JP3585913B2 - 三次元物体製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、三次元模型形成装置およびその方法に関し、特に光形成可能な層の露光を制御して、内部応力によって生じる歪みを削減する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
三次元(固体)模型を製造するために光形成を用いるシステムが、多数提案されている。1987年6月6日にサイテックス社(SCITEX CORPORATION LTD.)により出願された欧州特許出願第250,121号は、硬化可能な液体を用いた三次元模型形成装置を開示しており、またこの分野の関連文献をよくまとめたものである。1986年3月11日に付与されたC.W.Hullの米国特許第4,575,330号には、放射線の衝突、特定の衝撃あるいは化学反応による適切な作用を受け、物理的状態を変え得る液体媒体の選択された面に、形成されるべき物体の断面パターンを形成することによって、三次元物体を形成するシステムが記載されており、物体の連続隣接断面に相当する連続隣接薄層が互いに粘着し、三次元物体が形成されるようになっている。1988年6月21日に付与されたE.V.Fudimの米国特許第4,752,498号には、未硬化の感光性ポリマーに接触している放射線透過材を通して、この未硬化の感光性ポリマーを硬化させる放射線を有効量だけ照射して三次元物体を形成する方法が記載されている。放射線透過材とは、次に形成される層が粘着するように、放射線照射された面を架橋可能状態にさせておくための材料である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
像形成のために変調した放射線を露光し順次層を硬化させ、物体の連続断面を形成することにより三次元物体を形成する場合、所望の物体を正確に表す三次元物体を形成するには、それぞれの層が物体の所望断面を正確に表すようにしなければならない。しかしながら、従来の三次元物体製造方法にあっては、照射過程において光形成可能な組成物が流動状態から硬化状態へ変化する際に生じる内部応力が原因で各層に歪みが生じ、結果的に歪んだ物体が形成されるという問題点があった。そのような内部応力は、照射によって層を硬化させる過程で、分子の収縮がおこった結果生じた力であると思われる。この問題に対し、種々の解決策が提案されている。
【0004】
その解決策のひとつとして、WEAVEパターンにより層を露光するものが「RAPID PHOTOTYPING & MANUFACTURING, Fundamentals Of Stereo Lithography」(Paul F. Jacobs 著 第1版 出版元 The Society of Manufacturing Engineers, One SME drive, P.O. Box 930, Dearborn, Michigan 48121−0930)の第8章 Advanced Part Building 195−219頁に記載されている。1990年7月31日に付与されたMurphy et al.の米国特許第4,945,032号には、層を少なくとも二度露光して、歪みを減少させる方法が提案されている。特願昭63(1988)−172685号(1990年1月26日公開)にも、二度の露光が用いられている。詳しくは、第1像形成露光によって露光領域の樹脂を半硬化状態にして模型全体を形作った後、第2露光によって半硬化樹脂を硬化させて固体模型を形成する。これらの方法でも歪みを減少させることはできるが、模型内部に残る未硬化材料を最小限に抑えて模型を最も硬い状態に保ちつつ、歪みのない固体模型を形成する方法が、依然として必要とされている。そこで、本発明は、模型内部に残る未硬化材料を最小限に抑えて模型を最も硬い状態に保ちつつ、歪みのない固体模型を形成する方法を提供することを目的としている。
【特許文献】
欧州特許出願第250,121号(1987年6月6日発行)、
米国特許第4,575,330号(1986年3月11日発行)、
米国特許第4,752,498号(1988年6月21日発行)及び
特願昭63(1988)−172685号(1990年1月26日公開)
【非特許文献】
