JP3580746B2 - ルウ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、カレー、シチュー等のルウ食品の調理に用いるルウ、及びその製造方法に関する。さらに詳細には、低温域(通常、冷蔵〜常温と言われる温度域)で保存している際には、均一な固形状を維持することができ、ルウ食品の調理時には、当該ルウを固形状から液状又はペースト状に低温域で変化させ、これに加水するだけで、簡単にルウ食品を調理し得るルウと、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、カレー、シチュー等のルウ食品を調理する固形ルウが市販されている。この固形ルウを用いてルウ食品を調理する方法としては、まず野菜及び肉類等の具材を炒め、加水して煮込んだ後、固形ルウを加えてさらに煮込むという方法が一般的である。ところで、固形ルウは、熱水中ですぐに溶解しないため、ルウ食品の調理時間が長くなる傾向にあった。なお、固形ルウを手で細かく割って熱水に加えることにより、ある程度ルウの溶解時間を短縮し得るが、手間がかかるとともに、手を汚すという問題があった。つまり、従来の固形ルウは、簡便性を改良する余地が残されていた。
【0003】
そこで、熱水への即溶性と、絞り出しやすさ等の簡便性において固形ルウよりも優れ、ルウ食品を簡便に調理し得るペースト状ルウが提案されている。このようなペースト状ルウとして、例えば20℃〜40℃で流動性を有する油脂と、実質的にα化していないでん粉、カレー粉、香辛料、調味料等を主成分とし、油脂が分散相、水系が連続相なる構造を有し、パウチ又はチューブ等の可撓性容器から容易に絞り出せるペースト状カレールーがある(特公昭63−3583号)。
【0004】
ところで、上記固形ルウ及びペースト状ルウは、いずれも熱水に溶解させてルウ食品を調理するものである。従って、冷水を用いてルウ食品を調理したり、あるいは低温域で食するルウ食品の調理には適さない。というのも、上記固形ルウ及びペースト状ルウを冷水に溶解させることは非常に困難であり、また上記固形ルウ及びペースト状ルウを用いて加熱調理したルウ食品を、低温域、つまり冷めた状態で食すると、粘度上昇に伴うボテボテ感や、常温で固形の油脂の結晶化によるザラツキ感の強い、不良な食感になる。例えば、上記ペースト状カレールーは、実質的にα化していないでん粉を含んでいるため、冷水による調理には適さず、またペースト状カレールーを用いて上記常法により調理し、その後これを冷やして低温域で食するのにも適さない。
【0005】
なお、本出願人は、温めて喫食するのが当然とされていた従来のルウ食品とは全く異なる新しい喫食形態、すなわち低温で喫食するルウ食品と、このルウ食品を調製し得るルウ食品基材を発明し、これを特許出願した(特開平9−206034号公報、特開平9−206036号公報、特開平9−206037号公報)。上記出願に係る発明によれば、従来のルウを用いて調理したルウ食品を低温で喫食する際の口溶けが良く、塩味の強さを解消された固形、ペースト状又は液状のルウ食品基材を提供することができる。しかし、ペースト状又は液状のルウ食品基材を製造した場合、このペースト状又は液状のルウ食品基材を常温で長期間保存すると、当該基材中のカレー粉等の粉体が沈降し、分離が発生することがあった。分離が発生したルウ食品基材は見栄えが悪く、商品価値が下がるほか、調理時に、あらためて基材を均一にするという手間がかかるという問題があった。
【0006】
このように、(1)低温域での保存中に分離せず、(2)熱水、特に低温域の水への溶解性が高く、(3)低温域での調理及び喫食も可能である、という三つの要件を同時に満たし得るルウは、未だ提案されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、保存中には均一な状態を維持し、調理時の溶解性の優れたルウであって、非加熱でもルウ食品を調理することができ、さらには加熱調理した後低温で喫食しても食感の良好なルウ食品を調理し得るルウと、その製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、固形ルウの特徴である安定性と、ペースト状ルウの特徴である使い勝手のよさに着目し、両者の特徴を併わせ持つルウの研究開発を行った。その結果、低温域で固形状を呈し、物理的衝撃を受けることにより流動化する油脂を含むルウによれば、保存中には粉体原料の沈降を確実に防止できる固形状であり、ルウ食品の調理時には当該ルウを流動化させるだけで、溶解性の優れたペースト状又は液状に変化させて、熱水、特に低温域の水への溶解性の優れたルウが得られるという知見を得た。本発明は、この知見に基づいてなされたものであって、その要旨は、低温域で固形状を呈し、物理的衝撃を受けることにより流動化する油脂に、α化でん粉及び風味原料を分散させてなり、水分含量が3重量%以下であることを特徴とするルウである。
