JP3582277B2 - 長尺素材の冷間抽伸装置、その冷間抽伸方法及び電子写真感光体用基板 - Google Patents

長尺素材の冷間抽伸装置、その冷間抽伸方法及び電子写真感光体用基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、長尺素材例えば連続した金属製円筒状部材としての管材を冷間抽伸する冷間抽伸装置、その冷間抽伸方法及び電子写真感光体用基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続した金属製円筒状部材としての管材の冷間抽伸においては、ダイスを引き抜きラインに設置したダイスホルダーに装着し、このダイスを介した管の先端部をチャック(一般にグリッパーと呼ばれる)で挟持した状態で引き抜くのであるが、この種の冷間抽伸では管の曲がりの発生は実際上避けられない。
【0003】
このような抽伸における曲がりの発生は、特に冷間加工における加工硬化を利用すべく、又、低コスト化を図るべく冷間抽伸後に熱処理を行わないでそのまま製品として出荷する場合がある。
【0004】
この場合にあっては、抽伸工程によって生じる曲がりが大きいと製品の出荷に先立って曲がり矯正工程が必要となり、生産能力が低下すると共に、この矯正工程での管の割れ等の発生により品質の低下を招く。
【0005】
また、冷間抽伸後に熱処理を施す場合にあっては、熱処理炉への挿入充填率の向上あるいは熱処理によって生じる曲がりを含めた大きな曲がりによる品質の低下を防止すべく、次工程に必須の工程として曲がり矯正工程を設ける必要がある。即ち、工程数の増加及び生産性の低下を招き、ひいてはコスト高を招く。
【0006】
さらに、近年のレーザープリンター,複写機等の電子写真法においては、これまで以上の一層の低コスト化及び高画質化が望まれている。一方、従来の円筒状の電子写真感光体用基板はそのほとんどの場合に前記した冷間抽伸加工工程を経た管を利用しているが、前記冷間抽伸工程においては低コスト化が非常に困難であると共に、矯正工程を省いて低コスト化を狙うと曲がりの大きな管となる。
【0007】
即ち、曲がりの大きな管で電子写真感光体用基板を作製した場合には、転写時に濃度ムラが発生するなどの問題が生じる。従って、抽伸後の管の曲がりは可及的に小さくする必要がある。
【0008】
このような課題に対して、特開昭60−30518号の明細書の従来技術の欄に記載の調整機構を設けた技術が提案されている。即ち、図11に示すように、ダイス60を引き抜きラインに設置したダイスホルダー62に装着し、このダイス60を介した管64の先端部64Aをチャック66で挟持した状態で引き抜く。なお、ダイス60は、ダイスシート70を介してダイススタンド72に取付けられている。
【0009】
また、ダイス60の傾きを調整する調整機構68として、ダイスシート70とダイススタンド72の間隔を調整しうるボルト74を配置している。このボルト74の螺合操作によってダイスホルダー62(ダイス60)を適当に傾斜させ、管64の曲りを防止している。
【0010】
しかし、上記調整機構68では、管64の曲り量や曲り方向を目測し、その結果に基づいてダイスホルダー62の傾斜を調整するという手順を繰り返して管64の曲りを真直状に近づけていくものである。従って、経験者の経験と熟練による勘に依存する部分が非常に大きく、修練が不十分な者等では安定した効果を得ることが困難であった。
【0011】
一方、上記問題を解決すべく、以下の各装置が提案されている。
(1)図12に示すように、前後に一対のリング76,78を配設し、管64の抽伸線L10上にリング76の孔軸線L12を一致させかつ一対のリング76,78間に抽伸線L10の軸周りに偏心公転するダイス80を介設し、管64にて曲げを付与しながら引き抜く機構が開示されている(特開昭56−20925)。
【0012】
(2)図13に示すように、ダイス82の出口82A側近傍に管64の抽伸線L10の軸周りに偏心公転するリング84を設け、図示しないキャリッジによる引く抜き加工中の管64に曲げを付与しながら引き抜く機構が開示されている(特公昭49−73360)。
【0013】
(3)図14に示すように、入口側のダイス86ほど管64の加工率が大きくされた複数枚(本例では2枚)のダイス86,88を連設する一方、これらのダイス86,88の入口側に管64の抽伸線L10の軸周りに偏心公転するリング90を設け、管64に曲げを付与しながら引き抜く機構が開示されている(特開昭62−212012)。
【0014】