「RAPID PHOTOTYPING & MANUFACTURING, Fundamentals Of Stereo Lithography」(Paul F. Jacobs 著 第1版 出版元 The Society of Manufacturing Engineers, One SME drive, P.O. Box 930, Dearborn, Michigan 48121−0930)の第8章 Advanced Part Building 195−219頁
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的達成のため、請求項1記載のように、光形成可能な組成物の層を、三次元物体の所望断面部分を表す所定のパターンに従って各層が露光されるように、順々に像形成露光することによって形成された硬化部分に対応する物体の多数の断面部分から、三次元物体を形成する方法において、
(1)スーパー変調された露光源を用いて、少なくとも一層を所定パターンに像形成露光し、前記層に、半硬化した光形成可能な組成物の領域によって分離されて、不連続な、固定され、硬化された像形成領域を有する非連続像を形成し、
(2)変調された露光源を用いて、前記層を同じ所定パターンに像形成露光し、前記層に連続した前記所定パターンの硬化像を形成し、これを繰り返すことを特徴とするものである。
【0006】
請求項1記載の方法において、前記露光源が、前記層を走査する変調されたレーザービームを出力し、「オン」状態から「オフ」状態まで、所定の間隔で前記層を照射する前記ビームの強度を選択的に変えることによって、前記露光源の変調とスーパー変調を達成することを特徴とすることもできる。
請求項1記載の方法において、前記露光源が、前記層を照射し、一方向に沿って走査する変調されたレーザービームを出力し、走査方向に沿って所定の割合でビームの走査速度を変えることによって前記露光源のスーパー変調を達成することを特徴とすることもできる。
【0007】
請求項1または2記載の方法において、前記(1)と(2)との工程を予め選択した回数繰り返し、所定パターンに相当する複数の層を露光することを特徴とすることもできる。
請求項1または2記載の方法において、前記(1)と(2)との工程を予め選択した回数繰り返し、所定パターンに相当する複数の層を連続して露光することを特徴とすることもできる。
【0008】
請求項2記載の方法において、前記分離、硬化した像形成領域が点線形状からなることを特徴とすることもできる。
請求項2記載の方法において、前記分離、硬化した像形成領域が破線形状からなることを特徴とすることもできる。
請求項1または2記載の方法において、 前記スーパー変調された前記層のための第1露光が、前記層上に縦方向にずれた硬化領域を形成することを特徴とすることもできる。
【0009】
請求項1記載の方法において、前記光形成可能な組成物が感光性ポリマーからなることを特徴とすることもできる。
請求項8記載の方法において、前記感光性ポリマーが液体であることを特徴とすることもできる。
請求項1記載の方法において、前記(2)の工程が、前記(1)の工程の実行から所定時間経過後に実行されることを特徴とすることもできる。
【0010】
請求項10記載の方法において、前記所定時間内に、第1露光による前記光形成可能な組成物の収縮が完了することを特徴とすることもできる。
【0011】
【作用】
本発明では、上記(1)の工程でひとつの走査ラインに沿った破線形状の硬化領域(惰円形または円形であってもよい)が形成され、そのときその破線形状の硬化領域が隣接する走査ラインに沿った破線形状の硬化領域から横方向にずれているようになっている。露光源は光形成可能な組成物への露光を制御できるように、パルス信号でサブ変調された走査レーザービームからなることが好ましい。二つの露光のためにビームの変調、スーパー変調が用いられるが、両方とも、一層に対する照射ビームの強度を所定の時間間隔で「オン」状態と「オフ」状態の間で選択的に変化させることにより実現される。固化模型を形成するには、ステップ(1)と(2)を予め決められた回数繰り返し、所定のパターンの数に相当する数の層を露光する。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1〜図8は本発明に係る一実施例を示す図である。
本発明によれば、歪みの少ない三次元模型が形成することが可能であるが、その形成方法およびその改良点を述べるに当たって、次のように定義された特定の用語を使用する。
【0013】
