JP3581563B2 - 抄紙機フォーマの脱水装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抄紙機ツインワイヤフォーマ部(オントップフォーマのツインワイヤ部を含む。)の紙層形成装置に適用される抄紙機フォーマの脱水装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に用いられるツインワイヤフォーマの全体構成の一例を図6に、同図における第1脱水機器4付近を概略的に表した部分拡大図を図7に、それぞれ示す。
抄紙機の紙層形成装置としてのツインワイヤフォーマは、図6に示すように、ボトムワイヤ2及びトップワイヤ3の2枚の無端状のワイヤ(金網)が、それぞれループとなるような構成となっている。ボトムワイヤ2は、ブレストロール8にガイドされ、トップワイヤ3は、フォーミングロール9にガイドされている。ワイヤ2、3の対向面によりギャップ(抄紙用隙間)を形成している。このギャップは、下流側(同図における右側)になるに従って、徐々に狭められていく。ボトムワイヤ2のループ内には、初期脱水部の第1脱水機器4が設けられており、この第1脱水機器4は、図7に示すように、複数の掻き取り型脱水ブレード21(斜線で表示)が互いに間隔をあけて、曲率R1あるいは二つ以上の曲率R1、R2、、、Rn上に配置されることにより構成されている。
【0003】
図6に示すように、ヘッドボックス1から噴出した紙原料液6(パルプ懸濁液)は、ギャップに挟み込まれて、ワイヤ2、3と略同速で下流側(同図における右方向)へ移動していく。それに伴い、第1脱水機器4で紙原料液6の水が脱水除去される。すなわち、近似曲線R及びR1、R2、、、Rn(図7参照)に沿って走行する間に、掻き取り型脱水ブレード21により発生する脱水圧力によってほぼ両側(ボトムワイヤ2側及びトップワイヤ3側)脱水が行われ、徐々に繊維マットが形成され、紙匹11を形成していく。トップワイヤ3のループ内に設けられた第2脱水機器5では、更に脱水が行われ、最終的な紙層が形成される。次に、ボトムワイヤ2のループ内に設けられた第3脱水機器7(サクションボックス)及びサクションクーチロール10で真空による吸引脱水が行われるとともに、ボトムワイヤ2上に形成された紙匹11を移して、サクションピックアップロール(図示省略)によって、次のプレスパートへと移送される。このように、本脱水装置は、各々ループをなす2枚のワイヤ2、3間にギャップが形成され、ワイヤ2、3を介してギャップに臨むように設けられた複数の脱水ブレード21を備え、紙原料液6をギャップに挟み込んでワイヤ2、3を作動させて、紙原料液6を移動させながら脱水していく。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかるツインワイヤフォーマでは、第1脱水機器4の外部に設置した吸引ファン(図示せず)の真空風量を調整することにより、掻き取り型脱水ブレード21側への脱水量を調整することはできるものの、掻き取り型脱水ブレード21の反対側、すなわちトップワイヤ3を介して上方へ脱水される水量を調整することはできなかった。
紙種や抄造速度等の抄造条件の変更に応じて、上方への脱水量を調整することが望ましいが、実際の操業現場においては、上記事情により調整を行うことができず、最適抄造条件範囲から逸脱した状態での運転を余儀なくされていた。このため、品質の低下を許容せざるを得ない状況にあり、多品種少量生産への対応は、大きな課題となっていた。
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、脱水量の調整により多品種少量生産に対応可能な抄紙機フォーマの脱水装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る抄紙機フォーマの脱水装置は、かかる課題を解決するためになされたものであり、抄紙機フォーマ部の脱水機器構成において、掻き取り型脱水ブレードとウェッジシェイプ型脱水ブレードとを同一のワイヤループ内に配置した。
また、上記ウェッジシェイプ型脱水ブレードが、外部よりウェッジ角を変更できる調整機能を有するように構成しても良い。
【0006】
上記掻き取り型脱水ブレードは、紙原料液から水分を掻き取るものである。この掻き取り型脱水ブレードは、ワイヤ支持面のワイヤ入り側をエッジ状とし、このエッジ状の部分で紙原料液から水分を掻き取るようにしたものが好適である。上記ウェッジシェイプ型脱水ブレードは、外部から操作可能な角度調整機構と、押付調整機構とを備えることが好ましい。
