結果、炉内圧力損失比はやや低下し、それに伴いガス抜け回数も若干低下し、炉況はやや改善方向に向かったが、安定した操業を行うには至らなかった。これは、比較例1の場合を前記の(1)式に当てはめると、
X>(0.48−0.40)×100=8(重量%)
となり、還元鉄(平均粒径25mm以上、かつ金属化率が50%以上)の混合比率を8重量%を超える量とすることが必要だったにもかかわらず、5重量%であったためである。
【0053】
そこで、実施例に示すように還元鉄の混合比率を増加させ、10重量%とした。その結果、炉況は好転し、炉内圧力損失比を比較的低く抑え(図6参照)、安定した操業状態の下で計画出銑量を確保できるようになった。
【0054】
比較例3は、還元鉄の混合比率は実施例と同様10重量%のままで、還元鉄の金属化率を45%に低下させた場合である。出銑量が低下し、また、それにもかかわらず送風圧はやや増加した。これは、金属化率の低下により、融着帯の通気抵抗が実施例の場合に比較して上昇したためであると類推される。
【0055】
また、比較例4は、還元鉄の金属下率及び混合比率は実施例と同じであるが、粒子径が小さい場合である。この場合は、出銑量は増加したが、粒子径の低下による通気性の悪化が顕著となり、炉況が悪化し、還元鉄使用量の低下を余儀なくされた。
【0056】
【表1】
【0057】
【発明の効果】
微粉炭吹き込み量の増加にともなって生じる炉内圧力損失比の上昇に応じて炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量を増加させる本発明の高炉操業方法によれば、高PCI操業下にあっても、炉内の通気抵抗及び通液抵抗を増大させることなく高炉生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼結鉱および還元鉄の高温性状評価を行うための荷重軟化基礎試験装置である。
【図2】荷重軟化基礎試験装置による高温滴下試験結果の一例で、高温通気抵抗K(t) と温度の関係を示す図である。
【図3】高温滴下試験により得られた、還元鉄の金属化率と混合比率が焼結鉱の高温通気抵抗KS値に及ぼす影響を示す図である。
【図4】実高炉(内容積2700m3 )操業における使用焼結鉱の高温通気抵抗KS値と炉内圧力損失比の関係を示す図である。
【図5】試験高炉(内容積3m3 )操業における還元鉄の混合比率と炉内圧力損失比の関係を示す図である。
【図6】実高炉(内容積2700m3 )における微粉炭吹き込み量と炉内圧力損失比の関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、羽口から微粉炭を吹き込む高炉操業方法に関し、特に、微粉炭吹き込み量を増加した場合、炉内通気抵抗を増大させることなく高炉生産性の向上を図ることができる高炉操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉においては、炉頂部から固体燃料(コークス)と交互に装入された原料(鉱石)は、炉内を降下しつつ、炉下部に設置された羽口から吹き込まれる熱風とコークスとの反応によって生成する還元性ガス(CO、H2 )の作用により徐々に加熱、還元され、軟化溶融帯を形成した後、炉芯コークス層の隙間を伝って炉底に溜まり溶銑となる。溶銑は、定期的に又は連続的に出銑口から抜き出される。
【0003】
高炉を安定にしかも効率よく操業するには、炉内の通気性、通液性を良好に保って炉内を上昇するガス(還元性ガス)と炉内を降下するコークス及び鉱石との熱交換ならびに反応を効率よく行わせることが重要である。
【0004】
高炉の操業は、近年、コークス比の低減を狙い、羽口から熱風とともに多量の微粉炭を吹き込む高PCI操業へ移行しており、炉頂から装入されるコークス量は鉱石量に比較して減少(鉱石/コークス比が増大)してきている。そのため、高炉上部においては、鉱石/コークス比の増大に伴ってコークスの平均粒径が低下するので塊状帯における通気抵抗が増大する。また、高炉下部でコークスと熱風とを反応させて鉱石の還元に必要な量の還元性ガスを生成させるためには単位コークス量あたりの反応量を増大させなければならなず、コークスの反応劣化が進んでコークスの粒径が低下するとともに、粉の発生量が増大して高炉下部の炉芯コークス層で空隙低下が起こる。さらに、羽口で燃焼しなかった微粉炭の炉内での蓄積によりコークス充填層での空隙低下が起こり、上昇ガスの通気抵抗及び溶銑滓の通液抵抗(溶銑滓が炉芯コークス層を滴下して炉底へ達する際の抵抗)が増大し易い状況になっている。