光形成可能な組成物:元は未硬化で液体のように容易に変形可能な状態の材料で、適度な照射による十分な露光をすることによって、硬化あるいは半硬化状態になる材料。
未硬化:照射により実質的に露光される前の光形成可能な組成物の容易に変形することができる状態。
【0014】
半硬化:変形が可能な程度に光照射された後の光形成可能な組成物の柔軟性、コンプライアンス性、弾性がある状態。
硬化:光形成可能な組成物を固化させるのに十分な強度で、光照射された後の光形成可能な組成物(いくらかの未硬化あるいは半硬化材料が、格子状の硬化した組成物に閉じ込められていることもあるが、そのような材料はコンプライアンスをおこさせる程の量ではない)。
【0015】
「オン」および「オフ」状態:オン状態とは、放射ビームの強度およびその強度を変化させる速度が、像形成面で測られる露光量((光投射強度)×(投射時間))において、光形成可能な組成物を固化させるのに十分なしきい値以上の状態をいう。「オフ」状態とは、放射ビームの強度およびその強度を変化させる速度が、同じく像形成面で測られる露光量において、光形成可能な組成物を固化させるのに十分なしきい値より小さい状態をいう。
【0016】
サブ変調:レーザービームの強度および/またはその強度を変化させる速度を変化させて、パルス幅と繰り返し数を変えられるパルス列を用いて「オン」「オフ」状態を作ること。パルス幅と繰り返し数(頻度)は、像表面上のビームの瞬間走査速度と関係があるため、パルス幅と繰り返し数を選択することにより、ビームの全走査径路を通して、像形成面上において実質的に均一な露光レベルを提供することができる。
【0017】
像形状変調:「オン」状態の間または「オフ」状態の間において、形成される像の情報を表すシグナルに基づきビーム強度を変えることによって、像形成面上を照射するレーザービームを変調すること。像形成面上の領域が露光され、形成される像の情報を表しているシグナルに対応する像が再形成される。そのビームは、サブ変調されたレーザービームであってもよい。
【0018】
スーパー変調:予め選択されたコントロールシグナルに基づき、光ビームによって像形成面上の露光レベルを、「オン」状態の間、または「オフ」状態の間でさらに変えること。断続的な一連の露光がなされ、像形成面上の像形成領域の露光部分内に、不連続な互いに分離した露光領域のパターンが形成される。これは、像形成面上の光投射強度または像形成面上の一点あたりの投射時間を変える、あるいはその両方を変えることによって達成され得る。
【0019】
以下の詳細な説明において用いられている類似記号(例えば、15と15’)は、図面中の要素が互いに類似していることを表している。
図1は、本発明を実施する装置である。この装置は、露光ビーム12を出力するレーザー10のような光投射源から構成される。レーザー10は、その主波長帯が可視、または赤外線、または紫外線領域の放射線スペクトルである高出力レーザーであることが好ましい。照射による露光によって硬化する組成物の分光感度の関係で、そのような特別な波長帯が選択される。「高出力」という用語は、相対的な用語であるが、特別な光形成可能な組成物が硬化するのに必要十分な輻射エネルギー量を意味する(ただし、組成物の感光速度も考慮する必要がある)。実用的な組成物の感光速度を考慮すると、「高出力」とは、20mW以上、好ましくは本実施例のように100mW以上と考えられている。ビーム12の焦点を像形成面13上に合わせるのに焦点整合手段が用いられるが、図面を簡略にするためにその手段の図示を省略する。
【0020】
前述のように、露光される硬化可能組成物の分光感度に応じて、露光ビーム12を出力するレーザーに電子ビームやX線等のような他の照射源を加えてもよいし、レーザーの代わりに使用してもよい。ビーム12の断面形状は通常ほぼ円形であり、第3図に示すようにビーム強度はガウス分布曲線で表される。なお、図中のDは放射照度が1/e以上の放射照度の領域の径を示す。
【0021】
ビーム12は変調器14、好ましくは音響光学変調器を通る。音響光学変調器は、電子コントロールシグナルに反応してビーム出力強度を変えることにより、上記で定義した「オン」状態および「オフ」状態を作る。
