JP3581587B2 - 連続鋳造設備用タンディッシュ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、熱間回転において使用する連続鋳造設備用タンディッシュに関する。
【0002】
【従来の技術】
タンディッシュは取鍋とモールド間に設置され、取鍋からの溶鋼を内部で滞留させた後、複数ストランドのモールドへ分配注入するための溶鋼容器である。
複数ストランドに対応する従来のタンディッシュとして、図3に示す船形タンディッシュ50、図4に示すT形タンディッシュ51、図5に示す台形タンディッシュ52があった。船形タンディッシュ50はスラブ用連鋳機のようにストランド間隔が広い連鋳機に多く採用され、T形タンディッシュ51、台形タンディッシュ52はブルームやビレット連鋳機のようにストランド間隔が狭い連鋳機において多く採用されていた。
例えば、船形タンディッシュ50は、耐火物53で内張りされ、上部に溶鋼保温のための図示しないカバーを設置し、オーバーフロー時の溶鋼の排出口54を側壁に設置する構造になっている。これは、レードルから船形タンディッシュ50へ溶鋼を注入する位置(すなわち湯落ち部55)と船形タンディッシュ50からモールドへ溶鋼を注入するタンディッシュノズル56の位置との距離を長くし、タンディッシュ内溶鋼中の介在物を浮上分離させるために考案された形状である。この湯落ち部55とタンディッシュノズル56の位置間の距離については特開平10−71456号公報に開示されているように、例えば800mm以上の距離が必要とされている。
【0003】
T形タンディッシュ51では、タンディッシュノズル56を4本にするため、湯落ち部57をタンディッシュノズル56が連設された連設ライン58から所定距離だけ離して設けている。このとき、内部の無駄な容積を省く形状にするために側壁の2箇所に角部59が設けられている。
台形タンディッシュ52では、T形タンディッシュ51と同位置にタンディッシュノズル56と湯落ち部61を設けていて、さらに台形タンディッシュ52内の湯流れをよくするため、T形タンディッシュ51の角部59を省略して直線状に設けた内部形状にしている。
近年、特開平8−294756号公報に示す操業床のレイアウトのように、タンディッシュ耐火物コストの低減のため、鋳造終了後タンディッシュ内スラグ等を排出し、耐火物のメンテナンスを行わずに複数回連続して使用する熱間回転設備が導入されている。このとき、タンディッシュ内に残った溶鋼及びスラグを排出する必要があるが、この方法として特開平4−75753号公報にタンディッシュを傾動させる装置が開示されている。タンディッシュを傾動させることによって、内部の残溶鋼及びスラグをタンディッシュの側壁に配置した排出口(例えば船形タンディッシュ50の排出口54)から排出することができた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の連続鋳造設備用タンディッシュを使用しタンディッシュを傾動する場合、複数ストランドに対応するタンディッシュにおいて、側壁長が長くなるため耐火物が自重を支えきれなくなり、耐火物が脱落するという問題があった。特に、T形タンディッシュ51においては角部59の脱落が顕著であった。
図6に示すように、この問題を解決するためストランド間隔が広い連鋳機の船形タンディッシュ62においては、長手方向の向かい合う側壁の内側面を同一の曲率で凹面状に設けることによって、船形タンディッシュ62を傾けたときに隣り合う定型耐火物が互いに支持しあって落下を防止するようにした例もあった。
【0005】
しかし、ストランド間隔の狭い連鋳機のT形、台形タンディッシュ51、52では、湯落ち部側の側壁の形状が直線状でないため側壁を凹面状に設けることが難しかった。また、図7に示すようにストランド間隔が狭い連鋳機に対応するタンディッシュ63にこの方法を適用した場合、湯落ち部64の両側の斜線で示す部分の容積分だけがT形タンディッシュ51よりも大きくなるため、不必要にタンディッシュ容量が大きくなり、タンディッシュに関連する操業床装置及びタンディッシュのメンテナンス設備費の増大や耐火物のランニングコストの上昇を招いていた。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、タンディッシュ側壁の耐火物の脱落を防止し、熱間回転においてタンディッシュ内残スラグを容易に排出し、さらにタンディッシュ容量を適正にする連続鋳造設備用タンディッシュを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る連続鋳造設備用タンディッシュは、対向する第1、第2の側壁の内側面が外方に湾曲し、しかも前記第1、第2の側壁を連結する底壁の前記第1の側壁の近傍に湯落ち部を有し、熱間回転においてタンディッシュ内残スラグを容易に排出する連続鋳造設備用タンディッシュであって、
前記第1、第2の側壁の各断面の形状が幅方向に曲線でかつ高さ方向に直線となって、
前記第1の側壁の内側面の曲率半径をR1とし、前記第2の側壁の内側面の曲率半径をR2とすると、R1<R2であり、
