JP3586811B2 - 電磁誘導加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁誘導コイルにより磁界を発生させて容器の誘導損により容器を加熱して食品等を調理する電磁誘導加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁誘導加熱装置の使用例としては電磁調理器や炊飯器等が一般に知られており、図16は例えば特開平6−253974号公報に開示された従来の炊飯器の概略構成を示す断面図である。
図において、11は炊飯器本体、12は炊飯器本体11内に設置され、被加熱物を入れる容器である内釜、13は内釜12の底部下方及び側部外周に間隙を有して配線された電磁誘導コイル、14は内釜12の温度を検出する内釜用温度センサ、15は内釜12の側部に電極が接触、又は接着された超音波振動子、16は電磁誘導コイル13に高周波電流を流す第1インバータ、17は超音波振動子15に高周波電力を供給する第2インバータ、18は炊飯器本体11の側部に設けられた操作パネルである。
【0003】
次に、前記のように構成された従来の炊飯器の動作について図3を参照しながら説明する。なお、図3は炊飯の各過程における内釜の温度変化を示す図である。
洗米した米1と適量の水2が入った内釜12を炊飯器本体11にセットして、操作パネル18に設けられた炊飯スイッチ(図示せず)をオンすると、まず、予熱過程に入る。この過程では、60℃を越えない程度に電磁誘導コイル13に高周波電流を第1インバータ16を通じて供給し、内釜12内の米1と水2を加温する。この際、電磁誘導コイル13への通電量と内釜用温度センサ14の検出温度とに基づいて大まかに炊飯量を検知し、さらに、超音波振動子15に超音波振動に必要な高周波電力を第2インバータ17を介して供給する。
【0004】
炊飯開始から約15分が経過すると自動的に炊飯過程に入って、内釜12の温度が100℃なるように、即ち、内釜12内の水が沸騰するように制御する。この制御により内釜12の温度が100℃になると、この沸騰状態を約10分間継続する。その後は、電磁誘導コイル13への通電を停止して蒸らし過程に入る。この蒸らし過程ではその状態をほぼ15分間継続し、蒸らし過程終了時に操作パネル18の表示ランプと終了報知音(図示せず)とを通じて炊飯終了をユーザに知らせる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来の炊飯器は、予熱過程時に超音波振動で内釜12内の米1の吸水を促進させて、炊飯性能を向上させると共に、炊飯時間を短縮させるようにしたものであるが、内釜12に超音波振動子15が接触している炊飯器では、内釜12を炊飯器本体11から取り出して洗浄したり、内釜12で米1を洗った場合、超音波振動子15の先端部の電極が腐食する懸念があった。また、内釜12に超音波振動子15が接着されている炊飯器では、その超音波振動子15が突出しているため、洗浄がし難く不便であった。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、超音波振動子を使用せずに、内釜等の容器自身を騒音がでないように超音波振動させ、容器内の米の吸水を促進させるようにしても容器の洗浄や容器での洗米等が容易に行え、しかも、美味しい飯を炊飯できる電磁誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る電磁誘導加熱装置は、電磁誘導コイルに発生する磁界により内釜を加熱する電磁誘導加熱装置であって、前記電磁誘導コイルと内釜との間に設けられ、前記磁界により振動して当該内釜に伝える反磁性材を備えたものである。
【0008】
本発明の請求項2に係る電磁誘導加熱装置は、前記反磁性材は、磁束を通過させる穴を有し、電磁誘導コイルと内釜との間の一部に設けられたものである。
【0009】
本発明の請求項3に係る電磁誘導加熱装置は、内釜の下方に設けられたモータを有し、前記反磁性材は、電磁誘導コイルと内釜との間の一部に設けられ、前記モータを中心として回転することを要旨とするものである。
【0010】
本発明の請求項4に係る電磁誘導加熱装置は、前記電磁誘導コイルの長さは、内釜の平面の中心を通る線を挟む一方の領域のコイル長が他方の領域のコイル長より長くなるように設定されていることを要旨とするものである。
【0011】
本発明の請求項5に係る電磁誘導加熱装置は、被加熱物を入れる容器、この容器を電磁誘導するための電磁誘導コイル、この電磁誘導コイルに流れる高周波電流を供給するインバータ及びこのインバータを制御する制御手段とを備えた電磁誘導加熱装置において、前記容器と電磁誘導コイルの間に磁束を変化させる中間材を設け、この中間材により容器に伝わる磁界を歪め、前記容器に発生する振動を増幅するものである。
【0012】
