JP3584520B2 - スクロール型圧縮機及び可動スクロール部材並びに可動スクロール部材の製造方法 - Google Patents

スクロール型圧縮機及び可動スクロール部材並びに可動スクロール部材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、例えば車両の空調装置に使用されるスクロール型圧縮機、及びその圧縮機に用いられる可動スクロール部材、並びに可動スクロール部材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スクロール型圧縮機においては、ハウジング内に、基板上に渦巻部を有する固定スクロール部材と、基板上に渦巻部を有する可動スクロール部材とが、それらの渦巻部にて互いに噛み合わされた状態で配設されている。そして、両スクロール部材間には圧縮室が形成され、可動スクロール部材が固定スクロール部材の軸心の周りで公転されることにより、この圧縮室が渦巻部の外周側から中心側に移動されて、ガスが次第に圧縮される。
【0003】
従来のこの種のスクロール型圧縮機としては、可動スクロール部材とフロントハウジングとの間に鉄系材料よりなる固定プレートが介装され、可動スクロール部材の基板が、この固定プレートに接触した状態で公転されるように構成したものが提案されている。この圧縮機においては、可動スクロール部材に対しその中心軸線に沿って作用する圧縮反力が、固定プレートを介してフロントハウジングの荷重受け面にて受け止められる。
【0004】
また、従来のスクロール型圧縮機としては、例えば特開平1−273892号公報に示すような構成のものも知られている。この圧縮機においては、可動スクロール部材がアルミニウム合金により一体に成形され、その合金中のケイ素の含有率が10〜11重量%に設定されている。すなわち、スクロール部材は最終的に切削加工を施すことにより所定寸法に形成されるが、この従来の圧縮機においては、ケイ素の含有率を低くすることによって、可動スクロール部材の切削加工性が悪化するのを防止している。その結果、特に高い寸法精度が要求される渦巻部の切削加工に際しても、その加工が容易となり、寸法精度に優れた可動スクロール部材を得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種のスクロール型圧縮機においては、ガスに含まれる潤滑油により接触部等の各部の潤滑が行われるようになっているが、圧縮機の運転停止時にガスが液化して、その液状態で潤滑油とともに圧縮機内から配管を通して流れ出る場合がある。そして、このような場合には、圧縮室内から潤滑油が持ち出されることになるので、圧縮機がオイルレス状態に陥る。しかしながら、従来の圧縮機においては、前記のように可動スクロール部材がケイ素の含有率の低いアルミニウム合金により形成されて、その硬度がそれほど高くない。そのため、圧縮機がオイルレス状態で起動されたときには、この可動スクロール部材と鉄系材料の固定プレートとの接触部において、可動スクロール部材の圧縮反力の受け面が固定プレートに瞬時に凝着して、圧縮機がロック状態になるという問題があった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その主たる目的は、圧縮機がオイルレス状態になって起動された場合でも、可動スクロール部材の圧縮反力の受け面が対面する部材に凝着するおそれを防止することができるとともに、可動スクロール部材の渦巻部の切削加工性を良好なものとすることができるスクロール型圧縮機及び可動スクロール部材を提供することにある。
【0007】
また、この発明のその他の目的は、前記のような可動スクロール部材を容易に製造することができる可動スクロール部材の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のスクロール型圧縮機の発明では、可動スクロール部材は、その基板の渦巻部が設けられている側とは反対側の部分を、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成し、その他の部分を亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成したものである。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のスクロール型圧縮機において、前記過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金は、ケイ素の含有率が14〜30重量%であり、前記亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金は、ケイ素の含有率が4〜12重量%である。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のスクロール型圧縮機において、前記可動スクロール部材とハウジングとの間には、可動スクロール部材に対して作用する圧縮反力を受け止めるための鉄系材料よりなる固定プレートを配設したものである。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3の何れかに記載のスクロール型圧縮機において、前記過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金において、共晶ケイ素の粒径を30〜50μmに設定したものである。
【0012】
