JP3575287B2 - 溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件の設定方法及び溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炉を備える連続ストリップ処理ラインにおいて、炉の上流側に設置された先行ストリップと後行ストリップの溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件の設定方法及び溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続ストリップ処理ラインでは、鋼帯コイルを巻き戻してライン内に通板し、ルーパー等の装置によりライン中央部を停止せずに先行ストリップ後端と後行ストリップ先端を重ね合わせて、ナローラップシーム溶接により接続し、連続的に通板している。
【0003】
連続ストリップ処理ラインにおいて、溶接が不適切に行われた場合、溶接部がライン内で破断することがあり、破断した場合は復旧に多大の時間を要しラインの稼働率の低下を招く。特に、連続焼鈍ライン、連続溶融亜鉛めっきライン等のライン内に炉を備える連続ストリップ処理ラインでは、炉内で繰返し曲げを受けるため溶接破断しやすく、また破断した場合の稼働率低下が著しく大きくなる。したがって、炉を備える連続ストリップ処理ラインでは、溶接破断を防止する技術が極めて重要である。
【0004】
溶接破断を防止するには、溶接良否を確実に判断でき、それに応じて適切な溶接条件を設定できることが必要である。
【0005】
連続ストリップ処理ラインにおいて、溶接温度を管理して溶接良否を判断する技術が多数提案されている(特開平6−294706号公報、特開平7−195179号公報、特開平8−90250号公報等)。
【0006】
しかし、前記公報には、管理する溶接温度の基になる溶接そのものの良否の判定方法については明確にされていない。炉を備える連続ラインでは、炉内で高温下の繰返し曲げを受けるため、これに耐えるだけの強度を実現できる溶接温度範囲を明確にできることが不可欠である。この点を明確にできなければ、溶接温度を管理しても、溶接良否の判定自体が信頼性に劣り、溶接良否を判断するという本来の目的を達成できなくなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、連続ストリップ処理ラインにおいて溶接温度を管理して溶接良否を判断する技術が多数提案されているが、現時点では炉を備える連続ストリップ処理ラインの溶接良否を確実に判断できる溶接評価方法は見出されていない。そのため、炉を備える連続ストリップ処理ラインにおいて溶接温度を管理して溶接良否を判断しても、溶接良否の判定自体が信頼性に劣るため、溶接破断を確実に防止することができない。
【0008】
本発明は、前記事情を考慮して、炉を備える連続ストリップ処理ラインにおいて、溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件を設定するにあたって、溶接温度に基いて溶接良否を確実に判断できるようにして、必要な溶接強度が得られる溶接温度範囲内になるように溶接条件を設定して、溶接破断を確実に防止できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の手段は、以下のとおりである。
【0010】
(1)炉を備える連続ストリップ処理ラインにおいて炉の上流側に設置された先行ストリップと後行ストリップの溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件を設定するにあたって、溶接温度が下式で定義されるナゲット比が40〜60%の範囲内になる温度に溶接条件を設定することを特徴とする溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件の設定方法。
但し、
ナゲット比=Ln/L
L:溶接部の接合面長さ、Ln:接合面におけるナゲット長さ
【0011】
(2)前記(1)において、ナゲット比が40〜60%の範囲内になる溶接温度を鋼帯板厚に基いて決定することを特徴とする溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件の設定方法。
