JP3582296B2 - 後処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、複合機等の画像形成装置と組み合わせて使用される後処理装置に係り、特に、画像形成装置から排出されるシートを所望の後処理を施した後に移動可能に設けられたトレイ上に排出して積載する後処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の後処理装置としては、特開平9−48559号公報に、シート積載後のトレイをシート排出口を通過するように装置本体の側壁面に沿って移動させる場合であっても、そのトレイに積載されているシートがシート排出口に侵入することなく排出口を通過することができるシート後処理装置が提案されている。
【0003】
かかる装置について説明すると、例えば、図25に示すように、複数のトレイ01a,01b,01cを装置本体02の上下方向に配するとともに、これらのトレイ01(a〜c)を保持しているトレイユニット03を上下方向(矢線A,B方向)に移動させて所定のトレイをシート排出口04の下方に位置させた後、シート05を排出するタイプの後処理装置においては、排出したシートを分類して所定のトレイに積載しようとする場合にトレイが排出口04を通過することがあり、図示された状態においてシート05が積載されているトレイ01bを排出口04のところを通過させると、そのシート05が排出口04に侵入(逆流)してトレイ01bと排出口04との間に挟まるおそれがあった。このため、上記公報に開示の後処理装置では、トレイ01が排出口04を超えて移動する際に、その排出口04を閉じるように移動する排出口開閉部材(ストッパ)06を設けている。そして、トレイ01に積載されたシート05が排出口04を超えて上下に移動する際には、図26に示すように、開閉部材06を支軸06aを中心にして回動して排出口04を閉じることにより、トレイ上のシート05が排出口04に侵入するのを防ぐことができるようになっている。
【0004】
また、上記公報に開示の装置においては、シート05の端部を規制する規制部材07を排出口04の上下に分割して非可動状態に配置するとともに、排出口04を閉じた際、開閉部材06が規制部材07と同一面を形成するようにしている(図26参照)。これにより、トレイ移動時において、そのトレイに積載されているシート05が排出口04に引っ掛からないようになっている。なお、図25,26中において、符号08は排出ロール、09は移動排出ロール、09aは移動排出ロール09を回転自在に保持して排出ロール08に圧接させたり排出ロール08から離間させるための揺動ガイドである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような開閉部材を設けた後処理装置の場合においても、次のような問題点がある。
【0006】
まず、開閉部材06がトレイの移動時にのみ移動してシート排出口04を一時的に閉じる構造になっているため、たとえ、その開閉部材06が規制部材07と同一面を形成するように形成されていても、厳密には、その排出口04と開閉部材06との境界部にわずかなすき間が存在している。このため、排出口04を通過して移動するトレイ上のシート05が、そのすき間に挟まったり引っ掛かったりする可能性がある。また、そのすき間に引っ掛かるように通過した場合には、シート端部がダメージを受けたり、整合されてトレイ上に積載されているシートの整合状態がくずされてしまう可能性もある。
【0007】
また、トレイ移動時には、そのトレイに積載されているシート05はそのシート端部が開閉部材06や規制部材07にこすられた状態で移動する構造になっているため、シートの端部05aがダメージを受けたり、シートの整合状態が乱されてしまうというおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、上記したような従来技術における問題点を解消することにあり、具体的には、トレイ上へのシート排出が終了した時やシートが積載されているトレイをシート排出口を通過するように移動させる場合に、きわめて簡易な構成でもって、そのシートが排出口に侵入したりシート端部が不要なダメージを受けることが全くなく、しかも、そのシートの整合状態が乱されることもなくスムーズに移動させることが可能となる後処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する、請求項1に係る発明の後処理装置は、搬入されるシートに所要の後処理を施す後処理手段を備えた本体と、この本体の側壁面に形成されるシート排出口と、前記側壁面にシート排出方向の下流側が高くなるように傾斜した状態で取り付けられるとともにその側壁面に沿って前記シート排出口を通過するように移動可能に取り付けられ、そのシート排出口から排出されるシートを積載するトレイとを有する後処理装置において、前記トレイを、前記側壁面に沿う移動とは別に、そのシート収容面と前記シート排出口との離間距離を調整するように移動可能に取り付けるとともに、当該トレイを、シート積載が終了した後に前記シート排出口を通過するように移動させるに先立って又はシート積載が終了した後に前記離間距離が所定値以上になるように降下させるものである。
【0010】
この装置によれば、トレイ上にシートがすべて積載された時点や、シート積載が終了した後にトレイをシート排出口を通過するように移動させるに先立って、トレイのシート収容面とシート排出口との離間距離が所定値以上になるようにトレイが降下させられる。これにより、トレイ上に積載されたシートがその排出口から十分に離れた状態でトレイに収容されることになるため、シート積載が終了した直後や上記したようなトレイ移動時において、そのシートがトレイを乗り越えてシート排出口に侵入してしまうこと等が抑止される。また、この降下動作を行うことにより、シート排出口からトレイに排出されるシートの後端部がシート排出口に設けられる排出ロールの周面上に乗った状態で完全にトレイ側に排出されない場合があっても、そのシート端部が降下動作により確実にトレイに収容される。これにより、トレイ移動時において、シート端部がシート排出口に引っ掛かったりしてダメージを受けたり、整合状態を乱されることはない。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載の装置において、前記トレイがシートを積載する位置から移動して離れるときに、そのトレイのシート排出方向上流側でトレイ上に積載されたシートの上端部にもたれ掛かるように倒れこんでシートの移動を制止する制止部材を設けたものである。
【0012】
この装置によれば、シートを積載した後のトレイがシートを積載する位置から移動して離れると、そのトレイ上の積載シートは、そのシート上端部にもたれ掛かるように倒れこむ制止部材によって移動が制止される。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、請求項2記載の装置において、前記制止部材を、前記トレイを取り付けて側壁面に沿って移動させるための取付け移動手段に設けたものである。
【0014】
この場合、規制部材は、取付け移動手段のなかでトレイと共に移動させられる構成部分(部品)に設けられる。
【0015】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の装置において、前記トレイが複数配設されているものである。