ビームは次にビーム偏向システムに導かれる。このシステムは、二つのビーム直交偏向装置16と18からなるのが好ましい。装置16と18は、ライン15および15’を通して制御モジュール28内のビーム偏向制御手段よって制御されている。ビーム偏向装置は、二つのサーボ制御モータに搭載されてそれぞれのモータの互いに直交する軸のまわりを回動する二つのミラーから構成されてもよい。この場合、サーボモータを一連のステッピングパルスのような電子シグナルによって制御し、ミラーを回転させる。このようにミラーを回転させることで、ビームを像形成面13上の任意の点に位置させ、または任意の形状に走査させることが可能になる。本発明を実施するのに有効なサーボモータを用いたビーム偏向装置の一つは、カルフォルニア州ミルピタス(MILPITAS)のグレイホークシステムズ社(GREYHAWK SYSTEMS INC.)によって開発販売されている。サーボモータの代わりに、ガルバノメーターにそれぞれミラーを搭載してもよい。この場合も、二つのガルバノメーターそれぞれに加えられる電圧を適切に選択すれば、同様にビームを像形成面13上の任意の点に位置させ、または任意の形状に走査させることができる。
【0022】
像形成面13は、光硬化可能組成物22と移動可能なプラットフォーム26を収容している槽20内にある。槽20内でのプラットフォーム26の位置は、偏向および変調されたレーザービームに関係し、プラットフォーム26の位置を調節することにより、像形成面13においてプラットフォーム26に支持された光形成可能な組成物22に、選択的にビーム12を照射することができる。プラットフォーム26は、ライン25を通して制御モジュール28から伝えられたコントロールシグナルにより制御された昇降手段24によって昇降する。制御モジュール28には、適切な昇降制御手段も含まれている。
【0023】
制御モジュール28は、レーザービームを変調し、像形成面13上を照射し、かつ像形成面13に光形成可能な組成物の層を形成するためにプラットフォームを上方に移動するという機能を果たすことができるような適切なプログラムを実行するコンピュータから構成されてもよい。コンピュータがこれらの機能を果たすには適切なトランスデューサーを使用しなければならないが、そのことは公知のテクノロジーであって、本発明にとって重要性はない。
【0024】
やはり図面を簡略にするために図示を省くが、コーティング手段がプラットフォーム26上(あるいはプラットフォーム上にある物体の上方)に設けられおり、像形成面において光形成可能な組成物の層を均一の厚さにし、その表面を滑らかにする。このようなコーティング手段もまた公知であり、本発明の主題ではない。
【0025】
1991年4月9日に付与された米国特許第5,006,364号および1992年3月10日に付与された米国特許第5,094,935号は、共にデュポン社(E. I. DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY)に譲渡されたが、固体像形成方法および装置(図1にその概略が描かれている装置と類似)を用いて、多層モデルを製造するのに有効な光形成可能な組成物を開示している。その光形成可能な組成物は、次の組成の液体であることが好ましい。
(a)2官能性アクリル酸 ポリウレタン オリゴマー(difunctional acrylated polyurethane oligomer)、またはその混合物が45−55%
(b)次の化学式であらわされるポリグリコール エステル(polyglycol ester)、またはその混合物が25−40%
C=CH(CO)−O(CH CH O)−(CO)HC=CH
(c)2,2−ジメチル−2−フェニル アセトフェノン(2,2−dimethoxy−2−phenyl acetophenone)のような化学線照射に感応する反応開始剤が4−6%
(d)アクリルのような多官能反応性希釈剤(polyfunctional reactive diluent)、またはその混合物が10−20%
なお、この液体の光形成可能な組成物は25℃において300−3000cPの粘度を有する。
【0026】
ビーム12は変調器14によって変調される。好ましい実施例では、ビーム12を3つの異なる方法で変調する。第一変調では、ビーム12はパルス列の繰り返し数を変えることにより変調される。ビームを偏向するステッパーモータ搭載のミラーの角度位置と、パルスとは互いに関係があり、そのパルスは光形成可能な組成物に対する露光を一定にするように計算されている。露光が一定であるかどうかは、像形成面の走査線に沿った各点における照射強度および照射時間によってきまる。一定な露光は、パルスの繰り返し数を制御することによって得られるので、走査線に沿った始点終点間の距離に対し像形成面上の露光パルスの分布は、図2に示されるように一定である。
