JP3585065B2 - 石油樹脂球状粒子と舗装方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は石油を分解して得られる不飽和炭化水素であるC5或いはC9留分を主体として重合せしめた、所謂石油樹脂、または該石油樹脂を主成分とする樹脂を無機質粉末で被覆された球状粒子とすることによって、貯蔵、包装、輸送などを合理化でき、かつ、取り扱いが便利な粒状石油樹脂、およびそれを使用することによる軽便化された舗装方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
石油化学におけるナフサ分解の際にエチレン、プロピレン、芳香族炭化水素などと同時に生成する不飽和炭化水素留分、具体的には脂肪族系C5留分、芳香族系C9留分、或いはこれらを組み合わせたものを主体として重合させた、所謂石油樹脂は淡色乃至ほとんと無色であるため、床用バインダー、塗料、接着剤、印刷インキ、サイズ剤、ゴム加工用、トラフィックベイントなど、いろいろな分野で使用されるようになった。
【0003】
近年、道路舗装においても自然や町並みの周辺環境との調和が強く要望されるようになり、上記石油樹脂を利用した着色舗装材が開発され、特に景観を重視する公園、遊歩道、サイクリングロード、商店街などをはじめとして、一般車道にまで夫々の目的に応じて使用されるようになっている。
【0004】
このような着色舗装の場合には、アスファルト舗装と同様に石油樹脂または石油樹脂を主成分とする樹脂を石油樹脂製造元より混合プラントへ溶融状態のままタンクローリーで移送し、混合プラントでは加熱された粒径の異なる砂利を適当な割合に混合し、これに石粉などの粉末、顔料などと共に該石油樹脂を混合している。そして、この加熱混合物を、所定の場所に移送、散布、転圧することによって舗装施工されている。ここでバインダーとして使用されている石油樹脂は溶融点(転化点)が高いために、骨材粒子を均一に被覆し、相互の結合、固着を有効にするために、適当な粘度になるまで高温に維持して使用する必要がある。
【0005】
更にこの石油樹脂は、プラントでの移送、混合攪拌などの作業性、効率などから、常時加熱溶融状態で貯蔵する必要があり、輸送に当たっても加熱装置を有するタンクローリーなどを使用する必要がある。また、反対にあまり長時間高温状態を維持した場合には材料の熱劣化が懸念されるため、備蓄用タンクを設置することが困難であるし、また、遠隔地への輸送も困難である。
【0006】
更に、景観を目的とするカラー舗装のような場合は、舗装する場所が点在する場合も多く、その舗装面積も比較的小さいことから、1ケ所に使用する石油樹脂の量が少ない場合が多い。
また、カラー舗装施工後、メインテナンスが必要になった場合も、必要な石油樹脂の量は少ない場合が多い。
【0007】
しかし、このように必要量が少ない場合でも、上述したような混合プラントによって石油樹脂と骨材の加熱混合物を製造しなければならず、そのためにはタンクローリーの容量に対して極めて少量の石油樹脂を輸送し、骨材粒子との混合が終了するまで混合プラントに待機させておかなければならず、タンクローリーの回転使用効率も悪くなり、経済的なマイナス面が大きく、小口の着色舗装の需要には十分対応し得ない。
このような背景から、何時でも、何処でも必要量だけ供給できて、しかも、骨材粒子との溶融混合も容易な石油樹脂による舗装方法の実現が切望されてきている。
【0008】
従来、上述の方法を実現するために、石油樹脂に軟化剤などを添加して針入度や接着性を調整し、乳化剤を使用して乳化した明色アスファルト乳剤といわれるものが開発されたが、添加した乳化剤や安定剤等の影響による舗装後の物性の低下等の問題があった。
【0009】