【0005】
さらに、近年、原燃料供給条件の変動、粗鋼生産需給動向、設備集約等に対処するため、高炉に対して大型反応器としての生産弾力性の拡大(とりわけ増産に迅速に対応し得る性能)が要求されており、特に高PCI操業下で増産を強いられた場合、炉内の銑鉄生成速度の上昇に伴って炉芯コークス層及びコークス充填層の空隙低下が起こる。銑鉄生成速度の上昇に伴って通液量が増加し、また、前記の高炉下部におけるコークスの反応劣化が加速され、コークスの粒径が低下し、粉の発生量が増大するとともに、未燃焼微粉炭の炉内での蓄積が生じるからである。
【0006】
このような状況下にあって、高炉操業の効率及び安定性を維持した上で、なおかつ生産性を高めるためには、炉内の、特にコークス充填層の通気性、通液性を良好に保つことが必要不可欠である。
【0007】
従来、低コストの下での出銑量の増加、高炉炉芯部の粉率の低下による通気性、通液性の改善等が可能な高炉操業方法が提案されている。
【0008】
例えば、特開平9−13109号公報には、微粉炭多量吹き込み時に、羽口から微粉炭を吹き込むとともに炉頂からスクラップ、直接還元ペレット等の金属鉄原料を装入することにより、微粉炭多量吹き込みにおいて通常必要とされている羽口への酸素富化量の増加を伴わずに生産量を増加させる高炉操業方法が示されている。また、特開平5−295410号公報には、高炉炉頂中心部からスクラップあるいは粒鉄を装入することにより、炉芯部において炭素未飽和鉄と粉コークスとの浸炭反応を促進させ、炉芯部における粉率を低下させる方法が開示されている。
【0009】
また、コークスとスクラップを混合装入することによってスクラップの溶解挙動を改善し、高炉の生産性、操業安定性を確保しながら比較的多量のスクラップを高炉で溶解できる高炉へのスクラップ装入方法も提案されている(特開平8−92615号公報)。
【0010】
しかしながら、これらの方法には次のような問題点がある。すなわち、特開平9−13109号公報に示されている高炉操業方法では、熱流比の上限値または炉頂温度の下限値により金属鉄原料の装入量の上限値を設定しているが、装入金属鉄原料の増加による生産量増加とそれに伴うコークスの反応劣化の進行、および微粉炭吹き込み量の増加、による高炉内通気性抵抗の増大を避けることができない。また、特開平5−295410号公報及び特開平8−92615号公報に記載される金属鉄原料の装入技術は、燃料比の低減には効果があるが、金属鉄原料の装入量の増大に伴い、高炉炉頂部の熱流比の上昇及び炉頂温度の低下を招くので、その使用量には限界がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、高炉操業において高PCI操業を行うと、炉頂から装入されるコークス量の減少(鉱石/コークス比が増大)に伴う高炉上部における原料(コークスと鉱石)の平均粒径の低下と、単位コークス量あたりの反応量の増大に起因する高炉下部におけるコークスの反応劣化の進行、及び未燃焼微粉炭の炉内充填層への蓄積による炉芯コークス層及びコークス充填層での空隙低下が起こり、通気抵抗及び通液抵抗が増大する傾向を示す。さらに増産を図ると、炉内での銑鉄生成速度の上昇に伴い、この傾向は一層顕著になる。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、高PCI操業下にあって、炉内の通気抵抗及び通液抵抗を増大させることなく高炉生産性の向上を可能とする高炉操業方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記の高炉操業方法にある。
【0014】