【0027】
このような方法でビーム12を制御することにより、全ての像形成ラインに渡って均一な露光が得られる。ビーム偏向手段は質量があるものなので、補正をしなければ加速および減速が瞬時におこらず、均一に露光することができない。ビーム12の走査速度が、各走査の初期と、偏向ミラーの初期加速が完了し通常動作に移った安定期とで異なるからである。ミラーが停止前に減速する走査線の終わりにおいても、同様の問題がおきる。
【0028】
好ましい実施例においては、ステッパーモータ搭載ミラーと共にエンコーダが、サブ変調シグナルのパルス繰り返し数を制御するのに用いられている。このエンコーダの検出角度の精度は1秒であり、ビーム12をサブ変調するのに用いられるシグナルは、パルス間隔があるためミラーが2秒回転する毎に発生する。ビーム12は反射ビームなので、ミラーが2秒回転するとビームは4秒回転する。ミラーから像形成面13までのビーム12の走査範囲は、通常51inである。従って、光のパルスは、およそ0.001in(1mil)毎に像形成領域内に発生する。この装置のビーム放射照度が1/e以上の放射照度の領域の径Dは、137μm(5.4mil)であるので、ガウス分布のサブ変調露光部は実質的に重なり合う。図2に示されるように、硬化層の深さと表面間隔は互いに関係しており、このように露光部を重ねることで、露光された走査領域は実質的に均一の厚さに硬化される。
【0029】
固化物体は、連続して像形成露光された層を重ねることにより形成される。各層の像形成露光は、像形状に対応して変調されたレーザービームを用いて、像形成面上で光形成可能な組成物を露光することによって得られる。図4は、変調電圧振幅(modulating voltage amplitude)「v」が時間「t」との関数であることを表している。図4(a)に示すように、サブ変調されたビームは、ビームの発射と停止を切換えることにより、さらに変調され、二つのライン、すなわちスペースB−C(ビーム「停止」状態)によって分離されたラインA−BとラインC−D(ビーム「発射」状態)が作られる。この二重変調露光工程については、1991年5月7日に付与され、デュポン社(E. I. DU PONT DE NEMEOURS AND COMPANY)に譲渡された米国特許第5,014,207号により詳細に開示されている。
【0030】
本発明によれば、層は二度、好ましくは全ての層がそれぞれ二度露光される。第1露光は、サブ変調、さらに形成される像の断面形状に対応した像形状変調、そしてさらに予め選択されたパルスシグナルによるスーパー変調という3段階に変調されたビームによる像形成露光で、半硬化の組成物領域によって分離され、固定され、硬化され、複数の破線状の像形成領域(惰円形または円形であってもよい)を有する非連続の像パターンを形成する。本発明においては、硬化した像形成領域間の像形成領域が、半硬化しているということばかりでなく、下に連なる層に固定されていることも重要であり、固定させることによって次の露光の間にその硬化領域が「浮遊」してしまうのを防ぐことができる。このような層において、硬化像形成領域が最初の露光の際に固定されると、次の照射の間の内部応力による歪みが著しく減少することが判明した。また、特に固定されることができないようなオーバーハング領域においては、片持梁構造のため特に上からの露光に対して自由端側が上に反り易く歪み量も大きくなるが、第1露光によって硬化領域が半硬化した領域により分離されると、次の照射の間の内部応力による歪みが著しく減少することも確認された。
【0031】
この第1の像形成露光が完了した層に対し、第2像形成露光する。この露光の際には、サブ変調、さらに像形状変調した放射ビームを使用するが、第1露光において破線部分を形成したスーパー変調は用いない。第2露光は硬化した連続像を形成するよう計算されている。このように、それぞれの層の像は、二つの工程すなわち破線状の硬化領域を形成する第1工程と像形状の硬化領域を形成する第2工程により形成される。
【0032】
これらの工程を、図4(a)(b)および図5(a)(b)を参照してより詳細に説明する。層の第1露光には、図4(b)に示すようなシグナルにより変調されたビームが使われる。このシグナルは、ビームが3段階に変調された結果を表している。まず一つは、短い一連のパルスPからなるサブ変調シグナルである。これらのパルスに形成される像の情報を表すシグナル、すなわち固化ラインA−Bの後に非照射ラインB−Cが続き、さらに固化ラインC−Dが続くということを表すシグナルを重ねる。サブ変調パルスは、固化ラインにおいてしか現れない。