請求項5に記載の発明では、基板上に渦巻部を備えてなる可動スクロール部材において、前記基板の渦巻部が設けられている側とは反対側の部分を過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成し、その他の部分を亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成したものである。
【0013】
請求項6に記載の発明では、基板の表裏両面に渦巻部及び軸受ボス部を備えてなる可動スクロール部材の製造方法において、鋳型の基板形成用空間内に、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなるリング部材を配置し、その後に鋳型の各部形成用空間内に、亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなる溶融材を注入して、基板の渦巻部が設けられる側とは反対側の部分に前記リング部材が配置されるように、2種類の合金を鋳ぐるみ成形したものである。
【0014】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の製造方法において、前記リング部材はケイ素の含有率が14〜30重量%であり、その含有率が14〜20重量%の場合には鋳造により成形され、20〜30重量%の場合には焼結により成形されるものである。
【0015】
請求項8に記載の発明では、請求項6または7に記載の製造方法において、前記リング部材の溶融材との接合面を凹凸状に形成したものである。
【0016】
【作用】
請求項1及び5に記載の発明によれば、可動スクロール部材の圧縮反力を受ける部分、言い換えれば基板の渦巻部が設けられている側とは反対側の部分が、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成されて、その硬度及び耐焼付性が向上されている。すなわち、可動スクロール部材は、その基板の渦巻部が設けられている側とは反対側の部分に、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成された部分を有し、当該部分の硬度及び耐焼付性が向上されている。このため、圧縮機がオイルレス状態になって起動された場合でも、可動スクロール部材の圧縮反力の受け面が対面する部材に凝着するおそれはない。
【0017】
また、可動スクロール部材の圧縮反力を受ける部分を除いて、他の部分が亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成されている。このため、可動スクロール部材の圧縮反力の受け部を、凝着のおそれのない強固な材料で形成したにもかかわらず、渦巻部の切削加工性を良好なものとすることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、アルミニウム−ケイ素系合金は、ケイ素の含有率がほぼ12重量%を共晶点として、それ以上が過共晶組成、それ以下が亜共晶組成となる。そして、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金としては、ケイ素の含有率の下限を耐焼付性等を考慮して14重量%とし、上限を製造の容易性やケイ素の含有率を高くすることにより脆くなって破損し易くなる点等を考慮して30重量%とするのが望ましい。また、亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金としては、ケイ素の含有率の下限を硬度等を考慮して4重量%とし、上限を切削加工性等を考慮して12重量%とするのが望ましい。そして、ケイ素の含有率を上記のような範囲にすることにより、可動スクロール部材として、凝着が生じないのは勿論、機械的強度や製造に問題を生じないものを得ることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、鉄系材料の固定プレートにより圧縮反力が確実に受け止められる。また、その固定プレートに対して可動スクロール部材の圧縮反力の受け面が凝着するおそれがない。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、共晶ケイ素の粒径を30〜50μmという比較的大きな粒径とすることにより、対面する部材との間の摺動抵抗が軽減され、耐磨耗性及び耐焼付性がより向上される。尚、共晶ケイ素の粒径を30μmより小さくすると、耐磨耗性や耐焼付性が低下し、50μmより大きくすると、脆くなって破損し易くなる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、予め過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなるリング部材を形成しておき、そのリング部材を鋳型内に配置した状態で、鋳型のその他の空間内に亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなる溶融材を注入して、2種類の合金を鋳ぐるみ成形している。このため、2種類のアルミニウム−ケイ素系合金よりなる可動スクロール部材を、容易かつ能率的に製造することができる。また、2種類の合金材を使用しているが、何れもアルミニウム合金材であるので、両者の接合性に問題は生じない。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、ケイ素の含有率が14〜20重量%の場合には、リング部材を鋳造により容易に成形することができる。また、ケイ素の含有率が20〜30重量%になると鋳造が困難になるが、このような場合には焼結により容易に成形することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、鋳造に際して、リング部材と溶融材との接合性がより向上される。
