JP3572689B2 - 高分子凝集剤組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、水溶性高分子の劣化防止剤及び該劣化防止剤を含有する高分子凝集剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水中に懸濁分散している微粒子を凝集分離し、水を清澄化する作用をもつ高分子化合物を高分子凝集剤とよび、大別すると非イオン性でかつ水溶性の高分子と高分子電解質とに分類され、後者にはさらに電荷の符号によってアニオン性、カチオン性及び両性高分子電解質がある。
高分子凝集剤は、水中で2個以上の微粒子間に橋かけ吸着することにより橋かけ凝集を起こすが、凝集剤の最適添加量は分子量が大きいほど小さい。これは、微粒子表面における吸着層の厚さが大きいほど橋かけ凝集に有利であるためであり、したがって、高分子凝集剤としては一般に高分子量のものが要求される。
しかし、水溶性高分子凝集剤を水溶液とした際、水質によってはその直後から分子量の低下が始まり、凝集剤の凝集性能が低下するという問題がある。凝集性能が低下すると、使用する凝集剤の量を多くしなければならないので凝集剤費が高くなり、また脱水後の汚泥の含水比が大きくなって汚泥の処理費が嵩むなどの問題が生じ、好ましくない。
従来、水溶性高分子凝集剤の水溶液中での分子量低下を防止するために、チオ尿素又はその誘導体を添加する方法が行われている。しかし、チオ尿素は発癌性を有する疑いがあり、作業者に対する悪影響が懸念される。このため、発癌性のない水溶性高分子凝集剤の劣化防止剤が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水溶性高分子凝集剤の水溶液中での分子量低下を防止する効果にすぐれ、しかも発癌性のない劣化防止剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、チオシアン酸を有効成分とする劣化防止剤が水溶性高分子の分子量低下防止にすぐれた効果を有することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ヒドロキシルアミンを含まない水溶性高分子凝集剤組成物であって、該水溶性高分子を基準にして、チオシアン酸塩を2〜20重量%配合したことを特徴とする高分子凝集剤組成物、及び、
(2)チオシアン酸塩がチオシアン酸カリウム又はチオシアン酸アンモニウムである第1項記載の高分子凝集剤組成物、
を提供するものである。
【0005】
本発明に用いることができる水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素−ホルマリン縮合物、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、ポリメタクリルアミドの部分加水分解物、アクリルアミド又はメタクリルアミドとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、部分スルホメチル化ポリメタクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド)−2−メチルプロパン硫酸塩、ポリアクリロニトリルの部分加水分解物、ポリメタクリロニトリルの部分加水分解物、ポリ−N−ビニルホルムアミドの部分加水分解物、ポリ−N−ビニルアセトアミドの部分加水分解物、ポリアミノアルキルアクリレート、その塩及びその四級化物、ポリアミノアルキルメタクリレート、その塩及びその四級化物、アミノアルキルアクリレート又はアミノアルキルメタクリレートとアクリルアミド又はメタクリルアミドとの共重合体、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサンなどを挙げることができる。さらに、上記の共重合体のほかに、上記の水溶性高分子の構成単位の2種以上を構成単位として有する共重合体も本発明において使用することができ、このような共重合体としては、例えば、アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物及びジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物を構成単位とする四元共重合体などを挙げることができる。これらの水溶性高分子を高分子凝集剤として使用する場合は、構成単位に解離基が導入され、電解質化されているものを特に好適に使用することができる。解離基の導入により、電離基相互間の静電的反発が生じ、水中において高分子鎖が大きく拡がるとともに、吸着層の厚さが増大し、凝集に有効となるためと考えられる。
【0006】