【0033】
さらに、一連のスーパー変調パルスe−f、g−h、i−j等が重ねられた結果、照射ビームは、図4(b)に示すように、サブ変調パルスPの集合体S1、S2、S3、S4、S5そしてS6を構成する。このようなパルスの集合体により硬化可能な組成物を露光すると、像形成面で露光された層内に、一群の非連結の硬化領域、すなわち小島32が形成される。これらは、図5(a)ならびに図6の示すように、半硬化した組成物によって分離されており、露光ラインに沿った破線形状をしている。図6において、硬化した小島32は斜線領域で示される。しかし、小島のどの部分においても硬化度合が均一であるということを示しているわけではない。照射ビームの強度はガウス曲線で表されるので、図示はしていないが、小島の端の近くでは露光レベルが落ちている。パルス集合体の発生頻度は、破線の間の半硬化領域34に硬化した材料が含まれないように、半硬化した組成物のみから構成されるように、計算されたものでなければならない。
【0034】
好ましい露光レベルは、図5(a)の深さdに示されるように、下層にまで露光が及び、小島を下層に固定することができるように算定されたものである。dの大きさ自体は重要ではなく、層の厚さ以上に露光され、層の厚さより深い位置まで材料が硬化すればよいのである。上述の米国特許第5,014,207号には、ビーム照射に関係する光硬化深さの算定方法が開示されている。
【0035】
この第1露光に続いて、同じ像の情報に基づき同じ層を第2露光する。ビーム強度を図4(a)のように変調すると、全固化ラインA−B,C−D等に相当するサブ変調されたパルス集合体となる。第2露光の結果、図5(b)ならび図7に示すように、第1露光で形成された小島すなわち破線形状部分の間の部分を含め、全ての露光領域が完全に硬化する。図7は、第2露光の結果、走査線36に沿って全ての材料が硬化したことを示す平面図である。図からわかるように硬化部分には、小島32もその小島の間の半硬化領域34も含まれている。
【0036】
図8は、この工程を僅かに変化させたもので、走査線30に隣接する小島32の位置がずれており、小島32と32’が隣合っていない。
ポリマーの中には、露光の後1分以上も収縮が続くものがある。このように露光後も収縮が認められる場合には、ポリマーの露光後収縮が起こる時間を考慮し、スーパー変調の後十分な時間を取って、第2露光をするとよい。
【0037】
二つの露光が完了した後、未露光の材料の新しい層を露光した層の上に重ね、この新しい層に対しても前記工程を実施する。そして、それぞれの層が物体の断面を表している連続した層によって3次元物体が完成するまで、この工程が繰り返される。
物体を槽内から取り出す、すなわち物体から未露光の材料を剥奪する場合、その物体を強力に露光しさらに硬化させてもよい。
【0038】
全露光時間を節約するため、第1露光のための走査線の間隔を第2露光のものと変えてもよく、具体的には、第1走査の走査線間隔が0.005inで、第2走査の走査線間隔が0.002inであっても、均一な像形成領域の硬化が可能である。
上述したような液体光形成可能な組成物の使用例では、第1のスーパー変調露光の間、各層の厚さを0.005inに、サブ変調パルス「P」の間隔を1.56秒に設定する。351.1nmと363.8nmのプライマリライン(primary line)を有するUVスペクトルの照射ビームを発生させるコヒーレントアルゴンイオンモデル(COHERENT ARGON ION MODEL)326レーザーが、像形成ビームを発生させる露光源として使用される。このビームは、断面が通常円形で、像形成面においてガウス出力分布の円形スポットを有する。像形成面におけるビーム出力は、225mWで、1/eスポット径(spot radius)は、0.00685cmである。破線形状露光部分(e−f、g−h、i−k等)の長さは、それぞれ0.004inで、破線露光部分間の距離(f−g、h−i、h−k等)は、それぞれ0.002inである。破線形状走査線間隔(隣接する走査範囲の中心から中心までの距離)は、0.005inである。
【0039】
