JP3586926B2 - 内燃機関のバルブステムシール - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はブローバイガス量とオイル消費量を低減し得る内燃機関のバルブステムシールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内燃機関のバルブとバルブガイドとの間からのオイル漏れ(オイル下がり)を防ぐために、ゴム製のバルブステムシールが使用されている。また、このバルブステムシールは、単にオイル漏れを防ぐだけでなく、バルブとバルブガイドの摺動面を潤滑するために、適度な量のオイルを安定して供給できるようにする機能を有している。
【0003】
また、バルブステムシールは、高温のエンジンオイルに対する耐久性を持たせるため、通常は材料としてフッ素ゴム等が使用されており、また、リップの変形によって、このバルブステムシール自体とバルブステムとの間の心ずれ等の寸法誤差を吸収する機能も有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近の大型自動車では、制動力を向上させるために排気ブレーキを採用している車両が増加しつつあるが、排気ブレーキを作動させると、排気バルブから排気ブレーキまでの間の排気通路の内圧が高まり、一般的に6〜7気圧に達することもある。その場合、高圧の排気ガスがバルブステムとバルブガイドの間を通って、排気ポートからシリンダヘッドカバー内へ、ブローバイガスとして吹き抜けることになる。
【0005】
この状態では、ブローバイガスの流れによって、前記バルブステムシールのリップが開き、バルブステムから離されることになるので、ブローバイガスをシールできない状態に陥り、ブローバイガス量が増加するという問題が生じる。
また、現在ではクランクケースベンチレーション(PCV)システムを装着するケースが増加しており、シリンダヘッドカバー内に流入したブローバイガスは、PCVバルブを通って再び燃焼室に送られることになる。その際、動弁系の潤滑のためにシリンダヘッドカバー内に充満しているオイルミストが、このブローバイガスと共に燃焼室に送られることになるので、ブローバイガスの増加に伴ってオイルの消費量が増加するという問題が生じる。
【0006】
また、PCVシステムを装着していない場合には、ブローバイガスはシリンダヘッドから大気中に放出されるので、それに伴い、前記同様にオイルミストも大気中に放出されることになり、やはりオイル消費の問題を生じるという問題がある。
本発明は以上の問題点に鑑みて、排気ブレーキを作動させることにより、排気マニホールドの内圧が高くなった場合であっても、排気ポートからシリンダヘッドカバー内へのブローバイガス量を低減することができ、それと共にオイル消費量も低減できる内燃機関のバルブステムシールを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の内燃機関のバルブステムシールは、内燃機関のバルブを案内するバルブガイドの上端部に前記バルブガイドと、前記バルブガイドの外側を覆うカラーとの間に挟着されて取り付けられ、このバルブガイドとバルブステム間からのオイル下がりを防止するバルブステムシールにおいて、前記バルブステムに摺動接触するように形成された潤滑油量調整用の第1リップと、この第1リップの下方に形成した受圧面と、この受圧面の下方に前記バルブステムから離間して形成され、前記内燃機関の排気マニホールド内圧が所定値以上になった場合に前記受圧面に作用する前記バルブステムおよび前記バルブガイド間からのブローバイガスの圧力により前記バルブステムの摺動接触面から離間する前記第1リップの変形に伴って変形して前記バルブステムに摺動接触するガスシール用の第2リップとを設けたものである。
【0008】
前記第1リップはオイル下がりを抑制して、バルブガイドとバルブステム間に供給される潤滑油量を調整するための通常のリップであり、常時バルブステムに摺動接触するように形成する。
一方、前記第2リップはバルブガイドとバルブステム間を吹き抜けるブローバイガスをシールするためのものであり、排気ブレーキが作動していない状態か又は作動していても弁開度が比較的に大きい状態であることにより、マニホールド内圧が所定の圧力よりも低い場合には、バルブステムから離間し、排気ブレーキの弁開度が比較的に小さい状態であることにより、マニホールド内圧が所定の圧力以上となった場合には、弾性変形してバルブステムに摺動接触するような形状に形成する。