【0016】
シート排出口を通過するように移動するトレイは、1つであってもよいが、シートを異なるトレイに分類してそれぞれ積載する場合には、複数個必要になる。このトレイが複数ある場合には、シートを分類して積載する際にトレイを切り換える必要があり、トレイをシート排出口を通過するように移動させる機会が増えるため、本発明がより有効なものとなる。この後処理装置においては、必要に応じて固定タイプのトレイを付設して併用するようにしてもよい。
【0017】
さらにまた、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の装置において、前記後処理手段が、シートを積み重ねてそのシート端部を揃えて整合する整合処理を少なくとも行うものである。
【0018】
この装置によれば、トレイ上には整合処理されたシートの束が積載されることになるが、このように整合されたシート束が綴じられていないものであっても、その上部のシートがシート積載が終了した直後やシート排出口を通過するトレイ移動時においてその排出口に侵入したり、整合状態を乱されることはない。なお、後処理手段としては、この整合処理を行うものに限らず、他の公知である種々の処理(例えば、綴じ処理、穴あけ処理、折り処理)を行うものを単独で或いは複数組み合わせて適用することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態例に係る後処理装置を示すものであり、後処理装置1が例えば複写機や、プリンターや、複写機能、プリンタ機能及びファクシミリ機能を兼備した複合機等の画像形成装置の本体001に接続されている状態を示している。
【0021】
まず、この後処理装置1は、大別すると、シート導入部2、後処理部3、シート排出部4等を備えた本体部5と、この本体部5から排出されるシートを収容するためのシート収容部6とでその主要部が構成されている。
【0022】
図1において、符号10は後処理装置1のハウジング本体であり、この本体10はキャスタ11が取り付けられたベースフレーム12に支持されて移動可能になっている。そして、この本体10の画像形成装置001と接続する側壁面10aの上部には、図1や図2に示すように、画像形成装置001から排出される記録紙等のシートPを導入するためのシート導入口13が開設されている。画像形成装置001からシート導入口13へのシートの受け渡しは、通常、画像形成装置のシート排出口を本装置のシート導入口13と対向配置させて直接的に行うが、画像形成装置001と本装置との間に別体のシート搬送装置などを介在させて間接的に行うようにしてもよい。この導入口13の本体内部側には、導入口13から導入されるシートPを後処理部3まで搬送するためのガイド部材からなる導入路14と2組の搬送ロール対15,16とが配設されている。前記したシート導入部2は、この導入口13、挿入路14、搬送ロール15,16により構成されている。また、シート導入口13とは反対側の本体10の側壁面10bには、導入したシートPを排出するためのシート排出口17が開設されている。
【0023】
また、本体10の搬送ロール対16とシート排出口17の間には、導入されるシートPを排出する前に一旦積み重ねるように収容し、そのシート束の端部を揃えて整合処理する、前記した後処理部3を構成する整合トレイ20が配設されている。この整合トレイ20は、排出口17側から搬送ロール14の下方に向けて傾斜した状態で取り付けられており、これにより、搬送ロール対16から送り出されたシートPを後述するスタックトレイと共に保持した状態からシートの自重等により整合トレイ20側に滑らせて戻すようにして整合トレイ上に収容するようになっている。
【0024】
整合トレイ20の搬送ロール対16側の端部には、このトレイ20の本体上面に対して垂直な基準面を有する基準フェンス21が設けられている。この基準フェンス21により、整合トレイ20に滑り落ちるようにして収容されるシートPの一端部が当接して揃えられるようになっている。また、基準フェンス21は、図3に示すように、整合トレイ20の本体部に対し回転シャフト22を中心にして下方側に回動可能に取り付けられており、後述するステープリング処理を行う場合に下方側に回動して退避できるようにもなっている。図3において22aは、整合トレイ本体の下面側に突出するように設けられた回転シャフト22の軸受けである。
【0025】
整合トレイ20には、上記基準フェンス21の基準面とは直交する基準面を有する側部基準フェンス23と、この側部基準フェンス23の基準面と平行な側面を有し、その基準フェンス23に向けて往復移動するタンパー24とが設けられている。タンパー24は、図3に示すように、タンパーの下面に突出して設けられた回転支軸25が、整合トレイ20の本体部に形成される長孔26に沿って走行するように取り付けられており、図示しない駆動手段によって所定距離だけ小刻みに往復移動するようになっている。この側部基準フェンス23とタンパー24により、前記基準フェンス21により一端部が揃えられて整合トレイ20上に収容されるシートPの側端部側が揃えられる。
【0026】
整合トレイ20と搬送ロール対16との間には、弾性変形しやすい数枚の羽根が取り付けられて回動駆動するパドル18が設けられている。このパドル18により、搬送ロール対16を通り抜けたシートPの後端部を整合トレイ20側に確実に落下させるとともに、そのシートPを基準フェンス21側に確実に送りこむようになっている。
【0027】
また、整合トレイ20の基準フェンス21側近傍には、図1や図2に示すように、整合トレイ20上に収容されて整合されたシートPの束をステープル針で綴じる、前記した後処理部3を構成するステープラ30が配設されている。
【0028】
ステープラ30は、ステープラ針の先端を互いに向き合う方向に折り曲げるダイが取り付けられたダイ部と、ステープラ針を収容してダイ部に当接するように揺動するステープル部とから構成されており、そのダイ部とステープル部との間にはステープリング処理するためのシート束の端部を位置させるための開口空間部31が設けられている。また、このステープラ30は、移動機構32によって移動可能に取り付けられており、その開口空間部31が整合トレイ20の基準フェンス21側に位置するように配置されている。移動機構32は、ガイドレールやガイド板等にて構成されており、ステープラ30を整合トレイ20上に積載されるシート束の端部にそって移動させたり、そのシート束の両角部に回り込むように移動させることによりステープル位置まで移動させるようになっている。そして、ステープリング処理時には、ステープル位置において駆動モータ33を回転させてカム34を回転させることにより、ステープル部がダイ部に向けて移動して開口空間部31に位置するシート束の端部や角部にステープル針を打ち込むようになっている。
【0029】
さらに、本体10のシート排出口17の付近には、図1や図2に示すように、シートPを排出口17から排出するための、前記したシート排出部4を構成するシート排出装置が配設されている。このシート排出装置は、整合トレイ20の排出口17側に位置して回転駆動するように配設された複数の排出ロール40と、この排出ロール40に対して接離可能に配設されたピンチロール45とで構成されており、主に整合トレイ20に収容されたシート(束)Pを、この排出ロール40とピンチロール45により挟持した状態で搬送排出させるようになっている。また、排出ロール40の両脇には、シート排出口17から装置本体10の外方に突出した状態で回転動作する柔軟な板状のシート押さえ部材50が配設されている。図2において59は、後述するスタックトレイ上に積載されるシートの最上面の高さを検知するためのスタック高さ検知アームである。