本発明の請求項6に係る電磁誘導加熱装置は、被加熱物を入れる容器、この容器を電磁誘導するための電磁誘導コイル、この電磁誘導コイルに流れる高周波電流を供給するインバータ及びこのインバータを制御する制御手段とを備えた電磁誘導加熱装置において、前記制御手段は、前記容器に振動を発生させるように前記容器の固有の形状と物性に合わせて設定した前記高周波電流の周波数に基づいてインバータを制御すると共に、容器と電磁誘導コイルの間に磁束を変化させる中間材を設け、この中間材により容器に伝わる磁界を歪め、前記容器に発生する振動を増幅するものである。
【0013】
本発明の請求項7に係る電磁誘導加熱装置は、中間材を、強磁性材料、常磁性材料、反磁性材料、およびそれらの含有物質としたものである。
【0014】
本発明の請求項8に係る電磁誘導加熱装置において、中間材は、磁束を通過させる穴を有し、電磁誘導コイルと容器との間の一部に設けられたものである。
【0015】
本発明の請求項9に係る電磁誘導加熱装置は、中間材を回転、または横復動、または上下復動させるようにしたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る電磁誘導加熱装置として炊飯器の構成を示す断面図、図2は蓋体及び内釜を外したときの炊飯器の平面図である。なお、図7で説明した従来例と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0019】
図において、21は炊飯器本体11に回動自在に設けられた蓋体、22は蓋体21に取り付けられた下蓋、23は下蓋22の温度を検出する蓋用温度センサ、24は電磁誘導コイル13に高周波電流を供給するインバータである。25は操作パネル18側に設けられた制御回路部で、内釜12の底部に接触するように取り付けられた内釜用温度センサ14と蓋用温度センサ23とからの検出温度に基づいて炊飯状態を認識し、これに基づいてインバータ24を制御する。
【0020】
26は例えば反磁性材の銅、銀、黒鉛、ビスマス、金の何れかからなるリング状の磁束変調板で、内釜用温度センサ14を中心として内釜12と電磁誘導コイル13との間に設けられ、電磁誘導コイル13に流れる高周波電流に応じて発生する磁界で振動する。この振動は、電磁誘導コイル13の周囲に発生する磁束を反磁性材の磁束変調板26が乱すことによって起こるもので、内釜12の底部に対して水平方向に振動する。
【0021】
ここで、磁束変調板26を用いなかった場合と使用した場合の振動について実験結果を述べる。磁束変調板26を用いなかった場合において、電磁誘導コイル13に流す電流の周波数を内釜12の固有振動数に合わせたときは、内釜12が振動して騒音が発生した。この時の振動を振動センサと超音波音圧計を用いて測定すると0.1mVの電圧であった。
【0022】
一方、リング状の磁束変調板26を内釜12と電磁誘導コイル13との間に配置して、前記と同様の周波数で電磁誘導コイル13に磁界を発生させた場合は、騒音を発することなく大きな振幅の振動が発生した。この時の振動を前記と同様の方法で測定すると2.0mVの電圧となり、前者と比べ振動の振幅が大きくなっていることが判った。
【0023】
なお、磁束変調板26を使用しなかった場合では、内釜12を垂直方向に振動させる力が発生するが、米1と水2を含んだ内釜12の重量(数Kg)に匹敵するだけの力が発生せず、内釜12全体を振動させるには不十分であった。
【0024】
次に、実施の形態1に係る炊飯器の動作を図3及び図4を参照しながら説明する。図4は炊飯の各過程における電磁誘導コイルの動作を示すタイミングチャートである。なお、動作説明の便宜上、最初に誘導加熱による発熱で炊飯する動作を説明し、その後に磁束変調板の振動について説明する。
洗米した米1と適量の水2が入った内釜12を炊飯器本体11にセットして、炊飯開始を操作パネル18で操作すると、制御回路部25がインバータ24を制御して電磁誘導コイル13に通電(高周波電流)し、予熱過程に入る。この過程では、内釜12の温度が約60℃程度になるように、電磁誘導コイル13に供給する通電量をインバータ24を通じて制御する。
【0025】
炊飯開始から約15分が経過すると自動的に炊飯過程に入って、内釜12の温度が100℃に達するように電磁誘導コイル13への通電を制御する。この時、内釜用温度センサ14と蓋用温度センサ23の検出温度を通じて内釜12の温度を監視し、その温度が100℃に達したときはインバータ24を制御して、その内釜12の温度が100℃に保持されるようにする。そして、内釜12内の水がなくなったことを内釜用温度センサ14を通して検知すると、インバータ24の制御を停止して蒸らし過程に入る。この蒸らし過程では、内釜12の温度を100℃に保持するために断続的に電磁誘導コイル13に約15分間通電する。
【0026】
一方、磁束変調板26は、予熱過程及び炊飯過程において、電磁誘導コイル13に電流が流れたときに振動する。その電磁誘導コイル13に流れる電流の方向に基づいて発生する磁界により水平方向に振動する。この振動は、前述したように磁束変調板26が磁束を乱すことにより起こり、超音波となって内釜12を振動させ、その中の米1と水2とに伝える。