(4)図15及び(5)図16に示すように、ダイス92を油等の流体を利用した調整機構96を介してダイススタンド94に傾斜調整可能にセットし、管64を引き抜く機構が開示されている(特開昭59−104213(図15に対応)、特開昭60−30518(図16に対応))。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記(1)〜(3)の従来技術では、管64の先端部64Aをキャリッジ(チャック66)に把持させるべく、ダイス60,82,86,88,92及びダイスホルダ62(リング78,84,90を含む)に対して予め挿入する口絞りの加工長さを長くすることが必要で、製品歩留の低下が避けられないという不都合がある。
【0016】
さらに、上記(1)及び(2)の従来技術では、管64の抽伸後の製品表面にダイス60,80,82またはダイスホルダ62(リング78,84)の偏心公転による螺旋状の傷が付き、製品の外観価値が低下し、このままでは製品として出荷することができない。そのため、この場合には螺旋状の傷を除去するのに多大な工数が必要となりコストアップを招く。また、求める面性状を作るため切削・研削・バニシング・液体ブラスト・乾式ブラスト等の2次加工を施す場合には、螺旋状の傷部分に部分的な表面加工硬化も発生しており均一な製品加工ができないという不都合もある。
【0017】
また、上記(2)の従来技術では、ダイス80,82とチャック66(キャリッジ)との間で強大な引っ張り力が付与された状態下で曲げ力が付与されるため、偏心自公転するリング76,78の駆動に多大な動力が必要で省エネルギーの観点から不経済であることに加え、管64の後端に対し曲げを付与し得ないので管64の全長にわたって真直に抽伸し得ないという不都合もある。
【0018】
上記(4)及び(5)の従来技術も、同様に、調整機構96によりある程度のダイス92の傾斜が定まるものの、最終的な微妙な調整が困難であり、さらにはこの調整機構96には多大な強度が必要で、その製造コストは大きなものとなり、製品コストに跳ね返るという不都合を有していた。
【0019】
そこで、本発明は係る事実を考慮し、冷間抽伸の際に特殊な技能を必要とせずに、真直性に優れた管を迅速かつ確実に得ることができる長尺素材の冷間抽伸装置、その冷間抽伸方法及び電子写真感光体用基板を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の長尺素材の冷間抽伸装置は、長尺素材を抽伸させるダイスと、前記長尺素材の先端を保持し前記長尺素材を引き抜き方向へ移動させる保持部材と、前記ダイスの角度を調整する機構と、前記保持部材の搬送の方向を調整する機構とを備え、前記長尺素材の引き抜き方向を調整する調整手段とを備える長尺素材の冷間抽伸装置であって、前記調整手段の一つとして前記引き抜き方向を示す光を発する発光体を前記ダイスに着脱可能に設けることを特徴とする。
【0021】
即ち、請求項1記載の長尺素材の冷間抽伸装置では、ダイスの傾斜角度を調整する機構と、ダイスの角度を調整する機構と、保持部材の搬送の方向を調整する機構とを有し、長尺素材における冷間抽伸の際に、ダイスの傾斜角度の調整の基準となるものに発光体(例えば、レーザー光源等)を用いた治具をダイスにセットして調整する。
【0022】
かかる長尺素材の冷間抽伸装置によれば、長尺素材の冷間抽伸の際に特殊な技能を必要とせずに、短時間で調整可能となり、安定性かつ真直性に優れ、2次加工性にも優れた抽伸管(長尺素材を冷間抽伸することにより得た管のこと)を得ることができる。
【0023】
請求項2記載の長尺素材の冷間抽伸方法は、長尺素材を抽伸させるダイスと、前記長尺素材の先端を保持し前記長尺素材を引き抜き方向へ移動させる保持部材と、前記長尺素材の引き抜き方向を調整する調整手段と、前記引き抜き方向を示す光を発する発光体とを有する長尺素材の冷間抽伸装置に用いられ前記長尺素材を前記保持部材で引き抜き方向へ移動させることにより前記長尺素材を抽伸させる長尺素材の冷間抽伸方法であって、前記発光体からの引き抜き方向を示す光に基づいて前記調整手段を調整することを特徴とする。
【0024】
請求項2記載の長尺素材の冷間抽伸方法では、発光体からの引き抜き方向を示す光に基づいて調整手段を調整する。
【0025】
請求項3記載の長尺素材の冷間抽伸装置は、請求項1に記載の長尺素材の冷間抽伸装置において、前記発光体を支持する支持体を前記ダイスに備え、前記支持体の取付面と前記ダイスの取付面とを係合させて前記発光体の光と前記引き抜き方向とを前記ダイスの角度を調整する機構で一致させることを特徴とする。
【0026】
