JP3582585B2 - 地図表示装置及び該地図表示装置用記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠近地図上に建造物を立体的に表示する地図表示装置及び該地図表示装置用記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
経路探索や経路案内の機能を有する車両用ナビゲーション装置では、進行方向の情報を判りやすく提供できるように走行イメージを立体的に表示する装置や車両の現在位置周辺の道路地図を遠方よりも拡大して表示する、いわゆる鳥瞰図表示方式により道路地図を表示する装置等が提案されている(特開平1−263688号公報、特開平8−136270号公報、特開平8−160853号公報、特開平8−166249号公報、特開平8−292720号公報、特開平9−127861号公報等参照)。
【0003】
従来提案されている装置のあるものは、例えば鳥瞰図上の一部にウインドウ表示領域を設けて広域地図を表示し、さらには鳥瞰図の範囲を枠で表示することにより、鳥瞰図の欠点である距離感が把握しにくくなるのを解消し、道路地図範囲の広さがわかりにくくなるのを解消している。また、あるものは、表示領域の上辺側所定範囲内に平面地図又は平面地図に近い鳥瞰図を表示することにより、遠方の道路状況が判りにくくなるのを解消し、遠方の道路情報を正確に把握できるようにしている。
【0004】
しかし、鳥瞰図で地図を表示した場合には、表示が小さくなる地図の上方でデータ量が多くなり、表示したとしても何が表示されているのか、見ても分かりにくくなるという問題がある。そのため、道路データを優先度に応じて分類し、地図の上下の位置によって表示するデータを変えるようにしている装置(特開平8−136270号公報)が提案されている。この装置では、例えば地図の上方は優先度の高い、有料道路や国道などに限定して表示し、下方には優先度の低いデータも表示することにより、上方で表示するデータを減らしているが、やはり、地図の上方が見にくいことに変わりはない。また、運転者が見える風景に近い画像を立体地図として表示することも考慮すると、地図の上方にある道路は、大抵建造物に隠れて運転者には見えないが、図4(A)の▲4▼のように建造物に隠れていた道路が突然画面上方に表示されるため道路が浮いているように見えてしまうなどの不都合も生じる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するものであって、遠近地図上に建造物を立体的に表示しても地図の上方の見にくさをなくすようにするものである。
【0006】
そのために本発明は、遠近地図上に建造物を立体的に表示する地図表示装置において、道路データ及び高さデータを含む建造物データを格納する情報記憶手段と、該情報記憶手段に記憶された前記道路データ及び建造物データの座標を遠近地図に座標変換する座標変換手段と、座標変換された遠近地図を表示する表示制御手段とを備え、前記表示制御手段は、前記道路データ及び建造物データの種類に応じて遠近地図の一定領域を除いたクリップ領域を設定するとともに、前記道路データ及び建造物データが設定されたクリップ領域内に位置するか否かを判定し、該クリップ領域内にあるデータを座標変換して遠近地図を表示することを特徴とするものである。
【0007】
遠近地図上に建造物を立体的に表示する機能を実現するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な地図表示装置用記録媒体において、道路データ及び高さデータを含む建造物データの座標を遠近地図に座標変換する座標変換機能、前記道路データ及び建造物データの種類に応じて遠近地図の一定領域を除いたクリップ領域を設定するとともに、前記道路データ及び建造物データが設定されたクリップ領域内に位置するか否かを判定し、該クリップ領域内にあるデータを前記座標変換機能により座標変換して遠近地図を表示する表示制御機能を実現するためのプログラムを記録したことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る地図表示装置の実施の形態を示す図であり、2次元座標及び高さ情報