【0030】
一方、この後処理装置1では、図1〜図2、図4に示すように、本体10の側壁面10bに、前記したシート収容部6を構成する3つのスタックトレイ60a,60b,60cが、そのシート排出方向Xの下流側の端部が高くなるように所定の角度で傾斜した状態で配設されている。
【0031】
この3つのスタックトレイ60は、トレイを前記側壁面10bに沿って上下方向(以下、特に断りがない限り矢線A,B方向をさす)に昇降動させるためのトレイ支持ユニット70と、このトレイ支持ユニット70に支持され、トレイを斜め上下方向(以下、特に断りがない限り矢線C,D方向をさす)に昇降動させるための取付けユニット80とに組み合わされて取り付けられている。そして、これらのスタックトレイ60は、トレイ支持ユニット70により、そのいずれもシート排出口17まで移動させられ、もってシートを積載すべきスタックトレイが自由に選択される(切り換えられる)ようになっている。また、取付けユニット80により、シート積載に際して各スタックトレイのシート載置面とシート排出口17との離間距離(厳密には、トレイに積載された最上部のシート上面と排出ロール40の下部外周面との離間距離)を適度な値に調整できるようになっている。
【0032】
トレイ支持ユニット70は、図4に示すように、側壁面10bのフロント側(F)及びリア側(R)の端部においてシート排出方向Xへ突出した状態で連結固定された一対の支持フレーム71(F),71(R)[以下、明細書及び図面においてフロント側に配置される部品等にはその符号の後ろに(F)を、リア側に配置される部品等にはその符号の後ろに(R)を付記する]と、この各支持フレーム71にスライド機構72を介して側壁面10bに沿い上下方向にスライド移動可能に取り付けられる一対のL字形連結ブラケット73と、この双方の連結ブラケット73を連結板74を介して上下方向にスライド移動させる駆動部75とで構成されている。連結ブラケット73は、後述するように取付けユニット80を連結した状態で取り付けるために使用される。スライド機構72としては、支持フレーム71と連結ブラケット73の互いに向き合うように形成された対向面部にそれぞれ取り付けられ、一方を他方に嵌め込んで組み合わせることによって摺動する構造の摺動レール部材72a,72bが使用されている。
【0033】
駆動部75は、本体の側壁面10bの内側に上下方向に沿って回転自在に取り付けられたボールねじ軸76と、このボールねじ軸76を回転させる昇降用モータ77と、昇降用モータ77の回転駆動力を減速してボールねじ軸76に伝える減速ギア機構78と、ボールねじ軸76に螺合されてそのねじ軸の回転により上下移動する移動ナット79とで構成されている。そして、この移動ナット79には、連結ブラケット73とを連結する連結板74に突設されたブラケット73aが取り付けられている。これにより、昇降用モータ77がボールねじ軸76を所定の方向に回転させて移動ナット79とともにブラケット73aを上下動させることによって、連結ブラケット73が支持フレーム71に支持されつつ上下方向に対してスライド移動するようになっている。
【0034】
取付けユニット80は、トレイ支持ユニット70の連結ブラケット73に、側面がほぼ台形形状のフレーム体81が所定の間隔をあけて計3組取り付けられている。すなわち、フロント側の連結ブラケット73(F)にはフロント用のフレーム体81(F)が上下方向に3つ、リア側の連結ブラケット73(R)にはリア用のフレーム体81(R)が上下方向に3つそれぞれ取り付けられており、フロント側及びリア側において並ぶフレーム体どうしで1組の取付けユニットを構成している。また、各フレーム体81の内側壁面には、斜め上下方向に沿うガイド長孔82がそれぞれ形成されている。
【0035】
そして、各スタックトレイ60は、図2や図5に示すように、取付けユニット80の上記ガイド長孔82に対し、トレイ60の左右側壁面にそれぞれ外方にむけて突出するように設けた2つのロールガイド支軸64を嵌合させるように取り付けられている。
【0036】
2つのロールガイド支軸64は、フレーム体81に回転可能に配設された複数のプーリ83とテンション用プーリ84とに掛け回されて回動するベルト85に固着されている。ベルト85は、リアの取付けユニット80(R)側に設置された駆動部86により所定方向に所定量だけ回転移動するようになっている。駆動部86は、調整用駆動モータ87と減速用ギア機構88とで構成されており、モータ87の回転動力が減速ギア機構88を介してプーリ83aに伝えられることによりベルト85を回転させている。また、フロント側の取付けユニット80(F)におけるベルト85は、例えば、互いに対称となるリア側の所定のプーリ83とフロント側のプーリとの支軸を図示しない通しの回転シャフトで結合し、調整用駆動モータ87の回転動力をリア側のプーリと同時にその回転シャフトを介してフロント側のプーリにも同じように伝えることにより、リア側のベルトと同期して回動させる仕組みになっている。
【0037】
トレイ支持ユニット70の連結ブラケット73には、図4に示すように、3つのスタックトレイ60a,60b,60cの各取付け位置にそれぞれ対応させてトレイ用被検出片65a,65b,65cが設けられている。このトレイ用被検出片65(a〜c)は、本体10側のシート排出口17付近に設置した光透過型の停止位置検知センサー180と駆動部75付近に設置した光透過型の下限位置検知センサー181により検知されるようになっている。そして、トレイ支持ユニット70によるスタックトレイ60の移動量や停止位置は、この両センサー180,181によるトレイ用被検出片65の検知信号を利用して制御されるようになっている。
【0038】
この後処理装置1においては、図5〜図7等に示すように、各スタックトレイ60に積載されるシートPの搬送方向X上流側の端部を当接させて規制するための規制部材90が、各スタックトレイ60と本体10の側壁面10bとの間に位置するように前記トレイ支持ユニット70の連結ブラケット73に配設されている。
【0039】
規制部材90は、取付けユニット80によるスタックトレイ60の移動方向(斜め上下方向、即ちガイド長孔82)に沿うような角度で、かつ、その移動範囲(ガイド長孔82の長さ)の全域にわたる寸法からなる傾斜面91を有した形態からなるものである。その傾斜面91の両端部において本体10側に折り曲げられた側面部92が、連結ブラケット73に固定されるように取り付けられている。また、傾斜面91の上端部には、前記したシート押さえ部材50の動作空間を確保するための切欠部93と後述する制止部材100との動作空間を確保するための切欠部94が形成されている。
【0040】
また、規制部材90の本体10側と対向する背面側には、図5や図6等に示すように、スタックトレイ60上に積載されたシートPの上端部にもたれ掛かるように倒れこんでシートPの移動を制止(して主にトレイからのシートのこぼれ落ちを防止)するための制止部材100が設けられている。