【0024】
【実施例】
以下、この発明の一実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
まず、スクロール型圧縮機の構成について述べると、図2及び図3に示すように、固定スクロール部材11はセンタハウジングを兼用し、その両端面にはフロントハウジング12及びリヤハウジング13が固定されている。回転軸14はベアリング15によりフロントハウジング12内に回転可能に支持され、その内端には偏心軸16が突設されている。ブッシュ17は偏心軸16に回転可能に支持されている。なお、固定スクロール部材11、フロントハウジング12及びリヤハウジング13は、圧縮機全体の軽量化を図るため、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されている。
【0025】
可動スクロール部材18はその外面の軸受ボス部18cにおいて、前記ブッシュ17にベアリング19を介して相対回転可能に嵌合支持されている。そして、この可動スクロール部材18は、回転軸14が回転されたとき、偏心軸16によりブッシュ17及びベアリング19を介して、回転軸14の軸線の周りで公転される。なお、可動スクロール部材18は、公転運動に伴う遠心力を抑制するとともに、圧縮機全体の軽量化を図るため、後述するようにアルミニウム合金により形成されている。
【0026】
前記固定スクロール部材11は、基板11aとその内面に一体に形成された渦巻部11bとを備えている。同様に、可動スクロール部材18も、基板18aとその内面に一体形成された渦巻部18bとを備えている。そして、両スクロール部材11,18は渦巻部11b,18bにおいて互いに噛み合わされ、各渦巻部11b,18bの軸線方向の端縁が、対向するスクロール部材11,18の基板11a,18aに当接されている。この状態で、両スクロール部材11,18の基板11a,18a及び渦巻部11b,18bにて圧縮室20が形成される。
【0027】
吸入室21は前記固定スクロール部材11の周壁と可動スクロール部材18の渦巻部18bの外周部との間に形成されている。吸入ポート22はフロントハウジング12の斜め上部に形成され、この吸入ポート22から吸入室21内に冷媒ガスが吸入される。吐出孔23は固定スクロール部材11の基板11aの中心に形成され、この吐出孔23を介して圧縮室20がリヤハウジング13内の吐出室24に連通される。吐出弁25は吐出孔23の外端部に配設され、リテーナ26によりその開放位置が規制される。
【0028】
図2〜図4に示すように、リング状の固定プレート27は前記フロントハウジング12の内壁面に配設され、可動スクロール部材18の基板18aの外面に接触されている。2本の回り止めピン28はフロントハウジング12の内壁面に突設され、これらのピン28が固定プレート27上の孔29に嵌合されることにより、固定プレート27がフロントハウジング12に対して回り止めされている。
【0029】
また、前記固定プレート27は鉄系材料により形成され、可動スクロール部材18と接触する面にはニッケル−リンメッキ等の硬化処理が施されている。そして、前記圧縮室20内でのガス圧縮に伴って作用する圧縮反力のうちで、可動スクロール部材18に対しその軸線方向に沿って作用する圧縮反力が、この固定プレート27によって受け止められる。
【0030】
図2、図3、図5及び図6に示すように、複数対の自転防止ピン30,31は前記可動スクロール部材18の基板18a及びフロントハウジング12の内壁に突設され、各一対のピン30,31の先端部が互いに所定間隔をおいて近接配置されている。自転防止リング32は各一対のピン30,31にそれぞれ嵌挿され、この自転防止リング32と自転防止ピン30,31との協働により、可動スクロール部材18の自転が規制されて、公転運動のみが許容されるようになっている。
【0031】
次に、前記可動スクロール部材18についてさらに詳細に説明する。図1に示すように、この実施例の可動スクロール部材18は、圧縮反力を受ける基板18aの外面側の部分33(同図に破線で囲むリング状の部分)、言い換えれば基板18aの渦巻部18bが設けられている側とは反対側の部分33が、高硬度で且つ耐焼付性に優れた過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成されている。そして、その他の部分34が、切削加工性に優れた亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成されている。また、過共晶組成の合金によって形成された部分33の板厚T1は、例えば基板18全体の板厚T2の約半分になるように設定されている。
【0032】
なお、前記過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金としては、ケイ素の含有率が14〜30重量%のものが適当であり、その代表例としては例えばAA規格におけるA390材料がある。一方、前記亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金としては、ケイ素の含有率が4〜12重量%のものが適当であり、その代表例としては例えばJIS規格におけるAC8C材料がある。
【0033】