角度調整機構は、ワイヤの移動方向に沿ってブレード本体を所定範囲揺動可能に支持するようにしたものが好ましい。好ましくは、後述する実施の形態について示すように、外部から流体圧力を注入することによってウェッジ角を調整することができるようにしたものを挙げることができる。
押付調整機構は、ワイヤに向かってブレード本体を所定範囲進退自在に支持するようにしたものが好ましい。更に好ましくは、後述する実施の形態について示すように、外部から流体圧力を注入することによってウェッジ角を調整することができるようにしたものを挙げることができる。
本発明に係る脱水装置によれば、外部からの調整操作によって脱水量を適宜調整することができ、これによって任意の圧力プロファイルを容易に得ることができる。
【0007】
掻き取り型脱水ブレードとウェッジシェイプ型脱水ブレードの具体的な配置は、抄造条件に対応することが望ましく、例えば1つおきに交互に配置する場合や、あるいは、変則的な配置にする場合が考えられる。
また、これらの脱水ブレードは、脱水装置をボックス構造とすることで、一体化しておくことが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る抄紙機フォーマの脱水装置の実施の形態について、図1乃至図5に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る抄紙機フォーマの脱水装置における第1脱水機器4付近を部分的に拡大した図面、図2は、脱水ブレードの配列の一変形例を示す部分拡大図、図3は、図2のウェッジシェイプ型脱水ブレード30を単体で表した図面、図4は、ウェッジ角と脱水圧力との関係を示したグラフ、図5は、図1の脱水機器構成における累積脱水量を示したグラフである。
なお、本実施形態の抄紙機フォーマの基本的構成は、図6に示すものであり、同図における番号も同一である。図1においては、紙原料液6が第1脱水機器4から第2脱水機器5の方向へと移動していく。
【0009】
第1脱水機器4は、図1に示すように、ボトムワイヤ2側に配置されており、その先頭(上流側)には、広幅リーディングブレード20が配置されている。その後方の曲率Ra上には、掻き取り型脱水ブレード21が所定の間隔をおいて3個配置され、さらに、その後方の曲率Rb上には、掻き取り型脱水ブレード21及びウェッジシェイプ(wedge−shaped)型脱水ブレード30がそれぞれ配置されている。
第1脱水機器4は、これらのブレード20、21、30を含むボックス構造である。これらのブレード20、21、30の先端部は、ボトムワイヤ2の外面2Aに当接している。
【0010】
掻き取り型脱水ブレード21は、図2に示すように、ワイヤ支持面21Aのワイヤ入り側がエッジ状に尖っていて、このエッジ状の部分で、紙原料液6から水分を掻き取るようになっている。
曲率Rb(図1参照)上における掻き取り型脱水ブレード21とウェッジシェイプ型脱水ブレード30との配列は、図2に示すように、2つの掻き取り型脱水ブレード21と3つのウェッジシェイプ型脱水ブレード30とを交互にしても良く、また、図1に示すように、3つの掻き取り型脱水ブレード21と2つのウェッジシェイプ型脱水ブレード30とを用いて、最後尾を掻き取り型脱水ブレード21としても良い。
【0011】
ウェッジシェイプ型脱水ブレード30の保持構造について、図3(a)〜(c)を用いて説明する。(a)〜(c)は、その脱水ブレードとワイヤとのなす角度の調整状態をそれぞれ示している。この脱水ブレード30は、ワイヤを支持する平面部と、該平面部のワイヤ入側でワイヤ面に対してワイヤ走行方向の上流側に向かって拡がる楔状空間を形成する傾斜面(図2に示すウェッジ角θ)とを備えた脱水ブレードであり、ウェッジ角θを外部から変更できるように構成している。
ウェッジシェイプ型脱水ブレード30は、図3(a)〜(c)の各図に示すように、第1可動部材301、第2可動部材302を介して、第1脱水機器4の本体上に突設されたベース305に支持されている。
すなわち、ベース305上には、第2可動部材302が、ベース305の外面に案内されながら、ボトムワイヤ2の外面2A(紙原料液6の走行ラインに沿った面)に対して離接し得る方向に移動可能に装備されており、この第2可動部材302の先端部には軸部材307が備えられ、第1可動部材301に形成された円筒状溝301Bがこの軸部材307に摺動自在に嵌合している。これにより、第1可動部材301は軸部材307を中心として揺動自在に支持されている。
【0012】