【0009】
尚、本発明のバルブステムシールは、排気バルブ側のみならず、吸気バルブ側に採用しても良く、例えば過給機付きエンジンの吸気バルブ側に取り付けた場合には、吸気マニホールド内圧が高くなるので、吸気ポートからシリンダヘッドカバー内へ吹き抜けるブローバイガス量の低減に寄与する。
【0010】
【作 用】
本発明は以上の構成を有しているため、排気ブレーキが作動していない状態か又は作動していても弁開度が比較的に大きい状態であることにより、マニホールド内圧が所定値に達しない場合には、潤滑油量調整用の第1リップがバルブステムに摺動接触する通常のシール状態を保つ。
【0011】
一方、排気ブレーキを作動させ、弁開度をある程度まで絞ると、マニホールド内圧が所定値以上になり、第1リップの下方に形成した受圧面に作用するブローバイガスの圧力によって、この第1リップが変形し、バルブステムの摺動接触面から離間する。
この時、第1リップの変形に伴って第2リップも変形し、ガスシール用の第2リップがバルブステムに摺動接触する状態となり、ブローバイガスの流量を低減するように作用する。
【0012】
また、ブローバイガス量の低減に伴って、PCVバルブ経由で燃焼室に流出、または、大気中に放出されるシリンダヘッドカバー内のオイルミストも減少するため、オイル消費量も減少する。
【0013】
【実施例】
次に図面を参照して本発明の内燃機関のバルブステムシールの一実施例について説明する。先ず、図1に示す本実施例では、排気バルブのバルブステム1を摺動自在に案内するバルブガイド2の上端部に、断面逆L字形で略円筒状に形成したカラー3と、前記バルブガイド2との間に挟着されるフッ素ゴム製のバルブステムシール4を取り付けている。
【0014】
また、図2に要部を拡大して示すように、このバルブステムシール4の上端部付近に形成した環状溝4aには、外側からこのバルブステムシール4をバルブステム1側に押圧する環状のスプリング5を嵌合して、バルブステム1とこれに摺動接触する第1リップ4bとの接触面に、所望のシール面圧を発生させ、オイル下がりを抑制すると共に、バルブガイド2とバルブステム1間に供給される潤滑油量を調節している。
【0015】
また、この第1リップ4bの下方には、バルブステム1の外径よりも大きい内径を有する第2リップ4cを、内向き且つ下向きとなるように斜め方向に突出させ、図示していない排気ブレーキが作動していないか又は作動していても弁開度が大きい場合には、この第2リップ4cの先端部が、常時、バルブステム1の外周面から離間して、クリアランスCが形成されるようにしておく。
【0016】
この状態から、排気ブレーキを作動させ、弁開度をある程度まで絞っていくと、排気マニホールドの内圧が高まり、排気ポートからシリンダヘッドカバー内に向けて、前記バルブガイド2とバルブステム1との間の僅かな隙間を排気ガスが吹き抜ける。この時、バルブステムシール4は図3に示す如く弾性変形する。
即ち、図2において、ブローバイガスの圧力は、第1リップ4bの下方に形成される第1受圧面4dに作用して、第1リップ4bを押し上げ、この第1リップ4bをバルブステム1の外周面から離間させる。この第1リップ4bの変形に伴って、図3に示す如く、第2リップ4cの角度は斜め方向から水平方向に近い角度まで変化し、第2リップ4cがバルブステム1に摺動接触する状態となる。
【0017】
この状態では、ブローバイガスの圧力は、第2リップ4cの下方に形成される第2受圧面4eに作用して、この第2リップ4cを下方から支える状態となり、第2リップ4cとバルブステム1との接触面に作用するシール面圧を高めるような働きをする。
尚、排気ブレーキの作動が停止するか、或いは排気ブレーキの弁開度がある程度まで大きくなった場合には、排気マニホールドの内圧が下がり、それに伴ってブローバイガスの圧力が低下するので、ゴム製のバルブステムシール4は、それ自体の弾性力により、図2に示す形状に復元する。
【0018】