【0027】
その磁束変調板26を振動させながら炊飯した飯と、そうでない通常の方法で炊飯した飯の硬さ及び粘りを比較すると、下記の表1の通りになった。この表1に示す数値は飯をレオロメータにより測定した結果で、振動中に炊飯した飯の硬さは、振動を与えていない飯と比べ数値が小さく、即ち柔らかくなっており、粘りについては、逆に振動を与えた飯の方がその数値が大きくなり、粘りのある飯ができたという結果が得られた。
【0028】
【表1】
【0029】
以上のように実施の形態1においては、内釜12と電磁誘導コイル13との間に配置したリング状の磁束変調板26を、電磁誘導コイル13に発生する磁界で振動させるようにしたので、従来技術のような超音波振動子15が不要になり、このため、内釜12の着脱が簡単で、内釜12の洗浄や内釜12での洗米が容易にでき、しかも、美味しい飯ができるという効果がある。
【0030】
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2に係る電磁誘導加熱装置として炊飯器の構成を示す断面図、図6は蓋体及び容器である内釜を外したときの炊飯器の平面図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
【0031】
図において、28はコイルべース、51は例えば強磁性材料(たとえば鉄、コバルト、ニッケル)、常磁性材料(たとえばアルミニウム、クロム、チタン)、反磁性材料(たとえば黒鉛、ビスマス、銅、銀、金)、およびそれらの含有物質からなるリング状の中間材である磁束変調板で、内釜用温度センサ14を中心として内釜12と電磁誘導コイル13との間に設けられ、電磁誘導コイル13に流れる高周波電流に応じて発生する磁界を歪め、内釜12の振動を増幅するよう作用する。この振動は、電磁誘導コイル13の周囲に発生する磁束を磁束変調板51が乱すことによって起こるものである。
【0032】
ここで、磁束変調板51を用いなかった場合と使用した場合の振動について実験結果を述べる。磁束変調板51を用いなかった場合において、電磁誘導コイル13に流す電流の周波数を内釜12の固有振動数に合わせたときは、内釜12が振動して騒音が発生した。この時の振動を振動センサと超音波音圧計を用いて測定すると0.1mVの電圧であった。
【0033】
一方、リング状の磁束変調板51を内釜12と電磁誘導コイル13との間に配置して、前記と同様の周波数で電磁誘導コイル13に磁界を発生させた場合は、騒音を発することなく大きな振幅の振動が発生した。この時の振動を前記と同様の方法で測定すると2.0mVの電圧となり、前者と比べ振動の振幅が大きくなっていることが判った。
【0034】
次に、実施の形態2に係る炊飯器の動作を図3及び図4を参照しながら説明する。図4は炊飯の各過程における電磁誘導コイルの動作を示すタイミングチャートである。なお、誘導加熱による発熱で炊飯する動作は実施の形態1と同一であるため、説明を省略し、磁束変調板の振動について説明する。
【0035】
磁束変調板51は、予熱過程及び炊飯過程において、電磁誘導コイル13に電流が流れたときに発生する磁界を内釜12に集中させ、局部的な熱と力を発生させる。その電磁誘導コイル13に流れる電流に基づいて発生する磁界により、内釜12が振動する。この振動は、前述したように、電磁誘導コイル13と内釜12の間に配置された磁束変調板51が磁束を乱すことにより起こり、内釜12を振動させ、その中の米1と水2とにこの振動を伝える。
【0036】
この振動の周波数が、可聴域では騒音となるため、20KHzを越える超音波域の振動とすることで、問題なく内釜12を振動させ、米1と水2とにこの振動を伝えることができる。
磁束変調板51の形状は、図5、図6に示したリング形状や図7のようにこれを一部切除したものでもよい。これは、内釜12の発熱温度分布をよくするものである。この配置は、図8のように電磁誘導コイル13側、図9のように内釜12側、図10のように電磁誘導コイル13のコイルベース28に一体成形する形態でもよい。
【0037】
磁束変調板51によって内釜12を振動させながら炊飯した飯と、そうでない通常の方法で炊飯した飯の硬さ及び粘りを比較すると、前述の表1と同等になった。この表1に示す数値は飯をレオロメータにより測定した結果で、振動中に炊飯した飯の硬さは、振動を与えていない飯と比べ数値が小さく、即ち柔らかくなっており、粘りについては、逆に振動を与えた飯の方がその数値が大きくなり、粘りのある飯ができたという結果が得られた。
【0038】
以上のように実施の形態2においては、磁束変調板51により磁束を乱して内釜12を振動させるようにしたので、従来技術のような超音波振動子15が不要になり、このため、内釜12の着脱が簡単で、内釜12の洗浄や内釜12での洗米が容易にでき、しかも、美味しい飯ができるという効果がある。
【0039】
実施の形態3.