を有する地図データから地図を展開して表示する場合の表示条件や座標変換パラメータ、経路案内に関する情報を入力する入力装置1、自車両の現在位置に関する情報を検出する現在位置検出装置2、2次元座標及び高さ情報を有する地図データ、経路の算出に必要なナビゲーション用データ、経路案内に必要な表示/音声の案内データ、さらに地図を表示、経路算出、案内を行うためのプログラム(アプリケーション及び/又はOS)等が記録されている情報記憶装置3、ナビデータ処理手段として地図の表示処理、経路探索処理、経路案内に必要な表示/音声案内処理、さらにシステム全体の制御を行う中央処理装置4、車両の走行に関する情報である、例えば道路情報、交通情報を送受信したり、車両の現在位置に関する情報を検出したり、さらに現在位置に関する情報を送受信したりする情報送受信装置5、経路案内に関する情報を出力するディスプレイやスピーカその他の出力装置6から構成されている。つまり、本発明に係る地図表示装置をナビゲーション装置に適用した例を示している。
【0010】
入力装置1は、地図を選択して目的地を入力したり、運転者の意志によりナビゲーション処理を中央処理装置4に指示する機能を備えている。その機能を実現するための手段として、目的地を電話番号や地図上の座標などにて入力したり、経路案内をリクエストしたりするタッチスイッチやジョグダイアル等のリモートコントローラ等を用いることができる。また、本発明では音声入力による対話を行うための装置を備えており、音声入力装置として機能する。また、ICカードや磁気カードに記録されたデータを読み取るための記録カード読み取り装置を付加することもできる。また、ナビゲーションに必要なデータを蓄積し、運転者の要求により通信回線を介して情報提供する情報センターや、地図データや目的地データ、簡易地図、建造物形状地図などのデータを有する携帯型の電子装置等の情報源との間でデータのやりとりを行うためのデータ通信装置を付加することもできる。
【0011】
現在位置検出装置2は、衛星航法システム(GPS)を利用して車両の現在位置情報を入手するもの、車両の進行方位を、例えば地磁気を利用することにより絶対方位で検出する絶対方位センサ、車両の進行方位を、例えばステアリングセンサ、ジャイロセンサを利用することにより相対方位で検出する相対方位センサ、例えば車輪の回転数から車両の走行距離を検出する距離センサ等から構成される。
【0012】
情報記憶装置3は、ナビゲーション用のプログラム及びデータを記憶した外部記憶装置で、例えばCD−ROM等からなっている。プログラムは、経路探索などの処理を行うためのプログラム、本実施例記載のフローチャートに示される処理プログラムや経路案内に必要な表示出力制御、音声入力により対話的に案内を行うためのプログラム及びそれに必要なデータ、音声案内に必要な音声出力制御を行うためのプログラム及びそれに必要なデータが格納されている。記憶されるデータとしては、地図データ、探索データ、案内データ、マップマッチングデータ、目的地データ、登録地点データ、道路データ、交差点等分岐点の画像データ、ジャンル別データ、ランドマークデータ等のファイルからなり、ナビゲーション装置に必要なすべてのデータが記憶されている。地図データは、所定単位毎のブロックに区分けされて矩形の形で記憶されている。なお、本発明は、CD−ROMにはデータのみ格納し、プログラムは中央処理装置に格納するタイプのものにも適用可能である。ここでは、情報記憶装置として、CD−ROMだけでなくDVD−ROM等の光ディスク、フロッピィディスク等の磁気ディスク、MO等の光磁気ディスクでもよい。
【0013】