羽口からの微粉炭の吹き込み量を増加させる操作をともなう高炉操業方法であって、微粉炭吹き込み量の増加にともなって生じる送風圧Pに対する羽口と炉頂間の圧力損失ΔPの比(ΔP/P)の上昇量を測定し、あらかじめ求めてあるΔP/Pの上昇量と炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量の関係に基づいて前記金属鉄を含む鉄原料の炉頂からの装入量を増加させることを特徴とする高炉操業方法。
【0015】
前記の「金属鉄を含む鉄原料」とは、金属状態の鉄を含む鉄原料で、例えば、還元鉄、スクラップ等である。
【0016】
上記の高炉操業方法において、炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料として、平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄を用いるのが、高炉生産性の向上を図る上で好ましい。なお、ここでいう「平均粒径」とは、累積粒度分布曲線において、重量50%を示す点における粒径をいう。
【0017】
さらに、ΔP/P、すなわち、送風圧に対する羽口と炉頂間の圧力損失の比(この比を、以下、「炉内圧力損失比」という)の上昇量が微粉炭吹き込み量の増加量30kg/銑鉄tあたり0.025以上であるとき、炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料を平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄とし、その鉄源中における割合を下記(1)式を満たすようにする方法を採用するのが好ましい。
【0018】
X>{(△P/P)−(△P/P)o }×100 ・・(1)
ここで、
である。
【0019】
ここでいう「鉄源」とは、鉄鉱石、焼結鉱をはじめとする鉄原料であり、上記の「金属鉄を含む鉄原料」もこれに含まれる。
【0020】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく検討を進めるにあたり、羽口から多量の微粉炭を吹き込む高微粉炭吹き込み時に、焼結鉱に還元鉄を混合するとともに、高炉内融着帯の通気性の良否を判断する指標として高温通気抵抗KS値を用いることを試みた。高炉内融着帯の通気性の良否によって、炉内の通気抵抗及び通液抵抗が支配されるからである。
【0021】
高温通気抵抗KS値とは、「鉄と鋼」72(1986),P.1856に記載されている焼結鉱の品質評価基準である。
【0022】
図1は、KS値の測定に用いられる荷重軟化基礎試験装置の概要を示す図である。この装置は、炉の中心部に高炉内の温度、ガス組成及び荷重を模擬できる坩堝が配置され、その中に充填された鉄源試料が加熱されて軟化し、滴下する際の試料充填層内の圧力損失を測定することができるように構成されている。なお、試料温度、充填された鉄源試料の軟化に伴う収縮量、排ガス量・組成、及び滴下物重量の測定も可能である。前記試料充填層内の圧力損失から、下記(2)式により高温通気抵抗K(t) が求められる。
【0023】
図2は、この装置を用いて行った高温滴下試験結果の一例で、図示するように、高温通気抵抗K(t) は試料温度が上昇して軟化が始まると上昇し、滴下することにより低下する。図中のKSの符号を付した部分の面積、すなわち高温通気抵抗K(t) の温度積分値が高温通気抵抗KS値であり、下記(3)式で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
上記図1に示した装置を用いて金属化率の異なる還元鉄と焼結鉱の混合原料の高温性状を調査した。
【0026】
坩堝内最下層にコークス、その上部に鉄源としての焼結鉱と金属化率の異なる各種還元鉄粒子の均一混合物を充填した充填層を形成し、所定の昇温速度及びガス組成になるように制御するとともに、上部から所定の荷重をかけ、鉄源を溶融滴下させた。その際、充填層内で発生する圧力差ΔPを連続測定し、上記(3)式により、KS値を算出した結果を、図3に示す。焼結鉱単味の場合、KS値は900〜1000であるが、還元鉄の混合率が増加するほど、また、金属化率が高いほど、KS値は低下する。特に金属化率が50%の場合、KS値の低下は顕著で、還元鉄を50%以上混合することによりKS値は焼結鉱単味の場合に比べて10%以下に低下する。
【0027】