図11は本発明の実施の形態3に係る炊飯器の平面図で、蓋体及び内釜を炊飯器本体から取り外した状態を示す。なお、上記実施の形態と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
本実施の形態の炊飯器は、図11に示すように内釜12と電磁誘導コイル13との間の一部に磁束変調板31を配置したものである。この磁束変調板31は、内釜12の底部側から湾曲部に亘って形成される一部の面に沿うように形成されている。また、磁束変調板31には穴32が設けられている。
【0040】
この穴32は、磁束変調板31の下方に位置する電磁誘導コイル13からの磁束を内釜12側に通過させるためのものであり、これによって、磁束変調板31の有無による磁束密度の分布が低減し、内釜12の発熱温度の高低差を少なくなるようにしている。
【0041】
インバータ24の動作によって電磁誘導コイル13に高周波電流が流れると、電磁誘導コイル13に磁界が発生して内釜が発熱し、磁束変調板31が近傍の電磁誘導コイル13の磁界によって水平方向に振動する。この振動は、前述したように磁束変調板31が磁束を乱すことにより起こり、超音波となって内釜12を振動させる。この時、磁束変調板31に設けられた穴32には、一部の磁束が通過して内釜12の底部を透過する。
この時の磁束変調板31の振動を前記と同様に振動センサと超音波音圧計とで測定すると、実施の形態1のときの2.0mVより高い2.6mVとなり、振動の振幅が大きくなっている。
【0042】
以上のように、内釜12と電磁誘導コイル13との間の一部に、穴32を有する磁束変調板31を配置して振動させるようにしたので、内釜12の発熱温度の高低差を殆ど発生させることなく、柔らかくて粘りのある飯を炊飯でき、また、従来技術のように超音波振動子15を内釜12に取り付けていないので、内釜12の着脱が容易であるという効果がある。
【0043】
実施の形態4.
図12は本発明の実施の形態4に係る炊飯器の平面図で、蓋体及び内釜を炊飯器本体から取り外した状態を示す。なお、上記実施の形態と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
本実施の形態の炊飯器は、図12に示すように内釜12と電磁誘導コイル13との間の一部に磁束変調板52を配置したものである。この磁束変調板52は、内釜12の底部側から湾曲部に亘って形成される一部の面に沿うように形成されている。また、磁束変調板52には穴53が設けられている。
【0044】
この穴53は、磁束変調板52の下方に位置する電磁誘導コイル13からの磁束を内釜12側に通過させるためのものであり、これによって、磁束変調板52の有無による磁束密度の分布が低減し、内釜12の発熱温度の高低差を少なくなるようにしている。
【0045】
インバータ24の動作によって電磁誘導コイル13に内釜12の固有振動数に合わせた高周波電流が流れると、電磁誘導コイル13から発生した磁界が磁束変調板52によって特定部分、例えば、磁束変調板52が銅の場合には、磁束変調板52の周囲に集中的に内釜12に作用するため、熱と同時に力が発生し、内釜12が発熱しながら振動する。磁束変調板52に設けられた穴53には、一部の磁束が通過して内釜12の底部を透過するため、極端な温度分布が生じることを防止することができる。
この時の磁束変調板52の振動を前記と同様に振動センサと超音波音圧計とで測定すると、実施形態1のときの2.0mVより高い2.6mVとなり、振動の振幅が大きくなっている。
【0046】
以上のように、内釜12と電磁誘導コイル13との間の一部に、穴53を有する磁束変調板52を配置して内釜12を振動させるようにしたので、内釜12の発熱温度の高低差を殆ど発生させることなく、柔らかくて粘りのある飯を炊飯でき、また、従来技術のように超音波振動子15を内釜12に取り付けていないので、内釜12の着脱が容易であるという効果がある。
【0047】
実施の形態5.