請求項3記載の長尺素材の冷間抽伸装置では、支持体の取付面とダイスの取付面とを係合させて発光体の光と前記引き抜き方向とをダイスの角度を調整する機構で一致させる。
【0027】
請求項4記載の長尺素材の冷間抽伸装置は、請求項1又は3に記載の長尺素材の冷間抽伸装置において、前記長尺素材の軸心の位置に対応する位置を検出する検出部が形成され前記発光体の光を受光する受光体を備え、前記受光体を前記保持部材に取付け、前記検出部と前記発光体の光とを調整手段で一致させることを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の長尺素材の冷間抽伸装置では、受光体を保持部材に取付ける。この後、検出部と発光体の光とが一致するように調整手段によりダイスの方向を調整する。
【0029】
請求項5記載の電子写真感光体用基板は、請求項1乃至請求項4の長尺素材の冷間抽伸装置又はその冷間抽伸方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0030】
即ち、請求項1乃至請求項4の長尺素材の冷間抽伸装置又はその冷間抽伸方法を用いて長尺素材(抽伸管)の曲りに対して敏感な電子写真感光体用基板を作製する。従って、その抽伸管は真直性が優れた基材であるので、電子写真感光層を形成し、でき上がった電子写真感光体をプリンター、複写機等の電子写真プロセスにて画質を確認しても濃度ムラが少ない。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図10を参照して、本発明に係る一実施形態の長尺素材の冷間抽伸装置について説明する。図1は長尺素材の冷間抽伸装置Sの全体構成を示す断面図、図2は図1の2−2線の断面図、図3は図1に示すダイス10の傾度を調整する調整機構12の断面図、図4は図3に示す入口側から見た状態の背面図、図5(A)は図1に示すチャックの断面図、図5(B)は受光体としての受光治具46の正面図である。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0032】
図1及び図2に示すように、長尺素材の冷間抽伸装置Sは、ダイス10を装着した調整機構12及び長尺素材の先端を挟持するチャック14を一部の構成要素とするキャリア16とを備える。図10に示すように、プラグ17は、超硬金属製で形成されており、その大径は85.9mm、小径は82.0mmである。
【0033】
キャリア16は、チャック14の他に、図2に示すベース18上の両側に図1に示すガイドレール20,22を備え、これらのガイドレール20,22の間にはその後側にチャック14に連結されたチェーン24を巻き取る又は巻き戻すスプロケット26及びこのスプロケット26を軸支し正逆方向に回転させるモータ28が配置されている。そして、モータ28を正方向(時計方向)へ回転させることによりチェーン24を巻き取り、モータ28を逆方向(反時計方向)へ回転させることによりチェーン24を巻き戻す。
【0034】
なお、上記ガイドレール20,22の長手方向(即ち、チャック14の搬送方向)の長さは、30mとなっている。即ち、冷間抽伸された長尺素材Alは30mに亘る。また、ガイドレール20,22には、その外側(チェーン24と対向しない面側)に調整手段としてのガイドレール調整機構ねじ(図示せず)が配置されており、ガイドレール調整機構ねじ(図示せず)によりガイドレール20,22がスライドしチャック14の走り(搬送)の方向が調整される。さらに、図1に示すように、チャック14とこれに対応する部位のガイドレール20,22との間には、チャック14の搬送を円滑にするためのガイドローラ30が配置されている。
【0035】
一方、図3及び図4に基づき、超硬金属製のダイス10及びこれを装着した調整機構12の構成について詳述する。
【0036】
図3に示すように、ダイス10の外径部10Aには、その先端に1/10のテーパ面10Bが設けられており、このダイス10の外径部10Aの先端がダイスホルダー32にテーパ嵌合される。また、ダイス10の外径部10Aには、その後端に取付面10Cが設けられており、この取付面10Cは断面L字状をなしている。即ち、取付面10Cは、テーパ面10Bに連続して形成された外周面と,最後端の端面とで形成されている。
【0037】
ダイス10を取付けるダイスホルダー32は、自動調心用のコロ軸受け34を介してダイススタンド36に固定される。なお、ダイス10は、そのベアリング内径が84.55mmであり、表面が窒化処理されている。
【0038】
図4に示すように、ダイススタンド36には、ダイス角度調整用のネジ38が90°おきに配置されており、ネジ38を螺合調整することによりダイスホルダー32を介してダイス10の向き(傾斜角度)を微妙に調整する。