本発明において、水溶性高分子の分子量低下を防止するために、チオシアン酸塩を使用する。チオシアン酸塩は、水溶性を有するものであれば特に制限なく使用することができ、このようなチオシアン酸塩としては、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ルビジウム、チオシアン酸セシウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸ストロンチウム、チオシアン酸バリウムなどを挙げることができる。これらのチオシアン酸塩は、1種を単独で使用することができ、あるいは2種以上を混合して使用することができる。これらのチオシアン酸塩のうち、チオシアン酸アンモニウム及びチオシアン酸カリウムを特に好適に使用することができる。
本発明において、チオシアン酸塩の配合量は、水溶性高分子を基にして0.5〜20重量%、好ましくは2〜5重量%である。チオシアン酸塩の配合量が水溶性高分子を基にして0.5重量%未満であると、劣化防止効果が十分ではなく、水溶性高分子の重合度の低下が起こるおそれがある。チオシアン酸塩の配合量は、通常は水溶性高分子を基にして20重量%以下で十分であり、チオシアン酸塩の配合量が水溶性高分子を基にして20重量%を超えても、劣化防止効果はチオシアン酸塩の配合量の増加に見合っては向上しない。
本発明の水溶性高分子の劣化防止剤は、常温ではもちろん50℃の高温でも劣化防止効果を発揮するので、排水を加熱処理する場合にも有効に使用することができる。本発明の水溶性高分子の劣化防止剤は、水溶性高分子を含有する水に粉体などの固体として添加することができ、あるいは、水溶性高分子を含有する水に有機溶媒又は水などに溶解した溶液として添加することができる。さらに、本発明の水溶性高分子の劣化防止剤は、あらかじめ固体状態で水溶性高分子と混合し、あるいは本発明の水溶性高分子の劣化防止剤及び水溶性高分子を溶解した溶液の形態で、水溶性高分子凝集剤組成物とすることができる。
高分子凝集剤の品質劣化は、活性酸素種などの活性種が凝集剤とラジカル連鎖反応を起こし、凝集剤を分解しているものと思われる。したがって、発生した活性種が劣化防止剤に連鎖移動することにより、高分子凝集剤の分解が抑制されるものと考えられる。
【0007】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1〜4及び比較例1〜4に使用した下水処理水の水質を第1表に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
実施例1
アクリルアミド/アクリル酸/ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物/ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチルによる四級化物(重量比4/1/1/3)の共重合体を、濃度が0.3重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、共重合体を基にして5重量%のチオシアン酸カリウムを添加して溶解し、20℃で静置した。共重合体及びチオシアン酸カリウムを溶解した直後の溶液のpHは4.0であった。その後、2週間にわたってB型粘度計により溶液の粘度を測定し、第2表の結果を得た。
比較例1
チオシアン酸カリウムを添加しないこと以外は、実施例1と全く同じ操作を実施例1と平行して行った。共重合体を溶解した直後の溶液のpHは3.5であった。粘度測定の結果を第2表に示す。
【0010】
【表2】
【0011】
チオシアン酸カリウムを添加した実施例1の溶液の粘度が、2週間経過後もほとんど低下していないのに対して、チオシアン酸カリウムを添加しない比較例1の溶液の粘度は1週間で2分の1になり、その後も低下を続けている。このことから、チオシアン酸カリウムが、アクリルアミド/アクリル酸/ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物/ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチルによる四級化物の四元共重合体に対して劣化防止効果を有することが分かる。
実施例2
ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物の単独重合体を、濃度が0.3重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、重合体を基にして5重量%のチオシアン酸アンモニウムを添加して溶解し、20℃で静置した。重合体及びチオシアン酸アンモニウムを溶解した直後の溶液のpHは8.0であった。その後、2週間にわたってB型粘度計により溶液の粘度を測定し、第3表の結果を得た。
比較例2