(3)前記(1)または(2)の方法で溶接条件を設定して溶接し、溶接後の溶接温度を検出し、検出した溶接温度があらかじめ設定した溶接温度範囲を外れた時は、再溶接作業を行うことを特徴とする溶接方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
【0013】
ナローラップシーム溶接では、溶接する先行ストリップ後端と後行ストリップ先端を重ねておき、ストリップ幅方向に回転走行する円板電極で加圧・通電して溶接する。溶接後、図1に示すように、先行ストリップ1aと後行ストリップ1bの接合面2が斜め方向になり、接合面2にナゲット(溶融凝固部)3が形成される。
【0014】
本発明者らは、連続焼鈍ラインにおいて鋼帯の溶接良否の評価方法について種々検討した。その結果、連続焼鈍ラインにおける溶接良否の評価方法としては、溶接部に形成されるナゲット程度による評価が最適であることが判った。すなわち、溶接部の接合面2の長さをL、接合面2におけるナゲット長さをLnとし、ナゲット比=Ln/Lで定義した場合、ナゲット比が40%未満ではヒート不足になり溶接部強度が不十分になり、またナゲット比が60%超えでは溶接部がオーバーヒートになり炉内における高温下の繰返し曲げにより溶接部の材質が劣化して強度不足になり、何れの場合にも溶接破断が発生しやすくなり、ナゲット比が40〜60%の範囲内にあると、連続焼鈍ラインの焼鈍炉における溶接破断を確実に防止できることが判った。
【0015】
さらに、成分組成と板厚の異なる種々の鋼帯についてナゲット比と溶接温度の関係を調査したところ、ナゲット比が40〜60%の範囲内になる溶接温度は、鋼帯板厚に応じて変化するものの、鋼成分の影響を受けないことが明らかになった。
【0016】
図2に、鋼帯板厚とナゲット比が40〜60%になる溶接温度範囲の関係を示す。点線(1)と点線(2)に挟まれる領域がナゲット比が40〜60%になる温度範囲である。図2中に中低炭素鋼(C:0.015〜0.025wt%程度)、極低炭素鋼(C:0.005wt%以下)のナゲット比のデータを記載した。いずれの鋼についても、ナゲット比が40〜60%の範囲内になる溶接温度は、点線(1)と点線(2)に挟まれる領域内にある。この領域は板厚の厚い方が広く、板厚が薄くなる程狭くなっているが、鋼成分の影響を受けず、ハイテン材に使用する高炭素系鋼の場合も同様の領域にある。
【0017】
なお、板厚が薄くなるとナゲット比が40〜60%になる温度範囲が狭くなるのは、板厚が薄い場合、溶け込み量の容量が小さくなるため、板厚が厚い場合に比べて、少量の温度上昇で前記容量を越えオーバーヒートになりやすくなるためと考えられる。
【0018】
そこで、予め異なる種々の板厚の鋼帯について、ナゲット比が40〜60%の範囲内になる点線(1)と点線(2)に挟まれる溶接温度を求めておき、溶接温度が点線(1)と点線(2)に挟まれる領域の温度範囲内になるように溶接条件を設定すると、連続焼鈍ライン等の炉を備える連続ストリップ処理ラインにおいて必要な溶接強度を確保できる良好な溶接を行うことができる。
【0019】
また、ナゲット比が40〜60%の範囲内になる溶接温度(y)と板厚(t)の関係を予め、関係式y=f(t)として求めておき、あるいは両者の関係をテーブル化しておき、前記関係をもとに板厚(t)に基いて目標溶接温度を設定し、溶接温度(y)が前記目標溶接温度になるように溶接条件を設定すると、本発明が意図する溶接を安定して行う上でより有利である。
【0020】
前記溶接温度(y)と板厚(t)の関係式は、例えば、図2の実線(3)に示されるように、溶接温度(y)と板厚(t)の関係を対数で近似した式:y=c×ln(t)+dで表し、ナゲット比が40〜60%の範囲内にある板厚(t)と溶接温度(y)の操業データから実験的に係数c、dを求めて、得ることができる。
【0021】
また、図2において、例えば、板厚1.0mmの鋼帯を溶接する場合、溶接温度がyU〜yLの範囲内になるように溶接条件を設定すれば、溶接部のナゲット比が40〜60%の範囲内になり、連続焼鈍ラインにおいて、溶接破断を確実に防止できる。また、溶接温度がyAになるように溶接条件を設定すると、より安定した溶接を行うことができる。
【0022】