【0039】
また、図3に示すように、ダイスホルダー32には、ネジ孔32Aが形成されている。これらのネジ孔32Aを介して発光体としての例えばオーディオテクニカ製SUP−46等のレーザーダイオード(以下、単に「レーザー」という)40を固定するレーザーホルダ42が取付けられる。なお、レーザー40は、図示しない電源及びスイッチを介し制御手段(マイコンコンピュータ)に接続されており、スイッチ(図示しない)をオンにすることにより、レーザー40からレーザー光が発光される。
【0040】
一方、レーザーホルダ42には、ダイス10の取付面10Cに対応する取付面42Aが形成されており、取付面10C及び42A同志を嵌合させる。
【0041】
即ち、このレーザーホルダ42には挿入孔42Bがネジ孔32Aに対応した位置に形成されており、これらの挿入孔42Bにネジ44を挿入しかつネジ孔32Aに螺合させることによりレーザーホルダ42(即ちレーザー40及びダイス10)がダイスホルダー32に固定される。
【0042】
なお、レーザーホルダ42には、レーザー40の傾度を調整するための調整用にネジ45が複数本(本実施形態では、8本)配置されており、これらのネジ45によりレーザー40の傾度があらかじめ調整される。即ち、レーザー40は、図9及び図10に示す長尺素材Alの搬送方向P(レーザーホルダ42の軸心PQと同軸上)に沿うように予め複数のネジ45により固定されている。
【0043】
さらに、図4に示すように、レーザーホルダ42には、ダイス10の取付面10Cの端面に対応する部位にネジ孔42が複数個形成されている。これらのネジ孔42に図7に示すネジ50を螺合させることにより、嵌合されたダイス10をレーザーホルダ42から押し出す。
【0044】
図5(A)に示すように、調整時においては、レーザー40に対向して受光治具46がチャック14に挟持される。受光治具46は円柱状に形成されており、図5(B)に示すように、受光治具46の先端面(レーザー40に対向している面)にはマーク48が受光治具46の軸心を中心に等間隔に複数(本実施形態では3重丸)形成されている。これらのマーク48は、予め形成されており、心出し(センターターゲット)として機能する。
【0045】
なお、チャック14はテーパ嵌合された挟持部15が配置されており、この挟持部15がレーザ40又は長尺素材Alの先端AlHを挟持する。また、図示しないが、挟持部15の受光治具46を挟持する部分には、断面V字状の滑り止め部が形成されており、この滑り止め部によって受光治具46が確実に噛み合う。
【0046】
以下、本実施形態の作用を説明する。まず、図6に基づき、レーザー40をダイススタンド36に装着する手順について説明する。
【0047】
ダイス10のテーパ面10Bをダイスホルダ32に嵌め込んだ後、ダイス10の取付面10Cとレーザーホルダ42の取付面42Aとを嵌合させる。即ち、ダイス10をダイスホルダ32とレーザーホルダ42との間に配置させ、ネジ44をレーザーホルダ42の挿通孔42Bに挿通させた後にダイスホルダ32のネジ孔32Aに締結する。この締結は、ネジ44を複数回に分けて順番(対角線状)に均等になるように仮締めを行った後に、所定のトルクで締め付ける。
【0048】
なお、図6に示すように、コロ軸受け34をダイススタンド36の大径孔36Aに軽圧入し、ダイスホルダ32をコロ軸受け34に嵌合する。また、図5(A)に示すように、チャック14の挟持部15に受光治具46を挟持させ、装着する。この場合、受光治具46は、そのマーク48がレーザー40に対向する状態で配置する。
【0049】
引き続き、図1及び図2に基づき、調整機構12における心出し調整について説明する。
【0050】
図1及び図2に示す抽伸を開始する初期位置(始点)において、スイッチをオンにし、レーザー40からレーザー光を受光治具46のマーク48(図5B参照)に発光(照射)させる。レーザー光がマーク48に照射していることを目で確認する。レーザー光がマーク48に照射していない場合には、ダイス10の角度をネジ38によってレーザー光がマーク48の中心に照射するように調整する。
【0051】
次に、初期位置からチャック14(受光治具46)を搬送方向(矢印P方向)へ搬送させる。即ち、モータ28を駆動させてチェーン24を巻き取り、受光治具46を搬送させる。この搬送中においては、常にレーザー光がマーク48に照射していることを確認する。レーザー光がマーク48に照射していない場合には、レーザー光がマーク48に照射するようにガイドレール20,22をガイドレール調整ねじ(図示せず)によって調整する。
