JP3577224B2 - フッ化水素ストロンチウムの製造方法 - Google Patents

フッ化水素ストロンチウムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ化水素ストロンチウム、特に、酸化物不純物の少ない高純度のフッ化水素ストロンチウムの製造方法、更に詳細には光ファイバ増幅器用の低損失フッ化物光ファイバ組成の高純度原料としてのフッ化水素ストロンチウムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ化ストロンチウム(SrF )は、光ファイバ増幅器のもとになるInF 系フッ化物光ファイバにおいて、フッ化インジウムを主成分とするInF 系フ ッ化物ガラスまたはフッ化物ガラスファイバの構成原料の一つである。構成原料 の全ての金属フッ化物に対しては、光ファイバの散乱損失の増加原因の酸化物不 純物を出来るかぎり低減することが求められている。
【0003】
従来のフッ化ストロンチウムの製造方法(以下、第一の従来法ともいう)では、フッ化ストロンチウムは以下の(1)式および(2)式の反応でSrF として製造されている。
【0004】
SrCO +2HFaq→SrF ・H O+CO ↑ (1)
SrF ・H O→SrF +H O (2)
すなわち、従来法では、炭酸ストロンチウム(SrCO )を少量ずつ過剰量のフッ化水素酸(HFaq)に入れ、得られた沈殿をデカンテーションにより水洗浄し、蒸発乾固させる。その後、脱水を完全にするために150℃で真空脱気する。
【0005】
もう一つの従来の方法(以下、第二の従来法ともいう)としては、(3)式の反応によるストロンチウム塩の硝酸ストロンチウム:Sr(NO とフッ化アルカリのフッ化ナトリウム(NaF)でSrF を製造する方法がある。
【0006】
Sr(NO +2NaF→SrF +2NaNO (3)
すなわち、Sr(NO を出発物質とし、NaFと混合後、第一段階は、150〜200℃の低温で徐々に加熱し、水の大部分を消失させ、第二段階は、約600℃で焼成し、SrF を製造する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記第一の従来法によるSrF の製造方法については(1)式で製作したSrF ・H Oを150℃で真空脱水する時に、水分が酸化物を生成し、酸化物の少ない高純度のSrF が生成できないことが欠点である。さらに、従来法においては、使用したSrCO 粉末を少量ずつフッ化水素酸溶液に入れても生成後のSrF 中にCO 不純物を含むために、該SrF を使用したフッ化物光ファイバの損失スペクトルにCO の存在による吸収損失が生じることが欠点である。また、上記第二の従来法の欠点はSr(NO の固体とNaFの固体との固相反応であり、生成物のSrF の収率が低いことと、(3)式には記載していないが、反応過程で環境汚染物質のNO,NO が発生し、焼成装置内にNO,NO を除去する装置を付加しなければならないなどの欠点が挙げられる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、光ファイバ増幅器用のフッ化物光ファイバ作製のための、酸化物不純物の少ない高純度フッ化水素ストロンチウム(SrF2・(3/2)HF)の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のフッ化水素ストロンチウムの製造方法は、ストロンチウムを含む固体を該固体中のストロンチウム重量に対して過剰量のフッ化水素酸水溶液と混合する工程と、前記混合液を室温で少なくとも50時間撹拌して沈殿物を析出させる工程と、析出した沈殿物を脱水および真空乾燥処理してSrF2 ・(3/2)HFで表されるフッ化水素ストロンチウムを得る工程と、を有することを特徴とする方法である。
【0010】
上記の方法で得られたフッ化水素ストロンチウムは、InF系フッ化物ガラスファイバを用いた光増幅器の出発物質として用いることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、従来技術の炭酸ストロンチウムをフッ化水素酸水溶液に少量ずつ添加し、得られた沈殿をデカンテーション後、水洗、蒸発乾固し、150℃で真空乾燥し、フッ化ストロンチウム(SrF2 )を製造する方法およびストロンチウムの塩の硝酸ストロンチウムにフッ化ナトリウム(NaF)を添加後、加熱溶融し、約600℃で焼成し、フッ化ストロンチウムを製造する方法などの問題点を解決するために、ストロンチウムを含む固体をストロンチウム重量に対して過剰量のフッ化水素酸中で一定時間、攪拌し、沈殿物を析出させ、該沈殿物を脱水、乾燥処理し、酸化物の少ない高純度のフッ化水素ストロンチウムを製造するものである。