すでに、本発明者らは特開平5−239309に開示されているような石油樹脂の微粉末を使用する舗装方法を見い出したが、前記石油樹脂微粉末はコスト的に問題があり、それが十分に解決されていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術における問題点を解決し、安価に製造出来、取り扱いや貯蔵、輸送が容易である石油樹脂粒子とその粒子を利用した舗装方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは、石油樹脂粒子や石油樹脂を主成分とする樹脂粒子の取り扱いの便利さ及びその製造方法ならびにその利用について鋭意研究した結果、本発明を完成するに到った。即ち、本発明者らは、石油樹脂粒子を無機質微粉末によって被覆した球状粒子とすることによって、取り扱いが容易で貯蔵、包装、輸送などを合理化できる結果、経済的に大きなメリットが得られることを見い出し、またそれをバインダーとして使用することによって軽便な舗装施工、特に安価な小口のカラー舗装方法が可能となることを見い出した。
【0012】
本発明は無機質微粉末によって被覆されている石油樹脂球状粒子に関するものである。
【0013】
また、本発明は、無機質微粉末で被覆されている石油樹脂球状粒子をバインダーとして使用することを特徴とする舗装方法に関するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される石油樹脂は、大別すると脂肪族系、芳香族系、脂肪族/芳香族共重合系、脂肪族/脂環族共重合系、シクロペンタジエン及びさらにこれらを水添した水添系樹脂に分類される。
【0015】
これらの石油樹脂は単独で使用されることは少なく、その他の樹脂、油脂などと混合して目的に応じた物性に調製されることが多い。石油樹脂単独の場合も含めてこれらのいずれの樹脂も本発明の石油樹脂に含まれるが、特に軟化点の低い(軟らかい)石油樹脂や石油樹脂を主成分とする樹脂が有効に用いられる。
【0016】
本発明の無機質微粉末で被覆されている石油樹脂球状粒子はどのような方法によって製造されたものであってもよい。
プラスチックなどの造粒法として汎用的に用いられている押出し造粒においては、押し出した形状が円柱状、角柱状が主であり、切断部の形状はエッジ部分と平面部を持っているし、石油樹脂やアスファルトのような熱可塑性物質を造粒する場合も、樹脂を切断することの困難さを克服しても切断した形状はやはりエッジ部分と平面部を持っている。このような切断部形状の石油樹脂粒子では、その粘着性表面全体に無機質微粉末を付着させて全表面を非粘着性面にしても、エッジ部分には無機質微粉末の付着量が少なくなるため、経時により隣接する粒子のエッジ部分が互いに接着しあって塊状化してしまい、経時保存後の使用には適さない状態になってしまう。
【0017】
すなわち、円柱状、角柱状のごときエッジ部分をもつ形状の粒子は、無機質微粉末で被覆しても保存安定性が極めて悪く、実用に供することはできない。
【0018】
本発明の石油樹脂粒子は粒子形状は球状であるので粒子表面への無機質微粉末の所定被覆量が均一化するため、経時においても隣接粒子間の非粘着性を常に維持することができ、したがって隣接粒子同士が接着することのない極めて優れた保存安定性を持つものである。
【0019】
本発明において、粒子表面を被覆する無機質微粉末とは、粒子の粘着性面を非粘着性面にするものであり、そのようなものであれば従来使用されているものから適宜選択することができる。例えばシリカフューム、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、ゼオライトなどの微粉末があげられる。
無機質微粉末としては少ない被覆量で優れた保存安定性を示すシリカフュームが最も好ましい。
【0020】
本発明の石油樹脂球状粒子において、無機質微粉末の被覆量は石油樹脂球状粒子の粒径によって一定ではないが、通常樹脂粒子重量当たり5〜15重量%、好ましくは10〜12重量%である。5重量%未満では、球状粒子を十分被覆するに支障をきたし、また、15重量%より多い使用は過剰分も多くなり、実用的でない。
【0021】