また、前記に説明した関係は、鋼成分組成の影響を受けないので、新規な成分組成の鋼帯を溶接する必要が起こった場合、溶接温度が予め求められている点線(1)と点線(2)に囲まれる領域の温度になるように溶接条件を設定し、あるいは予め求められている板厚(t)と溶接温度(y)の関係(例えば、図2の実線(3)等)に基いて目標溶接温度を設定し、溶接温度がこの温度になるように溶接条件を設定することによって、良好な溶接か可能になり、溶接破断を防止できる。
【0023】
また、前記によれば、新規な成分組成の鋼帯に対して、鋼成分毎に溶接温度管理をする必要がなくなるので、溶接作業を単純化できる。
【0024】
【実施例】
連続焼鈍ラインにおいて、図3示す溶接温度監視機能を有するナローラップシーム溶接装置を用いて、従来法又は本発明法によって溶接条件を設定した場合の溶接破断による四半期毎の稼働率低下の発生状況(休止時間:%)を調査した。図3において、1はストリップ、4a、4bは円板電極、5は溶接部温度を測定する温度計、6は溶接監視装置である。
【0025】
図3の装置において、先行ストリップ後端と後行ストリップ先端を重ねておき、ストリップ1幅方向に回転走行する円板電極4a、4bで予め設定された溶接条件で溶接し、溶接後の溶接部の温度を温度計5で検出し、溶接監視装置6で溶接良否を判断し、検出温度が溶接温度範囲を外れる場合は溶接不良と判断し、警報を発する。溶接不良と判断した場合は、再溶接作業を行うことができるようになっている。
【0026】
本発明法においては、図2の実線(3)の板厚(t)と溶接温度(y)の関係をy=c×ln(t)+dで表し、板厚(t)に基いて目標溶接温度(yA)を設定し、溶接温度(y)が前記目標溶接温度(yA)になるように溶接条件(溶接電流、電極加圧力、電極速度、ストリップラップ量等)を設定した。但し、c=115.4、d=786.89とした。従来法では、溶接条件をバルジテスト等に基いて設定した。
【0027】
調査結果を図4に示す。従来法では溶接破断による稼働率低下が1.5〜3.0%程度発生していたが、本発明法では皆無になった。
【0028】
本実施例は連続焼鈍ラインの場合の例であるが、連続溶融亜鉛めっきライン等の炉を備える連続ストリップ処理ラインにおいて、同様の効果を発揮できる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、炉を備える連続ストリップ処理ラインにおいて、溶接条件を必要な溶接強度が得られる条件に設定して、溶接破断を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶接部の断面を示す図。
【図2】鋼帯板厚とナゲット比が40〜60%になる溶接温度範囲の関係を示す図。
【図3】溶接温度監視機能を有するナローラップシーム溶接装置の要部を示す図。
【図4】連続焼鈍ラインにおいて、従来法および本発明法によって溶接条件を設置した場合の溶接破断による稼働率低下の発生状況の推移を示す図。
【符号の説明】
1、1a、1b ストリップ
2 接合面
3 ナゲット
4a、4b 円板電極
5 温度計
6 溶接監視装置
Claims (3)
- 炉を備える連続ストリップ処理ラインにおいて炉の上流側に設置された先行ストリップと後行ストリップの溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件を設定するにあたって、溶接温度が下式で定義されるナゲット比が40〜60%の範囲内になる温度に溶接条件を設定することを特徴とする溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件の設定方法。
但し、
ナゲット比=Ln/L
L:溶接部の接合面長さ、Ln:接合面におけるナゲット長さ - 請求項1において、ナゲット比が40〜60%の範囲内になる溶接温度を鋼帯板厚に基いて決定することを特徴とする溶接温度監視機能を有する溶接装置の溶接条件の設定方法。
- 請求項1または2に記載の方法で溶接条件を設定して溶接し、溶接後の溶接温度を検出し、検出した溶接温度があらかじめ設定した溶接温度範囲を外れた時は、再溶接作業を行うことを特徴とする溶接方法。
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