【0041】
この制止部材100は、所定の形状に成形された板状のアーム材101からなるものであり、アーム材101の下端部が支軸102に回動可能に取り付けられている。そして、制止部材100は、図示しない巻きスプリングによりアーム材101の上端部が切欠部94から規制部材90の傾斜面91側に突出する方向に回動するように付勢されているとともに、カム片103によりアーム材101の回動動作が制御されるようになっている。カム片103は、本体側壁面10bのシート排出口17の下部に外側に突出するように形成された隆起部105に当接する位置にあるとき(即ち、スタックトレイ60がシート排出口付近のシート受け取り位置に停止しているとき)のみ、アーム材101を切欠部94から傾斜面91側に突出しない位置に退避させる方向に回動させるようになっている(図5参照)。
【0042】
また、この後処理装置1では、図8〜図11等に示すように、シート(束)Pをスタックトレイ60にオフセット排出させるために、前記した排出ロール40とピンチロール45をシート排出方向Xとは直交する方向(矢線R方向:リア方向,矢線F方向:フロント方向)にシフトさせるシフト機構を装備している。
【0043】
まず、排出ロール40は、図8や図9に示すように、第一シャフト120に対して回転自在かつその軸方向にスライド自在に3つ取り付けられている。第一シャフト120は、前記シート押さえ部材50を回動させるためのものであり、本体10のフレーム板110に回転自在に取り付けられている。また、排出ロール40は、その一端側にギア41が一体的に設けられており、このギア41が第二シャフト130に固定された駆動ギア131に噛合して回転駆動するようになっている。ギア41と駆動ギア131は、噛合すると同時に、規制板によりシャフト方向へは移動しないように結合される構造になっている。第二シャフト130は、フレーム板110に回転自在かつスライド自在に取り付けられている。なお、図中において40aは補助排出ロールであり、また、シート押さえ部材50は第一シャフト120に固定されている。
【0044】
一方、ピンチロール45は、板バネからなる取付け板46の先端部に回転自在に取り付けられており、その取付け板46は第三シャフト140に固定されている。第三シャフト140は、取付け板46をシャフト140を中心にして回動させることによりピンチロール45を排出ロール40に圧接させたり或いは排出ロール40から離間させるためのものであり、本体10のフレーム板110に回転自在にかつスライド自在に取り付けられている。
【0045】
そして、上記第二シャフト130と第三シャフト140は、本体のリア側においてシフトアーム200により連結されている。このシフトアーム200は、回転する円筒カム300と組み合わせて移動幅Wでリア方向又はフロント方向にシフトされる仕組みになっている。すなわち、シフトアーム200の上部に立設したガイドピン210が、円筒カム300の外周面に周回するように刻設されたガイド溝310の変位によって矢線R方向又は矢線F方向に移動される結果、シフトされるようになっている。
【0046】
従って、このシフトアーム200のシフト動作により、本体フレーム板110にスライド自在に取り付けられた第二シャフト130と第三シャフト140がシフトされることになり、この結果、排出ロール40とピンチロール45も移動幅Wでリア方向とフロント方向にシフトされる(排出ロール40は、ギア41と駆動ギア131の前記した結合構造により第一シャフト120に対してスライドしてシフトする)。このことから、上記移動幅Wは、排出ロール40とピンチロール45との最大のシフト幅に相当する。また、駆動シャフト130と第三シャフト140は、移動幅(シフト幅)Wを考慮してシャフト長さを長めに設定している。
【0047】
また、排出ロール40、ピンチロール45、円筒カム300等の駆動系は、次のように構成されている。
【0048】
排出ロール40の駆動用の第二シャフト130は、図9や図10に示すように、シフトアーム200の近傍に取り付けた伝達ギア132が、排出用駆動モータ135により駆動伝達ベルト136を介して回転する伝達ギア137と噛合することによって回転する。この場合、伝達ギア137は、ギア132が第二シャフト130のシフト動作とともに移動することを考慮して、ギア132と噛合するギア噛合幅が広く形成されている。
【0049】
ピンチロール45の第三シャフト140は、カム機構と付勢機構とを組み合わせて、ピンチロール45が排出ロール40に当接する方向又はピンチロール45が排出ロール40から離れる方向に回動する仕組みになっている。
【0050】
つまり、第三シャフト140は、図9〜図11等に示すように、シフトアーム200の近傍に取り付けたカム接触アーム141が、ピンチ・シフト用駆動モータ150の回転力が伝えられて回動する偏心カム142により押圧されることによって、ピンチロール45が排出ロール40に当接する方向に回動する。偏心カム142は、本体フレーム板110とこのフレーム板110に取り付けられたブラケット115との間に回転可能に軸支された回転シャフト143に固定されている。そして、この回転シャフト143は、駆動モータ150の駆動ギア151の回転が、ブラケット115上に設けられた第一ギア152、第二ギア153、第三ギア154をこの順に介して伝えられることにより回動する。また、偏心カム142は、回転シャフト143と第三ギア154との間にワンウェイクラッチ155を配設して、時計まわり方向にだけ回転するように設定されている。さらに、偏心カム142は、カム接触アーム141が第三シャフト140のシフト動作とともに移動することを考慮して、接触アーム141と当接するカム面が幅広く形成されている。
【0051】
また、第三シャフト140は、図10〜図12等に示すように、カム接触アーム141が偏心カム142により押圧されていない(カムと接していない)ときは、付勢板160により付勢されることによって、ピンチロール45が排出ロール40から離れる方向に回動するようになっている。付勢板160は、ブラケット115に立設された2つの固定ピン116にガイド孔163を係合させて摺動する摺動面161と、この摺動面161から垂下されてカム接触アーム141と当接する当接面162とを有する形状からなるものであり、当接面162とブラケット115との間に張架されたテンションバネ165により矢線E方向に付勢されている。これにより、付勢板160がカム接触アーム141を矢線E方向に押圧するため、第三シャフト140はピンチロール45を排出ロール40から離間させる方向に回動する。
【0052】
上記偏心カム142が固定された回転シャフト143には、外周縁の一部を切り欠いたスリット144を形成した被検出円板145が取り付けられており、この被検出円板145のスリット144は、光透過型の排出動作検知センサー190によって検知されるようになっている。偏心カム142ひいてはピンチロール45の移動タイミング等は、この排出動作検知センサー190による被検出円板145のスリット144の検知信号により制御されるようなっている。
【0053】