図13は本発明の実施の形態5に係る炊飯器の構成を示す断面図であり、なお上記実施の形態と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
本実施の形態の炊飯器は、渦巻状の電磁誘導コイル13の長さが、内釜の平面の中心を通る線を挟む一方の領域のコイル長が他方の領域のコイル長より長くなるように設定されている。即ち、図13に示すように内釜12の一方の側部側において電磁誘導コイル13の先端部側がつづら折り状に配線されている。また、内釜12の中心軸線上に配置された内釜用温度センサ14の下方には後述の磁束変調板42を回転させるモータ41が設けられている。
【0048】
このモータ41は、電磁誘導コイル13に通電されたときに磁束変調板42を3〜30(回/分)の頻度で回転するように制御回路部25で制御される。前述した磁束変調板42は、外形形状が実施の形態2の磁束変調板31とほぼ同じで、その磁束変調板31のように穴32が設けられていない。
【0049】
本実施の形態の炊飯器においては、予熱過程と炊飯過程の各過程で電磁誘導コイル13に高周波電流が流れたときに、磁束変調板42が振動しながら内釜12と電磁誘導コイル13との間をモータ41によって回転し、内釜12を振動させる。またこの時、内釜12は、側部側に配線されたつづら折り状の電磁誘導コイル13に発生する磁界により、水平方向に振動すると共に発熱する。
【0050】
このように本実施の形態では、内釜12と電磁誘導コイル13との間を振動しながら回転する磁束変調板42と、つづら折り状に配線された電磁誘導コイル13に発生する磁界とで内釜12を振動させるようにしたので、米1の吸水をさらに促進させることが可能になり、また、電磁誘導コイル13からの磁束を内釜12に均一に透過させることができ、内釜12の発熱温度に分布を生じさせることなく炊飯できるという効果がある。
【0051】
実施の形態6.
図14は本発明の実施の形態6に係る炊飯器の構成を示す断面図であり、なお、上記実施の形態と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
本実施の形態の炊飯器は、内釜12の中心軸線上に配置された内釜用温度センサ14の下方には後述の磁束変調板55を回転させるモータ54が設けられている。
【0052】
このモータ54は、電磁誘導コイル13に通電されたときに磁束変調板55を3〜30(回/分)の頻度で回転するように制御回路部25で制御される。前述した磁束変調板55は、外形形状が実施の形態4の磁束変調板52とほぼ同じで、その磁束変調板52のように穴32が設けられていない。
【0053】
本実施の形態の炊飯器においては、予熱過程と炊飯過程の各過程で電磁誘導コイル13に内釜12の固有振動数に合わせた高周波電流が流れたときに、磁束変調板55が振動しながら内釜12と電磁誘導コイル13との間をモータ54によって回転し、内釜12を振動させる。
【0054】
このように本実施の形態では、内釜12と電磁誘導コイル13との間を振動しながら回転する磁束変調板55により、内釜12を振動させるようにしたので、米1の吸水をさらに促進させることが可能になり、また、電磁誘導コイル13からの磁束を内釜12に均一に透過させることができ、内釜12の発熱温度に分布を生じさせることなく炊飯できるという効果がある。
【0055】
なお、本実施の形態では、磁束変調板55を回転させるものを示したが、磁束変調板55を横復動、または上下復動させるようにしたものでもよい。
【0056】
実施の形態7.