中央処理装置4は、遠近地図を表示するときにクリップ領域を設定することにより上方の地図データを選択的に除いて表示するための制御を行う遠近表示制御部13、建造物を含む地図を遠近地図で表示するときにそのための座標変換を行う座標変換部11、遠近地図に座標を変換するための変換パラメータ12を備えるものであり、種々の演算処理を実行するCPU、情報記憶装置3のCD−ROMからプログラムを読み込んで格納するフラッシュメモリ、フラッシュメモリのプログラムチェック、更新処理を行うプログラム(プログラム読み込み手段)を格納したROM、設定された目的地の地点座標、道路名コードNo.等の探索された経路案内情報や演算処理中のデータを一時的に格納するRAMからなっている。また、この他にも図示は省略するが、ディスプレイ等の出力装置に表示するためのデータを格納するフレームメモリ、入力装置1からの音声入力による対話処理を行ったり、CPUからの音声出力制御信号に基づいて情報記憶装置3から読み出した音声、フレーズ、1つにまとまった文章、音等を合成してアナログ信号に変換してスピーカに出力する音声プロセッサ、通信による入出力データのやり取りを行う通信インタフェースおよび現在位置検出装置2のセンサ信号を取り込むためのセンサ入力インタフェース、内部ダイアグ情報に日付や時間を記入するための時計などを備えている。なお、前記した更新処理を行うプログラムを外部記憶装置に格納しておいてもよい。
【0014】
プログラム、その他ナビゲーションを実行するためのプログラムは全て外部記憶媒体であるCD−ROMに格納されてもよいし、それらプログラムの一部または全てが本体側のROM42に格納されていてもよい。この外部記憶媒体に記憶されたデータやプログラムが外部信号としてナビゲーション装置本体の中央処理装置に入力されて演算処理されることにより、種々のナビゲーション機能が実現される。
【0015】
ナビゲーション装置では、上記のように外部記憶装置のCD−ROMからプログラムを読み込むための比較的大容量のフラッシュメモリ、CDの立ち上げ処理を行うプログラム(プログラム読み込み手段)を格納した小容量のROMを内蔵する。フラッシュメモリは、電源が切断しても記憶情報が保持される、つまり不揮発性の記憶手段である。そして、CDの立ち上げ処理として、プログラム読み込み手段であるROMのプログラムを起動してフラッシュメモリに格納したプログラムチェックを行い、情報記憶装置3のCD−ROMのディスク管理情報等を読み込む。プログラムのローディング処理(更新処理)は、この情報とフラッシュメモリの状態から判断して行われる。
【0016】
情報送受信装置5は、衛星航法システム(GPS)を利用して情報を入手するGPS受信装置、FM多重放送、電波ビーコン、光ビーコン等を利用して情報を入手するためのVICS情報受信装置、携帯電話、パソコン等を利用することにより、情報センター(例えばATIS)や他車両と情報を双方向に通信するためのデータ送受信装置等から構成される。
【0017】
出力装置6は、運転者が必要な時に案内情報を音声および/または画面により出力したり、中央処理装置4でナビゲーション処理されたデータなどをプリント出力する機能を備えている。そのための手段として、中央処理装置4で処理したデータや情報記憶装置3に格納されたデータを画面表示するために展開、描画するメモリ、メモリに描画したイメージデータを表示するディスプレイ、中央処理装置4で処理したデータや情報記憶装置3に格納されたデータをプリント出力するプリンタ、経路案内を音声で出力するスピーカなどを備えている。
【0018】
ディスプレイは、簡易型の液晶表示器等により構成されており、中央処理装置4が処理する地図の表示データや案内データに基づき展開、描画された交差点拡大図画面、目的地名、時刻、距離、進行方向矢印等を表示する。ディスプレイに表示する画像データは、2値画像データ(ビットマップデータ)であり、中央処理装置4が処理する地図の表示データや案内データをシリアル通信等で使用する通信線を使用し、また、他の通信線を兼用して受信し、出力装置6内でメモリに展開、描画した後、指示された表示範囲をディスプレイの画面に表示する。
【0019】
このディスプレイは、運転席近傍のインストルメントパネル内に設けられており、運転者はこれを見ることにより自車両の現在地を確認したり、またこれからの経路についての情報を得ることができる。また、図示は省略するが、ディスプレイの表示画面にタッチパネル、タッチスクリーン等を含むタブレットを使用し、画面に触れる、或いは画面をなぞることにより、地点入力、道路入力等を行えるように構成してもよい。
【0020】