図4は、炉内容積2700Nm3 の高炉の操業中に得られた結果で、鉄源として使用した焼結鉱のKS値と炉内圧力損失比ΔP/Pの関係を表すものである。図示するように、焼結鉱のKS値と炉内圧力損失比ΔP/Pの間には、明瞭な正の相関関係があり、高温通気抵抗KS値を通気性の良否を判断する指標として使用できることが明らかである。
【0028】
これらの結果から、微粉炭吹き込み量を増加した場合、炉内圧力損失比の上昇(換言すれば、通気抵抗の増大)に応じて炉頂から装入する鉄源、例えば焼結鉱のKS値を低下させてやれば、通気抵抗を増大させることなく高炉操業を行うことができると考えられる。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
前記のように、高炉操業において高PCI操業を行うと、塊状帯における通気抵抗が増大し、また、炉芯コークス層及びコークス充填層で空隙低下が起こって通気抵抗及び通液抵抗が増大する。さらに増産を図ると、この傾向は一層顕著になる。本発明は、このような高PCI操業において、微粉炭吹き込み量を増加した場合、炉内圧力損失比ΔP/Pの上昇の程度に応じ、あらかじめ求めてある炉内圧力損失比と炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量の関係に基づいて前記金属鉄を含む鉄原料の炉頂からの装入量を増加させる高炉操業方法である。
【0031】
微粉炭吹き込み量を増加した場合、前述したように、コークスの反応劣化の進行、羽口での未燃焼微粉炭の炉内蓄積等に起因して炉内圧力損失比が上昇するが、その上昇量に応じて炉頂からの金属鉄を含む鉄原料の装入量を増加させるのである。前記の図3に示した結果から類推されるように、鉄源(例えば、焼結鉱)に金属鉄を含む鉄原料を混合することによって焼結鉱のKS値は低下し、一方、前記の図4に示したように、鉄源のKS値の低下に伴い炉内圧力損失比も低下するので、微粉炭吹き込み量の増加による炉内圧力損失比の上昇は相殺され、もしくは緩和される。
【0032】
前記の「あらかじめ求めてある炉内圧力損失比と炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量の関係」は、実炉による操業データを基にして求めるのがよいが、実操業との相関性が確認されていれば、一部前記の荷重軟化基礎試験装置によるデータを用いてもよい。
【0033】
例えば、先に述べた図3は、鉄源が焼結鉱、金属鉄を含む鉄原料が還元鉄の場合の金属鉄を含む鉄原料量と使用する鉄源のKS値の関係の一例であり、また、図4は鉄源のKS値と炉内圧力損失比の関係の一例であるが、これら両図を金属鉄を含む鉄原料量と炉内圧力損失比の関係を示す図に置き換えることにより求めることができる。なお、置き換えに際しては、上記両関係における鉄源のT.Fe(全鉄成分値)を考慮し、両者が同じT.Feになるように配慮する。
【0034】
金属鉄を含む鉄原料の炉内への装入は炉頂から行う。焼結鉱その他の鉄源の装入時に、あらかじめ定めた装入量になるように適宜混合してやればよい。
【0035】
上記本発明の高炉操業方法によれば、高PCI操業下にあっても、炉内の通気抵抗及び通液抵抗を増大させることなく高い生産性を維持しつつ操業を行うことができる。
【0036】
上記本発明の高炉操業方法において、炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料として、平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄を用いるのが、高炉生産性の向上を図る上で好ましい。これは、前記の図3に示した結果から明らかである。
【0037】
また、次の図5に示す結果から、平均粒径25mm以上の還元鉄を用いるのが好ましいといえる。
【0038】