図15は本発明の実施の形態7に係る炊飯器の構成を示す断面図であり、なお、上記実施の形態と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。27は操作パネル18側に設けられた制御手段である制御回路部で、内釜12の底部に取り付けられた内釜用温度センサ14と蓋用温度センサ23とからの検出温度に基づいてインバータ24を制御するとともに、内釜12に振動を発生させるように内釜12の固有の形状と物性に合わせて設定した高周波電流の周波数に基づいてインバータ24を制御する。
【0057】
本実施の形態の炊飯器は、制御回路部27において、内釜12の底面のコーナー部の円弧を含む径方向の沿面長さLと内釜12の材質の音速Vから算出される固有振動数S=V/2・L、または、固有振動数Sの整数倍n×Sと等しい駆動周波数Fの高周波電流で電磁誘導コイル13を駆動するよう設定されている。
電磁誘導コイル13の駆動周波数F=n×S(n=1、2、3……整数)即ち、電磁誘導コイル13の周波数と内釜12の固有振動数が一致することで内釜12が共振し、より大きな振動が起こるよう電磁誘導コイル13の駆動周波数Fが決められている。また、この共振現象は、電磁誘導コイル13の駆動周波数Fの整数倍と内釜12の固有振動数Sの整数倍が一致することでも同様に共振することから、これらの周波数が一致するようにしている。
そして、このように設定した周波数に基づいてインバータ24を制御する。
【0058】
電磁誘導コイル13から発生した磁束を磁束変調板26によって変調されることにより、集中した加振力が発生し、内釜12自身が振動する。この時、内釜12の固有振動数と一致することにより、小さな加振力でも大きな振幅の振動を得ることができる。また、内釜12の固有振動数の整数倍と電磁誘導コイル13の駆動周波数の整数倍とを一致させることでも同様の効果を得る。
【0059】
このように、本実施の形態では、内釜12の固有振動数の整数倍と電磁誘導コイル13の駆動周波数の整数倍(どちらも1を含む)が一致するよう調整されているため、小さな加振力でも大きな振動が発生させられるという効果がある。
なお、実施の形態1〜7は炊飯器を示したが、内釜を容器として他の食品の電磁誘導加熱に使用してもよい。
【0060】
【発明の効果】
本発明の請求項1の発明によれば、内釜と電磁誘導コイルとの間に設けた反磁性材をその電磁誘導コイルに発生する磁界で振動させて内釜に伝えるようにしたので、従来技術のような超音波振動子が不要になり、このため、内釜の着脱が簡単で、内釜の洗浄や内釜での洗米が容易にでき、しかも、美味しい飯ができるという効果がある。
【0061】
本発明の請求項2の発明によれば、磁束を通過させる穴を有する反磁性材を内釜と電磁誘導コイルとの間に設けて振動させるようにしたので、内釜の発熱温度の高低差を殆ど発生させることなく、柔らかくて粘りのある飯を炊飯でき、また、従来技術のように超音波振動子を内釜に取り付けていないので、内釜の着脱が容易であるという効果がある。
【0062】
本発明の請求項3の発明によれば、反磁性材を振動させながら内釜と電磁誘導コイルとの間を回転させるようにしたので、電磁誘導コイルからの磁束を内釜に均一に透過させることができ、このため、内釜の発熱温度に分布を生じさせることなく炊飯できるという効果がある。
【0063】
本発明の請求項4の発明によれば、内釜の平面の中心を通る線を挟む一方の領域のコイル長を他方の領域のコイル長より長くなるように設定しているので、その長い分のコイルに発生する磁界により内釜が振動し、しかも、その内釜と電磁誘導コイルとの間を回転する反磁性材の振動も伝わるので、内釜内の米の吸水がさらに促進されるという効果がある。
【0064】
本発明の請求項5の発明によれば、被加熱物を入れる容器、この容器を電磁誘導するための電磁誘導コイル、この電磁誘導コイルに流れる高周波電流を供給するインバータ及びこのインバータを制御する制御手段とを備えた電磁誘導加熱装置において、前記容器と電磁誘導コイルの間に磁束を変化させる中間材を設け、この中間材により容器に伝わる磁界を歪め、前記容器に発生する振動を増幅するので、容器に発生する振動を増幅させることができる。
【0065】
本発明の請求項6の発明によれば、被加熱物を入れる容器、この容器を電磁誘導するための電磁誘導コイル、この電磁誘導コイルに流れる高周波電流を供給するインバータ及びこのインバータを制御する制御手段とを備えた電磁誘導加熱装置において、前記制御手段は、前記容器に振動を発生させるように前記容器の固有の形状と物性に合わせて設定した前記高周波電流の周波数に基づいてインバータを制御すると共に、容器と電磁誘導コイルの間に磁束を変化させる中間材を設け、この中間材により容器に伝わる磁界を歪め、前記容器に発生する振動を増幅するので、容器自身が振動し、従来技術のような超音波振動子が不要になり、このため、容器の着脱が簡単で、容器の洗浄が容易にでき、しかも、美味しい飯ができる。
また、容器に発生する振動を増幅させることができる。
【0066】
本発明の請求項7の発明によれば、中間材を、強磁性材料、常磁性材料、反磁性材料、およびそれらの含有物質としたので、容器に発生する振動を増幅させることができる。
【0067】