本発明は、遠近表示制御部13、変換パラメータ12及び座標変換部11により遠近に応じて2次元座標を遠近地図の2次元座標に変換して遠近地図を表示する場合、道路や建造物等の地図データの種類に応じて地図の上方となる遠方のデータを削除することにより、本来あまり必要とされないデータが表示されて分かりにくくなるのを防ぐようにするものである。そのために、後述するように道路、建造物にそれぞれ表示するクリップ領域(表示する範囲を制限する領域)を設定している。図2は遠近表示制御部による遠近地図の表示処理の例を説明するための図、図3はクリップ領域の設定例を示す図、図4は従来の遠近地図と本発明による遠近地図との比較例を示す図である。
【0021】
本発明に係る地図表示装置における遠近地図の表示処理では、図2に示すように道路や建造物のデータ数だけ次の処理ループを繰り返し実行する。まず、デフォルトクリップ領域として、例えば空を表示する、水平線(図3に示すA)に相当する領域までを表示領域に設定する(ステップS11)。次に、データが家形(建造物)であるか否かを判定し(ステップS12)、家形である場合には、図3に示すようにクリップ領域をデフォルトクリップ領域よりさらに5ドット減らす(ステップS13)。データが家形でない場合には道路線や道路構造物(センターラインや横断歩道など)であるか否かを判定し(ステップS14)、道路線や道路構造物である場合には、図3に示すようにクリップ領域をデフォルトクリップ領域よりさらに10ドット減らす(ステップS15)。以上の処理により、それぞれのデータに応じたクリップ領域が決定されるので、次にはデータがそのクリップ領域内にあるか否かを判定し(ステップS16)、クリップ領域内にあるデータだけを描画する(ステップS17)。
【0022】
上記の処理により図3に示すように下端からAまでデフォルトクリップ領域を設定し、それに対し、建造物のクリップ領域を減らし、さらに道路・構造物のクリップ領域を減らすことにより、遙か遠方の建造物、道路・構造物は表示領域に入らないようにする。しかも、建造物と道路・構造物では、建造物を立体的に表示した場合、遠方になるほど、建造物の陰に隠れてしまって実質的には、ほとんど表示されない道路も多くなる。このような状況を考慮すると、例えば図4に示すように高い建造物は、遠方でも確認が容易になるが、建造物に隠れてしまう道路・構造物は、そのような建造物よりもさらにクリップ領域を減らしても有用な情報が極端に少なくなることはない。したがって、図4(A)に示すような従来の遠近地図に対して、それぞれのデータの種類に応じたクリップ領域を設定しデータの軽重により、図4(B)に示すような遠方のデータ▲1▼〜▲3▼を選択的に除いた本発明による遠近地図にしても、遠近地図が煩雑で見にくくなるという課題を解決することができる。
【0023】
次に、2次元座標系上において地図データの2次元座標を奥行きのある遠近地図に座標変換して行う地図表示について説明する。図5は台形座標変換アルゴリズムを説明するための図、図6は建造物の高さデータの座標変換アルゴリズムを説明するための図である。中央処理装置4の変換パラメータ12は、地図の矩形座標を台形座標に変換する台形変換パラメータや曲面の座標を投影平面の座標に座標変換する曲面変換パラメータなどの座標変換パラメータを保持するものである。座標変換部11は、2次元座標により構成される地図データを変換パラメータ12に保持された座標変換パラメータに基づき座標変換を行うものであり、この座標変換した地図データを描画して出力装置6の画面に台形変換した地図(遠近地図)が表示される。
【0024】
まず、図5(A)に示すような2次元地図データの座標空間を対象として、図5(B)に示すような台形への座標変換を行う場合の台形変換パラメータについて説明する。まず、2次元地図データの矩形に関しては、図5(A)に示すように幅(X方向の長さの2分の1)gが設定され、台形に関しては、図5(B)に示すように上辺の長さ(X方向の長さの2分の1)a、及び下辺の長さ(X方向の長さの2分の1)bが設定され、そして、矩形及び台形に共通の縦の長さ(Y方向の長さ)Lが設定される。
【0025】
これらのパラメータに基づき地図データのP(X,Y)から座標変換部11により変換される新たな座標がP1(sx,sy)であるとすると、まず、Y座標値syは、台形の上辺の長さaと縦の長さLの積及び台形の上下辺の長さの差(b−a)とY座標値との積の和{aL+(b−a)Y}に対する台形の下辺の長さbと縦の長さLとY座標値との積b・L・Yの比、つまり、