図5は、炉内容積3m3 の試験高炉において、平均粒径が15mm〜25mmの範囲の焼結鉱に、金属化率がいずれも90%で、平均粒径が5mm〜15mm、20mm〜30mm、または45mm〜55mmの範囲に入るように調整した3種類の還元鉄を、別々に、それぞれ混合比率を変えて混合し、5日間の連続操業を行った際に得られた還元鉄混合比率と炉内圧力損失比の関係を示した図である。なお、図中に示した「炉全体」というのは、これまで述べてきた炉内圧力損失比(ΔP/P;ΔPは羽口と炉頂間における圧力損失、Pは羽口からの送風圧)を意味するが、「炉上部」とは、高炉の上部、すなわち融着帯の上端(塊状帯の下端)の部分と炉頂間における圧力損失の送風圧Pに対する比である。また、平均粒径が5mm〜15mm、20mm〜30mm、および45mm〜55mmの範囲に入るように調整した還元鉄をそれぞれ平均粒径10mm、平均粒径25mm、および平均粒径50mmの還元鉄という(ただし、図5では還元鉄粒径10mm、25mm、および50mmと表示)。
【0039】
この図に示されるように、「炉全体」の炉内圧力損失比(通気抵抗)は、荷重平均粒径10mmの場合を除いて低下しており、還元鉄の混合率が高くなるほど低下の度合いが大きい。すなわち、炉内圧力損失比が小さくなる。すなわち、平均粒径25mm以上の還元鉄を用いるのが好ましいといえる。
【0040】
なお、平均粒径10mmの還元鉄を使用した場合、混合比率が50%までは逆に通気抵抗が増大する傾向が見られたが、これは、以下の理由によるものと推測できる。
【0041】
まず、図5の「炉上部」の圧力損失比(通気抵抗)を見ると、通気抵抗は平均粒径50mmの還元鉄を混合した場合を除いて、混合率が高くなるほど、また、還元鉄の粒径が小さくなるほど増大している。炉上部の塊状帯においては、還元鉄の粒径が小さくなる(つまり、比表面積が大きくなる)と通気抵抗が上昇するためである。一方、融着帯及び炉下部においては、KS値の低下と還元鉄を使用することによるスラグ量の低下によって逆に通気抵抗は低下し、その低下の程度は塊状帯における通気抵抗の上昇幅を上回る。したがって、「炉全体」でみた場合は、還元鉄の混合率が高くなるほど通気抵抗は低下する。
【0042】
しかし、特に粒子径の小さい平均粒径10mmの還元鉄を混合した場合は、焼結鉱の粒子径との差異により、還元鉄が焼結鉱の各粒子の間に入り込んでって密に充填された状態となり、目詰まりが生じ、混合比率が50%に達するまでは、上記とは逆に炉上部における通気抵抗の上昇の方が融着帯の通気抵抗低下幅を上回る。したがって、混合比率が50%までは逆に通気抵抗が増大すると考えられる。
【0043】
さらに、本発明の高炉操業方法においては、炉内圧力損失比の上昇量が微粉炭吹き込み量の増加量30kg/銑鉄tあたり0.025以上であるとき、すなわち、微粉炭吹き込み量に対する炉内圧力損失比の上昇比率(勾配)に換算して、0.025/30 0.00083以上であるとき、炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料として、平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄を使用し、その還元鉄の鉄源中における割合(混合比率)を前記(1)式を満たすようにする方法を採用するのが好ましい。
【0044】
「炉内圧力損失比の上昇量が微粉炭吹き込み量の増加量30kg/銑鉄tあたり0.025以上であるとき」という規定は、微粉炭吹き込み量を増大させた場合の炉内圧力損失比の上昇量についての実高炉における実績値、及び高炉ガス流れモデルによる計算値により得られた結果に基づくものである。
【0045】
また、「炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料として、平均粒径25mm以上で、かつ金属化率が50%以上の還元鉄を使用する」こととしたのは、前述した理由により好ましい手段だからである。
【0046】
還元鉄の装入量を「前記(1)式を満たす」こととしたのは、これを満たす量であれば、高炉内の通気抵抗の増大を防止し、炉況の悪化を避けることができるからである。なお、還元鉄の装入量の上限は特に規定していない。技術的には、還元鉄の装入量に何ら制限はないからである。
【0047】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
【0048】
【実施例】
炉内容積2700m3 の高炉により本発明の操業方法を実施した。また、同じ高炉で従来の操業方法及び比較のための操業方法も実施した。