ウェッジシェイプ型脱水ブレード30の基端部には、T型形状をしたアリ溝が形成されている。このアリ溝に第1可動部材301の先端部301Aを嵌合させることにより、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30を第1可動部材301に一体結合させることができる。また、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30を、第1可動部材301に対して抄紙幅方向(m/c 巾方向)に移動させることにより、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30を第1可動部材301に対して抜き差しすることができる。
【0013】
ウェッジシェイプ型脱水ブレード30の先端には、ブレード本体306が一体に結合されている。軸部材307を中心として第1可動部材301が揺動すると、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30がブレード本体306とともに紙原料液6の走行方向に揺動し得るようになっている。
ブレード本体306のボトムワイヤ外面2A側の面(これを作用面という。)は、ボトムワイヤ2に当接するボトムワイヤ当接面部306Aと、ボトムワイヤ当接面部306Aに対して角度を付けて傾斜した傾斜面部306Bとからなっている。
すなわち、ブレード本体306の作用面のうちワイヤ出側(ワイヤの走行方向下流側)には、ボトムワイヤ2に当接してボトムワイヤ2を支持するボトムワイヤ当接面部306Aが設けられ、このボトムワイヤ当接面306Aよりも上流側、すなわち、ブレード本体306の作用面のうちワイヤ入り側(ワイヤの走行方向上流側)には、ワイヤの走行方向上流側に向かってボトムワイヤ2から次第に離隔するように形成された傾斜面部306Bが設けられている。したがって、傾斜面部306Bとボトムワイヤ2との間には、楔状空間306C(wedge−shaped space)が形成されている(図3(b)参照)。
【0014】
ベース305と第2可動部材302との間には、伸縮可能なチューブ303(可動チューブ)が介装されている。このチューブ303は、第1可動部材301側に取り付けられており、ベース305に圧接し得るヘッド310が備えられている。チューブ303の内部の流体圧(例えば、空気圧又は油圧等)は、流体圧給排装置(図示省略)で調整可能である。
チューブ303の内圧状態に応じ、ヘッド310がベース305に圧接しながら、第1可動部材301をベース305に対して移動させ得るようになっている。すなわち、チューブ303の内圧が増大すれば、ヘッド310がベース305に圧接しながら、第2可動部材302をベース305に対して離隔する方向に移動し、第2可動部材302が、紙原料液6の走行ラインに対して接近する。逆に、チューブ303の内圧が減少すれば、ヘッド310のベース305への圧接が弱まり、第2可動部材302をベース305に対して接近する方向に移動し、第2可動部材302が、紙原料液6の走行ラインに対して離隔する方向に移動する。
このように、ベース305に対して可動な第2可動部材302と、伸縮可能なチューブ303と、このチューブ303の内圧を調整する流体圧給排装置(図示省略)とから、押付圧調整機構320が構成されており、これにより、第2可動部材302が、紙原料液6の走行ラインに対して離接する方向に移動すると、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30も同様に移動するので、紙原料液6に作動する押付圧が調整される。
【0015】
第2可動部材302と第1可動部材301との間には、伸縮可能な一対のチューブ(可動チューブ)304a、304bが介装されている。これらのチューブ304a、304bも、第2可動部材302の中心軸の前後に配置され、第2可動部材302に取付けられている。各チューブ304a、304bには、それぞれヘッド310a、310bが備えられている。
各ヘッド310a、310bは、埋没状態(図3(b)における実線)から突出可能(同図における鎖線の位置)であって、第1可動部材301を前後に挟むように形成されたアーム部301C、301Dの内面と圧接し得る。
【0016】
チューブ304a、304bの各内部の流体圧(例えば、空気圧又は油圧等)は、流体圧給排装置(図示省略)によって独立して調整可能である。
チューブ304a、304bの内圧状態に応じて、ヘッド310a又は310bがアーム部301C又は301Dに圧接しながら、第1可動部材301を第2可動部材302に対して揺動させ得るようになっている。