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明において出発物質として使用するストロンチウムの塩はフッ化ストロンチウム(SrF2 )、炭酸ストロンチウム(SrCO3 )であるが、用途上、高純度のフッ化ストロンチウム、炭酸ストロンチウムなどが有用である。高純度の程度は、3N以上が好ましい。また、ストロンチウムの塩の形状には制限されるものではない。すなわち、粉末状、顆粒状であれば何でも良い。
【0013】
次に、本発明において、フッ化水素酸溶液によるフッ素化は特殊な条件を必要とせず、出発物質のフッ化ストロンチウム(SrF2 )あるいは炭酸ストロンチウム(SrCO3 )の固体をストロンチウム重量に対して、過剰量のフッ化水素酸溶液と反応させれば良い。すなわち、フッ化ストロンチウム(SrF2 )、炭酸ストロンチウム(SrCO3 )などの固体を少量つフッ化水素酸溶液内に入れ、攪拌し、発生した白色の沈殿物を脱水、乾燥すればフッ化水素ストロンチウムを製造することができる。
【0014】
次に、脱水も常用の方法でよく、操作上、吸引ろ過又は遠心分離器が好適である。
【0015】
最後に、乾燥についても常用の方法でよく、操作上、真空乾燥又は不活性ガス雰囲気での乾燥が好適である。
【0016】
以上、具体的に説明したように、本発明方法において、特に、酸化物の少ない高純度のフッ化水素ストロンチウムを製造する方法の場合には、従来技術の炭酸ストロンチウム粉末を出発物質とし、フッ化水素酸と反応させ、フッ化ストロンチウムとする方法とは、炭酸ストロンチウムと反応させるフッ化水素酸の容量が異なり、また、反応後の脱水、焼成温度と生成物のフッ化水素ストロンチウムが異なる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0018】
参考例1]図1は、フッ化水素ストロンチウムの製造方法の一参考例を説明するためのフローチャートである。この参考例では、硝酸ストロンチウム:Sr(NO32 を出発物質とする高純度フッ化水素ストロンチウムの製造方法について説明する。形状が粉末状の市販特級試薬の硝酸ストロンチウム0.1モル(21.1g)を秤量後、500mlのビーカに入れ、純水100mlに溶解する。溶解後の水溶液は無色であり、無色の溶液を孔径0.2ミクロンのメンブランフィルタを通した後、50%濃度の電子工業用のフッ化水素酸溶液120ml内に入れ、スターラで8時間、攪拌する。攪拌後に生成した沈殿物は、遠心分離し、溶液と分離させ、遠心分離後の固形物はフッ化水素酸100ml、純水100mlの(1:1)のフッ化水素酸溶液で1時間洗浄し、再度、遠心分離を行い、固形物とした後、真空乾燥する。
【0019】
図2は、真空乾燥後の固形物のTG(熱重量分析)−DTA(示差熱分析)曲線である。図中、横軸は温度(℃)、左縦軸はTGにおける重量減少率(%)、さらに右縦軸はDTAにおける熱容量(μV)を意味する。この図から明らかなように、145℃付近にフッ化水素(HF)の脱離による吸熱ピークが観察された。また、TGの重量減少率は13.7%であり、この値は、SrF ・HFから、HFが脱離する時の重量減少率と同じであり、作製したSrF にはHFが1個、結合していることがわかる。
【0020】
図3は、真空乾燥後の固形物の赤外吸収スペクトル(IR)である。図中の縦軸は透過率(%)、横軸は波数(cm−1)を示す。参考スペクトルとしてフッ化水素バリウム(BaF ・HF)も示した。(1)はフッ化水素ストロンチウム(SrF ・HF)、(2)はフッ化水素バリウム(BaF ・HF)を示す。
【0021】
真空乾燥後の固形物のIRスペクトルは、フッ化水素バリウム(BaF ・HF)のIRスペクトル[文献:小林健二、「フッ化物系光ファイバー用高純度BaHF の作製」日本化学会誌,478(1995).]に示された−HF の吸収領域の〜1600cm−1および1200cm−1近傍に吸収スペクトルを示 している。
【0022】
図4は、真空乾燥後の固形物のX線解析(XRD)の結果を示すチャートであって、(1)はフッ化水素ストロンチウム(SrF ・HF)、(2)はフッ化ストロンチウム(SrF )、さらに(3)はフッ化水素バリウム(BaF ・HF)を試料とした場合を示す。図中の縦軸は、回折強度比(I/I )、横軸は、回折角(2θ)を示す。また、(2)および(3)に示すデータは、参考データとしての市販品純度99.9%のSrF の粉末のX線回折結果およびX線回折のフッ化水素バリウム(BaF ・HF)のX線回折結果である。