しかも、前記第1、第2の側壁の両側をそれぞれ連結して対向配置される第3、第4の側壁の内側面は平面である。
ここで、湯落ち部とは、レードルからタンディッシュに溶鋼を注入する位置をいい、近傍とは、タンディッシュ内側の壁面から溶鋼の品質に影響を与えない程度の距離を離した位置をいう。第1の側壁の内側面が外方に湾曲しているので、タンディッシュを傾動してスラグを排滓する場合、傾動の過程でタンディッシュ底面に広がっているスラグを湾曲した側壁に沿って排出口に集約することが可能となる。
また、第1の側壁の内側面の曲率半径R1は、第2の側壁の内側面の曲率半径R2より小さいので、第1、第2の側壁の形状をアーチ状に保ちながらタンディッシュの肥大化を防ぎ、タンディッシュ容量を適正にすることができる。
ここで、前記第1、第2の側壁の両側をそれぞれ連結して対向配置される第3、第4の側壁の内側面を平面としているので、定型耐火物を使用しても築造が容易にできる。
【0007】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0008】
図1、図2に示すように本発明の一実施の形態に係る連続鋳造設備用タンディッシュ10は、対向する第1の側壁11及び第2の側壁12を有し、第1の側壁11及び第2の側壁12の両側をそれぞれ連結して対向配置される第3の側壁13及び第4の側壁14を有している。第1〜第4の側壁11〜14は、底壁15で連結され、底壁15の第1の側壁11の近傍には図示しないレードルから溶鋼が供給される湯落ち部16がある。第1〜第4の側壁11〜14及び底壁15の外側は鉄皮17で覆われ、内側は耐火物で築造されている。以下、詳しく説明する。
連続鋳造設備用タンディッシュ10の内側は、対向する第1の側壁11と第2の側壁12の内側面が、共に外方に湾曲した形状になっている。そして、第1の側壁11と第2の側壁12の各断面の形状は、幅方向に曲線、高さ方向に直線となっている。垂直方向の形状が略直線状なので、鉄皮17に沿って上方へ定型耐火物を積層して第1の側壁11及び第2の側壁12を構築するときの作業を簡便に行うことができる。また、第3の側壁13、第4の側壁14及び底壁15の内側面は平面であり、容易に定型耐火物を築造できる。
【0009】
一方、連続鋳造設備用タンディッシュ10の外側の形状は、第1の側壁11及び第2の側壁12が湾曲して形成されているが、第3、第4の側壁13、14及び底壁15は平面状に形成され、その側壁外周は変形防止のためボックス構造としている。なお、鉄皮17と定型耐火物との間にはさらに定型耐火物や不定形耐火物を設けることができ、また、定型耐火物を使用しないで不定形耐火物のみを使用することも可能である。
連続鋳造設備用タンディッシュ10の内部には長手方向に所定間隔を開けて図示しないモールドへ供給する溶鋼の注入量を調節するストッパ18が設けられており、このストッパ18の直下部にはモールドに連設される図示しないノズルが設けられている。なお、ストッパ18を省略してスライディングノズルを設置することもでき、また、タンディッシュ内溶鋼ヘッドで注入量を調節することもできる。
【0010】
連続鋳造設備用タンディッシュ10の第1の側壁11の中央の上部には、スラグ排出と鋳造中の溶鋼オーバーフロー時の溶鋼排出を兼用する非常樋20が設置されている。連続鋳造設備用タンディッシュ10を2点鎖線で示す傾転軸19を中心に傾転させると、湾曲した第1の側壁11に沿ってスラグが中央部に集積される。そして、底壁15の集積位置に排出孔を形成しておくと効果的にスラグの排出を行うことができる。このとき、何らかの理由で排出孔が機能しなくなった場合は、タンディッシュ傾転角度をさらに増し、非常樋20からスラグを排出できる。
また、連続鋳造設備用タンディッシュ10の上部には図示しない保温カバーが設置される。これによって連続鋳造設備用タンディッシュ10内の溶鋼の温度の低下を防ぎ、溶鋼とスラグの分離を促進させることができる。
【0011】
次に連続鋳造設備用タンディッシュ10の内部形状について詳しく説明する。
まず、タンディッシュに供給される溶鋼と介在物の関係について説明する。取鍋からロングノズルを介して注入される溶鋼にはスラグ等の介在物が混入している。通常は介在物の方が溶鋼より比重が小さいので溶鋼の表面に浮遊した状態になっているが、溶鋼が取鍋から注入された直後の湯落ち部16付近では溶鋼が介在物を巻き込んだ状態で、一旦底壁15付近まで沈降する。従って、湯落ち部16付近に、モールドに溶鋼を注入するノズルを設けると、溶鋼中に供給された直後の前記介在物が浮上する前にモールドに運ばれてしまい品質低下の原因となるため湯落ち部16とノズル位置は所定距離(約800mm以上)離す必要がある。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態に係る連続鋳造設備用タンディッシュ10のストッパ18の直下部に位置するノズルは傾転軸19に沿って連設されている。これに対して湯落ち部16の位置は、ノズルの位置から所定距離離す必要があるため、傾転軸19から第1の側壁11側にずらして設けられている。