本発明の請求項8の発明によれば、中間材は、磁束を通過させる穴を有し、電磁誘導コイルと容器との間の一部に設けられたので、内釜の発熱温度の高低差を殆ど発生させることなく、柔らかくて粘りのある飯を炊飯できる。
【0068】
本発明の請求項9に係る電磁誘導加熱装置は、中間材を回転、または横復動、または上下復動させるようにしたので、超音波発生の増幅が図れる一方で、温度分布を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の構成を示す断面図である。
【図2】蓋体及び内釜を外したときの炊飯器の平面図である。
【図3】炊飯の各過程における内釜の温度変化を示す図である。
【図4】炊飯の各過程における電磁誘導コイルの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の構成を示す断面図である。
【図6】蓋体及び内釜を外したときの炊飯器の平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の磁束変調板の平面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の磁束変調板の配置例の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の磁束変調板の配置例の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る炊飯器の磁束変調板の配置例の断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る炊飯器の平面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係る炊飯器の平面図である。
【図13】本発明の実施の形態5に係る炊飯器の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態6に係る炊飯器の構成を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態7に係る炊飯器の構成を示す断面図である。
【図16】従来の炊飯器の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
11 炊飯器本体、12 内釜、13 電磁誘導コイル、14 内釜用温度センサ、18 操作パネル、21 蓋体、22 下蓋、23 蓋用温度センサ、24 インバータ、25、27 制御回路部、26、31、42、51、52、54、55 磁束変調板、41、54 モータ。
Claims (9)
- 電磁誘導コイルに発生する磁界により内釜を加熱する電磁誘導加熱装置であって、前記電磁誘導コイルと内釜との間に設けられ、前記磁界により振動して当該内釜に伝える反磁性材を備えたことを特徴とする電磁誘導加熱装置。
- 前記反磁性材は、磁束を通過させる穴を有し、電磁誘導コイルと内釜との間の一部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱装置。
- 内釜の下方に設けられたモータを有し、前記反磁性材は、電磁誘導コイルと内釜との間の一部に設けられ、前記モータを中心として回転することを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱装置。
- 前記電磁誘導コイルの長さは、内釜の平面の中心を通る線を挟む一方の領域のコイル長が他方の領域のコイル長より長くなるように設定されていることを特徴とする請求項3記載の電磁誘導加熱装置。
- 被加熱物を入れる容器、この容器を電磁誘導するための電磁誘導コイル、この電磁誘導コイルに流れる高周波電流を供給するインバータ及びこのインバータを制御する制御手段とを備えた電磁誘導加熱装置において、
前記容器と電磁誘導コイルの間に磁束を変化させる中間材を設け、この中間材により容器に伝わる磁界を歪め、前記容器に発生する振動を増幅することを特徴とする電磁誘導加熱装置。 - 被加熱物を入れる容器、この容器を電磁誘導するための電磁誘導コイル、この電磁誘導コイルに流れる高周波電流を供給するインバータ及びこのインバータを制御する制御手段とを備えた電磁誘導加熱装置において、
前記制御手段は、前記容器に振動を発生させるように前記容器の固有の形状と物性に合わせて設定した前記高周波電流の周波数に基づいてインバータを制御すると共に、
容器と電磁誘導コイルの間に磁束を変化させる中間材を設け、この中間材により容器に伝わる磁界を歪め、前記容器に発生する振動を増幅することを特徴とする請求項5の電磁誘導加熱装置。 - 中間材を、強磁性材料、常磁性材料、反磁性材料、およびそれらの含有物質としたことを特徴とする請求項5または請求項6の電磁誘導加熱装置。
- 中間材は、磁束を通過させる穴を有し、電磁誘導コイルと容器との間の一部に設けられたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の電磁誘導加熱装置。
- 中間材を回転、または横復動、または上下復動させるようにしたことを特徴とする請求項5〜7のいすれかに記載の電磁誘導加熱装置。
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