【0023】
参考例で製造した固形物のX線回折データは、市販品純度99.9%のSrF2 の粉末のX線回折結果と明らかに異なっている。また、本参考例で製造した固形物のX線回折データは、フッ化水素バリウム(BaF2 ・HF)のデータに似ている。すなわち、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)及び熱分析(TG−DTA)などの解析結果より、本参考例で製造した固形物は、フッ化水素ストロンチウム(SrF2 ・HF)であり、反応式(4)によって製造できる。
【0024】
Sr2++2NO3 - +3HF→SrF2 ・HF+2HNO3 (4)
また、製造したSrF2 ・HFおよび市販のSrF2 (純度99.9%)についての酸素の放射化分析を行い、SrF2 ・HFを用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度が10ppmであるのに対し、市販のSrF2 (純度99.9%)を用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度は15ppmであり、酸素不純物濃度、すなわち、本参考例により、酸化物の少ない高純度のフッ化ストロンチウム原料が作製できていることがわかった。なお、本参考例における高純度のSrF2 ・HFの収率は85%である。
【0025】
参考例で作製したSrF2 ・HFを組成としたInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 ・HF−PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバを作製したところ、波長が1.3ミクロンにおいて損失値10dB/kmのファイバが作製できた。これは、従来品のInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 −PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバの波長が1.3ミクロンにおいて損失値50dB/kmのファイバであるのに対し、大幅な損失の低減が達成できた。
【0026】
参考例2]図5は、フッ化水素ストロンチウムの製造方法の第2の参考例を説明するためのフローチャートである。ここでは、塩化ストロンチウム六水和物:SrCl2 ・6H2 Oを出発物質とする高純度フッ化水素ストロンチウムの製造方法について説明する。市販品のSrCl2 ・6H2 O 0.1モル(26.6g)を秤量後、500mlのビーカに入れ、純水100mlに溶解する。溶解後の水溶液は無色であり、水溶液を孔径0.2ミクロンのメンブランフィルタでろ過し、ゴミを除去した後、50%濃度の電子工業用のフッ化水素酸溶液140ml内に入れ、スターラで8時間、攪拌する。攪拌後に生成した沈殿物は、遠心分離し、溶液と分離させ、遠心分離後の固形物はフッ化水素酸100ml、純水100mlの(1:1)のフッ化水素酸溶液で1時間洗浄し、再度、遠心分離を行い、固形物とした後、真空乾燥する。真空乾燥後の固形物のTG(熱重量分析)−DTA(示差熱分析)曲線、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)の結果は、図2,図3,図4の結果に同じであり、熱分析(TG−DTA)、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)での解析結果により、作製した物質は、フッ化水素ストロンチウム(SrF2 ・HF)であり、反応式(5)によって製造できる。
【0027】
Sr2++2Cl- +3HF→SrF2 ・HF+2HCl (5)
また、作製したSrF2 ・HFおよび市販のSrF2 (純度99.9%)について酸素の放射化分析を行い、SrF2 ・HFを用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度が10ppmであるのに対し、市販のSrF2 (純度99.9%)を用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度は15ppmであり、酸素不純物濃度、すなわち、酸化物の少ない高純度のフッ化ストロンチウム原料が作製できた。なお、本参考例における高純度のSrF2 ・HFの収率は85%である。
【0028】