無機質微粉末被覆石油樹脂球状粒子の粒子径は、粒子径が大きくなるにしたがって比表面積が小さくなり、つまり、石油樹脂単位重量あたりの無機質微粉末の被覆量が少なくなるため、経時により粒子が軟化、変形し、粒子同士の接着面積が大きくなると共に被覆する微粉末の欠損部分、不足部分が発生し、その部分から隣接粒子同士が接着しやすくなる。それ故、保存安定性を考えた場合、粒子径は2mm以上5mm以下が好ましく、3mm程度が実用的である。粒径が2mm未満では製造上に困難を伴い、また、5mmより大きいと隣接粒子の接着による塊状化が生じやすく実用的でない。
【0022】
本発明における石油樹脂はカラー舗装用に使用されている石油樹脂に要求されているその標準的性状がJIS K 2207における針入度で40以上と規定されていることから、その針入度は40〜120、好ましくは60〜80である。
【0023】
本発明の無機質微粉末で被覆された石油樹脂球状粒子は、加熱溶融状態にある石油樹脂をノズルを介して向流冷却空気、前記冷却空気により形成される無機質微粉末の流動床中に滴下分散することによって製造することができる。
【0024】
本発明の球状粒子の製造方法の一例を図−1に示すフローシートによって説明する。
タンク1内で加熱保温され溶融状態の石油樹脂2は、ポンプ3によりヒーター4で加熱保温された配管5を通じて造粒塔頂部6のノズル7を介して造粒塔空間部8内に落下する。
ノズル7は、複数の細孔を備えた円盤構造である。球状粒子の平均粒子径はノズル7の細孔口径により調整される。口径が小さくなるほど平均粒子径は小さくなるが、通常1mm前後である。
【0025】
造粒塔空間部8内に落下した石油樹脂は、球状粒子状態となり、下方からの冷却空気と向流接触しながら冷却され、造粒塔6底部のブロアー9から分散板11を介して供給される冷却空気によって無機質微粉末が流動状態にある流動床10に滴下分散することにより、さらに冷却されながら球状粒子の粘着性面が無機質微粉末で被覆される。
【0026】
造粒塔空間部8内を上昇した冷却空気は、サイクロン20に入り、同伴無機質微粉末が分離回収され排出される。
流動床10内の球状粒子と無機質微粉末の混合物は、流動床10下部のバルブ12を経て配管13より分離装置14に入り、篩い機能を備えた分離装置14によって無機質微粉末で被覆された球状粒子と過剰の無機質微粉末が分離される。 分離された無機質微粉末は配管15を経て、造粒塔6底部に送られ循環使用される。
【0027】
一方、分離された無機質微粉末で被覆された球状粒子は、ホッパー16に貯蔵される。なお、無機質微粉末の被覆量が不足している場合は、ドラム式の転動造粒装置17において無機質微粉末の被覆量が調整される。
また、流動床10内の無機質微粉末の流動状態を一定に保つために、無機質微粉末はその消費量に応じてバルブ18を有する無機質微粉末供給口19より供給される。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
針入度68に調製した石油樹脂を180℃に加熱し、高さおよそ10mの造粒塔上部の直径0.8mmの細孔を有するノズルを介して、無機質微粉末となるシリカフューム(塩野義製カーブレックス#80)およそ10kgを流動化させた流動床中に2kg/Hの早さで滴下分散した。
分離装置を介して直径およそ3mmの無機質微粉末で被覆された石油樹脂球状粒子を得た。
つづいて、ドラム式転動造粒装置を用いて、無機質微粉末にシリカフュームをさらに被覆し、その被覆量が石油樹脂に対して10重量%となる石油樹脂球状粒子を得た。
【0029】
実施例2
実施例1で得られた石油樹脂球状粒子を2kgビニール袋に入れ、50℃の室内に30日静置した。この石油樹脂球状粒子を用いて、アスファルト舗装要綱によるマーシャル安定試験方法に準じて試験した結果を表−1に示す。従来の加熱溶融した石油樹脂と同様な混合時間約60秒で骨材粒子を均一に被覆し、優れた混合性を示した。また、マーシャル安定試験における物性も従来の加熱溶融した石油樹脂と同等な性能を示し、舗装材として問題はみられなかった。
【0030】
【表1】
Figure 0003585065