円筒カム300は、本体フレーム板110とブラケット115との間に回転可能に軸支された回転シャフト170に固定されており、この回転シャフト170は、ピンチ・シフト用駆動モータ150の駆動ギア151の回転が、ブラケット115上に設けられた第一ギア152、第四ギア156、第五ギア157をこの順に介して伝えられることにより回動する。また、円筒カム300は、回転シャフト170と第五ギア157との間にワンウェイクラッチ158を配設して、反時計まわり方向にだけ回転するように設定されている。これにより、円筒カム300は、偏心カム142が回転しているときは回転せず、偏心カム142が回転していないときは回転することになる。
【0054】
この円筒カム300が固定された回転シャフト170にも、外周縁の一部を切り欠いたスリット174を形成した被検出円板175が取り付けられており、この被検出円板175のスリット174は、光透過型のシフト動作検知センサー191によって検知されるようになっている。円筒カム300ひいてはシフトアーム200の移動タイミング等は、このシフト動作検知センサー191による被検出円板175のスリット174の検知信号を利用して制御されるようなっている。
【0055】
シート押さえ部材50が固定されている第一シャフト120は、その一端側に取り付けたプーリ121に、押さえ用駆動モータ122の回転力が駆動伝達ベルト123を介して伝えられることにより、回転するようになっている。また、シート押さえ部材50は、排出ロール40よりも外径が小さい円筒部材51に支持されている(図8等参照)。
【0056】
次に、この後処理装置1の動作について説明する。
【0057】
初めに、接続する画像形成装置001等と連動して電源が投入されると、トレイ支持ユニット70によりスタックトレイ60のポジション設定のための初期動作が実行される。
【0058】
まず、図13に示すように、トレイ支持ユニット70における駆動部75が作動して移動ナット79を下方(矢線B方向)に移動させる方向にボールねじ軸76を回転させて、3つのスタックトレイ60(a〜c)を降下させる。この降下動作は、最下段のスタックトレイ60c用の被検出片65cが下限位置検知センサー181によって検知された時点で停止させた後、ボールねじ軸76を逆転させてスタックトレイ60が上方(矢線A方向)に移動する上昇動作に切り換えられる。そして、この上昇動作は、シートを積載すべき所定のスタックトレイ60の被検出片65が停止位置検知センサー180により検知されるまで続行された後に停止する。これにより、スタックトレイ60がシート排出口17から排出されるシートを受け取るに適したシート受け取り位置にセットされる。使用するスタックトレイの指定がない場合には、通常、最上段のスタックトレイ60aが、シート排出口17のシート受け取り位置にセットされるようになっている(図1や図13a参照)。
【0059】
さて、この後処理装置1では、基本的に、シート導入口13から搬送ロール対15,16により搬送路14を通して導入されるシートPを一旦整合トレイ20上に積み重ねて収容するようになっている。
【0060】
このため、シートの整合トレイ上への収容時には、図14aに示すように、ピンチロール45が排出ロール40から離間するように動作し、排出ロール40の上方に導入されるシートPが通過するのに十分な広い空間を確保するように設定されている。ピンチロール45の排出ロールからの離間動作は、ピンチ・シフト駆動モータ150をピンチロール動作用の特定方向(この例では反時計まわり方向)に回転駆動させることにより、各ギア152,153,154とワンウェイクラッチ155を介して偏心カム142が時計まわり方向に回転してカム接触アーム141を押圧しない離間した状態に位置させられることにより行われる(図10,図12参照)。
【0061】
これにより、搬送ロール対16から送り出されたシートPは、その送り方向先端部側がスタックトレイ60上に保持されると同時にその送り後端部側が整合トレイ20上に落下して保持された後、各トレイ20,60の傾斜とパドル18の回転により、整合トレイ20側に滑るように移動してトレイ上に収容される。この収容動作は、導入される最終シートPが収容されるまで同様に繰り返される。そして、整合トレイ20上に積載されて収容されたシート束Pは、その前記送り方向側の端部が基準フェンス21に当接することにより整合され、その送り方向とは直交する端部がタンパー24の動作により整合される。このように整合されて整合トレイ20上に収容されるシート束は、前記した送り方向の端部側が排出ロール40に乗り上げた状態に保持される(図14a)。
【0062】
そして、この後処理装置1では、整合されて整合トレイ20上に収容された1セットのシート束Pをステープル処理した後にスタックトレイ60に排出する「ステープル処理モード」と、ステープル処理をせずスタックトレイ60にそのまま排出する「セット整合排出モード」とが選択できるようになっている。
【0063】
このため、「ステープル処理モード」が選択されてステープル処理動作に移行する時や「セット整合排出モード」が選択されて排出動作に移行する時には、図14bに示すように、ピンチロール45が排出ロール40に圧接するように動作し、そのシート束を排出ロール40とピンチロール45とで挟持(クランプ)するように設定されている。ピンチロール45の排出ロールへの圧接動作は、ピンチ・シフト用駆動モータ150を特定方向に回転駆動させることにより、偏心カム142が時計まわり方向に回転してカム接触アーム141を押圧した状態に位置させられることにより行われる(図16参照)。
【0064】
これにより、整合トレイ20上に整合されて収容されたシート束Pは、排出ロール40とピンチロール45とで挟持されて、その整合状態が保持される。そして、ステープル処理モードが選択されている場合には、その後、基準フェンス21を下方に回動して退避させた後、ステープラ30を所定のステープ位置に移動させてから動作させることにより、整合トレイ上のシート束がステープル針にて綴じられる。このステープル処理した場合又はセット整合排出モードが選択されている場合には、その後、排出用駆動モータ135を駆動させて排出ロール40を回転させることにより、整合トレイ20上のシート束Pがシート排出口17から送り出されてスタックトレイ60上に排出される。そして、傾斜した状態にあるスタックトレイ60上に排出されたシート束Pは、常に、その排出方向X上流側の端部Paが規制部材90に当接して規制される(図18bなど参照)。
【0065】
例外的に、導入されるシートPを整合トレイ20に収容せず、そのままスタックトレイ60上に排出して積載させる場合には、図15に示すように、シート導入時から予めピンチロール45を排出ロール40に圧接させる設定にしておけばよい。
【0066】
また、この後処理装置1では、複数セットのシート束をスタックトレイ60上に排出して積載する場合には、図17aに示すように、スタックトレイ60上にすでに排出されている最も上位にあるシート(束)P1の上面をシート押さえ部材50で押さえた状態で行うようになっている。これにより、スタックトレイ上にすでに排出されている最上部のシート(束)P1が次に排出されるシート束P2に押されることによりずれてしまうことを防止している。
【0067】