参考例で作製したSrF2 ・HFを組成としたInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 ・HF−PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバを作製したところ、波長が1.3ミクロンにおいて損失値10dB/kmのファイバが作製できた。これは、従来品のInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 −PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバの波長が1.3ミクロンにおいて損失値50dB/kmのファイバであるのに対し、大幅な損失の減少が達成できた。
【0029】
参考例3]図6は、フッ化水素ストロンチウムの製造方法の第3の参考例を説明するためのフローチャートである。ここでは、水酸化ストロンチウム:Sr(OH)2 ・8H2 Oを出発物質とする高純度フッ化水素ストロンチウムの製造方法について説明する。水和物であるSr(OH)2 ・8H2 Oの0.1モル(26.6g)を秤量後、500mlのビーカに入れ、純水100mlに溶解する。溶解後の水溶液は無色であり、溶液を孔径0.2ミクロンのメンブランフィルタでろ過した後、50%濃度の電子工業用のフッ化水素酸溶液160ml内に入れ、スターラで8時間、攪拌する。攪拌後に生成した沈殿物は、遠心分離し、溶液と分離させ、遠心分離後の固形物はフッ化水素酸50ml、純水150mlの(1:3)のフッ化水素酸溶液で1時間洗浄し、再度、遠心分離を行い、固形物とした後、真空乾燥する。真空乾燥後の固形物のTG(熱重量分析)−DTA(示差熱分析)曲線、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)の結果は、図2,図3,図4の結果に同じであり、熱分析(TG−DTA)、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)での解析結果により、作製した物質は、フッ化水素ストロンチウム(SrF2 ・HF)であり、反応式(6)によって製造できる。
【0030】
Sr2++2OH- +3HF→SrF2 ・HF+2H2 O (6)
また、作製したSrF2 ・HFおよび市販のSrF2 (純度99.9%)について酸素の放射化分析を行い、SrF2 ・HFを用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度が10ppmであるのに対し、市販のSrF2 (純度99.9%)を用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度は15ppmであり、酸素不純物濃度、すなわち、酸化物の少ない高純度のフッ化水素ストロンチウム原料が作製できた。なお、本参考例における高純度のSrF2 ・HFの収率は85%である。
【0031】
参考例で作製したSrF2 ・HFを組成としたInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 ・HF−PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバを作製したところ、波長が1.3ミクロンにおいて損失値10dB/kmのファイバが作製できた。これは、従来品のInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 −PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバの波長が1.3ミクロンにおいて損失値50dB/kmのファイバであるのに対し、大幅な損失の減少が達成できた。
【0032】
参考例4]図7は、フッ化水素ストロンチウムの製造方法の第4の参考例を説明するためのフローチャートである。ここでは、シュウ酸ストロンチウム:SrC24 ・H2 Oを出発物質とする高純度フッ化水素ストロンチウムの製造方法について説明する。SrC24 ・H2 Oの0.1モル(19.4g)を秤量後、500mlのビーカに入れ、純水100mlに溶解する。溶解後の水溶液は無色であり、溶液を孔径0.2ミクロンのメンブランフィルタでろ過した後、50%濃度の電子工業用のフッ化水素酸溶液180ml内に入れ、スターラで8時間、攪拌する。攪拌後に生成した沈殿物は、遠心分離し、溶液と分離させ、遠心分離後の固形物はフッ化水素酸50ml、純水150mlの(1:3)のフッ化水素酸溶液で1時間洗浄し、再度、遠心分離を行い、固形物とした後、真空乾燥する。真空乾燥後の固形物のTG(熱重量分析)−DTA(示差熱分析)曲線、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)の結果は、図2,図3,図4の結果に同じであり、熱分析(TG−DTA)、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)での解析結果により、作製した物質は、フッ化水素ストロンチウム(SrF2 ・HF)であり、反応式(7)によって製造できる。