チオシアン酸アンモニウムを添加しないこと以外は、実施例2と全く同じ操作を実施例2と平行して行った。共重合体を溶解した直後の溶液のpHは8.0であった。粘度測定の結果を第3表に示す。
【0012】
【表3】
【0013】
チオシアン酸アンモニウムを添加した実施例2の溶液の粘度が、2週間経過後も全く低下していないのに対して、チオシアン酸アンモニウムを添加しない比較例2の溶液の粘度は急速に低下を続けている。このことから、チオシアン酸アンモニウムが、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物の単独重合体に対して劣化防止効果を有することが分かる。
実施例3
アクリル酸の単独重合体を、濃度が0.1重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、重合物を基にして20重量%のチオシアン酸カリウムを添加し、さらに濃度が4重量%になるよう食塩を添加した。重合体、チオシアン酸カリウム及び食塩を添加した直後の溶液のpHは6.0であった。この溶液を二分し、それぞれ20℃及び50℃に静置した。半日後及び15日後に、B型粘度計により30℃でそれぞれの溶液の粘度を測定し、第4表の結果を得た。
比較例3
実施例3に用いたのと同じアクリル酸の単独重合体を、濃度が0.1重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、さらに、濃度が4重量%になるよう食塩を添加した。重合体及び食塩を添加した直後の溶液のpHは6.0であった。この溶液を50℃に静置した。半日後及び15日後に、B型粘度計により30℃で溶液の粘度を測定し、第4表の結果を得た。
【0014】
【表4】
【0015】
チオシアン酸カリウムを添加した実施例3の溶液は、20℃に静置しても、50℃に静置しても、粘度が15日間経過後も全く低下していないのに対して、チオシアン酸カリウムを添加しない比較例3の溶液は、50℃に静置すると、15日間で粘度が2分の1に低下している。このことから、チオシアン酸カリウムが、アクリル酸の単独重合体に対して劣化防止効果を有することが分かる。
実施例4
アクリルアミド/アクリル酸/ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物/ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチルによる四級化物(重量比4/1/1/3)の共重合体を、濃度が0.3重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、共重合体を基にして5重量%のチオシアン酸カリウムを添加して溶解した。共重合体及びチオシアン酸カリウムを溶解した直後の溶液のpHは4.0であった。
この溶液を、20℃で半日間静置したのち、第5表に示す性状を有する下水汚泥に、下水汚泥の全固形物を基にして溶液中の上記共重合体が1.6重量%となるよう添加した。その後、共重合体を添加した汚泥を、200メッシュのろ布で30秒間ろ過し、ろ布上の汚泥における、汚泥の固形分に対する汚泥の含水量の比を含水比として求めた。結果を第6表に示す。
【0016】
【表5】
【0017】
さらに、共重合体及びチオシアン酸カリウムを溶解した溶液を、20℃に5日間静置したのち、第6表に示す性状を有する下水汚泥に、下水汚泥の固形分を基にして溶液中の上記共重合体が1.6重量%となるよう添加した。その後、共重合体を添加した汚泥を、200メッシュのろ布で30秒間ろ過し、含水比を求め、第6表の結果を得た。
比較例4
チオシアン酸カリウムを添加しないこと以外は、実施例4と全く同じ操作を実施例4と同時に行った。共重合体を溶解した直後の溶液のpHは4.0であった。含水比の測定結果を第6表に示す。
【0018】
【表6】
【0019】
チオシアン酸カリウムを添加した溶液を使用した実施例4では、溶解半日後の溶液を用いた場合も、溶解5日後の溶液を用いた場合も、いずれも汚泥の含水比は低く、処理の容易な汚泥が得られた。これに対して、チオシアン酸カリウムを添加しない溶液を使用した比較例4では、溶解半日後の溶液を用いた場合は含水比の低い汚泥が得られたが、溶解5日後の溶液を用いた場合には汚泥の含水比が高くなり、溶液にチオシアン酸カリウムを添加しないと、高分子凝集剤の経時劣化が進行することが分かる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の水溶性高分子の劣化防止剤を使用することにより、水溶性高分子凝集剤の水溶液中における分子量の低下を効果的に防ぎ、凝集剤の性能を長期間安定に保つことができる。
【産業上の利用分野】
本発明は、水溶性高分子の劣化防止剤及び該劣化防止剤を含有する高分子凝集剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