即ち、アルミニウム−ケイ素系合金は、ケイ素の含有率がほぼ12重量%を共晶点として、それ以上が過共晶組成、それ以下が亜共晶組成となる。そして、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金としては、ケイ素の含有率の下限を耐焼付性等を考慮して14重量%とし、上限を製造の容易性やケイ素の含有率を高くすることにより脆くなって破損し易くなる点等を考慮して30重量%とするのが望ましい。又、亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金としては、ケイ素の含有率の下限を硬度等を考慮して4重量%とし、上限を切削加工性等を考慮して12重量%とするのが望ましい。そして、ケイ素の含有率を上記のような範囲にすることにより、可動スクロール部材18として、圧縮反力の受け面が固定プレート27に凝着しないとともに、機械的強度や製造に問題を生じないものを得ることができる。
【0034】
さらに、前記過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金において、共晶ケイ素の粒径は30〜50μmに設定するのが望ましい。即ち、共晶ケイ素の粒径を30〜50μmという比較的大きな粒径とすることにより、固定プレート27との間の摺動抵抗が軽減され、耐磨耗性及び耐焼付性がより向上される。尚、共晶ケイ素の粒径を30μmより小さくすると、耐磨耗性や耐焼付性が低下し、50μmより大きくすると、脆くなって破損し易くなる。
【0035】
次に、前記のような構造の可動スクロール部材18の製造方法について説明する。図7に示すように、この実施例の製造方法では、接離可能に対応する一対の鋳型35,36が使用される。第1の鋳型35には可動スクロール部材18の基板18a及び軸受ボス部18cを形成するための空間35a,35bが形成され、第2の鋳型36には可動スクロール部材18の渦巻部18bを形成するための空間36aが形成されている。また、第2の鋳型36には溶融材を注入するための鋳込口37が配設されている。
【0036】
そして、可動スクロール部材18の製造時には、両鋳型35,36の離型状態で、第1の鋳型35の基板形成用空間35a内にリング部材38が挿入配置される。このリング部材38は、予め過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって、可動スクロール部材18の基板18aと同一外径で、その板厚T2のほぼ半分の板厚T1となるように形成されている。尚、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金において、ケイ素の含有率が14〜20重量%の場合には、リング部材38を鋳造により容易に成形することができる。また、ケイ素の含有率が20〜30重量%になると鋳造が困難になるが、このような場合にはリング部材38を焼結により成形すれば、容易に成形することができる。このように、ケイ素の含有率の高低に応じて、リング部材38を鋳造或いは焼結により容易に成形することができる。
【0037】
この状態で、両鋳型35,36が閉じられて、鋳込口37から両鋳型35,36の各成形用空間35a,35b,36a内に、亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなる溶融材が注入される。これにより、圧縮反力を受ける部分33にリング部材38が配置された状態で、2種類の合金が鋳ぐるみ成形されて、可動スクロール部材18の基板部18a、渦巻部18b及び軸受部ボス部18cが一体に形成される。その後、切削加工等を施すことにより、可動スクロール部材18が所定寸法に形成される。
【0038】
さて、上記のように構成されたスクロール型圧縮機において、回転軸14が回転されると、偏心軸16の偏心回転に伴い、可動スクロール部材18が自転を阻止された状態で回転軸14の軸線の周りで公転される。この動作により、冷媒ガスが吸入室21から両スクロール部材11,18間の圧縮室20内に取り込まれるとともに、圧縮室20が渦巻部11b,18bの外周側から中心側に移動されて、容積を徐々に減少する。従って、冷媒ガスは圧縮室20内において次第に圧縮され、吐出孔23から吐出弁25を押し開いて吐出室24内に吐出される。
【0039】
このとき、可動スクロール部材18にはその軸線方向に沿う圧縮反力が作用するが、その圧縮反力は鉄系材料の固定プレート27により確実に受け止められる。
【0040】
また、この実施例の可動スクロール部材18においては、圧縮反力を受ける基板18aの外面側の部分33のみが、ケイ素の含有率の高い過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成されている。このため、圧縮機の運転停止時において、液化した冷媒ガスの流出に伴い圧縮機内から潤滑油が持ち出されて、オイルレス状態に陥った場合でも、そのオイルレス状態の起動時に、可動スクロール部材18の圧縮反力を受ける部分33が鉄系材料の固定プレート27に凝着するおそれはない。従って、可動スクロール部材18の凝着により、圧縮機がロック状態になるのを防止することができる。
【0041】
ちなみに、この実施例の構造よりなる可動スクロール部材18と、従来構造の可動スクロール部材とを比較試験したところ、次のような結果が得られた。すなわち、この実施例の可動スクロール18は、圧縮反力を受ける部分33を、ケイ素の含有率が約17重量%で、共晶ケイ素の粒径が30〜50μmのA390材料により形成し、他の部分34をケイ素の含有率が約10重量%で、共晶ケイ素の粒径が10μm以下のAC8C材料により形成した。これに対して、従来構造の可動スクロール部材は、全体をケイ素の含有率が約10重量%で、共晶ケイ素の粒径が10μm以下のAC8C材料により一体に形成した。
【0042】