そして、このシート押さえ部材50は、スタックトレイ60上に新たに排出されるシート束Pの排出完了直前に、押さえ用駆動モータ122が作動してシート押さえ部材50を第一シャフト120の回りに1回転させるようになっている。すなわち、この回転によりシート押さえ部材50は、新たに排出されたシート束P2と前回排出の最上部のシート束P1の間から屈曲するように変形してすり抜けた後、新たに排出されたシート束P2の上面を押さえる(図17b,図17c)。これにより、シート束の排出時に、そのシート束の排出方向X上流側の端部Paが排出ロール40上に残ってスタックトレイ60上に完全に排出されない場合(図17a,b参照)が発生しても、そのシート端部をシート押さえ部材50により押し下げてスタックトレイ60上に確実にかつ整然と収容するようにしている。また、このシート押さえ部材50は、後述するスタックトレイを上下方向へ移動させる際には、図17cの二点鎖線で示すように本体内(側壁面10bよりも内側)に位置するように回転させられて、そのトレイ移動の障害にならないように退避するようになっている。
【0068】
さらに、この後処理装置1では、図18に示すように、スタックトレイ60のシート載置面(シート積載後はその最上部のシート上面)と排出ロールの下部周面との離間距離Lを所定の値に調整するように、取付けユニット80の斜め上下方向への移動機構によりスタックトレイ60を適宜移動させるようになっている。すなわち、取付けユニット80の駆動部86における昇降動モータ87を駆動させてベルト85を回動させることにより、スタックトレイ60を斜め上下方向に移動させて調整する。そして、この離間距離調整時におけるスタックトレイの移動動作は、スタックトレイ60のシート載置面や積載したシート束の上面に接触してその載置面やシート面の高さを検知するスタック高さ検知アーム59を併用しながら行われる。
【0069】
このときの離間距離Lは、排出されるシートPの枚数や紙厚等を考慮した一定の値に設定される。特に、前述したセット整合排出モードが選択されたときには、離間距離Lは可能な限り小さな値になるように設定されている(例えば10mm程度)。これは、セット整合排出モード選択時には、ステープル処理されていない状態のシート束がスタックトレイ60に排出されることになるため、排出ロール40とスタックトレイ60のシート載置面との落差(離間距離Lに相当)が大きいと、その排出時にシート束の整合状態が乱れやすくなり、これを防いでシート束をスタックトレイ60に整然と排出させる必要があるからである。また、この離間距離Lの調整は、複数セットのシート束をスタックトレイに連続して排出する場合には、その新たに排出するセットごとに行うようになっている(図18b参照)。
【0070】
ところで、この後処理装置1では、3つのスタックトレイ60a〜cを移動して切り換え、シートを指定したスタックトレイに分類して収容できるようになっている。
【0071】
この際、排出されたシート束Pを積載したままのスタックトレイ60をシート排出口17を通過するように移動させて、他のスタックトレイをシート受け取り位置に移動させる場合もあるが、そのような場合であっても、規制部材90を設けていることにより、積載されたシートが排出口に侵入することも、その整合状態を乱されることも、ダメージを受けることも一切ない。
【0072】
例えば、図19に示すように、シート束Pを積載した最上段のスタックトレイ60aを移動させて中段のスタックトレイ60bにシート排出を行う場合を例に挙げて説明すると、まず、トレイ支持ユニット70を動作させてスタックトレイ60を上方に上昇移動させる。このとき、シート束Pを積載した最上段のスタックトレイ60aは、本体側壁面10bに開口したシート排出口17を通過して移動しなくてはならない。しかし、このスタックトレイ60a上のシート束Pは、その排出方向X上流側の端部Paが規制部材90(実際にはその傾斜面91)に常に当接して規制されている。そして、その規制部材90は、スタックトレイ60と同じトレイ支持ユニット70の連結ブラケット73に取り付けられているため、スタックトレイ60の移動とともに一体となって移動する。
【0073】
この結果、スタックトレイ60a上のシート束Pは、規制部材90に規制された状態のままでシート排出口17を通過するため、その排出口17にシートが侵入してしまうことはない。また、そのシート束は、移動時に何かにこすれた状態で移動することもないため、整合状態が乱されることも、またダメージを受けることもないのである。なお、このようにして最上段のスタックトレイ60aがシート排出口17を通過すると、中段のスタックトレイ60bがシート排出口17付近まで上昇移動してくるが、この際、そのスタックトレイ60b用の被検出片65bが停止位置検知センサー180により検知された時点でスタックトレイ60bは停止し、シート受け取り位置にセットされるようになっている。
【0074】
また、この後処理装置1では、排出されたシート束Pを積載したままのスタックトレイ60をシート排出口17を通過するように移動させて、他のスタックトレイをシート受け取り位置に移動させる場合、そのスタックトレイの移動動作(トレイチェンジ)を開始するに先立って、図20に示すように、シートが積載されているスタックトレイ60を取付けユニット80により所定量Hだけ降下(矢線D方向に移動)させるようになっている。また、この降下動作は、上記のトレイ移動がなく単にトレイ60へのシート排出が終了した時点で行うように設定してもよい。
【0075】
このときの降下量は、前記した排出ロール40と積載されたシート束Pの上面との離間距離Lよりも大きな離間距離H(>L)になるように設定されている。好ましくは、H>2Lとなる程度に設定する(例えば、20mm程度)。これにより、スタックトレイ60上のシート束Pの最上部が規制部材90の上端から十分に離れた状態で収容されることになるため、そのシート束Pに規制部材90側に移動させられるような何らかの負荷(ユーザーが内容確認のためそのシートに触れたることによる外力など)がかかっても、その上部のシートが規制部材90(傾斜面の上端部)を乗り越えてしまうことが抑止される。この結果、そのシート束Pを積載したスタックトレイ60がトレイチェンジによりシート排出口17を通過する際に、シート束の上部シートが規制部材90を乗り越えて排出口17に侵入してしまうことが防止される。この効果は、特に、ステープル処理していないシート束を積載したスタックトレイをシート排出口17を通過するように移動させなければならない場合に有効となる。
【0076】
さらに、この後処理装置1では、スタックトレイ60がシート排出口17のシート受け取り位置を離れて移動する際に、規制部材90の背面側に配設した制止部材100がスタックトレイ60側に倒れこんで規制部材90の傾斜面91から突出するようになっている。つまり、スタックトレイ60がシート排出口17のシート受け取り位置にあるときには、図21aに示すように、制止部材100のカム片103が本体側壁面10bに形成された隆起部105に乗り上げた状態にあるため、規制部材90の背面側に退避する方向に回動する。これにより、シート排出動作の邪魔にならないようにしている。一方、スタックトレイ60が上下方向へ移動してシート排出口17のシート受け取り位置を離れるときには、図21bに示すように、制止部材100のカム片103が上記隆起部105を通り抜けてフリーな状態になるため、その支軸102に取り付けた巻きスプリングの付勢力により規制部材90の切欠部94からその傾斜面91側に突出する方向に回動する。
【0077】