水中に懸濁分散している微粒子を凝集分離し、水を清澄化する作用をもつ高分子化合物を高分子凝集剤とよび、大別すると非イオン性でかつ水溶性の高分子と高分子電解質とに分類され、後者にはさらに電荷の符号によってアニオン性、カチオン性及び両性高分子電解質がある。
高分子凝集剤は、水中で2個以上の微粒子間に橋かけ吸着することにより橋かけ凝集を起こすが、凝集剤の最適添加量は分子量が大きいほど小さい。これは、微粒子表面における吸着層の厚さが大きいほど橋かけ凝集に有利であるためであり、したがって、高分子凝集剤としては一般に高分子量のものが要求される。
しかし、水溶性高分子凝集剤を水溶液とした際、水質によってはその直後から分子量の低下が始まり、凝集剤の凝集性能が低下するという問題がある。凝集性能が低下すると、使用する凝集剤の量を多くしなければならないので凝集剤費が高くなり、また脱水後の汚泥の含水比が大きくなって汚泥の処理費が嵩むなどの問題が生じ、好ましくない。
従来、水溶性高分子凝集剤の水溶液中での分子量低下を防止するために、チオ尿素又はその誘導体を添加する方法が行われている。しかし、チオ尿素は発癌性を有する疑いがあり、作業者に対する悪影響が懸念される。このため、発癌性のない水溶性高分子凝集剤の劣化防止剤が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水溶性高分子凝集剤の水溶液中での分子量低下を防止する効果にすぐれ、しかも発癌性のない劣化防止剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、チオシアン酸を有効成分とする劣化防止剤が水溶性高分子の分子量低下防止にすぐれた効果を有することを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ヒドロキシルアミンを含まない水溶性高分子凝集剤組成物であって、該水溶性高分子を基準にして、チオシアン酸塩を2〜20重量%配合したことを特徴とする高分子凝集剤組成物、及び、
(2)チオシアン酸塩がチオシアン酸カリウム又はチオシアン酸アンモニウムである第1項記載の高分子凝集剤組成物、
を提供するものである。
【0005】
本発明に用いることができる水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素−ホルマリン縮合物、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、ポリメタクリルアミドの部分加水分解物、アクリルアミド又はメタクリルアミドとアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、部分スルホメチル化ポリメタクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド)−2−メチルプロパン硫酸塩、ポリアクリロニトリルの部分加水分解物、ポリメタクリロニトリルの部分加水分解物、ポリ−N−ビニルホルムアミドの部分加水分解物、ポリ−N−ビニルアセトアミドの部分加水分解物、ポリアミノアルキルアクリレート、その塩及びその四級化物、ポリアミノアルキルメタクリレート、その塩及びその四級化物、アミノアルキルアクリレート又はアミノアルキルメタクリレートとアクリルアミド又はメタクリルアミドとの共重合体、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサンなどを挙げることができる。さらに、上記の共重合体のほかに、上記の水溶性高分子の構成単位の2種以上を構成単位として有する共重合体も本発明において使用することができ、このような共重合体としては、例えば、アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物及びジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物を構成単位とする四元共重合体などを挙げることができる。これらの水溶性高分子を高分子凝集剤として使用する場合は、構成単位に解離基が導入され、電解質化されているものを特に好適に使用することができる。解離基の導入により、電離基相互間の静電的反発が生じ、水中において高分子鎖が大きく拡がるとともに、吸着層の厚さが増大し、凝集に有効となるためと考えられる。
【0006】