【0009】
また、本発明の別の要旨は、上記ルウに含まれる油脂として、グリセリンステアリン酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを、常温で液状の油脂に添加し、加熱処理してなるものを用いることを特徴とするルウである。
【0010】
また本発明は、上記ルウを製造する方法であって、グリセリンステアリン酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを常温で液状の油脂に添加して得られた混合物に、加熱処理を施し、前記混合物が固化する前に、前記混合物にα化澱粉及び風味原料を添加し、次いで冷却固化させることを特徴とするルウの製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のルウは、水を加えてルウ食品を調製するために用いる基材である。上記ルウ食品は、香辛料、調味料等の風味原料により調味された液状又はペースト状の食品であればよく、特に制限されない。上記ルウ食品を例示すると、カレー、シチュー又はパスタソース等のソース類、スープ類、あるいはこれらに類似する食品が例示される。
【0012】
本発明のルウの構成は、低温域で固形状を呈し、物理的衝撃を受けることにより流動化する油脂、α化でん粉、香辛料又は調味料等の風味原料を含み、水分含量が3重量%である。上記構成を有する本発明のルウは、低温域で固形状であり、積極的な加熱操作を行うことなく、物理的衝撃を受けることにより流動化し得るという性能を有する。そして、上記性能を有する本発明のルウは、次の効果を奏する。すなわち、低温域で保存中に固形状であることにより、従来の液状又はペースト状ルウに見られる粉体原料の沈降を防止し、油脂とα化でん粉等との分離のない、均一な状態を維持することができる。また、本発明のルウは流動化することにより、熱水、特に低温域の水への溶解性において固形ルウよりも優れ、加熱操作せずとも簡便にルウ食品を調製し得る。なお、本発明における低温域は、一般に冷蔵と称される温度域から常温と称される温度域であって、より具体的には、水の氷結点よりも高い温度から30℃以下、さらには5℃〜25℃が、低温域として好適である。
【0013】
本発明のルウの上記性状は、次の性質を示す油脂を含ませることによって達成される。その油脂とはすなわち、低温域で固形状であり、積極的に加熱操作を行うことなく、物理的衝撃を加えることによって流動化するという性質を有する油脂(以下、固形/流動油脂と略す)である。本発明では前記性質を有する油脂であればいずれも好適に使用できる。
【0014】
なお、本発明のルウに好適な固形/流動油脂は、次の方法により得られる。すなわち、常温で液状の油脂に、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びグリセリンステアリン酸エステルを混合し、加熱処理を施すことにより得られる。また、ルウの全量に対する油脂の量は、20重量%〜45重量%、さらには25重量%〜40重量%であることが好ましい。
【0015】
常温で液状の油脂は、常温、好適には10℃〜30℃、さらに好ましくは15℃〜25℃で液状を呈する食用可能な油脂であれば、特に制限されない。例えば、米油、菜種油、菜種白絞油、オリーブ油、ナッツ油、大豆油、ひまわり油、コーン油、サラダ油、パーム油等を用いればよい。
【0016】
プロピレングリコール脂肪酸エステルは、食品可能なものであればよく、その主脂肪酸の炭素数、HLB等は特に制限されない。例えば、プロピレングリコールモノベヒニン酸エステル、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノオレイン酸エステル等を用いればよい。また、プロピレングリコール脂肪酸エステルは、上記常温で液状の油脂の全量に対して5重量%〜15重量%、さらには7重量%〜12重量%添加することが好ましい。これにより、固形/流動油脂が物理的衝撃により流動化し易くなる。
【0017】
グリセリンステアリン酸エステルは、食品可能なものであればよく、常温で液状の油脂の全量に対して2重量%〜5重量%、さらには3重量%〜4重量%添加することが好ましい。これによって、固形/流動油脂が固形状である時に、その固形状の維持が容易となる。