これにより、スタックトレイ60上にシート束Pが積載されている場合には、図21bに示すように、制止部材100が積載シートPの上端部にもたれ掛かるように倒れこむため、その積載シートPがシート排出方向X上流側に移動しようとする挙動が制止される。この結果、スタックトレイ60がトレイチェンジによりシート排出口17を通過する際に、シート束の上部シートが規制部材90を乗り越えて排出口17に侵入してしまうことを防止することができる。従って、この効果は、前記したトレイチェンジの開始に先立って行うスタックトレイの降下動作を組み合わせると、より有効となる。この場合、制止部材100が降下動作後のスタックトレイ上に積載されたシート束の上端部に軽く当接するように、その降下量Hや制止部材100の倒れ度合いを調整すると、その効果はより一層有効となる。しかも、この制止部材100によるシート移動の制止効果は、スーテプル処理していないシート束を積載したスタックトレイをシート排出口17を通過するように移動させなければならない場合に最も有効となる。
【0078】
更にまた、この後処理装置1では、前記したシフト機構を動作させて、シート(束)Pをスタックトレイ60上にオフセット排出させることができるようになっている。
【0079】
このオフセット排出は、前記したようにシート排出のためにピンチロール45が排出ロール40に圧接されてその両ロール40,45にて排出すべきシート(束)を挟持している状態において、その両ロール40,45をシフト機構によりリア側(矢線R方向)又はフロント側(矢線F方向)に移動させることによって行われる。
【0080】
すなわち、ピンチ・シフト用駆動モータ150をシフト動作用の特定方向(この例では時計まわり方向)に回転駆動させることにより、各伝達ギア152,156,157とワンウェイクラッチ158を介して円筒カム300が反時計まわりに回転してシフトアーム200をシフトさせる(図10,図11参照)。この結果、シフトアーム200により連結されている第二シャフト130と第二シャフト140とがそのシフトアームと同じ方向にシフトされることにより、排出ロール40とピンチロール45をリア側又はフロント側にシフトさせて、シート(束)を排出方向Xとは直交する方向(矢線R方向又は矢線F方向)に所定量(この例ではシフト量W)ずらした状態でスタックトレイ60上に排出するようになっている(図8,図9参照)。この際、排出ロール40のシフトは、第二シャフト130のシフト動作が駆動ギア131を介してギア41に伝えられることにより、排出ロール40が第一シャフト120をスライド移動することによって行われる。
【0081】
図22は、スタックトレイ60のフロント寄りに排出させた前回のシート(束)Pに続いて、次のシート(束)Pをリア側にオフセット排出させる場合の排出状態を示している。この図22と図8を対比してみてわかるように、円筒カム300のカム作用によりシフトアーム200がフロント側からリア側に距離Wだけシフトされることにより、第二シャフト130と第三シャフト140を介して排出ロール40とピンチロール45とがリア側にシフトされる。この結果、スタックトレイ60には、前回排出されたシート(束)P1に対して次のシート(束)P2が距離Wだけリア側にシフトした状態、即ちオフセットされた状態で排出される。
【0082】
また、このオフセット排出が行われる場合、シート押さえ部材50は、排出ロール40がシフトされるのとは異なり第一シャフト120に固定された状態にあり、前回排出されたシート(束)P1の上面を押さえている。これにより、すでに排出されているシート(束)P1がオフセット排出される次のシート(束)P2におされてずれてしまうことが防止されるようになっている。
【0083】
このようにシート束を挟持する排出ロールとピンチロールをシフトさせてオフセット排出させることにより、ステープリング処理をしないで排出する「セット整合排出モード」が選択された場合にも、整合トレイ20上で整合されたシート束は排出ロールとピンチロールに挟持された状態のままでシフトされつつスタックトレイ60上に排出される結果、その整合状態がくずされることなく保持される。
【0084】
さらに、このオフセット排出時のシフト動作は、シート(束)の排出動作(排出ロール40を回転駆動させること)を開始する前に先立って実行してもよいが、この例では、図23に示すように、シート(束)の排出動作の実行時間内で完了するように実行させている。
【0085】
すなわち、図23に示すように、シート束をオフセット排出するに際し、整合トレイ20上にそのセットの最終シートが収容された時点(例えば、導入路14内に設置するシート通過検知センサ等によるシート後端通過の検知時)から所定の時間T1後に、収容したシート束を排出ロール40の駆動により排出させる場合においては、シフト機構による排出ロール40とピンチロール45のシフト動作を、シート排出動作の実行時間T2内で完了するように実行させている。この場合、シフト動作の所要時間T3は、シート排出動作の実行時間T2に比べて少ない。また、ピンチロール45を排出ロール40に圧接させるクランプ動作は、シート排出動作が開始される前に完了するように実行させている。なお、ステープリン処理を行う場合には、このオフセット排出させるためのシフト動作、シート排出動作等は、そのステープリング処理が終了した時点を基準として開始されるように設定されている。
【0086】
これにより、ステープリング処理をしないで排出する「セット整合排出モード」が選択された場合にも、整合トレイ20上で整合されたシート束は排出ロールとピンチロールに挟持された状態のままでオフセットのためにシフトされると同時に排出されることになるため、その整合状態が乱されることなくスタックトレイ60上に整然とオフセット排出される。しかも、このオフセット排出時においてスタックトレイ60上にすでにステープリング処理されていないシート束が排出されていても、前記したようにシート押さえ部材50により前回排出のシート束の上面が押さえられているため、そのすでに排出されているステープリング処理されていないシート束の整合状態が乱されることもない。従って、ステープリング非処理のシート束を整合した状態で確実にオフセット排出させることができる。
【0087】
また、シフト動作をシート排出動作の実行時間内で完了させるように実行してことにより、このシフト動作をシート排出動作と異なるタイミングで実行する場合に比べて、オフセット排出のための全所要時間が少なくなるため、前回のシート束セットの収容動作が終了してから(即ち、そのセットの最終シートが収容されてから)次のシート束セットの収容動作を開始するまで(すなわち、その次セットのファーストシートの収容動作に移るまで)のセット間の空き時間T4を短縮することができる。この結果、複数のシート束セットのオフセット排出させる場合、その全体の処理速度を高めることができる。また、これによりステープリング処理されていないシート束を複数セット、オフセット排出させる場合であっても、その各シート束の整合状態を乱すことなく、しかも、より高速でオフセット排出させることが可能となる。
【0088】
なお、この発明は、前記した実施形態の例に何ら限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内においてその各構成等を適宜変更したりすること等ができる。
【0089】
例えば、トレイ支持ユニット70や取付けユニット80における移動機構としては、従来公知の他の構成のものを使用することができる。
【0090】