すなわち、チューブ304bの内圧が高められると(このときには、チューブ304aの内圧は最小又は適宜小さな状態とする。)、同図(a)に示すように、アーム部301Dが押圧されて、第1可動部材301が軸部材307を中心として回動しながらウェッジシェイプ型脱水ブレード30を紙原料液6の流れ方向(ワイヤ2の走行方向、矢印F参照)の下流側に揺動させる。
逆に、チューブ304aの内圧が高められると(このときには、チューブ304bの内圧は最小又は適宜小さな状態とする。)、同図(c)に示すように、アーム部301Cが押圧されて、第1可動部材301が軸部材307を中心として回動しながらウェッジシェイプ型脱水ブレード30を紙原料液6の流れ方向(ワイヤ2の走行方向)の上流側に揺動させる。
また、両チューブ304a、304bの内圧をバランスさせると、同図(b)に示すように、第1可動部材301が前後何れにも傾斜しない中立状態となり、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30も中立状態となる。
ウェッジシェイプ型脱水ブレード30がこのように揺動すると、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30(ブレード本体306)の作用面306A、306Bのワイヤの走行方向(紙原料液6の流れる方向)に対する角度、特に、傾斜面部306Bとボトムワイヤ2とのなす傾斜角度(ウェッジ角(wedge−angle )〕が調整される。
このように、ベース305側(第2可動部材302側)に対して揺動可能な第1可動部材301と、伸縮可能なチューブ304a、304bと、これらのチューブ304a、304bの内圧を調整する流体圧給排装置(図示省略)とから、角度調整機構321が構成されており、これにより、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30の作用面とワイヤ2とのなす角度を外部から調整することができる。
【0017】
チューブ304bの方の内圧をチューブ304aよりも高めた状態のウェッジ角γ(図1(a)参照)、チューブ304aとチューブ304bとの内圧を均衡させた状態のウェッジ角β(同図(b)参照)、及び、チューブ304aの方の内圧をチューブ304bよりも高めた状態のウェッジ角α(同図(c)参照)を比べると、γ<β<αの関係になり、角度調整機構321のチューブ304aとチューブ304bとの内圧調整で、装置の運転中にも、ウェッジ角θを広範囲に調整することができる。
【0018】
なお、ブレード本体306の作用面を構成するボトムワイヤ当接面部306Aは、ボトムワイヤ2側に凸の曲面状に形成されているので、ブレード本体306を紙原料液6の流れ方向(ワイヤ2の走行方向)に対して逆に用いると、すなわち、矢印Fと逆方向に紙原料液6を流通させると、ボトムワイヤ当接面部306Aのワイヤ入り側(この場合、同図(a)〜(c)におけるボトムワイヤ当接面306Aの右側がワイヤ入り側となる。)がボトムワイヤ2と離隔して、ボトムワイヤ当接面306Aとボトムワイヤ2との間に楔状空間306C’が形成される。したがって、この場合には、ウェッジ角θは、ボトムワイヤ当接面306Aとボトムワイヤ2との間の角度α’、β’、γ’として形成される。
【0019】
上述のように構成されているので、装置の運転中であっても、角度調整機構321におけるチューブ304a、304bの流体圧調整によって、外部からウェッジシェイプ型脱水ブレード30(ブレード本体306)の作用面306A、306Bの角度を所定の範囲(例えば、同図(a)〜(c)の範囲)で自由に調整することができ、これにより、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30(ブレード本体306)のウェッジ角θを、例えばγ〜αの範囲内で自由に調整することができる。
【0020】
このようにウェッジ角θを調整すると、紙原料液6の脱水圧力が調整される。つまり、図4に示すように、従来の脱水ブレード(傾斜面を有しないウェッジシェイプ型でない脱水ブレード)の脱水圧力は、領域43のようなレベルであるのに対して、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30では、直線41に示すように、脱水圧力を向上させることができる。しかも、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30の脱水圧力は、ウェッジ角θに大きく依存し、ウェッジ角θが大きくなるほど脱水圧力が少なくなる。