【0018】
上記加熱処理の条件は、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びグリセリンステアリン酸エステルを、常温で液状の油脂に溶解させることができればよく、特に制限されない。本発明では、上記加熱処理を、60℃〜80℃、5〜30分間という条件で行うのが好ましい。この加熱処理を行うことによって、本発明での使用が好適な固形/流動油脂が得られる。
【0019】
本発明のルウに含まれる油脂は、固形/流動油脂に積極的に加熱操作を行うことなく、物理的衝撃を加えることにより流動化する。ここで、油脂の流動化とは、固形状から液状又はペースト状に変化することであり、本発明では流動化後のルウの粘度が、3000mPa・s以下、さらには1000mPa・s〜2000mPa・sになることが好ましい。なお、上記粘度は、次の方法により測定した。すなわち、流動化後のルウ(品温25℃)を、B型粘度計、ローターNo.2を使用し、回転数12rpmに設定して測定したものである(以下、粘度測定は同一の測定方法による)。
【0020】
上記物理的衝撃は、油脂を流動化させるに足る力を加えることである。その力としては、例えば以下が挙げられる。すなわち、スプーン、ミキサー等の攪拌手段によって加わる力、油脂を可撓性容器に充填し、容器ごと手で揉むことによって加わる力、あるいは上記油脂を充填した容器ごと振とうするか又は容器を落下させる等の方法により加わる力等である。
【0021】
本発明のルウは、α化でん粉を含む。α化でん粉を含むことにより、非α化でん粉を含むルウよりも、水への溶解性の優れたルウが得られる。α化でん粉としては、小麦粉でん粉、とうもろこしでん粉、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯でん粉等のでん粉にα化処理を施したものであればよく、特に制限されない。上記α化でん粉の量は、最終的に得られるルウ食品の食感に応じて任意に設定すればよく、特に制限されないが、本発明のルウ全量に対して、10重量%〜40重量%、さらには15重量%〜35重量%のα化でん粉を含むことが好ましい。
【0022】
本発明のルウは、風味原料を含む。風味原料は、ルウ食品の風味を調整するために配合される原料であり、粉体状の香辛料、調味料等が挙げられる。なお、本発明では、上記調味料の配合量は、最終的なルウの水分含量が3重量%以下に制限される。さらに好適には、水分含量が2重量%以下である。なぜなら、ルウ中の水分含量が3重量%を超える場合、ルウ中に含まれているα化でん粉が膨潤、糊化して、物理的衝撃により流動化したルウの粘度が高くなり、容器からのルウの取り出しが困難になるとともに、水への溶解性も低下し、簡便性が損なわれるからである。
【0023】
上記香辛料としては、コショウ、唐辛子等の辛味の強いものの他、コリアンダー、フェンネル、カルダモン、フェネグリーク、クミン、ジル、クローブ、キャラウェイ、ナツメグ、メース、アニス、セロリ、ローレル、タイム等の、芳香性の優れた、いわゆるハーブが挙げられ、所望の風味に応じて、これらのうちの1種を単独で、あるいは2種以上を併用して配合すればよい。
【0024】
また、調味料としては、脱脂粉乳、全脂粉乳、粉末発酵乳等の粉末乳原料、ショ糖、三温糖、グラニュー糖等の糖類、クエン酸、アスコルビン酸、フィチン酸、グルコン酸等の有機酸類又はこれらの塩、食塩、野菜粉末、ワイン粉末、濃縮ワイン粉末、ビーフエキス、ポークエキス等のエキス粉末、乳酸菌等の有用微生物、トコフェロール等の酸化防止剤等が挙げられる。なお、本発明では、ルウ中の水分含量が3重量%以下である限りにおいて、濃縮ワイン、トマト、ニンジン、キャベツ等の野菜又はリンゴ等の果実を磨砕したピューレ、液状又はプレーンヨーグルト、ウスターソース等の高水分含量の調味料を配合してもよい。
【0025】
以上の構成からなる本発明のルウは、固形状から液状又はペースト状に変化させて使用することが可能であり、低温域での保存中に分離せず、熱水、特に低温域の水への溶解性が高く、低温域での調理及び喫食も可能である。また、本発明のルウは、パウチ又はチューブなどの可撓性容器に充填密封し、ルウ製品とすることにより、積極的に加熱することなく手で揉むなどの簡単な操作を行うだけで、3000mPa・s以下、さらには1000mPa・s〜2000mPa・sの液状又はペースト状の物性となるので、使い勝手がよい。また、本発明のルウは、水分含量が3重量%以下と低いので、ルウの加熱殺菌条件を緩和するか、あるいはルウに加熱殺菌処理を施さずに常温流通させることができる。そして、上記緩和された条件で加熱殺菌したルウ、あるいは非殺菌のルウは、熱による香りの低減を防止できるため、このようなルウを用いれば、従来の加熱殺菌処理済みルウに比べて香りの優れたルウ食品を調理することができる。なお、上記ルウを製品として提供するにあたっては、別途、じゃがいも、ニンジン又は肉類等の具材を、パウチ、成型容器等に充填密封し、加熱殺菌処理して、容器入り具材として別添してもよい。