サブ変調露光される場合には、0.002inの走査間隔が用いられるが、その0.002inの走査間隔のために必要な材料は、およそ次の多項式であらわされる露光曲線の重合深さを有する。
深さ(cm)=A+B・E+C・E
ここにおいて、
A=−0.00314
B=0.004243
C=0.001325
E=露光レベル[mJ/cm
半径0.005inの像形成領域内の各点に対する露光量を合計すると、最大露光(破線部分の中心において)は、およそ13.68mJ/cm、最大厚さ(破線部分の中心において)は、0.0067in、従って、それぞれの破線形状部分の固定部分あるいは接触部分は、0.0017inであると計算される。破線部分の間隔は、破線部分の間を硬化した材料で埋めることなく、半硬化した組成物のみが存在するように選択する。
【0040】
この第1露光の後、第2露光する。第2露光では、像形成面のビームスポットが2milの走査線間隔で走査される。ザブ変調パルスの間隔は0.88秒である。レーザー出力およびレーザースポットの大きさは、第1露光の時と変わらない。半径5mil以内の領域を露光する場合、破線部分を形成する第1走査と非破線部分を形成する第2走査における領域内の各点に対する露光量を合計すると、最大、最小、平均露光レベルは、それぞれ29.04mJ/cm、18.62mJ/cm、22.71mJ/cmと計算される。これらの露光の結果形成された硬化部分の最大、最小、平均厚さは、それぞれ0.010in、0.008in、0.009inと計算される。層の設定上の厚さは、0.005inであるので、材料は厚さにおいてくまなく硬化されたことになる。
【0041】
上記の実施例とその解説からわかるように、本願は、露光装置を用いて単一の物体を一度に製造する状況設定で述べられている。産業界においては、通常、槽の中の一つのプラットフォーム上で二つ以上の物体が、それぞれに対する異なる像の情報に基づき、時には異なる走査間隔を用いて製造される。また、物体毎に層の厚さを変えながら、同時に多数の物体を製造することもある。このような場合においても、本発明の実施は可能である。本発明を実施するに当たり、それぞれの物体を他の物体から独立しているものとして捉え、それぞれをこの開示内容に従って2度露光するのである。
【0042】
本発明に使われる図解したソフトウエアの実施例は、本願の基礎出願のある米国特許出願第08/046,070号の付録Aに記載する。そのソフトウエアは、コンピュータ28またはそれに類似のシグナルプロセッサー用にUNIX(登録商標)シェルスクリプトで書かれており、これにより実施例の最後部に記載されたスーパー変調シグナルを含む第1、第2露光が実施される。
【0043】
上記実施例では、スーパー変調は照射強度(振幅)変調によるものであるが、照射強度を一定にし、像形成面での走査速度を変えることによって実現してもよい。例えば、走査ミラー操作システムに正弦波型シグナル(sinusoidal type signal)を加えれば、ビームを走査線に沿って動くように振動させることができる。この振動の結果、走査線上のある部分を、他の部分より長く露光することができる。振動の頻度を適当に調節すれば、長い露光が光形成可能な組成物の露光のしきい値より上に、短い露光が光形成可能な組成物の露光のしきい値よりも下になるように、設定することができる。
【0044】
上述のシステムは、本発明の方法をデジタル的に処理したものである。しかしながら、アナログ環境で第1および第2露光がなされてもよい。本願の発明は、ここに記載された実施例に限られるものではなく、本発明の開示の恩恵をうける当業者による様々な変更が可能である。例えば、本発明からサブ変調露光の部分を削除し、像形状変調とスーパー変調シグナルのみで変調された一定の強度のビームを用いてもよい。あるいは、固化物体を構成する層の一層ごとではなく複数層単位で、ここに開示した第1および第2像形成露光してもよい。これらおよび類似の変更は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内に含まれていると解釈される。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、層は二度露光されており、第1露光により半硬化の組成物領域によって分離され、固定され、硬化され、複数の破線状の像形成領域を有する非連続の像パターンを形成し、第2露光により半硬化組成物領域を硬化させるので、三次元物体内部に残る未硬化組成物を最小限に抑えて三次元物体を最も硬い状態に保ちつつ、歪みのない三次元物体模型を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための装置を示す概略図である。