したがって、角度調整機構121によってウェッジシェイプ型脱水ブレード30のウェッジ角θを調整することによって、脱水圧力を広い範囲で調整することができる。
【0021】
しかも、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30では、押付圧調整機構120におけるチューブ303の流体圧調整によって、紙原料液6に作用する押付圧を調整することができる。この可動チューブ303の押付けによって、直線42のように、押し付けない場合(直線41)よりも脱水圧力を大きくすることができる。
したがって、ウェッジ角θの調整と、チューブ303による押付圧の調整とを組み合わせることで、直線41から直線42にわたる極めて広い範囲に、脱水圧力を調整することができるようになる。
このように、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30をワイヤ2、3の走行方向、すなわち、紙原料液6の流れ方向に沿って配列し、運転中に、各ウェッジシェイプ型脱水ブレード30を外部から流体圧を通じて回動や進退をさせながら、ウェッジ角θの調整や押付圧調整を行うことで、任意の圧力プロファイル(紙原料液6の流れ方向への脱水圧力分布)を容易に得ることができる。
【0022】
脱水圧力プロファイルを外部から容易に調整できるため、坪量、抄紙濃度等の変更に対して、常に最適な条件で抄紙を行うことができるようになり、抄紙した紙の品質を常に高めることができ、特に、多品種少量生産に十分に対応することができる。
また、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30は、抄紙幅方向に移動させることで第1可動部材301に対して抜き差しできるため、形状の異なる他の脱水ブレードに交換することも容易であり、このような交換によって、図1(b)に示すような中立時のウェッジ角θ(初期角度)を変更することも容易になり、初期角度を自由に設定し得るという利点もある。
なお、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30の作用面とボトムワイヤ2とのなす角度を外部から調整する角度調整機構321のみを装備するようにしても、脱水圧力をある程度広範囲に調整することができるので、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30による紙原料液6への押付圧を調整する押付圧調整機構320については省略することも考えられる。
【0023】
第1脱水機器4の下流には、図1に示すように、第2脱水機器5がトップワイヤ3のループ内に配置されている。この第2脱水機器5は、
(1) 第1脱水器4で使用された掻き取り型脱水ブレード21、あるいは、
(2) 傾斜角(ウェッジ角θ)が固定のウェッジシェイプ型脱水ブレード24(図6参照)、
(3) 上記(1) の脱水ブレード21に対し、トップワイヤ3、原料液6、ボトムワイヤ2を介して対向する位置に運転中に外部よりボトムワイヤ2への押付圧を調整できる脱水ブレード21と同じ形状をした対向脱水ブレード
等が、脱水装置として用いられている。
第2脱水機器5は、ボトムワイヤ2及びトップワイヤ3の走行安定性のため、及び、紙の表裏の脱水履歴を略同等にして表裏差のない紙を作るために、第1脱水機器4と反対側となるトップワイヤ3のループ内に配置されている。また、第2脱水機器5の曲率は、第1脱水機器4の曲率と反転させている。
【0024】
次に、掻き取り型脱水ブレード21とウェッジシェイプ型脱水ブレード30とからなる第1脱水機器4を組み込んだ脱水機器配置について、図1を用いて、その作用及び効果を説明する。
ヘッドボックス1(図6参照)から噴出された紙原料液6は、走行するトップワイヤ3とボトムワイヤ2のワイヤ面に接する際の原料ジェットの衝突力によって脱水が確実に行われ始める。そして、広幅リーディングブレード20の前方で、2枚のワイヤ2、3に挟み込まれ、広幅リーディングブレード20上を通り過ぎ、曲率Ra上に配置された従来と同じ掻き取り型脱水ブレード21上で、トップワイヤ3側及びボトムワイヤ2側へ、それぞれ脱水が行われ、各ワイヤ上にマット層が形成される。その後、曲率Rb上の脱水ブレード配置、すなわちウェッジシェイプ型脱水ブレード30と掻き取り型脱水ブレード21とから構成される脱水領域に入る。