【0052】
次に、図7〜図9に基づき、長尺素材Alをダイス10及びチャック14に装着する手順について説明する。
【0053】
ここで、長尺素材Alは、連続した金属製円筒状の素材で、例えば外径90mm、内径86mm、長さ6mのA1050(JIS規格)のアルミニウム管が使用される。このアルミニウム管は、鋳造後、ポートホールダイ法による熱間で押し出し加工により製造されたものである。その製造方法は広く一般に知られているものであり、本発明とは直接関係しないので詳細な説明は省略する。なお、長尺素材Alは、円筒状の他に、角筒状,角柱状,円柱状等であっても、同様に適用できる。
【0054】
レーザーホルダ42をダイスホルダ32から取り外した後(図7に示す状態)、ダイス10をレーザーホルダ42から取り外す。即ち、図7の想像線に示すように、ネジ50をレーザーホルダ42のネジ孔42Dに締め込むことにより、ダイス10をレーザーホルダ42から押し出して取り外す。
【0055】
そして、図8に示すように、ダイス10をダイス取付治具52に取付けると共に、ダイス取付治具52をダイスホルダ32に取付ける。なお、ダイス取付治具52において、レーザーホルダ42のレーザー40を保持する部分がない以外の構成は、レーザーホルダ42と同様であるので、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。即ち、ダイス取付治具52には、ネジ44と螺合するネジ孔52A及びネジ50と螺合するネジ孔52Bがそれぞれ形成されている。
【0056】
また、図9に示すように、チャック14に挟持されている受光治具46(図1参照)を取り外した後、長尺素材Alの口つけが終了した先端部AlHをダイス10に通し、チャック14に挟持させる。この後、図9に示すように、初期位置に位置するチャック14を搬送方向へ搬送し、長尺素材Alを冷間抽伸する(図10参照)。
【0057】
なお、ダイス取付治具52からダイス10を取外す手順は、上記したダイス10をレーザーホルダ42から取り外す場合と同様である。
【0058】
本実施形態においては、ダイス10に対するチャック14を真っ直ぐに搬送できるので、長尺素材Alの心出し(略30mに対し、1mm以下の精度を持つことができる)がなされる。
【0059】
従って、本実施形態によれば、レーザー40及び受光治具46を装着するのみで長尺素材Alの心出しを容易を行うことができるので、長尺素材Alの冷間抽伸の際に特殊な技能を必要とせずに、短時間で調整可能となり、安定性かつ真直性に優れ、2次加工性にも優れた抽伸管を得ることができる。
【0060】
なお、抽伸を施した抽伸管の両端を切断除去し、340mmの長さに切断し、切削用素管を得る。この切削用の素管をVブロック上に置き、回転させながら中央部の振れを測定した結果、すべて100ミクロン以下であった。
【0061】
上記素管を旋盤にて鏡面切削し、表面に8ナイロン樹脂(ラッカマイド、大日本インキ社製)にメタノール・ブタノール混合溶液を浸漬塗布法により塗布し、膜厚1.0ミクロンの下引層を形成する。
【0062】
一方、ポリビニルブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)1部(以下、「部」は重量部を示す)をシクロヘキサノン19部に溶解し、得られた溶液に、ジブロムアントアントロン顔料(C.I.ピグメントレッド168)8部及びトリフルオロ酢酸0.02部を添加した。
【0063】
次いで、直径1mmのガラスビーズを分散媒体として使用し、サンドミルによって分散処理を行う。得られた分散液にシクロヘキサノンを加えて、固形分濃度が10%の塗布液を作成した。この塗布液を上記のように形成された下引層の上に、リング塗布機によって塗布し、100°Cで10分間加熱乾燥して、膜厚0.8ミクロンの電荷発生層を形成した。
【0064】
次に、N,N’−ジフェニル−N,N’ビス(3−メチルフェニル)ベンジジン4部及びポリカボネード樹脂6部を、モノクロロベンゼン36部を溶解させた。得られた溶液を、上記電荷発生層の上に浸漬塗布法によって塗布し、115°Cで60分間乾燥して、膜厚18ミクロンの電荷輸送層を形成し、OPCドラムを作成した。
【0065】
このOPCドラムの内径部に樹脂製のフランジを接着圧入し、Vivace330(富士ゼロックス(株)社製複写機)にて画質のチェックを行ったところ、ムラのない、良好な画質を得ることができた。
【0066】
なお、上記実施形態では、レーザー光がマーク48に照射されるのを目視して、ダイス10等の位置を調整する構成について説明したが、本発明では例えば受光治具46に受信システムを設け、この受信システムの信号によって調整機構12を自動的に調整できるようにしてもよい。