本発明において、水溶性高分子の分子量低下を防止するために、チオシアン酸塩を使用する。チオシアン酸塩は、水溶性を有するものであれば特に制限なく使用することができ、このようなチオシアン酸塩としては、例えば、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ルビジウム、チオシアン酸セシウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸ストロンチウム、チオシアン酸バリウムなどを挙げることができる。これらのチオシアン酸塩は、1種を単独で使用することができ、あるいは2種以上を混合して使用することができる。これらのチオシアン酸塩のうち、チオシアン酸アンモニウム及びチオシアン酸カリウムを特に好適に使用することができる。
本発明において、チオシアン酸塩の配合量は、水溶性高分子を基にして0.5〜20重量%、好ましくは2〜5重量%である。チオシアン酸塩の配合量が水溶性高分子を基にして0.5重量%未満であると、劣化防止効果が十分ではなく、水溶性高分子の重合度の低下が起こるおそれがある。チオシアン酸塩の配合量は、通常は水溶性高分子を基にして20重量%以下で十分であり、チオシアン酸塩の配合量が水溶性高分子を基にして20重量%を超えても、劣化防止効果はチオシアン酸塩の配合量の増加に見合っては向上しない。
本発明の水溶性高分子の劣化防止剤は、常温ではもちろん50℃の高温でも劣化防止効果を発揮するので、排水を加熱処理する場合にも有効に使用することができる。本発明の水溶性高分子の劣化防止剤は、水溶性高分子を含有する水に粉体などの固体として添加することができ、あるいは、水溶性高分子を含有する水に有機溶媒又は水などに溶解した溶液として添加することができる。さらに、本発明の水溶性高分子の劣化防止剤は、あらかじめ固体状態で水溶性高分子と混合し、あるいは本発明の水溶性高分子の劣化防止剤及び水溶性高分子を溶解した溶液の形態で、水溶性高分子凝集剤組成物とすることができる。
高分子凝集剤の品質劣化は、活性酸素種などの活性種が凝集剤とラジカル連鎖反応を起こし、凝集剤を分解しているものと思われる。したがって、発生した活性種が劣化防止剤に連鎖移動することにより、高分子凝集剤の分解が抑制されるものと考えられる。
【0007】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1〜4及び比較例1〜4に使用した下水処理水の水質を第1表に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
実施例1
アクリルアミド/アクリル酸/ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物/ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチルによる四級化物(重量比4/1/1/3)の共重合体を、濃度が0.3重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、共重合体を基にして5重量%のチオシアン酸カリウムを添加して溶解し、20℃で静置した。共重合体及びチオシアン酸カリウムを溶解した直後の溶液のpHは4.0であった。その後、2週間にわたってB型粘度計により溶液の粘度を測定し、第2表の結果を得た。
比較例1
チオシアン酸カリウムを添加しないこと以外は、実施例1と全く同じ操作を実施例1と平行して行った。共重合体を溶解した直後の溶液のpHは3.5であった。粘度測定の結果を第2表に示す。
【0010】
【表2】
【0011】
チオシアン酸カリウムを添加した実施例1の溶液の粘度が、2週間経過後もほとんど低下していないのに対して、チオシアン酸カリウムを添加しない比較例1の溶液の粘度は1週間で2分の1になり、その後も低下を続けている。このことから、チオシアン酸カリウムが、アクリルアミド/アクリル酸/ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物/ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチルによる四級化物の四元共重合体に対して劣化防止効果を有することが分かる。
実施例2
ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物の単独重合体を、濃度が0.3重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、重合体を基にして5重量%のチオシアン酸アンモニウムを添加して溶解し、20℃で静置した。重合体及びチオシアン酸アンモニウムを溶解した直後の溶液のpHは8.0であった。その後、2週間にわたってB型粘度計により溶液の粘度を測定し、第3表の結果を得た。
比較例2
チオシアン酸アンモニウムを添加しないこと以外は、実施例2と全く同じ操作を実施例2と平行して行った。共重合体を溶解した直後の溶液のpHは8.0であった。粘度測定の結果を第3表に示す。
【0012】
【表3】
【0013】