この脱水領域における掻き取り型脱水ブレード21の位置では、トップワイヤ3のワイヤ張力とボトムワイヤ2の折れ曲がりによって発生する脱水圧力によって、両側(同図における上下)に脱水が行われる。トップワイヤ3側へ脱水された白水51(図2参照)は、走行するトップワイヤ3上に乗って略同速度で同伴し、第2脱水機器5の先頭脱水ブレード22(オートスライスブレード)によって掻き取られ、狭いスロート23を通って系外へ排出される。
なお、脱水ブレード21側への脱水量は、吸引ファン(図示省略)の真空風量調整により、ある程度変えることができる。
【0025】
上記脱水領域におけるウェッジシェイプ型脱水ブレード30の位置では、下方に脱水された白水52(図2参照)が脱水ブレード前方のウェッジ角θに入り、これによりウェッジ圧力(Wedge Pressure)が発生する。このため、下方(ボトムワイヤ2側)への脱水が抑制され、トップワイヤ3側の脱水のみが行われる。
【0026】
ここで、従来の第1脱水機器4に示す脱水ブレード構成において、脱水を行うための脱水圧力は、トップワイヤ3の張力と、ある曲率上に設置された脱水ブレード21の先端及び後端でのワイヤの折れ曲がり角度と、2枚のワイヤ2、3間に形成されたマット層の脱水抵抗とに依存することが、著者らの広範な研究で明らかになっている。
【0027】
次に、図1に示す脱水機器構成で、トップワイヤ3側及びボトムワイヤ2側への累積脱水量プロファイルについて、図5を用いて説明する。同図は、上下二つに分割して表しており、上側のグラフはトップワイヤ3側への脱水量、下側のグラフはボトムワイヤ2側への脱水量を、それぞれ示している。紙原料液6の流れる方向を横軸にし、各位置における脱水量を縦軸にしている。
同図の横軸は、図1における各脱水ブレードの位置に対応するようにしてあり、紙原料液6の流れる方向は、図5における左から右の方向である。また、図5の縦軸は、上側のグラフでは、上に行くに従って、脱水量が大きくなり、下側のグラフでは、下に行くに従って脱水量が大きくなるように、表している。
同図中の一点鎖線は、すべての脱水ブレードに掻き取り型脱水ブレード21を使用した場合の脱水量カーブを示しており、また、実線は、掻き取り型脱水ブレード21とウェッジシェイプ型脱水ブレード30とを組み合わせて使用した場合の脱水量カーブを示している。すなわち、一点鎖線と実線との脱水量差が、本実施形態による調整範囲(脱水量変更範囲)である。
【0028】
このような脱水ブレード機器配置では、広幅リーディングブレード20(広幅リーディングシュー)、曲率Ra上に配置された3つの掻き取り型脱水ブレード21までは、一点鎖線及び実線が重なっており、両方とも同じ脱水量カーブとなっている。
後流側(同図における左側)には、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30が配置されており、この脱水ブレード30による脱水は、トップワイヤ3側へのみ行われている。このため、一点鎖線と実線とに差が生じ、両者の脱水量が異なっている。このウェッジシェイプ型脱水ブレード30は、上述したように、ウェッジ角θが変えられるので、同図における斜線の範囲内で、脱水量の調整が可能である。
【0029】
第2脱水機器5の先頭脱水ブレード22に入る時のトップワイヤ3及びボトムワイヤ2上に形成された紙層(マット層)のマット量やマット層の濃度に、最良の品質を得る適値があったが、従来の脱水機器構成では、調整機能を有していなかったため、生産速度や紙種によって、最適範囲から逸脱した状態での運転を余儀なくされ、品質低下をもたらしていた。
この点、本実施形態の抄紙機フォーマの脱水装置では、図1に示すように、第1脱水機器4に用いられる脱水ブレードを、掻き取り型脱水ブレード21と、ウェッジ角を変更して上方への脱水量を可変にできるウェッジシェイプ型脱水ブレード30とで構成している。
すなわち、流体力によってウェッジ角θを外部から容易に変更できるウェッジシェイプ型脱水ブレード30を組み合わせた脱水ブレード側では、従来の掻き取り型脱水ブレード21によって白水が掻き取られて脱水が行われ、その反対側(反脱水ブレード側)では、掻き取り型脱水ブレード21へのトップワイヤ3での押付け力、及び、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30のウェッジ部で発生するウェッジ圧により、上方への脱水量調整が可能である。
ここで、トップワイヤ3上に形成されるマット量は、脱水量に略比例する。さらに、このウェッジシェイプ型脱水ブレード30のウェッジ角θを外部から調整することにより、脱水圧力が変わり脱水量が変化するため、形成されるマット量を自由にコントロールすることができる。