〔数1〕
により求められる。また、X座標値sxは、台形の下辺の長さbから台形の上下辺の長さの差(b−a)にY座標値を乗じて台形の縦の長さLで除した値(b−a)sy/Lを減じ、矩形のX方向の長さgに対するX座標値の比を乗じて、つまり、
〔数2〕
により求められる。
【0026】
以下に、まずY座標の変換について説明する。図5(A)において斜めの直線の式は、
〔数3〕
Y=L・X/2g+L/2
で表される。そこで、この斜めの直線が変換後も直線として保たれるように、且つX座標が等分割となるように変換後の地図を仮定し、この直線ともう1つの2次元地図データにおけるX座標値が一定の直線により図5(B)に示すメッシュの三角形を考える。これらは相似となるので、それぞれの三角形の辺の長さの比率を考える。まず、三角形の縦の長さの比が(L−sy):syとなる。これに対し、三角形の底辺の長さは、上辺がa−Xa/g、下辺がb+Xb/gとなる。したがって、相似三角形の辺の長さの比が等しいことから、
〔数4〕
(L−sy):sy=(a−Xa/g):(b+Xb/g)
となる。この〔数4〕と上記〔数3〕からXを消去すると、〔数1〕が求められる。また、上辺a、下辺bに変換される固定値gのX座標値を縦の長さsyに対応させると、(b−a)sy/Lとなるから、任意のX座標値では、gとXとの比を乗じることにより〔数2〕が求められる。
【0027】
次に、ビル等の立体的な建造物について同様に台形変換を用いた2次元的な座標変換により立体的に表示する場合について説明する。例えばビルは、階数nのデータを有するときには、平均的な階高hを階数nに乗じてn×h=Hとして高さを求め、また、階数nではなく、タワーのように全体としての高さHのデータを有するときにはその高さHに基づき座標変換を行う。Y座標値syにおける高さHのY座標値sy′への座標変換は、2次元平面上で変換されたX座標値sxとY座標値syの上に例えば〔数5〕を用いてY座標値の加算値ΔYを求めることにより行うことができる。
【0028】
〔数5〕
したがって、図6(A)に示すように(sx1,sy1)の地点で高さHの建物の頂点座標値は、
〔数6〕
(sx1,sy1+ΔY)
={sx1,sy1+(1−k7 sy)H}
となり、このようにして変換した各座標を線で結び、枠内を所定の色で塗りつぶし、奥の方から順にこの処理を行って重ね書きすることにより、図6(B)に示すような表示を行うことができる。
【0029】
上記のように台形変換パラメータとして、a,b,g,Lから、或いはこれらからk1 〜k7 を算出して、これらと座標値(X、Y)、高さhから立体的な建造物についての台形変換を簡単な加減乗除の計算により実行することができる。したがって、ビルに限らず、家屋や橋等立体的な建造物についても全て同様にして立体的に描画でき、例えば図8で後述するように建造物のデータとして、建造物の形状を表す座標列(ポリゴンデータ)と、建造物の階数情報(又は建造物の高さ)からなる場合、2次元座標からなる各点及び建造物の階数情報から上記のように座標変換して、現在位置から所定距離以内の建造物だけ描画することにより更に描画レスポンスの向上を図ることができ、現在位置が移動するに伴って、その現在位置から所定距離以内の建造物のみを立体表示することも簡単に行うことができる。
【0030】
具体的には、現在位置検出装置により検出された現在位置と各建造物との距離を算出し、その距離が所定距離以内か否かを判断する。その判断結果が所定距離以内であれば上記座標変換を行って立体表示する。ここで、距離を算出する際、現在位置と建造物の中心点との距離でもよいし、現在位置と建造物の形状を表す座標列のうち1つの座標との距離でもよい。目的地までの案内において、ユーザが建造物の形状を参考にしながら運転できるようにするには、目的地までの経路沿いにのみ建造物を建てるようにしたり、現在位置から所定距離以内でかつ経路沿い、その他上記の表示態様を組み合わせてもよい。また、現在位置から所定距離以内でかつ現在位置からの距離に応じて建造物の高さHを増減させてもよい。つまり、現在位置近傍では建造物の高さHをそのまま用い、現在位置から遠ざかるに従い、高さHの値を小さくする。また、建造物の表示を行う場合、所定の高さ以上の建造物や車両の現在位置より前方に位置する建造物のみ立体表示し、所定の高さに達しない建造物や車両の現在位置より後方に位置する建造物は同一の高さで立体表示もしくは立体表示ではなく平面表示したり、立体交差等においては正確な表示を行えるようにするために、高さの低いものから描画するなど、描画する建造物の順序や選択は自由に組み合わせ可能であることはいうまでもない。