【0033】
Sr2++C24 2- +3HF→SrF2 ・HF+2CO2 +H2 ↑ (7)
また、作製したSrF2 ・HFおよび市販のSrF2 (純度99.9%)についての酸素の放射化分析を行い、SrF2 ・HFを用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度が10ppmであるのに対し、市販のSrF2 (純度99.9%)を用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度は15ppmであり、酸素不純物濃度、すなわち、酸化物の少ない高純度のフッ化水素ストロンチウム原料が作製できた。なお、本参考例における高純度のSrF2 ・HFの収率は85%である。
【0034】
参考例で作製したSrF2 ・HFを組成としたInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 ・HF−PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバを作製したところ、波長が1.3ミクロンにおいて損失値10dB/kmのファイバが作製できた。これは、従来品のInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 −PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバの波長が1.3ミクロンにおいて損失値50dB/kmのファイバであるのに対し、大幅な損失の減少が達成できた。
【0035】
参考例5]図8は、フッ化水素ストロンチウムの製造方法の第5の参考例を説明するためのフローチャートである。ここでは、ギ酸ストロンチウム二水和物:Sr(COOH)2 ・2H2 Oを出発物質とする高純度フッ化水素ストロンチウムの製造方法について説明する。Sr(COOH)2 ・2H2 Oの0.1モル(21.4g)を秤量後、500mlのビーカに入れ、純水100mlに溶解する。溶解後の水溶液は無色であり、溶液を孔径0.2ミクロンのメンブランフィルタでろ過した後、水溶液を50%濃度の電子工業用のフッ化水素酸溶液200ml内に入れ、スターラで8時間、攪拌する。攪拌後に生成した沈殿物は、遠心分離し、溶液と分離させ、遠心分離後の固形物はフッ化水素酸50ml、純水150mlの(1:3)のフッ化水素酸溶液で1時間洗浄し、再度、遠心分離を行い、固形物とした後、不活性ガスの窒素雰囲気で乾燥する。乾燥後の固形物のTG(熱重量分析)−DTA(示差熱分析)曲線、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)の結果は、図2,図3,図4の結果に同じであり、熱分析(TG−DTA)、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)での解析結果より、作製した物質は、フッ化水素ストロンチウム(SrF2 ・HF)で、反応式(8)によって製造できる。
【0036】
Sr2++2COOH +3HF→SrF ・HF+2HCOOH(8)
また、作製したSrF ・HFおよび市販のSrF (純度99.9%)について酸素の放射化分析を行い、SrF ・HFを用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度が10ppmであるのに対し、市販のSrF (純度99.9%)を用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度は15ppmであり、酸素不純物濃度、すなわち、酸化物の少ない高純度のフッ化水素ストロンチウム原料が作製できた。
【0037】
参考例で作製したSrF2 ・HFを組成としたInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 ・HF−PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバを作製したところ、波長が1.3ミクロンにおいて損失値10dB/kmのファイバが作製できた。これは、従来品のInF3 系フッ化物ガラスファイバ(InF3 −BaF2 −SrF2 −PbF2 −ZnF2 を組成とするガラス)のシングルモードファイバの波長が1.3ミクロンにおいて損失値50dB/kmのファイバであるのに対し、大幅な損失の減少が達成できた。