チオシアン酸アンモニウムを添加した実施例2の溶液の粘度が、2週間経過後も全く低下していないのに対して、チオシアン酸アンモニウムを添加しない比較例2の溶液の粘度は急速に低下を続けている。このことから、チオシアン酸アンモニウムが、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物の単独重合体に対して劣化防止効果を有することが分かる。
実施例3
アクリル酸の単独重合体を、濃度が0.1重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、重合物を基にして20重量%のチオシアン酸カリウムを添加し、さらに濃度が4重量%になるよう食塩を添加した。重合体、チオシアン酸カリウム及び食塩を添加した直後の溶液のpHは6.0であった。この溶液を二分し、それぞれ20℃及び50℃に静置した。半日後及び15日後に、B型粘度計により30℃でそれぞれの溶液の粘度を測定し、第4表の結果を得た。
比較例3
実施例3に用いたのと同じアクリル酸の単独重合体を、濃度が0.1重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、さらに、濃度が4重量%になるよう食塩を添加した。重合体及び食塩を添加した直後の溶液のpHは6.0であった。この溶液を50℃に静置した。半日後及び15日後に、B型粘度計により30℃で溶液の粘度を測定し、第4表の結果を得た。
【0014】
【表4】
【0015】
チオシアン酸カリウムを添加した実施例3の溶液は、20℃に静置しても、50℃に静置しても、粘度が15日間経過後も全く低下していないのに対して、チオシアン酸カリウムを添加しない比較例3の溶液は、50℃に静置すると、15日間で粘度が2分の1に低下している。このことから、チオシアン酸カリウムが、アクリル酸の単独重合体に対して劣化防止効果を有することが分かる。
実施例4
アクリルアミド/アクリル酸/ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級化物/ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチルによる四級化物(重量比4/1/1/3)の共重合体を、濃度が0.3重量%となるよう下水処理水に溶解した。この溶液に、共重合体を基にして5重量%のチオシアン酸カリウムを添加して溶解した。共重合体及びチオシアン酸カリウムを溶解した直後の溶液のpHは4.0であった。
この溶液を、20℃で半日間静置したのち、第5表に示す性状を有する下水汚泥に、下水汚泥の全固形物を基にして溶液中の上記共重合体が1.6重量%となるよう添加した。その後、共重合体を添加した汚泥を、200メッシュのろ布で30秒間ろ過し、ろ布上の汚泥における、汚泥の固形分に対する汚泥の含水量の比を含水比として求めた。結果を第6表に示す。
【0016】
【表5】
【0017】
さらに、共重合体及びチオシアン酸カリウムを溶解した溶液を、20℃に5日間静置したのち、第6表に示す性状を有する下水汚泥に、下水汚泥の固形分を基にして溶液中の上記共重合体が1.6重量%となるよう添加した。その後、共重合体を添加した汚泥を、200メッシュのろ布で30秒間ろ過し、含水比を求め、第6表の結果を得た。
比較例4
チオシアン酸カリウムを添加しないこと以外は、実施例4と全く同じ操作を実施例4と同時に行った。共重合体を溶解した直後の溶液のpHは4.0であった。含水比の測定結果を第6表に示す。
【0018】
【表6】
【0019】
チオシアン酸カリウムを添加した溶液を使用した実施例4では、溶解半日後の溶液を用いた場合も、溶解5日後の溶液を用いた場合も、いずれも汚泥の含水比は低く、処理の容易な汚泥が得られた。これに対して、チオシアン酸カリウムを添加しない溶液を使用した比較例4では、溶解半日後の溶液を用いた場合は含水比の低い汚泥が得られたが、溶解5日後の溶液を用いた場合には汚泥の含水比が高くなり、溶液にチオシアン酸カリウムを添加しないと、高分子凝集剤の経時劣化が進行することが分かる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の水溶性高分子の劣化防止剤を使用することにより、水溶性高分子凝集剤の水溶液中における分子量の低下を効果的に防ぎ、凝集剤の性能を長期間安定に保つことができる。
Claims (2)
- ヒドロキシルアミンを含まない水溶性高分子凝集剤組成物であって、該水溶性高分子を基準にして、チオシアン酸塩を2〜20重量%配合したことを特徴とする高分子凝集剤組成物。
- チオシアン酸塩がチオシアン酸カリウム又はチオシアン酸アンモニウムである請求項1記載の高分子凝集剤組成物。
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