本発明者等が本実施例のバルブステムシール4を、従来型のものと比較して、ブローバイガス量とオイル消費量を測定したところ、排気ブレーキ作動時におけるブローバイガス量は、従来型のものが 250L/min であったのに対し、本実施例のものは 150L/min まで下がり、約40%も削減することができ、又、オイル消費量は、従来型のものが 150g/hであったのに対し、本実施例のものは75g/hに減少し、半減させることができた。
【0019】
尚、上記した実施例では、本発明を排気バルブ側のバルブステムシール4として実施した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、高ブースト圧の過給機付きエンジンの吸気バルブ側に適用することにより、吸気ポートからシリンダヘッドカバー内へ吹き抜けるブローバイガスの流量を低減することも可能である。
【0020】
【発明の効果】
本発明の内燃機関のバルブステムシールは、内燃機関のバルブを案内するバルブガイドの上端部に前記バルブガイドと、前記バルブガイドの外側を覆うカラーとの間に挟着されて取り付けられ、このバルブガイドとバルブステム間からのオイル下がりを防止するバルブステムシールにおいて、前記バルブステムに摺動接触するように形成された潤滑油量調整用の第1リップと、この第1リップの下方に形成した受圧面と、この受圧面の下方に前記バルブステムから離間して形成され、前記内燃機関の排気マニホールド内圧が所定値以上になった場合に前記受圧面に作用する前記バルブステムおよび前記バルブガイド間からのブローバイガスの圧力により前記バルブステムの摺動接触面から離間する前記第1リップの変形に伴って変形して前記バルブステムに摺動接触するガスシール用の第2リップとを設けたので、以下の効果を奏することができる。
【0021】
排気ブレーキが作動していない状態か又は作動していても弁開度が比較的に大きい状態であることにより、マニホールド内圧が所定値に達しない場合には、潤滑油量調整用の第1リップがバルブステムに摺動接触する通常のシール状態を保ち、ブローバイガス量を少量に抑えることができる。
一方、排気ブレーキを作動させ、弁開度をある程度まで絞ると、マニホールド内圧が所定値以上になり、第1リップの下方に形成した受圧面に作用するブローバイガスの圧力によって、この第1リップが変形するが、この時、第1リップの変形に伴って第2リップも変形し、ガスシール用の第2リップがバルブステムに摺動接触する状態となるので、高圧のブローバイガスの流量を大幅に低減することができる。
【0022】
また、ブローバイガス量の低減に伴って、PCVバルブ経由で燃焼室に流出、または、大気中に放出されるシリンダヘッドカバー内のオイルミストも減少するため、オイル消費量も低減することができる。
更に、通常、第2リップはバルブステムと摺動接触していないので、この第2リップの耐久性を高めることができ、長期間に渡って優れたガスシール性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における内燃機関のバルブステムシールを示す縦断面図である。
【図2】マニホールド内圧が所定値未満の場合における、図1に示すバルブステムシールの拡大図である。
【図3】マニホールド内圧が所定値以上の場合における、図1に示すバルブステムシールの拡大図である。
【符号の説明】
1 バルブステム
2 バルブガイド
4 バルブステムシール
4b 第1リップ
4c 第2リップ
4d 受圧面(第1受圧面)
Claims (1)
- 内燃機関のバルブを案内するバルブガイドの上端部に前記バルブガイドと、前記バルブガイドの外側を覆うカラーとの間に挟着されて取り付けられ、このバルブガイドとバルブステム間からのオイル下がりを防止するバルブステムシールにおいて、前記バルブステムに摺動接触するように形成された潤滑油量調整用の第1リップと、この第1リップの下方に形成した受圧面と、この受圧面の下方に前記バルブステムから離間して形成され、前記内燃機関の排気マニホールド内圧が所定値以上になった場合に前記受圧面に作用する前記バルブステムおよび前記バルブガイド間からのブローバイガスの圧力により前記バルブステムの摺動接触面から離間する前記第1リップの変形に伴って変形して前記バルブステムに摺動接触するガスシール用の第2リップとを設けた内燃機関のバルブステムシール。
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