【0038】
[実施例]図9は、本発明にもとづくフッ化水素ストロンチウムの製造方法の第の実施例を説明するためのフローチャートである。ここでは、フッ化ストロンチウム(SrF2 )を出発物質とする高純度フッ化水素ストロンチウムの製造方法について説明する。純度99.9%のSrF2 の0.1モル(12.6g)を秤量後、50%濃度の電子工業用のフッ化水素酸溶液500mlの入ったテフロン(登録商標)ビーカに入れ、スターラで50時間、攪拌する。攪拌後に生成した生成物は、遠心分離し、溶液と生成物を分離させた後、真空乾燥する。
【0039】
図10は、真空乾燥後の固形物のTG(熱重量分析)−DTA(示差熱分析)曲線であり、なお、図10において、横軸は温度(℃)、左縦軸はTGにおける重量減少率(%)、右縦軸はDTAにおける熱容量(μV)を意味する。図10から、151℃付近にフッ化水素(HF)の脱離による吸熱ピークが観察された。TG(熱重量分析)の重量減少率(%)は、19.3%であり、この値はSrF ・(3/2)HFから(3/2)HFが脱離する割合に相当し、作製したSrF には(3/2)個のHFが結合していることがわかった。また、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)の結果は、図3,図4の結果に同じである。熱分析、IR、XRDの結果より、本実施例で作製した固形物は、フッ化水素ストロンチウム(SrF ・(3/2)HF)であり、反応式(9)によって製造できる。
【0040】
SrF +(3/2)HF→SrF ・(3/2)HF (9)
また、作製したSrF ・HFおよび市販のSrF (純度99.9%)について酸素の放射化分析を行い、SrF ・(3/2)HFを用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度が10ppmであるのに対し、市販のSrF (純度99.9%)を用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度は15ppmであり、酸素不純物濃度、すなわち、酸化物の少ない高純度のフッ化ストロンチウム原料が作製できた。なお、本実施例における高純度のSrF ・(3/2)HFの収率は85%である。本実施例で作製したSrF ・(3/2)HFを組成としたInF 系フッ化物ガラスファイバ(InF −BaF −SrF ・(3/2)HF−PbF −ZnF を組成とするガラス)のシングルモードファイバを作製したところ、波長が1.3ミクロンにおいて損失値10dB/kmのファイバが作製できた。これは、従来品のInF 系フッ化物ガラスファイバ(InF −BaF −SrF −PbF −ZnF を組成とするガラス)のシングルモードファイバの波長が1.3ミクロンにおいて損失値50dB/kmのファイバであるのに対し、大幅な損失の減少が達成できた。
【0041】
[実施例]図11は、本発明にもとづくフッ化水素ストロンチウムの製造方法の第の実施例を説明するためのフローチャートである。ここでは、炭酸ストロンチウム:SrCO3 を出発物質とする高純度フッ化水素ストロンチウムの製造方法について説明する。SrCO3 の0.1モル(14.8g)を秤量後、50%濃度の電子工業用のフッ化水素酸溶液500ml内に入れ、スターラで50時間、攪拌する。攪拌後に生成した沈殿物は、遠心分離し、固形物と溶液を分離させ、遠心分離後の固形物は真空乾燥する。
【0042】
真空乾燥後の固形物のTG(熱重量分析)−DTA(示差熱分析)曲線は、図10と同じである。また、真空乾燥後の固形物の赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)の結果は、図3,図4の結果に同じであり、熱分析(TG−DTA)、赤外吸収スペクトル(IR)、X線回折(XRD)での解析結果より、真空乾燥後の固形物は、SrF ・(3/2)HFであり、反応式(10)によって製造できる。
【0043】
SrCO+4HF →SrF・(3/2)HF+HO+CO+(1/2)HF (10)
また、作製したSrF ・(3/2)HFおよび市販のSrF (純度99.9%)について,酸素の放射化分析を行い、SrF ・(3/2)HFを用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度が10ppmであるのに対し、市販のSrF (純度99.9%)を用いたフッ化物ガラス中の酸素濃度は15ppmであり、酸素不純物濃度、すなわち、酸化物の少ない高純度のフッ化ストロンチウム原料が作製できた。