【0031】
また、上記〔数2〕では、P(X,Y)からP′(X,sy)とした後、そのsyを用いてP1(sx,sy)を求めたが、syを用いずX,Yの座標値からsxを求めてもよい。例えば、〔数2〕において、syにYを用いsx′を求めると、P(X,Y)は、図5(B)に示すP1′(sx′,sy)に変換されて台形から膨らむので、座標変換した結果はお椀形状になる。
【0032】
次に、本発明の地図表示装置を備えた車両用ナビゲーション装置で使用されるデータの構成例を説明する。図7は情報記憶装置に格納された主要なデータファイルの構成例を示す図、図8は建造物形状地図のデータ構造の例を示す図である。
【0033】
案内道路データファイルは、図7(A)に示すように、道路数nのそれぞれに対して、道路番号、長さ、道路属性データ、形状データのアドレス、サイズおよび案内データのアドレス、サイズの各データからなり、経路探索部により経路を算出し経路案内を行うために必要なデータとして格納される。道路番号は、分岐点間の道路毎に方向(往路、復路)別に設定されている。道路属性データは、道路案内補助情報データであり、形状データは、図7(B)に示すように、各道路の複数のノード(節)で分割したとき、ノード数mのそれぞれに対して東経、北緯からなる座標データを有している。案内データは、図7(C)に示すように、交差点(または分岐点)名称、信号機データ、ランドマークデータ、注意点データ、道路名称データ、道路名称音声データ、行き先データのアドレス、サイズの各データからなる。
【0034】
情報記憶装置3に記憶する建造物形状地図のデータ構造は、例えば図8(A)に示すように建造物のデータ数Nの次にN個の各建造物のデータが記憶される。そして、各建造物のデータは、建造物の名称、番地(住所)、種別、建造物の形状、高さ、詳細の各情報からなる。名称は、ビルであればそのビル名、個人の家屋であればその居住者名、施設であればその施設名、道路であれば「中央通り」、「国道1号」のように道路種別や通り名であり、番地(住所)は、その建造物の番地である。建造物の形状は、形状を表す座標数nとその座標値(x0 ,y0 )、(x1 ,y1 )、………、(xn−1 ,yn−1 )であり、種別は、一般の家屋、マンション、オフィスビル、公共施設、道路、公園等の情報である。高さは、階数や高さ(m)の情報である。高さを階数で格納している場合には、テーブルを用いて高さ(m)の情報に変換する。そして詳細は、例えばテナントビルであれば各入居者に関する情報であり、名称数mと各テナントについて、名称、電話番号、部屋番号、分類(レストラン、コンビニ、……等の業種、事業内容)に関する情報である。したがって、図8(B)に示すように建造物の形状に関する情報として座標値を順に読み出して線で結び描画し表示することによって、例えばビルや家屋の平面形状や公園の地形を出力することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、2次元座標を台形変換パラメータを用いて2次元座標上に座標変換することにより遠近地図を描画したが、他の従来から行われている座標変換を行う遠近地図にも同様に適用してもよく、例えば視点から見た中心投影法により遠近地図を表示するものでもよいし、地図の座標を球面の座標に対応させ、その球面の座標から平面投射した座標に変換し、方位によらず遠方になるほど圧縮率を大きくした地図を表示するものでもよい。また、建造物と道路・構造物にクリップ領域を設定して表示を制限したが、ランドマークやその他の地図情報についても、そのデータの種類毎にクリップ領域を設定するように構成してもよい。
【0036】