このノズル位置(平面視してストッパ18と同位置)と湯落ち部16の位置に対して第1〜第4の側壁11〜14を設けるときには、従来のタンディッシュの問題点である耐火物の落下、及びタンディッシュ容量の増大と合わせて、以下の点を考慮する必要がある。
(1)ノズル位置と湯落ち部16は、溶鋼の品質を保つため壁面から一定距離以上離さなければならない。
(2)簡便に製造するために平面部を多く設ける必要がある。
【0013】
本発明者は、鋭意研究の結果、次のような知見を得た。
傾転軸19を連続鋳造設備用タンディッシュ10の長手方向に設けると、第3の側壁13、第4の側壁14及び底壁15は傾転の影響が小さく耐火物の脱落が起きにくいので内側、外側共に平面状に設けることができる。
また、第2の側壁12の内側の形状は、4箇所のノズル位置に対して略等距離に壁面を設けることが望ましいため、傾転したときに耐火物が脱落しない範囲でなるべく大きな曲率半径にすることが望ましい。よって、第2の側壁12の内側面の曲率半径R2は、例えばR2=50〜200m程度に設けるとよい。
一方、第1の側壁11の内側の形状は、ノズル位置から壁面までの距離の他に湯落ち部16から壁面までの距離を考慮すると第1の側壁11の内側面の曲率半径R1は、第2の側壁12より小さくする必要がある。本実施の形態では、R2を100mとし、R1を50mにしている。
【0014】
以上の知見を基に図1、図2に示すような連続鋳造設備用タンディッシュ10が完成する。
以上説明してきたように、本発明では、第1、第2の側壁11、12の内側の形状が湾曲しているので、傾転時の耐火物の脱落を防ぐことができ、また、第1の側壁11の内側面の曲率半径R1と第2の側壁12の内側面の曲率半径R2の関係がR1<R2となっているので、連続鋳造設備用タンディッシュ10の容量を小さくすることができる。また、傾転時にスラグを第1の側壁11の側面に沿って集積することができるが第1の側壁11の内側面の曲率半径R1は、第2の側壁12の内側面の曲率半径R2より小さいのでスラグを効率よく集積できる。
図2に示すように第1、第2の側壁11、12の高さ方向の断面は直線状となっているので、定型耐火物で容易に築造でき、連続鋳造設備用タンディッシュ10の第1〜第4の側壁11〜14及び底壁15の内側を形成している定型耐火物と外側の鉄皮17との間に、不定形耐火物等を使用して層状に耐火物層を設けることが可能となるので、耐火物に亀裂が発生したときに亀裂が鉄皮17に達して鉄皮17が溶損することを防ぐことができる。
【0015】
【発明の効果】
請求項1記載の連続鋳造設備用タンディッシュにおいては、第1、第2の側壁の内側面が外方に湾曲しているので、耐火物の脱落を防止でき、また、タンディッシュを傾動してスラグを排滓する場合、傾動の過程でタンディッシュ底面に広がっているスラグを湾曲した側壁に沿って排出口に集約することが可能となり、タンディッシュの短手方向に傾動可能となってタンディッシュ内残スラグを容易に排出できると共に、タンディッシュ傾動装置をコンパクトにまとめることができる。
また、第1の側壁の内側面の曲率半径R1は、第2の側壁の内側面の曲率半径R2より小さいので、タンディッシュ容量を適正にすることができ、タンディッシュに関連する操業床装置及びタンディッシュのメンテナンス設備費の増大、耐火物のランニングコストの上昇を抑えることができる。
特に第3、第4の側壁の内側面を平面とするので、定型耐火物を使用しても築造が容易にでき、メンテナンスも簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る連続鋳造設備用タンディッシュ10の平面図である。
【図2】同側断面図である。
【図3】従来例に係る船形タンディッシュの平面図である。
【図4】同T形タンディッシュの平面図である。
【図5】同台形タンディッシュの平面図である。
【図6】同船形タンディッシュの平面図である。
【図7】同タンディッシュの平面図である。
【符号の説明】
10 連続鋳造設備用タンディッシュ 11 第1の側壁
12 第2の側壁 13 第3の側壁
14 第4の側壁 15 底壁
16 湯落ち部 17 鉄皮
18 ストッパ 19 傾転軸
20 非常樋

Claims (1)

  1. 対向する第1、第2の側壁の内側面が外方に湾曲し、しかも前記第1、第2の側壁を連結する底壁の前記第1の側壁の近傍に湯落ち部を有し、熱間回転においてタンディッシュ内残スラグを容易に排出する連続鋳造設備用タンディッシュであって、
    前記第1、第2の側壁の各断面の形状が幅方向に曲線でかつ高さ方向に直線となって、
    前記第1の側壁の内側面の曲率半径をR1とし、前記第2の側壁の内側面の曲率半径をR2とすると、R1<R2であり
    しかも、前記第1、第2の側壁の両側をそれぞれ連結して対向配置される第3、第4の側壁の内側面は平面であることを特徴とする連続鋳造設備用タンディッシュ。
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