【0044】
本実施例で作製したSrF ・(3/2)HFを組成としたInF 系フッ化物ガラスファイバ(InF −BaF −SrF ・(3/2)HF−PbF −ZnF を組成とするガラス)のシングルモードファイバを作製したところ、波長が1.3ミクロンにおいて損失値10dB/kmのファイバが作製できた。これは、従来品のInF 系フッ化物ガラスファイバ(InF −BaF −SrF −PbF −ZnF を組成とするガラス)のシングルモードファイバの波長が1.3ミクロンにおいて損失値50dB/kmのファイバであるのに対し、大幅な損失の減少が達成できた。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にもとづくフッ化水素ストロンチウムの製造方法によれば、酸化物不純物の少ない高純度のフッ化水素ストロンチウムが作製できる。特に、従来の炭酸ストロンチウム(SrCO3 )を少量ずつフッ化水素酸溶液内に入れ、150℃で真空乾燥し、SrF2を作製する製造法については、脱水時に酸化物を生成する欠点がある。本発明の製造方法は、ストロンチウムを含む固体をフッ化水素酸溶液内で攪拌し、フッ化水素ストロンチウム(SrF 2 ・(3/2)HF)を極めて簡便に製造する方法であるから、酸素不純物を低減した高純度のフッ化水素ストロンチウムを製造することができる。さらに、これをInF3 系フッ化物ガラスファイバを用いた光増幅器の出発物質として用いることにより、低損失で増幅度の高い光ファイバアンプを製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例1における高純度のフッ化水素ストロンチウムの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の参考例1により作製した高純度のフッ化水素ストロンチウムのTG−DTA曲線を示すグラフである。
【図3】本発明の参考例1における高純度のフッ化水素ストロンチウムの赤外吸収スペクトル(IR)を示すグラフであって、(1)はフッ化水素ストロンチウム(SrF2 ・HF)、(2)はフッ化水素バリウム(BaF2 ・HF)を示す。
【図4】本発明の参考例1における高純度のフッ化水素ストロンチウムのX線回折(XRD)の結果を示すグラフであって、(1)は真空乾燥後の固形物、(2)は市販品のSrF2 、(3)はBaF2 ・HFを示す。
【図5】本発明の参考例2における高純度のフッ化水素ストロンチウムの製造方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の参考例3により作製した高純度のフッ化水素ストロンチウムの製造方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の参考例4における高純度のフッ化水素ストロンチウムの製造方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の参考例5における高純度のフッ化水素ストロンチウムの製造方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例における高純度のフッ化水素ストロンチウムの製造方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例で作製した高純度のフッ化水素ストロンチウム(SrF2 ・(3/2)HF)のTG−DTA曲線を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例における高純度のフッ化水素ストロンチウムの製造方法を示すフローチャートである。

Claims (3)

  1. ストロンチウムを含む固体を該固体中のストロンチウム重量に対して過剰量のフッ化水素酸水溶液と混合する工程と、
    前記混合液を室温で少なくとも50時間撹拌して沈殿物を析出させる工程と、
    析出した沈殿物を脱水および真空乾燥処理してSrF2 ・(3/2)HFで表されるフッ化水素ストロンチウムを得る工程と、
    を有することを特徴とするフッ化水素ストロンチウムの製造方法。
  2. 前記沈殿物の脱水処理に続いて、該沈殿物をフッ化水素酸水溶液で洗浄する工程をさらに含む請求項に記載のフッ化水素ストロンチウムの製造方法。
  3. 前記沈殿物の真空乾燥処理をHFの脱離開始温度より低い温度で行う請求項に記載のフッ化水素ストロンチウムの製造方法。
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