【0026】
次に、本発明のルウの好適な製造方法について説明する。その製造方法とは、固形/流動油脂に加熱処理を施し、当該油脂が冷却固化する前に、α化澱粉、風味原料を添加し、容器に充填密封し、次いで冷却固化させるというものである。以下、この製造方法について説明する。
【0027】
まず、上記固形/流動油脂を流動状とする。固形/流動油脂を流動化させる方法としては、当該油脂を加熱することが好ましい。特に、常温で液状の油脂に、グリセリンステアリン酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを添加し、加熱処理して得られた油脂を用いる場合には、上記加熱終了後冷却固化したものを物理的衝撃で流動化させると再固化しなくなる性質を有する。従って、次の二つのうちのいずれかの方法を採用することが好ましい。その方法とは、上記油脂を製造する際の加熱処理後、品温が高く流動性を有している時点でα化澱粉、風味原料を添加する方法と、一度固化した固形/流動油脂を加熱して流動化させる方法である。
【0028】
次に、上記流動状した固形/流動油脂に、α化でん粉及び風味原料を添加する。固形/流動油脂を加熱によって流動化させる場合は、上記固形/流動油脂が60℃以上、より好ましくは70℃〜100℃の時にα化でん粉及び風味原料を添加することが好ましい。α化でん粉及び風味原料を固形/流動油脂に添加した後、これを均一に混合し、次いで容器に充填密封し、低温域で固化させることにより、本発明のルウが得られる。なお、ルウに加熱殺菌処理を施す場合には、固形/流動油脂、α化でん粉及び風味原料の混合物を容器に充填密封する前、あるいは充填密封後に行えばよい。
【0029】
本発明のルウを用いてルウ食品を調理する方法としては、例えば以下が挙げられる。すなわち、可撓性容器入りの固形ルウに、容器ごと手で揉む等の物理的衝撃を加えて、上記ルウを液状又はペースト状にした後、このルウを低温域の水に添加し、均一に混合し、別途調理した具材を添加する方法である。この方法によれば、積極的に加熱操作を行うことなく、ルウに加水しかき混ぜるだけで簡単に低温域で喫食し得るルウ食品が得られる。なお、本発明のルウは、従来のルウと同様、ルウ食品を加熱調理する際に使用してもよいし、加熱調理後品温が高い状態で喫食してもよい。また、あるいは冷蔵庫内で一旦冷蔵してその品温を低温にしてから喫食してもよい。特に、本発明のルウを用いて調理したルウ食品は、低温域で喫食しても滑らかな食感を有するので、特に冷製ソース等に好適である。以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0030】
【実施例1】
菜種白絞油28重量部に、グリセリンステアリン酸エステル0.84重量部(油脂全量の3重量%)、及びプロピレングリコールステアリン酸エステル1.96重量部(油脂全量の7重量%)を添加し、これを均一に混合し、80℃、15分間の加熱処理を施し、固形/流動油脂30.8重量部を得た。次いで前記加熱処理後で、品温が70℃に低下した時点で、α化小麦粉25重量部、カレー粉9重量部、粉末状玉ねぎエキス2.1重量部、粉末状ビーフエキス1重量部、香辛料1重量部、食塩10重量部、砂糖9.5重量部、濃縮液状ワイン原料1.5重量部及びクエン酸0.1重量部を添加し、均一になるまで混合した。この混合物の水分含量は、1.7重量%であった。次いでこの混合物が流動性を有する状態(品温62℃)で、合成樹脂製のチューブ容器に充填密封した。その後、常温雰囲気で冷却し、チューブ入り固形のルウ(品温25℃)を得た。このチューブ入りルウを25℃の雰囲気で2ヶ月間保存し、その外観を見たところ、固形状を維持しており、しかも油脂と、α化でん粉等粉体原料との分離は発生しておらず、均一な状態であった。
【0031】