【図2】露光ビームをサブ変調するために照射ビーム変調器に送られるコントロールシグナルを示す図である。
【図3】目標平面におけるビーム強度の分布を示す図である。
【図4】照射ビーム変調器に送られるコントロールシグナルを示す図であり、(a)は露光ビームを像形状変調する時のコントロールシグナルを示し、(b)は光形成可能な組成物に対して第1像形成露光する際に使用される照射ビームをスーパー変調する時のコントロールシグナルを示す。
【図5】光形成可能な層を露光した場合の概略立面断面図であり、(a)は図4(b)のコントロールシグナルを用いて第1露光した状態を示し、(b)は図4(a)のコントロールシグナルを用いて第2露光した状態を示す。
【図6】第1露光後の小島が形成された像形成領域を示す概略平面図である。
【図7】第2露光後の図6の像形成領域を示す概略平面図である。
【図8】本発明の別の実施例の、第1露光後の小島が形成された像形成領域を示す概略平面図である。
【符号の説明】
10 レーザー
12 ビーム
13 像形成面
14 変調器
15,15’,17,25 ライン
16,18 ビーム直交偏向装置
20 槽
22 形成可能組成な物
24 昇降手段
26 プラットフォーム
28 制御モジュール
30,36 走査線
32,32’ 小島
34 小島の間の半硬化領域

Claims (11)

  1. 光形成可能な組成物の層を、三次元物体の所望断面部分を表す所定のパターンに従って各層が露光されるように、順々に像形成露光することによって形成された硬化部分に対応する物体の多数の断面部分から、三次元物体を形成する方法において、
    (1)スーパー変調された露光源を用いて、少なくとも一層を所定パターンに像形成露光し、前記層に、半硬化した光形成可能な組成物の領域によって分離されて、不連続な、固定され、硬化された像形成領域を有する非連続像を形成し、
    (2)変調された露光源を用いて、前記層を同じ所定パターンに像形成露光し、前記層に連続した前記所定パターンの硬化像を形成すること、
    (3)前記(1)及び前記(2)を繰り返すことからなる三次元物体製造方法。
  2. 前記露光源が、前記層を走査する変調されたレーザービームを出力し、「オン」状態から「オフ」状態まで、所定の間隔で前記層を照射する前記ビームの強度を選択的に変えることによって、前記露光源の変調とスーパー変調を達成することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記(1)と(2)との工程を予め選択した回数繰り返し、所定パターンに相当する複数の層を露光することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 前記(1)と(2)の工程を予め選択した回数繰り返し、所定パターンに相当する複数の層を連続して露光することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  5. 前記分離、硬化した像形成領域が点線形状からなることを特徴とする請求項2記載の方法。
  6. 前記分離、硬化した像形成領域が破線形状からなることを特徴とする請求項2記載の方法。
  7. 前記スーパー変調された前記層のための第1露光が、前記層上に縦方向にずれた硬化領域を形成することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  8. 前記光形成可能な組成物が感光性ポリマーからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
  9. 前記感光性ポリマーが液体であることを特徴とする請求項8記載の方法。
  10. 前記(2)の工程が、前記(1)の工程の実行から所定時間経過後に実行されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  11. 前記所定時間内に、第1露光による前記光形成可能な組成物の収縮が完了することを特徴とする請求項10記載の方法。
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