実施例3
実施例1と同様の方法により、実施例1で用いたシリカフュームに変えて無機質微粉末としてタルク及び炭酸カルシウムを用い、微粉末の被覆量を変えて石油樹脂球状粒子を製造した。
各石油樹脂球状粒子について、微粉末の種類と、その被覆量の影響を保存安定性との関係で評価し、結果を表2に示した。表2の結果から保存期間が10日未満であれば、各微粉末共その被覆量の範囲では、安定状態を維持しているが、保存期間が20日を越えると微粉末の種類、その被覆量によって保存安定性に差が生じることが分る。しかし、いずれの場合も、十分に使用に耐える保存安定性は備えている。
【0032】
【表2】
Figure 0003585065
【0033】
Figure 0003585065
【0034】
実施例4
実施例1に記載した方法に従って、無機質微粉末としてシリカフュームを使用し、微粉末の被覆量と粒径の異なる石油樹脂球状粒子を製造し、それぞれについての保存安定性を評価した。結果を表3に示す。表3から球状粒子の粒径は2mm〜5mmの範囲が好ましく、微粉末の被覆量は8重量%以上が好ましい。
【0035】
【表3】
Figure 0003585065
【0036】
Figure 0003585065
【0037】
実施例5
実施例1の方法に従って、無機質微粉末にシリカフュームを使用し、針入度の異なる石油樹脂を使用して粒子径3mmの石油樹脂球状粒子を製造し、その球状粒子化のし易すさと得られた球状粒子の保存安定性を評価した。結果を表4に示す。表4から石油樹脂は40〜120であればよく、60〜80の針入度のものが好ましいことが分る。
【0038】
【表4】
Figure 0003585065
【0039】
Figure 0003585065
【0040】
【発明の効果】
本発明の無機質微粉末で被覆されている石油樹脂又は石油樹脂を主成分とする樹脂球状粒子は隣接粒子との接着による塊状化が生起しにくいため保存安定に優れ、貯蔵、包装、運搬などに支障をきたすことがなく、取り扱いが簡便である。 又、該被覆された樹脂球状粒子を用いた舗装方法は、何時でも何処でも小口の舗装需要に簡便かつ経済的に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無機質微粉末により被覆された球状粒子の製造方法を示す図。
【符号の説明】
1.加熱保温タンク
2.石油樹脂または石油樹脂を主成分とした樹脂
3.ポンプ
4.ヒーター
5.配管
6.造粒塔
7.ノズル
8.造粒塔空間部
9.ブロアー
10.流動床
11.分散板
12.バルブ
13.配管
14.分離装置
15.配管
16.ホッパー
17.ドラム式転動造粒装置
18.バルブ
19.無機質微粉末供給口
20.サイクロン

Claims (5)

  1. JIS K 2207に規定される針入度が60〜100の石油樹脂の球状粒子を、石油樹脂の球状粒子に対して5〜15重量%となる無機質微粉末で被覆していることを特徴とする無機質微粉末で被覆されている石油樹脂球状粒子。
  2. 前記無機質微粉末がシリカフューム、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム及びゼオライトから選ばれるものであることを特徴とする請求項1記載の無機質微粉末で被覆されている石油樹脂球状粒子。
  3. 前記石油樹脂の球状粒子の粒子径が2mm〜5mmである請求項1又は2に記載の無機質微粉末で被覆されている石油樹脂球状粒子。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載された無機質微粉末で被覆されている石油樹脂球状粒子を骨材粒子のバインダーとして含有する舗装材を使用することを特徴とする舗装方法。
  5. 前記骨材粒子のバインダーに加えてさらに着色顔料を含有する舗装材を使用することを特徴とする請求項4記載の舗装方法。
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