さらに、遠近地図の傾きに応じてクリップ領域を変えるようにしてもよい。すなわち、遠近地図の地図上方となる遠方の圧縮率が大きい場合と小さい場合では圧縮率の大きい場合の方が遠くがより圧縮され見にくくなるので、圧縮率が小さい場合はクリップ領域を広く、圧縮率が大きくなるにしたがってクリップ領域を狭くすればよい。クリップ領域内のデータは普通に表示するが、クリップ領域外のデータは、描画しないようにするだけでなく、背景と同じ色又は色を薄くして描画してもよい。車両が走行している道路や、目的地までの経路に該当する道路についてはクリップ領域該でも描画するようにしてもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、全て表示する場合に比べ、遠近地図上に建造物を立体的に表示しても地図の上方の見にくさをなくすことができ、しかも、クリップ領域に入らないデータは全て描画対象から外すことにより、描画速度を上げることができる。さらに、地図データの種類に応じて、地図データの一定領域を除いたクリップ領域を設定し、前記クリップ領域内に位置する地図データを前記座標変換手段により座標変換して遠近地図を表示する表示制御手段を備えることにより、表示しない地図データを座標変換する必要がないため、遠近地図の描画速度をより速くすることができる。
【0038】
また、地図データの種類は、建造物に関するデータと道路に関するデータであり、道路に関するデータのクリップ領域は、建造物に関するデータのクリップ領域より除く領域を下方まで大きくしたので、道路に比べて建造物は比較的遠くにあるものまで表示され、表示画像を実際に見る風景に近いものとすることができる。さらに、建造物に隠れいてた道路が突然画面上方に表示されるなどの不都合も低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る地図表示装置の実施の形態を示す図である。
【図2】遠近表示制御部による遠近地図の表示処理の例を説明するための図である。
【図3】クリップ領域の設定例を示す図である。
【図4】従来の遠近地図と本発明による遠近地図との比較例を示す図である。
【図5】台形座標変換アルゴリズムを説明するための図である。
【図6】建造物の高さデータの座標変換アルゴリズムを説明するための図である。
【図7】情報記憶装置に格納された主要なデータファイルの構成例を示す図である。
【図8】建造物形状地図のデータ構造の例を示す図である。
【符号の説明】
1…入力装置、2…現在位置検出装置、3…情報記憶装置、4…中央処理装置、5…情報送受信装置、6…出力装置、11…座標変換部、12…変換パラメータ、13…遠近表示制御部
Claims (2)
- 遠近地図上に建造物を立体的に表示する地図表示装置において、
道路データ及び高さデータを含む建造物データを格納する情報記憶手段と、
該情報記憶手段に記憶された前記道路データ及び建造物データの座標を遠近地図に座標変換する座標変換手段と、
座標変換された遠近地図を表示する表示制御手段と
を備え、前記表示制御手段は、前記道路データ及び建造物データの種類に応じて遠近地図の一定領域を除いたクリップ領域を設定するとともに、前記道路データ及び建造物データが設定されたクリップ領域内に位置するか否かを判定し、該クリップ領域内にあるデータを前記座標変換手段により座標変換して遠近地図を表示することを特徴とする地図表示装置。 - 遠近地図上に建造物を立体的に表示する機能を実現するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な地図表示装置用記録媒体において、
道路データ及び高さデータを含む建造物データの座標を遠近地図に座標変換する座標変換機能、
前記道路データ及び建造物データの種類に応じて遠近地図の一定領域を除いたクリップ領域を設定するとともに、前記道路データ及び建造物データが設定されたクリップ領域内に位置するか否かを判定し、該クリップ領域内にあるデータを前記座標変換機能により座標変換して遠近地図を表示する表示制御機能
を実現するためのプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な地図表示装置用記録媒体
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