よって、第2脱水機器5に入るトップワイヤ3の上に形成されるマット量と、ボトムワイヤ2の上に形成されるマット量を各々独立に調整できる。したがって、この紙層(マット層)の状態を運転中容易に調整でき、高い品質を維持しながら、生産速度の増加や紙種変更に対応することが可能である。
【0030】
なお、本実施の形態では、掻き取り型脱水ブレード21とウェッジシェイプ型脱水ブレード30を交互に配置しているが(図2参照)、この組み合わせは、抄造する紙種や生産速度に応じて適宜変更することが可能である。また、ウェッジシェイプ型脱水ブレード30は、そのウェッジ角θを任意に設定できるものを用いているが、操作性や調整能力を幾分犠牲にすれば、固定としてもかまわない。また、本実施の形態では、このウェッジシェイプ型脱水ブレード30の前に、3本の掻き取り型脱水ブレード21を配置した場合を示したが、生産速度や紙種によって変わるため、これに限定されるものではない。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、掻き取り型脱水ブレードとウェッジシェイプ型脱水ブレードとを同一のワイヤループ内に配置したので、ウェッジシェイプ型脱水ブレードの位置では、脱水ブレード側に脱水された白水によりウェッジ圧が発生し、このため、脱水ブレード側の脱水量が抑制され、脱水ブレードと反対側の脱水量が増大する。このようにして、脱水ブレードの反対側における脱水量を増やすことができ、紙種や抄造速度等の抄造条件の変更に応じて、脱水ブレード側の脱水量とその反対側の脱水量を異ならせることができる。
よって、高い品質を維持しつつ生産速度の増加や紙種変更に対応することができる。
【0032】
また、上記ウェッジシェイプ型脱水ブレードが、外部よりウェッジ角を変更できるように構成したので、運転中に脱水ブレードと反対側における脱水量の調整を行うことができる。すなわち、ウェッジ角を調整することにより、脱水圧力が変わり脱水量が変化する。
よって、抄紙機を停止させることなく、多品種に対応することができ、機械稼働率の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る抄紙機フォーマの脱水装置における第1脱水機器4付近を部分的に表した拡大図である。
【図2】脱水ブレードの配列の一変形例を示す部分拡大図である。
【図3】図2のウェッジシェイプ型脱水ブレード30を単体で表した構成図である。
【図4】ウェッジ角と脱水圧力との関係を示したグラフであり、縦軸は脱水圧力、横軸はウェッジ角(θ)である。
【図5】図1の脱水機器構成における累積脱水量を示したグラフであり、縦軸は、脱水量、横軸は、紙原料液6の流れる方向の位置である。
【図6】一般的に用いられるツインワイヤフォーマの全体構成の一例を示す概略図である。
【図7】図1における第1脱水機器4付近を概略的に表した部分拡大図である。
【符号の説明】
1 ヘッドボックス
2 ボトムワイヤ
2A 外面
3 トップワイヤ
4 第1脱水機器
5 第2脱水機器
6 紙原料液(パルプ懸濁液)
7 第3脱水機器
8 ブレストロール
9 フォーミングロール
10 サクションクーチロール
11 紙匹
20 広幅リーディングブレード
21 掻き取り型脱水ブレード
21A ワイヤ支持面
22 先頭脱水ブレード(オートスライスブレード)
23 スロート
24 ウェッジシェイプ型脱水ブレード
30 ウェッジシェイプ型脱水ブレード
301 第1可動部材
301A 第1可動部材301の先端部
301B 円筒状溝
301C、301D アーム部
302 第2可動部材
303、304a、304b チューブ(可動チューブ)
305 ベース
306 ブレード本体
306A ボトムワイヤ当接面部(作用面)
306B 傾斜面部(作用面)
306C 樹状空間(ウェッジシェイプドスペース)
307 部材軸
310、310a、310b ヘッド
320 押付圧調整機構
321 角度調整機構
41、42 直線
43 領域
51、52 白水
θ、α、β、γ、α´、β´、γ´ ウェッジ角

Claims (1)

  1. 掻き取り型脱水ブレードとウェッジシェイプ型脱水ブレードとを同一のワイヤループ内に配置し、上記ウェッジシェイプ型脱水ブレードが、外部よりウェッジ角を変更できるようにしたことを特徴とする抄紙機フォーマの脱水装置。
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