次いで、上記チューブ入りルウ90重量部を、容器ごと手で10回揉んで、容器内のルウを流動化させてペースト状とし、これをボールに移した。この時、ペースト状になったルウは上記チューブから手で容易に押し出され、しかも手を汚すことはなかった。この時の前記ペースト化ルウの粘度は、品温25℃で、1500mPa・sであった。次に、上記ボールに市水600重量部(20℃)を加水し、これを均一になるまでスプーンを用いて攪拌し、均一化した。次いで、別にあらかじめカットし、ボイルしておいた、牛肉100重量部、にんじん片40重量部、じゃがいも片40重量部、スライス玉ねぎ30重量部を加えて、冷製カレー900重量部を得た。この冷製カレーを150重量部ずつ、米飯100重量部にかけて食したところ、上記カレーは滑らかな舌触りを有するものであった。
【0032】
【実施例2】
実施例1で調製したチューブ入りルウ90重量部を、容器ごと手で10回揉んだ後、これを牛肉100重量部、にんじん片40重量部、じゃがいも片40重量部、スライス玉ねぎ30重量部とともに熱水600重量部中に添加し、20分間加熱調理した。ルウは、チューブを手で押すだけで容易に押し出すことができた。また押し出し時のルウを見たところ、油脂とα化でん粉等との分離はなく、均一な状態であった。次いで、加熱調理後のカレーを4℃の雰囲気で冷蔵し、冷製カレーを900重量部を得た。この冷製カレーを150重量部ずつ、米飯100重量部にかけて食したところ、上記カレーは滑らかな舌触りを有していた。
【0033】
【実施例3】
実施例1と同様にして得られた固形/流動油脂30.8重量部の品温が70℃に低下した時点で、上記油脂に、α化小麦粉25重量部、カレー粉10重量部、粉末状玉ねぎエキス2.1重量部、粉末状ビーフエキス1重量部、香辛料1重量部、食塩10重量部、砂糖10重量部、及び乳酸菌0.1重量部を添加して均一になるまで混合した。次いでこの混合物が流動性を有する状態(品温55℃)で、合成樹脂製のチューブ容器に充填密封し、常温雰囲気で冷却し、チューブ入り固形のルウ(品温25℃)を得た。このチューブ入りルウを25℃の雰囲気で1ヶ月間保存した後、その外観を見たところ、α化でん粉等の粉体原料と、油脂との分離は発生しておらず、均一な状態であった。
【0034】
次いで、上記チューブ入りルウ90重量部を、容器ごと手で10回揉んで、容器内のルウを流動化させてペースト状とし、これをボールに移した。この時、ペースト状になったルウは上記チューブから手で容易に押し出され、しかも手を汚すことはなかった。この時の前記ペースト化ルウの粘度は、品温25℃で、1500mPa・sであった。次に、上記ボールに市水600重量部(20℃)を加水し、これを均一になるまでスプーンを用いて攪拌し、均一化した。次いで、別にあらかじめカットし、ボイルしておいた、牛肉100重量部、にんじん片40重量部、じゃがいも片40重量部、スライス玉ねぎ30重量部を加えて、冷製カレー900重量部を得た。この冷製カレーを150重量部ずつ、米飯100重量部にかけて食したところ、上記カレーは滑らかな舌触りを有するものであった。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、保存中には固形状で調理時にはペースト状又は液状の、溶解性の優れたルウを提供することができる。従って、保存中における油脂と粉体原料との分離の発生を防止することができ、均一な状態を保持することができる。また、このルウは、単に手で揉む等の簡単な操作を行うだけで、特に加熱操作を行うことなく液状又はペースト状のルウとすることができる。従って、ルウを容器ごと手で揉みほぐし、これに加水し、積極的な加熱操作を行うことなく混合し、必要により具材を加えるだけで、低温域で喫食可能なルウ食品を手軽に調製することができる。なお、本発明のルウは、従来法と同様に、ルウ食品の加熱調理に用いてもよい。
Claims (3)
- グリセリンステアリン酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを常温で液状の油脂に添加し、加熱処理してなる油脂に、α化でん粉及び風味原料を分散させてなり、水分含量が3重量%以下であることを特徴とするルウ。
- グリセリンステアリン酸エステルの添加量が常温で液状の油脂の全量に対して2重量%〜5重量%で、プロピレングリコール脂肪酸エステルの添加量が常温で液状の油脂の全量に対して5重量%〜15重量%であることを特徴とする請求項1に記載のルウ。
- グリセリンステアリン酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを、常温で液状の油脂に添加して得られた混合物に、加熱処理を施し、前記混合物が固化する前に前記混合物にα化澱粉及び風味原料を添加し、次いで冷却固化させることを特徴とするルウの製造方法。
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