そして、両スクロール部材を圧縮機にそれぞれ組み込んで、オイルレス状態で20秒間運転したところ、従来構造の可動スクロール部材では凝着を生じたのに対して、実施例構造の可動スクロール部材18では凝着を生じなかった。これは、実施例構造の可動スクロール部材18の圧縮反力を受ける部分33が、ケイ素の含有率の高いアルミニウム合金で形成されて、硬度が高められるとともに耐焼付性が向上されている結果である。加えて、共晶ケイ素の粒径を30〜50μmという比較的大きな粒径とすることにより、固定プレート27との間の摺動抵抗が軽減され、耐磨耗性及び耐焼付性がより向上されている結果である。
【0043】
また、この実施例の可動スクロール部材18においては、圧縮反力を受ける部分33を除いて、他の部分34が亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成されている。このため、可動スクロール部材18の圧縮反力の受け部分33を、凝着のおそれのない強固な材料で形成したにもかかわらず、渦巻部18bや軸受ボス部18cの切削加工性を良好なものとすることができる。従って、可動スクロール部材18の成形後に、渦巻部18b及び軸受ボス部18cを能率よく高精度に切削加工することができる。また、加工に使用する切削工具の寿命を延ばすことができる。
【0044】
さらに、この実施例の可動スクロール部材18の製造方法においては、予め過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなるリング部材38を形成しておく。そして、そのリング部材30を鋳型35,36内に配置した状態で、鋳型35,36のその他の空間内に亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなる溶融材を注入して、2種類の合金を鋳ぐるみ成形している。このため、ケイ素の含有率の異なった2種類のアルミニウム−ケイ素系合金よりなる可動スクロール部材18を、容易かつ能率的に製造することができる。また、2種類の合金材を使用しているが、何れもアルミニウム合金材であるので、両者の接合性に問題は生じない。
【0045】
なお、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
(1) 可動スクロール部材18の圧縮反力を受ける部分33を形成するための過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金において、ケイ素の含有率を前記14〜30重量%の範囲内で適宜に変更すること。例えば、ケイ素の含有率を14〜20重量%の範囲内とすると、耐焼付性、及び製造の容易性や脆くなって破損し易くなる点等を考慮した場合、よりバランスのとれた好ましいものとすることができる。
【0046】
また、可動スクロール部材18のその他の部分34を形成するための亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金において、ケイ素の含有率を前記4〜12重量%の範囲内で適宜に変更すること。例えば、ケイ素の含有率を6.5〜12重量%の範囲内とすると、硬度及び切削加工性等を考慮した場合、よりバランスのとれた好ましいものとすることができる。
【0047】
そして、ケイ素の含有率を上記のような範囲に変更することにより、可動スクロール部材18として、凝着を生じないのは勿論、機械的強度や製造の容易性から見て、より優れたものを得ることができる。
【0048】
(2) 前記リング部材38の溶融材との接合面を凹凸状に形成すること。なお、この凹凸はどのようなものでもよく、例えば放射状或いは円周方向に延びる多数本の溝や凸条、ローレット状の溝や凸条、多数の突起や凹部等が挙げられる。このようにすれば、鋳造に際して、リング部材38と溶融材との接合性がより向上される。
【0049】
(3) 前記リング部材38の溶融材との接合部であるリング内周壁を凹凸状に形成すること。このようにすれば、前記(2)と同様に、リング部材38と溶融材との接合性がより向上される。
【0050】
(4) リング部材38の内径を可動スクロール部材18のボス部18cの外径よりも小径に形成すること。このようにすれば、リング部材38と溶融材との接合性がより向上される。
【0051】
(5) リング部材38の板厚T1を、接合性に支障を生じない程度に薄くしたり厚くしたりすること。
上記実施例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0052】
(1) 過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金は、ケイ素の含有量が14〜30重量%であり、亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金は、ケイ素の含有量が4〜12重量%である請求項5に記載の可動スクロール部材。
【0053】
(2) 過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金において、共晶ケイ素の粒径を30〜50μmに設定した請求項5又は上記(1)に記載の可動スクロール部材。
【0054】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1及び5に記載の発明によれば、圧縮機がオイルレス状態になって起動された場合でも、可動スクロール部材の圧縮反力の受け面が対面する部材に凝着するおそれを防ぐことができる。従って、可動スクロール部材の凝着により圧縮機がロック状態になるのを防止することができる。又、可動スクロール部材の圧縮反力の受け面を、凝着のおそれのない強固な材料で形成したにもかかわらず、渦巻部の切削加工性を良好なものとすることができる。従って、可動スクロール部材の渦巻部を、能率よく高精度に切削加工することができる。