【0049】
表1にそれら各方法の操業条件とガス抜け回数および出銑量(計画と実績)を示す。また、図6にそれら各方法で操業したときの微粉炭吹き込み量と炉内圧力損失比の関係を示す。なお、図6中における右上がりの直線は、従来の方法で操業しながら微粉炭を吹き込んだ場合の炉内圧力損失比の増大割合を表す。
【0050】
従来の操業方法(従来例1及び2)では、微粉炭吹き込み量を150kg/銑鉄t(従来例1)から180kg/銑鉄t(従来例2)に増加させたとき、炉内圧力損失比は、前記の右上がりの直線に沿って増加した(図6参照)。炉内圧力損失比が0.02上昇したが、操業上特に問題はなかった。
【0051】
比較例1は、微粉炭吹き込み量180kg/銑鉄tのままで計画出銑量を5400t/Dから5600t/Dへ変更した場合で、炉内圧力損失比の上昇(図6参照)に見られる炉況悪化により増産への対応ができず、何らかの対策を講じることを余儀なくされた。
【0052】
そこで、比較例2に示すように、還元鉄を炉頂から全装入鉄源の5重量%になるように装入した。その結果、炉内圧力損失比はやや低下し、それに伴いガス抜け回数も若干低下し、炉況はやや改善方向に向かったが、安定した操業を行うには至らなかった。これは、比較例1の場合を前記の(1)式に当てはめると、
X>(0.48−0.40)×100=8(重量%)
となり、還元鉄(平均粒径25mm以上、かつ金属化率が50%以上)の混合比率を8重量%を超える量とすることが必要だったにもかかわらず、5重量%であったためである。
【0053】
そこで、実施例に示すように還元鉄の混合比率を増加させ、10重量%とした。その結果、炉況は好転し、炉内圧力損失比を比較的低く抑え(図6参照)、安定した操業状態の下で計画出銑量を確保できるようになった。
【0054】
比較例3は、還元鉄の混合比率は実施例と同様10重量%のままで、還元鉄の金属化率を45%に低下させた場合である。出銑量が低下し、また、それにもかかわらず送風圧はやや増加した。これは、金属化率の低下により、融着帯の通気抵抗が実施例の場合に比較して上昇したためであると類推される。
【0055】
また、比較例4は、還元鉄の金属下率及び混合比率は実施例と同じであるが、粒子径が小さい場合である。この場合は、出銑量は増加したが、粒子径の低下による通気性の悪化が顕著となり、炉況が悪化し、還元鉄使用量の低下を余儀なくされた。
【0056】
【表1】
【0057】
【発明の効果】
微粉炭吹き込み量の増加にともなって生じる炉内圧力損失比の上昇に応じて炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量を増加させる本発明の高炉操業方法によれば、高PCI操業下にあっても、炉内の通気抵抗及び通液抵抗を増大させることなく高炉生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼結鉱および還元鉄の高温性状評価を行うための荷重軟化基礎試験装置である。
【図2】荷重軟化基礎試験装置による高温滴下試験結果の一例で、高温通気抵抗K(t) と温度の関係を示す図である。
【図3】高温滴下試験により得られた、還元鉄の金属化率と混合比率が焼結鉱の高温通気抵抗KS値に及ぼす影響を示す図である。
【図4】実高炉(内容積2700m3 )操業における使用焼結鉱の高温通気抵抗KS値と炉内圧力損失比の関係を示す図である。
【図5】試験高炉(内容積3m3 )操業における還元鉄の混合比率と炉内圧力損失比の関係を示す図である。
【図6】実高炉(内容積2700m3 )における微粉炭吹き込み量と炉内圧力損失比の関係を示す図である。
Claims (2)
- 羽口からの微粉炭の吹き込み量を増加させる操作をともなう高炉操業方法であって、微粉炭吹き込み量の増加にともなって生じる送風圧Pに対する羽口と炉頂間の圧力損失ΔPの比(ΔP/P)の上昇量を測定し、あらかじめ求めてあるΔP/Pの上昇量と炉頂から装入する金属鉄を含む鉄原料量の関係に基づいて前記金属鉄を含む鉄原料の炉頂からの装入量を増加させることを特徴とする高炉操業方法。
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