また、前記した離間距離Hを確保するための降下動作は、規制部材90を設けた場合について説明したが、図24に例示するように、この規制部材90がなく、シート排出方向X上流側に壁面66を有するスタックトレイ65を使用するタイプの後処理装置において実行しても有効である。但し、この場合には、制止部材104を併設することが望ましい。その制止部材104は、例えば、トレイ支持ユニット70の連結ブラケット73の連結部に、各スタックトレイに対応させるようにして設けるとよい。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の後処理装置によれば、シート積載が終了した後や、シート積載が終了した後に前記シート排出口を通過するように移動させるに先立って、トレイの降下動作が行われるため、トレイ上に積載されたシートがシート排出口から十分に離れた状態でトレイに収容されることになり、しかも、シート排出方向上流側のシート端部も排出口の排出ロール周面に乗った状態におかれることなく確実にトレイに収容されることになる。これにより、シート積載終了時やトレイ移動時においてシートがシート排出口に侵入することがなく、また、トレイ移動時においてはシート端部がシート排出口に引っ掛かったりしてダメージを受けたり、整合状態を乱されることはない。従って、トレイのスムーズな移動動作が可能となる。
【0092】
このような効果は、上記トレイを複数配設した場合にはシート排出口を通過するトレイの移動が多くなる関係上、特に有効となる。また、後処理としてシート端部の整合処理を行う場合には、トレイに積載されたシートの整合状態がトレイ移動によって乱されることなく保持されるため有効である。そして、この効果は、ステープリング処理されていない整合されたシートの束をトレイに排出させる場合や、そのシート束を排出させたトレイをシート排出口を通過させて移動させる場合に最も有効となる。
【0093】
また、制止部材を設けた場合には、シートを積載した後のトレイがシートを積載する位置から移動して離れると、そのトレイ上の積載シートはその移動が制止部材によって制止されることになり、シート排出口を通過するトレイの移動を行ったとしても、何ら支障のないスムーズなトレイ移動をより一層確実に行うことができる。また、この制止部材をトレイの取付け移動手段に設けた場合には、この制止部材をトレイに取り付ける場合に比べてその制止部材およびトレイを簡易な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る後処理装置の概要を示す正面図である。
【図2】図1の後処理装置の主要部を拡大して示す説明図である。
【図3】整合トレイの構成を示す平面図である。
【図4】スタックトレイのトレイ支持ユニットの構成を示す要部断面図である。
【図5】スタックトレイの取付けユニットの構成を示す要部断面図である。
【図6】規制部材とスタックトレイ等の構成を示す側面図である。
【図7】規制部材とスタックトレイ等の構成を示す斜視図である。
【図8】シート排出部とシート収容部との構成を示す平面図である。
【図9】シート排出装置等の駆動系の構成を示す説明図である。
【図10】ピンチロールの動作機構およびシフト機構の構成を示すリア側の側面図である。
【図11】ピンチロールの動作機構およびシフト機構の構成を示す平面図である。
【図12】ピンチロールの動作機構の構成(ピンチロールを排出ロールから離間させた時の状態)を示すもので、(a)はその側面図、(b)は平面図である。
【図13】スタックトレイの移動とその使用状態を示す説明図である。
【図14】シートを整合トレイに収容した後に排出する場合の動作状態を示すもので、(a)はその収容時の状態を示す説明図、(b)はその排出時の状態を示す説明図である。
【図15】シートを整合トレイに収容せずに排出させる場合の動作状態を示す説明図である。
【図16】ピンチロールを排出ロールに圧接された時のピンチロールの動作機構の状態を示す説明図である。
【図17】シート押さえ部材の動作内容を示す説明図である。
【図18】スタックトレイの高さ調整の様子を示すもので、(a)はシート載置面の高さを調整する際の様子を示す説明図、(b)は積載されたシート束の上面の高さを調整する際の様子を示す説明図である。
【図19】トレイチェンジ時のスタックトレイの移動状態を示す説明図である。
【図20】トレイチェンジ前のスタックトレイの降下動作内容を示す説明図である。
【図21】制止部材の動作内容を示すもので、(a)はその退避動作時の状態を示す説明図、(b)はその突出動作時の状態を示す説明図である。
【図22】オフセット排出時のシフト動作の状態を示す説明図である。
【図23】オフセット排出時の主な動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図24】スタックトレイ及び制止部材の他の構成例を示す説明図で、(a)は降下動作時の状態を示し、(b)はトレイ移動時の状態を示している。
【図25】従来の後処理装置を示す概念図である。
【図26】図24の装置の動作内容を示す説明図である。
【符号の説明】
1…後処理装置、10…本体、10b…側壁面、17…シート排出口、20…整合トレイ(後処理手段)、30…ステープラ(後処理手段)、60…スタックトレイ、70…トレイ支持ユニット(取付け移動手段)、80…取付けユニット、100…制止部材、P…シート、Pa…シート端部、X…シート排出方向、L…離間距離、H…所定値。

Claims (5)

  1. 搬入されるシートに所要の後処理を施す後処理手段を備えた本体と、この本体の側壁面に形成されるシート排出口と、前記側壁面にシート排出方向の下流側が高くなるように傾斜した状態で取り付けられるとともにその側壁面に沿って前記シート排出口を通過するように移動可能に取り付けられ、そのシート排出口から排出されるシートを積載するトレイとを有する後処理装置において、
    前記トレイを、前記側壁面に沿う移動とは別に、そのシート収容面と前記シート排出口との離間距離を調整するように移動可能に取り付けるとともに、当該トレイを、シート積載が終了した後に前記シート排出口を通過するように移動させるに先立って又はシート積載が終了した後に前記離間距離が所定値以上になるように降下させることを特徴とする後処理装置。
  2. 請求項1記載の装置において、前記トレイがシートを積載する位置から移動して離れるときに、そのトレイのシート排出方向上流側でトレイ上に積載されたシートの上端部にもたれ掛かるように倒れこんでシートの移動を制止する制止部材を設けたことを特徴とする後処理装置。
  3. 請求項2記載の装置において、前記制止部材を、前記トレイを取り付けて側壁面に沿って移動させるための取付け移動手段に設けたことを特徴とする後処理装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の装置において、前記トレイが複数配設されていることを特徴とする後処理装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の装置において、前記後処理手段が、搬入されるシートを複数枚積み重ねてそのシート端部を揃えて整合する整合処理を少なくとも行うものであることを特徴とする後処理装置。
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