【0067】
また、本発明の発光体は、レーザーダイオードの他に、例えば略30m先を照射できるものであれば、発光ダイオード(LED)等であっても、同様に適用することができる。
【0068】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、冷間抽伸の際に特殊な技能を必要とせずに、真直性に優れた管(電子写真感光体用基板)を迅速かつ確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態における長尺素材の冷間抽伸装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1の2−2線の断面図である。
【図3】図1に示すダイスの調整機構の断面図である。
【図4】図3に示す入口側から見た状態の背面図である。
【図5】図5(A)は図1に示すチャックの断面図、図5(B)は受光体としての受光治具の正面図である。
【図6】図3の分解斜視図である。
【図7】ダイスがダイスホルダから離間した状態を示す断面図である。
【図8】ダイス取付治具がダイスホルダから離間した状態を示す断面図である。
【図9】長尺素材を冷間抽伸する初期状態を示す断面図である。
【図10】長尺素材を冷間抽伸している状態を示す断面図である。
【図11】従来例の長尺素材の冷間抽伸装置(特開昭60−30518号公報に記載されている従来技術)を示し、図11Aはその断面図、図11Bは正面図である。
【図12】従来例の長尺素材の冷間抽伸装置(特開昭56−20925号公報)を示す断面図である。
【図13】従来例の長尺素材の冷間抽伸装置(特開昭49−73360号公報)を示す断面図である。
【図14】従来例の長尺素材の冷間抽伸装置(特開昭62−212012号公報)を示す断面図である。
【図15】従来例の長尺素材の冷間抽伸装置(特開昭59−104213号公報)を示す断面図である。
【図16】従来例の長尺素材の冷間抽伸装置(特開昭60−30518号公報)を示し、図16Aはその断面図、図16Bは正面図である。
【符号の説明】
10 ダイス
10C ダイスの取付面
12 調整機構(調整手段)
14 チャック(保持部材)
40 レーザー(発光体)
42 レーザーホルダ(支持体)
42A レーザーホルダの取付面
46 受光治具(受光体)
48 マーク(検出部)
S 冷間抽伸装置
P 搬送方向(引き抜き方向)
Al 長尺素材
AlH 長尺素材の先端

Claims (5)

  1. 長尺素材を抽伸させるダイスと、前記長尺素材の先端を保持し前記長尺素材を引き抜き方向へ移動させる保持部材と、前記ダイスの角度を調整する機構と、前記保持部材の搬送の方向を調整する機構とを備え、
    前記長尺素材の引き抜き方向を調整する調整手段とを備える長尺素材の冷間抽伸装置であって、
    前記調整手段の一つとして前記引き抜き方向を示す光を発する発光体を
    前記ダイスに着脱可能に設けることを特徴とする長尺素材の冷間抽伸装置。
  2. 長尺素材を抽伸させるダイスと、前記長尺素材の先端を保持し前記長尺素材を引き抜き方向へ移動させる保持部材と、前記長尺素材の引き抜き方向を調整する調整手段と、前記引き抜き方向を示す光を発する発光体とを有する長尺素材の冷間抽伸装置に用いられ前記長尺素材を前記保持部材で引き抜き方向へ移動させることにより前記長尺素材を抽伸させる長尺素材の冷間抽伸方法であって、
    前記発光体からの引き抜き方向を示す光に基づいて前記調整手段を調整することを特徴とする長尺素材の冷間抽伸方法。
  3. 前記発光体を支持する支持体を前記ダイスに備え、前記支持体の取付面と前記ダイスの取付面とを係合させて前記発光体の光と前記引き抜き方向とを前記ダイスの角度を調整する機構で一致させることを特徴とする請求項1に記載の長尺素材の冷間抽伸装置。
  4. 前記長尺素材の軸心の位置に対応する位置を検出する検出部が形成され前記発光体の光を受光する受光体を備え、前記受光体を前記保持部材に取付け、前記検出部と前記発光体の光とを調整手段で一致させることを特徴とする請求項1又は3に記載の長尺素材の冷間抽伸装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の長尺素材の冷間抽伸装置又はその冷間抽伸方法を用いて作製したことを特徴とする電子写真感光体用基板。
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