【0055】
請求項2に記載の発明によれば、可動スクロール部材として、凝着が生じないのは勿論、機械的強度や製造に問題を生じないものを得ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、鉄系材料の固定プレートにより圧縮反力を確実に受け止めることができる。又、その固定プレートに対して可動スクロール部材の圧縮反力の受け面が凝着するおそれがない。
【0056】
請求項4に記載の発明によれば、対面する部材との間の摺動抵抗を軽減して、耐磨耗性及び耐焼き付き性をより向上させることができる。
請求項6に記載の発明によれば、2種類のアルミニウム−ケイ素系合金よりなる可動スクロール部材を、容易かつ能率的に製造することができるとともに、2種類の材料の接合性に問題は生じない。
【0057】
請求項7に記載の発明によれば、ケイ素の含有率に応じて、リング部材を鋳造或いは焼結により容易に成形することができる。
請求項8に記載の発明によれば、鋳造に際して、リング部材と溶融材との接合性がより向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の可動スクロール部材の一実施例を示す斜視図。
【図2】この発明のスクロール型圧縮機の全体を示す縦断面図。
【図3】同じくスクロール型圧縮機の要部分解斜視図。
【図4】固定プレートの回り止め機構を示す部分拡大断面図。
【図5】自転防止機構を示す部分拡大断面図。
【図6】同じく自転防止機構を示す部分拡大断面図。
【図7】可動スクロール部材の製造方法を説明するための分解斜視図。
【符号の説明】
11…センタハウジングを兼用する固定スクロール部材、11a…基板、11b…渦巻部、12…フロントハウジング、13…リヤハウジング、18…可動スクロール部材、18a…基板、18b…渦巻部、18c…軸受ボス部、20…圧縮室、27…固定プレート、33…圧縮反力を受ける部分、34…その他の部分、35…第1の鋳型、35a…基板形成用空間、35b…ボス部形成用空間、36…第2の鋳型、36a…渦巻部形成用空間、38…リング部材。

Claims (8)

  1. ハウジング内に、基板上に渦巻部を有する固定スクロール部材と、基板上に渦巻部を有する可動スクロール部材とを、それらの渦巻部にて互いに噛み合わせた状態で配設して、両スクロール部材間に圧縮室を形成し、可動スクロール部材を固定スクロール部材の軸心の周りで公転させることにより、圧縮室を渦巻部の外周側から中心側に移動させて、ガスの圧縮作用を行うようにしたスクロール型圧縮機において、
    前記可動スクロール部材は、その基板の渦巻部が設けられている側とは反対側の部分を、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成し、その他の部分を亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成したスクロール型圧縮機。
  2. 前記過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金は、ケイ素の含有率が14〜30重量%であり、前記亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金は、ケイ素の含有率が4〜12重量%である請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
  3. 前記可動スクロール部材とハウジングとの間には、可動スクロール部材に対して作用する圧縮反力を受け止めるための鉄系材料よりなる固定プレートを配設した請求項1または2に記載のスクロール型圧縮機。
  4. 前記過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金において、共晶ケイ素の粒径を30〜50μmに設定した請求項1〜3の何れかに記載のスクロール型圧縮機。
  5. 基板上に渦巻部を備えてなる可動スクロール部材において、前記基板の渦巻部が設けられている側とは反対側の部分を過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成し、その他の部分を亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金によって形成した可動スクロール部材。
  6. 基板の表裏両面に渦巻部及び軸受ボス部を備えてなる可動スクロール部材の製造方法において、
    鋳型の基板形成用空間内に、過共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなるリング部材を配置し、その後に鋳型の各部形成用空間内に、亜共晶組成のアルミニウム−ケイ素系合金よりなる溶融材を注入して、基板の渦巻部が設けられる側とは反対側の部分に前記リング部材が配置されるように、2種類の合金を鋳ぐるみ成形した可動スクロール部材の製造方法。
  7. 前記リング部材はケイ素の含有率が14〜30重量%であり、その含有率が14〜20重量%の場合には鋳造により成形され、20〜30重量%の場合には焼結により成形される請求項6に記載の可動スクロール部材の製造方法。
  8. 前記リング部材の溶融材との接合面を凹凸状に形成した請求項6または7に記載の可動スクロール部材の製造方法。
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